以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
[第1の実施形態]
図1は、本発明の好ましい第1の実施形態によるインダクタ素子100の回路図である。
図1に示すように、本実施形態によるインダクタ素子100は、対となる第1及び第2の端子電極101,102と、対となる第3及び第4の端子電極103,104と、第1の端子電極101と第3の端子電極103との間に直列に接続された第1及び第3のコイルパターン141,143と、第2の端子電極102と第4の端子電極104との間に直列に接続された第2及び第4のコイルパターン142,144とを備えて構成されている。
第1及び第2のコイルパターン141,142は、互いに同方向に磁気結合しており、これにより、コモンモードフィルタ10を構成する。一方、第3及び第4のコイルパターン143,144は、互いに逆方向に磁気結合しており、これにより、特性インピーダンスの低下抑制部20を構成している。ここで、「互いに同方向に磁気結合」とは、同相成分に対しては互いに磁束を強め合い、差動成分に対しては互いに磁束を打ち消し合うように磁気結合していることを言う。また、「互いに逆方向に磁気結合」とは、同相成分に対しては互いに磁束を打ち消し合い、差動成分に対しては互いに磁束を強め合うように磁気結合していることを言う。
本実施形態によるインダクタ素子100を使用する場合、図2に示すように、第1及び第2の端子電極101,102を伝送線路の一対の入力信号線11a,12aに接続し、第3及び第4の端子電極103,104を伝送線路の一対の出力信号線11b,12bに接続する。これにより、ESD対策部品として出力信号線11b,12bに容量性素子31,32を接続した場合であっても、これに起因する特性インピーダンスの低下を抑制することができる。容量性素子31,32としては、バリスタやツェナーダイオードなどを用いることができる。
図2に示すように、本実施形態によるインダクタ素子100及び容量性素子31,32は、信号伝送回路SC1を構成する。信号伝送回路SC1は、差動伝送方式を用いたケーブルにて接続される機器の一方に配置することができる。
例えば、図3に示すように、デジタルテレビ1とDVDプレーヤー2とをHDMIケーブル3にて接続する場合、デジタルテレビ1の入力部に、信号伝送回路SC1を配置すればよい。HDMIケーブル3は、差動伝送方式を用いたケーブルであり、接続端子部5,6(コネクタ)を備えている。HDMIケーブル3の接続端子部5は、DVDプレーヤー2の出力部に接続されており、HDMIケーブル3の接続端子部6は、デジタルテレビ1の入力部に接続されている。これにより、DVDプレーヤー2から出力されたデジタル信号は、HDMIケーブル3を通してデジタルテレビ1に高速伝送される。
このように、本実施形態によるインダクタ素子100は、容量性素子31,32の前段にコモンモードフィルタ10(第1及び第2のコイルパターン141,142)を挿入すると共に、コモンモードフィルタ10と容量性素子31,32との間に、特性インピーダンスの低下抑制部20(第3及び第4のコイルパターン143,144)を挿入していることから、容量性素子31,32による特性インピーダンスの低下を抑制することができる。
しかも、第3及び第4のコイルパターン143,144は互いに逆方向に磁気結合していることから、磁気結合していない場合と比べ、より少ない巻数にて十分なインダクタンス値を確保することができる。このため、第3及び第4のコイルパターン141,143のサイズを小型化することが可能となる。
次に、本実施形態によるインダクタ素子100の具体的な構造について説明する。
図4は、本発明の好ましい第4の実施形態によるインダクタ素子100の構造を示す略分解斜視図であり、図5は、第1の実施形態によるインダクタ素子100を組み立てた状態を示す略斜視図である。
図4に示すように、本実施形態によるインダクタ素子100は、基板111,112と、基板111,112間に設けられた絶縁層121〜125と、所定の絶縁層に形成された導体パターンとを備えて構成されている。基板111,112の材料については特に限定されないが、透磁率の高い材料、例えばフェライトなどを用いることが好ましい。また、絶縁層121〜125の材料については、特に限定されないが、ポリイミドなどを用いることが好ましい。
絶縁層に形成された導体パターンは、各絶縁層121〜125の表面に形成された第1〜第4の内部電極131〜134と、絶縁層123の表面に形成された第1及び第3のコイルパターン141,143と、絶縁層122の表面に形成された第2及び第4のコイルパターン142,144と、絶縁層124の表面に形成された引き出し導体151,152と、絶縁層121の表面に形成された引き出し導体153,154とを含んでいる。本実施形態においては、第1乃至第4のコイルパターン141〜144がいずれもスパイラル状導体によって構成されている。スパイラル状導体は、他の形状によるコイルパターンに比べて、比較的大きなインダクタンス値を得ることが可能である。
第1のコイルパターン141と第2のコイルパターン142は、絶縁層123を介して向かい合うように配置されており、このため、両者は互いに磁気結合している。同様に、第3のコイルパターン143と第4のコイルパターン144も、絶縁層123を介して向かい合うように配置されており、このため、両者は互いに磁気結合している。後述するように、これらの導体パターンは、絶縁層上に、スパッタリング法、蒸着法、メッキ法などのいわゆる薄膜プロセスによって形成することができる。
これら導体パターンのうち、第1〜第4の内部電極131〜134は、ぞれぞれ図5に示す第1〜第4の端子電極101〜104に接続される導体パターンである(図4では、第1〜第4の端子電極101〜104の図示を省略してある。以下、各分解斜視図において同様)。図5に示すように、第1及び第2の端子電極101,102と、第3及び第4の端子電極103,104とは、インダクタ素子100を横切る直線Bに対して略線対称に配置されている。つまり、第1及び第2の端子電極101,102と、第3及び第4の端子電極103,104とは、互いに対向配置されている。また、第1の端子電極101と第2の端子電極102とは互いに隣接して配置されており、第3の端子電極103と第4の端子電極104とは互いに隣接して配置されている。
図4に戻って、第1のコイルパターン141は平面状コイルであり、その一端141aは、引き出し導体151を介して第1の内部電極131に接続されている。一方、第1のコイルパターン141の他端141bは、第3のコイルパターン143の一端143aに接続されている。第3のコイルパターン143も平面状コイルであり、その他端143bは、引き出し導体152を介して第3の内部電極133に接続されている。上述の通り、第1の内部電極131は第1の端子電極101に接続されており、第3の内部電極133は第3の端子電極103に接続されていることから、第1のコイルパターン141と第3のコイルパターン143は、第1の端子電極101と第3の端子電極103との間に直列に接続されていることになる。
第2のコイルパターン142も平面状コイルであり、その一端142aは、引き出し導体153を介して第2の内部電極132に接続されている。一方、第2のコイルパターン142の他端142bは、第4のコイルパターン144の一端144aに接続されている。第4のコイルパターン144も平面状コイルであり、その他端144bは、引き出し導体154を介して第4の内部電極134に接続されている。上述の通り、第2の内部電極132は第2の端子電極102に接続されており、第4の内部電極134は第4の端子電極104に接続されていることから、第2のコイルパターン142と第4のコイルパターン144は、第2の端子電極102と第4の端子電極104との間に直列に接続されていることになる。
本実施形態においては、第1及び第2のコイルパターン141,142の巻数はいずれも約3回であり、第3及び第4のコイルパターン143,144の巻数はいずれも約2回である。もちろん、本発明において第1乃至第4のコイルパターン141〜144の巻数はこれに限定されず、何回であっても構わない。但し、第1及び第2のコイルパターン141,142の対称性を保つためには、第1のコイルパターン141の巻数及び第2のコイルパターン142の巻数については同一とする必要がある。同様に、第3及び第4のコイルパターン143,144の対称性を保つためには、第3のコイルパターン143の巻数及び第4のコイルパターン144の巻数についても同一とする必要がある。
尚、信号を過度に減衰させないためには、第1及び第2のコイルパターン141,142よりも、第3及び第4のコイルパターン143,144の巻数を十分に少なくすることが好ましい。具体的には、第3及び第4のコイルパターン143,144のインダクタンス値は、10nHより小さいことが好ましく、1〜2nHであることがより好ましい。これは、第3及び第4のコイルパターン143,144のインダクタンス値が大きすぎると、これに起因して特性インピーダンスが高くなる箇所が生じてしまい、インピーダンス整合が不十分となるためである。
さらに、図4に示す矢印Aからみた場合、第1及び第2のコイルパターン141,142は、一端141a,142aから他端141b,142bに向かって、いずれも右回り(時計回り)に巻回されている。したがって、第1の端子電極101を始点とした第1のコイルパターン141の巻回方向と、第2の端子電極102を始点とした第2のコイルパターン142の巻回方向は、互いに同一方向となる。
尚、第1及び第2のコイルパターン141,142の巻回方向については、互いに同一である限りその方向については特に限定されず、したがって、両者とも左回り(反時計回り)であっても構わない。
これに対し、図4に示す矢印Aからみた場合、第3のコイルパターン143は、一端143aから他端143bに向かって右回り(時計回り)に巻回されている一方、第4のコイルパターン144は、一端144aから他端144bに向かって左回り(反時計回り)に巻回されている。したがって、一端143aを始点とした第3のコイルパターン143の巻回方向と、一端144aを始点とした第4のコイルパターン142の巻回方向は、互いに逆方向となる。
第3及び第4のコイルパターン143,144の巻回方向については、互いに逆方向である限りその方向については特に限定されず、したがって上記とは逆、すなわち、第3のコイルパターン143が左回り(反時計回り)であり、第4のコイルパターン144が右回り(時計回り)であっても構わない。また、第1及び第2のコイルパターン141,142の巻回方向と、第3又は第4のコイルパターン143,144の巻回方向との関係についても特に限定されるものではない。
また、絶縁層121〜125には、それぞれ2つの貫通孔121a〜125a,121b〜125bが形成されている。このうち、貫通孔121a〜125aには磁性体161が挿入されており、貫通孔121b〜125bには磁性体162が挿入されている。図4に示すように、絶縁層122,123に形成された貫通孔122a,123aは、コイルパターン141,142の中心部分に位置しており、このため、コイルパターン141,142は、磁性体161の周囲に巻回された状態となる。同様に、貫通孔122b,123bは、コイルパターン143,144の中心部分に位置しており、このため、コイルパターン143,144は、磁性体162の周囲に巻回された状態となる。本発明において、このような磁性体161,162を設けることは必須でないが、これを設けることによって、漏れの少ない磁気回路を形成することができる。
図7は、インダクタ素子100を用いた場合における、プリント基板上の配線パターンを説明するための図である。
本実施形態によるインダクタ素子100は、図6を用いて説明したように、第1及び第2の端子電極101,102が隣接して配置され、且つ、第3及び第4の端子電極103,104が隣接して配置されていることから、図7に示すように、プリント基板190上において一対の信号線11a,12a及び一対の信号線11b,12bをいずれも平行に敷設することができ、プリント基板190上における配線パターンの迂回などが不要となる。このため、プリント基板190上における配線パターンの占有面積が必要以上に増大することがなく、しかも、高い対称性を確保することが可能となる。これにより、装置全体の小型化と信号品質の向上を両立させることが可能となる。
次に、インダクタ素子100の好ましい製造方法について説明する。
図8(a)〜(c)は、インダクタ素子100の好ましい一製造方法を説明するための工程図である。
まず、図8(a)に示すように、フェライトなどの磁性材料からなる基板111を用意し、その表面にポリイミドなどの樹脂を塗布することによって絶縁層121を形成する。図8(a)には示されていないが、絶縁層121の一部はパターニングされ、これによって、図1に示した貫通孔121a,121bが形成される。
次に、スパッタリング法などにより、絶縁層121の全表面に下地導体159を形成し、さらにその表面にフォトレジスト191を形成する。下地導体159は、後述するメッキ工程において給電体として機能するとともに、導体パターンと絶縁層との密着性を向上させるための密着層として機能する。このような機能を果たすためには、例えば、クロム(Cr)と銅(Cu)の積層膜によって下地導体159を構成することが好ましい。
次に、図8(b)に示すように、フォトリソグラフィー法によってフォトレジスト191をパターニングし、下地導体159の一部を露出させる。その後、下地導体159を給電体とした電解メッキを行うことにより、下地導体159が露出した部分に引き出し導体153,154(導電パターン)を形成する。導電パターンの材料としては、メッキにより形成可能な金属であれば特に限定されず、例えば、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、ニッケルクロム合金(Ni−Cr)、はんだ、スズ(Sn)などを用いることができる。中でも、コストや電気伝導性などを考慮すれば、銅(Cu)を用いることが非常に好ましい。導電パターンの材料として銅(Cu)を選択する場合には、メッキ液として硫酸銅浴等を用いればよい。
そして、図8(c)に示すように、フォトレジスト191を除去し、酸などのエッチング液を用いて引き出し導体152が形成されていない部分の不要な下地導体159を除去(ソフトエッチング)すれば、1層目の加工が完了する。
以下、同様の工程を繰り返すことにより、絶縁層122〜125及び他の導電パターン(コイルパターン141〜144など)を形成した後、各絶縁層121〜125に形成された貫通孔121a〜125a,121b〜125bに磁性体161,161を埋め込む。そして、フェライトなどの磁性材料からなる上側の基板112を取り付けた後、第1〜第4の端子電極101〜104を形成すれば、本実施形態によるインダクタ素子100が完成する。
このように、コイルパターン141〜144などの導体パターンをメッキ法により形成すれば、スクリーン印刷法などの厚膜プロセスを用いた場合と比べて、インダクタ素子100全体の厚みを薄くすることが可能となる。
尚、インダクタ素子100の作製においては、例えばウェハ状である大型の基板111,112を用い、同一のウェハ上に多数のインダクタ素子100を同時に形成した後、ダイサーなどを用いて個々のインダクタ素子100に分離することが好ましい。これによれば、1枚のウェハから多数のインダクタ素子100を取り出すことができることから、製造コストを大幅に削減することが可能となる。
導体パターンの形成方法としては、上述したメッキ法に限らず、スパッタリング法や蒸着法など、他の薄膜プロセスを用いることも可能である。この場合、図9(a)に示すように全面に導体膜150を成膜した後、フォトレジスト191を形成し、図9(b)に示すように、フォトレジスト191を用いて導体膜150をパターニングすることによって導体パターン(例えば引き出し導体153,154)を形成しても構わない。さらには、図10に示すように、メタルマスク192を用いたスパッタリングや蒸着を行うことによって、導体パターン(例えば引き出し導体153,154)を選択的に成膜しても構わない。
以上説明したように、本実施形態によるインダクタ素子100は、コモンモードフィルタ10として機能する第1及び第2のコイルパターン141,142と、特性インピーダンスの低下抑制部20として機能する第3及び第4のコイルパターン143,144が直列に接続された構成を有していることから、ESD対策として容量性素子を用いた場合であっても、特性インピーダンスの低下を抑制することができる。しかも、第3及び第4のコイルパターン143,144は互いに逆方向に磁気結合していることから、磁気結合していない場合と比べ、より少ない巻数にて十分なインダクタンス値を確保することができる。
しかも、これら第1乃至第4のコイルパターン141〜144が一体化された構成を有していることから、部品点数を削減することが可能となる。また、一体化により、インダクタンス値を精度良くバランスさせることができ、その結果、差動信号の対称性を維持することも可能となる。
また、第1及び第2の端子電極101,102が隣接して配置され、且つ、第3及び第4の端子電極103,104が隣接して配置されていることから、プリント基板190上における配線パターンの迂回などが不要となる。このため、プリント基板190上における配線パターンの占有面積が必要以上に増大することがなく、しかも、高い対称性を確保することが可能となる。これにより、装置全体の小型化と信号品質の向上を両立させることが可能となる。
しかも、本実施形態によるインダクタ素子100は、コイルパターン141〜144をフェライトなどの磁性材料からなる基板111,112によって挟み込んでおり、且つ、コイルパターン141〜144の中心部分を貫通するように磁性体161,162が設けられていることから、漏れの少ない磁気回路を形成することが可能となる。これにより、小型化した場合であっても、良好な特性を得ることが可能となる。
さらに、本実施形態では、絶縁層を介して第1及び第2のコイルパターン141,142を異なる層に形成し、且つ、絶縁層を介して第3及び第4のコイルパターン143,144を異なる層に形成していることから、磁気結合する2つのコイルパターン間に生じる寄生容量を抑制することができ、その結果、良好な特性を得ることが可能となる。また、コイルパターン141〜144の巻数を大きくすることが容易である、という利点も有している。
さらに、本実施形態では、第1及び第3のコイルパターン141,143を同一平面に形成し、第2及び第4のコイルパターン142,144を他の同一平面に形成していることから、絶縁層の数を削減することが可能となり、その結果、製造コストを削減することが可能となる。
尚、本実施形態では、第3のコイルパターン143の内周から外周へ向かう巻回方向と、第4のコイルパターン144の内周から外周へ向かう巻回方向とが逆であるが、本発明においてこの点は必須でなく、両者が一致していても構わない。この態様は、後述する第2の実施形態において詳述する。
尚、本実施形態では、第3及び第4のコイルパターン143,144の他端143b,144bを、第3及び第4の端子電極103,104にそれぞれ接続しているが、この接続関係が逆であっても構わない。この場合、本実施形態の変形例である図11に示すように、引き出し導体152を第4の内部電極134に接続し、引き出し導体154を第3の内部電極133に接続するよう、導体パターンのパターン形状を変えればよい。この場合も、図7に示したように、プリント基板190上において一対の信号線11b,12bを平行に敷設することができる。
[第2の実施形態]
図12は、本発明の好ましい第2の実施形態によるインダクタ素子200の構造を示す略分解斜視図である。第2の実施形態によるインダクタ素子200を組み立てた状態は、図5に示した通りである。
本実施形態によるインダクタ素子200は、絶縁層121,122上に形成された導体パターンの形状が異なる点において、第1の実施形態によるインダクタ素子100と相違している。その他の点は、第1の実施形態によるインダクタ素子100と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図12に示すように、本実施形態では、第4のコイルパターン244が、第1の実施形態とは異なり、外周から内周に向かって右回り(時計回り)に形成されている。これは、第3のコイルパターン143と同じ巻回方式である。つまり、本実施形態では、内周から外周へ向かう巻回方向については、第3のコイルパターン143と第4のコイルパターン244とで一致している。
また、絶縁層121には、引き出し導体153のほか、引き出し導体251,252が形成されている。引き出し導体251は、第2のコイルパターン142の他端142bと第4のコイルパターン244の一端244aとを接続する導体であり、引き出し導体252は、第4の内部電極134と第4のコイルパターン244の他端244bとを接続する導体である。本実施形態では、第4のコイルパターン244の一端244aは内周に位置し、第4のコイルパターン244の他端244bは外周に位置している。
これにより、第1〜第4の端子電極101〜104と、第1乃至第4のコイルパターン141〜143,244との接続関係は、第1の実施形態における接続関係と一致する。つまり、図12に示す矢印Aからみた場合、第3のコイルパターン143は、一端143aから他端143bに向かって右回り(時計回り)に巻回されている一方、第4のコイルパターン244は、一端244aから他端244bに向かって左回り(反時計回り)に巻回されていることになる。
このため、本実施形態によるインダクタ素子200は、第1の実施形態によるインダクタ素子100と全く同じ機能を果たす。このように、本発明においては、各コイルパターンの内周から外周へ向かう巻回方向については、限定されない。尚、第1及び第2の実施形態とも、第1及び第2のコイルパターン141,142については、内周から外周へ向かう巻回方向が同一であるが、これについても互いに逆としても構わない。
[第3の実施形態]
図13は、本発明の好ましい第3の実施形態によるインダクタ素子300の構造を示す略分解斜視図である。第3の実施形態によるインダクタ素子300を組み立てた状態も、図5に示した通りである。
本実施形態によるインダクタ素子300は、絶縁層121〜124上に形成された導体パターンの形状が異なる点において、第1の実施形態によるインダクタ素子100と相違している。その他の点は、第1の実施形態によるインダクタ素子100と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図13に示すように、本実施形態では、第3のコイルパターン343が絶縁層122上に形成されており、第4のコイルパターン344が絶縁層123上に形成されている。つまり、第1及び第4のコイルパターン141,344が同一平面に形成され、第2及び第3のコイルパターン142,343が他の同一平面に形成されている。この場合も、絶縁層の数を削減することが可能となり、その結果、製造コストを削減することが可能となる。
第3のコイルパターン343の一端343aは、絶縁層123に形成されたスルーホールを介して、第1のコイルパターン141の他端141bに接続されている。第3のコイルパターン343の他端343bは、絶縁層121に形成された引き出し導体352を介して、第3の内部電極133に接続されている。つまり、第3のコイルパターン343の接続関係については、第1の実施形態と全く同じである。
また、第4のコイルパターン344の一端344aは、絶縁層123に形成されたスルーホールを介して、第2のコイルパターン142の他端142bに接続されている。第4のコイルパターン344の他端344bは、絶縁層124に形成された引き出し導体351を介して、第4の内部電極134に接続されている。つまり、第4のコイルパターン344の接続関係についても、第1の実施形態と全く同じである。
これにより、第1〜第4の端子電極101〜104と、第1乃至第4のコイルパターン141,142,343,344との接続関係は、第1の実施形態における接続関係と同様となる。つまり、図13に示す矢印Aからみた場合、第3のコイルパターン343は、一端343aから他端343bに向かって左回り(反時計回り)に巻回されている一方、第4のコイルパターン344は、一端344aから他端344bに向かって右回り(時計回り)に巻回されていることになり、両者の巻回方向は互いに逆となる。
このため、本実施形態によるインダクタ素子300も、第1の実施形態によるインダクタ素子100と全く同じ機能を果たす。このように、第1及び第4のコイルパターン141,344を同一平面に形成し、第2及び第3のコイルパターン142,343を他の同一平面に形成した場合においても、絶縁層の数を削減することが可能となり、その結果、製造コストを削減することが可能となる。
また図示しないが、本実施形態のように、第1及び第4のコイルパターン141,344を同一平面に形成し、第2及び第3のコイルパターン142,343を他の同一平面に形成するとともに、第2の実施形態のように、第3のコイルパターンと第4のコイルパターンの内周から外周へ向かう巻回方向を一致させることも可能である。
[第4の実施形態]
図14は、本発明の好ましい第5の実施形態によるインダクタ素子400の構造を示す略分解斜視図である。
本実施形態によるインダクタ素子400は、第1乃至第4の内部電極131〜134の配列が上記実施形態によるインダクタ素子100,200,300とは異なっている。つまり、図14に示すように、本実施形態では、第1の内部電極131と第2の内部電極132が対向する位置に配置されており、第3の内部電極133と第4の内部電極134もが対向する位置に配置されている。これにより、本実施形態によるインダクタ素子400を組み立てると、図15に示すように、第1乃至第4の端子電極101〜104の配置も上記各実施形態とは異なる配置となる。
図14に示すように、第1のコイルパターン141の一端141aは、絶縁層124上に形成された引き出し導体151を介して、第1の内部電極131に接続されており、他端141bは、第3のコイルパターン143の一端143aに接続されている。また、第3のコイルパターン143の他端143bは、絶縁層124上に形成された引き出し導体451を介して、第3の内部電極133に接続されている。
さらに、第2のコイルパターン142の一端142aは、絶縁層121上に形成された引き出し導体452を介して、第2の内部電極132に接続されており、他端142bは、第4のコイルパターン144の一端144aに接続されている。また、第4のコイルパターン144の他端144bは、絶縁層121上に形成された引き出し導体453を介して、第4の内部電極134に接続されている。その他、第1の実施形態によるインダクタ素子100と同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
本実施形態においても、図14に示す矢印Aからみた場合、第1及び第2のコイルパターン141,142は、一端141a,142aから他端141b,142bに向かって右回り(時計回り)に巻回されている。また、第3のコイルパターン143は、一端143aから他端143bに向かって右回り(時計回り)に巻回されている一方、第4のコイルパターン144は、一端144aから他端144bに向かって左回り(反時計回り)に巻回されている。
図16は、インダクタ素子400を用いた場合における、プリント基板上の配線パターンを説明するための図である。
図16に示すように、本実施形態によるインダクタ素子400を用いた場合においても、プリント基板190上で一対の信号線11a,12a及び一対の信号線11b,12bをいずれも平行に敷設することができ、プリント基板190上における配線パターンの迂回などが不要となる。
本実施形態では、図17に示すように、第1及び第3の端子電極101,103と、第2及び第4の端子電極102,104とは、インダクタ素子400を横切る直線Cに対して略線対称に配置されていると考えることができる。つまり、第1及び第3の端子電極101,103と、第2及び第4の端子電極102,104とが互いに対向配置されている。このように、本発明は、隣接しない2つの端子電極を一対の入力端子(又は、一対の出力端子)として用いることも可能である。
尚、本実施形態によるインダクタ素子400では、第1及び第2の実施形態と同様、第1及び第3のコイルパターン141,143を同一平面に形成し、第2及び第4のコイルパターン142,144を他の同一平面に形成しているが、第3の実施形態のように、第1及び第4のコイルパターン141,144を同一平面に形成し、第2及び第3のコイルパターン142,143を他の同一平面に形成しても構わない。いずれにおいても、絶縁層の数を削減することが可能となる。
また、本実施形態によるインダクタ素子400では、第1及び第3の実施形態と同様、第3のコイルパターン143の内周から外周へ向かう巻回方向と、第4のコイルパターン144の内周から外周へ向かう巻回方向とを互いに逆方向としているが、第2の実施形態のように、これらを同一方向としても構わない。
[第5の実施形態]
図18は、本発明の好ましい第5の実施形態によるインダクタ素子500の構造を示す略分解斜視図である。第5の実施形態によるインダクタ素子500を組み立てた状態も、図5に示した通りである。
本実施形態によるインダクタ素子500では、第1及び第2のコイルパターン541,542がいずれも絶縁層123上において、互いに沿って形成されている。このため、このため、両者は互いに磁気結合している。さらに、第3及び第4のコイルパターン543,544は、いずれも絶縁層122において互いに沿って形成されている。このため、このため、両者も互いに磁気結合している。また、本実施形態では、各絶縁層121〜125に形成された貫通孔121a〜125aが一つずつである。その他、第1の実施形態によるインダクタ素子100と同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図18に示すように、第1のコイルパターン541の一端541aは、第1の内部電極131に接続されており、他端541bは、絶縁層123に形成されたスルーホールを介して、第3のコイルパターン543の一端543aに接続されている。また、第3のコイルパターン543の他端543bは、第3の内部電極133に接続されている。
さらに、第2のコイルパターン542の一端542aは、第2の内部電極132に接続されており、他端542bは、絶縁層124上に形成された引き出し電極551及び絶縁層123上に形成された引き出し電極552を介して、第4のコイルパターン544の一端544aに接続されている。また、第4のコイルパターン544の他端544bは、絶縁層121上に形成された引き出し電極553を介して、第4の内部電極134に接続されている。
本実施形態においても、図18に示す矢印Aからみた場合、第1及び第2のコイルパターン541,542は、一端541a,542aから他端541b,542bに向かって右回り(時計回り)に巻回されている。また、第3のコイルパターン543は、一端543aから他端543bに向かって左回り(反時計回り)に巻回されている一方、第4のコイルパターン544は、一端544aから他端544bに向かって右回り(時計回り)に巻回されている。
これにより、第1〜第4の端子電極101〜104と、第1乃至第4のコイルパターン541〜544との接続関係は、第1の実施形態における接続関係と同様となる。このため、本実施形態によるインダクタ素子500も、第1の実施形態によるインダクタ素子100と全く同じ機能を果たす。しかも、本実施形態の構成によれば、第1及び第2のコイルパターン541,542が同一層上で互いに沿って形成されており、且つ、第3及び第4のコイルパターン543,544が同一層上で互いに沿って形成されていることから、インダクタ素子500の平面サイズを縮小することが可能となる。
尚、本実施形態によるインダクタ素子500は、端子電極の配置を第1〜第3の実施形態と同一としているが、これを第4の実施形態と同一としても構わない。つまり、第1乃至第54端子電極101〜104の配置を、図15に示した配置としても構わない。
また、本実施形態では、第1及び第2のコイルパターン541,542と、第3及び第4のコイルパターン543,544とが上下に隣接していることから、これらコイルパターン間において多少の磁気結合が生じる。この磁気結合を弱める必要がある場合には、これらの間隔を広くしたり、これらの間に透磁率の高い材料を介在させればよい。逆に、両者の磁気結合を強める必要がある場合には、これらの間隔を狭くしたり、これらの間に透磁率の低い材料を介在させればよい。つまり、両者の磁気結合については、特性に応じて適宜調整することが可能である。
さらに、本実施形態では、第1及び第2のコイルパターン541,542と、第3及び第4のコイルパターン543,544とが上下に隣接しているが、これらを同一平面に形成しても構わない。第1〜第4のコイルパターン541〜544をすべて同一平面に形成した例を図19に示す。
図19に示すように、第1〜第4のコイルパターン541〜544をすべて同一平面に形成する場合、絶縁層121に引き出し導体554〜557を形成し、各コイルパターン541〜544の所定の端部と、これに対応する所定の内部電極とを接続すればよい。具体的には、引き出し導体554によって、第1のコイルパターン541の他端541bと、第3のコイルパターン543の一端543aとを接続し、引き出し導体555によって、第2のコイルパターン542の他端542bと、第4のコイルパターン544の一端544aとを接続すればよい。さらに、引き出し導体556によって、第3のコイルパターン543の他端543bと第3の内部電極133とを接続し、引き出し導体557によって、第4のコイルパターン544の他端544bと、第4の内部電極134とを接続すればよい。
これによれば、絶縁層の数を削減することが可能となり、その結果、低背化を実現することが可能となる。また、製造コストを削減することも可能となる。また、第1及び第2のコイルパターン541,542と、第3及び第4のコイルパターン543,544との間の磁気結合がほとんど生じないことから、両者の磁気結合を弱める必要がある場合においても特に好適である。
[第6の実施形態]
図20は、本発明の好ましい第6の実施形態によるインダクタ素子600の構造を示す略分解斜視図である。第6の実施形態によるインダクタ素子600を組み立てた状態も、図5に示した通りである。
本実施形態によるインダクタ素子600は、基板111,112に挟まれた絶縁層が6層(621〜626)である点、並びに、これら絶縁層に形成された導体パターンの形状が異なる点において、第1の実施形態によるインダクタ素子100と相違する。その他の点は、第1の実施形態によるインダクタ素子100と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。絶縁層621〜626には、それぞれ貫通孔621a〜626a及び621b〜626bが形成されている。
図20に示すように、本実施形態においては、コイルパターンが複数層に亘って形成されている。より具体的に説明すると、第1のコイルパターンは、それぞれ異なる層に形成された導体641a,641b,641c,641d,641eによって構成され、第2のコイルパターンは、それぞれ異なる層に形成された導体642a,642b,642c,642d,642eによって構成されている。第1のコイルパターンと第2のコイルパターンは、2重らせん構造を有しており、このため、両者は互いに磁気結合している。
また、第3のコイルパターンは、それぞれ異なる層に形成された導体643a,643b,643c,643dによって構成され、第4のコイルパターンは、それぞれ異なる層に形成された導体644a,644b,644c,644dによって構成されている。第3のコイルパターンと第4のコイルパターンも2重らせん構造を有しており、このため、両者は互いに磁気結合している。また、本実施形態においても、信号を過度に減衰させないよう、第1及び第2のコイルパターンに比べ、第3及び第4のコイルパターンの巻数を少なくしている。
導体641a,641b,641c,641d,641eによって構成される第1のコイルパターンの一端641xは、第1の内部電極131に接続されており、第1のコイルパターンの他端641yは、第3のコイルパターンの一端643xに接続されている。一方、導体642a,642b,642c,642d,642eによって構成される第2のコイルパターンの一端642xは、第2の内部電極132に接続されており、第2のコイルパターンの他端642yは、第4のコイルパターンの一端644xに接続されている。
また、導体643a,643b,643c,643dによって構成される第3のコイルパターンの他端643yは、第3の内部電極1353に接続されている。一方、導体644a,644b,644c,644dによって構成される第4のコイルパターンの他端644yは、第4の内部電極134に接続されている。
本実施形態においては、図20に示す矢印Aからみた場合、第1のコイルパターン(641a,641b,641c,641d,641e)は、一端641xから他端641yに向かって左回り(反時計回り)に巻回されているとともに、第2のコイルパターン(642a,642b,642c,642d,642e)も、一端642xから他端642yに向かって左回り(反時計回り)に巻回されている。したがって、第1の端子電極101を始点とした第1のコイルパターン(641a,641b,641c,641d,641e)の巻回方向と、第2の端子電極102を始点とした第2のコイルパターン(642a,642b,642c,642d,642e)の巻回方向が互いに同一方向となっている。
これに対し、図20に示す矢印Aからみた場合、第3のコイルパターン(643a,643b,643c,643d)は、一端643xから他端643yに向かって右回り(時計回り)に巻回されている一方、第4のコイルパターン(644a,644b,644c,644d,644e)は、一端644xから他端644yに向かって左回り(反時計回り)に巻回されている。したがって、一端643xを始点とした第3のコイルパターン(643a,643b,643c,643d)の巻回方向と、一端644xを始点とした第4のコイルパターン(644a,644b,644c,644d)の巻回方向が互いに逆方向となっている。
これにより、第1〜第4の端子電極101〜104と、第1乃至第4のコイルパターン641〜644との接続関係は、第1の実施形態における接続関係と同様となる。このため、本実施形態によるインダクタ素子600も、第1の実施形態によるインダクタ素子100と全く同じ機能を果たす。しかも、本実施形態の構成によれば、各絶縁層上の導体パターンの形状がそれほど複雑ではなく、また、それほど高いパターン精度が要求されないことから、スクリーン印刷法などの厚膜プロセスを用いることが可能となる。その結果、製造コストを削減することが可能となる。
尚、本実施形態によるインダクタ素子600においても、端子電極とコイルパターンとの接続関係を第1〜第3の実施形態と同一としているが、これら接続関係を第4の実施形態と同一としても構わない。つまり、第1乃至第4の端子電極101〜104の配置を、図15に示した配置としても構わない。
[第7の実施形態]
図21は、本発明の好ましい第7の実施形態によるインダクタ素子700の構造を示す略分解斜視図である。第7の実施形態によるインダクタ素子700を組み立てた状態も、図5に示した通りである。
本実施形態によるインダクタ素子700では、第3及び第4のコイルパターン743,744がいずれもミアンダ状導体によって構成されている。これに関連して、各絶縁層121〜125に形成された貫通孔121a〜125aが一つずつである。その他の点は、第1の実施形態によるインダクタ素子100と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図21に示すように、第1のコイルパターン741の一端741aは、引き出し導体751を介して第1の内部電極131に接続されており、他端741bは、第3のコイルパターン743の一端743aに接続されている。また、第3のコイルパターン743の他端743bは、引き出し導体752を介して第3の内部電極133に接続されている。
さらに、第2のコイルパターン742の一端742aは、引き出し導体753を介して第2の内部電極132に接続されており、他端742bは、第4のコイルパターン744の一端744aに接続されている。また、第4のコイルパターン744の他端744bは、引き出し導体754を介して第4の内部電極134に接続されている。
このように、第1〜第4の端子電極101〜104と、第1乃至第4のコイルパターン741〜744との接続関係は、第1の実施形態における接続関係と同様である。また、図21に示す矢印Aからみた場合、第1及び第2のコイルパターン741,742は、一端741a,742aから他端741b,742bに向かって右回り(時計回り)に巻回されていることから、両者は同方向に磁気結合している。
図22は、第3及び第4のコイルパターン743,744の重なり方を説明するための模式図である。
図22に示すように、ミアンダ状である第3及び第4のコイルパターン743,744は、互いに半ピッチずれた状態で重ねられている。これにより、第3及び第4のコイルパターン743,744は、互いに逆方向に磁気結合することになる。つまり、同相成分に対しては互いに磁束を打ち消し合い、差動成分に対しては互いに磁束を強め合うように磁気結合することになる。
このようなミアンダ状導体は、スパイラル状導体と比べ、狭いエリアにおいて比較的小さなインダクタンスを形成する場合に好適である。上述の通り、第3及び第4のコイルパターンは、信号である差動成分に対して互いに磁束を強め合うように磁気結合していることから、インダクタンス値が大きすぎると、信号を過度に減衰させてしまうが、ミアンダ状導体によって第3及び第4のコイルパターン743,744を構成すれば、適度なインダクタンス値を狭いエリアに形成することが可能となる。
このように、本実施形態によれば、第3及び第4のコイルパターン743,744をいずれもミアンダ状導体によって構成していることから、インダクタ素子700の平面サイズを縮小することが可能となる。尚、本実施形態によるインダクタ素子700も、端子電極の配置を第1〜第3の実施形態と同一としているが、これを第4の実施形態と同一としても構わない。
[第8の実施形態]
図23は、本発明の好ましい第8の実施形態によるインダクタ素子800の構造を示す略分解斜視図であり、図24は、第8の実施形態によるインダクタ素子800を組み立てた状態を示す略斜視図である。
図24に示すように、本実施形態によるインダクタ素子800は、第1乃至第4の端子電極101〜104の他に、第5の端子電極105a,105bを備えている。これら第5の端子電極105a,105bは、それぞれ図23に示す第5の内部電極135a,135bに接続される端子である。
図23に示すように、本実施形態によるインダクタ素子800は、絶縁層121〜124上にそれぞれ容量パターン871〜874が形成されている。その他、第1及び第7の実施形態によるインダクタ素子100,700と同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
容量パターン872,873は、いずれも第5の内部電極135a,135bに接続されている。これにより、第5の端子電極105a,105bが内部で短絡されていることになる。但し、これはあくまで一例であり、容量パターン872,873が第5の内部電極135a,135bの少なくとも一方に接続されていれば足りる。したがって、第5の内部電極135a,135bの一方を不使用電極としても構わない。
また、容量パターン874は、引き出し導体852に接続されている。引き出し導体852は、第3のコイルパターン843の他端843bと、第3の内部電極133とを接続する導体である。一方、容量パターン871は、引き出し導体854に接続されている。引き出し導体854は、第4のコイルパターン844の他端844bと、第4の内部電極134とを接続する導体である。
第5の端子電極105a,105bは、使用時においてグランドに接続される。このため、容量パターン873,874からなる容量性素子は、グランドと第3の端子電極103との間に接続されることになり、容量パターン871,872からなる容量性素子は、グランドと第4の端子電極104との間に接続されることになる。容量パターン873,874からなる容量性素子は、図2に示した容量性素子31として機能し、容量パターン871,872からなる容量性素子は、図2に示した容量性素子32として機能する。
すなわち、本実施形態によるインダクタ素子800は、図2に示した容量性素子31,32を内蔵した複合インダクタ素子として機能する。これにより、図2に示した容量性素子31,32を別部品としてプリント基板上に実装する必要がなくなることから、部品点数をよりいっそう削減することが可能となる。
尚、本実施形態では、第3及び第4のコイルパターン743,744をミアンダ状導体によって構成しているが、これをスパイラル状導体によって構成しても構わない。
[第9の実施形態]
図25は、本発明の好ましい第9の実施形態によるインダクタ素子900の構造を示す略分解斜視図である。第9の実施形態によるインダクタ素子900を組み立てた状態は、図24に示した通りである。
図25に示すように、本実施形態によるインダクタ素子900は、第5のコイルパターン945及び第6のコイルパターン946が追加されている点において、上述した第8の実施形態によるインダクタ素子800と相違する。その他の点は、第8の実施形態によるインダクタ素子800と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
第5のコイルパターン945は、第3のコイルパターン743の他端743bと、第3の内部電極133との間に接続されている。また、第6のコイルパターン946は、第4のコイルパターン744の他端744bと、第4の内部電極134との間に接続されている。第5及び第6のコイルパターン945,946のインダクタンス値は、10nHより小さいことが好ましく、1〜2nHであることがより好ましい。これは、第5及び第6のコイルパターン945,946のインダクタンス値が大きすぎると、これに起因して特性インピーダンスが高くなる箇所が生じてしまい、インピーダンス整合が不十分となるためである。
図26は、第9の実施形態によるインダクタ素子900の回路図である。
図26に示すように、インダクタ素子900は、容量性素子31,32が一体化されているとともに、容量性素子31,32と第3及び第4の端子電極103,104との間に、第5及び第6のコイルパターン945,946が直列に挿入された回路構成となる。第5及び第6のコイルパターン945,946は、容量性素子31,32による特性インピーダンスの低下を抑制する役割を果たす。これにより、本実施形態によるインダクタ素子900は、容量性素子31,32による特性インピーダンスの低下をより一層抑制することが可能となる。
尚、本実施形態においても、第3及び第4のコイルパターン743,744をミアンダ状導体によって構成しているが、これをスパイラル状導体によって構成しても構わない。また、容量パターン871〜874を省略し、容量性素子31,32を別部品としても構わない。
[第10の実施形態]
図27は、本発明の好ましい第10の実施形態によるインダクタ素子1000の構造を示す略分解斜視図である。本実施形態によるインダクタ素子1000は、プリント基板上に形成された構造を有している。
本実施形態によるインダクタ素子1000は、第1〜第4のコイルパターン1041〜1044の構造については、図4に示した第1の実施形態とほぼ同様であり、第1のコイルパターン1041と第2のコイルパターン1042、並びに、第3のコイルパターン1043と第4のコイルパターン1044とが互いに磁気結合しているが、これらがプリント基板を構成する樹脂層190−1〜190−3に形成され、これにより、素子自体が別部品ではなく、プリント基板上に集積された構造を有している点において相違する。
より具体的には、第1のコイルパターン1041は樹脂層190−2に形成されており、その一端は第1の入力ライン1001に接続され、他端は第3のコイルパターン1043の一端に接続されている。また、第2のコイルパターン1042は樹脂層190−1に形成されており、その一端は第2の入力ライン1002に接続され、他端は第4のコイルパターン1044の一端に接続されている。第1及び第2の入力ライン1001,1002は、差動信号が供給される一対の配線であり、例えば、図2に示した信号線11a,12aがこれに該当する。
また、第3のコイルパターン1043は樹脂層190−2に形成されており、その一端は第1のコイルパターン1041に接続され、他端は第1の出力ライン1003に接続されている。また、第4のコイルパターン1044は樹脂層190−1に形成されており、その一端は第2のコイルパターン1042に接続され、他端は第2の出力ライン1004
に接続されている。第1及び第2の出力ライン1003,1004も一対の配線であり、例えば、図4に示した信号線11b,12bがこれに該当する。
本実施形態においても、図27に示す矢印Aからみた場合、第1のコイルパターン1041は、第1の入力ライン1001に接続された一端から、第3のコイルパターン1043に接続された他端に向かって右回り(時計回り)に巻回されている。同様に、第2のコイルパターン1042も、第2の入力ライン1002に接続された一端から、第4のコイルパターン1044に接続された他端に向かって右回り(時計回り)に巻回されている。したがって、第1の入力ライン1001を始点とした第1のコイルパターン1041の巻回方向と、第2の入力ライン1002を始点とした第2のコイルパターン1042の巻回方向は、互いに同一方向となっている。
これに対し、図27に示す矢印Aからみた場合、第3のコイルパターン1043は、第1のコイルパターン1041に接続された一端から、第1の出力ライン1003に接続された他端に向かって右回り(時計回り)に巻回されている一方、第4のコイルパターン1044は、第2のコイルパターン1042に接続された一端から、第2の出力ライン1004に接続された他端に向かって左回り(反時計回り)に巻回されている。したがって、本実施形態においても、第1のコイルパターン1041を始点とした第3のコイルパターン1043の巻回方向と、第2のコイルパターン1042を始点とした第4のコイルパターン1044の巻回方向が互いに逆方向となっている。
これにより、本実施形態によるインダクタ素子1000は、第1の実施形態によるインダクタ素子100と全く同じ機能を果たす。しかも、本実施形態によれば、素子自体がプリント基板上に形成されていることから、プリント基板に搭載すべき部品点数を削減することが可能となる。
尚、本実施形態によるインダクタ素子1000では、第1及び第2の実施形態と同様、第1及び第3のコイルパターン1041,1043を同一平面に形成し、第2及び第4のコイルパターン1042,1044を他の同一平面に形成しているが、第3の実施形態のように、第1及び第4のコイルパターン1041,1044を同一平面に形成し、第2及び第3のコイルパターン1042,1043を他の同一平面に形成しても構わない。
また、本実施形態によるインダクタ素子1000では、第1及び第3の実施形態と同様、第3のコイルパターン1043の内周から外周へ向かう巻回方向と、第4のコイルパターン1044の内周から外周へ向かう巻回方向とを互いに逆方向としているが、第2の実施形態のように、これらを同一方向としても構わない。
さらに、本実施形態によるインダクタ素子1000では、第3及び第4のコイルパターン1043,1044をスパイラル状導体によって構成しているが、これらをミアンダ状導体によって構成しても構わない。
また、容量性素子31,32を別部品ではなく、プリント基板上に形成した容量パターンによって構成しても構わないし、第5及び第6のコイルパターンをプリント基板上に形成しても構わない。
また、本実施形態では、インダクタ素子をプリント基板上に形成しているが、これを半導体チップに集積することにより、半導体チップ内に埋め込んでも構わない。この場合、略断面図である図28に示すように、半導体基板1111上に設けられた層間絶縁膜1121,1122間に第1及び第3のコイルパターン1141,1143を形成し、層間絶縁膜1122,1123間に第2及び第4のコイルパターン1142,1144を形成すればよい。この場合も、図28に示す矢印Aからみた場合、第1のコイルパターン1141の一端(入力ライン)から、他端(第3のコイルパターン)に向かう巻回方向と、第2のコイルパターン1142の一端(入力ライン)から、他端(第4のコイルパターン)に向かう巻回方向を、互いに同一方向とするとともに、第3のコイルパターン1143の一端(第1のコイルパターン)から、他端(出力ライン)に向かう巻回方向と、第4のコイルパターン1144の一端(第2のコイルパターン)から、他端(出力ライン)に向かう巻回方向を、互いに逆方向とすればよい。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
例えば、第1〜第5及び第7〜第10の実施形態では、2つの平面にそれぞれ2つのコイルパターンを形成しているが、本発明がこれに限定されるものではなく、その他、種々の態様も採用しても構わない。したがって、磁気結合する一対のコイルパターンを絶縁層を介して異なる層に形成するタイプ(第1〜第4及び第7〜第10の実施形態参照)と、磁気結合する一対のコイルパターンを同一平面に形成するタイプ(第5の実施形態参照)とが、一つのインダクタ素子に混在していても構わない。同様に、磁気結合する一対のコイルパターンを複数層に亘って形成するタイプ(第6の実施形態参照)と、他の形式によるコイルパターンが、一つのインダクタ素子に混在していても構わない。
また、上記各実施形態にて例示したコイルパターンの巻数や、絶縁層の層数は、あくまで一例であり、本発明が何らこれに限定されるものではない。
また、コイルパターンの形状としては、スパイラル状・ミアンダ状に限らず、他の形状によるコイルパターンであっても構わない。
さらに、上記各実施形態にて例示したコイルパターンのうち、スパイラル状導体によって構成されるコイルパターンは周囲が略四角形であるが、スパイラル状導体の形状についてはこれに限定されず、円形や多角形であっても構わない。
また、本発明によるインダクタ素子は、容量性素子による特性インピーダンスの低下を抑制するための素子として用いるだけでなく、他の用途にも使用することも可能である。