図1(a)から図1(c)に示した分波器1は、本発明の多芯光モジュールの一例に相当するものあり、入射光を、波長の異なる3つの光に分波させるためのものである。この分波器1は、基板2、カバー3、および4つのファイバコリメート4,5,6,7を備えている。
図2および図3に示したように、基板2は、ファイバコリメート4〜7を支持するためのものであり、たとえばジルコニアなどのセラミック材料、SiO2、およびガラスなどの無機材料の他、ステンレス等の金属材料により形成されている。ただし、基板2を形成するための材料としては、熱膨張係数が小さいものを使用するのが望ましい。この基板2は、凹部20Aを挟んで基板2の長手方向X1,X2に隣接する第1および第2領域20B,20Cを有している。第1領域20Bには、2つの溝21,23が設けられており、第2領域20Cには2つの溝22,24が設けられている。
4つの溝21〜24は、基板2の長手方向X1,X2に延びているとともに、基板2の幅方向Y1,Y2において互いに位置ずれして存在(オフセット)している。これらの溝21〜24は、ファイバコリメート4〜7の一部を収容することによってファイバコリメート4〜7の位置を規制するためのものである。すなわち、図示した溝21,23の中心線間距離D1は、ファイバコリメート4に対するファイバコリメート6のオフセット量(ファイバ間隔)D1に対応し、溝22,24の中心線間距離D2はファイバコリメート5に対するファイバコリメート7のオフセット量(ファイバ間隔)D2に対応しており、溝21,22の中心線間距離d1は、ファイバコリメート4に対するファイバコリメート5のオフセット量d1に対応している。
各溝21〜24は、ダイシングマシンなどの公知の加工装置によって断面V字状に形成されており、精度良く平行性および幅方向の間隔(オフセット量D1,d1、D2)が規定されている。ただし、各溝21〜24の断面形状は、V字状に限らず、矩形状、U字状、半円状などの他の形状であってもよい。
カバー3は、ファイバコリメート4〜7を外力などから保護するとともにファイバコリメート4〜7に対して外部からノイズ光が入力するのを防止するためのものであり、ファイバコリメート4〜7の上部側を収容できるように箱状に形成されている。このカバー3は、たとえば金属、樹脂、セラミック材料により形成されており、周縁部30において、接着材を介して基板2に固定されている(図1(b)および図1(c)参照)。接着材としては、半田、ロウ材、あるいは樹脂接着剤を使用することができる。
図2および図4に示したように、ファイバコリメート4〜7は、コアレスファイバ40〜70、グレーデッドインデックスファイバ41〜71およびシングルモードファイバ42〜72を、一連に接続したものである。ファイバコリメート4は、入力用のものであり、ファイバコリメート5〜7は、出力用のものである。各ファイバコリメート4〜7においては、これを構成するファイバ40〜42,50〜52,60〜62,70〜72は、略同一の外径寸法(たとえば125μm程度)とされており、ファイバコリメート4〜7の状態で、円筒状のフェルール80,81,82,83に挿通されている。
各ファイバコリメート4〜7は、基板2における対応する溝21〜24に対して、接着材を介して位置決め固定されている。接着材としては、たとえば樹脂接着剤や低融点ガラスを使用することができる。基板2の第1領域20Bに固定されたファイバコリメート4,6相互は、コアレスファイバ40,60の非接続端40A,60Aの中心が基板2の幅方向Y1,Y2において同一直線Z1上に位置させられており、基板2の第2領域20Cに固定されたファイバコリメート5,7相互は、コアレスファイバ50,70の非接続端50A,70Aの中心が基板2の幅方向Y1,Y2において同一直線Z2上に位置させられている。そして、同一の領域20B(20C)に固定されたファイバコリメート4,6(5,7)における非接続端40A,60A(50A,70A)の中心を繋ぐラインZ1(Z2)相互における基板2の長手方向X1,X2の距離(ファイバの水平間隔)Lは、たとえば800〜1500μmとされている。
各コアレスファイバ40,50,60,70は、プリズムとして機能するものであり、たとえば石英によりグレーデッドインデックスファイバ41,51,61,71およびシングルモードファイバ42,52,62,72により同程度の径に形成されている。これらのコアレスファイバ40,50,60,70は、非接続端40A,50A,60A,70Aが傾斜面とされている。
コアレスファイバ40,70の非接続端40A,70Aには、光学素子84A,84Dが設けられている。これらの光学素子84A,84Dは、ARコート層として機能するものであり、誘電体多層膜として構成されている。この誘電体多層膜は、たとえばTiO2などの高屈折率を有するチタン酸化物の薄膜とSiO2などの低屈折材料の薄膜を交互に積層蒸着したものである。
コアレスファイバ50,60の非接続端50A,60Aにも、光学素子84B,84Cが設けられている。これらの光学素子84B,84Cは、波長選択フィルタとして機能するものであり、光学素子84Bは中心波長λ1の光を選択的に透過させる一方で中心波長λ2,λ3の光を反射させるものであり、光学素子84Cは中心波長λ2の光を選択的に透過させる一方で中心波長λ3の光を反射させるものである。
コアレスファイバ40,50の非接続端40A,40Bは、基板2の幅方向Y1,Y2に対する傾斜角度(端面角度)αが同一とされている。この傾斜角度αは、2<α<5°の範囲から選択される。このような角度を選択することにより、ファイバコリメート4のコアレスファイバ40から出射される光を、ファイバコリメート5のコアレスファイバ50に対して適切に入射させつつも、コアレスファイバ4における端面反射を抑制することがきる。
ここで、コアレスファイバ40を含むファイバコリメート4に対するコアレスファイバ50を含むファイバコリメート5のオフセット量d1は、上述のように基板2における溝21に対する溝22のオフセット量d1と同じであり、下記数式6を満たすように設定される。
一方、コアレスファイバ6,7の非接続端60A,70Aの傾斜角度(傾斜角度)γ,ωは、下記数式7を満たすように設定される。
ここで数式6および数式7は、次のようにして導くことができる。
図2および図5(a)から分かるように、スネルの法則により、コアレスファイバ50に対する入射光と透過光との間には下記数式8が成り立ち、コアレスファイバ60に対する入射光と透過光との間には下記数式9が成り立つ。
そして、数式8および数式9から下記数式10が得られ、この数式10から上記数式6が得られる。
一方、図2および図5(b)から分かるように、スネルの法則により、コアレスファイバ70に対する入射光と透過光との間には下記数式11が成り立つ。
そして、数式11から下記数式12が得られ、この数式12から上記数式7が得られる。
ここで、数式6,7からは、コアレスファイバ50,60の屈折率n1が大きければ、出射角β,ωを大きくできることが分かる。コアレスファイバ50,60の屈折率を増大させるためには、コアレスファイバ50,60にGe等の添加物を入れればよく、その場合には、n1=1.45〜1.8程度まで調整することができる。また、図6(a)には、ファイバコリメータ4,5の非接続端40,50の傾斜角度α(2°〜5°)に対するファイバコリメータ6,7の非接続端60,70の傾斜角度γ,ωを示した。同図から、ファイバコリメート6,7のω>γ>αの関係にあることが明確にわかる。
上述のように、コアレスファイバ40を含むファイバコリメート4に対するコアレスファイバ60を含むファイバコリメート6のオフセット量(ファイバ間隔)D1は、基板2における溝21に対する溝23のオフセット量D1と同じであり、また、コアレスファイバ50を含むファイバコリメート5に対するコアレスファイバ70を含むファイバコリメート7のオフセット量(ファイバ間隔)D2は、基板2における溝22に対する溝24のオフセット量D2と同じであり、下記数式13,14を満たすように設定される。
ここで数式13および数式14は、次のようにして導くことができる。
図2および図5(a)から分かるように、ファイバコリメート4に対するファイバコリメート6のオフセット量D1は、ファイバコリメート4に対するファイバコリメート5のオフセット量d1と、ファイバコリメート5に対するファイバコリメート6のオフセット量d2とを足し合わせたものである。その一方で、オフセット量d1については、下記数式15が成立し、オフセット量d2については、下記数式16が成立する。
そして、オフセット量D1については、上記数式15,16の右辺どうしを足し合わせることにより、上記数式13の関係が得られる。
一方、図2および図5(b)から分かるように、ファイバコリメート5に対するファイバコリメート7のオフセット量D2は、ファイバコリメート5に対するファイバコリメート6のオフセット量d2と、ファイバコリメート6に対するファイバコリメート7のオフセット量d3と、を足し合わせたものである。その一方で、オフセット量d2については、上記数式16が成立し、オフセット量d3については、下記数式17が成立する。
そして、オフセット量D2については、上記数式16,17の右辺どうしを足し合わせることにより、上記数式14の関係が得られる。
なお、図6(b)には、ファイバコリメータ4,5の端面角度αを横軸として、オフセット量(ファイバ間隔)D1,D2の関係を示した。同図から、端面角度αが大きいほどファイバコリメートのオフセット量(間隔)が大きくなることが分かる。通常、ファイバコリメート4の端面角度αは、2°以上であれば端面反射の影響は除去することができる。そのため、オフセット量D1,D2を小さく確保して分波器1の小型化を図りつつ、ファイバコリメート4の非接続端40での端面反射を有効に抑制するためには、ファイバコリメート4の傾斜角度αを、2〜5°程度に設定すればよいことが分かる。
図4に示したように、グレーデッドインデックスファイバ41,51,61,71は、ファイバコリメート4〜7において、レンズとしての役割を果たすものであり、コアレスファイバ40,50,60,70およびシングルモードファイバ42,52,62,72の双方に融着などにより接続されている。このグレーデッドインデックスファイバ41,51,61,71は、軸対称かつ略2乗の屈折率分布をもつ光ファイバであり、それを必要な長さで切断して用いることにより、屈折率分布型レンズとして使用することができる。ファイバコリメート4〜7では、グレーデッドインデックスファイバ41,51,61,71としては、コアレスファイバ40,50,60,70およびシングルモードファイバ42,52,62,72と同程度の外径を有するものが使用されているが、実用的には、たとえば外径125μm、コア径100μm程度のグレーデッドインデックスファイバ41,51,61,71を使用することにより、同程度の外径のシングルモードファイバ42,52,62,72およびコアレスファイバ40,50,60,70と融着接続して使用することができる。
ここで、図7として、グレーデッドインデックスファイバ41,51,61,71内の光線追跡の例を示した。同図においては、符号2aはコア径を、符号Cdはクラッド径をそれぞれ示している。グレーデッドインデックスファイバ41,51,61,71では、コア41A,51A,61A,71A中の光線は、ほぼサインカーブを描くように進行する。ここで、図7の横軸Pは、1周期を1としたときのピッチを表し、縦軸はグレーデッドインデックスファイバ41,51,61,71での光線の位置を、最も光線の広がった位置を1として相対的に表したものである。
図7から分かるように、グレーデッドインデックスファイバ41,51,61,71に点状光を入射させた場合、それを平行光に変換するには、グレーデッドインデックスファイバ41,51,61,71としてP=0.25の長さのものを使用すればよく、グレーデッドインデックスファイバ41,51,61,71の出射端面に焦点を結ばせるためにはP=0.5の長さのものを使用すればよい。換言すれば、グレーデッドインデックスファイバ41,51,61,71をファイバコリメート4〜7のレンズとして機能させるには、0.25≦P<0.5の間の長さのものを使用すればよいことが分かる。
ここで、グレーデッドインデックスファイバ41,51,61,71の焦点距離は、屈折率分布、すなわち比屈折率(コアの中心軸上の屈折率とコアの外表面の屈折率との比)に依存するものであり、比屈折率が大きいほど小さくなり、開口数NAが大きくなって焦点でのスポット径をより小さく絞ることができる。そのため、グレーデッドインデックスファイバ41,51,61,71をコア径の小さいシングルモードファイバ42,52,62,72に接続する場合には、それらのファイバ41,51,61,71,42,52,62,72での挿入損出を小さくするためにも、グレーデッドインデックスファイバ41,51,61,71としては、コアの比屈折率が大きなものを使用するのが好ましい。
また、対向するファイバコリメート4,5(6,7)間の距離Lは、ファイバコリメート4〜7において使用されているレンズの焦点距離により制約を受けるが、焦点距離を小さくできれば、対向するグレーデッドインデックスファイバ41,51(61,71)の間の距離Lを小さく出来る。ここで、グレーデッドインデックスファイバ41,51,61,71を、ピッチが0.25〜0.5であるレンズとして機能させた場合、このグレーデッドインデックスファイバ41,51,61,71はロッドレンズよりも相対的に焦点距離の小さなものとすることができる。そのため、ロッドレンズを使用せずに、グレーデッドインデックスファイバ41,51,61,71をレンズとして使用した場合には、対向するファイバコリメート4,5(6,7)間の距離Lをより小さくすることが可能となる。また、グレーデッドインデックスファイバ41,51,61,71は、目的する集光性を確保するために必要なレンズ長が、ロッドレンズよりも小さすることができる。とくに、グレーデッドインデックスファイバ41,51,61,71として、コアの比屈折率の大きなものを使用した場合には、焦点距離およびレンズ長をより小さくすることが可能となる。そのため、グレーデッドインデックスファイバ41,51,61,71をレンズとして機能させることで、ファイバコリメート4〜7の小型化、ひいては分波器1の小型化が達成可能となる。
次に、分波器1の作用について説明する。
図2および図5に示したように、ファイバコリメート4には、シングルモードファイバ42を介して中心波長λ1,λ2,λ3を含む光が導入され、この光がコアレスファイバ40の非接続端40Aから出射される。より具体的には、ファイバコリメート4においては、シングルモードファイバ42から伝搬してきた伝搬光線は、グレーデッドインデックスファイバ41によりコリメータ光に変換されてからコアレスファイバ40に伝搬し、ファイバコリメート4の光軸の垂直方向(基板の幅方向Y1,Y2)に対し角度α傾斜したコアレスファイバ4の非接続端(傾斜面)40から、非接続端(傾斜面)40の法線方向に対して角度βの方向に出射される。
コアレスファイバ4から出射された光は、光学素子84A(ARコート層)を出射角βで通過した後、ファイバコリメータ5の光学素子84Bに入射角βで入射する。光学素子84Bでは、中心波長λ1の光が透過し、中心波長λ2,λ3の光が反射角βで反射する。光学素子84Bを透過した中心波長λ1の光は、ファイバコリメート5の内部に導入され、コアレスファイバ50を透過してからグレーデッドインデックスファイバ51において集光された後にシングルモードファイバ52から出力される。
その一方、光学素子84Bにおいて反射した中心波長λ2,λ3の光は、ファイバコリメータ6の光学素子84Cに入射角(α+β+γ)で入射する。光学素子84Cでは、中心波長λ2の光が透過し、中心波長λ3の光が反射角(α+β+γ)で反射する。光学素子84Cを透過した中心波長λ2の光は、ファイバコリメート6の内部に導入され、コアレスファイバ60を透過してからグレーデッドインデックスファイバ61において集光された後にシングルモードファイバ62から出力される。
これに対して、光学素子84Cにおいて反射した中心波長λ3の光は、ファイバコリメータ7の光学素子84Dに入射角(α+β+2γ+ω)で入射する。光学素子84Dでは、中心波長λ3の光が透過し、ファイバコリメート7の内部に導入される。ファイバコリメート7では、中心波長λ3の光は、コアレスファイバ70を透過してからグレーデッドインデックスファイバ71において集光された後にシングルモードファイバ72から出力される。
このように、分波器1は、ファイバコリメート4に導入される中心波長λ1,λ2,λ3を含んだ光が、それぞれの中心波長λ1,λ2,λ3ごとに分波され、対応するファイバコリメート5,6,7において集光されてから出力される。
次に本発明の多芯光モジュールの製作方法を説明する。
先ず、ファイバコリメータ4,5の端面角度αを、2°以上、好ましくは2°から5°の範囲に設定する。次いで、ファイバコリメータ6,7の端面角度γ、ωを設定する一方で、オフセット量D1,D2がフェルールの外径dよりも大きくなるように、オフセット量(ファイバコリメートコリメータ間隔D1,D2)、およびフェルールの外径dを設定し、さらに、オフセット量d1,d2を設定する。
そして、コアレスファイバ40,50,60,70、グレーデッドインデックスファイバ41,51,61,71およびシングルモードファイバ42,52,62,72を融着などの手段により一連に接続し、ファイバコリメート4〜7を作成し、これをフェルール80〜83に挿通する。次いで、各ファイバコリメート4〜7の端面を先に決定した角度に加工する。次に、端面角度α,ωのファイバコリメータ4,7に対して、非接続端40,70に誘電体多層膜としてARコート層(光学素子84A,84D)を形成する。一方、端面角度β,γのファイバコリメータ5,6に対して、非接続端50,60に誘電体多層膜としてフィルタ膜(光学素子84B,84C)を蒸着する。
このとき、ファイバコリメート4〜7は、単体としてハンドリング容易な構成となっているばかりか、フェルール80〜83に挿通されているために、よりハンドリングの容易なものとされている。そのため、ファイバコリメート4〜7の端面の加工や誘電体多層膜(光学素子84A〜84D)の形成は容易に行なうことができる。
その一方で、オフセット量D1,D2,d1,d2が先に決定した値となるように、母材に対して第1ないし第4の溝21〜24を形成すると同時に、凹部20Aを形成することによって基板2を作成する。基板2における溝21〜24の形成は、をダイシングマシンなどの公知の手段を用いて、極めて容易かつ精度良く行なうことができる。
そして、基板2の第1〜第4の溝21〜24に対して、目的とする姿勢および位置で対応するファイバコリメート4〜7を実装固定する。このとき、ファイバコリメート4とファイバコリメート6の非接続端40,60の位置を基板2の幅方向Y1,Y2に揃えるとともに、ファイバコリメート5とファイバコリメート7との非接続端50,70の位置を基板2の幅方向Y1,Y2に揃える。その一方で、ファイバコリメート4,7の非接続端40,70中心に対するファイバコリメート5,6の非接続端50,60の中心の位置を、基板2の長手方向X1,X2の距離がLとなるように位置合わせする。このとき、各ファイバコリメータ4〜7に光を通し、出力をモニターしながら各ファイバコリメート4〜7の位置合わせをするのが確実である。最後に、ファイバコリメート4〜7を覆うように基板2に対してカバー3を固定し、先に説明した分波器1が作成される。
このように、基板2の溝21〜24に対するファイバコリメート4〜7の固定は、ファイバコリメート4〜7がハンドリング容易なものとされていることから、極めて簡易な作業として行なうことができる。そして、基板2には溝21〜24が精度良く形成されていることから、基板2に対する各ファイバコリメート4〜7の位置関係を、容易かつ精度良く規定することが可能となり、分波器1を製造するに当たって、複雑かつ煩雑な光軸の調整は必要とはされない。
本発明の分波器1では、ファイバコリメート4〜7を基板2に固定するものであるため、従来において小型化を阻害する要因であった六角プリズムを省略することができる。さらに、六角プリズムを省略することにより、互いに対向位置にあるファイバコリメート4,5(6,7)間の距離Lを、六角プリズムに制約を受けることなく近づけることができる。
本発明ではさらに、複数のファイバコリメート4〜7を、基板に形成された複数の溝21〜24のうちの対応する溝21〜24に固定することとしている。この構成を採用する場合、固定すべきファイバコリメートの数に比して、基板に形成する溝の数を多く設定しても何ら問題は生じない。換言すれば、基板に形成された複数の溝のうち、全部の溝にファイバコリメートを固定してもよいし、一部の溝にファイバコリメートを固定してもよい。たとえば、図8に示したように、基板2の第1から第3の溝21〜23を利用して、3つのファイバコリメート4〜6を固定してもよいし、図示していないが、その他のレイアウトで3つのファイバコリメートを基板に固定してもよいし、2つのファイバコリメートを基板に固定してもよい。すなわち、基板に4つの溝を形成した場合には、2つの溝を利用するパターン(1×1)、3つの溝を利用するパターン(2×1)、4つの溝(全部)を利用するパターン(2×2)の3つのパターンを選択できる。したがって、本発明では、1種類の基板によって、複数種類の多芯光モジュールを製造することが可能となり、作業性および製造コスト的に有利なものとなる。
本発明の上述した実施の形態には限定されず種々に変更可能である。たとえばファイバコリメート4〜7の非接続端40A〜70Aに設ける光学素子は、目的に応じて、選択すればよく、たとえば偏光膜、アイソレータ、あるいはファラデー回転子であってよい。
[実施例]
本実施例では、先に説明した2×2の多芯光モジュール(分波器)を試作し、評価を行った。
グレーデッドインデックスファイバ4〜7として、外径125μm、コア径105μm比屈折率Δ=0.0027のものを用いた。各グレーデッドインデックスファイバ41,51,61,71は、シングルモードファイバ42,52,62,72と融着接続した後に焦点距離が700μmとなるように切断した上で、外径125μm、屈折率n1=1.46のコアレスファイバ2と融着接続した。次いで、コアレスファイバ長0.2mmの所で切断したファイバを4本用意し、それぞれのファイバを、ジルコニアセラミックからなる外径d=280μm、長さ7mmのフェルール4内に装着した上で接着固定した。
用意した4本のファイバのうち、2本については端面傾斜角α=5°に、1本については端面傾斜角γ=24.7°に、残りの1本については端面傾斜角ω=42.5°に端面を加工した。さらに、ファイバコリメータ4,7の傾斜端面に波長1290〜1580nm帯のARコート層を誘電体多層膜を蒸着により形成し、ファイバコリメータ5の傾斜端面には波長1330nm以下の光を透過する一方で1470nm以上の光を反射するフィルタ膜を蒸着により形成し、ファイバコリメータ6の傾斜端面には波長1510nm以下の光を透過する一方で1530nm以上の光を反射するフィルタ膜を蒸着により形成した。
次に、長さ18mm、幅3mm、厚さ1.5mmのジルコニア製セラミック基板を準備、角度45°、深さ200μmのV字状の溝21〜24を、間隔D1=310μm、D2=2488μm d1=48μm d2=262μmになるよう形成した。ここで事前にD1,D2>dの関係にあることを確認した。
そして、基板2の溝21に対してファイバコリメータ4を設置し、さらに間隔L=1200μmとなるように溝22にファイバコリメータ5を設置し熱硬化型接着剤にて固定した。その際、波長1310nm、出力1mWの光をファイバコリメータ4に入射させつつ、ファイバコリメータ5で出力をモニターしながら位置調整を行った。ここで、位置調整は、間隔Lとコリメータ5を光軸周りに回転させることで行なった。同様に、ファイバコリメート6,7を順次、対応する溝23,24に固定した。なお、ファイバコリメータ6の調整は、ファイバコリメータ6に1490nmの光を入射、コリメータ7の調整は、コリメータ7に1550nmの光を入射させることにより行った。
以上のようにして実装固定したコリメータアセンブリを、長さ22mm、幅4.5mm、高さ3mmの金属製ケース内に実装固定し、ファイバコリメータ4に中心波長1310nm、1490nm、1530nmを入射伝搬させることにより、ファイバコリメータ5より1310nm光を分波器出力、ファイバコリメータ6より1490nm光を分波器出力、ファイバコリメータ7より1550nm光を出力する分波器1を得た。
分波器1は、ファイバコリメータ4に中心波長1310nm、1490nm、1530nmを入射伝搬させて評価した。その結果、中心波長が1310nm光のファイバコリメータ4→5への挿入損失は0.3dB、中心波長1490nm光のファイバコリメータ5→6への挿入損失は0.5dB、中心波長1550nm光のファイバコリメータ6→7への挿入損失は0.7dB、偏光依存性は0.3dB以内、反射減衰量−55dB以下であった。
一方、比較として、従来と同等な光分岐・結合器を試作して評価したが、そのサイズは長さ50mm、幅及び高さ5mm程度あり、挿入損失1dB程度、反射減衰量が45dB程度であった。すなわち、本発明の多芯光モジュール(分波器)は、長さで1/2以下、体積で1/4以下となり、従来に比較して小型・集積化が図られ、光学特性も優れていることが示された。