JP2007095469A - チップ型ヒューズ素子及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 例えば低コストな印刷法を利用して可溶体を形成したチップ型ヒューズ素子において、可溶体の高抵抗化を図るとともに、可溶体の抵抗値制御を容易なものとする。
【解決手段】 チップ型ヒューズ素子において、多孔質構造の可溶体を備える。金属粒子を含む可溶体ペーストを印刷し、酸化性雰囲気中で前記金属粒子を焼結させることにより可溶体を形成する際、前記焼結により揮発する揮発性粒子を含む可溶体ペーストを用いる。揮発性粒子としてグラファイト粒子を用いることが好ましい。金属粒子としてAg粒子、Au粒子から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
【選択図】 図1
【解決手段】 チップ型ヒューズ素子において、多孔質構造の可溶体を備える。金属粒子を含む可溶体ペーストを印刷し、酸化性雰囲気中で前記金属粒子を焼結させることにより可溶体を形成する際、前記焼結により揮発する揮発性粒子を含む可溶体ペーストを用いる。揮発性粒子としてグラファイト粒子を用いることが好ましい。金属粒子としてAg粒子、Au粒子から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
【選択図】 図1
Description
本発明は新規な可溶体を備えるチップ型ヒューズ素子及びその製造方法に関する。
チップ型ヒューズ素子としては、絶縁基板上に金属被膜等からなる幅狭の可溶体を形成し、可溶体の両端に端子電極を接続した構造のものが知られている。このような可溶体を形成する方法としては、蒸着やスパッタ等の薄膜法を利用した方法(例えば特許文献1、特許文献2等参照)がある。この方法では、薄膜法で薄い可溶体を形成した後、リソグラフィー技術で細線化を図ることができ、可溶体の高抵抗化が容易であるという利点がある。しかしながら、蒸着やスパッタ等の薄膜法には真空技術が必要となり、大規模な製造設備等を要するため、チップ型ヒューズ素子のコストの大幅な上昇を招くという問題がある。
そこで近年、印刷法が大きな注目を集めている。例えば特許文献3等においては、Ag系のペーストのスクリーン印刷による厚膜技術を用いて可溶体を形成することが記載されている。印刷法は蒸着やスパッタで必要とされるような大規模な製造設備が不要であることから、チップ型ヒューズ素子の製造コストを大幅に低減可能な方法として期待されている。
特開平6−176680号公報
特開2003−173728号公報
特開2002−140975号公報
しかしながら、印刷法で可溶体を形成したチップ型ヒューズ素子においては、可溶体の細線化及び薄膜化に限界があるため、前記薄膜法(蒸着、スパッタ)で形成される可溶体と比較して可溶体の断面積が大きくなる傾向にある。そのため、印刷法で形成される可溶体の抵抗値は低いものとなり、結果として可溶体の溶断に必要なジュール熱を確保できず、良好な溶断特性が得られないという問題がある。
また、チップ型ヒューズ素子の製造者は、ユーザーの用途に合わせて溶断される電流値(定格電流)の異なるチップ型ヒューズ素子を揃えておく必要がある。一般に定格電流は可溶体の抵抗値で決まることから、様々な抵抗値を示すチップ型ヒューズ素子を作製するに際しては可溶体の抵抗値を容易に制御する方法が重要となる。
そこで本発明はこのような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、例えば低コストな印刷法を利用して可溶体を形成したチップ型ヒューズ素子において、可溶体の高抵抗化を図るとともに、可溶体の抵抗値制御を容易なものとすることが可能なチップ型ヒューズ素子及びその製造方法を提供することを目的とする。
前述の目的を達成するために、本発明に係るチップ型ヒューズ素子は、多孔質構造の可溶体を備えることを特徴とする。
以上のようなチップ型ヒューズ素子の可溶体においては、可溶体中に多数の空隙を存在させて、単位体積あたりの可溶体材料の占める割合を減少させている。このため、従来型の緻密な可溶体に比べて可溶体の実効的な断面積が減少することになり、可溶体の実際の断面積が太い場合であっても高抵抗値を示す可溶体が実現される。また、以上のようなチップ型ヒューズ素子においては、金属と空隙との比率を変更することで可溶体の抵抗値を任意に制御できるため、様々な規格(定格電流)のチップ型ヒューズ素子が実現される。
また、本発明に係るチップ型ヒューズ素子の製造方法は、金属粒子を含む可溶体ペーストを印刷し、酸化性雰囲気中で前記金属粒子を焼結させることにより可溶体を形成するチップ型ヒューズ素子の製造方法であって、前記可溶体ペーストは前記焼結により揮発する揮発性粒子を含むことを特徴とする。さらに、本発明に係るチップ型ヒューズ素子の製造方法は、金属粒子を含む可溶体ペーストを印刷し、酸化性雰囲気中で熱処理した後、還元性雰囲気中で前記金属粒子を焼結させることにより可溶体を形成するチップ型ヒューズ素子の製造方法であって、前記可溶体ペーストは前記熱処理により揮発する揮発性粒子を含むことを特徴とする。
多孔質構造を形成するための揮発性粒子を可溶体ペーストに含ませることで、多孔質構造を有し、高抵抗値を示す可溶体の形成が実現される。また、可溶体ペーストにおける各種粒子の配合比率を変えることで、可溶体における金属と空隙との存在比を制御し、結果として可溶体の抵抗値を制御することができる。したがって、材料の制約が大きい印刷法を用いた場合であっても、所望の抵抗値を有する可溶体が容易に形成される。さらには、印刷法を利用するため、印刷法の利点である低コスト化が実現される。
本発明によれば、細線化及び薄膜化が困難な印刷法を利用しながらも可溶体の高抵抗化を実現し、溶断特性に優れたチップ型ヒューズ素子を提供することが可能である。また、本発明によれば、可溶体における金属と空隙の比率を制御することで可溶体の抵抗値を制御できるため、チップ型ヒューズ素子の設計自由度が向上し、多様な定格電流を有するチップ型ヒューズ素子を提供することができる。
以下、本発明を適用したチップ型ヒューズ素子及びその製造方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。
本発明を適用したチップ型ヒューズ素子は、図1(a),(b)に示すように、チップ状の基板1と、基板1上に形成された可溶体2とを基本的に備えるものである。ここで、可溶体2は、印刷法を利用して厚膜に形成されても、スパッタ法等を利用して薄膜に形成されても構わないが、スパッタ法等の薄膜法を利用する場合に比較して製造コストの大幅な削減が可能であり、低価格なチップ型ヒューズ素子を提供し得る点において、印刷法は好適な技術である。したがって、以下では主に、印刷法により形成された可溶体2を有するチップ型ヒューズ素子を想定して説明する。
基板1は、可溶体2の支持体となるものであり、例えば角形状に形成されている。基板1を構成する材料としては限定されるものではなく、この種のチップ型ヒューズ素子に用いられる材料をいずれも使用可能である。基板1を構成する材料としては、例えば、低い熱伝導性を示す絶縁材料を用いることができ、より具体的には、Al2O3、ガラスセラミック等の絶縁材料を用いることができる。
可溶体2は、例えば定格電流の2倍を超えるような過大な電流が流れたときに溶断することにより、チップ型ヒューズ素子が組み込まれた電気回路等の保護を図るものである。本発明のチップ型ヒューズ素子においては、可溶体2が多孔質構造である点に特徴の1つがある。詳細は後述するが、可溶体2の多孔質構造は、例えば可溶体ペーストに所定の大きさを有する揮発性粒子を含ませるとともに、可溶体ペーストの焼成時に揮発性粒子を揮発させることにより形成したものである。
なお、本発明における「多孔質構造」とは、可溶体断面の組織写真を画像解析ソフトによって解析し、空隙部分と可溶体金属部分との面積比率を算出したとき、可溶体金属の比率が90%以下である場合を指すこととする。例えば印刷法により可溶体を形成する場合、金属粒子が焼結する過程で金属粒子間の空隙が減少することにより緻密化するが、前記空隙は完全には消滅しない。このため、従来型の可溶体においても極めて微細な空間が無数に残存することになる。しかしながら、可溶体の高抵抗化を考えた場合、このような必然的に生じる微細空間では無意味である。本発明では、例えば後述するような揮発性粒子を用いること等により、可溶体金属の比率が90%以下となるような比較的大量の空隙を積極的に形成することが重要となる。
可溶体2を構成する金属としては、例えばAg、Au、Pt、Cu等が挙げられる。中でも、特殊な制御を必要とすることなく大気中焼成が可能となるため、Ag、Au、Ptから選ばれる1種が好ましく、中でもAg、Auが好ましく、特にAgが好ましい。
可溶体2の平面形状は、例えば図1に示すような、電極3間に幅狭の狭隘部を持つ形状とされるが、これに限らず様々な形状とすることができる。
可溶体2の両端には、外部電極となる端子電極3が接続される。端子電極3の構成は特に限定されるものではなく、例えばAg、Pt、Pd等の良導電材料を含む厚膜、前記良導電材料のめっき膜、前記良導電材料を含む樹脂等から構成される。
また、チップ型ヒューズ素子は、一般に、可溶体2を被覆する保護層4を備える。保護層4は、可溶体2に所定の電流値を超える過電流が流れることによって可溶体2が溶断した際、溶断した可溶体2を確実に絶縁するとともに、可溶体2を構成する材料の飛散を防止するものである。保護層4としては、例えばZnO系ガラス、CaO系ガラス、Bi2O3系ガラス、SrO系ガラス等のガラス、シリコーン樹脂等を用いることができる。
さらに、図2に示すように、必要に応じて基板1と可溶体2との間に蓄熱層5を配置してもよい。蓄熱層5を構成する材料としては特に限定されないが、低い熱伝導性を示す材料を用いることが好ましく、例えばガラス等を挙げることができる。蓄熱層は、多孔質構造とすることもできる。
以上のようなチップ型ヒューズ素子においては、可溶体2が多孔質構造であるため、実効的な断面積が小さいものとされる。したがって、可溶体2の実際の断面積が太い場合であっても可溶体2の高抵抗化を実現することができる。結果として、溶断時間の短縮や低電流溶断が達成され、溶断特性の向上を図ることができる。
また、可溶体2における金属と空隙との比率を変えることで、可溶体の抵抗値を所望の値に制御することができる。このため、チップ型ヒューズ素子において所望の抵抗値を得ることができる。
以上のようなチップ型ヒューズ素子の製造方法は、可溶体がAg、Au、Pt等の比較的酸化し難い金属で構成される場合と、Cu等の比較的酸化し易い金属で構成される場合とで大きく分けられる。以下ではまず、Ag、Au、Pt等から選ばれる少なくとも1種を可溶体金属として用いたチップ型ヒューズ素子の製造方法について説明する。
先ず、基板1上に、可溶体ペーストを例えばスクリーン印刷等により所定形状に印刷する。ここで用いる可溶体ペーストは、少なくとも金属粒子と揮発性成粒子とを含み、これが有機ビヒクルと混合されて調製される。
可溶体ペーストに含まれる金属粒子としては、例えば、Ag、Au、Pt等から選ばれる少なくとも1種を含む金属粒子が好ましい。Ag、Au及びPtは、特殊な制御を必要とすることなく大気中で焼成可能であるため、印刷法により可溶体2を形成するにあたって好適な材料である。中でもAg、Auが好ましく、特にAgを用いることが好ましい。
揮発性粒子とは、揮発することによって先に定義した多孔質構造を形成可能な粒子のことをいう。揮発性粒子としては、前記金属粒子が焼結する温度付近で揮発する材料である炭素粒子を用いることができる。特に、前記金属粒子を焼結させるための焼結温度付近で揮発する炭素粒子であることが好ましい。具体的には、焼結温度をT1℃としたとき、下記式(1)の関係を満たすような揮発温度Tcを持つ炭素粒子を用いることが好ましい。揮発性粒子の揮発温度Tcが焼結温度T1−200℃未満であると多孔質構造が形成されないおそれがあり、逆に揮発性粒子の揮発温度Tcが焼結温度T1以上である場合、揮発性粒子の揮発が進まないおそれがある。式(1)の関係を満たす炭素粒子としては例えばグラファイト粒子等が挙げられる。
T1−200<Tc<T1 …式(1)
有機ビヒクルは、各種粉末をペースト化させる役割を有し、この種のペーストに用いられるものがいずれも使用可能である。有機ビヒクルは、バインダを有機溶剤中に溶解することによって調製されるものである。バインダとしては、特に限定されず、例えば、エチルセルロース、ポリビニルブチラール等、各種バインダから適宜選択すればよい。有機溶剤も限定されず、テルピネオール、ブチルカルビトール、アセトン、トルエン等、各種有機溶剤から適宜選択すればよい。さらに、可溶体ペーストの物性を調節するために、分散剤等の各種添加剤を加えてもよい。
前記有機ビヒクルは、熱処理によって揮発する材料であるが、先に定義した多孔質構造を形成できない。したがって、有機ビヒクルは本発明でいう揮発性粒子には含めないこととする。
可溶体ペーストを印刷した後、焼成する。これにより、可溶体ペースト中のバインダを除去し、可溶体ペースト中の金属粒子を焼結させる。また、前記焼成の際に可溶体ペースト中の揮発性粒子を揮発させることにより空隙を形成する。したがって、金属中に多数の空隙が存在した多孔質構造の可溶体2が形成される。
可溶体ペースト中の有機バインダ及び揮発性粒子を揮発させる必要があるため、焼成時の雰囲気は酸化性雰囲気とし、具体的には大気雰囲気とすることができる。
次に、基板1に端子電極3を形成する。例えば端子電極3を厚膜で形成するには、例えばAg、Pt、Pd等を含有する導電ペーストをディッピングし、焼成すればよい。なお、端子電極3は、可溶体2の形成後に形成する場合に限らず、可溶体2を形成する前に予め形成しておいてもよい。また、端子電極3の焼成と可溶体2の焼成とを同時に行ってもよい。
次に、形成した可溶体2を被覆するように保護膜4を形成する。以上のようにして、図1に示す構造のチップ型ヒューズ素子が作製される。
例えばAg等の金属粒子を含む従来型の可溶体ペーストを用いて印刷法により可溶体を形成する場合、可溶体の線幅や膜厚等を小さくする等のいわゆる高精細化に限界があるため、可溶体の高抵抗化は難しい。これに対し、本発明では例えば金属粒子の一部を揮発性粒子に置き換え焼成することで、多孔質構造の可溶体2を形成している。可溶体2を多孔質構造とすることにより可溶体2として実際に機能する金属部分の体積を減少させ、可溶体2の実効的な断面積を減少させている。このため、高精細化が困難な印刷法を用いた場合であっても高抵抗値を有する可溶体2を形成することができる。また、印刷法の利点である低コスト化を実現することができる。
また、以上のようなチップ型ヒューズ素子の製造方法においては、可溶体ペーストに含ませる金属粒子と揮発性粒子との配合比率を変えることによって、得られる可溶体2の抵抗値を任意の値に容易に設計することができる。可溶体2の抵抗値の設計が容易となるため、印刷法を利用した場合であっても多様な抵抗値のチップ型ヒューズ素子を容易に作製することができる。
従来は可溶体の寸法等を変更することにより可溶体の抵抗値を制御していたが、本発明によれば可溶体ペーストにおける揮発性粒子の添加量を変化させることによっても抵抗値制御が可能であるため、チップ型ヒューズ素子の設計自由度を高めることができる。
以下、Cuを可溶体金属として用いたチップ型ヒューズ素子の製造方法について説明する。なお、前述の製造方法と重複する部分についての詳細な説明は省略する。
先ず、可溶体ペーストを調製する。ここで用いる可溶体ペーストは、少なくとも金属粒子としてのCu粒子と揮発性粒子とを含み、これが有機ビヒクルと混合されて調製される。ここで、揮発性粒子としては、金属としてAg、Au、Pt等を用いる場合と同様のものを使用可能である。また、有機ビヒクルも同様である。
可溶体ペーストを例えばスクリーン印刷等により所定形状に印刷した後、可溶体ペーストを焼成する。焼成に際しては、Ag等を可溶体として含む場合と同様に、可溶体ペースト中のバインダを除去し、金属を焼結させるとともに、可溶体ペースト中の揮発性粒子を揮発させる必要がある。ただし、前述のAg等の場合と同様に酸化性雰囲気中で焼成を行うと、Cuが酸化されるおそれがある。このため、可溶体金属としてCuを用いる場合、以下に説明するように、印刷した可溶体ペーストを酸化性雰囲気中で熱処理し、その後、還元性雰囲気中でCuを焼結させることとする。
すなわち、先ず、印刷後の可溶体ペーストを酸化性雰囲気中で熱処理する。ここでの熱処理は、可溶体ペースト中のバインダを除去するための脱バインダ処理と、揮発性粒子を揮発させるための処理とを兼ねるものである。したがって、熱処理温度は、揮発性粒子の揮発温度Tc以上とする。また、可溶体ペースト中のバインダと、例えば炭素粒子等の揮発性粒子を除去する必要があるため、熱処理雰囲気は酸化性雰囲気とし、具体的には大気雰囲気とすればよい。前記熱処理により、可溶体ペースト中のバインダを除去するとともに、揮発性粒子を揮発させ、可溶体形状のCu酸化物中に空隙を形成する。
次に、Cuを焼結させる。先の熱処理において形成された空隙が焼結後に残存することにより、多孔質構造のCuからなる可溶体が形成される。焼結の際の雰囲気は、前記熱処理よって酸化したCuを還元させるため、例えばH2を含む還元雰囲気とする。
その後、端子電極3や保護膜4等を形成する。以上の工程を経ることより、酸化し易い金属であるCuを可溶体金属とし、多孔質構造の可溶体2を備えたチップ型ヒューズ素子が作製される。
なお、以上の説明では、印刷法を用いるとともに揮発性粒子を揮発させることによって多孔質構造の可溶体を形成する場合を例に挙げたが、本発明のチップ型ヒューズ素子はこれらの方法に限定されるものではない。
例えば、印刷法や、スパッタ、蒸着、めっき等の薄膜形成法等の任意の方法で合金膜を基板上に形成した後、酸性溶液に浸漬することによって、多孔質構造の可溶体を形成することができる。酸に対する溶解度が金属によって異なるため、適当な酸性溶液を選択することにより、合金膜を構成する一部の金属を溶解させて多孔質構造を得ることができる。
以下、本発明を適用した具体的な実施例について、実験結果に基づいて説明する。なお、本発明が以下の実施例に限定されるものでないことは言うまでもない。
(実施例1)
先ず、可溶体ペーストを作製した。金属Ag粒子(平均粒径0.1μm)、グラファイト粒子(平均粒径1μm)及び有機ビヒクルを各組成となるように秤量し、3本ロールミルで混練し、可溶体ペーストを得た。金属Ag粒子とグラファイト粒子との配合比率(質量%)は、表1の記載に従った。有機ビヒクルは、バインダとしてエチルセルロースと、有機溶剤としてブチルカルビトールとを含むものである。なお、金属Ag粒子及びグラファイト粒子と有機ビヒクルとの配合比は、得られた抵抗体ペーストがスクリーン印刷に適した粘度となるように設定した。
先ず、可溶体ペーストを作製した。金属Ag粒子(平均粒径0.1μm)、グラファイト粒子(平均粒径1μm)及び有機ビヒクルを各組成となるように秤量し、3本ロールミルで混練し、可溶体ペーストを得た。金属Ag粒子とグラファイト粒子との配合比率(質量%)は、表1の記載に従った。有機ビヒクルは、バインダとしてエチルセルロースと、有機溶剤としてブチルカルビトールとを含むものである。なお、金属Ag粒子及びグラファイト粒子と有機ビヒクルとの配合比は、得られた抵抗体ペーストがスクリーン印刷に適した粘度となるように設定した。
次に、印刷工程において、基板上に前記可溶体ペーストを図1に示す形状にスクリーン印刷して乾燥させた。可溶体ペーストを印刷する際には、焼成後の可溶体の膜厚:20μm、幅狭部の幅:100μm、長さ:2.5mmとなるように塗布した。基板としては、アルミナを用いた。その後、この基板をベルト炉に入れ、大気中でペースト中のバインダを除去し、焼成を行った。焼成時の熱処理温度は900℃、その温度での保持時間は5分間とした。この焼成により、多孔質構造の可溶体が得られた。
次に、可溶体の両端にAg熱硬化性樹脂をディッピングした後、熱硬化させて外部電極を形成し、チップ型ヒューズ素子を得た。
得られた各サンプルのチップ型ヒューズ素子につき、抵抗値及び溶断時間を測定した。溶断時間は、可溶体に4Aの電流を流し始めてから可溶体が切断されるまでの時間とした。結果を表1に示す。
表1の結果から明らかなように、可溶体ペーストにグラファイト粒子を含有させ、可溶体を多孔質構造とすることによって、可溶体の高抵抗化が実現され、溶断時間が短縮していることがわかる。また、Ag粒子とグラファイト粒子との含有比率を88:12〜96:4(質量%)の範囲内とすることによって特に良好な結果が得られている。
(実施例2)
本実施例では、可溶体金属としてCuを用いて検討を行った。
先ず、可溶体ペーストを作製した。金属Cu粒子(平均粒径1μm)、グラファイト粒子(平均粒径1μm)及び有機ビヒクルを各組成となるように秤量し、3本ロールミルで混練し、可溶体ペーストを得た。金属Cu粒子とグラファイト粒子との配合比率(質量%)は、表2の記載に従った。有機ビヒクルは、バインダとしてエチルセルロースと、有機溶剤としてブチルカルビトールとを含むものである。なお、金属Cu粒子及びグラファイト粒子と有機ビヒクルとの配合比は、得られた抵抗体ペーストがスクリーン印刷に適した粘度となるように設定した。
本実施例では、可溶体金属としてCuを用いて検討を行った。
先ず、可溶体ペーストを作製した。金属Cu粒子(平均粒径1μm)、グラファイト粒子(平均粒径1μm)及び有機ビヒクルを各組成となるように秤量し、3本ロールミルで混練し、可溶体ペーストを得た。金属Cu粒子とグラファイト粒子との配合比率(質量%)は、表2の記載に従った。有機ビヒクルは、バインダとしてエチルセルロースと、有機溶剤としてブチルカルビトールとを含むものである。なお、金属Cu粒子及びグラファイト粒子と有機ビヒクルとの配合比は、得られた抵抗体ペーストがスクリーン印刷に適した粘度となるように設定した。
次に、印刷工程において、基板上に前記可溶体ペーストを図1に示す形状にスクリーン印刷して乾燥させた。可溶体ペーストを印刷する際には、焼成後の可溶体の膜厚:20μm、幅狭部の幅:100μm、長さ:2.5mmとなるように塗布した。基板としては、アルミナを用いた。その後、この基板をベルト炉に入れ、大気雰囲気中800℃で熱処理を施した。この熱処理により、グラファイト粒子が揮発し、Cu酸化物中に空隙が形成された。
次に、前記熱処理により酸化されたCuを還元雰囲気中で熱処理して還元するとともに、Cuを焼結させた。具体的には、N2−4%H2雰囲気中、400℃で30分間保持し酸化されたCuを還元させた。引続き、N2雰囲気中、900℃で5分間保持し、Cuを焼結させた。これにより、多孔質構造のCu可溶体が得られた。
次に、可溶体の両端にAg熱硬化性樹脂をディッピングした後、熱硬化させて外部電極を形成し、チップ型ヒューズ素子を得た。
得られた各サンプルのチップ型ヒューズ素子につき、抵抗値及び溶断時間を測定した。溶断時間は、可溶体に4Aの電流を流し始めてから可溶体が切断されるまでの時間とした。結果を表2に示す。
表2の結果から明らかなように、可溶体金属としてCuを用いた場合も、実験1の結果と同様に、可溶体ペーストにグラファイト粒子を含有させ、可溶体を多孔質構造とすることによって、可溶体の高抵抗化が実現され、溶断時間が短縮していることがわかる。
1 基板、2 可溶体、3 電極、4 保護層、5 蓄熱層
Claims (13)
- 多孔質構造の可溶体を備えることを特徴とするチップ型ヒューズ素子。
- 前記可溶体はAg、Auから選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1記載のチップ型ヒューズ素子。
- 前記可溶体は印刷法により形成されたものであることを特徴とする請求項1又は2記載のチップ型ヒューズ素子。
- 金属粒子を含む可溶体ペーストを印刷し、酸化性雰囲気中で前記金属粒子を焼結させることにより可溶体を形成するチップ型ヒューズ素子の製造方法であって、
前記可溶体ペーストは前記焼結により揮発する揮発性粒子を含むことを特徴とするチップ型ヒューズ素子の製造方法。 - 前記揮発性粒子として炭素粒子を用いることを特徴とする請求項4記載のチップ型ヒューズ素子の製造方法。
- 前記炭素粒子の揮発温度をTc℃とし、前記焼結の温度をT1℃としたとき、下記式(1)の関係を満たす炭素粒子を用いることを特徴とする請求項5記載のチップ型ヒューズ素子の製造方法。
T1−200<Tc<T1 …式(1) - 前記炭素粒子としてグラファイト粒子を用いることを特徴とする請求項6記載のチップ型ヒューズ素子の製造方法。
- 前記金属粒子としてAg粒子、Au粒子から選ばれる少なくとも1種を用いることを特徴とする請求項4〜7のいずれか1項記載のチップ型ヒューズ素子の製造方法。
- 金属粒子を含む可溶体ペーストを印刷し、酸化性雰囲気中で熱処理した後、還元性雰囲気中で前記金属粒子を焼結させることにより可溶体を形成するチップ型ヒューズ素子の製造方法であって、
前記可溶体ペーストは前記熱処理により揮発する揮発性粒子を含むことを特徴とするチップ型ヒューズ素子の製造方法。 - 前記揮発性粒子として炭素粒子を用いることを特徴とする請求項9記載のチップ型ヒューズ素子の製造方法。
- 前記炭素粒子の揮発温度をTc℃とし、前記熱処理の温度をT1℃としたとき、下記式(1)の関係を満たす炭素粒子を用いることを特徴とする請求項10記載のチップ型ヒューズ素子の製造方法。
T1−200<Tc<T1 …式(1) - 前記炭素粒子としてグラファイト粒子を用いることを特徴とする請求項11記載のチップ型ヒューズ素子の製造方法。
- 前記金属粒子としてCu粒子を用いることを特徴とする請求項9〜12のいずれか1項記載のチップ型ヒューズ素子の製造方法。
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