JP2011192605A - ヒューズ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明のヒューズは、導体と、当該導体の電極となる端部以外の表面全体をコーティングする絶縁体膜と、からなるヒューズエレメントにより構成されている。
【選択図】図1
Description
また、このSPDにサージ電流耐量を超えるサージ電流が流れたり、経年変化によって短絡の故障が起きた場合、電源系に直列に介挿されているブレーカで電子機器への電力供給が遮断され、機器が停止してしまうことがあった。
このため、SPDが短絡故障した場合、故障したSPDを電源線路から切り離すための遮断器(SPD分離器)としてヒューズ(例えば、特許文献1参照)が、SPDに対して直列に接続されている。
このため、雷サージ波形から求めたI2tよりも大きな溶断I2tを有するヒューズを用いた場合、保護対象装置である電子機器に対する入力ブレーカ(ブレーカ)よりも定格電流が大きくなる場合があった。
したがって、SPDに短絡故障が発生し、ヒューズ及び短絡したSPDを介して流れる電流が入力ブレーカの定格電流より大きい場合、入力ブレーカが先に遮断することにより、保護協調を取れなくなる場合があった。
ここで、ヒューズの大電流遮断時(10ms以内)での遮断において、ヒューズエレメントは、ヒューズエレメントから消弧砂あるいは高アルミナセラミックス焼結体への熱移動は点接触による熱伝達のため伝わり難く、断熱状態と同様となり、発熱が進むこととなる。
このため、短絡電流の遮断特性は、ヒューズが遮断するまでに、ヒューズに流れる電流の二乗時間積分値(溶断I2t)で評価されている。以下に、ヒューズに流れる電流の二乗時間積分値を求める式(1)を示す。
一般的に、ヒューズエレメントは導電性の金属だけで構成されており、導体の断面積は、ヒューズの定格電流増大に伴い大きくなる。
そして、ヒューズエレメントの断面積が大きくなると、体積が増加することにより、ヒューズエレメントの熱容量が増加する。この熱容量の増加により、ヒューズの溶断I2tは大きくなる。
そのため、電力用ヒューズからサージ電流耐量(サージI2t)の大きなヒューズを選定すると、ヒューズの定格電流が大きく(溶断I2tが大きく)なり、SPDが保護する対象装置の入力ブレーカの定格電流よりも大きくなる。
したがって、SPDが劣化し短絡故障した場合、SPD分離器であるヒューズよりも保護対象装置の入力ブレーカが先に遮断動作してしまい、機器に電源を供給する際の障害となる問題があった。
この結果、ヒューズの定格電流を大きく変化させずに、サージ電流耐量(溶断I2t)を増加させることができるため、SPDが保護する対象装置の入力ブレーカの定格電流よりも小さな定格電流であり、かつ必要なサージ電流耐量を有するヒューズを提供することが可能となる。
以下、図を用いて本発明の一実施形態によるヒューズの説明を行う。図1は本発明の一実施形態によるヒューズ(SPD分離器)の構成例を示す概念図である。本実施形態は、SPD故障時にこの故障したSPDを電源系から切り離す分離器として用いるものである。
この図1(b)に示すように、本実施形態のヒューズはヒューズエレメントGから構成され、このヒューズエレメントGは、可溶体である導体Hと(図1(a))と、可溶体である導体Hの電極面D1、D2以外の全ての外周面(被密着面)に密着(全体の面で接触)させた熱伝導性の良い絶縁性物質からなる絶縁体膜Cとから構成されている。図1(c)に示すように、電極面D1及びD2により、SPDと直列に接続され、電源系と接地点との間に介挿されている。ここで、導体Hは、図1(a)に示すように直方体形状だけでなく、円柱形状でも良い。円柱の場合、円柱の双方の底面を電極とする。
ここで、導体Hは銅などの金属が用いられ、絶縁体膜Cの絶縁性物質としては二酸化珪素(SiO2)、アルミナ系の酸化アルミニウム(Al2O2)、チタニア系の酸化チタン(TiO2)、ジルコニア系の(ZrO2)、タングステンカーバイト(WC)などを用いることができる。
以下、被密着面に密着された絶縁性物質を絶縁体膜Cとして説明する。この絶縁体膜Cは、例えば、上記被密着面に対して、絶縁性物質をコーティングにより密着させることで形成している。
すなわち、導体Hの被密着面(電極形成面以外の表面全体)に絶縁体膜Cを形成することで、雷サージにより発生する過渡的な電流変動により発生する熱量を、導体Hから絶縁体膜Cに対し、熱放射や熱伝達に比較して応答時間の短い熱伝導により放熱が可能となる。
これにより、本実施形態においては、導体Hの雷サージなどの過渡的なサージ電流による温度上昇を低減することができ、同じサージ電流耐量をヒューズが備える場合、導体Hの断面積を従来のヒューズに比較して小さく設定しても高いサージ電流耐量特性を得ることができる。すなわち定格電流を下げることが可能である。
この結果、本実施形態によれば、SPDが短絡故障した際に、この故障電流により迅速かつ確実に故障したSPDを電源から遮断するとともに、ヒューズの溶断I2tを大きく設定することができ、SPDが保護する対象装置の入力ブレーカの定格電流よりも小さく設定することが可能となる。
そのため、放熱に必要な絶縁体膜Cの厚さの条件は、以下の(2)式により設定される。
導体Hに生じるジュール熱と、導体Hの外周面から放熱される表面放射熱量、及び表面放射熱量の均衡条件から、以下の(3)式により過電流によるヒューズの最大温度を算出する。そして、過電流によるヒューズの最大温度を、絶縁体膜Cを形成した場合に、絶縁体膜Cのない場合に対して、20%以上低下しないよう、絶縁体膜Cの厚さを設定する。
すなわち、ヒューズは大別してA種及びB種ヒューズとが存在する。定格電流に対して、A種は1.35倍、B種は1.6倍の電流が流れると遮断するよう規格(JIS C 8352)により決められている。したがって、定格電流の変更を行わずに、A種ヒューズをB種ヒューズに変更することで、サージ電流耐量を向上させるには可溶断電流の大きさを1.18(1.6/1.35)倍以内とする必要がある。そのためには、過電流によるヒューズの最大温度を、絶縁体膜Cを形成した場合に、絶縁体膜Cのない場合に対して、20%以上低下させない必要がある。
図2は、断面積の等しい導体Hへ、導体Hの断面積当たり等しいサージ電流(ピーク電流7500kA/cm2、8/20μs)印加した場合について、縦軸に導体Hの最大温度を、横軸にサージ印加開始からの経過時間を示しており、従来のヒューズ(絶縁体膜無し)と本実施形態のヒューズ(新発明ヒューズにおけるヒューズエレメントG:導体Hに100μmの厚さの絶縁体膜Cをコーティング)とにおける導体Hの最大温度の変化を示している。導体Hの断面は正方形であり、その断面積は10000(=100×100)μm2である。
この図2から解るように、導体Hに対して絶縁体膜Cをコーティングすることにより、導体Hのサージ電流による発熱による最大温度を低減させることができる。
この図3から解るように、絶縁体膜C内部断面の温度勾配(温度境界層)は、導体H外周面に接した位置から、15μmの距離まで生じている。このため、絶縁体膜CがSiO2の場合、導体Hの被密着面に対し、絶縁体膜Cをコーティングする厚さは、15μm、あるいは15μm以下とすることにより、導体Hの最大温度を効果的に低減させることができる。すなわち、本実施形態においては、絶縁体膜Cの厚さは、放熱特性を考慮し、温度勾配の生じている距離あるいはそれ以下となる距離にて設定される。
図4から解るように、導体Hに絶縁体膜Cをコーティングすることにより、導体H及び絶縁体膜Cを含む全体の断面積が増大、すなわち放熱面積が大きくなることにより、ヒューズの放熱量が増加し、最大温度が低下することがわかる。この最大温度の低下により、サージ電流耐量の増加のみでなく、同時に過電流の定格電流を増加させることになる。
このため、すでに説明したように、絶縁体膜Cをコーティングしていない場合に比較して、コーティングした場合の最大温度の低下を20%以内とするため、図5の結果から絶縁体膜Cの厚さを10μm以内とする必要があることが解る。
この図5から解るように、絶縁体膜Cがコーティングされ、かつ導体Hの断面積が小さくなるほど、導体Hから絶縁体膜Cへ放熱される割合が増加し、導体Hの温度上昇が抑制され、最大温度が低下することが解る。
また、同一のサージのヒューズでは、ヒューズエレメントの導体断面積を従来のヒューズに対して低下させることが可能となったため、本実施形態によれば、大きなサージ電流耐量と小さな定格電流を併せ持つヒューズを実現することができる。
この図から解るように、サージ電流耐量を増加させようとした場合、断面積が10000μm2以上では絶縁体膜をコーティングしない場合とほとんど変わらないと考えると、本実施形態においては、断面積が10000μm2の導体Hの最大温度の80%以下となるよう、導体Hの断面積を400μm2と小さくした。
しかしながら、SPDが短絡故障した場合にSPD分離器として動作するための、過電流を規定する定格電流も増大するため、絶縁体膜Cの厚さが(2)式及び(3)式の条件を満足させる厚さとする必要はある。
つまり、導体全体の断面積を変化させずに、複数本のヒューズエレメントGに分割することにより、より絶縁体膜Cが導体Hの発熱量を吸収することができ、サージ電流耐量が増加し、定格電流を低下させる方向に、(2)式及び(3)式の条件を満足させつつ、効果的に絶縁体膜Cの厚さを最適化することができる。
また、本実施形態によれば、上記絶縁体膜Cの厚みを(2)式の非定常熱解析、及び過電流によるジュール熱と熱伝達、放射による放熱の均衡条件から(3)式を用いた算出法を用いることにより、ヒューズの定格電流をさほど増加させずに、サージ電流耐量の向上を可能とする。
上記貫通口Pは、図8に示すように、貫通方向に対して垂直な面における断面が直径Lの穴が電極D1から電極D2に向かって(電流の流れる経路方向に対して平行に)形成されている。また、この穴は断面が各辺の長さがLの正方形として形成しても良い。
また、貫通口Pの貫通方向に対して垂直な面における断面が円の場合、この貫通口Pの半径であるL/2を、すでに説明した条件に対応して設定した絶縁体膜Cの厚さと同様の数値とし、貫通口P内に絶縁体膜Cを充填する。
また、貫通方向に対して垂直な面における断面が正方形の場合、一辺の長さLの半分であるL/2を、すでに説明した条件に対応して設定した絶縁体膜Cの厚さと同様の数値とし、貫通口P内に絶縁体膜Cを充填する。
上述した導体Hに貫通口Pが形成されている場合、また導体Hが発泡金属である場合においても、電極には絶縁体膜Cを形成しない。
また、本実施形態によれば、上記のように形成したヒューズをSPD分離器として用いることにより、導体Hの導体断面積を変化させず、溶断I2tの値を増加させ、サージ電流耐量を増加させることが可能となり、従来のようにヒューズにサージ電流耐量を持たせることで、入力ブレーカよりヒューズの定格電流が大きくなることを防止することができる。
D1,D2…電極面
G…ヒューズエレメント
H…導体
P…貫通口
Claims (5)
- 導体と、
当該導体の電極となる端部以外の表面全体をコーティングする絶縁体膜と
からなるヒューズエレメントにより構成されていることを特徴とするヒューズ。 - 電流の流れる経路方向に対して平行な貫通口を有する導体と、
当該導体の電極となる端部以外の表面全体をコーティングする絶縁体膜と
からなるヒューズエレメントにより構成されていることを特徴とするヒューズ。 - 発泡金属からなる導体と、
当該導体の電極となる端部以外の当該導体の気孔の表面全体をコーティングする絶縁体膜と
からなるヒューズエレメントにより構成されていることを特徴とするヒューズ。 - 前記絶縁体膜の厚さが、規定されているサージ波形でサージ電流を印加した際に、前記導体の温度が最大になったとき、当該絶縁体膜に温度勾配が生じている距離以下であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のヒューズ。
- 前記絶縁体膜の厚さが、定常電流を印加した際に、当該絶縁体膜をコーティングした場合の均衡温度が、当該絶縁体膜をコーティングしない場合の均衡温度の80%以上となる厚さであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のヒューズ。
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