JP2007091978A - 熱可塑性ポリエステル樹脂組成物 - Google Patents

熱可塑性ポリエステル樹脂組成物 Download PDF

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敏之 田尻
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Abstract

【課題】 流動性、色調に優れ、且つ耐加水分解性、耐ヒートショック性を同時に向上させた、耐衝撃性に優れたポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を提供することにある。
【解決手段】 (A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対して、(B)耐衝撃改良剤0.5〜40重量部、及び(C)強化充填剤0〜150重量部を含有し、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂が(a)チタン化合物と、(b)1族金属化合物及び/または2族金属化合物とを含有し、(a)チタン化合物の含有量が、チタン原子換算で10ppm以上80ppm以下であり、(b)1族金属化合物及び/または2族金属化合物の含有量が、その金属原子換算で1ppm以上50ppm以下であることを特徴とする、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物、及びこれを用いた、樹脂成形品。
【選択図】 なし

Description

本発明は、色調、流動性、耐加水分解性、耐ヒートショック性の優れた熱可塑性ポリエステル樹脂組成物に関する。
ポリブチレンテレフタレート樹脂等の熱可塑性ポリエステル樹脂は、機械的性質、電気的性質、その他物理的・化学的特性に優れ、且つ加工性が良好であるので、エンジニアリングプラスチックとして自動車、電気・電子部品等の広汎な用途に使用されている。具体的には例えば、自動車電装イグニッションコイルや、小型モータのステータコア等の樹脂部品が挙げられる。
この様な樹脂部品は、一般的に、インサート成形方法により成形されることが多い。インサート成形方法とは、所望の樹脂部品(樹脂成形品)の補強や、アンダーカット成形を目的として部品(インサート)を樹脂成形品中に埋込む射出成形法である。この「インサート」としては、金属や金属酸化物等の無機固体部品の他、木製部品やエポキシ樹脂やシリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂部品等の有機固体部品が用いられる。
一般的にポリブチレンテレフタレートは、高温スチーム下においては加水分解を受けて分子量が低下し、機械的強度が低下し易く(低耐加水分解性)、また、高温雰囲気と低温雰囲気とに交互に晒された後の物理的特性の保持が困難(低耐ヒートショック性)であるという性質がある。
この様な性質は、特に、上述のインサート成形方法の場合に問題となる。即ち、インサート成形においては、熱膨張係数の差による樹脂とインサートとの境界付近に発生し易いクラック抑制のために、樹脂側の肉厚、金属の材質の選定を考慮することが知られている。また、インサートが回転または脱落しないよう形状を考慮する必要がある。
ポリブチレンテレフタレート樹脂をインサート成形方法に用いる際には、この様な過酷な使用環境によるクラック発生が従来から問題となっており、例えば、薄肉成形品や肉厚変化の大きい部分があるもの、そして鋭角コーナーを有する様なインサート成形品への適応が困難であり、用途や成形品の形状等が制限されていた。
更にガラス繊維等の強化充填剤を配合したポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を使用した場合には、充填剤の配向により生ずる樹脂組成物の膨脹・収縮率の異方性や、充填剤配合による樹脂の伸度が低下してしまう。その為、例えば温度変化の大きな環境下でこの様なインサート成形品を使用すると、温度変化による該成形品の割れ発生頻度が高くなってしまうという問題があった。
この様な問題を解決する為に、従来から、様々な改良方法が提案されている。例えばインサート成形品の耐ヒートショック性を改善して対応する方法が提案されている。これは、ゴム成分が金属等のインサートとの熱膨張差に追随可能であることを利用したものであり、種々のエラストマー(例えばオレフィン系エラストマーやアクリル系ゴム含有ポリブチレンテレフタレート組成物)の使用が提案されている。具体的には例えば、α−オレフィン、グリシジルメタアクリレートと酢酸ビニルからなるエポキシ基含有オレフィン系エラストマーを配合したポリブチレンテレフタレート樹脂組成物等が提案されている(例えば特許文献1参照)。
またポリブチレンテレフタレート樹脂の耐加水分解性改良を目的として、末端カルボキシル基量が少ないポリブチレンテレフタレートを使用やその製造方法が提案されている。
具体的には例えば、重合触媒としてチタン化合物とマグネシウム化合物の存在下245℃未満で溶融重合を行う方法が提案されている(例えば特許文献2参照)。
特開昭52−32045号公報 特開平8−20638号公報
しかし近年、樹脂部品に対する小型化、精密化の要求が高まるとともに、一層の肉薄化・モジュール化が進み、樹脂部品形状がより複雑化してきた。この為、樹脂部品に対する耐ヒートショック性、及び耐加水分解性の改善要求が、更に厳しくなってきた。この両方の特性を同時に満足すべく、例えば低末端カルボキシル基量のポリブチレンテレフタレート樹脂へのエポキシ基含有オレフィン系エラストマーの配合が試みられている。しかしポリブチレンテレフタレート樹脂とエポキシ基含有エラストマーとは反応性が低く、また相溶性も低い為に、この両方の特性の改善は不十分であった。
そしてこの成形品の小型化、薄肉化に対応する為には、用いる樹脂組成物の流動性も高いことが必要となり、更には、高度な意匠性も要求されてきているので、樹脂組成物の流動性、そして色調も、良好であるものの提供が望まれていた。
本発明の目的は、流動性、色調に優れ、且つ耐加水分解性、耐ヒートショック性を同時に向上させた、耐衝撃性に優れたポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく検討を開始した。そして、ポリブチレンテレフタレート樹脂に含有されている金属化合物に着目し、その種類と含有量、及び、ポリブチレンテレフタレート樹脂以外の、他の添加剤との関係について鋭意検討を行った。その結果、ポリブチレンテレフタレート樹脂として、チタン化合物および1族または2族の金属化合物を特定量含有するものを用いること、特にポリブチレンテレフタレート樹脂の重合触媒としてこれらの金属化合物を特定量用い、これらを特定量含有するポリブチレンテレフタレート樹脂を用い、そして特定量の強化充填材及び耐衝撃改良剤を配合して得られたポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が、流動性、及び色調に優れたものとなることを見出した。そしてこのポリブチレンテレフタレート樹脂を用いて得られた樹脂成形品、特にインサートを用いてインサート成形方法により得られた樹脂成形品(インサート成形品)が、耐加水分解性、及び耐ヒートショック性が同時に向上した、優れた樹脂成形品となることをも見出し、本発明を完成させた。
即ち本発明の要旨は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対して、(B)耐衝撃改良剤0.5〜40重量部、及び(C)強化充填剤0〜150重量部を含有し、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂が(a)チタン化合物と、(b)1族金属化合物及び/または2族金属化合物とを含有し、(a)チタン化合物の含有量が、チタン原子換算で10ppm以上80ppm以下であり、(b)1族金属化合物及び/または2族金属化合物の含有量が、その金属原子換算で1ppm以上50ppm以下であることを特徴とする、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物、及びこれを用いた、樹脂成形品に存する。
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は流動性に優れ、またこれを成形してなる樹脂成形品は、色調が良好で、耐加水分解性、及び耐ヒートショック性に優れるので樹脂成形品の破損などが抑制され、信頼性の高い樹脂成形品が得られる。よって、この様な樹脂部品を使用することによる最終製品の商品価値が高まり、電機・電子機器分野、自
動車分野、機械分野等多くの分野において幅広く使用することが可能となる。
以下、本発明を詳細に説明する。
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂
本発明に用いる(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂(以下、「PBT」と略記することがある。)とは、テレフタル酸単位および1,4−ブタンジオール単位がエステル結合した構造を有し、ジカルボン酸単位の50モル%以上がテレフタル酸単位から成り、ジオール成分の50モル%以上が1,4−ブタンジオール単位から成る高分子を言う。
テレフタル酸単位または1,4−ブタンジオール単位が低すぎると、例えば50モル%より少ないと、PBTの結晶化速度が低下し、得られるポリブチレンテレフタレート樹脂の成形性が低下する場合がある。よって全ジカルボン酸単位中のテレフタル酸単位の割合は、通常70モル%以上、中でも80モル%以上、更には95モル%以上、特に98%以上であることが好ましく、また全ジオール単位中の1,4−ブタンジオール単位の割合は、通常70モル%以上、中でも80モル%以上、更には95モル%以上、特に98%以上であることが好ましい。
本発明に用いる(A)PBTの原料であるジカルボン酸成分に於いて、テレフタル酸以外のジカルボン酸成分としては特に制限はない。具体的には例えば、フタル酸、イソフタル酸、4,4'−ジフェニルジカルボン酸、4,4'−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4'−ベンゾフェノンジカルボン酸、4,4'−ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4'−ジフェニルスルホンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの芳香
族ジカルボン酸類;1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸類;マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸類;等が挙げられる。
これらのジカルボン酸成分は、ジカルボン酸として、またはジカルボン酸エステル、ジカルボン酸ハライド等のジカルボン酸誘導体を原料として、ポリマー骨格に導入できる。
また本発明に用いる(A)PBTの原料であるジオール成分に於いて、1,4−ブタンジオール以外のジオール成分としては特に制限はない。具体的には例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ジブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール等の脂肪族ジオール類;1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,1−シクロヘキサンジメチロール、1,4−シクロヘキサンジメチロール等の脂環式ジオール類;キシリレングリコール、4,4'−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパ
ン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン等の芳香族ジオール類;等が挙げられる。
更に、本発明に用いる(A)PBTとしては、乳酸、グリコール酸、m−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフタレンカルボン酸、p−β−ヒドロキシエトキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸類;アルコキシカルボン酸、ステアリルアルコール、ベンジルアルコール、ステアリン酸、安息香酸、t−ブチル安息香酸、ベンゾイル安息香酸等の単官能成分;トリカルバリル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、没食子酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール等の三官能以上の多官能成分;等を共重合させたものをも、使用することができる。
本発明に用いる(A)PBTは、(a)チタン化合物と、(b)1族金属化合物及び/または2族金属化合物とを含有し、(a)チタン化合物の含有量が、チタン原子換算で10ppm以上80ppm以下であり、(b)1族金属化合物及び/または2族金属化合物の含有量が、その金属原子換算で1ppm以上50ppm以下であることを特徴とする。
本発明に用いる(A)PBTは、1,4−ブタンジオールとテレフタル酸(又はテレフタル酸ジアルキル)とのエステル化反応(又はエステル交換反応)で得られたオリゴマーを重縮合したものであり、中でも、この重縮合の際に用いる触媒(重縮合触媒)として、(a)チタン化合物と、(b)1族金属化合物及び/又は2族金属化合物を用いることによって、(A)PBT中における(a)、(b)の分散性を良好なものとすることができるので、好ましい。
これらの重縮合触媒の使用時期は任意であり、具体的には使用方法として例えば以下の(1)〜(4)等の方法が挙げられる。尚、以下、(a)チタン化合物をチタン触媒、また(b)1族金属化合物及び2族金属化合物を、各々、1族金属触媒、2族金属触媒と言うことがある。
(1)エステル化反応(またはエステル交換反応)に(a)、(b)、両方を使用し、重縮合反応に持ち込む方法。
(2)エステル化反応(またはエステル交換反応)に(a)、(b)、両方を一部使用し、重縮合反応開始時又は反応中に追加する方法。
(3)エステル化反応(またはエステル交換反応)では(a)、(b)、どちらか一方の触媒を使用し、他方を重縮合反応開始時又は反応中に追加する方法。
(4)エステル化反応(またはエステル交換反応)では(a)、(b)、いずれも使用せず、重縮合反応開始時に両方を追加する方法。
本発明に用いる(a)チタン化合物としては特に制限はなく、具体的には例えば、酸化チタン、四塩化チタン等の無機チタン化合物類;テトラメチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタンアルコラート類;テトラフェニルチタネート等のチタンフェノラート類;等が挙げられる。中でもチタンアルコラート類が好ましく、更にはテトラアルキルチタネート類が好ましく、特にテトラブチルチタネートが好ましい。
本発明に用いる(b)1族金属化合物及び/又は2族金属化合物としては特に制限はなく、具体的には例えば、1族金属化合物としてはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムの、水酸化物類;酸化物類;アルコラート類;酢酸塩、リン酸塩、炭酸塩等の各種有機酸塩類;等の各種化合物が挙げられ、また2族金属化合物としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムの、水酸化物類;酸化物類;アルコラート類;;酢酸塩、リン酸塩、炭酸塩等の各種有機酸塩類;等の各種化合物が挙げられる。これらは単独で使用しても、また併用してもよい。
中でも、取り扱いや入手の容易さ、触媒効果の点から、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等の化合物が好ましく、更には触媒効果と色調に優れる、リチウム又はマグネシウムの化合物が好ましく、特にマグネシウム化合物が好ましい。マグネシウム化合物としては、具体的には例えば酢酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、マグネシウムアルコキサイド、燐酸水素マグネシウム等が挙げられる。中でも有機酸塩類が好ましく、特に酢酸マグネシウムが好ましい。
本発明に用いる(A)PBTにおける、(a)チタン化合物の含有量は、チタン原子換算で10ppm以上80ppm以下である。このチタン化合物の含有量が多過ぎると、(A)PBTの色調や耐加水分解性が低下したり、またチタン触媒の失活による溶液ヘイズ
や異物が増加する場合がある。逆に少な過ぎても、(A)PBTの重合性が低下してしまう
。よって(a)チタン化合物の含有量は、70ppm以下、中でも60ppm以下、更には50ppm以下、特に40ppm以下であることが好ましく、その下限は15ppm以上、中でも20ppm以上、特に30ppm以上であることが好ましい。
本発明に用いる(A)PBTにおける、(b)1族金属化合物及び/又は2族金属化合物の含有量は、各々の金属原子換算で、1ppm以上50ppm以下である。この1族金属化合物及び/又は2族金属化合物の含有量が多過ぎると、本発明のPBT組成物の成形性や、得られる樹脂成形品の耐加水分解性が低下する場合がある。逆に少な過ぎても、耐ヒートショック性が低下する場合がある。よって(b)1族金属化合物及び/又は2族金属化合物の含有量は、40ppm以下、中でも30ppm以下、更には20ppm以下、特に15ppm以下であることが好ましく、その下限は3ppm以上、中でも5ppm以上、特に10ppm以上であることが好ましい。
チタン原子などの金属含有量は、湿式灰化などの方法でポリマー中の金属を回収した後、原子発光、原子吸光、Inductively Coupled Plasma(ICP)等の方法を使用して測定することが出来る。
本発明に用いる(A)PBTの重縮合触媒としては、上述したようなチタン化合物や(b)1族金属化合物及び/又は2族金属化合物が挙げられるが、その他の重縮合触媒としては、例えばスズやその化合物が挙げられる。スズは通常、スズ化合物として使用され、具体的には例えば、ジブチルスズオキサイド、メチルフェニルスズオキサイド、テトラエチルスズ、ヘキサエチルジスズオキサイド、シクロヘキサヘキシルジスズオキサイド、ジドデシルスズオキサイド、トリエチルスズハイドロオキサイド、トリフェニルスズハイドロオキサイド、トリイソブチルスズアセテート、ジブチルスズジアセテート、ジフェニルスズジラウレート、モノブチルスズトリクロライド、トリブチルスズクロライド、ジブチルスズサルファイド、ブチルヒドロキシスズオキサイド、メチルスタンノン酸、エチルスタンノン酸、ブチルスタンノン酸等が挙げられる。
但し一般的に、スズやスズ化合物は(A)PBTの色調を悪化させるため、本発明に用い
る(A)PBT中におけるスズ化合物の含有量は低い方が好ましく、含有しないことが好ましい。具体的には、通常、スズ化合物の含有量が、スズ原子換算で200ppm以下、中でも100ppm以下、更には10ppm以下であることが好ましい。
また本発明に用いる(A)PBTの製造においては、先述のチタン触媒や、1族金属触媒、2族金属触媒の他に、三酸化アンチモン等のアンチモン化合物;二酸化ゲルマニウム、四酸化ゲルマニウム等のゲルマニウム化合物;マンガン化合物;亜鉛化合物;ジルコニウム化合物;コバルト化合物;正燐酸、亜燐酸、次亜燐酸、ポリ燐酸等やこれらのエステルや金属塩などの燐化合物;等の反応助剤を用いてもよい。
本発明に用いる(A)PBTの末端カルボキシル基濃度は任意だが、低い方が好ましく、具体的には30μeq/g以下であることが好ましく、更に好ましくは5〜25μeq/g、特に好ましくは5〜20μeq/gである。30μeq/gを超えると耐加水分解性が悪化する傾向にあり、低すぎると耐ヒートショック性が悪化する。
次に、本発明に用いる(A)PBTの製造方法について説明する。本発明に用いる(A)PBTの製造方法は任意であり、一般的には使用する原料によって、ジカルボン酸を主原料とする方法(直接重合法)と、ジカルボン酸ジアルキルエステルを主原料とする方法(エステル交換法)とがある。前者は初期のエステル化反応で主に水が生成し、後者は初期のエステル交換反応で主にアルコールが生成するという違いがある。
また、本発明に用いる(A)PBTの製造方法は、一般的に、原料供給または生成ポリマーであるポリブチレンテレフタレート樹脂の抜き出し形態(反応槽等から生成(溶融)ポリマーを抜き出す方法)により、回分法と連続法に大別される。初期のエステル化反応またはエステル交換反応を連続操作で行い、それに続く重縮合を回分操作で行う方法や、初期のエステル化反応またはエステル交換反応を回分操作で行い、それに続く重縮合を連続操作で行う方法等が知られている。
本発明に用いる(A)PBTの製造方法としては、原料原単位の優位性、副生成物の処理の容易さ等から、直接重合法を用いることが好ましく、また得られる(A)PBTの品質安定性や、製造に係るエネルギー効率の面から、エステル化反応および重縮合反応を連続的に行う、いわゆる連続法を用いることが好ましい。
本発明に用いる(A)PBTの製造に際して用いる、先述の1族金属触媒及び/又は2族金属触媒は、エステル化反応槽またはエステル交換反応槽に供給することが出来るが、その供給位置に特に制限はなく、これら反応槽の反応液気相部から反応液上面へ供給してもよいし、反応液液相部に直接供給してもよい。また、この場合、原料であるテレフタル酸や、チタン触媒と共に供給してもよいし、独立して供給してもよい。中でも、触媒の安定性の観点からはテレフタル酸やチタン触媒とは独立して、且つ、反応液気相部から反応液上面に供給することが好ましい。
2族金属触媒の供給方法としては、例えば2族触媒が常温で固体の場合には、個体のまま反応液へ供給することも出来るが、供給量を安定化させ、熱による変性などの悪影響を軽減するためには、水、1,4−ブタンジオール等の溶媒に溶解し、溶液として供給することが好ましい。この溶液中の2属金属触媒の濃度は、通常0.01重量%以上、中でも0.05重量%以上、特に0.08重量%以上であることが好ましく、その上限は20重量%以下、中でも10重量%以下、特に8重量%以下であることが好ましい。
また1族金属触媒及び/又は2族金属触媒は、エステル化反応槽またはエステル交換反応槽に続く重縮合反応槽や、それに付帯したオリゴマー配管に添加してもよい。この場合の添加方法も、供給量を安定化させ、熱による変性などの悪影響を軽減するために、水、1,4−タンジオール等の溶媒や、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等の共重合成分に溶解し、溶液として供給することが好ましく、この際の濃度は、上述の溶液濃度と同様である。
本発明に用いる(A)PBTの製造方法の具体例として、例えば直接重合法を用いる連続エステル化法の場合には、以下の様な方法により行えばよい。原料であるテレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と、1,4−ブタンジオールを主成分とするジオール成分とを、原料混合槽で混合してスラリーとし、単数または複数のエステル化反応槽内で、好ましくはチタン触媒と1族金属触媒及び/又は2族金属触媒との存在下に、通常、温度条件として180〜260℃、好ましくは200〜245℃、更に好ましくは210〜235℃の条件下、圧力(絶対圧力を示す。以下、同様である。)条件として、通常、10〜133kPa、好ましくは13〜101kPa、更に好ましくは60〜90kPaの圧力下で、通常0.5〜10時間、好ましくは1〜6時間、連続的にエステル化反応させる。
エステル化反応槽またはエステル交換反応槽としては、従来公知の任意のものを使用できる。具体的には例えば、縦型攪拌完全混合槽、縦型熱対流式混合槽、塔型連続反応槽等が挙げられる。これらは単数槽としても、同種又は異種の反応槽を直列または並列させた複数反応槽としてもよい。中でも攪拌装置を有する反応槽を用いることが好ましく、攪拌装置としては動力部、軸受、軸、攪拌翼等を含む通常の攪拌装置の他、タービンステータ
ー型高速回転式攪拌機や、ディスクミル型攪拌機、ローターミル型攪拌機等の高速回転が可能なものを用いてもよい。
次に、得られたエステル化反応生成物(またはエステル交換反応生成物)としてのオリゴマーを重縮合反応槽に移送する。このオリゴマーのエステル化率は任意だが、通常90%以上、好ましくは95%以上であり、また数平均分子量は通常300〜3000、好ましくは500〜1500である。
重縮合反応槽の形態は任意であり、例えば縦型攪拌完全混合槽、縦型熱対流式混合槽、塔型連続反応槽などが挙げられ、またこれらを組み合わせて用いてもよい。中でも、少なくとも1つの重縮合反応槽においては攪拌装置を有することが好ましく、攪拌装置としては上述したエステル化反応層と同様である。
攪拌の形態は、特に制限されず、反応槽中の反応液を反応槽の上部、下部、横部等から直接攪拌する通常の攪拌方法の他、配管などで反応液の一部を反応器の外部に持ち出してラインミキサー等で攪拌し、反応液を循環させる方法も用いてもよく、更には水平方向に回転軸を有する表面更新とセルフクリーニング性に優れた横型の反応器を用いてもよい。
重縮合反応は、チタン触媒と、1族金属触媒及び/又は2族金属触媒との存在下に行う。反応温度は、通常210〜280℃、中でも220〜250℃、特に230〜245℃の範囲で行うことが好ましい。例えば複数の反応槽を用いる場合には、そのうちの少なくとも一つの反応槽の温度を230〜240℃とすることが好ましい。また反応は攪拌条件下にて行うことが好ましい。重縮合反応時間は、通常1〜12時間、好ましくは3〜10時間である。また反応雰囲気の圧力条件は、通常27kPa以下、中でも20kPa以下、特に13kPa以下の減圧状態で行うことが好ましい。例えば複数の反応槽を用いる場合には、生成物の着色や劣化を抑えるため、そのうちの少なくとも一つの反応槽内の圧力を、通常1.3kPa以下、中でも0.5kPa以下、特に0.3kPa以下の高真空下とすることが好ましい。
重縮合反応により得られたポリマーは、通常、重縮合反応槽の底部からポリマー抜き出しダイに移送されてストランド状に抜き出され、水冷されながら又は水冷後、カッターで切断され、ペレット状、チップ状などの粒状体とされる。
更に、PBTの重縮合反応工程は、一旦、溶融重縮合で比較的分子量の小さい、例えば、固有粘度0.1〜0.9程度のPBTを製造した後、引き続き、PBTの融点以下の温度で固相重縮合(固相重合)させてもよい。
(B)耐衝撃改良剤
本発明に用いる(B) 耐衝撃性改良剤としては、従来公知の各種エラストマー等、常温
ではゴム状弾性をもつ固体であるが、加熱すると粘度が低下する為に、(A)PBTと溶融混合可能な性質を有する高分子物質であれば任意のものを使用できる。この様なものとしては例えば、熱可塑性エラストマーやコアシェルポリマー等が挙げられ、具体的には例えば、オレフィン系、スチレン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ウレタン系、珪素系等の各種エラストマーが挙げられる。
オレフィン系エラストマーとして、エチレン及び/又はプロピレンを主成分とする共重合体を用いることが好ましい。具体的には例えば、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体等が
挙げられる。
オレフィン系エラストマーの中でも、
(a−1):エチレン−不飽和カルボン酸共重合体や、そのアルキルエステル共重合体。又は、
(a−2):α−オレフィンとα,β−不飽和酸のグリシジルエステルを含むオレフィン系共重合体と、(b):主として下記一般式(1)で示される繰り返し単位で構成された、重合体又は共重合体。
との一種又は二種以上が、分岐又は架橋構造的に化学結合したグラフト共重合体は、特に熱衝撃特性の改善に効果があり、耐衝撃性改良剤として好ましい。
−(CH−CR(X))− (1)
(但し、Rは、水素または低級アルキル基を示し、Xは−COOH、−COOCH、−COOC、−COOC−、−COOCHCH(C)C、−COOC、−CNから選ばれる基を示す。)
この様な、(a−1)又は(a−2)と、(b)との共重合体における(a−1)又は(a−2)と、(b)との割合は、95:5〜5:95(重量比)であり、中でも80:20〜20:80であることが好ましい。
(a−1) の具体例としては、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリ
ル酸共重合体、エチレン−アクリル酸−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、などの共重合体が挙げられ、さらにこれらの共重合体を併用してもよい。
そして(a−2)のオレフィン系共重合体を構成する一方のモノマーであるα−オレフィンとしてはエチレン、プロピレン、ブテン−1等が挙げられ、中でもエチレンが好ましい。また(a−2)成分を構成するα,β−不飽和酸のグリシジルエステルとは、下記一般式(2)で示される化合物を表し、具体的には例えば、アクリル酸グリシジルエステル、メタクリル酸グリシジルエステル、エタクリル酸グリシジルエステル等が挙げられ、中でもメタクリル酸グリシジルエステルが好ましい。
CH=C(R)−C(O)−O−CH2−CH−CH2
\/ (2)

(但し、Rは水素または低級アルキル基を示す。)
(a−2)の共重合体は、α−オレフィン(例えばエチレン)と、α,β−不飽和酸のグリシジルエステルとを、従来公知の任意のラジカル重合反応により共重合することで得ることができる。(a−2)の共重合体においては、通常α−オレフィンが70〜99重量%、α,β−不飽和酸のグリシジルエステルが30〜1重量%であることが好ましい。
これらのオレフィン系共重合体(a−1)や(a−2)とグラフト重合させる(共)重合体(b)としては、例えば、先述の一般式(1)で示される繰り返し単位のうち、一種又は二種以上を任意の割合含む共重合体が挙げられる。
具体的には例えば、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル、ポリアクリル酸−2−エチルヘキシル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリル酸ブチル−メタクリル酸メチル共重合体、アクリル酸ブチル−スチレン共重合体等が挙げられる。中でもアクリル酸ブチル−メタクリル酸メチル共重合体を用いることが好ましい。これらの重合体又は共重合体(b)も、対応する従来公知の、任意のビニル系モノマーのラジカル重合方法により得ることができる。
この様なグラフト共重合体の製造方法は、従来公知の任意の方法、例えば連鎖移動法、電離放射線照射法などを用いればよい。中でもグラフト効率が高く、熱による二次凝集が抑制され、得られるグラフト共重合体の性能が高い点等から、以下の方法が好ましい。即ち主鎖成分粒子中で(b)成分の単量体とラジカル(共)重合性有機過酸化物とを共重合させたグラフト化前駆体を溶融混練し、重合体同士をグラフト化反応する方法が好ましい。
スチレン系エラストマーとしては、例えばスチレン等のビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックと未水素化、及び/又は水素化した共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックとを含むブロック共重合体が挙げられる。ここでブロック共重合体とは、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックAと、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBとを含むブロック共重合体であり、ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物の共重合比は5/95〜70/30、特に10/90〜60/40であることが好ましい。
ブロック共重合体を構成するビニル芳香族化合物としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−第三級ブチルスチレン、ジビニルベンゼン、p−メチルスチレン、1,1−ジフェニルスチレン等が挙げられ、中でもスチレンが好ましい。また共役ジエン化合物としては、例えばブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、ピレリレン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、フェニル−1,3−ブタジエン等が挙げられ、中でもブタジエン、イソプレン及びこれらの併用が好ましい。
スチレン系エラストマーブロック共重合体の数平均分子量は、通常、5000〜600000、好ましくは10000〜500000であり、分子量分布[重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)]は10以下である。またこのブロック共重合体の分子構造は、直鎖状、分岐状、放射状のいずれでも、またこれらを任意の割合で含むものであってもよい。例えば、A−B−A、B−A−B−A、(A−B−)Si、A−B−A−B−A等の構造を有するビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体が挙げられる。更に、ブロック共重合体の共役ジエン化合物の不飽和結合は部分的に水素添加したものでもよい。
スチレン系エラストマーブロック共重合体の製造方法としては、上記した構造を有するものが得られるのであればどのような製造方法もとることができる。例えば、特公昭40−23798号公報、特公昭43−17979号公報、特公昭56−28925号公報等に記載された方法により、リチウム触媒などを用いて不活性溶媒中でビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体を製造することができる。更に特公昭42−8704号公報、特公昭43ー6636号公報、特公昭59−133203号公報等に記載の方法により、不活性溶媒中で水素添加触媒の存在下に水素添加して、本発明に供する部分的に水添したブロック共重合体を製造することができる。
ポリエステル系エラストマーとしては、例えばポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステルをハードセグメントとし、ポリエチレングリコールやポリテトラメチレングリコール等のポリエーテル又はポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリカプロラクトン等の脂肪族ポリエステルをソフトセグメントとするブロック共重合体等が挙げられる。
ポリアミド系エラストマーとしては、例えばナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12等をハードセグメントとし、ポリエーテルまたは脂肪族ポリエステルをソフトセグメントとするブロック共重合体等が挙げられる。
ウレタン系エラストマーとしては、例えば4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネー
ト、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネートと、エチレングリコール、テトラメチレングリコール等のグリコールとを反応させることによって得られるポリウレタンをハードセグメントとし、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテル又はポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリカプロラクトン等の脂肪族ポリエステルをソフトセグメントとするブロック共重合体が挙げられる。
コアシェルポリマーとは、通常、平均粒径1μm以下のゴム層をガラス状樹脂が包含した、多層構造のコアシェル型グラフト共重合体を示す。コアシェル型共重合体のゴム層は、平均粒径1μm以下、中でも0.2〜0.6μmのものを用いることが好ましい。ゴム層の平均粒径が1μmを越えると、耐衝撃特性の改善効果が不十分な場合がある。かかるコアシェル型共重合体のゴム層としては珪素系、ジエン系エラストマー単独またはこの中から選ばれる2種以上のエラストマー成分系を共重合及び/又はグラフト共重合させたものを用いることができる。
珪素系エラストマーとしては、オルガノシロキサン単量体を重合させて製造されるものであり、オルガノシロキサンとしては、例えばヘキサメチルトリシクロシロキサン、オクタメチルシクロシロキサン、デカメチルペンタシクロシロキサン、ドデカメチルヘキサシクロシロキサン、トリメチルトリフェニルシロキサン、テトラメチルフェニルシクロテトラシロキサン、オクタフェニルシクロテトラシロキサン等が挙げられる。
コアシェル型グラフト共重合体におけるガラス状樹脂で形成されるシェル層には、例えばビニル系重合体が用いられる。ビニル系重合体は、芳香族ビニル単量体、シアン化ビニル単量体、メタクリル酸エステル系単量体、及びアクリル酸エステル単量体の中から選ばれた少なくとも一種の単量体を重合あるいは共重合させて得られる。かかるコアシェル型共重合体のゴム層とシェル層は、通常グラフト共重合によって結合されている。このグラフト共重合化は、必要な場合には、ゴム層の重合時にシェル層と反応するグラフト交差剤を添加し、ゴム層に反応基を与えた後、シェル層を形成させることによって得られる。グラフト交差剤としては、シリコーン系ゴムでは、ビニル結合を有したオルガノシロキサンあるいはチオールを有したオルガノシロキサンが用いられ、好ましくはアクロキシシロキサン、メタクリロキシシロキサン、ビニルシロキサンが使用される。
上述した様な、本発明に用いる(B)耐衝撃改良剤においては、特に、エポキシ変性されたエラストマーを用いることが好ましい。エポキシ変性エラストマーとはエポキシ基を含有するエラストマーであり、エポキシ基変性の手段としては従来公知の任意のものを使用できる。具体的には例えば、ランダム、ブロックまたはグラフト共重合のいずれかにて、エポキシ化合物をエラストマーに共重合させる方法が挙げられる。ここでエポキシ化合物は、付加反応により共重合されることが一般的であり、エポキシ基を有するビニル化合物、特にα,β−不飽和酸のグリシジルエステルが好適に使用され、例えばアクリル酸グリシジルエステル、メタクリル酸グリシジルエステル、エタクリル酸グリシジルエステル等が挙げられ、特にメタクリル酸グリシジルエステルが好ましい。
エポキシ化の際には必要に応じて触媒を用いることができる。例えば、過酸の場合、炭酸ソーダなどのアルカリや硫酸などの酸を触媒として用いることができる。また、ハイドロパーオキサイド類の場合には、タングステン酸と苛性ソーダの混合物を過酸化水素と、あるいはモリブデンヘキサカルボニルをターシャリーブチルハイドロパーオキサイドと併用して触媒効果を得ることができる。エポキシ化剤の量は、使用するエポキシ化剤、所望されるエポキシ化度、使用する個々のエラストマー等によって適宜選択して決定すればよい。
またエポキシ化に際しては、原料粘度の低下やエポキシ化剤の希釈による安定化などを目的として、不活性溶媒存在下にて行ってもよい。不活性溶媒としては、例えば触媒として過酢酸を用いる際には、例えば芳香族化合物としてエーテル類やエステル類等が挙げられる。中でもヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、ベンゼン、酢酸エチル、四塩化炭素、クロロホルム等が好ましい。エポキシ化反応条件は、例えば用いるエポキシ化剤の反応性によって反応温度領域を決定するなど適宜選択して決定すればよく、例えば触媒として過酢酸を用いる際には、反応温度は0〜70℃であることが好ましい。0℃より低いと反応が遅くなってしまい、逆に70℃を超えると過酢酸の分解が起こる場合がある。またハイドロパーオキサイドの一例であるターシャリーブチルハイドロパーオキサイド/モリブデン二酸化物ジアセチルアセトナート類を用いる際には、20〜150℃であることが好ましい。反応混合物は通常、2〜10時間攪拌すればよい。得られたエポキシ変性共重合体の単離方法も任意であり、例えば貧溶媒で沈澱させる方法や、重合体を熱水中に攪拌の下で投入し溶媒を蒸留留去する方法、直接脱溶媒法等が挙げられる。
エポキシ変性エラストマーにおけるエポキシ当量は、通常、140〜3000g/molであり、中でも200〜2500g/molであることが好ましい。エポキシ当量が3000g/molを超えると相溶性が低下する場合があり逆に140 g/mol未満で
は、特にゲル化物などの副反応が、重合体の単離中に生ずる場合がある。
本発明に用いる(B)耐衝撃改良剤としては、これらエポキシ変性エラストマーの中でもα-オレフィンとα、β-不飽和酸のグリシジルエステルを含むグリシジル基含有共重合体が好ましい。
本発明における(B)耐衝撃改良剤の含有量は、(A)PBT100重量部に対して、0.5〜40重量部であり、好ましくは5〜30重量部である。(B)成分が少なすぎると、本発明の目的とする高い耐ヒートショック性が得られず、多すぎても剛性等の機械的性質を阻害する場合がある。
本発明に用いる(C)強化充填材としては、繊維状、板状、粒状物およびこれらの混合物が挙げられる。具体的には、ガラス繊維、炭素繊維、鉱物繊維、金属繊維、セラミックスウイスカー、ワラストナイト等の繊維状物;ガラスフレーク、マイカ、タルクなどの板状物;シリカ、アルミナ、ガラスビーズ、カーボンブラック、炭酸カルシュウム等の粒状物;等が挙げられる。これらの選定の基準は製品の必要とされる特性によるが、機械的強度や剛性については繊維状物、特にガラス繊維が選定され、成形品の異方性、及び反りの低減が重要な際は板状物、特にマイカを用いることが好ましい。また粒状物は、成型時の流動性も加味された全体的なバランスを考慮し、適宜選択して決定すればよい。
ガラス繊維は、一般に樹脂強化用に使用されている、従来公知の任意のものを使用できる。具体的には例えば、長繊維タイプ(ロービング)や短繊維タイプ(チョップドストランド)等から適宜選択して決定すればよい。用いるガラス繊維の繊維径としては、通常、6〜15μmである。またガラス繊維は集束剤(例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル等)、カップリング剤(例えば、シラン化合物、ボロン化合物等)、その他の表面処理剤等で処理されていてもよい。中でも、強度の点からアミノシラン化合物とノボラックエポキシ化合物で表面処理されたものが好ましい。
本発明における(C)強化充填材の含有量は、(A)PBT100重量部に対して、0〜150重量部であり、中でも剛性、寸法安定性向上の面から、5〜100重量部であることが好ましい。
本発明においては、本発明の効果を損ねない範囲で、ハロゲン系、リン系、窒素系の従来公知の任意の難燃剤を使用できる。リン系難燃剤としては、ポリリン酸メラミンやホス
ファゼン化合物等、窒素系難燃剤としてはシアヌル酸メラミン等が挙げられる。
ハロゲン系難燃剤としては、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂、臭素化フェノキシ樹脂、臭素化ポリフェニレンエーテル樹脂、臭素化ポリスチレン樹脂、臭素化ビスフェノールA、グリシジル臭素化ビスフェノールA、ペンタブロモベンジルポリアクリレート、ブロム化イミド等が挙げられる。中でもグリシジル臭素化ビスフェノールA、ペンタブロモベンジルポリアクリレート、ブロム化イミドは、エポキシ化合物による改良効果発揮を阻害しない点で好ましい。
本発明における難燃剤の含有量は、適宜選択して決定すればよいが、通常(A)PBT100重量部に対して、5〜50重量部である。難燃剤が5重量部未満では、十分な難燃効果が得られ難く、逆に50重量部を越えると、特に機械強度が低下する場合がある。よって難燃剤の含有量は、難燃性と物性とのバランスの点から、(A)PBT100重量部に対して、中でも7〜35重量部、特に8〜25重量部であることが好ましい。
また本発明においては、難燃助剤としてアンチモン化合物を併用してもよい。アンチモン化合物としては三酸化アンチモン(Sb23)、五酸化アンチモン(Sb25)、アンチモン酸ナトリウム等が挙げられる。この様なアンチモン化合物の含有量は、通常(A)PBT100重量部に対して、2〜40重量部である。アンチモン化合物が2重量部未満では、十分な難燃性が得られ難く、逆に40重量部を越えると機械強度が低下しやすい。よってアンチモン化合物の含有量は、難燃性と物性とのバランスの点から(A)PBT100重量部に対し、中でも2〜30重量部、特に3〜20重量部であることが好ましい。
本発明においては、更に、耐ヒートショック性をより効率的に改善するために、ペンタエリスリトールエステル化合物やカルボジイミド化合物を含有してもよい。
本発明の樹脂組成物は、上述した(A)、(B)、(C)の各成分、およびその他添加剤以外に、必要応じて、本発明の効果を損ねない範囲に於いて、従来公知の任意の添加剤を含有することができる。具体的には例えば、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ステアリン酸およびそのエステル、シリコンオイル等の離型剤;ヒンダードフェノール系、亜燐酸エステル系、硫黄含有エステル化合物系等の熱安定剤;結晶化促進剤;紫外線吸収剤;耐候性付与剤;染料;顔料;発泡剤;帯電防止剤等が挙げられる。
また各種樹脂を含有してもよく、具体的には例えばナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ナイロンMXD6等の各種ポリアミド樹脂類やそのエラストマー類;液晶ポリマー;ポリカーボネート樹脂;ポリスチレン、ABS、AS、MS等のスチレン系樹脂;各種アクリル樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンープロピレン共重合体等のオレフィン系樹脂;ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂;アイオノマー樹脂;イソブチレンーイソプレンゴム、スチレンーブタジエンゴム、スチレンーブタジエンゴムースチレン、エチレンープロピレンゴム等;フェノキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂;等も挙げられる。
本発明の樹脂組成物は、先述した(A)、(B)、(C)や他の各種添加成分を従来公知の任意の方法により配合し、溶融混練することによって得ることができる。中でも(A)、(B)が溶融混合される際、(C)成分が存在し、溶融混合による反応を促進することが好ましい。配合は通常用いられる方法、例えばリボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、ドラムブレンダー等で行うことができる。溶融混練には従来公知の任意の各種押出機、ブラベンダープラストグラフ、ラボプラストミル、ニーダー、バンバリーミキサー等を用いることができる。溶融混練時の温度は、通常230〜290℃である。また混練時における各種配合成分の分解を抑制する為には、先述の熱安定剤を用いることが好ましい。
各配合成分は、付加的成分を含め、混練機に一括して供給しても、また順次供給してもよい。また、付加的成分を含め、各成分から選ばれた2種以上の成分を予め混合して用いてもよい。ガラス繊維などの繊維状強化充填材は、押出機の途中から樹脂が溶融した後に添加することにより、破砕を避け、高い特性を発揮させることが出来る。
本発明の樹脂組成物は、従来公知の、任意の種々の成形方法、例えば、射出成形、中空成形、押出成形、圧縮成形、カレンダー成形、回転成形等により成形し、例えば電機・電子機器分野、自動車分野、機械分野、医療分野等の成形品とすることができる。中でも、本発明の樹脂組成物の特徴である、高い流動性を利用して、射出成形による成形方法を用いることで、生産性が向上するので産業状有利である。射出成形に当たっては、樹脂温度を240〜280℃にコントロールするのが好ましい。
射出成形の中でも、インサート成形に適応することで、本発明の効果が顕著となるので、特に好ましい。本発明のポリブチレンテレフタレート組成物を用いてインサート成形を行う際には、例えば以下のようにして行えばよい。即ち、まずインサートとしては例えば、金属や金属酸化物等の無機固体部品の他、木製部品やエポキシ樹脂やシリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂部品等の有機固体部品等を用いることができる。これらインサートは、機械加工等の処理をされているのが一般的である。
次いでこの様なインサートを射出成形金型に挿入する。インサート成形機は、所望のインサート成形品の形状、大きさ等を考慮し、適宜選択して決定すればよいが、縦型成形機や、横型成形機のいずれであってもよい。横型成形機の場合、インサートの固定法として、例えば金型のインサート箇所に減圧穴を開けておき減圧にすることでインサートを吸いつけて落下しないようにして、成形作業してもよい。多数の成形を効率的に済ますには、横型成形機を使ってインサートの固定をロボット等により行うことが好ましい。
具体的な射出成形方法としては例えば、まず金型を開き、インサートを固定してから金型を閉め、本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を射出する。次いで冷却後に金型を開き、インサート成形品を離型する。射出成形による接着を好ましい状態で進めるには、接合面に出来るだけ高温で溶融樹脂組成物が接触させることが好ましい。それ故、金型温度も成形に支障ないレベルで高い方がよい。
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物のインサート成形においては、一般的に金型温度を40〜100℃の範囲に設定すればよいが、接着強度向上のためには金型温度を高めにすることが好ましい。またキャビティー形状によっては金型温度を上げると離型困難になって成形が困難となる場合があるので、具体的には例えば70〜120℃とすることが好ましい。
また例えば、成形サイクルを短縮する為に低温度の金型温度設定となる場合には、固定前のインサートに接着剤をコーティングしたり、温度を高めるなどして、本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物との反応性を高めてもよい。
以下に実施例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1〜9および比較例1〜3)
表−1に示す実施例及び比較例の樹脂組成物について、2軸押出機にてコンパウンドを実施した。尚、実施例9では比較例1の組成にステアリン酸マグネシウムを608ppm(金属マグネシウムとして25ppm)添加したものを同様にコンパウンドした。
次いで、コンパウンドして得られたポリブチレンテレフタレート樹脂組成物をペレット化し、このペレットを住友重機械社製射出成型機(型式SG−75SYCAP−MIII)を用い、シリンダ温度250℃、金型温度80℃の条件で、ISO機械的物性測定用試験片を成形した。この試験片を、以下の試験方法により評価した。結果を表―1に示す。
(実施例及び比較例で用いた原料)
(1)エステル化率:
以下の計算式(1)によって酸価およびケン化価から算出した。酸価は、ジメチルホルムアミドにオリゴマーを溶解させ、0.1NのKOH/メタノール溶液を使用して滴定により求めた。ケン化価は0.5NのKOH/エタノール溶液でオリゴマーを加水分解し、0.5Nの塩酸で滴定し求めた。
エステル化率=(ケン化価−酸価)/ケン化価)×100 (1)
(2)末端カルボキシル基濃度:
ベンジルアルコール25mlにPBT又はオリゴマー0.5gを溶解し、水酸化ナトリウムの0.01モル/Lベンジルアルコール溶液を使用して滴定した。
(3)固有粘度(IV):
ウベローデ型粘度計を使用し次の要領で求めた。すなわち、フェノール/テトラクロロエタン(重量比1/1)の混合溶媒を使用し、30℃において、濃度1.0g/dlのポリマー溶液および溶媒のみの落下秒数を測定し、以下の式(2)より求めた。
IV=((1+4KHηsp0.5−1)/(2KHC) (2)
(但し、ηsp=η/η0−1であり、ηはポリマー溶液落下秒数、η0は溶媒の落下秒数、Cはポリマー溶液濃度(g/dL)、KHはハギンズの定数であり0.33とした。)
(4)PBT中のチタン、及び1族、2族金属濃度:
電子工業用高純度硫酸及び硝酸でPBTを湿式分解し、高分解能ICP−MS(Inductively Coupled Plasma−Mass Spectromet
er)(サーモクエスト社製)を使用して測定した。
(5)ペレット色調:
日本電色社製色差計(Z−300A型)を使用し、L、a、b表色系におけるb値で評価した。値が低いほど黄ばみが少なく色調が良好であることを示す。
(A)PBTの製造方法(A−1〜A−8)
(A−1):
図1に示すエステル化工程と、図2に示す重縮合工程を用い、以下の方法によりPBTを製造した。先ず、テレフタル酸1.00モルに対して、1,4−ブタンジオール1.80モルの割合で混合した60℃のスラリーを、スラリー調製槽から原料供給ライン1を通じ、予め、エステル化率99%のPBTオリゴマーを充填したスクリュー型攪拌機を有するエステル化のための反応槽Aに、41kg/hとなる様に連続的に供給した。同時に、再循環ライン2から185℃の精留塔Cの塔底成分(98重量%以上が1,4−ブタンジオール)を20kg/hで供給し、チタン触媒供給ライン3から触媒として65℃のテトラブチルチタネートの6.0重量%1,4−ブタンジオール溶液を99g/hで供給した(理論ポリマー収量に対し30ppm)。この触媒溶液中の水分は0.2重量%であった。2族金属触媒供給ライン15から触媒として65℃の酢酸マグネシウム・4水塩の6.0重量%1,4−ブタンジオール溶液を62g/hで供給した(理論ポリマー収量に対し15ppm)。この触媒溶液中の水分は10.0重量%であった。
反応槽Aの内温は230℃、圧力78kPaとし、生成する水とテトラヒドロフラン及
び余剰の1,4−ブタンジオールを、留出ライン5から留出させ、精留塔Cで高沸成分と低沸成分とに分離した。系が安定した後の塔底の高沸成分は、98重量%以上が1,4−ブタンジオールであり、精留塔Cの液面が一定になる様に、抜出ライン8を通じてその一部を外部に抜き出した。一方、低沸成分は塔頂よりガスの形態で抜き出し、コンデンサGで凝縮させ、タンクFの液面が一定になる様に、抜出ライン13より外部に抜き出した。
反応槽Aで生成したオリゴマーの一定量は、ポンプBを使用し抜出ライン4から抜き出し、反応槽A内液の平均滞留時間が2.5hrになる様に液面を制御した。抜出ライン4から抜き出したオリゴマーは図2に示す第1重縮合反応槽aに連続的に供給した。系が安定した後、反応槽Aの出口で採取したオリゴマーのエステル化率は96.5%であった。
第1重縮合反応槽aの内温は240℃、圧力2.1kPaとし、滞留時間が120分になる様に液面制御を行った。減圧機(図示せず)に接続されたベントラインL2から、水、テトラヒドロフラン、1,4−ブタンジオールを抜き出しながら、初期重縮合反応を行った。抜き出した反応液は第2重縮合反応槽dに連続的に供給した。
第2重縮合反応槽dの内温は240℃、圧力130Paとし、滞留時間が85分になる様に液面制御を行い、減圧機(図示せず)に接続されたベントラインL4から、水、テトラヒドロフラン、1,4−ブタンジオールを抜き出しながら、更に重縮合反応を進めた。得られたポリマーは、抜出用ギヤポンプeにより抜出ラインL3を経由し、ダイスヘッドgからストランド状に連続的に抜き出し、回転式カッターhでカッティングした。得られたPBTの分析値は表1に記した。
(A−2):
(A−1)において、第2重縮合反応槽dの滞留時間を60分にし、得られたポリマーチップをダブルコニカル型ブレンダー(内容量100リットル)にて195℃、減圧下(0.133kPa以下)、5時間の固相重合処理を実施した。固相重合処理されたポリマーの固有粘度は0.85dL/g、末端カルボキシル基濃度は5.1μeq/gであった。得られたPBTの分析値は表1に記した。
(A−3):
(A−1)において、ポリマー中のチタン及びマグネシウム含有量が表1の通りとなる様にテトラブチルチタネート及び酢酸マグネシウム・4水塩の供給量を調節し、第2重縮合反応槽dでの滞留時間を75分にした以外は、(A−1)と同様に行った。得られたPBTの分析値は表1に記した。
(A−4):
(A−1)において、ポリマー中のチタン及びマグネシウム含有量が表1の通りとなる様にテトラブチルチタネート及び酢酸マグネシウム・4水塩の供給量を調節し、第2重縮合反応槽dの温度を244℃、滞留時間を75分にした以外は、(A−1)と同様に行った。得られたPBTの分析値は表1に記した。
(A−5):
(A−1)において、酢酸マグネシウム・4水塩に代えて酢酸リチウム・2水塩を用い、ポリマー中のチタン及びリチウム含有量が表1の通りとなる様に供給量を調節し、第2重縮合反応槽dの温度を244℃、滞留時間を70分にした以外は、(A−1)と同様に行った。得られたPBTの分析値は表1に記した。
(A−6):
(A−1)において、酢酸マグネシウム・4水塩を用いず、またポリマー中のチタン含
有量が表2の通りとなる様にテトラブチルチタネートの供給量を調節し、第2重縮合反応槽dの滞留時間を105分にした以外は、(A−1)と同様に行った。得られたPBTの分析値は表1に記した。
(A−7):
(A−1)において、ポリマー中のチタン及びマグネシウム含有量が表1の通りとなる様にテトラブチルチタネート及び酢酸マグネシウム・4水塩の供給量を調節し、第2重縮合反応槽dの滞留時間を75分にした以外は、(A−1)と同様に行った。得られたPBTの分析値は表1に記した。
(A−8):
(A−1)において、ポリマー中のチタン及びマグネシウム含有量が表1の通りとなる様にテトラブチルチタネート及び酢酸マグネシウム・4水塩の供給量を調節し、第2重縮合反応槽(d)の滞留時間を90分にした以外は、(A−1)と同様に行った。得られたPBTの分析値は表1に記した。
(B)エラストマー
(B−1)エチレンとグリシジルメタクリレートとの共重合体
(住友化学社製、ボンドファースト2C)
(B−2)エポキシ変性スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(ESBS)
(ダイセル化学社製 商品名エポフレンドA1010)
(B−3)エチレン-アクリル酸エチル共重合体
(日本ユニカー社製、商品名エバフレックスEEA A713)
(B−4)アクリル酸アルキル・メタクリル酸アルキル共重合体
(呉羽化学工業製、パラロイド EXL2315)
(C)強化充填剤
(C)強化充填剤ガラス繊維(日本電気硝子社製、繊維径13μm)
(性能評価法)
・流動性:
流動性の指標としてメルトボリュームレート(MVR)を測定した。得られたペレットをISO1133に準拠し測定した。MVRの値が大きいほど流動性が良好で成形しやすく、低い程流動性が悪く成形し難いことを意味する。
・ペレット色調:
日本電色社製色差計(Z−300A型)を使用し、L、a、b表色系におけるb値で評価した。値が低いほど黄ばみが少なく色調が良好であることを示す。
・引張試験:
ISO527に準拠して測定。強度および伸びの単位はそれぞれMPa、%。
・曲げ試験:
ISO178に準拠して測定。強度および弾性率の単位はMPa。
・シャルピー衝撃試験:
ISO179に準拠してノッチつきで測定した。単位はKJ/m
・耐加水分解性試験:ISO引張試験片を、121℃、飽和水蒸気中、203kPaで、100時間湿熱処理し、処理前後のワイパーカバーの引張強度を測定し、次式に従い強度
保持率を求めた。
強度保持率(%)=(処理後の引張強度/処理前の引張強度)×100
・ヒートショック試験:日精TH60 R5VSE縦型射出成形機を用いて、シリンダ温度250℃、金型温度80℃で、図3に示す直方体形状の鉄のインサート物(16mm×33mm×3mm)を、図4に示すように金型内に仕込み、インサート成形により、図5に示すインサート成型品(18mm×35mm×5mm)を作製した。このインサート成型品の樹脂部の肉厚は1mmである。インサート成型品には支持ピン跡に2つのウェルドラインが発生する。このインサート成型品を用いて入江製作所社製DTS−30型ヒートショック試験を行った。
ヒートショック試験の条件は、−40℃で30分、130℃で30分のヒートショック試験にかけ100、200、300および400サイクル後、5個の成型品の計10ヶ所のウェルドラインにおける割れの発生した数を求めた。
Figure 2007091978
Figure 2007091978
表1より明らかな通り、実施例1、5〜8と比較例1を比べると、実施例は耐加水分解性、耐ヒートショック性が良好である。本発明の範囲外であるマグネシウム化合物を添加していない場合には、耐加水分解性と耐ヒートショック性が低下することが判る。
また実施例1、5〜8を、比較例とを比べると実施例は色調が良好であり、また比較例3と比べると、実施例は耐加水分解性と流動性が良好であることが判る。またMg原子の量が多過ぎると、耐加水分解性と流動性が低下することが判る。
実施例1と別種のエポキシ変性エラストマーを配合した実施例2も、実施例1と同様に、良好な結果をしめすことが判る。エポキシで変性していないエラストマーを使用した実施例3、4は実施例1と比べて若干耐加水分解性が低いものの、概ね良好な結果であることが判る。この様に、本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、耐加水分解性、耐ヒートショック性、色調、流動性の4つの特性を同時に改善した、優れたものであることが判る。
そしてこの結果から、本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を成形してなる
樹脂成形品は、機械的物性、耐加水分解性と耐ヒートショック性に優れ、高湿度雰囲気下また温度の高低温の変化に対しても割れの発生が少なく、エンジン部品等の自動車においても有用であることが判る。そして電機・電子機器分野、自動車分野、機械分野等、多分野において幅広く使用出来ることは明白である。
(A)PBT製造における、エステル化(又はエステル交換)反応工程の一例の説明図。 (A)PBT製造における、重縮合工程の一例の説明図。 実施例で用いた、直方体形状のインサート鉄片の模式図。 インサート物を支持ピンで支えられた金型キャビティーの断面概略図。 支持ピン跡に2つのウェルドラインが発生しているインサート成型品の模式図。
符号の説明
1 :原料供給ライン
2 :再循環ライン
3 :チタン触媒供給ライン
4、6、8、11、13 :抜出ライン
5 :留出ライン
7、12 :循環ライン
9 :ガス抜出ライン
10 :凝縮液ライン
14 :ベントライン
15 :2A族金属触媒供給ライン
A :反応槽
B :抜出ポンプ
C :精留塔
D、E :ポンプ
F :タンク
G :コンデンサ
L1、L3 :抜出ライン
L2、L4 :ベントライン
a :第1重縮合反応槽
c :抜出用ギヤポンプ
d :第2重縮合反応槽
e :抜出用ギヤポンプ
g :ダイスヘッド
1’ :インサート鉄片
2’ :インサート物
3’ :支持ピン
4’ :キャビティー
5’ :支持ピン跡
6’ :ウェルドライン

Claims (7)

  1. (A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対して、(B)耐衝撃改良剤0.5〜40重量部、及び(C)強化充填剤0〜150重量部を含有し、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂が(a)チタン化合物と、(b)1族金属化合物及び/または2族金属化合物とを含有し、(a)チタン化合物の含有量が、チタン原子換算で10ppm以上80ppm以下であり、(b)1族金属化合物及び/または2族金属化合物の含有量が、その金属原子換算で1ppm以上50ppm以下であることを特徴とする、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
  2. (a)チタン化合物と、(b)1族金属化合物及び/または2族金属化合物とが、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂を製造する為の重縮合触媒であることを特徴とする請求項1記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
  3. (b)1族金属化合物または2族金属化合物が、マグネシウム化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
  4. (B)耐衝撃改良剤が、エポキシ変性エラストマ−であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物
  5. (B)耐衝撃改良剤がα−オレフィンと、α,β−不飽和酸のグリシジルエステルからなるグリシジル基含有共重合体であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物
  6. 請求項1乃至5のいずれかに記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を成形してなる、ポリブチレンテレフタレート樹脂成形品。
  7. インサート成形方法により成形されたものであることを特徴とする請求項6記載のポリブチレンテレフタレート樹脂成形品。

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