JP2007086601A - 液晶表示装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】暗室コントラストの低下を最小限に留めつつ反射防止性能が良好であり、かつ簡易な構成で、表示品位のみならず、視野角が著しく改善された液晶表示装置を提供すること。
【解決手段】少なくとも、観察者側から、第1偏光板と、液晶層および該液晶層を挟持する一対の基板とを有する液晶セルと、第2偏光板とがこの順序で配置され、黒表示時に該液晶層の液晶分子が前記一対の基板の表面に対して平行に配向する液晶表示装置において、前記第1偏光板が観察者側に、ハードコート層を少なくとも有する保護フィルムを有し、該保護フィルムの内部散乱に起因するヘイズ値が0〜30%であり、表面散乱に起因するヘイズ値が1%未満であり、かつ前記第1偏光板および/または第2偏光板が液晶セル側に光学補償フィルムを有することを特徴とする液晶表示装置。
【選択図】図2

Description

本発明は、液晶表示装置に関し、強誘電性液晶表示装置、反強誘電性液晶表示装置および水平方向に配向したネマチック液晶に横方向の電界を印加することにより表示を行うインプレーンスイッチングモードの液晶表示装置に関する。
液晶表示装置としては、二枚の直交した偏光板の間に、ネマチック液晶をツイスト配列させた液晶層を挟み、電界を基板に対して垂直な方向にかける方式、いわゆるTNモードが広く用いられている。この方式では、黒表示時に液晶が基板に対して立ち上がるために、斜めから見ると液晶分子による複屈折が発生し、光漏れが起こる。この問題に対して、液晶性分子がハイブリッド配向したフィルムを用いることで、液晶セルを光学的に補償し、この光漏れを防止する方式が実用化されている。しかし、液晶性分子を用いても液晶セルを問題なく完全に光学的に補償することは非常に難しく、画面下方向での階調反転が抑えきれないという問題を生じていた。
かかる問題を解決するため、横電界を液晶に対して印加する、いわゆるインプレーンスイッチング(IPS)モードによる液晶表示装置や、誘電率異方性が負の液晶を垂直配向してパネル内に形成した突起やスリット電極によって配向分割した垂直配向(VA)モードが提案され、実用化されている。近年、これらのパネルはモニター用途に留まらず、TV用途として開発が進められている。
これら液晶表示装置においては、外光の反射による像の映り込みを防止するために、ディスプレイの最表面に反射防止フィルムを配置することにより、液晶ディスプレイの高付加価値化が行われている。
従来の反射防止フィルムとしては、表面反射光を拡散することにより、外光の正反射を抑え、外部環境の映り込みを防ぐ、防眩性の反射防止フィルムがある。例えば、特許文献1の反射防止フィルムでは、ハードコート層に適当な微粒子を含有させて表面に凹凸を付与させて外光を拡散させて画面の眩しさを和らげることがなされている。また、特許文献2および3の反射防止フィルムでは、表面微細凹凸形状を有する防眩性ハードコート層上に低屈折率層を1層設けて、表面における外光の拡散に加えて、光干渉の原理を利用して反射率を抑えている。更に、特許文献4の反射防止フィルムでは、低屈折率層の下に高屈折率層を設けて、光干渉を有効に利用して外光反射を低減させている。
しかし、これら防眩性の反射防止フィルムは、表面の微細凹凸で外光を拡散させると同時に、表示画面が白くなる(白呆け)、画像の鮮明性が低下する(画像の呆け)、更には微細凹凸構造のレンズ効果に起因するギラツキ現象という問題が避けられない。ギラツキ現象の改良手段として、表面散乱に加えて従来以上に高い内部散乱性を有する防眩性フィルムに関する技術が開示されている(特許文献5〜9)。
しかしながら、TV用途など、大画面を有する表示装置を比較的離れた位置で視認するアプリケーションにおいては、同一の精細度での画素の大きさが大きくなること、および、視認される距離が遠くなることから、前述したギラツキの問題は軽減される。一方で、前述したギラツキ改良の手段として広く用いられている、高い内部散乱性を有する反射防止フィルムがこのアプリケーションにも用いられていると、高い内部散乱性は暗室でのコントラストの低下の問題を引き起こすため、特にVAモードに比べて暗室コントラストの低いIPSモードの液晶表示装置に対しては、高い内部散乱性を持つ反射防止フィルムは好ましくない。
一方、IPSモードでの暗室コントラストの低下は黒表示時の対角位斜め入射方向での僅かな光漏れが原因として想定されており、色調や黒表示の視野角を改善する手段の一つとして、液晶層と偏光板の間に複屈折特性を有する光学補償材料を配置することが検討されている。例えば、傾斜時の液晶層のレターデーションの増減を補償する作用を有する光軸を互いに直交した複屈折媒体を基板と偏光板との間に配置することで、白表示または中間調表示を斜め方向から直視した場合の色付きが改善できることが開示されている(特許文献10参照)。
特開2000−338310号公報 特開2002−196117号公報 特開2003−161816号公報 特開2003−121620号公報 特開2000−304648号公報 特許第3507719号公報 特開平11−327608号公報 特許第3515401号公報 特許第3515426号公報 特開平9−80424号公報
しかし、提案された方式の多くは、液晶セル中の液晶の複屈折の異方性を打ち消して視野角を改善する方式であるために、直交偏光板を斜めから見た場合の偏光軸交差角度の直交からのズレに基づく光漏れを十分に解決できないという問題がある。また、この光漏れを補償できるとされる方式でも、液晶セルを問題なく完全に光学的に補償することは非常に難しい。さらに、延伸複屈折ポリマーフィルムで光学補償を行うIPSモード液晶セル用光学補償シートでは、複数のフィルムを用いる必要があり、その結果、光学補償シートの厚さが増し、表示装置の薄形化に不利である。また、延伸フィルムの積層には粘着層を用いるため、温湿度変化により粘着層が収縮してフィルム間の剥離や反りといった不良が発生することがあった。
また、反射防止フィルムに関しても、映りこみと暗室コントラスト悪化の防止、およびギラツキ改良を同時に満足する防眩性反射防止フィルムは提案されてないのが現状である。
本発明は前記諸問題に鑑みなされたものであって、暗室コントラストの低下を最小限に留めつつ反射防止性能が良好であり、かつ簡易な構成で、表示品位のみならず、視野角が著しく改善された液晶表示装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための手段は以下のとおりである。
(1)少なくとも、観察者側から、第1偏光板と、液晶層および該液晶層を挟持する一対の基板とを有する液晶セルと、第2偏光板とがこの順序で配置され、黒表示時に該液晶層の液晶分子が前記一対の基板の表面に対して平行に配向する液晶表示装置において、前記第1偏光板が観察者側に、ハードコート層を少なくとも有する保護フィルムを有し、該保護フィルムの内部散乱に起因するヘイズ値が0〜30%であり、表面散乱に起因するヘイズ値が1%未満であり、かつ前記第1偏光板および/または第2偏光板が液晶セル側に光学補償フィルムを有することを特徴とする液晶表示装置。
(2)前記保護フィルムが、透明支持体上に、少なくともハードコート層および該ハードコート層よりも屈折率の低い低屈折率層が積層された反射防止フィルムであることを特徴とする前記(1)に記載の液晶表示装置。
(3)前記低屈折率層が、平均粒径5〜200nmかつ屈折率1.17〜1.40の中
空シリカ微粒子を含有していることを特徴とする前記(2)に記載の液晶表示装置。
(4)前記ハードコート層が、バインダーおよび該バインダーと屈折率の異なる少なくとも一種の透光性粒子を含有していることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の液晶表示装置。
(5)前記液晶表示装置の画面の対角の大きさが20インチ以上であることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の液晶表示装置。
(6)前記光学補償フィルムが、第1光学異方性層および第2光学異方性層の2種類の光学異方性層からなることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の液晶表示装置。
(7)前記第1光学異方性層のレターデーションReが20nm〜150nmであり、(ただしReは、面内の屈折率nxとny(nx≧ny)、厚さ方向の屈折率nz、およびフィルムの厚さd(nm)を用いてRe=(nx−ny)×dで定義される。)
前記第1光学異方性層のNzが1.5〜7であり、
(ただしNz=(nx−nz)/(nx−ny)である。)
前記第2光学異方性層は、面内の屈折率nxとnyが実質的に等しく、nx<nzであり、
前記第2光学異方性層の厚み方向のレターデーションRthが−80nm〜−400nmであり、
(ただし、Rth={(nx+ny)/2−nz}×dである。)
かつ前記第1偏光板における偏光膜の透過軸が、黒表示時の液晶分子の遅相軸方向に平行であることを特徴とする前記(6)に記載の液晶表示装置。
(8)前記第1偏光板が液晶セル側に光学補償フィルムを有し、前記光学補償フィルムが、観察者側から、前記第1光学異方性層および第2光学異方性層の順序で配置され、かつ前記第1異方性層の遅相軸が、前記第1偏光板における偏光膜の透過軸に実質的に平行であることを特徴とする前記(7)に記載の液晶表示装置。
(9)前記第2光学異方性層が、実質的に垂直配向した棒状液晶化合物を含有する光学異方性層であることを特徴とする前記(6)〜(8)のいずれかに記載の液晶表示装置。
(10)前記光学補償フィルムのレターデーションReが190nm〜390nmであり、
前記第1光学異方性層のNzが0.35〜0.65であり、
前記光学補償フィルムのフィルム遅相軸と、前記第1偏光板における偏光膜の透過軸とが形成する小さい方の角度が、0度〜2度または88度〜90度であり、
かつ前記第1偏光板における偏光膜の透過軸が、黒表示時の液晶分子の遅相軸方向に平行であることを特徴とする前記(6)に記載の液晶表示装置。
(11)前記第1偏光板および/または第2偏光板が、前記液晶セル側に、レターデーションRthが40nm〜−50nmである保護膜を有することを特徴とする前記(1)〜(10)のいずれかに記載の液晶表示装置。
(12)前記保護膜が、セルロースアシレートフィルムまたはノルボルネン系フィルムであることを特徴とする前記(11)に記載の液晶表示装置。
本発明の液晶表示装置は、暗室コントラストの低下を最小に抑えつつ、液晶表示面への外光の映り込み・斜めの方位角方向から見た場合に2枚の偏光板の吸収軸が90度からずれることから生ずるコントラストの低下・特に45度の斜め方向からのコントラストの低下や黒表示時の色味の視野角変化を改善することができる。
したがって本発明によれば、暗室コントラストの低下を最小限に留めつつ反射防止性能が良好であり、かつ簡易な構成で、表示品位のみならず、視野角が著しく改善された液晶表示装置を提供することができる。
以下において、本発明の液晶表示装置の一実施形態およびその構成部材について順次説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、「平行」、「直交」とは、厳密な角度±10゜未満の範囲内であることを意味する。この範囲は厳密な角度との誤差は、±5゜未満であることが好ましく、±2゜未満であることがより好ましい。また、「遅相軸」は、屈折率が最大となる方向を意味する。さらに屈折率および位相差の測定波長は特別な記述がない限り、可視光域のλ=550nmでの値である。
本明細書において「偏光板」とは、特に断らない限り、長尺の偏光板および液晶装置に組み込まれる大きさに裁断された(本明細書において、「裁断」には「打ち抜き」および「切り出し」等も含むものとする)偏光板の両者を含む意味で用いられる。また、本明細書では、「偏光膜」および「偏光板」を区別して用いるが、「偏光板」は「偏光膜」の少なくとも片面に該偏光膜を保護する透明保護膜を有する積層体を意味するものとする。
また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」との記載は、「アクリレートおよびメタクリレートの少なくともいずれか」の意味を表す。「(メタ)アクリル酸」等も同様である。
[液晶表示装置]
<第1の実施の形態>
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明の液晶表示装置の画素領域例を示す模式図である。図2および図3は、本発明の液晶表示装置の第一の実施形態の模式図である。
図2に示す液晶表示装置は、偏光膜8、20と、第1光学異方性層10と、第2光学異方性層12と、一対の基板13、17およびこれに挟持される液晶層15からなる液晶セルとを有する。偏光膜8及20は、それぞれ保護膜7aと7bおよび19aと19bによって挟持されている。
図2の液晶表示装置では、液晶セルは、基板13および17と、これらに挟持される液晶層15からなる。液晶層の厚さd(μm)と屈折率異方性Δnとの積Δn・dは透過モードにおいて、ねじれ構造を持たないIPS型では0.2〜0.4μmの範囲が最適値となる。この範囲では白表示輝度が高く、黒表示輝度が小さいことから、明るくコントラストの高い表示装置が得られる。基板13および17の液晶層15に接触する表面には、配向膜(不図示)が形成されていて、液晶分子を基板の表面に対して略平行に配向させるとともに配向膜上に施されたラビング処理方向14および18等により、電圧無印加状態もしくは低印加状態における液晶分子配向方向が制御されていて、遅相軸16の方向が決定されている。また、基板13もしくは17の内面には、液晶分子に電圧印加可能な電極(図2中不図示)が形成されている。
図1に、液晶層15の1画素領域中の液晶分子の配向を模式的に示す。図1は、液晶層15の1画素に相当する程度の極めて小さい面積の領域中の液晶分子の配向を、基板13および17の内面に形成された配向膜のラビング方向4、および基板13および17の内面に形成された液晶分子に電圧印加可能な電極2および3とともに示した模式図である。電界効果型液晶として正の誘電異方性を有するネマチック液晶を用いてアクティブ駆動を行った場合の、電圧無印加状態若しくは低印加状態での液晶分子配向方向は5aおよび5bであり、この時に黒表示が得られる。電極2および3間に印加されると、電圧に応じて液晶分子は6aおよび6b方向へとその配向方向を変える。通常、この状態で明表示を行う。
また、本発明に用いられる液晶セルはIPSモードに限定されることなく、黒表示時に
液晶分子が前記一対の基板の表面に対して実質的に平行に配向する液晶表示装置であれば、いずれも好適に用いることができる。この例としては強誘電性液晶表示装置、反強誘電性液晶表示装置、ECB型液晶表示装置がある。
再び図2において、偏光膜8の透過軸9と、偏光膜20の透過軸21は直交して配置される。また、第1光学異方性層10は、その遅相軸11が偏光膜8の透過軸9と直交に配置される。さらに、偏光膜8の透過軸9と、黒表示時の液晶層15中の液晶分子の遅相軸16とは平行であり、即ち、第1光学異方性層10の遅相軸11と液晶黒表示時の液晶層14の遅相軸16とは直交である。本態様では、後述する特定の光学特性を示す第1光学異方性層10を、この様に配置するとともに、後述する特定の光学特性を有する第2光学異方性層を第1光学異方性層10と液晶セルとの間に配置することで、液晶セルの視野角特性を改善している。
図2に示す液晶表示装置では、偏光膜8が二枚の保護膜7aおよび7bに挟持された構成を示しているが、保護膜7bはなくてもよい。但し、保護膜7bを配置しない場合は、第1光学異方性層10は後述する特定の光学特性を有するとともに、偏光膜8を保護する機能も兼ね備えている必要がある。保護膜7bを配置する場合は、該保護膜の厚み方向のRthは、40nm以下であることが好ましい。また、偏光膜20も二枚の保護膜19aおよび19bに挟持されているが、液晶層15に近い側の保護膜19aはなくてもよい。保護膜19aを配置する場合は、該保護膜の厚み方向のRthの好ましい範囲は、保護膜7bと同様である。また、保護膜7bおよび保護膜19aは、その厚みが薄いのが好ましく、具体的には60nm以下であるのが好ましい。
図2の態様では、偏光膜8を保護膜7aおよび7bにより挟持するとともに前記のように第2光学異方性層12および第1光学異方性層10を配置することにより、第1偏光板を形成している。また、偏光膜20を保護膜19aおよび19bにより挟持することにより、第2偏光板を形成している。
第1光学異方性層10および第2光学異方性層12は、液晶セルの位置を基準にして、液晶セルと観察者側(視認側)の偏光膜8との間に配置されるのが好ましいが、液晶セルと背面側の偏光膜20との間に配置されていてもよい。いずれの態様においても、第1光学異方性層10が液晶セルにより近くなるように配置する。
本発明の他の実施形態を図3に示す。図3中、図2と同一の部材については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。図3に示す液晶表示装置では、第1光学異方性層10と第2光学異方性層12との位置が入れ替わり、第1光学異方性層10が、第2光学異方性層12と比較して偏光膜8からより近い位置、即ち、より液晶セルから遠い位置に配置される。また、図3に示す態様では、第1光学異方性層10は、その遅相軸11が、偏光膜8の透過軸9と平行にして配置される。さらに、偏光膜8の透過軸9と、黒表示時の液晶層14中の液晶分子の遅相軸16とは平行であり、即ち、第1光学異方性層10の遅相軸11と液晶黒表示時の液晶層14の遅相軸16とは平行である。本態様では、後述する特定の光学特性を示す第1光学異方性層10をこの様に配置するとともに、後述する特定の光学特性を有する第2光学異方性層12を第1光学異方性層10と液晶セルとの間に配置することで、液晶セルの視野角特性を改善している。
図3の液晶表示装置においても、上記と同様、保護膜7bまたは保護膜19aはなくてもよい。但し、保護膜7bがない場合は、第2光学異方性層12が、後述する特定の光学特性を有するとともに、偏光膜8を保護する機能も兼ね備えている必要がある。保護膜7bを配置する場合は、該保護膜の厚み方向の位相差Rthは、40nm以下であることが好ましい。また、偏光膜20も二枚の保護膜19aおよび19bに挟持されているが、液晶層15に近い側の保護膜19aはなくてもよい。保護膜19aを配置する場合は、該保
護膜の厚み方向の位相差Rthの好ましい範囲は、保護膜7bと同様である。また、保護膜7bおよび保護膜19aは、その厚みが薄いのが好ましく、具体的には60nm以下であるのが好ましい。
図3の態様では、偏光膜8を保護膜7aおよび7bにより挟持するとともに前記のように第1光学異方性層10および第2光学異方性層12を配置することにより、第1偏光板を形成している。また、偏光膜20を保護膜19aおよび19bにより挟持することにより、第2偏光板を形成している。
なお、図3の態様では、第1光学異方性層10および第2光学異方性層12は、液晶セルの位置を基準にして、液晶セルと視認側の偏光膜8との間に配置されるのが好ましいが、液晶セルと背面側の偏光膜20との間に配置されていてもよい。いずれの態様においても、第1光学異方性層10が液晶セルからより遠くなるように配置する。
本発明の液晶表示装置は、図1〜図3に示す構成に限定されず、他の部材を含んでいてもよい。例えば、液晶層と偏光膜との間にカラーフィルターを配置してもよい。また、偏光膜の保護膜の表面に反射防止処理やハードコートを施しても良い。また、構成部材に導電性を付与したものを使用してもよい。更に、本発明では反射防止フィルムを使用することが好ましい。また、透過型として使用する場合は、冷陰極あるいは熱陰極蛍光管、あるいは発光ダイオード、フィールドエミッション素子、エレクトロルミネッセント素子を光源とするバックライトを背面に配置することができる。この場合、バックライトの配置は図2および図3の上側であっても下側であっても良いが、バックライトを下にしたほうがより好ましい。また、液晶層とバックライトとの間に、反射型偏光板や拡散板、プリズムシートや導光板を配置することもできる。また、上記した様に、本発明の液晶表示装置は、反射型であってもよく、かかる場合は、偏光板は観察側に1枚配置したのみでよく、液晶セル背面あるいは液晶セルの下側基板の内面に反射膜を配置する。もちろん前記光源を用いたフロントライトを液晶セル観察側に設けることも可能である。
本発明の液晶表示装置には、画像直視型、画像投影型や光変調型が含まれる。本発明は、TFTやMIMのような3端子または2端子半導体素子を用いたアクティブマトリックス液晶表示装置に適用した態様が特に有効である。勿論、時分割駆動と呼ばれるパッシブマトリックス液晶表示装置に適用した態様も有効である。
以下、本発明の液晶表示装置に使用可能な種々の部材の好ましい光学特性や部材に用いられる材料、その製造方法等について、詳細に説明する。
本発明では、光学補償フィルムが、第1光学異方性層および第2光学異方性層の2種類の光学異方性層からなることが好ましい。
[第1光学異方性層]
本発明の第1光学異方性層は、面内の屈折率nxとny(nx≧ny)、厚さ方向の屈折率nz、およびフィルムの厚さdを用いてRe=(nx−ny)×dで定義されるレターデーションReが20nm〜150nmであって、斜め方向の光漏れを効果的に低減するためには、第1光学異方性層のReは、40nm〜115nmであるのがより好ましく、60nm〜95nmであるのがさらに好ましい。また、Nz=(nx−nz)/(nx−ny)で定義されるNzが1.5〜7であって、斜め方向の光漏れを効果的に低減するためには、第1光学異方性層のNzは、2.0〜5.5であるのがより好ましく、2.5〜4.5であるのがさらに好ましい。
基本的には前記第1光学異方性層は、前記光学特性を有する限り、その材料および形態については特に制限されない。例えば、複屈折ポリマーフィルムからなる位相差膜、透明支持体上に高分子化合物を塗布後に加熱塩した膜、および透明支持体上に低分子あるいは
高分子液晶性化合物を塗布もしくは転写することによって形成された層を有する位相差膜など、いずれも使用することができる。また、それぞれを積層して使用することもできる。
複屈折ポリマーフィルムとしては、複屈折特性の制御性や透明性、耐熱性に優れるものが好ましい。この場合、用いる高分子材料としては均一な二軸配向が達成できる高分子であれば特に制限はないが、従来公知のもので溶液流延法や押出し成形方式で製膜できるもの好ましく、ノルボルネン系高分子、ポリカーボネート系高分子、ポリアリレート系高分子、ポリエステル系高分子、ポリサルフォン等の芳香族系高分子、セルロースアシレート、または、それらポリマーの2種または3種以上を混合したポリマーなどがあげられる。
フィルムの二軸配向は、押出し成形方式や流延製膜方式等の適宜な方式で製造した当該熱可塑性樹脂からなるフィルムを、例えばロールによる縦延伸方式、テンターによる横延伸方式や二軸延伸方式などにより、延伸処理することにより達成することができる。前記のロールによる縦延伸方式では加熱ロールを用いる方法や雰囲気を加熱する方法、それらを併用する方法等の適宜な加熱方法を採ることができる。またテンターによる二軸延伸方式では全テンター方式による同時二軸延伸方法や、ロール・テンター法による逐次二軸延伸方法などの適宜な方法を採ることができる。
また、配向ムラや位相差ムラの少ないものが好ましい。その厚さは、位相差等により適宜に決定しうるが、一般には薄型化の点より1〜300μm、就中10〜200μm、特に20〜150μmとされる。
ノルボルネン系高分子としては、ノルボルネンおよびその誘導体、テトラシクロドデセンおよびその誘導体、ジシクロペンタジエンおよびその誘導体、メタノテトラヒドロフルオレンおよびその誘導体などのノルボルネン系モノマーの主成分とするモノマーの重合体であり、ノルボルネン系モノマーの開環重合体、ノルボルネン系モノマーとこれと開環共重合可能なその他のモノマーとの開環共重合体、ノルボルネン系モノマーの付加重合体、ノルボルネン系モノマーとこれと共重合可能なその他のモノマーとの付加共重合体、およびの水素添加物などが挙げられる。これらの中でも、耐熱性、機械的強度等の観点から、ノルボルネン系モノマーの開環重合体水素化物が最も好ましい。ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィンの重合体または環状共役ジエンの重合体の分子量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、シクロヘキサン溶液(重合体樹脂が溶解しない場合はトルエン溶液)のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定したポリイソプレンまたはポリスチレン換算の質量平均分子量で、通常5,000〜500,000、好ましくは8,000〜200,000、より好ましくは10,000〜100,000の範囲であるときに、フィルム(A)の機械的強度、および成形加工性とが高度にバランスされて好適である。
セルロースアシレートのアシル基としては、脂肪族基でもアリル基でもよく特に限定されない。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれさらに置換された基を有していてもよく、総炭素数が22以下のエステル基が好ましい。これらの好ましいセルロースアシレートとしては、エステル部の総炭素数が22以下のアシル基(例えば、アセチル、プロピオニル、ブチロイル、バレル、ヘプタノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイルなど)、アリールカルボニル基(アクリル、メタクリルなど)、アリルカルボニルキ(ベンゾイル、ナフタロイルなど)、シンナモイル基を挙げることが出来る。これらの中でも、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートステアレート、セルロースアセテートベンゾエートなどであり、混合エステルの場合はその比率は特に限定されないが
、好ましくはアセテートが総エステルの30モル%以上であることが好ましい。
これらの中でも、セルロースアシレートが好ましく、特に写真用グレードのものが好ましく、市販の写真用グレードのものは粘度平均重合度、置換度等の品質を満足して入手することができる。写真用グレードのセルローストリアセテートのメーカーとしては、ダイセル化学工業(株)(例えばLT−20,30,40,50,70,35,55,105など)、イーストマンコダック社(例えば、CAB−551−0.01、CAB−551−0.02、CAB−500−5、CAB−381−0.5、CAB−381−02、CAB−381−20、CAB−321−0.2、CAP−504−0.2、CAP−482−20、CA−398−3など)、コートルズ社、ヘキスト社等があり、何れも写真用グレードのセルロースアシレートを使用できる。また、フィルムの機械的特性や光学的な特性を制御する目的で、可塑剤、界面活性剤、レターデーション調節剤、UV吸収剤などを今後することが出来る(参考資料:特開2002−277632号公報、特開2002−182215号公報)
透明樹脂をシートまたはフィルム状に成形する方法は、例えば、加熱溶融成形法、溶液流延法のいずれも用いることができる。加熱溶融成形法は、さらに詳細に、押出成形法、プレス成形法、インフレーション成形法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法などに分類できるが、これらの方法の中でも、機械的強度、表面精度等に優れたフィルムを得るためには、押出成形法、インフレーション成形法、およびプレス成形法が好ましく、押出成形法が最も好ましい。成形条件は、使用目的や成形方法により適宜選択されるが、加熱溶融成形法による場合は、シリンダー温度が、好ましくは100〜400℃、より好ましくは150〜350℃の範囲で適宜設定される。上記シートまたはフィルムの厚みは、好ましくは10〜300μm、より好ましくは30〜200μmである。
上記シートまたはフィルムの延伸は、該透明樹脂のガラス転移温度をTgとするとき、好ましくはTg−30℃からTg+60℃の温度範囲、より好ましくはTg−10℃からTg+50℃の温度範囲にて、少なくとも一方向に好ましくは1.01〜2倍の延伸倍率で行う。延伸方向は少なくとも一方向であればよいが、その方向は、シートが押出成形で得られたものである場合には、樹脂の機械的流れ方向(押出方向)であることが好ましく、延伸方法は自由収縮一軸延伸法、幅固定一軸延伸法、二軸延伸法などが好ましい。光学特性の制御はこの延伸倍率と加熱温度を制御することによって行なうことが出来る。
[第2光学異方性層]
本発明の第2光学異方性層の面内屈折率nxとnyは実質的に等しく、厚さ方向の屈折率nzは、nx<nzを満足する。厚さ方向の屈折率nz、およびフィルムの厚さdを用いてRth={(nx+ny)/2−nz}×dで定義される第2光学異方性層の厚み方向のレターデーションRthは、−80nm〜−400nmである。前記第2光学異方性層のRthのより好ましい範囲は、他の光学部材の光学特性に応じて変動し、特に、より近くに位置する偏光膜の保護膜(例えば、トリアセチルセルロースフィルム)のRthに応じて、大きく変動する。斜め方向の光漏れを効果的に低減するためには、第2光学異方性層のRthは、−100nm〜−340nmであるのがより好ましく、−120nm〜−270nmであるのがさらに好ましい。一方、第2光学異方性層のnxとnyは、上記した様に、実質的に同一であり、Reは0近傍の値になる。具体的には、面内レターデーションReは、0〜50nmであるのが好ましく、0〜20nmであるのがより好ましい。
前記第2光学異方性層は、前記光学特性を有する限り、その材料および形態については特に制限されない。例えば、複屈折ポリマーフィルムからなる位相差膜、および透明支持体上に低分子あるいは高分子液晶性化合物を塗布もしくは転写することによって形成された位相差層を有する位相差膜など、いずれも使用することができる。また、それぞれを積
層して使用することもできる。
上記光学特性を有する複屈折ポリマーフィルムからなる位相差膜は、高分子フィルムを膜の厚さ方向に延伸する方法や、ビニルカルバゾール系高分子を塗布して乾燥させる方法(特開2001−091746号公報)で容易に形成できる。また、上記光学特性を有する液晶性化合物から形成された位相差層としては、キラル構造単位を含んだコレステリックディスコチック液晶化合物や組成物を、その螺旋軸を基板に略垂直に配向させたのち固定化して形成した層、屈折率異方性が正の棒状液晶化合物や組成物を基板に略垂直に配向させたのち固定化して形成した層などを例示することができる(例えば、特開平6−331826号公報や特許第2853064号等参照)。棒状液晶化合物は低分子化合物であってもよく、高分子化合物であってもよい。さらに、一の位相差層のみならず複数の位相差層を積層して、上記光学特性を示す第2光学異方性層を構成することもできる。また、支持体と位相差層との積層体全体で上記光学特性を満たすようにして、第2光学異方性層を構成してもよい。用いる棒状液晶化合物としては、配向固定させる温度範囲で、ネマチック液晶相、スメクチック液晶相、リオトロピック液晶相状態をとるものが好適に用いられる。揺らぎの無い均一な垂直配向が得られるスメクチックA相、B相を示す液晶が好ましい。特にまた、添加剤の存在下において、適切な配向温度範囲で、上記液晶状態となる棒状液晶性化合物については、該添加剤と棒状液晶性化合物を含有する組成物を用いて層を形成するのも好ましい。
《棒状液晶性化合物》
本発明の第2光学異方性層は、棒状液晶性化合物を含む組成物から形成してもよい。前記棒状液晶性化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。以上のような低分子液晶性分子だけではなく、高分子液晶性分子も用いることができる。液晶分子には活性光線や電子線、熱などによって重合や架橋反応を起こしうる部分構造を有するものが好適に用いられる。その部分構造の個数は1〜6個、好ましくは1〜3個である。
第2光学異方性層が、棒状液晶性化合物を配向状態に固定して形成された層を含む場合は、棒状液晶性化合物を実質的に垂直配向させて、その状態に固定して形成した光学異方性層を用いるのが好ましい。実質的に垂直とは、フィルム面と棒状液晶性化合物のダイレクターとのなす角度が70°〜90°の範囲内であることを意味する。これらの液晶性化合物は斜め配向させてもよいし、傾斜角が徐々に変化するように(ハイブリッド配向)させてもよい。斜め配向またはハイブリッド配向の場合でも、平均傾斜角は70°〜90°であることが好ましく、80°〜90°がより好ましく、85°〜90°が最も好ましい。
棒状液晶性化合物から形成された光学異方性層は、棒状液晶性化合物、所望により、下記の重合性開始剤や空気界面垂直配向剤や他の添加剤を含む塗布液を、支持体の上に形成された垂直配向膜の上に塗布して、垂直配向させ、該配向状態を固定することで形成することができる。仮支持体上に形成した場合は、該光学異方性層を支持体上に転写することで作製することもできる。さらに、1層の光学異方性層のみならず複数の光学異方性層を積層して、上記光学特性を示す第2光学異方性層を構成することもできる。また、支持体と光学異方性層との積層体全体で上記光学特性を満たすようにして、第2光学異方性層を構成してもよい。
塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例
には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。塗布液の塗布は、公知の方法(例、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により実施できる。
垂直配向させた液晶性化合物は、配向状態を維持して固定するのが好ましい。固定化は、液晶性化合物に導入した重合性基(P)の重合反応により実施することが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれる。光重合反応が好ましい。光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)が含まれる。
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがさらに好ましい。棒状液晶性分子の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、20mJ/cm〜50J/cmであることが好ましく、100〜800mJ/cmであることがさらに好ましい。光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。前記光学違法性層を含む第1光学異方性層の厚さは、0.1〜10μmであることが好ましく、0.5〜5μmであることがさらに好ましく、1〜5μmであることが最も好ましい。
《垂直配向膜》
液晶性化合物を配向膜側で垂直に配向させるためには、配向膜の表面エネルギーを低下させることが重要である。具体的には、ポリマーの官能基により配向膜の表面エネルギーを低下させ、これにより液晶性化合物を立てた状態にする。配向膜の表面エネルギーを低下させる官能基としては、フッ素原子および炭素原子数が10以上の炭化水素基が有効である。フッ素原子または炭化水素基を配向膜の表面に存在させるために、ポリマーの主鎖よりも側鎖にフッ素原子または炭化水素基を導入することが好ましい。含フッ素ポリマーは、フッ素原子を0.05〜80質量%の割合で含むことが好ましく、0.1〜70質量%の割合で含むことがより好ましく、0.5〜65質量%の割合で含むことがさらに好ましく、1〜60質量%の割合で含むことが最も好ましい。炭化水素基は、脂肪族基、芳香族基またはそれらの組み合わせである。脂肪族基は、環状、分岐状あるいは直鎖状のいずれでもよい。脂肪族基は、アルキル基(シクロアルキル基であってもよい)またはアルケニル基(シクロアルケニル基であってもよい)であることが好ましい。炭化水素基は、ハロゲン原子のような強い親水性を示さない置換基を有していてもよい。炭化水素基の炭素原子数は、10〜100であることが好ましく、10〜60であることがさらに好ましく、10〜40であることが最も好ましい。ポリマーの主鎖は、ポリイミド構造またはポリビニルアルコール構造を有することが好ましい。
ポリイミドは、一般にテトラカルボン酸とジアミンとの縮合反応により合成する。二種類以上のテトラカルボン酸あるいは二種類以上のジアミンを用いて、コポリマーに相当す
るポリイミドを合成してもよい。フッ素原子または炭化水素基は、テトラカルボン酸起源の繰り返し単位に存在していても、ジアミン起源の繰り返し単位に存在していても、両方の繰り返し単位に存在していてもよい。ポリイミドに炭化水素基を導入する場合、ポリイミドの主鎖または側鎖にステロイド構造を形成することが特に好ましい。側鎖に存在するステロイド構造は、炭素原子数が10以上の炭化水素基に相当し、液晶性化合物を垂直に配向させる機能を有する。本明細書においてステロイド構造とは、シクロペンタノヒドロフェナントレン環構造またはその環の結合の一部が脂肪族環の範囲(芳香族環を形成しない範囲)で二重結合となっている環構造を意味する。
さらに液晶性化合物を垂直に配向させる手段として、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、またはポリイミドの高分子に有機酸を混合する方法を好適に用いることができる。混合する酸としてはカルボン酸やスルホン酸、アミノ酸が好適に用いられる。後述の空気界面配向剤の内、酸性を示すものを使用してもよい。また、4級アンモニウム塩類も好適に用いることが出来る。その混合量は高分子に対して、0.1質量%〜20質量%であることが好ましく、0.5質量%〜10質量%であることがさらに好ましい。
上記ポリビニルアルコールの鹸化度は、70〜100%が好ましく、80〜100%がさらに好ましい。ポリビニルアルコールの重合度は100〜5000であることが好ましい。
棒状液晶性化合物を配向させる場合、配向膜は、側鎖に疎水性基を官能基として有するポリマーからなるのが好ましい。具体的な官能基の種類は、液晶性分子の種類および必要とする配向状態に応じて決定する。例えば、変性ポリビニルアルコールの変性基は、共重合変性、連鎖移動変性またはブロック重合変性により導入できる。変性基の例には、親水性基(カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、アミノ基、アンモニウム基、アミド基、チオール基等)、炭素数10〜100個の炭化水素基、フッ素原子置換の炭化水素基、チオエーテル基、重合性基(不飽和重合性基、エポキシ基、アジリニジル基等)、アルコキシシリル基(トリアルコキシ、ジアルコキシ、モノアルコキシ)等が挙げられる。これらの変性ポリビニルアルコール化合物の具体例として、例えば、特開2000−155216号公報明細書中の段落番号[0022]〜[0145]、同2002−62426号公報明細書中の段落番号[0018]〜[0022]に記載のもの等が挙げられる。
配向膜を、主鎖に結合した架橋性官能基を有する側鎖を有するポリマーまたは液晶性分子を配向させる機能を有する側鎖に架橋性官能基を有するポリマーを用いて形成し、その上に位相差膜を、多官能モノマーを含む組成物を用いて形成すると、配向膜中のポリマーと、その上に形成される位相差膜中の多官能モノマーとを共重合させることができる。その結果、多官能モノマー間だけではなく、配向膜ポリマー間および多官能モノマーと配向膜ポリマーとの間にも共有結合が形成され、配向膜と位相差膜とが強固に結合される。従って、架橋性官能基を有するポリマーを用いて配向膜を形成することで、光学補償シートの強度を著しく改善することができる。配向膜ポリマーの架橋性官能基は、多官能モノマーと同様に、重合性基を含むことが好ましい。具体的には、例えば特開2000−155216号公報明細書中段落番号[0080]〜[0100]記載のもの等が挙げられる。
配向膜ポリマーは、上記の架橋性官能基とは別に、架橋剤を用いて架橋させることもできる。架橋剤としては、アルデヒド、N−メチロール化合物、ジオキサン誘導体、カルボキシル基を活性化することにより作用する化合物、活性ビニル化合物、活性ハロゲン化合物、イソオキサゾールおよびジアルデヒド澱粉が含まれる。二種類以上の架橋剤を併用してもよい。具体的には、例えば特開2002−62426号公報明細書中の段落番号[0023]〜[0024]記載の化合物等が挙げられる。反応活性の高いアルデヒド、特にグルタルアルデヒドが好ましい。
架橋剤の添加量は、ポリマーに対して0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜15質量%がさらに好ましい。配向膜に残存する未反応の架橋剤の量は、1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。このように調節することで、配向膜を液晶表示装置に長期使用、または高温高湿の雰囲気下に長期間放置しても、レチキュレーション発生のない充分な耐久性が得られる。
配向膜は、基本的に、配向膜形成材料である上記ポリマーおよび架橋剤を含む組成物を透明支持体上に塗布した後、加熱乾燥(架橋させ)し、ラビング処理することにより形成することができる。架橋反応は、前記のように、透明支持体上に塗布した後、任意の時期に行なってよい。ポリビニルアルコールのような水溶性ポリマーを配向膜形成材料として用いる場合には、塗布液は消泡作用のある有機溶媒(例、メタノール)と水の混合溶媒とすることが好ましい。その比率は質量比で水:メタノールが0:100〜99:1が好ましく、0:100〜91:9であることがさらに好ましい。これにより、泡の発生が抑えられ、配向膜、更には光学異方性層表面の欠陥が著しく減少する。
配向膜の塗布方法は、スピンコーティング法、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、ロッドコーティング法またはロールコーティング法が好ましい。特にロッドコーティング法が好ましい。また、乾燥後の膜厚は0.1〜10μmが好ましい。加熱乾燥は、20℃〜110℃で行なうことができる。充分な架橋を形成するためには60℃〜100℃が好ましく、特に80℃〜100℃が好ましい。乾燥時間は1分〜36時間で行なうことができるが、好ましくは1分〜30分である。pHも、使用する架橋剤に最適な値に設定することが好ましく、グルタルアルデヒドを使用した場合は、pH4.5〜5.5で、特に5が好ましい。
配向膜は、透明支持体上に設けられることが好ましい。配向膜は、上記のようにポリマー層を架橋して使用する。棒状液晶性化合物の垂直配向にはラビング処理は行なわないことが好ましい。なお、配向膜を用いて液晶性化合物を配向させてから、その配向状態のまま液晶性化合物を固定して光学異方性層を形成し、光学異方性層のみをポリマーフィルム(または透明支持体)上に転写してもよい。
《空気界面垂直配向剤》
通常、液晶性化合物は、空気界面側では傾斜して配向する性質を有するので、均一に垂直配向した状態を得るために、空気界面側において液晶性化合物を垂直に配向制御することが必要である。この目的のために、空気界面側に偏在して、その排除体積効果や静電気的な効果によって液晶性化合物を垂直に配向させる作用を及ぼす化合物を液晶塗布液に含有させて、光学異方性層を形成するのが好ましい。
空気界面配向剤としては、特開2002−20363号公報、特開2002−129162号公報に記載されている化合物を用いることができる。また、特開2004−53981号公報の段落番号[0072]〜[0075]、特願2002−262239号明細書の段落番号[0037]〜[0039]、特開2004−04688号公報の段落番号[0071]〜[0078]、特開2004−139015号公報の段落番号[0052]〜[0054]、[0065]〜[0066]、[0092]〜[0094]、特開2005−097357号公報の段落番号[0028]〜[0030]、特願2004−003804号明細書の段落番号[0087]〜[0090]に記載される事項も本発明に適宜適用することができる。また、これらの化合物を配合することによって塗布性が改善され、ムラまたはハジキの発生が抑制される。
液晶塗布液への空気界面配向剤の使用量は、0.05質量%〜5質量%であることが好
ましい。また、フッ素系空気界面配向剤を用いる場合は、1質量%以下であることが好ましい。
《光学異方性層中の他の材料》
上記の液晶性化合物と共に、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマー等を併用して、塗工膜の均一性、膜の強度、液晶性化合物の配向性等を向上させることが出来る。これらの素材は液晶性化合物と相溶性を有し、配向を阻害しないことが好ましい。
重合性モノマーとしては、ラジカル重合性もしくはカチオン重合性の化合物が挙げられる。好ましくは、多官能性ラジカル重合性モノマーであり、上記の重合性基含有の液晶化合物と共重合性のものが好ましい。例えば、特開2002−296423号公報明細書中の段落番号[0018]〜[0020]記載のものが挙げられる。上記化合物の添加量は、円盤状液晶性分子に対して一般に1〜50質量%の範囲にあり、5〜30質量%の範囲にあることが好ましい。
界面活性剤としては、従来公知の化合物が挙げられるが、特にフッ素系化合物が好ましい。具体的には、例えば特開2001−330725号公報明細書中の段落番号[0028]〜[0056]記載の化合物、特開2005−62673号公報明細書中の段落番号[0069]〜[0126]記載の化合物が挙げられる。
液晶性化合物とともに使用するポリマーは、塗布液を増粘できることが好ましい。ポリマーの例としては、セルロースエステルを挙げることができる。セルロースエステルの好ましい例としては、特開2000−155216号公報明細書中の段落番号[0178]記載のものが挙げられる。液晶性化合物の配向を阻害しないように、上記ポリマーの添加量は、液晶性分子に対して0.1〜10質量%の範囲にあることが好ましく、0.1〜8質量%の範囲にあることがより好ましい。
[偏光膜用保護膜]
本発明の液晶表示装置は、偏光膜を保護する偏光膜用保護膜を有していてもよい。偏光膜用保護膜は、可視光領域に吸収が無く、光透過率が80%以上であり、複屈折性に基づくレターデーションが小さいものが好ましい。具体的には、面内のReが0〜30nmが好ましく、0〜15nmがより好ましく、0〜5nmが最も好ましい。また、第1光学異方性層が第2光学異方性層と比較してより液晶セルに近い位置に配置される態様、例えば図2に示す態様では、液晶セル側に配置される保護膜(例えば図2中の7bおよび19a)のRthは、40nm以下であることが好ましく、40nm〜−100nmであるのがより好ましく、40nm〜−50nmであるのがさらに好ましく、20nm〜−20nmであるのがさらにより好ましい。また、第2光学異方性層が第1光学異方性層と比較してより液晶セルに近い位置に配置される態様、例えば図3に示す態様では、液晶セル側に配置される保護膜(例えば図3中の7bおよび19a)のRthは、40nm以下であることが好ましく、40nm〜−50nmであるのがより好ましく、20nm〜−20nmであるのがさらに好ましい。もう一方の保護膜(例えば、図2および図3中の7aおよび19b)の光学特性については特に制限はない。
また、保護膜の厚み、特に液晶セル側に配置される保護膜の厚みは、Rthを小さくするという観点から、60μm以下であるのが好ましく、50μm以下であるのがより好ましく、40μm以下があるのがさらに好ましい。但し、保護膜が上記光学特性を満たすために複数の層からなる場合は、厚みの好ましい範囲はこの範囲に限定されない。
保護膜には、上記特性を満足するフィルムであればいずれも好適に使用することができるが、偏光膜の耐久性の観点からは、セルロースアシレートやノルボルネン系のフィルム
を含んでいるのがより好ましい。
ノルボルネン系高分子としては、ノルボルネンおよびその誘導体、テトラシクロドデセンおよびその誘導体、ジシクロペンタジエンおよびその誘導体、メタノテトラヒドロフルオレンおよびその誘導体などのノルボルネン系モノマーの主成分とするモノマーの重合体であり、ノルボルネン系モノマーの開環重合体、ノルボルネン系モノマーとこれと開環共重合可能なその他のモノマーとの開環共重合体、ノルボルネン系モノマーの付加重合体、ノルボルネン系モノマーとこれと共重合可能なその他のモノマーとの付加共重合体、およびの水素添加物などが挙げられる。これらの中でも、耐熱性、機械的強度等の観点から、ノルボルネン系モノマーの開環重合体水素化物が最も好ましい。ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィンの重合体または環状共役ジエンの重合体の分子量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、シクロヘキサン溶液(重合体樹脂が溶解しない場合はトルエン溶液)のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定したポリイソプレンまたはポリスチレン換算の質量平均分子量で、通常5,000〜500,000、好ましくは8,000〜200,000、より好ましくは10,000〜100,000の範囲であるときに、フィルムの機械的強度および成形加工性が高度にバランスされて好適である。
セルロースアシレートとしては、そのアシル基が脂肪族基でもアリル基でもよく特に限定されない。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれさらに置換された基を有していてもよく、総炭素数が22以下のエステル基が好ましい。これらの好ましいセルロースアシレートとしては、エステル部の総炭素数が22以下のアシル基(例えば、アセチル、プロピオニル、ブチロイル、バレル、ヘプタノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイルなど)、アリールカルボニル基(アクリル、メタクリルなど)、アリルカルボニルキ(ベンゾイル、ナフタロイルなど)、シンナモイル基を挙げることが出来る。これらの中でも、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートステアレート、セルロースアセテートベンゾエートなどであり、混合エステルの場合はその比率は特に限定されないが、好ましくはアセテートが総エステルの30モル%以上であることが好ましい。
これらの中でも、セルロースアシレートが好ましく、特に写真用グレードのものが好ましく、市販の写真用グレードのものは粘度平均重合度、置換度等の品質を満足して入手することができる。写真用グレードのセルローストリアセテートのメーカーとしては、ダイセル化学工業(株)(例えばLT−20,30,40,50,70,35,55,105など)、イーストマンコダック社(例えば、CAB−551−0.01、CAB−551−0.02、CAB−500−5、CAB−381−0.5、CAB−381−02、CAB−381−20、CAB−321−0.2、CAP−504−0.2、CAP−482−20、CA−398−3など)、コートルズ社、ヘキスト社等があり、いずれも写真用グレードのセルロースアシレートを使用できる。また、フィルムの機械的特性や光学的な特性を制御する目的で、可塑剤、界面活性剤、レターデーション調節剤、UV吸収剤などを混合することができる(参考資料:特開2002−277632、特開2002−182215)。
透明樹脂をシートまたはフィルム状に成形する方法は、例えば、加熱溶融成形法および溶液流延法のいずれも用いることができる。加熱溶融成形法は、さらに詳細に、押出成形法、プレス成形法、インフレーション成形法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法などに分類できるが、これらの方法の中でも、機械的強度、表面精度等に優れたフィルムを得るためには、押出成形法、インフレーション成形法およびプレス成形法が好ましく、押出成形法が最も好ましい。成形条件は、使用目的や成形方法により適宜選択されるが、加熱溶融成形法による場合は、シリンダー温度が、好ましくは100〜400℃、より好ま
しくは150〜350℃の範囲で適宜設定される。上記シートまたはフィルムの厚みは、好ましくは10〜300μm、より好ましくは30〜200μmである。
上記シートまたはフィルムの延伸は、該透明樹脂のガラス転移温度をTgとするとき、好ましくはTg−30℃からTg+60℃の温度範囲、より好ましくはTg−10℃からTg+50℃の温度範囲にて、少なくとも一方向に好ましくは1.01〜2倍の延伸倍率で行う。延伸方向は少なくとも一方向であればよいが、その方向は、シートが押出成形で得られたものである場合には、樹脂の機械的流れ方向(押出方向)であることが好ましく、延伸方法は自由収縮一軸延伸法、幅固定一軸延伸法、二軸延伸法などが好ましい。光学特性の制御はこの延伸倍率と加熱温度を制御することによって行なうことができる。
セルロースアシレートフィルムのRthを小さくする方法として、非平面構造性の化合物をフィルムに混合することが有効である。また、特開平11−246704号公報、特開2001−247717号公報、特願2003−379975号明細書に記載の方法などが挙げられる。また、セルロースアシレートフィルムの厚みを小さくすることによっても、Rthを小さくすることができる。
Rthが負の光学特性を有する偏光板保護膜は、高分子フィルムを膜の厚さ方向に延伸する方法や(例 特開2000−162436号)、ビニルカルバゾール系高分子を塗布して乾燥させる方法(例 特開2001−091746号公報)で容易に形成できる。また、保護膜は、液晶材料を含んでいてもよく、例えば、Rthが負の光学特性を有する液晶性化合物から形成された位相差層であってもよい。該位相差層としては、キラル構造単位を含んだコレステリックディスコチック液晶化合物や組成物を、その螺旋軸を基板に略垂直に配向させたのち固定化して形成した層、屈折率異方性が正の棒状液晶化合物や組成物を基板に略垂直に配向させたのち固定化して形成した層などを例示することができる(例えば、特開平6−331826号公報や特許第2853064号等参照)。棒状液晶化合物は低分子化合物であってもよく、高分子化合物であってもよい。さらに、一の位相差層のみならず複数の位相差層を積層して、Rthが負の光学特性を示す保護膜を構成することもできる。また、支持体と位相差層との積層体全体でRthが負の光学特性を満たすようにして、保護層を構成してもよい。用いる棒状液晶化合物としては、配向固定させる温度範囲で、ネマチック液晶相、スメクチック液晶相、リオトロピック液晶相状態をとるものが好適に用いられる。揺らぎの無い均一な垂直配向が得られるスメクチックA相、B相を示す液晶が好ましい。特にまた、添加剤の存在下において、適切な配向温度範囲で、上記液晶状態となる棒状液晶性化合物については、該添加剤と棒状液晶性化合物を含有する組成物を用いて層を形成するのも好ましい。
保護膜とその上に設けられる層(接着層、配向膜あるいは位相差層)との接着を改善するため、フィルムに表面処理(例、グロー放電処理、コロナ放電処理、紫外線(UV)処理、火炎処理)を実施してもよい。透明支持体の上に、接着層(下塗り層)を設けてもよい。また、透明支持体や長尺の透明支持体には、搬送工程でのすべり性を付与したり、巻き取った後の裏面と表面の貼り付きを防止するために、平均粒径が10〜100nm程度の無機粒子を固形分質量比で5%〜40%混合したポリマー層を支持体の片側に塗布や支持体との共流延によって形成したものを用いることが好ましい。
また本発明における光学補償フィルムは、レターデーションReが190nm〜390nmであり、第1光学異方性層のNzが0.35〜0.65であり、光学補償フィルムのフィルム遅相軸と、前記第1偏光板における偏光膜の透過軸とが形成する小さい方の角度が、0度〜2度または88度〜90度であり、かつ第1偏光板における偏光膜の透過軸が、黒表示時の液晶分子の遅相軸方向に平行である態様も構成がシンプルであり、好ましい。
[反射防止フィルム]
本発明の液晶表示装置は、前記の第1偏光板と、液晶セルと、第2偏光板とをこの順序で配置し、第1偏光板が観察者側に、ハードコート層を少なくとも有する保護フィルム(反射防止フィルム)を有している。
本発明のフィルムについては、上記のような層を用い、公知の層構成を使用することができる。たとえば、代表的な例としては以下のようなものがある。
a.支持体/ハードコート層
b.支持体/ハードコート層/低屈折率層(図4)
c.支持体/ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層(図5)
d.支持体/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層(図6)
b(図4)のように、支持体上にハードコート層を塗布した上に、低屈折率層を積層すると、反射防止フィルムとして好適に用いることができる。低屈折率層はハードコート層の上に低屈折率層4を光の波長の1/4前後の膜厚で形成することにより、薄膜干渉の原理により表面反射を低減することができる。
また、c(図5)のように支持体上にハードコート層を塗布した上に、高屈折率層、低屈折率層を積層しても反射防止フィルムとして好適に用いることができる。さらに、d(図6)のように支持体、ハードコート層、中屈折率層、高屈折率層、そして低屈折率層の順序の層構成を設置することにより、反射率を1%以下とすることができる。
ハードコート層は、主に透光性樹脂からなり、透光性樹脂中に、透光性樹脂とは異なる屈折率を有する1種以上の透光性粒子を含んでいても良い。
本発明における反射防止層を有する反射防止フィルムを構成する各層の屈折率は以下の関係を満たすことが好ましい。
ハードコート層の屈折率>透明支持体の屈折率>低屈折率層の屈折率
ハードコート層は、本実施形態においては、1層で形成されたものを例示しているが、複数層、例えば2層〜4層で構成されていてもよい。また、本実施形態のように透明支持体上に直接設けてもよいが、帯電防止層や防湿層等の他の層を介して設けてもよい。
(ハードコート層)
本発明の反射防止フィルムには、フィルムの物理的強度を付与するために、少なくとも透明支持体の一方の面にハードコート層が設けられる。本発明においては、ハードコート層の干渉ムラを防止する為に、ハードコート層を透明支持体上に塗布、乾燥、硬化後に、支持体の透明樹脂とハードコート層の電離放射線硬化性樹脂とが混合した混合領域が生成し、透明支持体とハードコート層との間に、混合領域の層が形成される事が好ましい。更にハードコート層上に、低屈折率層が設けられ、好ましくはハードコート層と低屈折率層の間に中屈折率層、高屈折率層が設けられ、本発明の反射防止フィルムを構成する。
本発明の反射防止フィルムは、白呆け、画像の呆け、ギラツキ現象を改善するために、表面を平らにすることが必須である。具体的には表面粗さを示す特性のうち、中心線平均粗さ(Ra)を0.10μm以下とする。Raは、より好ましくは0.09μm以下であり、更に好ましくは0.08μm以下である。本発明の反射防止フィルムにおいては、フィルムの表面凹凸にはハードコート層の表面凹凸が支配的であり、ハードコート層の中心線平均粗さを上記範囲とすることにより、反射防止フィルムの中心線平均粗さを上記範囲とすることができる。
本発明の反射防止フィルムの透過画像鮮明度は60%以上が好ましい。透過画像鮮明度は、一般にフィルムを透過して映す画像の呆け具合を示す指標であり、この値が大きい程、フィルムを通して見る画像が鮮明で良好であることを示す。透過画像鮮明度は好ましくは70%以上であり、更に好ましくは80%以上である。
ここで、透過画像鮮明度は、JIS K 7105に従い、スガ試験機(株)製の写像性測定器(ICM−2D型)にて、スリット幅が5mmの光学櫛を用いて測定できる。
本発明のハードコート層の屈折率は、反射防止性のフィルムを得るための光学設計から、屈折率が1.48〜2.00の範囲にあることが好ましく、より好ましくは1.52〜1.90であり、更に好ましくは1.55〜1.80である。本発明では、ハードコート層の上に低屈折率層が少なくとも1層あるので、屈折率がこの範囲より小さ過ぎると反射防止性が低下し、大き過ぎると反射光の色味が強くなる傾向がある。
ハードコート層の膜厚は、フィルムに充分な耐久性、耐衝撃性を付与する観点から、ハードコート層の厚さは通常0.5μm〜50μm程度とし、好ましくは1μm〜20μm、さらに好ましくは2μm〜10μm、最も好ましくは3μm〜7μmである。
また、ハードコート層の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
さらに、JIS K5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
ハードコート層塗布後に形成される混合領域は、ハードコート層用塗布液の固形分濃度、溶剤種、溶剤組成、電離放射線硬化性化合物の種類、添加剤、ハードコート層が塗布される透明支持体の種類、ハードコート層用塗布液の塗布量、乾燥条件、硬化条件など、様々な条件によって影響を受ける。本発明においては、透明支持体とハードコート層との間に混合領域が形成され、ハードコート層の干渉ムラを抑制する効果があれば、特に上記条件が制限されることは無い。
混合領域の層の厚さは、0.2〜10μmの範囲にあることが好ましく、より好ましくは0.3〜7μmであり、更に好ましくは0.5〜5μmである。混合領域の層の厚さは、反射防止フィルムの断面をミクロトームを用いて切削し、断面から走査型電子顕微鏡(日立製作所製、S−570)を用いて反射電子モードで観察し、撮影された写真より混合領域の層の厚さを求めることができる。
ハードコート層は、電離放射線硬化性化合物の架橋反応、または、重合反応により形成されることが好ましい。例えば、電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーを含む塗布組成物を透明支持体上に塗布し、多官能モノマーや多官能オリゴマーを架橋反応、または、重合反応させることにより形成することができる。
電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーの官能基としては、光、電子線、放射線重合性のものが好ましく、中でも光重合性官能基が好ましい。
光重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の不飽和の重合性官能基等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
光重合性官能基を有する光重合性多官能モノマーの具体例としては、
ネオペンチルグリコールアクリレート、1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類;トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類;ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等の多価アルコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類;2,2−ビス{4−(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル}プロパン、2−2−ビス{4−(アクリロキシ・ポリプロポキシ)フェニル}プロパン等のエチレンオキシドあるいはプロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリル酸ジエステル類;等を挙げることができる。
さらにはエポキシ(メタ)アクリレート類、ウレタン(メタ)アクリレート類、ポリエステル(メタ)アクリレート類も、光重合性多官能モノマーとして、好ましく用いられる。
中でも、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル類が好ましい。さらに好ましくは、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能モノマーが好ましい。具体的には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、1,2,4−シクロヘキサンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、(ジ)ペンタエリスリトールトリアクリレート、(ジ)ペンタエリスリトールペンタアクリレート、(ジ)ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、(ジ)ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールトリアクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサトリアクリレート等が挙げられる。本明細書において、「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリロイル」は、それぞれ「アクリレートまたはメタクリレート」、「アクリル酸またはメタクリル酸」、「アクリロイルまたはメタクリロイル」を表す。
多官能モノマーは、二種類以上を併用してもよい。
光重合性多官能モノマーの重合反応には、光重合開始剤を用いることが好ましい。光重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤と光カチオン重合開始剤が好ましく、特に好ましいのは光ラジカル重合開始剤である。
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーのベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、テトラメチルチウラムモノサルファイドおよびチオキサントン類等が挙げられる。
市販の光ラジカル重合開始剤としては、日本化薬(株)製のKAYACURE(DETX−S,BP−100,BDMK,CTX,BMS,2−EAQ,ABQ,CPTX,EPD,ITX,QTX,BTC,MCAなど)、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製のイルガキュア(651,184,500,907,369,1173,2959,4265,4263など)、サートマー社製のEsacure(KIP100F,KB1,EB3,BP,X33,KT046,KT37,KIP150,TZT)等が挙げられる。
特に、光開裂型の光ラジカル重合開始剤が好ましい。光開裂型の光ラジカル重合開始剤については、「最新UV硬化技術」,(株)技術情報協会,1991年,p.159に記載されている。市販の光開裂型の光ラジカル重合開始剤としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製のイルガキュア(651,184,907)等が挙げられる。
光重合開始剤は、多官能モノマー100質量部に対して、0.1〜15質量部の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは1〜10質量部の範囲である。
光重合開始剤に加えて、光増感剤を用いてもよい。光増感剤の具体例として、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、ミヒラーのケトンおよびチオキサントンを挙げることができる。市販の光増感剤としては、日本化薬(株)製のKAYACURE(DMBI,EPA)などが挙げられる。
光重合反応は、ハードコート層の塗布および乾燥後、紫外線照射により行うことが好ましい。
ハードコート層の架橋または重合しているバインダーは、ポリマーの主鎖が架橋または重合している構造を有する。ポリマーの主鎖の例には、ポリオレフィン(飽和炭化水素)
、ポリエーテル、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミン、ポリアミドおよびメラミン樹脂が含まれる。ポリオレフィン主鎖、ポリエーテル主鎖およびポリウレア主鎖が好ましく、ポリオレフィン主鎖およびポリエーテル主鎖がさらに好ましく、ポリオレフィン主鎖が最も好ましい。
ポリオレフィン主鎖は、飽和炭化水素からなる。ポリオレフィン主鎖は、例えば、不飽和重合性基の付加重合反応により得られる。ポリエーテル主鎖は、エーテル結合(−O−)によって繰り返し単位が結合している。ポリエーテル主鎖は、例えば、エポキシ基の開環重合反応により得られる。ポリウレア主鎖は、ウレア結合(−NH−CO−NH−)によって、繰り返し単位が結合している。ポリウレア主鎖は、例えば、イソシアネート基とアミノ基との縮重合反応により得られる。ポリウレタン主鎖は、ウレタン結合(−NH−CO−O−)によって、繰り返し単位が結合している。ポリウレタン主鎖は、例えば、イソシアネート基と、水酸基(N−メチロール基を含む)との縮重合反応により得られる。ポリエステル主鎖は、エステル結合(−CO−O−)によって、繰り返し単位が結合している。ポリエステル主鎖は、例えば、カルボキシル基(酸ハライド基を含む)と水酸基(N−メチロール基を含む)との縮重合反応により得られる。ポリアミン主鎖は、イミノ結合(−NH−)によって、繰り返し単位が結合している。ポリアミン主鎖は、例えば、エチレンイミン基の開環重合反応により得られる。ポリアミド主鎖は、アミド結合(−NH−CO−)によって、繰り返し単位が結合している。ポリアミド主鎖は、例えば、イソシアネート基とカルボキシル基(酸ハライド基を含む)との反応により得られる。メラミン樹脂主鎖は、例えば、トリアジン基(例、メラミン)とアルデヒド(例、ホルムアルデヒド)との縮重合反応により得られる。なお、メラミン樹脂は、主鎖そのものが架橋または重合構造を有する。
ハードコート層のバインダーには、ハードコート層の屈折率を制御する目的で、高屈折率モノマーまたは無機微粒子、或いは両者を加えることができる。無機微粒子には屈折率を制御する効果に加えて、架橋反応による硬化収縮を抑える効果もある。本発明では、ハードコート層形成後において、前記多官能モノマーおよび/または高屈折率モノマー等が重合して生成した重合体、その中に分散された無機微粒子を含んでバインダーと称する。
高屈折率モノマーの例には、ビス(4−メタクリロイルチオフェニル)スルフィド、ビニルナフタレン、ビニルフェニルスルフィド、4−メタクリロキシフェニル−4’−メトキシフェニルチオエーテル等が含まれる。
無機微粒子の例には、珪素、ジルコニウム、チタン、アルミニウム、インジウム、亜鉛、錫、アンチモンのうちより選ばれる少なくとも一つ金属の酸化物、その他BaSO、CaCO、タルクおよびカオリンなどが含まれ、粒径100nm以下、好ましくは50nm以下であることが好ましい。無機微粒子を100nm以下に微細化することで透明性を損なわないハードコート層を形成できる。
ハードコート層を高屈折率化する目的に対しては、無機微粒子としてはAl、Zr、Zn、Ti、InおよびSnから選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物超微粒子が好ましく、具体例としては、ZrO、TiO、Al、In、ZnO、SnO、Sb、ITO等が挙げられる。これらの中でも、特にZrOが好ましく用いられる。
高屈折率のモノマーや無機微粒子の添加量は、バインダーの全質量の10〜90質量%であることが好ましく、20〜80質量%であると更に好ましい。無機微粒子はハードコート層内で二種類以上用いても良い。
ハードコート層のヘイズは、反射防止フィルムに付与させる機能によって異なる。ここで「ヘイズ」とは、表面の凹凸に起因するヘイズとハードコート層内部の散乱に起因する
ヘイズの合計値である。
画像の鮮明性を維持し、表面の反射率を抑えて、光散乱機能を有さない場合は、ヘイズ値は低い程良く、具体的には10%以下が好ましく、更に好ましくは5%以下であり、最も好ましくは2%以下である。
一方、散乱により液晶パネルの模様や色ムラ、輝度ムラなどを見難くしたり、散乱により視野角を拡大する機能を付与する場合は、ヘイズ値は10%〜30%であることが好ましく、更に好ましくは15%〜25%である。
本発明の反射防止フィルムは、表面凹凸が非常に小さいあるいはほとんど無く、表面ヘイズがほとんど無いフィルムであり、ヘイズを付与する場合は内部ヘイズとして設けることが好ましい。したがって、ハードコート層が内部ヘイズを有する、すなわち内部散乱性を有することが好ましい。
視野角拡大機能を付与する為に、上記ヘイズ値を調整することに加えて、ハードコート層のゴニオフォトメータで測定される散乱光の強度分布(散乱光プロファイル)を調整することが重要である。例えば、液晶ディスプレイの場合、バックライトから出射された光が視認側の偏光板表面に設置された反射防止フィルムで拡散されればされるほど視野角特性が良くなる。しかし、あまり拡散されすぎると、後方散乱が大きくなり、正面輝度が減少する、あるいは、散乱が大きすぎて画像鮮明性が劣化する等の問題が生じる。従って、ハードコート層の散乱光強度分布をある範囲に制御することが必要となる。所望の視認特性を達成するには、散乱光プロファイルの出射角0°の光強度に対して、特に視野角改良効果と相関ある出射角30°の散乱光強度が0.01%〜0.2%であることが好ましく、0.02%〜0.15%が更に好ましく、0.02%〜0.1%が最も好ましい。
散乱光プロファイルは、ハードコート層を設けた反射防止フィルムについて、(株)村上色彩技術研究所製の自動変角光度計GP−5型を用いて測定できる。
ハードコート層に内部散乱性を付与する方法、あるいは所望の散乱プロファイルを付与する方法としては、バインダー(屈折率を調整しうる上記無機粒子などを含む)中に、バインダーと屈折率の異なる透光性粒子を含有させることが好ましい。バインダーと透光性粒子との屈折率差としては、0.02〜0.20であることが好ましい。上記範囲の屈折率の差は、適度な光拡散効果が生じると共に、過度な光拡散効果によりフィルム全体が白化する心配もない。なお、前記屈折率差は、0.03〜0.15がより好ましく、0.04〜0.13が最も好ましい。
バインダーと透光性粒子の組み合わせは、上記屈折率差を調整する目的で、適宜選択できる。
透光性粒子の粒子径は、0.5μm〜5μmであることが好ましい。粒径が上記範囲であれば、光拡散効果が適度であり、後方散乱が小さく光の利用効率が十分となると共に、表面の凹凸が小さく白呆けやギラツキ現象が殆ど発生しない。なお、前記透光性粒子の粒径は、0.7μm〜4.5μmが好ましく、1.0μm〜4.0μmが最も好ましい。
ハードコート層に透光性粒子を含有させる場合には、該粒子による表面凹凸が生成しないように、ハードコート層の膜厚を調整する必要がある。通常は膜厚を大きくして粒子の突起がハードコート表面から突出しないようにすることで、表面粗さRa(中心線平均粗さ)を0.10μm以下にすることができる。
透光性粒子は有機粒子であっても、無機粒子であってもよい。粒径にばらつきがないほど、散乱特性にばらつきが少なくなり、ヘイズ値の設計が容易となる。透光性微粒子としては、プラスチックビーズが好適であり、特に透明度が高く、バインダーとの屈折率差が前述のような数値になるものが好ましい。
有機粒子としては、ポリメチルメタクリレートビーズ(屈折率1.49)、アクリル−
スチレン共重合体ビーズ(屈折率1.54)、メラミンビーズ(屈折率1.57)、ポリカーボネートビーズ(屈折率1.57)、スチレンビーズ(屈折率1.60)、架橋ポリスチレンビーズ(屈折率1.61)、ポリ塩化ビニルビーズ(屈折率1.60)、ベンゾグアナミン−メラミンホルムアルデヒドビーズ(屈折率1.68)等が用いられる。
無機粒子としては、シリカビーズ(屈折率1.44)、アルミナビーズ(屈折率1.63)等が用いられる。
透光性粒子の粒径は、前述のように0.5〜5μmのものを適宜選択して用いるとよく、2種類以上混合して用いてもよく、バインダー100質量部に対して5〜30質量部含有させるとよい。
上記のような透光性粒子の場合には、バインダー中で透光性粒子が沈降し易いので、沈降防止のためにシリカ等の無機フィラーを添加してもよい。なお、無機フィラーは添加量が増す程、透光性微粒子の沈降防止に有効であるが、塗膜の透明性に悪影響を与える。従って、好ましくは、粒径0.5μm以下の無機フィラーを、バインダーに対して塗膜の透明性を損なわない程度に、0.1質量%未満程度含有させるとよい。
ハードコート層を形成するための塗布液の溶剤は、支持体とハードコート層の間に混合領域を形成する為に、本発明においては、支持体を溶解または膨潤させる性質を持った溶剤を選択する必要がある。これは、塗布液にそのような溶剤を用いれば、塗布直後から支持体を溶解あるいは膨潤しつつハードコート層を形成する為に、支持体をハードコート層の界面が不明確になると同時に、ハードコート層の樹脂成分と支持体の樹脂成分が混合した領域の層が形成される。
また、ハードコート層表面の凹凸の制御(凹凸を小さくする、あるいは平らにする)およびハードコート層の強度の両立を図るために、透明支持体(例えばトリアセチルセルロース支持体)を溶解しない溶剤を、少なくとも一種類以上混合するのが好ましい。より好ましくは、透明支持体を溶解する溶剤のうちの少なくとも一種類が、透明支持体を溶解しない溶剤のうちの少なくとも一種類よりも高沸点であることが好ましい。さらに好ましくは、透明支持体を溶解する溶剤のうち最も沸点の高い溶剤と、透明支持体を溶解しない溶剤のうち最も沸点の高い溶剤との沸点温度差が30℃以上であることであり、最も好ましくは50℃以上であることである。
支持体がセルロースアシレートフィルムの場合、支持体を溶解または膨潤させる性質を持った溶剤としては、
炭素子数が3〜12のエーテル類:具体的には、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、1,3,5−トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトール等、
炭素数が3〜12のケトン類:具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、およびメチルシクロヘキサノン等、
炭素数が3〜12のエステル類:具体的には、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸n−ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン醸エチル、酢酸n−ペンチル、およびγ−プチロラクトン等、
2種類以上の官能基を有する有機溶媒:具体的には、2−メトキシ酢酸メチル、2−エトキシ酢酸メチル、2−エトキシ酢酸エチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシエタノール、2−プロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、1,2−ジアセトキシアセトン、アセチルアセトン、ジアセトンアルコール、アセト酢酸メチル、およびアセト酢酸エチル等、
が挙げられる。
これらは1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。透明支持体を溶解する溶剤としてはケトン系溶剤が好ましく、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンが特に好ましい。
透明支持体(好ましくはトリアセチルセルロース)を溶解しない溶剤として、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノール、シクロヘキサノール、酢酸イソブチル、メチルイソブチルケトン、2−オクタノン、2−ペンタノン、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ペンタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、トルエンが挙げられる。
これらは1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
透明支持体を溶解する溶剤の総量(A)と透明支持体を溶解しない溶剤の総量(B)の質量割合(A/B)は、10/90〜100/0が好ましく、より好ましくは20/80〜100/0であり、さらに好ましく30/70〜100/0である。
<ハードコート層用界面活性剤>
本発明のハードコート層は、特に塗布ムラ、乾燥ムラ、点欠陥等の面状均一性を確保するために、フッ素系、シリコーン系の何れかの界面活性剤、あるいはその両者をハードコート層形成用の塗布組成物中に含有することが好ましい。特にフッ素系の界面活性剤は、より少ない添加量において、本発明の反射防止フィルムの塗布ムラ、乾燥ムラ、点欠陥等の面状故障を改良する効果が現れるため、好ましく用いられる。
面状均一性を高めつつ、高速塗布適性を持たせることにより生産性を高めることが目的である。
フッ素系の界面活性剤の好ましい例としては、フルオロ脂肪族基含有共重合体(「フッ素系ポリマー」と略記することもある)が挙げられ、該フッ素系ポリマーは、下記(i)のモノマーに相当する繰り返し単位および、下記(ii)のモノマーに相当する繰り返し単位を含むフルオロ脂肪族基含有共重合体であることが好ましい。
(i)下記一般式イで表されるフルオロ脂肪族基含有モノマー
Figure 2007086601
一般式イにおいてRは水素原子またはメチル基を表し、Xは酸素原子、イオウ原子ま
たは−N(R12)−を表し、mは1以上6以下の整数、nは2〜4の整数を表す。nは3であることが好ましい。R12は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基を表し、好ましくは水素原子またはメチル基である。Xは酸素原子が好ましい。
(ii)前記(i)と共重合可能な下記一般式ロで示されるモノマー
Figure 2007086601
一般式ロにおいて、R13は水素原子またはメチル基を表し、Yは酸素原子、イオウ原子または−N(R15)−を表し、R15は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基を表し、好ましくは水素原子またはメチル基である。Yは酸素原子、−N(H)−、および−N(CH)−が好ましい。
14は置換基を有しても良い炭素数4以上20以下の直鎖、分岐または環状のアルキル基を表す。R14のアルキル基の置換基としては、水酸基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、カルボキシル基、アルキルエーテル基、アリールエーテル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基等があげられるがこの限りではない。炭素数4以上20以下の直鎖、分岐または環状のアルキル基としては、直鎖および分岐してもよいブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基、エイコサニル基等、また、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の単環シクロアルキル基およびビシクロヘプチル基、ビシクロデシル基、トリシクロウンデシル基、テトラシクロドデシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、テトラシクロデシル基、等の多環シクロアルキル基が好適に用いられる。
本発明で用いられるフッ素系ポリマー中に用いられるこれらの一般式イで示されるフルオロ脂肪族基含有モノマーの量は、該フッ素系ポリマーの各単量体に基づいて10質量%以上であり、好ましくは20〜80質量%であり、より好ましくは35〜70モル%の範囲である。
本発明で用いられるフッ素系ポリマーの好ましい質量平均分子量は、3000〜100,000が好ましく、5,000〜50,000がより好ましく、8,000〜30,000が最も好ましい。
更に、本発明で用いられるフッ素系ポリマーの好ましい添加量は、塗布液に対して0.001〜1質量%の範囲であり、好ましくは0.005〜0.5質量%の範囲であり、更に好ましくは0.01〜0.25質量%の範囲である。フッ素系ポリマーの添加量が0.001質量%未満では効果が不十分であり、また1質量%より多くなると、塗膜の乾燥が
十分に行われなくなったり、塗膜としての性能(例えば反射率、耐擦傷性)に悪影響を及ぼす。
以下、一般式イで表されるフルオロ脂肪族基含有モノマーからなるフッ素系ポリマーの具体的な構造の例を示すがこの限りではない。なお式中の数字は各モノマー成分のモル比率を示す。Mwは質量平均分子量を表す。
Figure 2007086601
Figure 2007086601
Figure 2007086601
Figure 2007086601
Figure 2007086601
またハードコート層上に低屈折率層をオーバーコートする時点で表面エネルギーの低下を防げば、反射防止性能の悪化が防げる。ハードコート層塗布時にはフッ素系ポリマーを用いて塗布液の表面張力を下げて面状均一性を高め、高速塗布による高生産性を維持し、ハードコート層塗布後にコロナ処理、UV処理、熱処理、鹸化処理、溶剤処理といった表面処理手法を用いて、特に好ましいのはコロナ処理であるが、表面自由エネルギーの低下を防ぐことにより、低屈折率層塗布前のハードコート層の表面エネルギーを前記範囲に制御することでも目的を達成することができる。
また、本発明のハードコート層を形成する為の塗布組成物中に、チクソトロピー剤を添加しても良い。チクソトロピー剤としては、0.1μm以下のシリカ、マイカ等があげられる。これら添加剤の含有量は、通常、紫外線硬化型樹脂100質量部に対して、1〜10質量部程度とするのが好適である。
(低屈折率層)
本発明の反射防止フィルムは、最外層に低屈折率層を有するのが好ましい。低屈折率層の屈折率は1.20〜1.46が好ましく、1.25〜1.41がより好ましく、最も好ましくは1.30〜1.39である。さらに、低屈折率層は下記数式(1)を満たすことが低反射率化の点で好ましい。
数式(1): (m/4)λ×0.7<n<(m/4)λ×1.3
上記数式(1)中、mは正の奇数であり、nは低屈折率層の屈折率であり、そして
は低屈折率層の膜厚(nm)である。また、λは波長であり、500〜550nmの範囲の値である。なお、上記数式(1)を満たすとは、上記波長の範囲において数式(1)を満たすm(正の奇数、通常1である)が存在することを意味している。
低屈折率層には、低屈折率バインダーとして、含フッ素ポリマー、あるいは含フッ素ゾルゲル素材などが含まれる。含フッ素ポリマーあるいは含フッ素ゾルゲルとしては、熱または電離放射線により架橋し、形成される低屈折率層表面の動摩擦係数0.03〜0.15であり、水に対する接触角90〜120°となる素材が好ましい。本発明の低屈折率層には膜強度向上のための無機フィラーを用いることもできる。
低屈折率層に用いられる含フッ素ポリマーとしてはパーフルオロアルキル基含有シラン化合物(例えば(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシラン)の加水分解、脱水縮合物の他、含フッ素モノマー単位と架橋反応性付与のための構成単位を構成成分とする含フッ素共重合体が挙げられる。
含フッ素モノマー単位の具体例としては、例えばフルオロオレフィン類(例えばフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール等)、(メタ)アクリル酸の部分または完全フッ素化アルキルエステル誘導体類(例えばビスコート6FM(大阪有機化学工業(株)製)やM−2020(ダイキン工業(株)製)等)、完全または部分フッ素化ビニルエーテル類等が挙げられるが、好ましくはパーフルオロオレフィン類であり、屈折率、溶解性、透明性、入手性等の観点から特に好ましくはヘキサフルオロプロピレンである。
架橋反応性付与のための構成単位としてはグリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテルのように分子内にあらかじめ自己架橋性官能基を有するモノマーの重合によって得られる構成単位、カルボキシル基やヒドロキシ基、アミノ基、スルホ基等を有するモノマー(例えば(メタ)アクリル酸、メチロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアクリレート、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、マレイン酸、クロトン酸等)の重合によって得られる構成単位、これらの構成単位に高分子反応によって(メタ)アクリロイル基等の架橋反応性基を導入した構成単位(例えばヒドロキシル基に対してアクリル酸クロリドを作用させる等の手法で導入できる)が挙げられる。
また上記含フッ素モノマー単位、架橋反応性付与のための構成単位以外に溶剤への溶解性、皮膜の透明性等の観点から適宜フッ素原子を含有しないモノマーを共重合することもできる。併用可能なモノマー単位には特に限定はなく、例えばオレフィン類(エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等)、アクリル酸エステル類(アクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル)、メタクリル酸エステル類(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、エチレングリコールジメタクリレート等)、スチレン誘導体(スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等)、ビニルエーテル類(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等)、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、桂皮酸ビニル等)、アクリルアミド類(N−tertブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド等)、メタクリルアミド類、アクリロ二トリル誘導体等を挙げることができる。
上記のポリマーに対しては特開平10−25388号および特開平10−147739号の各公報に記載のごとく適宜硬化剤を併用してもよい。
本発明で特に有用な含フッ素ポリマーは、パーフルオロオレフィンとビニルエーテル類またはビニルエステル類のランダム共重合体である。特に単独で架橋反応可能な基((メタ)アクリロイル基等のラジカル反応性基、エポキシ基、オキセタニル基等の開環重合性基等)を有していることが好ましい。これらの架橋反応性基含有重合単位はポリマーの全重合単位の5〜70mol%を占めていることが好ましく、特に好ましくは30〜60mol%の場合である。含フッ素ポリマーの好ましい具体例としては、特開2004−45462号公報の[0035]〜[0047]に記載されたものを挙げることができ、該公報に記載の方法により合成することができる。
また本発明の含フッ素ポリマーには防汚性を付与する目的で、ポリシロキサン構造が導入されていることが好ましい。ポリシロキサン構造の導入方法に制限はないが例えば特開平11−189621号、同11−228631号、特開2000−313709号の各公報に記載のごとく、シリコーンマクロアゾ開始剤を用いてポリシロキサンブロック共重合成分を導入する方法、特開平2−251555号、同2−308806号の各公報に記載のごとくシリコーンマクロマーを用いてポリシロキサングラフト共重合成分を導入する方法が好ましい。これらのポリシロキサン成分はポリマー中の0.5〜10質量%であることが好ましく、特に好ましくは1〜5質量%である。また、特開2003−329804号公報の[0011]〜[0045]に記載された化合物も本発明に好ましく用いることができる。
防汚性付与に対しては上記以外にも反応性基含有ポリシロキサン(例えばKF−100T,X−22−169AS,KF−102,X−22−3701IE,X−22−164B,X−22−5002,X−22−173B,X−22−174D,X−22−167B,X−22−161AS(以上商品名、信越化学工業(株)製)、AK−5,AK−30,AK−32(以上商品名、東亜合成(株)製)、サイラプレーンFM0275,サイラプレーンFM0721(以上商品名、チッソ(株)製)等)を添加する手段も好ましい。この際これらのポリシロキサンは低屈折率層全固形分の0.5〜10質量%の範囲で添加されることが好ましく、特に好ましくは1〜5質量%の場合である。
本発明の低屈折率層中に、低屈折率と耐擦傷性を両立させる目的で、中空のシリカ微粒子を含有させる。
中空のシリカ微粒子の屈折率は1.17〜1.40が好ましく、更に好ましくは1.17〜1.35、最も好ましくは1.17〜1.30である。ここでの屈折率は粒子全体としての屈折率を表し、中空シリカ微粒子を形成している外殻のシリカのみの屈折率を表すものではない。この時、粒子内の空腔の半径をa、粒子外殻の半径をbとすると、空隙率xは下記数式(2)で算出される。
数式(2): x=(4πa/3)/(4πb/3)×100
空隙率xは、好ましくは10〜60%、更に好ましくは20〜60%、最も好ましくは30〜60%である。中空のシリカ微粒子をより低屈折率に、より空隙率を大きくしようとすると、外殻の厚みが薄くなり、粒子の強度としては弱くなるため、耐擦傷性の観点から1.17未満の低屈折率の粒子は成り立たない。
なお、これら中空シリカ微粒子の屈折率はアッベ屈折率計(アタゴ(株)製)にて測定をおこなった。
中空シリカ微粒子の製造方法は、例えば特開2001−233611号公報や特開2002−79616号公報に記載されている。
中空シリカ微粒子の塗設量は、1mg/m〜100mg/mが好ましく、より好ましくは5mg/m〜80mg/m、更に好ましくは10mg/m〜60mg/m
である。塗設量が上記範囲であると、低屈折率化の効果や耐擦傷性の改良効果が発現すると共に、低屈折率層表面に微細な凹凸が発生せず、黒の締まりなどの外観や積分反射率が悪化する心配もない。
中空シリカ微粒子の平均粒径は、5nm以上200nm以下であり、20nm以上150nm以下が好ましく、より好ましくは30nm以上80nm以下、更に好ましくは、40nm以上60nm以下である。
中空シリカ微粒子の粒径が上記範囲であれば、空腔部の割合が適度で屈折率が低下し、かつ低屈折率層表面に微細な凹凸に基づく黒の締まりといった外観、積分反射率の悪化がない。
中空シリカ微粒子の外殻部分のシリカは、結晶質でも、アモルファスのいずれでも良い。また中空シリカ微粒子のサイズ分布は、単分散粒子が好ましいが、多分散粒子でも、所定の粒径を満たすならば凝集粒子でも構わない。形状は、球形が最も好ましいが、不定形であっても問題無い。
ここで、中空シリカ微粒子の平均粒径は電子顕微鏡写真から求めることができる。
本発明においては、耐擦傷性向上の目的に対し、中空シリカ微粒子と併用して、その他の無機フィラーを含有することができる。
該無機フィラーは、低屈折率層に含有させることから、低屈折率であることが望ましい。例えば、フッ化マグネシウムやシリカが挙げられる。特に、屈折率、分散安定性、コストの点で、空腔のないシリカ微粒子が好ましい。空腔のないシリカ微粒子の好ましい粒子サイズは、30nm以上150nm以下、更に好ましくは35nm以上80nm以下、最も好ましくは40nm以上60nm以下である。
また、平均粒径が低屈折率層の厚みの25%未満であるシリカ微粒子(「小サイズ粒径のシリカ微粒子」と称す)の少なくとも1種を上記の粒径のシリカ微粒子(「大サイズ粒径のシリカ微粒子」と称す)と併用することが好ましい。
小サイズ粒径のシリカ微粒子は、大サイズ粒径のシリカ微粒子同士の隙間に存在することができるため、大サイズ粒径のシリカ微粒子の保持剤として寄与することができる。
小サイズ粒径のシリカ微粒子の平均粒径は、1nm以上20nm以下が好ましく、5nm以上15nm以下が更に好ましく、10nm以上15nm以下が特に好ましい。このようなシリカ微粒子を用いると、原料コストおよび保持剤効果の点で好ましい。
シリカ微粒子は、分散液中あるいは塗布液中で、分散安定化を図るために、あるいはバインダー成分との親和性、結合性を高めるために、プラズマ放電処理やコロナ放電処理のような物理的表面処理、界面活性剤やカップリング剤等による化学的表面処理がなされていても良い。カップリング剤の使用が特に好ましい。カップリング剤としては、アルコキシメタル化合物(例、チタンカップリング剤、シランカップリング剤)が好ましく用いられる。なかでも、シランカップリング剤が好ましく、後述する一般式(1)および(2)で表されるオルガノシラン化合物が好ましく、アクリロイル基またはメタクリロイル基を有するシランカップリング剤による処理が特に有効である。
上記カップリング剤は、低屈折率層の無機フィラーの表面処理剤として該層塗布液調製以前にあらかじめ表面処理を施すために用いてもよいが、該層塗布液調製時にさらに添加剤として添加して該層に含有させることが好ましい。
シリカ微粒子は、表面処理前に、媒体中に予め分散されていることが、表面処理の負荷軽減のために好ましい。
本発明では、ハードコート層と低屈折率層のうちの少なくとも1層には、オルガノシラン化合物の加水分解物およびその部分縮合物の少なくともいずれか、いわゆるゾル成分(以降このように称する)を含有することが耐擦傷性の点で好ましく、ハードコート層と低
屈折率層の両方に含有することが、より好ましい。
オルガノシランのゾルの適宜な含有量は、添加する層によっても異なるが、低屈折率層への添加量は低屈折率層の全固形分の0.1〜50質量%が好ましく、0.5〜20質量%がより好ましく、1〜10質量%が特に好ましい。
低屈折率層における、含フッ素ポリマーに対するオルガノシランのゾルの使用量は、ゾルの使用の効果、層の屈折率、および形成される層の形状・面状等の観点から、5〜100質量%が好ましく、5〜40質量%がより好ましく、8〜35質量%が更に好ましく、10〜30質量%が特に好ましい。
ハードコート層へのオルガノシランのゾルの添加量は、ハードコート層の全固形分の0.5〜50質量%が好ましく、1〜30質量%がより好ましく、2〜20質量%が特に好ましい。それ以外の層への添加量は、含有層(添加層)の全固形分の0.001〜50質量%が好ましく、0.01〜20質量%がより好ましく、0.05〜10質量%が更に好ましく、0.1〜5質量%が特に好ましい。
用いられるオルガノシラン化合物は、下記一般式(1)で表すことができる。
一般式(1): (R10−Si(X)4−m
上記一般式(1)において、R10は置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表す。
Xは加水分解可能な基を表し、例えばアルコキシ基(炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましい。例えばメトキシ基、エトキシ基等が挙げられる)、ハロゲン(例えばCl、Br、I等)、またはRCOO(Rは水素原子または炭素数1〜5のアルキル基が好ましい。例えばCHCOO、CCOO等が挙げられる)が挙げられ、好ましくはアルコキシ基であり、特に好ましくはメトキシ基またはエトキシ基である。
mは1〜3の整数を表す。R10もしくはXが複数存在するとき、複数のR10もしくはXはそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。mとしては、好ましくは1または2であり、特に好ましくは1である。
10に含まれる置換基としては特に制限はないが、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素等)、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基(メチル、エチル、i−プロピル、プロピル、t−ブチル等)、アリール基(フェニル、ナフチル等)、芳香族ヘテロ環基(フリル、ピラゾリル、ピリジル等)、アルコキシ基(メトキシ、エトキシ、i−プロポキシ、ヘキシルオキシ等)、アリールオキシ(フェノキシ等)、アルキルチオ基(メチルチオ、エチルチオ等)、アリールチオ基(フェニルチオ等)、アルケニル基(ビニル、1−プロペニル等)、アシルオキシ基(アセトキシ、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ等)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル、エトキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(フェノキシカルボニル等)、カルバモイル基(カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N−メチル−N−オクチルカルバモイル等)、アシルアミノ基(アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ、アクリルアミノ、メタクリルアミノ等)等が挙げられ、これら置換基は更に置換されていてもよい。
10が複数ある場合は、少なくとも一つが置換アルキル基もしくは置換アリール基であることが好ましい。
一般式(1)で表されるオルガノシラン化合物の中でも、下記一般式(2)で表されるビニル重合性の置換基を有するオルガノシラン化合物が好ましい。
一般式(2):
Figure 2007086601
一般式(2)においてRは、水素原子、アルキル基(メチル基、エチル基等)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基等)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等)、シアノ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子等)を表す。なかでも、水素原子、メチル基、メトキシ基、メトキシカルボニル基、シアノ基、フッ素原子、および塩素原子が好ましく、水素原子、メチル基、メトキシカルボニル基、フッ素原子、および塩素原子が更に好ましく、水素原子およびメチル基が特に好ましい。
Yは、単結合、エステル基、アミド基、エーテル基、またはウレア基を表す。なかでも、単結合、エステル基、およびアミド基が好ましく、単結合およびエステル基が更に好ましく、エステル基が特に好ましい。
Lは2価の連結基を表す。具体的には、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアリーレン基、内部に連結基(例えば、エーテル、エステル、アミドなど)を有する置換もしくは無置換のアルキレン基、内部に連結基を有する置換もしくは無置換のアリーレン基が挙げられる。なかでも、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアリーレン基、および内部に連結基を有するアルキレン基が好ましく、無置換のアルキレン基、無置換のアリーレン基、および内部にエーテルあるいはエステルからなる連結基を有するアルキレン基が更に好ましく、無置換のアルキレン基、および内部にエーテルあるいはエステルからなる連結基を有するアルキレン基が特に好ましい。置換基は、ハロゲン、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基、アリール基等が挙げられ、これら置換基は更に置換されていてもよい。
nは0または1を表す。Xが複数存在するとき、複数のXはそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。nとして好ましくは0である。
10は、一般式(1)と同義であり、置換もしくは無置換のアルキル基、無置換のアリール基が好ましく、無置換のアルキル基、無置換のアリール基が更に好ましい。
Xは、一般式(1)と同義であり、ハロゲン、水酸基、および無置換のアルコキシ基が好ましく、塩素原子、水酸基、および無置換の炭素数1〜6のアルコキシ基が更に好ましく、水酸基、および炭素数1〜3のアルコキシ基が更に好ましく、メトキシ基が特に好ましい。
オルガノシラン化合物として、一般式(1)、一般式(2)で表される化合物を、2種類以上を併用してもよい。以下に一般式(1)、一般式(2)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2007086601
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Figure 2007086601
Figure 2007086601
Figure 2007086601
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M−48 メチルトリメトキシシラン
M―49 トリメチルメトキシシラン
M―50 トリエチルメトキシシラン
これらの化合物のうち、M−1、M―2、M−19、M―20、M―21、M―24、M−48、M―49を用いることが好ましい。重合性基を持つ化合物と重合性基を持たない化合物を併用する時には、上記の中からそれぞれを選択して用いることが好ましい。
オルガノシランの加水分解・縮合反応は、無溶媒でも、溶媒中でも行うことができるが成分を均一に混合するために有機溶媒を用いることが好ましく、例えばアルコール類、芳香族炭化水素類、エーテル類、ケトン類、エステル類などが好適である。
溶媒は、オルガノシランと触媒を溶解させるものが好ましい。また、有機溶媒を塗布液あるいは塗布液の一部として用いることが工程上好ましく、含フッ素ポリマーなどのその他の素材と混合した場合に、溶解性あるいは分散性を損なわないものが好ましい。
このうち、アルコール類としては、例えば1価アルコールまたは2価アルコールを挙げることができ、このうち1価アルコールとしては炭素数1〜8の飽和脂肪族アルコールが好ましい。これらのアルコール類の具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテルなどを挙げることができる。
また、芳香族炭化水素類の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどを、エーテル類の具体例としては、テトラヒドロフラン、ジオキサンなど、ケトン類の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトンなどを、エステル類の具体例としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、炭酸プロピレンなどを挙げることができる。
これらの有機溶媒は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することもできる。
該反応における固形分の濃度は特に限定されるものではないが通常1%〜90%の範囲であり、好ましくは20%〜70%の範囲である。
オルガノシランの加水分解・縮合反応は、触媒の存在下で行われることが好ましい。触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸類;シュウ酸、酢酸、ギ酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸等の有機酸類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の無機塩基類;トリエチルアミン、ピリジン等の有機塩基類;トリイソプロポキシアルミニウム、テトラブトキシジルコニウム等の金属アルコキシド類;Zr、TiまたはAlなどの金属を中心金属とする金属キレート化合物等が挙げられるが、ゾル液の製造安定性やゾル液の保存安定性の点から、酸触媒(無機酸類、有機酸類)および金属キレート化合物が好ましい。酸触媒としては、無機酸では塩酸、硫酸、有機酸では、水中での酸解離定数(pKa値(25℃))が4.5以下のものが好ましく、塩酸、硫酸、水中での酸解離定数が3.0以下の有機酸がより好ましく、塩酸、硫酸、水中での酸解離定数が2.5以下の有機酸が更に好ましく、水中での酸解離定数が2.5以下の有機酸が更に好ましく、メタンスルホン酸、シュウ酸、フタル酸、マロン酸が更に好ましく、シュウ酸が特に好ましい。
加水分解・縮合反応は、通常、オルガノシランの加水分解性基1モルに対して0.3〜2モル、好ましくは0.5〜1モルの水を添加し、上記溶媒の存在下あるいは非存在下に、そして好ましくは触媒の存在下に、25〜100℃で、撹拌することにより行われる。
加水分解性基がアルコキシドで触媒が有機酸の場合には、有機酸のカルボキシル基やス
ルホ基がプロトンを供給するために、水の添加量を減らすことができ、オルガノシランのアルコキシド基1モルに対する水の添加量は、0〜2モル、好ましくは0〜1.5モル、より好ましくは、0〜1モル、特に好ましくは、0〜0.5モルである。アルコールを溶媒に用いた場合には、実質的に水を添加しない場合も好適である。
触媒の使用量は、触媒が無機酸の場合には加水分解性基に対して0.01〜10モル%、好ましくは0.1〜5モル%であり、触媒が有機酸の場合には、水の添加量によって最適な使用量が異なるが、水を添加する場合には加水分解性基に対して0.01〜10モル%、好ましくは0.1〜5モル%であり、実質的に水を添加しない場合には、加水分解性基に対して1〜500モル%、好ましくは10〜200モル%であり、より好ましくは20〜200モル%であり、更に好ましくは50〜150モル%であり、特に好ましくは50〜120モル%である。
反応は25〜100℃で撹拌することにより行われるが、オルガノシランの反応性により適宜調節されることが好ましい。
金属キレート化合物は、一般式ROH(式中、Rは炭素数1〜10のアルキル基を示す)で表されるアルコールとRCOCHCOR(式中、Rは炭素数1〜10のアルキル基、Rは炭素数1〜10のアルキル基または炭素数1〜10のアルコキシ基を示す)で表される化合物とを配位子とした、Zr、Ti、Alから選ばれる金属を中心金属とするものであれば特に制限なく好適に用いることができる。この範疇であれば、2種以上の金属キレート化合物を併用しても良い。本発明に用いられる 金属キレート化合物は、一般式Zr(ORp1(RCOCHCORp2、Ti(ORq1(RCOCHCORq2、およびAl(ORr1(RCOCHCORr2で表される化合物群から選ばれるものが好ましく、前記オルガノシラン化合物の加水分解物および/または部分縮合物の縮合反応を促進する作用をなす。
金属キレート化合物中のRおよびRは、同一または異なってもよく炭素数1〜10のアルキル基、具体的にはエチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、フェニル基などである。また、Rは、前記と同様の炭素数1〜10のアルキル基のほか、炭素数1〜10のアルコキシ基、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基などである。また、金属キレート化合物中のp1、p2、q1、q2、r1、およびr2は、それぞれp1+p2=4、q1+q2=4、r1+r2=3となる様に決定される整数を表す。
これらの金属キレート化合物の具体例としては、トリ−n−ブトキシエチルアセトアセテートジルコニウム、ジ−n−ブトキシビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、n−ブトキシトリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(n−プロピルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウムなどのジルコニウムキレート化合物;ジイソプロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタニウム、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセテート)チタニウム、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセトン)チタニウムなどのチタニウムキレート化合物;ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、ジイソプロポキシアセチルアセトナートアルミニウム、イソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、イソプロポキシビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノアセチルアセトナート・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウムなどのアルミニウムキレート化合物などが挙げられる。
これらの金属キレート化合物のうち好ましいものは、トリ−n−ブトキシエチルアセトアセテートジルコニウム、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナート)チタニウム、ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、トリス(エチルアセトアセテー
ト)アルミニウムである。これらの金属キレート化合物は、1種単独であるいは2種以上混合して使用することができる。また、これらの金属キレート化合物の部分加水分解物を使用することもできる。
本発明の金属キレート化合物は、縮合反応の速度および塗膜にした場合の膜強度の観点から、オルガノシランに対し、好ましくは、0.01〜50質量%、より好ましくは、0.1〜50質量%、さらに好ましくは、0.5〜10質量%の割合で用いられる。
本発明に係る低屈折率層を形成するために用いる塗布液の溶媒組成としては、単独および混合のいずれでもよく、混合のときは、沸点が100℃以下の溶媒が50〜100%であることが好ましく、より好ましくは80〜100%、より好ましくは90〜100%、さらに好ましくは100%である。沸点が100℃以下の溶媒が上記範囲であると、乾燥速度が速く、塗布面状が良好であり、塗布膜厚が均一であるため、反射率などの光学特性も良好である。
沸点が100℃以下の溶媒としては、例えば、ヘキサン(沸点68.7℃、以下「℃」を省略する)、ヘプタン(98.4)、シクロヘキサン(80.7)、ベンゼン(80.1)などの炭化水素類、ジクロロメタン(39.8)、クロロホルム(61.2)、四塩化炭素(76.8)、1,2−ジクロロエタン(83.5)、トリクロロエチレン(87.2)などのハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル(34.6)、ジイソプロピルエーテル(68.5)、ジプロピルエーテル(90.5)、テトラヒドロフラン(66)などのエーテル類、ギ酸エチル(54.2)、酢酸メチル(57.8)、酢酸エチル(77.1)、酢酸イソプロピル(89)などのエステル類、アセトン(56.1)、2−ブタノン(=メチルエチルケトン、79.6)などのケトン類、メタノール(64.5)、エタノール(78.3)、2−プロパノール(82.4)、1−プロパノール(97.2)などのアルコール類、アセトニトリル(81.6)、プロピオニトリル(97.4)などのシアノ化合物類、二硫化炭素(46.2)、などが挙げられる。このうちケトン類、エステル類が好ましく、特に好ましくはケトン類である。ケトン類の中では2−ブタノンが特に好ましい。
沸点が100℃以上の溶媒としては、例えば、オクタン(125.7)、トルエン(110.6)、キシレン(138)、テトラクロロエチレン(121.2)、クロロベンゼン(131.7)、ジオキサン(101.3)、ジブチルエーテル(142.4)、酢酸イソブチル(118)、シクロヘキサノン(155.7)、2−メチル−4−ペンタノン(=MIBK、115.9)、1−ブタノール(117.7)、N,N−ジメチルホルムアミド(153)、N,N−ジメチルアセトアミド(166)、ジメチルスルホキシド(189)、などがある。好ましくは、シクロヘキサノン、2−メチル−4−ペンタノンである。
低屈折率層成分を前述の組成の溶媒で希釈することにより、低屈折率層用塗布液が調製される。塗布液濃度は、塗布液の粘度、層素材の比重などを考慮して適宜調節されることが好ましいが、0.1〜20質量%が好ましく、より好ましくは1〜10質量%である。
次に、ゾルゲル法による低屈折率層(態様2)について説明する。
低屈折率層用の素材として、各種ゾルゲル素材を用いることもできる。このようなゾルゲル素材としては、金属アルコレート(シラン、チタン、アルミニウム、ジルコニウム等のアルコレート)、オルガ ノアルコキシ金属化合物、およびその加水分解物を用いることができる。特に、アルコキシシラン、オルガノアルコキシシランおよびその加水分解物が好ましい。これらの例としては、テトラアルコキシシラン(テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等)、アルキルトリアルコキシシラン(メチルトリメトキシシラン、
エチルトリメトキシシラン等)、アリールトリアルコキシシラ ン(フェニルトリメトキシシラン等)、ジアルキルジアルコキシシラン、ジアリールジアルコキシシラン等が挙 げられる。また、各種の官能基を有するオルガノアルコキシシラン(ビニルトリアルコキシシラン、メチルビニルジアルコキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリアルコキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルメチルジアルコキシシラン、β−(3,4−エポキジシ クロヘキシル)エチルトリアルコキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリアルコキシシラン、γ−アミノプロピルトリアルコキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、γ−クロロプロピルトリアルコキシシラン等)、パーフルオロアルキル基含有シラン化合物(例えば(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラデシル)トリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等)を用いることも好ましい。特にフッ素含有のシラン化合物を用いることは、層の低屈折率化および撥水・撥油性付与の点で好ましい。
低屈折率層として、無機もしくは有機の微粒子を用い、微粒子間または微粒子内のミクロボイドと して形成した層を用いることも好ましい。微粒子の平均粒径は、0.5〜200mmであることが好ましく、1〜100nmであることがより好ましく、3〜70nmであることがさらに好ましく、5〜40nmの範囲であることが最も好ましい。微粒子の粒径は、なるべく均一(単分散)であることが好ましい。
無機微粒子としては、非晶質であることが好ましい。無機微粒子は、金属の酸化物、窒化物、硫化物またはハロゲン化物からなることが好ましく、金属酸化物または金属ハロゲン化物からなることがさらに好ましく、金属酸化物または金属フッ化物からなることが最も好ましい。金属原子としては、Na、K、Mg、Ca、Ba、Al、Zn、Fe、Cu、Ti、Sn、In、W、Y、Sb、Mn、Ga、V、Nb、Ta、Ag、Si、B、Bi、Mo、Ce、Cd、Be、PbおよびNiが好ましく、Mg、Ca、BおよびSiがさらに好ましい。二種類の金属を含む無機化合物を用いてもよい。特に好ましい無機化合物は、二酸化ケイ素、すなわちシリカである。
無機微粒子内ミクロボイドは、例えば、粒子を形成するシリカの分子を架橋させることにより形成することができる。シリカの分子を架橋させると体積が縮小し、粒子が多孔質になる。ミクロボイドを有する(多孔質)無機微粒子は、ゾル−ゲル法(特開昭53−112732号、特公昭57−9051号の各公報記載)または析出法(APPLIEDOPTICS、27、3356頁(1988)記載)により、分散物として直接合成することができる。
また、乾燥・沈澱法で得られた粉体を、機械的に粉砕して分散物を得ることもできる。市販の多孔質無機微粒子(例えば、二酸化ケイ素ゾル)を用いてもよい。ミクロボイドを有する無機微粒子は、低屈折率層の形成のため、適当な媒体に分散した状態で使用することが好ましい。分散媒としては、水、アルコール(例、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール)およびケトン(例、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)が好ましい。
有機微粒子も、非晶質であることが好ましい。有機微粒子は、モノマーの重合反応(例えば乳化重合法)により合成されるポリマー微粒子であることが好ましい。有機微粒子のポリマーはフッ素原子を含むことが好ましい。ポリマー中のフッ素原子の割合は、35〜80質量%であることが好ましく、45〜75質量%であることがさらに好ましい。また、有機微粒子内に、例えば、粒子を形成するポリマーを架橋させ、体積を縮小させることによりミクロボイドを形成させることも好ましい。
粒子を形成するポリマーを架橋させるためには、ポリマーを合成するためのモノマーの20モル%以上を多官能モノマーとすることが好ましい。多官能モノマーの割合は、30〜80モル%であることがさらに好ましく、35〜50モル%であることが最も好ましい
。上記有機微粒子の合成に用いられるモノマーとしては、含フッ素ポリマーを合成するために用いるフッ素原子を含むモノマーの例として、フルオロオレフィン類(例、フルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)、アクリル酸またはメタクリル酸のフッ素化アルキルエステル類およびフッ素化ビニルエーテル類が挙げられる。フッ素原子を含むモノマーとフッ素原子を含まないモノマーとのコポリマーを用いてもよい。フッ素原子を含まないモノマーの例としては、オレフィン類(例、エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン)、アクリル酸エステル類(例、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル)、メタクリル酸エステル類(例、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル)、スチレン類(例、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン)、ビニルエーテル類(例、メチルビニルエーテル)、ビニルエステル類(例、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル)、アクリルアミド類(例、N−tert−ブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド)、メタクリルアミド類およびアクリルニトリル類が挙げられる。多官能モノマーの例としては、ジエン類 (例、ブタジエン、ペンタジエン)、多価アルコールとアクリル酸とのエステル(例、エチレングリコールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)、多価アルコールとメタクリル酸とのエステル(例、エチレングリコールジメタクリレート、1,2,4−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート)、ジビニル化合物(例、ジビニルシクロヘキサン、1,4−ジビニルベンゼン)、ジビニルスルホン、ビスアクリルアミド類(例、メチレンビスアクリルアミド)およびビスメタクリルアミド類が挙げられる。
粒子間のミクロボイドは、微粒子を少なくとも2個以上積み重ねることにより形成することができる。なお、粒径が等しい(完全な単分散の)球状微粒子を最密充填すると、26体積%の空隙率の微粒子間ミクロボイドが形成される。粒径が等しい球状微粒子を単純立方充填すると、48体積%の空隙率の微粒子間ミクロボイドが形成される。実際の低屈折率層では、微粒子の粒径の分布や粒子内ミクロボイドが存在するため、空隙率は上記の理論値からかなり変動する。空隙率を増加させると、低屈折率層の屈折率が低下する。微粒子を積み重ねてミクロボイドを形成と、微粒子の粒径を調整することで、粒子間ミクロボイドの大きさも適度の(光を散乱せず、低屈折率層の強度に問題が生じない)値に容易に調節できる。さらに、微粒子の粒径を均一にすることで、粒子間ミクロボイドの大きさも均一である光学的に均一な低屈折率層を得ることができる。これにより、低屈折率層は微視的にはミクロボイド含有多孔質膜であるが、光学的あるいは巨視的には均一な膜にすることができる。粒子間ミクロボイドは、微粒子およびポリマーによって低屈折率層内で閉じていることが好ましい。閉じている空隙には、低屈折率層表面に開かれた開口と比較して、低屈折率層表面での光の散乱が少ないとの利点もある。
ミクロボイドを形成することにより、低屈折率層の巨視的屈折率は、低屈折率層を構成する成分の屈折率の和よりも低い値になる。層の屈折率は、層の構成要素の体積当りの屈折率の和になる。微粒子やポリマーのような低屈折率層の構成成分の屈折率は1よりも大きな値であるのに対して、空気の屈折率は1.00である。そのため、ミクロボイドを形成することによって、屈折率が非常に低い低屈折率層を得ることができる。
低屈折率層は、5〜50質量%の量のポリマーを含むことが好ましい。ポリマーは、微粒子を接着し、空隙を含む低屈折率層の構造を維持する機能を有する。ポリマーの使用量は、空隙を充填することなく低屈折率層の強度を維持できるように調整する。ポリマーの量は、低屈折率層の全量の10〜30質量%であることが好ましい。ポリマーで微粒子を接着するためには、(1)微粒子の表面処理剤にポリマーを結合させるか、(2)微粒子をコアとして、その周囲にポリマーシェル を形成するか、あるいは(3)微粒子間のバ
インダーとして、ポリマーを使用する、ことが好ましい。(1)の表面処理剤に結合させるポリマーは、(2)のシェルポリマーまたは(3)のバインダーポリマーであることが好ましい。(2)のポリマーは、低屈折率層の塗布液の調製前に、微粒子の周囲に重合反応により形成することが好ましい。(3)のポリマーは、低屈折率層の塗布液にモノマーを添加し、低屈折率層の塗布と同時または塗布後に、重合反応により形成することが好ましい。上記 (1)〜(3)のうちの二つまたはすべてを組み合わせて実施することが好ましく、(1)と(3)の組み合わせ、または(1)〜(3)すべてを組み合わせで実施することが特に好ましい。(1)表面処理、(2)シェルおよび(3)バインダーについて、順次説明する。
(1)表面処理
微粒子(特に無機微粒子)には、表面処理を実施して、ポリマーとの親和性を改善することが好ましい。表面処理は、プラズマ放電処理やコロナ放電処理のような物理的表面処理と、カップリング剤を使用する化学的表面処理に分類できる。化学的表面処理のみ、または物理的表面処理と化学的表面処理の組み合わせで実施することが好ましい。カップリング剤としては、オルガノアルコキシメタル化合物(例、チタンカップリング剤、シランカップリング剤)が好ましく用いられる。微粒子が二酸化ケイ素からなる場合は、シランカップリング剤による表面処理が特に有効に実施できる。具体的なシランカップリング剤の例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシエトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリアセトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(β−グリシジルオキシエトキシ)プロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポシシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランおよびβ−シアノエチルトリエトキシシランが挙げられる。
また、ケイ素に対して2置換のアルキル基を持つシランカップリング剤の例として、ジメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルフェニルジエトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシランおよびメチルビニルジエトキシシランが挙げられる。
これらのうち、分子内に二重結合を有するビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシエトキシシラン、γ−ア
クリロイルオキシプロピルトリメトキシシランおよびγ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、ケイ素に対して2置換のアルキル基を持つものとしてγ−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシランおよびメチルビニルジエトキシシランが好ましく、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランおよびγ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシランおよびγ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシランが特に好ましい。
二種類以上のカップリング剤を併用してもよい。上記に示されるシランカップリング剤に加えて、他のシランカップリングを用いてもよい。他のシランカップリング剤には、オルトケイ酸のアルキルエステル(例、オルトケイ酸メチル、オルトケイ酸エチル、オルトケイ酸n−プロピル、オルトケイ酸i−プロピル、オルトケイ酸n−ブチル、オルトケイ酸sec−ブチル、オルトケイ酸t−ブチル)およびその加水分解物が挙げられる。カップリング剤による表面処理は、微粒子の分散物 に、カップリング剤を加え、室温から60℃までの温度で、数時間から10日間分散物を放置することにより実施できる。表面処理反応を促進するため、無機酸(例、硫酸、塩酸、硝酸、クロム酸、次亜塩素酸、ホウ酸、オルトケイ酸、リン酸、炭酸)、有機酸(例、酢酸、ポリアクリル酸、ベンゼンスルホン酸、フェノール、ポリグルタミン酸)、またはこれらの塩(例、金属塩、アンモニウム塩)を、分散物に添加してもよい。
(2)シェル
シェルを形成するポリマーは、飽和炭化水素を主鎖として有するポリマーであることが好ましい。フッ素原子を主鎖または側鎖に含むポリマーが好ましく、フッ素原子を側鎖に含むポリマーがさらに好ましい。ポリアクリル酸エステルまたはポリメタクリル酸エステルが好ましく、フッ素置換アルコールとポリアクリル酸またはポリメタクリル酸とのエステルが最も好ましい。シェルポリマーの屈折率は、ポリマー中のフッ素原子の含有量の増加に伴い低下する。低屈折率層の屈折率を低下させるため、シェルポリマーは35〜80質量%のフッ素原子を含むことが好ましく、45〜75質量%のフッ素原子を含むことがさらに好ましい。フッ素原子を含むポリマーは、フッ素原子を含むエチレン性不飽和モノマーの重合反応により合成することが好ましい。フッ素原子を含むエチレン性不飽和モノマーの例としては、フルオロオレフィン(例、フルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキ ソール)、フッ素化ビニルエーテルおよびフッ素置換アルコールとアクリル酸またはメタクリル酸とのエステルが挙げられる。
シェルを形成するポリマーは、フッ素原子を含む繰り返し単位とフッ素原子を含まない繰り返し単位からなるコポリマーであってもよい。フッ素原子を含まない繰り返し単位は、フッ素原子を含まないエチレン性不飽和モノマーの重合反応により得ることが好ましい。フッ素原子を含まないエチレン性不飽和モノマーの例としては、オレフィン(例、エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン)、アクリル酸エステル(例、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル)、メタクリル酸エステル(例、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、エチレングリコールジメタクリレート)、スチレンおよびその誘導体(例、スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン)、ビニルエーテル(例、メチルビニルエーテル)、ビニルエステル(例、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、桂皮酸ビニル)、アクリルアミド(例、N−tertブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド)、メタクリルアミドおよびアクリロニトリルが挙げられる。
後述する(3)のバインダーポリマーを併用する場合は、シェルポリマーに架橋性官能基を導入し て、シェルポリマーとバインダーポリマーとを架橋により化学的に結合させてもよい。シェルポリマーは、結晶性を有していてもよい。シェルポリマーのガラス転移温度(Tg)が低屈折率層の形成時の温度よりも高いと、低屈折率層内のミクロボイドの維持が容易である。ただし、Tgが低屈折率層の形成時の温度よりも高いと、微粒子が融着せず、低屈折率層が連続層として形成されない(その結果、強度が低下する)場合がある。その場合は、後述する(3)のバインダーポリマーを併用し、バインダーポリマーにより低屈折率層を連続層として形成することが望ましい。微粒子の周囲にポリマーシェルを形成して、コアシェル微粒子が得られる。コアシェル微粒子中に無機微粒子からなるコアが5〜90体積%含まれていることが好ましく、15〜80体積%含まれていることがさらに好ましい。二種類以上のコアシェル微粒子を併用してもよい。また、シェルのない無機微粒子とコアシェル粒子とを併用してもよい。
(3)バインダー
バインダーポリマーは、飽和炭化水素またはポリエーテルを主鎖として有するポリマーであることが好ましく、飽和炭化水素を主鎖として有するポリマーであることがさらに好ましい。バインダーポリマーは架橋していることが好ましい。飽和炭化水素を主鎖として有するポリマーは、エチレン性不飽和モノマーの重合反応により得ることが好ましい。架橋しているバインダーポリマーを得るためには、二以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーを用いることが好ましい。二以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの例としては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル(例、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ジクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート)、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート)、ビニルベンゼンおよびその誘導体(例、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン)、ビニルスルホン(例、ジビニルスルホン)、アクリルアミド(例、メチレンビスアクリルアミド)およびメタクリルアミドが挙げられる。ポリエーテルを主鎖として有するポリマーは、多官能エポシキ化合物の開環重合反応により合成することが好ましい。
二以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの代わりまたはそれに加えて、架橋性基の反応により、架橋構造をバインダーポリマーに導入してもよい。
架橋性官能基の例としては、イソシアナート基、エポキシ基、アジリジン基、オキサゾリン基、アルデヒド基、カルボニル基、ヒドラジン基、カルボキシル基、メチロール基および活性メチレン基が挙げられる。ビニルスルホン酸、酸無水物、シアノアクリレート誘導体、メラミン、エーテル化メチロール、エステルおよびウレタンも、架橋構造を導入するためのモノマーとして利用できる。ブロックイソシアナート基のように、分解反応の結果として架橋性を示す官能基を用いてもよい。また、本発明において架橋基とは、上記化合物に限らず上記官能基が分解した結果反応性を示すものであってもよい。バインダーポリマーの重合反応および架橋反応に使用する。
重合開始剤は、熱重合開始剤や、光重合開始剤が用いられるが、光重合開始剤の方がより好ましい。光重合開始剤の例としては、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類や芳香族スルホニウム類がある。アセトフェノン類の例としては、
2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、1−ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メ チル−4−メチルチオ−2−モルフォリノプロピオフェノンおよび2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノンが挙げられる。ベンゾイン類の例としては、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテルおよびベンゾインイソプロピルエーテルが挙げられる。ベンゾフェノン類の例としては、ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノンおよびp−クロロベンゾフェノンが挙げられる。ホスフィンオキシド 類の例としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドが挙げられる。
バインダーポリマーは、低屈折率層の塗布液にモノマーを添加し、低屈折率層の塗布と同時または塗布後に重合反応(必要ならばさらに架橋反応)により形成することが好ましい。低屈折率層の塗布液に、少量のポリマー(例、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、ニトロセルロース、ポリエステル、アルキド樹脂)を添加してもよい。
本発明の反射防止フィルムは以下の方法で形成することができるが、この方法に制限されない。
<透明支持体>
本発明の防眩性反射防止フィルムの透明支持体としては、プラスチックフィルムを用いることが好ましい。
[塗布液の調整]
まず、各層を形成するための成分を含有した塗布液が調製される。その際、溶剤の揮発量を最小限に抑制することにより、塗布液中の含水率の上昇を抑制できる。塗布液中の含水率は5%以下が好ましく、2%以下がより好ましい。溶剤の揮発量の抑制は、各素材をタンクに投入後の攪拌時の密閉性を向上すること、移液作業時の塗布液の空気接触面積を最小化すること等で達成される。また、塗布中、或いはその前後に塗布液中の含水率を低減する手段を設けてもよい。
ハードコート層を形成する塗布液中には、直接その上に形成される低屈折率層の乾燥膜厚(50nm〜120nm程度)に相当する異物を概ね全て(90%以上を指す)除去できるろ過をすることが好ましい。光拡散性を付与する為の透光性微粒子が低屈折率層の膜厚と同等以上であるため、前記ろ過は、透光性微粒子以外の全ての素材を添加した中間液に対して行うことが好ましい。また、前記のような粒径の小さな異物を除去可能なフィルターが入手できない場合には、少なくとも直接その上に形成される層のウエット膜厚(1〜10μm程度)に相当する異物を概ね全て除去できるろ過をすることが好ましい。このような手段により、直接その上に形成される層の点欠陥を減少することができる。
[塗布方式]
塗布方式としては、各種公知の塗布方式を使用しても良い。すなわち、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やダイコート法により透明支持体上に塗布し、加熱・乾燥するが、グラビアコート法、ワイヤーバーコート法、ダイコート法が面状の均一性の観点からより好ましく、ダイコート法が特に好ましい。更に、特開2003−200097号公報、特開2003−211052号公報に記載されているような、構成を工夫したダイを使用して塗布を行うことが最も好ましい。
[乾燥]
ハードコート層および低屈折率層は、基材フィルム上に直接または他の層を介して塗布された後、溶剤を乾燥するために加熱されたゾーンにウェブで搬送される。その際の乾燥ゾーンの温度は25℃〜140℃が好ましく、乾燥ゾーンの前半は比較的低温であり、後半は比較的高温であることが好ましい。但し、各層の塗布組成物に含有される溶剤以外の成分の揮発が始まる温度以下であることが好ましい。例えば、紫外線硬化樹脂と併用される市販の光ラジカル発生剤のなかには120℃の温風中で数分以内にその数10%前後が揮発してしまうものもあり、また、単官能、2官能のアクリレートモノマー等は100℃の温風中で揮発が進行するものもある。そのような場合には、前記のように各層の塗布組成物に含有される溶剤以外の成分の揮発が始まる温度以下であることが好ましい。
また、各層の塗布組成物を基材フィルム上に塗布した後の乾燥風は、前記塗布組成物の固形分濃度が1〜50%の間は塗膜表面の風速が0.1〜2m/秒の範囲にあることが、乾燥ムラを防止するために好ましい。
また、各層の塗布組成物を基材フィルム上に塗布した後、乾燥ゾーン内で基材フィルムの塗布面とは反対の面に接触する搬送ロールと基材フィルムとの温度差が0℃〜20℃以内とすると、搬送ロール上での伝熱ムラによる乾燥ムラが防止でき、好ましい。
[硬化]
溶剤の乾燥ゾーンの後に、ウェブで電離放射線および/または熱により各塗膜を硬化させるゾーンを通過させ、塗膜を硬化する。例えば塗膜が紫外線硬化性であれば、紫外線ランプにより10mJ/cm〜1000mJ/cmの照射量の紫外線を照射して各層を硬化するのが好ましい。その際、ウェブの幅方向の照射量分布は中央の最大照射量に対して両端まで含めて50〜100%の分布が好ましく、80〜100%の分布がより好ましい。更に表面硬化を促進する為に窒素ガス等をパージして酸素濃度を低下する必要がある際には、酸素濃度0.01%〜5%が好ましく、幅方向の分布は酸素濃度で2%以下が好ましい。
また、ハードコート層の硬化率(100−残存官能基含率)が100%未満のある値となった場合、その上に本発明の低屈折率層を設けて電離放射線および/または熱により低屈折率層を硬化した際に下層のハードコート層の硬化率が低屈折率層を設ける前よりも高くなると、ハードコート層と低屈折率層との間の密着性が改良され、好ましい。
前記のようにして製造された本発明の反射防止フィルムは、公知の粘着剤を付けて各種公知のディスプレー材料の表面フィルムとして用いたり、これを用いて偏光板を作成することにより液晶表示装置に用いることができる。この場合、片面に粘着層を設ける等してディスプレイの最表面に配置する。本発明の反射防止フィルムは、偏光板における偏光膜を両面から挟む2枚の保護フィルムのうち少なくとも1枚に用いることが好ましい。
本発明の反射防止フィルムが保護フィルムを兼ねることで、偏光板の製造コストを低減できる。また、本発明の反射防止フィルムを最表層に使用することにより、外光の映り込み等が防止され、耐擦傷性、防汚性等も優れた偏光板とすることができる。
本発明の反射防止フィルムを2枚の偏光膜の表面保護フィルムの内の一方として用いて偏光板を作成する際には、前記の反射防止フィルムを、反射防止構造を有する側とは反対側の透明支持体の表面、すなわち偏光膜と貼り合わせる側の表面を親水化することで、接着面における接着性を改良することが好ましい。
[鹸化処理]
(1)アルカリ液に浸漬する法
アルカリ液の中に光散乱フィルムや反射防止フィルムを適切な条件で浸漬して、フィル
ム全表面のアルカリと反応性を有する全ての面を鹸化処理する手法であり、特別な設備を必要としないため、コストの観点で好ましい。アルカリ液は、水酸化ナトリウム水溶液であることが好ましい。好ましい濃度は0.5〜3mol/Lであり、特に好ましくは1〜2mol/Lである。好ましいアルカリ液の液温は30〜75℃、特に好ましくは40〜60℃である。
前記の鹸化条件の組合せは比較的穏和な条件同士の組合せであることが好ましいが、光散乱フィルムや反射防止フィルムの素材や構成、目標とする接触角によって設定することができる。
アルカリ液に浸漬した後は、フィルムの中にアルカリ成分が残留しないように、水で十分に水洗したり、希薄な酸に浸漬してアルカリ成分を中和することが好ましい。
鹸化処理することにより、透明支持体のハードコート層や反射防止層を有する表面と反対の表面が親水化される。偏光板用保護フィルムは、透明支持体の親水化された表面を偏光膜と接着させて使用する。
親水化された表面は、ポリビニルアルコールを主成分とする接着層との接着性を改良するのに有効である。
鹸化処理は、ハードコート層や低屈折率層を有する側とは反対側の透明支持体の表面の水に対する接触角が低いほど、偏光膜との接着性の観点では好ましいが、一方、浸漬法では同時にハードコート層や低屈折率層を有する表面から内部までアルカリによるダメージを受ける為、必要最小限の反応条件とすることが重要となる。アルカリによる各層の受けるダメージの指標として、反対側の表面の透明支持体の水に対する接触角を用いた場合、特に透明支持体がトリアセチルセルロースであれば、好ましくは10度〜50度、より好ましくは30度〜50度、さらに好ましくは40度〜50度となる。
(2)アルカリ液を塗布する方法
上述の浸漬法における各膜へのダメージを回避する手段として、適切な条件でアルカリ液をハードコート層や反射防止膜を有する表面と反対側の表面のみに塗布、加熱、水洗、乾燥するアルカリ液塗布法が好ましく用いられる。なお、この場合の塗布とは、鹸化を行う面に対してのみアルカリ液などを接触させることを意味し、塗布以外にも噴霧、液を含んだベルト等に接触させる、などによって行われることも含む。これらの方法を採ることにより、別途、アルカリ液を塗布する設備、工程が必要となるため、コストの観点では(1)の浸漬法に劣る。一方で、鹸化処理を施す面にのみアルカリ液が接触するため、反対側の面にはアルカリ液に弱い素材を用いた層を有することができる。例えば、蒸着膜やゾル−ゲル膜では、アルカリ液によって、腐食、溶解、剥離など様々な影響が起こるため、浸漬法では設けることが望ましくないが、この塗布法では液と接触しないため問題なく使用することが可能である。
前記(1)、(2)のどちらの鹸化方法においても、ロール状の支持体から巻き出して各層を形成後に行うことができるため、前述の光散乱フィルムや反射防止フィルム製造工程の後に加えて一連の操作で行っても良い。さらに、同様に巻き出した支持体からなる偏光板との張り合わせ工程もあわせて連続で行うことにより、枚葉で同様の操作をするよりもより効率良く偏光板を作成することができる。
(3)ハードコート層や反射防止層をラミネートフィルムで保護して鹸化する方法
前記(2)と同様に、ハードコート層および/または低屈折率層がアルカリ液に対する耐性が不足している場合に、最終層まで形成した後に該最終層を形成した面にラミネートフィルムを貼り合せてからアルカリ液に浸漬することで最終層を形成した面とは反対側のトリアセチルセルロース面だけを親水化し、然る後にラミネートフィルムを剥離することができる。この方法でも、ハードコート層、低屈折率層へのダメージなしに偏光板保護フィルムとして必要なだけの親水化処理をトリアセチルセルロースフィルムの最終層を形成
した面とは反対の面だけに施すことができる。前記(2)の方法と比較して、ラミネートフィルムが廃棄物として発生する半面、特別なアルカリ液を塗布する装置が不要である利点がある。
(4)ハードコート層まで形成後にアルカリ液に浸漬する方法
ハードコート層まではアルカリ液に対する耐性があるが、低屈折率層がアルカリ液に対する耐性不足である場合には、ハードコート層まで形成後にアルカリ液に浸漬して両面を親水化処理し、然る後にハードコート層上に低屈折率層を形成することもできる。製造工程が煩雑になるが、特に低屈折率層がフッ素含有ゾル−ゲル膜等、親水基を有する場合にはハードコート層と低屈折率層との層間密着性が向上する利点がある。
(5)予め鹸化済のトリアセチルセルロースフィルムにハードコート層や反射防止層を形成する方法
トリアセチルセルロースフィルムを予めアルカリ液に浸漬するなどして鹸化し、何れか一方の面に直接または他の層を介してハードコート層、低屈折率層を形成してもよい。アルカリ液に浸漬して鹸化する場合には、ハードコート層または他の層と鹸化により親水化されたトリアセチルセルロース面との層間密着性が悪化することがある。そのような場合には、鹸化後、ハードコート層または他の層を形成する面だけにコロナ放電、グロー放電等の処理をすることで親水化面を除去してからハードコート層または他の層を形成することで対処できる。また、ハードコート層または他の層が親水性基を有する場合には層間密着が良好なこともある。
本発明の液晶表示装置は、その画面の対角の大きさが20インチ以上である場合でも、暗室コントラストの低下を最小限に留めつつ反射防止性能が良好であり、表示品位および視野角が著しく改善される。
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。なお、特別の断りの無い限り、「部」および「%」は質量基準である。
<IPSモード液晶セル1の作製>
一枚のガラス基板上に、図1に示す様に、隣接する電極間の距離が20μmとなるように電極(図1中2および3)を配設し、その上にポリイミド膜を配向膜として設け、ラビング処理を行なった。図1中に示す方向4に、ラビング処理を行なった。別に用意した一枚のガラス基板の一方の表面にポリイミド膜を設け、ラビング処理を行なって配向膜とした。二枚のガラス基板を、配向膜同士を対向させて、基板の間隔(ギャップ;d)を3.9μmとし、二枚のガラス基板のラビング方向が平行となるようにして重ねて貼り合わせ、次いで屈折率異方性(Δn)が0.0769および誘電率異方性(Δε)が正の4.5であるネマチック液晶組成物を封入した。液晶層のd・Δnの値は300nmであった。
<第1光学異方性層4、第1光学異方性層5、第1光学異方性層6の作製>
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液を調製した。該溶液を保留粒子径4μm、濾水時間35秒の濾紙(No.63、アドバンテック製)を5kg/cm以下で用いてろ過した。
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セルロースアセテート溶液組成
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酢化度60.9%のセルロースアセテート
(重合度300、Mn/Mw=1.5) 100質量部
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 7.8質量部
ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 3.9質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 300質量部
メタノール(第2溶媒) 54質量部
1−ブタノール(第3溶媒) 11質量部
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別のミキシングタンクに、下記のレターデーション上昇剤Aを8質量部、レターデーション上昇剤Bを10質量部、二酸化珪素微粒子(平均粒径:0.1μm)0.28質量部、メチレンクロライド80質量部およびメタノール20質量部を投入し、加熱しながら攪拌して、レターデーション上昇剤溶液(かつ微粒子分散液)を調製した。セルロースアセテート溶液474質量部に該レターデーション上昇剤溶液40質量部を混合し、充分に攪拌してドープを調製した。
Figure 2007086601
Figure 2007086601
得られたドープを、バンド流延機を用いて流延した。残留溶剤量が15質量%のフィルムを、130℃の条件で、テンターを用いて20%の延伸倍率で横延伸し、延伸後の幅のまま50℃で30秒間保持した後クリップを外してセルロースアセテートフィルムを作製した。延伸終了時の残留溶媒量は5質量%であり、さらに乾燥して残留溶媒量を0.1質量%未満としてフィルムを作製した。
このようにして得られたフィルム(第1光学異方性層4)の厚さは80μmであった。作製した第1光学異方性層4について、自動複屈折率計(KOBRA−21ADH、王子計測機器(株)社製)を用いて、Reの光入射角度依存性を測定することによって、Reが70nm、Rthが175nmであり、これからNzが3.0であることが分かった。
別のミキシングタンクに、前記のレターデーション上昇剤Aを16質量部、レターデーション上昇剤Bを8質量部、二酸化珪素微粒子(平均粒径:0.1μm)0.28質量部、メチレンクロライド80質量部およびメタノール20質量部を投入し、加熱しながら攪拌して、レターデーション上昇剤溶液(かつ微粒子分散液)を調製した。セルロースアセテート溶液474質量部に該レターデーション上昇剤溶液45質量部を混合し、充分に攪拌してドープを調製し、前述の第1光学異方性層4同様に製膜した。このようにして得られたフィルム(第1光学異方性層5)の厚さは80μmであった。作製した第1光学異方性層5について、自動複屈折率計(KOBRA−21ADH、王子計測機器(株)社製)を用いて、Reの光入射角度依存性を測定することによって、Reが60nm、Rthが210nmであり、これからNzが4.0であることが分かった。
別のミキシングタンクに、前記のレターデーション上昇剤Aを18質量部、二酸化珪素微粒子(平均粒径:0.1μm)0.28質量部、メチレンクロライド80質量部およびメタノール20質量部を投入し、加熱しながら攪拌して、レターデーション上昇剤溶液(かつ微粒子分散液)を調製した。セルロースアセテート溶液474質量部に該レターデーション上昇剤溶液25質量部を混合し、充分に攪拌してドープを調製し、延伸倍率を23%にした以外は前述の第1光学異方性層4同様に製膜した。このようにして得られたフィルム(第1光学異方性層6)の厚さは80μmであった。作製した第1光学異方性層6について、自動複屈折率計(KOBRA−21ADH、王子計測機器(株)社製)を用いて、Reの光入射角度依存性を測定することによって、Reが35nm、Rthが135nmであり、これからNzが4.4であることが分かった。
<第2光学異方性層2、第2光学異方性層3、第2光学異方性層4、第2光学異方性層5、第2光学異方性層6の作製>
製作した第1光学異方性層4、第1光学異方性層5、および第1光学異方性層6の表面のケン化処理を行い、このフィルム上に市販の垂直配向膜(JALS−204R、日本合成ゴム(株)製)をメチルエチルケトンで1:1に希釈したのち、ワイヤーバーコーターで2.4ml/m塗布した。直ちに、120℃の温風で120秒乾燥した。
次に、下記の棒状液晶化合物3.8g、光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製)0.06g、増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)0.02g、下記の空気界面側垂直配向剤0.002gを9.2gのメチルエチルケトンに溶解した溶液を調製した。
この溶液を前記配向膜を形成したフィルムの配向膜側に、下記の番手のワイヤーバーでそれぞれ塗布した。これを金属の枠に貼り付けて、100℃の恒温槽中で2分間加熱し、棒状液晶化合物を配向させた。次に、80℃で120W/cm高圧水銀灯により、20秒間UV照射し棒状液晶化合物を架橋して、その後、室温まで放冷して光学異方性層を作製した。
Figure 2007086601
Figure 2007086601
Figure 2007086601
(3)鹸化処理
前記試料について、以下の処理を行った。
1.5mol/lの水酸化ナトリウム水溶液を調製し、55℃に保温した。0.01mol/lの希硫酸水溶液を調製し、35℃に保温した。作製した反射防止フィルムを前記の水酸化ナトリウム水溶液に2分間浸漬した後、水に浸漬し水酸化ナトリウム水溶液を十分に洗い流した。次いで、前記の希硫酸水溶液に1分間浸漬した後、水に浸漬し希硫酸水溶液を十分に洗い流した。最後に試料を120℃で十分に乾燥させた。
このようにして、鹸化処理済みのフィルムを作製した。
自動複屈折率計(KOBRA−21ADH、王子計測機器(株)社製)を用いて、製作したフィルムのReの光入射角度依存性を測定し、予め測定した支持体の寄与分を差し引くことによって、第2光学異方性層のみの光学特性を算出したところ、それぞれ第2光学異方性層2はReが0nm、Rthが−225nm、第2光学異方性層3はReが0nm、Rthが−180nm、第2光学異方性層4はReが0nm、Rthが−295nm、第2光学異方性層5はReが0nm、Rthが−170nm、第2光学異方性層6はReが0nm、Rthが−292nmであって、いずれも棒状液晶が略垂直に配向しているこ
とを確認した。
<偏光板保護膜1、偏光板保護膜2の作製>
(偏光板保護膜1)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液Aを調製した。
<セルロースアセテート溶液A組成>
置換度2.86のセルロースアセテート 100質量部
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 7.8質量部
ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 3.9質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 300質量部
メタノール(第2溶媒) 54質量部
1−ブタノール 11質量部
別のミキシングタンクに、下記の組成物を投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、添加剤溶液B−1を調製した。
<添加剤溶液B−1組成>
メチレンクロライド 80質量部
メタノール 20質量部
下記光学的異方性低下剤 40質量部
Figure 2007086601
セルロースアセテート溶液Aを477質量部に、添加剤溶液B−1の40質量部を添加し、充分に攪拌して、ドープを調製した。ドープを流延口から0℃に冷却したドラム上に流延した。溶媒含有率70質量%の場外で剥ぎ取り、フィルムの巾方向の両端をピンテンター(特開平4−1009号公報の図3に記載のピンテンター)で固定し、溶媒含有率が3〜5質量%の状態で、横方向(機械方向に垂直な方向)の延伸率が3%となる間隔を保ちつつ乾燥した。その後、熱処理装置のロール間を搬送することにより、さらに乾燥し、厚み80μmの偏光板保護膜1を作製した。
自動複屈折率計(KOBRA−21ADH、王子計測機器(株)社製)を用いて、Reの光入射角度依存性を測定し、光学特性を算出したところ、Reが1nm、Rthが6nmであることが確認できた。
(偏光板保護膜2)
市販のセルロースアセテートフィルム(フジタックTD80UF、富士写真フイルム(株)製、Re=2nm、Rth=48nm)を用いて、その表面のケン化処理を行い、このフィルム上に市販の垂直配向膜(JALS−204R、日本合成ゴム(株)製)をメチルエチルケトンで1:1に希釈したのち、ワイヤーバーコーターで2.4ml/m塗布した。直ちに、120℃の温風で120秒乾燥した。
配向膜上に、下記の棒状液晶化合物1.8g、光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製)0.06g、増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)0.02g、下記の空気界面側垂直配向剤0.002gを9.2gのメチルエチルケトンに溶解した溶液を、#2.3のワイヤーバーで塗布した。これを金属の枠に貼り付けて、100℃の恒温槽中で2分間加熱し、棒状液晶化合物を配向させた。次に、100℃で120W/cm高圧水銀灯を用いて、30秒間UV照射し棒状液晶化合物を架橋した。その後、室温まで放冷した。このようにして、偏光板保護膜2を製作した。
Figure 2007086601
Figure 2007086601
自動複屈折率計(KOBRA−21ADH、王子計測機器(株)社製)を用いて、偏光板保護膜2のReの光入射角度依存性を測定したところ、Reが2nm、Rthが−15nmであった。また、偏光板保護膜2の全体の厚みは83μmであった。
(ハードコート層用塗布液Aの調製)
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌してハードコート層塗布液Aとした。
(ハードコート層用塗布液A組成)
KAYARAD DPHA 100質量部
(UV硬化性樹脂:日本化薬(株)製、ジペンタエリスリトール
ヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートの混合物)
KBM−5103 10質量部
(シランカップリング剤:信越化学工業(株)製)
メチルエチルケトン 60質量部
シクロヘキサノン 40質量部
(ハードコート層用塗布液Bの調製)
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌してハードコート層塗布液Bとした。
(ハードコート層用塗布液B組成)
デソライトZ7401 100質量部
(ジルコニア微粒子含有ハードコート組成液:固形分濃度48質量%、
ジルコニア微粒子含量70質量%対固形分、平均粒子径約20nm、
溶剤組成シクロヘキサノン:MEK=5:5、JSR(株)製)
KAYARAD DPHA 20質量部
(UV硬化性樹脂:日本化薬(株)製)
KBM−5103 8質量部
(シランカップリング剤:信越化学工業(株)製)
イルガキュア184 4質量部
(光重合開始剤:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)
メチルエチルケトン(MEK) 15質量部
シクロヘキサノン 15質量部
(ハードコート層用塗布液Cの調製)
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌してハードコート層塗布液Cとした。
(ハードコート層用塗布液C組成)
KAYARAD DPHA 98質量部
(UV硬化性樹脂:日本化薬(株)製、ジペンタエリスリトール
ヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートの混合物)
KBM−5103 10質量部
(シランカップリング剤:信越化学工業(株)製)
メチルエチルケトン 60質量部
シクロヘキサノン 40質量部
SX−500 2質量部
(5μm架橋ポリスチレン粒子、綜研科学製)
(ハードコート層用塗布液Dの調製)
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌してハードコート層塗布液Dとした。
(ハードコート層用塗布液D組成)
KAYARAD DPHA 95質量部
(UV硬化性樹脂:日本化薬(株)製、ジペンタエリスリトール
ヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートの混合物)
KBM−5103 10質量部
(シランカップリング剤:信越化学工業(株)製)
メチルエチルケトン 60質量部
シクロヘキサノン 40質量部
SX−500 5質量部
(5μm架橋ポリスチレン粒子、綜研科学製)
(ハードコート層用塗布液Eの調製)
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌してハードコート層塗布液Eとした。
(ハードコート層用塗布液E組成)
KAYARAD DPHA 90質量部
(UV硬化性樹脂:日本化薬(株)製、ジペンタエリスリトール
ヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートの混合物)
KBM−5103 10質量部
(シランカップリング剤:信越化学工業(株)製)
メチルエチルケトン 60質量部
シクロヘキサノン 40質量部
SX−500 10質量部
(5μm架橋ポリスチレン粒子、綜研科学製)
(ハードコート層用塗布液Fの調製)
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌してハードコート層塗布液Fとした。
(ハードコート層用塗布液Fの組成)
KAYARAD DPHA 97.5質量部
(UV硬化性樹脂:日本化薬(株)製、ジペンタエリスリトール
ヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートの混合物)
KBM−5103 10質量部
(シランカップリング剤:信越化学工業(株)製)
メチルエチルケトン 60質量部
シクロヘキサノン 40質量部
KE−P150 2.5質量部
(1.5μmシリカ粒子:日本触媒(株)製)
(ハードコート層用塗布液Gの調製)
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌してハードコート層塗布液Gとした。
(ハードコート層用塗布液Gの組成)
デソライトZ7401 100質量部
(ジルコニア微粒子含有ハードコート組成液:固形分濃度48質量%、
ジルコニア微粒子含量70質量%対固形分、平均粒子径約20nm、
溶剤組成シクロヘキサノン:MEK=5:5、JSR(株)製)
KAYARAD DPHA 20質量部
(UV硬化性樹脂:日本化薬(株)製)
KBM−5103 8質量部
(シランカップリング剤:信越化学工業(株)製)
イルガキュア184 4質量部
(光重合開始剤:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)
KE−P150 5質量部
(1.5μmシリカ粒子:日本触媒(株)製)
メチルエチルケトン(MEK) 15質量部
シクロヘキサノン 15質量部
(ゾル液aの調製)
攪拌機、還流冷却器を備えた反応器、メチルエチルケトン120質量部、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−5103(商品名);信越化学工業(株)製)100質量部、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート(ケロープEP−12(商品名)、ホープ製薬(株))3質量部を加え混合したのち、イオン交換水30質量部を加え、60℃で4時間反応させたのち、室温まで冷却し、ゾル液aを得た。質量平均分子量は1800であり、オリゴマー成分以上の成分のうち、分子量が1000〜20000の成分は100%であった。また、ガスクロマトグラフィー分析から、原料のアクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランは全く残存していなかった。
(パーフルオロオレフィン共重合体(1)の合成)
内容量100mlのステンレス製撹拌機付オートクレーブに酢酸エチル40ml、ヒドロキシエチルビニルエーテル14.7gおよび過酸化ジラウロイル0.55gを仕込み、系内を脱気して窒素ガスで置換した。さらにヘキサフルオロプロピレン(HFP)25gをオートクレーブ中に導入して65℃まで昇温した。オートクレーブ内の温度が65℃に達した時点の圧力は0.53MPa(5.4kg/cm)であった。該温度を保持し8
時間反応を続け、圧力が0.31MPa(3.2kg/cm)に達した時点で加熱をやめ放冷した。室温まで内温が下がった時点で未反応のモノマーを追い出し、オートクレーブを開放して反応液を取り出した。得られた反応液を大過剰のヘキサンに投入し、デカンテーションにより溶剤を除去することにより沈殿したポリマーを取り出した。さらにこのポリマーを少量の酢酸エチルに溶解してヘキサンから2回再沈殿を行うことによって残存モノマーを完全に除去した。乾燥後ポリマー28gを得た。次に該ポリマーの20gをN,N−ジメチルアセトアミド100mlに溶解、氷冷下アクリル酸クロライド11.4gを滴下した後、室温で10時間攪拌した。反応液に酢酸エチルを加え水洗、有機層を抽出後濃縮し、得られたポリマーをヘキサンで再沈殿させることによりパーフルオロオレフィン共重合体(1)を19g得た。得られたポリマーの屈折率は1.421であった。
Figure 2007086601
(中空シリカ微粒子分散液の調製)
中空シリカ微粒子ゾル(粒子サイズ約40〜50nm、シエル厚6〜8nm、屈折率1.31、固形分濃度20%、主溶媒イソプロピルアルコール、特開2002−79616号公報の調製例4に準じて粒子サイズを変更して作製)500部に、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBM−5103)30部、およびジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート(ケロープEP−12、ホープ製薬(株))1.5部加え混合した後に、イオン交換水を9部を加えた。60℃で8時間反応させた後に室温まで冷却し、アセチルアセトン1.8部を添加し、中空シリカ微粒子分散液を得た。得られた中空シリカ微粒子分散液の固形分濃度は18質量%、溶剤乾燥後の屈折率は1.31であった。
(低屈折率層用塗布液Aの調製)
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して、その後、孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、低屈折率層用塗布液Aを調製した。
(低屈折率層用塗布液Aの組成)
KAYARAD DPHA 1.4質量部
(UV硬化性樹脂:日本化薬(株)製)
パーフルオロオレフィン共重合体(1) 5.6質量部
中空シリカ微粒子分散液 20.0質量部
RMS−033 0.7質量部
(反応性シリコーン:Gelest(株)製)
イルガキュア907 0.2質量部
(光重合開始剤:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)
ゾル液a 6.2質量部
メチルエチルケトン(MEK) 306.9質量部
シクロヘキサノン 9.0質量部
(低屈折率層用塗布液Bの調製)
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して、その後、孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、低屈折率層用塗布液Bを調製した。
(低屈折率層用塗布液Bの組成)
KAYARAD DPHA 1.4質量部
(UV硬化性樹脂:日本化薬(株)製)
パーフルオロオレフィン共重合体(1) 5.6質量部
シリカ微粒子分散物 MEK−ST−L 12.0質量部
(MEK−STの粒径違い品、平均粒径45nm:日産化学(株)製)
RMS−033 0.7質量部
(反応性シリコーン:Gelest(株)製)
イルガキュア907 0.2質量部
(光重合開始剤:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)
ゾル液a 6.2質量部
メチルエチルケトン(MEK) 306.9質量部
シクロヘキサノン 9.0質量部
(低屈折率層用塗布液Cの調製)
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して、その後、孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、低屈折率層用塗布液Cを調製した。
(低屈折率層用塗布液Cの組成)
オプスターJTA113(6%) 55質量部
(ポリシロキサンおよび水酸基含有フッ素ポリマー溶液、
固形分の屈折率1.44、固形分濃度6%、JSR(株)製)
中空シリカ微粒子分散液 40質量部
ゾル液a 6質量部
メチルエチルケトン(MEK) 240質量部
シクロヘキサノン 9質量部
(反射防止フィルムA−01の作製)
(1)ハードコート層の塗設
80μmの厚さのトリアセチルセルロースフィルム(フジタック TD80UF、富士写真フイルム(株)製、Re=2nm、Rth=48nm)をロール形態で巻き出して、特開2003−211052号公報に記載の装置構成および下記の塗布条件で示されるダイコート法によってハードコート層用塗布液Aを塗布し、30℃で15秒間、90℃で20秒間乾燥の後、さらに窒素パージ下で160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照射量90mJ/cmの紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ6μmのハードコート層を形成し、巻き取った。
基本条件:スロットダイ13は、上流側リップランド長IUPが0.5mm、下流側リップランド長ILOが50μmで,スロット16の開口部のウェブ走行方向における長さが150μm、スロット16の長さが50mmのものを使用した。上流側リップランド18aとウェブWの隙間を、下流側リップランド18bとウェブWの隙間よりも50μm長くし、下流側リップランド18bとウェブWとの隙間Gを、ハードコート層用塗布液を塗布する際には80μm、低屈折率層用塗布液を塗布する際には50μmに設定した。また、減圧チャンバー40のサイドプレート40bとウェブWとの隙間G、およびバックプレート40aとウェブWとの隙間G はともに200μmとした。それぞれの塗布液
の液物性に合わせて、ハードコート層の場合:塗布速度=40m/分、ウエット塗布量=17.5ml/mで、低屈折率層:塗布速度=40m/分、ウエット塗布量=5.0ml/mで塗布を行った。なお、塗布幅:1300mm、有効幅:1280mmとした。
(2)低屈折率層の塗設
上記ハードコート層用塗布液Aを塗布してハードコート層を塗設したトリアセチルセルロースフィルムを再び巻き出して、前記低屈折率層用塗布液Aを上記の基本条件で塗布し、120℃で150秒乾燥の後、更に140℃で8分乾燥させてから窒素パージにより酸素濃度0.1%の雰囲気下で240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照射量300mJ/cmの紫外線を照射し、厚さ95nmの低屈折率層を形成し、巻き取った。
(3)反射防止フィルムの鹸化処理
前記低屈折率層の製膜後、前記試料について、以下の処理を行った。
1.5mol/lの水酸化ナトリウム水溶液を調製し、55℃に保温した。0.01mol/lの希硫酸水溶液を調製し、35℃に保温した。作製した反射防止フィルムを前記の水酸化ナトリウム水溶液に2分間浸漬した後、水に浸漬し水酸化ナトリウム水溶液を十分に洗い流した。次いで、前記の希硫酸水溶液に1分間浸漬した後、水に浸漬し希硫酸水溶液を十分に洗い流した。最後に試料を120℃で十分に乾燥させた。
このようにして、鹸化処理済みの反射防止フィルムA−01を作製した。
反射防止フィルムA−02〜A−10の作製
下記の表2の組み合わせでハードコート層および低屈折率層を反射防止フィルムA−01と同様の方法で作成し、反射防止フィルムA−02〜A−09を作製した。また、ハードコート層の厚みを3μmとする以外はA−05と同様の手順で反射防止フィルムA−10を作製した。
<偏光板Aの作製>
次に延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光膜を製作し、市販のセルロースアセテートフィルム(フジタックTD80UF、富士写真フイルム(株)製、Re=2nm、Rth=48nm)にケン化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の片面に貼り付けた。さらに偏光膜のもう片側に偏光板保護膜2をそのセルロースアセテートフィルム側が偏光膜がわになるようにポリビニルアルコール系接着剤を用いて貼り付け、偏光板Aを作製した。
<偏光板Bの作製>
前記と同様にして偏光膜を製作し、市販のセルロースアセテートフィルム(フジタックTD80UF、富士写真フイルム(株)製)にケン化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の片面に貼り付けた。さらに同様にして前記製作の偏光板保護膜1を偏光膜のもう片面に貼り付け偏光板Bを作製した。
<偏光板Cの作製>
前記と同様にして偏光膜を製作し、市販のセルロースアセテートフィルム(フジタックTD80UF、富士写真フイルム(株)製)にケン化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の片面に貼り付けた。さらに同様にして市販のセルロースアセテートフィルム(フジタックT40UZ、富士写真フイルム(株)製、Re=1nm、Rth=35nm、厚み40μm)にケン化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて偏光膜のもう片面に貼り付け偏光板Cを作製した。
<偏光板Dの作製>
前記と同様にして偏光膜を製作し、市販のセルロースアセテートフィルム(フジタック
TD80UF、富士写真フイルム(株)製)にケン化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の両面に貼り付け偏光板Dを作製した。
<偏光板Eの作製>
前記と同様にして偏光膜を製作し、市販のセルロースアセテートフィルム(フジタックTD80UF、富士写真フイルム(株)製、Re=3nm、Rth=45nm)にケン化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の片面に貼り付け偏光板Eを形成した。
<偏光板1の作製>
偏光板Eにポリビニルアルコール系接着剤を用いて、作製したフィルム1を、第1光学異方性層4側が偏光膜側となるように、かつ偏光膜の透過軸と第1光学異方性層4の遅相軸が平行になるように偏光膜のセルロースアセテートフィルムを貼合していない側に貼り付け偏光板1を形成した。
これを、前記で作製したIPSモード液晶セル1の一方に、第1光学異方性層4の遅相軸が液晶セルのラビング方向と平行になるように(即ち、第1光学異方性層4の遅相軸が、黒表示時の液晶セルの液晶分子の遅相軸と平行になるように)、かつ第2光学異方性層2面側が液晶セル側になるように偏光板1を貼り付けた。
続いて、このIPSモード液晶セル1の他方側に偏光板Bを偏光板保護膜1側が液晶セル側になるように、かつ偏光板1とはクロスニコルの配置になるように貼り付け、液晶表示装置を作製した。このように作製した液晶表示装置の漏れ光を測定した。左斜め方向60°から観察した際の漏れ光は0.06%であった。
<偏光板2の作製>
偏光板Eにポリビニルアルコール系接着剤を用いて、作製したフィルム2を、第1光学異方性層4側が偏光膜側となるように、かつ偏光膜の透過軸と第1光学異方性層4の遅相軸が平行になるように偏光膜のセルロースアセテートフィルムを貼合していない側に貼り付け偏光板2を形成した。
これを、前記で作製したIPSモード液晶セル1の一方に、第1光学異方性層4の遅相軸が液晶セルのラビング方向と平行になるように(即ち、第1光学異方性層4の遅相軸が、黒表示時の液晶セルの液晶分子の遅相軸と平行になるように)、かつ第2光学異方性層3面側が液晶セル側になるように偏光板2を貼り付けた。
続いて、このIPSモード液晶セル1のもう一方の側に偏光板HをT40UZ側が液晶セル側になるように、かつ偏光板2とはクロスニコルの配置になるように貼り付け、液晶表示装置を作製した。このように作製した液晶表示装置の漏れ光を測定した。左斜め方向60°から観察した際の漏れ光は0.07%であった。
<偏光板3の作製>
偏光板Dにフィルム3を、第2光学異方性層4側が偏光膜側となるように、かつ偏光膜の透過軸と第1光学異方性層5の遅相軸が直交になるようにアクリル樹脂系接着剤を用いて、貼り付け偏光板3を形成した。
これを、前記で作製したIPSモード液晶セル1の一方に、第1光学異方性層5の遅相軸が液晶セルのラビング方向と直交になるように(即ち、第1光学異方性層5の遅相軸が、黒表示時の液晶セルの液晶分子の遅相軸と直交になるように)、かつ第1光学異方性層5面側が液晶セル側になるように偏光板3を貼り付けた。
続いて、このIPSモード液晶セル1のもう一方の側に偏光板Bを偏光板保護膜1側が液晶セル側になるように、かつ偏光板3とはクロスニコルの配置になるように貼り付け、
液晶表示装置を作製した。このように作製した液晶表示装置の漏れ光を測定した。左斜め方向60°から観察した際の漏れ光は0.08%であった。
<偏光板4の作製>
偏光板Bにフィルム4を、第2光学異方性層5側が偏光膜側となるように、かつ偏光膜の透過軸と第1光学異方性層4の遅相軸が直交になるようにアクリル樹脂系接着剤を用いて、偏光板保護膜1側に貼り付け偏光板4を形成した。
これを、前記で作製したIPSモード液晶セル1の一方に、第1光学異方性層4の遅相軸が液晶セルのラビング方向と直交になるように(即ち、第1光学異方性層4の遅相軸が、黒表示時の液晶セルの液晶分子の遅相軸と直交になるように)、かつ第1光学異方性層4面側が液晶セル側になるように偏光板4を貼り付けた。
続いて、このIPSモード液晶セル1のもう一方の側に偏光板Fを偏光板4とはクロスニコルの配置になるように貼り付け、液晶表示装置を作製した。このように作製した液晶表示装置の漏れ光を測定した。左斜め方向60°から観察した際の漏れ光は0.10%であった。
<偏光板5の作製>
偏光板Eに第1光学異方性層6の遅相軸が偏光膜の透過軸と直交になるようにポリビニルアルコール系接着剤を用いて貼り合わせ、次にフィルム5を第1光学異方性層6側が偏光膜側となるように、かつ偏光膜の透過軸と第1光学異方性層6の遅相軸が直交になるようにアクリル樹脂系接着剤を用いて、偏光板Eの先に貼合した第1光学異方性層6側に貼り付け偏光板5を形成した。この場合、第1光学異方性層は、2枚の第1光学異方性層6(Re=35nm、Rth=135nm)が積層された積層体から形成されており、光学異方性層としてRe=70nm、Rth=270nm、Nz=4.4の光学特性を有する。
これを、前記で作製したIPSモード液晶セル1の一方に、第1光学異方性層6の遅相軸が液晶セルのラビング方向と平行になるように(即ち、第1光学異方性層6の遅相軸が、黒表示時の液晶セルの液晶分子の遅相軸と平行になるように)、かつ第2光学異方性層6面側が液晶セル側になるように偏光板5を貼り付けた。
続いて、このIPSモード液晶セル1のもう一方の側に偏光板HをT40UZ側が液晶セル側になるように、かつ偏光板2とはクロスニコルの配置になるように貼り付け、液晶表示装置を作製した。このように作製した液晶表示装置の漏れ光を測定した。左斜め方向60°から観察した際の漏れ光は0.13%であった。
前記作製したIPSモード液晶セル1の両側に市販の偏光板(HLC2−5618、(株)サンリッツ製)を、クロスニコルの配置で貼り付け、液晶表示装置を作製した。光学補償フィルムは用いなかった。上記液晶表示装置では、実施例1と同様に、上側の偏光板の透過軸が液晶セルのラビング方向と平行になるように偏光板を貼り付けた。このように作製した液晶表示装置の漏れ光を測定した。左斜め方向60°から観察した際の漏れ光は0.55%であった。
<偏光板6の作製>
偏光板Eにポリビニルアルコール系接着剤を用いて、作製したフィルム1を、第1光学異方性層4側が偏光膜側となるように、しかし、偏光膜の透過軸と第1光学異方性層4の遅相軸が直交になるように偏光膜のセルロースアセテートフィルムを貼合していない側に貼り付け偏光板6を形成した。
これを、前記で作製したIPSモード液晶セル1の一方に、第1光学異方性層4の遅相
軸が液晶セルのラビング方向と直交になるように(即ち、第1光学異方性層4の遅相軸が、黒表示時の液晶セルの液晶分子の遅相軸と直交になるように)、かつ第2光学異方性層2面側が液晶セル側になるように偏光板5を貼り付けた。
続いて、このIPSモード液晶セル1のもう一方の側に偏光板Eを偏光板保護膜1側が液晶セル側になるように、かつ偏光板5とはクロスニコルの配置になるように貼り付け、液晶表示装置を作製した。このように作製した液晶表示装置の漏れ光を測定した。左斜め方向60°から観察した際の漏れ光は1.75%と極めて大きいものであった。
<偏光板7の作製>
偏光板Dにフィルム3を、第2光学異方性層4側が偏光膜側となるように、しかし偏光膜の透過軸と第1光学異方性層5の遅相軸が平行になるようにアクリル樹脂系接着剤を用いて、貼り付け偏光板7を形成した。
これを、前記で作製したIPSモード液晶セル1の一方に、第1光学異方性層5の遅相軸が液晶セルのラビング方向と平行になるように(即ち、第1光学異方性層5の遅相軸が、黒表示時の液晶セルの液晶分子の遅相軸と平行になるように)、かつ第1光学異方性層5面側が液晶セル側になるように偏光板7を貼り付けた。
続いて、このIPSモード液晶セル1のもう一方の側に偏光板Bを偏光板保護膜1側が液晶セル側になるように、かつ偏光板7とはクロスニコルの配置になるように貼り付け、液晶表示装置を作製した。このように作製した液晶表示装置の漏れ光を測定した。左斜め方向60°から観察した際の漏れ光は2.04%と極めて大きいものであった。
(反射防止フィルムの評価)
得られたフィルムについて、以下の項目の評価を行った。結果を表2に示す。
(1)平均反射率
フィルムの裏面をサンドペーパーで祖面化した後に黒色インクで処理し、裏面反射をなくした状態で、表面側を、分光光度計(日本分光(株)製)を用いて、380〜780nmの波長領域において、入射角5°における鏡面分光反射率を測定した。結果には450〜650nmの鏡面反射率の算術平均値を用いた。
(2)ヘイズ
以下の測定により、得られたフィルムの全ヘイズ(H)、内部ヘイズ(Hi)、表面ヘイズ(Hs)を測定した。
1)JIS−K7136に準じて得られたフィルムの全ヘイズ値(H)を測定する。
2)得られたフィルムの低屈折率層側の表面および裏面にシリコーンオイルを数滴添加し、厚さ1mmのガラス板(ミクロスライドガラス品番S 9111、MATSUNAMI製)を2枚用いて裏表より挟んで、完全に2枚のガラス板と得られたフィルムを光学的に密着し、表面ヘイズを除去した状態でヘイズを測定し、別途測定したガラス板2枚の間にシリコーンオイルのみを挟みこんで測定したヘイズを引いた値をフィルムの内部ヘイズ(Hi)として算出した。
3)上記1)で測定した全ヘイズ(H)から上記2)で算出した内部ヘイズ(Hi)を引いた値をフィルムの表面ヘイズ(Hs)として算出した。
(5)映りこみ
得られたフィルムにルーバーなしのむき出し蛍光灯(8000cd/m)を45度の角度から映し、−45度の方向から観察した際の反射像の映りこみの程度を以下の基準で評価した。
映りこみがない :◎
映りこみがわずかにわかる :○
映りこみは認識できるが、気にならない :△
映りこみが気になる :×
Figure 2007086601
<偏光板の作製>
延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光膜を製作し、下記の表3の構成に従い、偏光膜の両側にポリビニルアルコール系接着剤を用いてフィルム(1)及びフィルム(2)をそれぞれ片面ずつ貼り付けて偏光板を作成した。偏光膜と貼り付ける面はあらかじめケン化処理を行った。反射防止フィルムA−01〜A−10及び偏光板保護膜2については、そのセルロースアセテートフィルム側が偏光膜側になるように貼り付けた。また、フィルム1〜フィルム5については、第1光学異方性層側が偏光膜側となるように、かつ偏光膜の透過軸と第1光学異方性層の遅相軸が平行になるように貼り付けた。
Figure 2007086601
実施例
視認側の偏光板として表4の偏光板(1)で示される偏光板を前記で作製したIPSモード液晶セル1の一方に貼り付け、続いて、このIPSモード液晶セル1のもう一方の側(バックライト側)に表4の偏光板(2)で示される偏光板を貼り付けたIPSモード液晶表示装置を作成した。この時、視認側の偏光板とバックライト側偏光板とは、それぞれの偏光子がクロスニコルの配置になるように液晶セルに貼り付けた。IPSモード液晶セルに貼り付ける偏光板の面は、視認側の偏光板の場合は表3のフィルム(2)の面をIPSモード液晶セル1に貼り付け、バックライト側偏光板の場合は偏光板A及びBは偏光板保護膜2及び1の面を、偏光板CはフジタックT40UZの面を、偏光板Dはケン化処理済のフジタックT80UFのいずれか一方の面を液晶セル1に貼り付けた。更に視認側偏光板でフィルム1からフィルム5を含む偏光板を貼り付ける際には、第1光学異方性層の遅相軸が液晶セルの黒表示時の遅相軸と直交になるように偏光板を貼り付けた。このようにして表4の実施例1〜18、比較例1〜5に記載の偏光板の組み合わせで配置した液晶表示装置を作成した。
上記のようにして作成した液晶表示装置の暗室コントラストを、分光放射輝度計 CS−1000(ミノルタ(株)製)を用いて測定した。コントラストは、430以上を良好、400以上430未満を許容範囲、400未満を不満と評価した。また、液晶表示装置に画像を表示した際に画像が鮮明に表示される場合を画像鮮明性が○、鮮明に表示されない場合を画像鮮明性が×とした。写り込みの評価は先に記載の通りである。
表4から明らかなように、本発明の実施例の液晶表示装置は、コントラスト、写り込み、画像鮮明性が両立しているのに対し、比較例のサンプルはコントラスト、写り込み又は
画像鮮明性のいずれかが許容できないレベルであることがわかる。本発明の実施例の中でも、実施例14、15及び16はコントラストが最も高く、他の欠点のないことがわかる。
Figure 2007086601
本発明の液晶表示装置の画素領域例を示す模式図である。 本発明の液晶表示装置の第一の実施形態の模式図である。 本発明の液晶表示装置の第一の実施形態の模式図である。 本発明の反射防止フィルムの好ましい一実施形態を模式的に示す断面図である。 本発明の反射防止フィルムの別の好ましい一実施形態を模式的に示す断面図である。 本発明の反射防止フィルムの別の好ましい一実施形態を模式的に示す断面図である。
符号の説明
2、3 電極
7a、7b 保護膜
8 偏光膜
9 透過軸
10 第1光学異方性層
11 遅相軸
12 第2光学異方性層
13 基板
14、18 ラビング処理方向
15 液晶層
16 遅相軸
17 基板
19a、19b 保護膜
20 偏光膜
21 透過軸
(1)支持体
(2)ハードコート層
(3)中屈折率層
(4)高屈折率層
(5)低屈折率層

Claims (12)

  1. 少なくとも、観察者側から、第1偏光板と、液晶層および該液晶層を挟持する一対の基板とを有する液晶セルと、第2偏光板とがこの順序で配置され、黒表示時に該液晶層の液晶分子が前記一対の基板の表面に対して平行に配向する液晶表示装置において、前記第1偏光板が観察者側に、ハードコート層を少なくとも有する保護フィルムを有し、該保護フィルムの内部散乱に起因するヘイズ値が0〜30%であり、表面散乱に起因するヘイズ値が1%未満であり、かつ前記第1偏光板および/または第2偏光板が液晶セル側に光学補償フィルムを有することを特徴とする液晶表示装置。
  2. 前記保護フィルムが、透明支持体上に、少なくともハードコート層および該ハードコート層よりも屈折率の低い低屈折率層が積層された反射防止フィルムであることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
  3. 前記低屈折率層が、平均粒径5〜200nmかつ屈折率1.17〜1.40の中空シリカ微粒子を含有していることを特徴とする請求項2に記載の液晶表示装置。
  4. 前記ハードコート層が、バインダーおよび該バインダーと屈折率の異なる少なくとも一種の透光性粒子を含有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の液晶表示装置。
  5. 前記液晶表示装置の画面の対角の大きさが20インチ以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の液晶表示装置。
  6. 前記光学補償フィルムが、第1光学異方性層および第2光学異方性層の2種類の光学異方性層からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の液晶表示装置。
  7. 前記第1光学異方性層のレターデーションReが20nm〜150nmであり、
    (ただしReは、面内の屈折率nxとny(nx≧ny)、厚さ方向の屈折率nz、およびフィルムの厚さd(nm)を用いてRe=(nx−ny)×dで定義される。)
    前記第1光学異方性層のNzが1.5〜7であり、
    (ただしNz=(nx−nz)/(nx−ny)である。)
    前記第2光学異方性層は、面内の屈折率nxとnyが実質的に等しく、nx<nzであり、
    前記第2光学異方性層の厚み方向のレターデーションRthが−80nm〜−400nmであり、
    (ただし、Rth={(nx+ny)/2−nz}×dである。)
    かつ前記第1偏光板における偏光膜の透過軸が、黒表示時の液晶分子の遅相軸方向に平行であることを特徴とする請求項6に記載の液晶表示装置。
  8. 前記第1偏光板が液晶セル側に光学補償フィルムを有し、前記光学補償フィルムが、観察者側から、前記第1光学異方性層および第2光学異方性層の順序で配置され、かつ前記第1異方性層の遅相軸が、前記第1偏光板における偏光膜の透過軸に実質的に平行であることを特徴とする請求項7に記載の液晶表示装置。
  9. 前記第2光学異方性層が、実質的に垂直配向した棒状液晶化合物を含有する光学異方性層であることを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の液晶表示装置。
  10. 前記光学補償フィルムのレターデーションReが190nm〜390nmであり、
    前記第1光学異方性層のNzが0.35〜0.65であり、
    前記光学補償フィルムのフィルム遅相軸と、前記第1偏光板における偏光膜の透過軸とが形成する小さい方の角度が、0度〜2度または88度〜90度であり、
    かつ前記第1偏光板における偏光膜の透過軸が、黒表示時の液晶分子の遅相軸方向に平行であることを特徴とする請求項6に記載の液晶表示装置。
  11. 前記第1偏光板および/または第2偏光板が、前記液晶セル側に、レターデーションRthが40nm〜−50nmである保護膜を有することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の液晶表示装置。
  12. 前記保護膜が、セルロースアシレートフィルムまたはノルボルネン系フィルムであることを特徴とする請求項11に記載の液晶表示装置。
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