JP2007083692A - 金属ガラス複合材料およびそれを使用した電子電気機器用部材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 比重3.0以下の板状の金属基材12表面に、Fe基及び/又はNi基を主たる成分とする金属ガラス層14が形成され、該金属ガラス層14の厚みが500μm以下で、かつ金属基材の厚みの40%以下であることを特徴とする金属ガラス複合材料10。
【選択図】 図1
Description
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は軽量かつ耐食性に優れ、また高い電気伝導度を有する金属ガラス複合材料を提供することにある。
すなわち、本発明の金属ガラス複合材料は、比重3.0以下の板状の金属基材表面に、Fe基及び/又はNi基を主たる成分とする金属ガラス層が形成され、該金属ガラス層の厚みが500μm以下で、かつ金属基材の厚みの40%以下のものであることを特徴とする。
なお、金属ガラス(ガラス合金ともいう)とは、アモルファス合金(アモルファス金属)の一種であるが、明瞭なガラス遷移と広い過冷却液体温度域を示す点で、従来のアモルファス合金とは区別されている。
上記の金属ガラス複合材料において、金属ガラス層の密度が金属ガラス真密度の80%以上であり、金属ガラス層を貫通する貫通孔(ピンホール)が存在しないことが好適である。
上記の金属ガラス複合材料において、金属ガラス層の成分がFe基、Ni基以外にクロム、モリブデン、炭素を含有し、該金属ガラスの過冷却温度領域ΔTxが30℃以上であることが好適である。
上記の金属ガラス複合材料において、金属ガラス層は、少なくとも酸水溶液中での耐酸食性がステンレス以上であることが好適である。
また、上記の金属ガラス複合材料は燃料電池用部材として好適に使用することができる。
また、上記の金属ガラス複合材料は、ガス流路となる溝部を形成することで、燃料電池用セパレータとして好適に使用することができる。
上記の製造方法において、金属ガラス積層工程は、平均粒子径25μm以下の金属ガラス粉体の溶射により行うことが好適である。
上記の製造方法において金属ガラス溶射に使用される主たるガス成分として、酸素を除いた成分が金属ガラスと反応しない不活性ガスであることが好適である。
上記の製造方法において、金型が凹凸形状を有することが好適である。
図1の金属ガラス複合材料10においては、比重が3.0以下の板状の金属基材12の表面に金属ガラス層14が積層されており、該金属ガラス層14の表面には凹凸形状16が形成されている。また、図2に示すように、基材12の両面に所定の凹凸形状16a、16bをそれぞれ有する金属ガラス層14a、14bが形成されていてもよい。
また、図3(A)、(B)には金属基材12自身に凹凸形状を設け、その形状に沿うように金属ガラス層14(14a,14b)を形成した例を示した。図3(A)が片面に凹凸形状を設けた場合、図3(B)が両面に凹凸形状を設けた場合を示している。図3(A)、Bに示した金属ガラス複合材料の製造は、金属基板12に凹凸形状を形成したのち、金属ガラス層14(14a,14b)を形成してもよいし、金属基材12に金属ガラス層14(14a,14b)を積層したのち、プレス加工等により凹凸形状を形成してもよい。
なお、ここでは、金属ガラス層の表面に凹凸形状を設けた例を示したが、必ずしも凹凸形状を設ける必要はなく、用途に応じた形状(鏡面等)とすればよい。
また、金属ガラス層の密度が金属ガラス真密度の80%以上であり、金属ガラス層を貫通する貫通孔(ピンホール)が存在しないことが好適である。ここで、「金属ガラス層の密度」とは、金属ガラス層に存在する気孔等も含んだ体積を密度算定用の体積として算出した密度のことをいい、一方「真密度」とは、物質自身が占める体積だけを密度算定用の体積として算出した密度をいう。このように金属ガラス層が緻密に詰まり、かつ層を貫通する貫通孔(ピンホール)が存在しないことは、耐食性、耐摩耗性、導電性において有利である。
燃料電池は上記の発電セルを複数積層して構成され、セパレータは積層した各セルの仕切り板の役割や、発電により生じた電流を伝達するための役割も果たしている。また、発電セルを複数積層したものの両端には、発電した電気を外部の回路へ送るための集電板が設置され、さらにその外側にこれらの積層物を保持するエンドプレートが設置される。また、エンドプレートには燃料ガスの供給、排出を行うための供給口、排出口が設けられる。
従来のアモルファス合金は何れも過冷却液体温度領域の温度幅が非常に狭いため、単ロール法と呼ばれる方法などにより105K/sレベルの冷却速度で急冷しなければ非晶質が形成できず、上記の単ロール法などで急冷して製造されたものは厚さが50μm以下程度の薄帯状のもので、幅広化も困難であった。
これに対して、近年、過冷却液体温度領域の温度幅が比較的広く、金属溶融体を0.1〜100K/s程度のゆっくりとした冷却速度で冷却しても、過冷却液体状態を経過してガラス相(アモルファス相)に凝固する合金が見い出され、これらは金属ガラスあるいはガラス合金(glassy alloy)と呼ばれて、従来のアモルファス合金とは区別されている。
本発明において用いる金属ガラスの種類は、目的に応じて適宜選択可能であるが、△Tx=Tx−Tg(ただしTxは結晶化開始温度、Tgはガラス遷移温度を示す)の式で表される過冷却液体温度領域の温度間隔△Txが30℃以上である金属ガラスが好適に用いられる。△Txが30℃より小さい場合には、金属ガラス層の緻密性やアモルファス相の生成に悪影響を与える。
このような金属ガラスとしては、メタル−メタロイド系金属ガラス合金、メタル−メタル系金属ガラス合金、ハード磁性系金属ガラス合金などが挙げられる。メタル−メタロイド系金属ガラス合金は、ΔTxが35℃以上、組成によっては40〜50K以上という大きな温度間隔を有していることが知られている。金属元素としてFeを含有するものでは、例えばFe以外の他の金属元素と半金属元素(メタロイド元素)とを含有してなり、金属元素としてAl、Ga、In、Snのうちの1種または2種以上を含有し、半金属元素として、P、C、B、Ge、Siのうちの1種または2種以上を含有するなどが挙げられる。メタル−メタル系金属ガラス合金の例としては、Fe、Co、Niのうちの1種又は2種以上の元素を主成分とし、Zr、Nb、Ta、Hf、Mo、Ti、Vのうちの1種又は2種以上の元素とBを含むものが挙げられる。△Txが大きい程、過冷却液体状態が安定であり、加工が容易になるので、本発明においては△Txが30℃以上、さらには40℃以上の金属ガラスであることが好ましい。
金属ガラスは、広い過冷却液体領域を有し、かつ過冷却液体状態では非常に粘性が低いという特徴を有している。従って、金属ガラスをこのような温度領域で金型によりプレス加工することにより、精密な凹凸形状をその表面に良好に転写することができる。
本発明においては、基材表面に金属ガラス層を形成して積層体とした後、前記金属ガラス層の表面に、金型によりプレス加工することで金属ガラス複合材料を得る。
(i)基材12の表面に金属ガラス層14を形成して積層体18を作製する工程と、
(ii)積層体18の金属ガラス層14の表面に、金属ガラスが過冷却液体領域となる温度にまで加熱した所定形状の金型20を用いてプレス加工して金型20の形状を転写し、金属ガラス層14の表面に目的とする凹凸形状16を形成する工程
により、得ることができる。
(i)基材12の両面に金属ガラス層14a、14bをそれぞれ形成して積層体18を作製する工程と、
(ii)積層体18の金属ガラス層14a、14bの表面に、金属ガラスが過冷却液体領域となる温度にまで加熱した所定形状の金型20a、20bを積層体18の両側からプレス加工して金型20a、20bの形状を転写し、金属ガラス層14a、14bの表面に目的とする凹凸形状16a、16bを形成する工程
により、得ることができる。
なお、金型として高度な平滑面を有するものを用いてこれを転写すれば、鏡面加工することもできる。また、凹凸形状と平滑面とを兼ね備えた金型も使用できる。
本発明の金属ガラス複合材料において、金属ガラス層中に気孔が多い場合や結晶相が含まれる場合には、金属ガラスが有する優れた性能が損なわれる。よって、金属ガラス層を基材上に積層する際には、緻密で均一なアモルファス相として積層することが望ましい。また、金属ガラス層と基材とが強固に接合されて積層することも重要である。
金属ガラス層を基材上に積層する方法として、溶射が好適に使用できる。金属ガラス粒子を溶射によって過冷却状態で基材表面に衝突させることにより、金属ガラスの均一なアモルファス相の溶射皮膜を基材上に強固に形成することができる。
過冷却液体領域では、金属ガラスは粘性流動を示し、粘性が低い。このため、過冷却液体状態にある金属ガラスが基材表面に衝突すると、瞬時に薄く潰れて基材表面に広がり、厚みが非常に薄い良好なスプラットを形成することができる。そして、このようなスプラットの堆積により、気孔が非常に少ない緻密な膜を形成することができる。
従って、本発明の方法によれば、均一な金属ガラスのアモルファス固体相からなり、且つ気孔がほとんどない緻密な金属皮膜を溶射により得ることができる。
金属ガラス皮膜中の気孔は非常に少なく(気孔率は10%以下、好ましくは2%以下:金属ガラス層の任意の断面に対して二次元画像処理し、得られた気孔の面積率の最大値として気孔率を算出した)、また、気孔径も皮膜の膜厚よりもごく小さく、皮膜を貫通するような連続気孔は存在しない。
図9は、高速フレーム溶射(HVOF)装置の一例の概略図である。同図に示すように、HVOF装置は溶射ガン30を備え、該溶射ガン30の基部(図中左方)から燃料パイプ32及び酸素パイプ34を介してそれぞれ燃料及び酸素が供給され、溶射ガン30のフレーム端(図中右方)には高速の燃焼炎(ガスフレーム)36が形成される。そして、この溶射ガン30のフレーム端に近接して溶射材料供給パイプ38が設けられ、該パイプ38から溶射材料粉末が搬送ガス(N2ガスなど)により圧送供給される。
溶射粉末の平均粒径は、特に問題のない限り制限されないが、好適には1〜30μm、さらに好適には1〜25μmであることが好適である。
また、溶射では通常搬送ガスとしてN2ガスが使用されるが、窒化物の形成により被膜組成や緻密性などに影響を及ぼすことがある。これは、Ar、He等などの不活性ガスを搬送ガスとして用いることにより改善される。
なお、原料であるFe43Cr16Mo16C15B10金属ガラス粉末をDSC(示差走査熱量計)で測定したところ、ガラス転移温度(Tg)は646.6℃、結晶化開始温度(Tx)は694.8℃、融点(Tm)は約1094.8℃であった。
(表1)
――――――――――――――――――――――――――――――――――
基材 6061合金板(50mm×50mm×2mm)
基材表面はブラスト処理仕上げ
溶射原料 Fe43Cr16Mo16C15B10ガスアトマイズ粉末
△Tx:約63℃
粒度:25μm篩下のもの(1〜25μm)
溶射条件 粉末搬送ガス:N2
燃料:灯油、5.1GPH
酸素:1800SCFH
溶射距離(溶射ガン先端から基材表面までの距離):380mm
溶射ガン移動速度:200mm/sec
基材表面温度:200℃
――――――――――――――――――――――――――――――――――
金属ガラスの溶射皮膜は基材表面に強固に結合しており、また、溶射皮膜のX線回折により、完全なアモルファス相であることが確認された。また、その断面を電子顕微鏡にて観察したところ、溶射皮膜は非常に緻密で気孔はほとんどなく、貫通孔(ピンホール)も認められなかった。また、酸化物層の形成も認められなかった。
金属ガラス層を積層して得られた金属ガラス複合材料(全体の厚み2.2mm)の積層方向の電気抵抗は6.7×10−6Ω/cm2であった。接触抵抗を考慮に入れない場合、これは同じ厚みのアルミニウム合金の電気抵抗値と比べて数倍となる。しかし、アルミニウム合金表面には酸化皮膜が存在するため接触抵抗が存在するのに対して、耐酸化性の強い金属ガラス層表面においては接触抵抗がほとんどなく、電極としての使用を考えれば遜色はない。なお、抵抗の測定は4端子法によって行った。
12 基材
14、14a、14b 金属ガラス層
16、16a、16b 凹凸形状
18 積層体
20、20a、20b 金型
Claims (12)
- 比重3.0以下の板状の金属基材表面に、Fe基及び/又はNi基を主たる成分とする金属ガラス層が形成され、該金属ガラス層の厚みが500μm以下で、かつ金属基材の厚みの40%以下であることを特徴とする金属ガラス複合材料。
- 請求項1に記載の金属ガラス複合材料において、
前記金属基材がマグネシウム合金又はアルミニウム合金であることを特徴とする金属ガラス複合材料。 - 請求項1または2に記載の金属ガラス複合材料において、
前記金属ガラス層の密度が金属ガラス真密度の80%以上であり、金属ガラス層を貫通する貫通孔(ピンホール)が存在しないことを特徴とする金属ガラス複合材料。 - 請求項1から3に記載の金属ガラス複合材料において、
前記金属ガラス層の成分がFe基、Ni基以外にクロム、モリブデン、炭素を含有し、該金属ガラスの過冷却温度領域ΔTxが30℃以上であることを特徴とする金属ガラス複合材料。 - 請求項1〜4に記載の金属ガラス複合材料において、
前記金属ガラス層は、少なくとも酸水溶液中での耐酸食性がステンレス以上であることを特徴とする金属ガラス複合材料。 - 請求項第1〜5に記載の金属ガラス複合材料を使用した電気電子機器用部材。
- 請求項第1〜6に記載の金属ガラス複合材料を使用した電極電池。
- ガス流路となる溝部を形成した、請求項1〜7に記載の金属ガラス複合材料からなる燃料電池用セパレータ。
- マグネシウム合金又はアルミニウム合金の板状基材の表面に、Fe基及び/又はNi基を主たる成分とする金属ガラスを積層する金属ガラス積層工程と、
前記金属ガラスが積層された板状基材に対し、金属ガラスが過冷却液体領域となる温度にまで加熱した金型を押圧するプレス工程と、
を備え、前記プレス工程後の金属ガラス層の厚みが500μm以下で、かつ基材厚みの40%以下であることを特徴とする金属ガラス複合材料の製造方法。 - 請求項9に記載の製造方法において、
金属ガラス積層工程は、平均粒子径25μm以下の金属ガラス粉体の溶射により行うことを特徴とする金属ガラス複合材料の製造方法。 - 請求項9または10に記載の製造方法において
金属ガラス溶射に使用される主たるガス成分として、酸素を除いた成分が金属ガラスと反応しない不活性ガスであることを特徴とする金属ガラス複合材料の製造方法。 - 請求項9〜11に記載の製造方法において、
前記金型が凹凸形状を有することを特徴とする金属ガラス複合材料の製造方法。
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