JP2004232070A - 燃料電池セパレータ用部材およびセパレータ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】一般式(Ni1−cFec)100−a−bXaYbで表され、式中のXは、Si,B,C,Ge,Pから選ばれる少なくとも1種類以上の元素を表し、YはZr,Nb,Cr,Ti,Hf,Ta,W,Mo,Co,V,Al,Pt,Rh,Ru,Sn,Sb,Cu,Mn希土類元素から選ばれる少なくとも1種類以上の元素で表し、c,a,bは、それぞれ、0≦c≦0.5、3.5<a≦30、0≦b≦90(ここでa,bは原子%)の組成範囲であることを特徴とする燃料電池用セパレータ用非晶質金属薄帯を用いる。
【選択図】 図3
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料電池用のセパレータに関し、特に固体高分子型燃料電池等の燃料電池に用いられるセパレータに関して、電極または集電体またはガス拡散層との接触面および反応ガス流路溝を有する燃料電池用セパレータに用いられる非晶質金属薄帯および部材、およびセパレータに関する。
【0002】
【従来の技術】
省エネ、有害物質の低排出化などの要求から、近年燃料電池が次世代のエネルギー源として期待され、さまざまな方式の燃料電池およびこの燃料電池に用いられるセパレータが実用化に向け多くの研究が行われている。特に150℃以下の温度領域で動作する高分子イオン交換膜型の燃料電池は、発電出力密度が高く、小型化が実現できることから、家庭用、車載用、家電、モバイル用の燃料電池として好ましく、期待されている。
【0003】
高分子イオン交換型燃料電池の例では、一般に固体電解質である高分子の両面を電極およびガス拡散層もしくは、電極と集電体ではさみ、これを反応ガスと空気を供給する流路を施した平板状のセパレータを介して積層された構造となっている。
【0004】
固体電解質としては一般にスルホン酸基を有するフッ素樹脂系のイオン交換膜等が用いられ、電極にはカーボンブラックに撥水材と貴金属微粒子触媒を分散したもの等により形成されている。
【0005】
反応ガスは水素ガスが供給され、電解質の片面側から水素が供給され、水素ガスが酸化されて発生したプロトンが電解質中を通過し、水分子と結合してH3O+となり、正極側に移動する。正極側においては、ガス流路から供給されたエアー中の酸素が水素の酸化反応により発生する電子を得て、電解質中のプロトンと結合してH2Oとなる。この反応を継続されて電気を発生することができる。
【0006】
この反応過程において、電解質中には酸(H+)が多量に存在し、かつ水(H2O)発生による水蒸気、水が存在するために、電解質内部、電極近傍においては強酸性となる。このような環境下にセパレータは組み込まれるため、酸への耐食性が優れ、かつ電気伝導度が高く、ガス漏れのない気密性が求められている。さらに、今後多くの用途へ展開され、特に小型携帯機器等へ応用される場合には薄型であり、かつ高強度が要求される。
【0007】
従来の燃料電池に用いられているセパレータには、特開2002−231261号公報(特許文献1)に開示されているようなアモルファスカーボン材料もしくはアモルファスカーボン材料を樹脂と複合化し、成型後炭化処理したもの等が用いられている。
【0008】
あるいは、特開2001−357859号公報(特許文献2)には、金属材料母材からなり、電極または集電体との接触面及びガス流路溝を有する電池セパレータであって、当該接触面上には金属等の導電性皮膜が形成されており、当該導電性皮膜の構造または機能が当該金属母材との接触界面から電極または集電体との接触界面の間で連続的に変化していることを特徴とする燃料電池用セパレータが開示されており、電極等と接触する最表面のみに耐食性に優れる金属を連続的に組成、結晶構造を変化させた被膜をスパッタリング等によって製造されている。
【特許文献1】特開2002−231261号公報
【特許文献2】特開2001−357859号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
前記の従来のカーボン系セパレータでは、加工時に機械加工が必要であり、加工コストが掛かる、さらにカーボン材料であるがために機械的強度が弱い、さらに、ガス流路を形成するために流路溝の底となる構造を作る厚さを確保する必要があるために、薄型化が困難である等の課題があった。
【0010】
一方、金属材料母材を用いてスパッタリング等を施す方法では、金属母材の電極等と接触する最表面に連続的な組成および結晶構造を変化させた被膜を付与するための工程が複雑でる。
【0011】
本発明の目的は、金属母材の溝加工において、電極等と接する接触面と流路溝の底部分の距離が数十ミクロンの薄い流路溝を備える燃料電池用セパレータを精度よくかつ低コストで提供すること、さらに、薄型セパレータを提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明者らは、鋭意研究を行った結果、必要な電気伝導度を有し、酸の耐蝕性に優れ、高強度で薄板形成可能なNi系の非晶質金属薄帯を用いることにより、上記課題が解決されることを見出し、本発明に至った。
【0013】
さらに、セパレータのガス流路溝の底部分に本発明の非晶質金属薄帯もしくは樹脂を付与したセパレータに用いられる部材を用いる、あるいは前記部材を積み重ねた積層構造としたセパレータを形成することにより、ガス流路溝の底部分の厚みが数十〜数百ミクロンで作製可能となるため、高強度で、薄型化が可能となるセパレータ材料を提供できることを見出し、本発明に至った。
【0014】
すなわち、本発明は、一般式(Ni1−c Fec)100−a−bXaYbで表され、式中のXは、Si,B,C,Ge,Pから選ばれる少なくとも1種類以上の元素を表し、YはZr,Nb,Cr,Ti,Hf,Ta,W,Mo,Co,V,Al,Pt,Rh,Ru,Sn,Sb,Cu,Mn、および希土類元素から選ばれる少なくとも1種類以上の元素で表し、c,a,bは、それぞれ、0≦c≦0.5、3.5<a≦30、0≦b≦90(ここでa,bは原子%)の組成範囲であることを特徴とする燃料電池用セパレータ用非晶質金属薄帯を提供する。
【0015】
本発明は、一般式(Ni1−c Fec)100−a−bXaYbで表され、式中のXは、Si,B,C,Ge,Pから選ばれる少なくとも1種類以上の元素を表し、YはZr,Nb,Cr,Ti,Hf,Ta,W,Mo,Co,V,Al,Pt,Rh,Ru,Sn,Sb,Cu,Mn、および希土類元素から選ばれる少なくとも1種類以上の元素で表し、c,a,bは、それぞれ、0≦c≦0.5、3.5<a≦30、0≦b≦30(ここでa,bは原子%)の組成範囲であることを特徴とする燃料電池用セパレータ用非晶質金属薄帯を提供する。
【0016】
本発明は、一般式(Ni1−c Fec)100−a−bXaYbで表され、式中のXは、Si,B,C,Ge,Pから選ばれる少なくとも1種類以上の元素を表し、YはNb,Cr,W,Mo,Co,V,Al,Pt,Rh,Ru,Sn,Sb,Cu,Mn、および希土類元素から選ばれる少なくとも1種類以上の元素を表し、c,a,bは、それぞれ、0≦c≦0.5、3.5<a≦30、0≦b≦30(ここでa,bは原子%)で表され、かつYの内少なくともCrが8原子%以上30原子%以下、かつ、Pが13原子%より少ない組成範囲であり、燃料電池用セパレータ用非晶質金属薄帯を提供する。
【0017】
前記非晶質金属薄帯に樹脂を付与したことを特徴とする部材は、燃料電池のセパレータに用いることができる。
【0018】
本発明は、一般式(Ni1−c Fec)100−a−bXaYbで表され、式中のXは、Si,B,C,Ge,Pから選ばれる少なくとも1種類以上の元素を表し、YはZr,Nb,Cr,Ti,Hf,Ta,W,Mo,Co,V,Al,Pt,Rh,Ru,Sn,Sb,Cu,Mn、および希土類元素から選ばれる少なくとも1種類以上の元素で表し、c,a,bは、それぞれ、0≦c≦0.5、3.5<a≦30、0≦b≦90(ここでa,bは原子%)の組成範囲であり、燃料電池用セパレータ用非晶質金属薄帯又はそれを用いた部材が用いられることを特徴とする燃料電池用セパレータを提供する。
【0019】
本発明は、電極または集電体またはガス拡散層との接触面および反応ガス流路溝を有する燃料電池用セパレータにおいて、当該接触面が、上記記載の非晶質金属薄帯またはそれを用いた部材が用いられていることを特徴とする燃料電池用セパレータを提供する。
【0020】
本発明は、電極または集電体またはガス拡散層との接触面および反応ガス流路溝を有する燃料電池用セパレータにおいて、当該接触面および流路溝が非晶質金属薄帯またはそれを用いた部材が用いられていることを特徴とする燃料電池用セパレータを提供する。
【0021】
【発明の実施の形態】
(非晶質合金薄帯)
本発明のセパレータに使用される非晶質金属薄帯および部材に用いられる材料としては、Ni系の非晶質金属薄帯が用いられる。これらの非晶質金属薄帯は、通常溶融金属を急冷ロールを用いて、急冷して得られる。通常は5〜200μmの厚さであり、好ましくは20〜60μmの厚さの薄帯が用いられる。
【0022】
薄帯の組成は、酸の耐蝕性に優れるものが用いられるが、好ましくは以下の組成の非晶質金属薄帯が用いられる。
【0023】
一般式(Ni1−cFec)100−a−bXaYbで表され、式中のXは、Si,B,C,Ge,Pから選ばれる少なくとも1種類以上の元素を表し、YはZr,Nb,Cr,Ti,Hf,Ta,W,Mo,Co,V,Al,Pt,Rh,Ru,Sn,Sb,Cu,Mn、および希土類元素から選ばれる少なくとも1種類以上の元素で表し、c,a,bは、それぞれ、0≦c≦0.5、3.5<a≦30、0≦b≦90ここでa,bは原子%)で表される。
【0024】
X元素は本発明に用いる非晶質金属薄帯を製造する上で、非晶質化のために結晶化速度を低減するために有効な元素である。X元素が3.5原子%より少ないと、非晶質化が低下して一部結晶質が混在し、また、30原子%を超えると、非晶質構造は得られるものの合金薄帯の機械的強度が低下し、連続的な薄帯が得られなくなる。したがって、X元素の量aは、4<a≦30であることが好ましく、さらに好ましくは、4≦a≦15である。
【0025】
cの値はNiの量が多いほど酸への耐食性に優れるが、原料コストは高いため、Feの置換により低コスト化できる。したがって、好ましくは0≦c≦0.2、さらに好ましくは0≦c≦0.1である。
【0026】
Y元素は、本発明に用いる非晶質金属薄帯の耐食性向上に効果がある。この中で特に有効な元素は、Cr,Ti,Nb,Ta,W,Mo,Co,V,Pt,Rhである。Y元素の添加量は30%以上になると、耐食性の効果はあるが、薄帯の機械的強度が脆弱になるため、0≦b≦50であることが好ましい。さらに好ましい範囲は、0≦b≦30である。
【0027】
さらに、耐食性が優れ、非晶質化が容易となる組成は以下の組成が好ましい。
【0028】
一般式(Ni1−c Fec)100−a−bXaYbで表され、式中のXは、Si,B,C,Ge,Pから選ばれる少なくとも1種類以上の元素を表し、YはNb,Cr,W,Mo,Co,V,Al,Pt,Rh,Ru,Sn,Sb,Cu,Mn、および希土類元素から選ばれる少なくとも1種類以上の元素を表し、c,a,bは、それぞれ、0≦c≦0.5、3.5<a≦30、0≦b≦30(ここでa,bは原子%)で表され、かつY元素の内少なくともCrが8原子%以上30原子%以下、かつ、Pが13原子%より少ない組成範囲がより好ましい。
さらに好ましくは、0≦b≦20かつY元素の内少なくともCrが8原子%以上30原子%以下、かつ、Pが13原子%より少ない組成範囲がより好ましい。
【0029】
また、前記非晶質金属薄帯は、例えば、所望組成の金属を調合したものを高周波溶解炉等を用いて溶融し、均一な溶融体としたものを、不活性ガス等でフローして、急冷ロールに吹き付けて、急冷して得られる。このさい、単ロール法でも双ロール法いずれも用いることができる。
【0030】
また、厚さは5〜200μmであり、好ましくは20〜60μmの薄帯が用いられる。
(前記非晶質金属薄帯に樹脂を付与したセパレータに用いられる部材)
本発明に用いられる樹脂は、一般の樹脂を用いることができるが、ガラス転移温度が80℃以上の耐熱性樹脂を用いることが好ましい。
ガラス転移温度が80℃以下の低い樹脂では、燃料電池の動作において使用環境によっては使用時の温度にて樹脂が軟化してしまい、ガス流路の気密性が損なわれることがある。
【0031】
本発明のセパレータに用いられる部材に用いられる樹脂のガラス転移温度は80℃以上が好ましく、120℃以上がされに好ましく、150℃以上がさらに好ましい。特に熱可塑性の樹脂を用いることにより積層接着加工が容易なセパレータに用いられる積層体を用いることができる。
【0032】
具体的な樹脂としては、ポリイミド系樹脂、ケイ素含有樹脂、ケトン系樹脂、ポリアミド系樹脂、液晶ポリマー,ニトリル系樹脂,チオエ−テル系樹脂,ポリエステル系樹脂,アリレ−ト系樹脂,サルホン系樹脂,イミド系樹脂,アミドイミド系樹脂を挙げることができる。これらのうちポリイミド系樹脂,スルホン系樹脂、アミドイミド系樹脂を用いるのが好ましい。
【0033】
本発明において、前記非晶質金属薄帯への樹脂の付与は以下の方法で行われるが、樹脂を付与できる方法であれば特に限定されるものではない。樹脂は磁性基材の片面のみ,または,両面の少なくとも一部に付与する。また、積層されて用いられる場合には、積層部には樹脂が全面に付与したものが好ましく用いられる。
【0034】
また、付与する面において均一にむらなく塗膜されることが好ましいが,例えば,
部材が積層された積層体を作製する場合は,熱プレス,または熱ロ−ル、高周波溶着などで積層することで積層構造を自由に設計することができる。
【0035】
本発明における非晶質金属薄帯の片面または両面の少なくとも一部に樹脂を付着する場合、粉末状樹脂、もしくは溶媒に樹脂を溶解させた溶液または、ペースト状の形態がある。樹脂を溶解させた溶液を用いる場合は,ロ−ルコ−タなどの塗工装置を用いて非晶質金属薄帯に付与して行うことができる。この場合,付与工程で用いる溶液の粘度は,0.005Pa・s以下の粘度では,粘性が低くなり過ぎるため非晶質金属薄帯上から流れてしまい薄板上に十分な塗膜量が得られず,極めて薄い塗膜になってしまう。また,この場合膜厚を厚くするために,付与速度を極めて遅くすると何度も重ね塗りが必要になるため,生産効率の低下が生じ実用的ではない。一方,粘度が,200Pa・s以上になると,高粘度のため,非晶質金属薄帯上に薄い塗膜を形成するための膜厚の制御が極めて難しくなる。したがって,樹脂を溶媒により溶解させた溶液による付与の場合,付与時の樹脂の粘度は0.005〜200Pa・sの濃度範囲が好ましい。さらには,0.01〜50Pa・sの濃度範囲が好ましく,より好ましくは,0.05〜5Pa・sの範囲にある方が良い。
【0036】
本発明における液状樹脂の付与方法としては,コ−タを用いた方法,例えば,ロ−ルコ−タ法,グラビアコ−タ法,エアドクタコ−タ法,ブレ−ドコ−タ法,ナイフコ−タ法,ロッドコ−タ法,キスコ−タ法,ビ−ドコ−タ法,キャストコ−タ法,ロ−タリ−スクリ−ン法や,液状樹脂中に非晶質金属薄帯を浸漬しながらコ−テイングする浸漬コ−テング方法,液状樹脂を非晶質金属薄帯にオリフィスから落下させコ−テイングするスロットオリフィスコ−タ法などで行うことができる。その他,バ−コ−ド方法や霧吹きの原理を用いて液状樹脂を霧上に非晶質金属薄帯に吹き付けるスプレ−コ−ティング法や,スピンコ−テング法,電着コ−テング法,あるいはスパッタ法のような物理的な蒸着法,CVD法のような気相法など非晶質金属薄帯上に樹脂を付与できる方法なら如何なる方法を用いても良い。
【0037】
また,本発明における非晶質金属薄帯の片面または両面の少なくとも一部に付着させる樹脂として,ペ−スト状樹脂を使用する場合は,主として非晶質金属薄帯を切断等したものを積層する場合に用いることが好ましい。そのため,樹脂は溶媒に溶解した溶液のような流動性よりは仮接着固定や仮止めができる粘度があれば良く,ポッティングや刷毛塗りなどの方法で付与することができる。したがって,樹脂の粘度としては,5Pa・s以上の粘度であることが好ましい。一方,粉末状の樹脂を用いる場合は,例えば,金型を用いて非晶質金属薄帯の積層体を作製する時に粉末状・ペレット状の樹脂を充填または散布して熱プレス成型などにより非晶質金属薄帯の積層体を作製する場合に用いることができる。
【0038】
(セパレータ)
本発明の非晶質金属薄帯および部材をセパレータに用いられる場合、ガス流路溝と流路溝の底が形成され一体化されて用いられる。この際、ガス流路溝を形成される壁の最上面の表面は、電極またはガス拡散層または集電体と接触し、耐食性と導電性が要求されるため、本発明の非晶質金属薄帯、もしくは、樹脂を付与したセパレータに用いられる部材の場合には、樹脂の付与されてない部分が前記流路溝を形成される壁の最上面になるように構成されて作製される。
【0039】
セパレータのガス流路溝の形成は以下の方法で実施することができる。図1に示すようなガス流路溝が施されたセパレータの場合は、図2に示すように本発明の非晶質金属薄帯または部材を、電極またはガス拡散層または集電体と接触する最上面にガス流路が形成されたものと組み合わせてセパレータを構成することができる。部材を用いる場合には、電極またはガス拡散層または集電体と接触する部分には少なくとも樹脂を付与しない。流路の構造は以下の方法によって加工されるが、所望の形状に加工が可能であれば特に製造方法は限定されるわけではない。
【0040】
また、流路の構造は、外部からのガス導入口とガス流路となる連続したもしくはいくつかに分断された溝形状からなり、用いられるセパレータの目的、種類等によってそれぞれ設計される。
【0041】
ガス流路溝加工の方法は、機械加工、エッチング加工、打抜き加工等で実施することができる。特に打抜き加工ではコスト面でメリットがある方法である。
【0042】
また、流路溝を形成するセパレータの最表面は前記非晶質金属薄帯もしくは樹脂を付与したセパレータに用いられる部材の樹脂の付与されてない部分が用いられるが、その下の構造体には、通常の金属、樹脂等を使用してもよい。例えば、SUS薄板に凹状のガス流路溝加工を施した薄い平板の上面に本発明の非晶質金属薄帯を接着してセパレータを作製することができる。
【0043】
また、本発明のセパレータに用いられる部材を積層して用いる場合には以下の方法で使用される。
【0044】
図1に示すような例のガス流路が形成されたセパレータを通常の金属薄板を用いた加工においては、数十ミクロンを残して機械加工等することは加工上困難である。そこで、本発明の非晶質金属薄帯を積層構造にすることによって、薄型のセパレータを作製することができる。特に、流路溝の底部分を薄帯の1枚もしくは数枚の厚みにすることができ、数十から数百ミクロン程度の流路溝の底を形成することが出来る。
【0045】
たとえば、非晶質金属薄帯に接着性の樹脂を付与した部材に、所望の流路を加工し、ガス流路溝に必要な厚みになるように所望の枚数を積層し、流路溝の底部も同様に加工したものを積層接着することによって、例えば図3のようなセパレータを構成できる。例えば38ミクロンの非晶質金属薄帯を用いて、流路溝を250μmとした場合には、非晶質金属薄帯の片面に樹脂を付与したセパレータ基材に流路溝を加工した6枚、および流路溝底部にガス導入口を加工した1枚、もしくは複数枚を積層することによってセパレータを作製することが出来る。
(耐熱性樹脂)
【0046】
【実施例】
以下、本発明の実施例について示す。
【0047】
【実施例1】
非晶質金属薄帯として,ハネウェル社製、ロウ付け剤MBF80(商品名)、幅50.8mm 厚み約38μmであるNi80.8Cr15.2B4の組成を持つ非晶質金属薄帯を使用した。この薄帯の片面全面にE型粘度計で測定し、約0.3Pa・sの粘度のポリアミド酸溶液を付与し,140℃で乾燥後、260℃でキュアし、非晶質金属薄帯の片面に約6ミクロンの耐熱樹脂(ポリイミド樹脂)を付与した部材を作製した。
【0048】
ここで、用いたポリアミド酸溶液は、溶媒にジメチルアセトアミドを用いて希釈した。このポリアミド酸は、3,3’−ジアミノジフェニルエーテルと3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸ニ無水物を1:0.98の割合でジメチルアセトアミド溶媒中で室温にて縮重合して得られたものである。
【0049】
この部材を巾0.6mmの溝加工および外形を400×40mmに打抜き加工を施し、6枚積層し、さらに流路溝の底部には外形を合わせた形状に打抜き、ガス流路端の底部に穴をあけてガス導入口およびガス排出口とした。
【0050】
このセパレータはガス流路の溝深さ250μm、厚さ0.3mmと薄型化が実現できている。
【0051】
さらにこのセパレータを曲げ強度を測るため3点曲げを施したが、セパレータが変形し破壊しなかった。さらに、ケヤキ板の上に50cmの高さから落下試験を実施したが破壊しなかた。すなわち靭性が高く、高強度であることがわかる。
【0052】
【実施例2〜8】
表1に示した組成の非晶質金属薄帯を用い、実施例1と同様の方法でセパレータを作製し、同様の評価を行った結果を表1に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
【比較例1】
カーボン板1mm厚さのものを使用し、機械加工により溝形成を行った。実施例1と同様の形状にするには、カーボン板を0.3mmに加工する必要があるが、機械加工時に割れてしまうため、加工困難であった。さらに、流路溝加工時には底部分を50μm程度の厚みを残してザグリ加工をNC加工にて実施したが、割れが発生し、加工不可能であった。
【0055】
【比較例2】
比較例1と同様に1mm厚さのカーボン板に0.5mmの溝加工を行い、セパレータを形成した。
【0056】
このセパレータは、薄型化できない上に、機械強度が低く実施例1と同様の落下試験では破壊し、機械高度が低い。
【0057】
【実施例9】
非晶質金属薄帯にNi 80.8 Cr15.2 B4 組成の薄帯を用いた。用いる樹脂の前駆体に1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンと3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸ニ無水物を1:0.97の割合でジメチルアセトアミド溶媒中で室温にて縮重合して得られたポリアミド酸を使用して、実施例1と同様に前記非晶質金属薄帯の片面に付与した。この部材を用いて、実施例1と同様にセパレータを作製した後、0.1Nの硫酸溶液に浸漬し、セパレータの重量減少量を測定した。その結果重量減少は誤差範囲で減少はなく、良好な耐食性を有していた。
【0058】
【比較例3】
非晶質金属薄帯にFe78Si9B13組成の薄帯を用いて、実施例1 と同様にセパレータを作製し、同様に硫酸溶液に24時間浸漬した後の重量減少量は2%であり、腐食が発生し、酸への耐久性に劣っていた。
【0059】
【発明の効果】
本発明の非晶質金属薄帯は、酸の耐食性と導電性を兼ね備えた高強度のセパレータ用部材であるため、本発明の非晶質金属薄帯または部材をもちいることにより、酸の耐食性と導電性を兼ね備えた、生産性の良いセパレータを提供でき、さらに、本発明の非晶質金属薄帯および部材を用いることにより、ガス流路溝の底の厚みを薄くすることができ、高強度の薄型セパレータを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】溝加工が施されたセパレータの断面の外観図である。
【図2】本発明の非晶質金属薄帯がセパレータの最表面に付与されている一例である。
【図3】本発明の非晶質金属薄帯または部材が積層されたセパレータの一例
【符号の簡単な説明】
1.セパレータ
11.ガス流路
12.ガス流路の溝の底 (厚さd)
2.本発明のセパレータ
21.金属材料
22.本発明の非晶質金属薄帯または部材
3.本発明のセパレータ
31.非晶質金属薄帯
32.樹脂層
Claims (7)
- 一般式(Ni1−cFec)100−a−bXaYbで表され、式中のXは、Si,B,C,Ge,Pから選ばれる少なくとも1種類以上の元素を表し、YはZr,Nb,Cr,Ti,Hf,Ta,W,Mo,Co,V,Al,Pt,Rh,Ru,Sn,Sb,Cu,Mn、および希土類元素から選ばれる少なくとも1種類以上の元素で表し、c,a,bは、それぞれ、0≦c≦0.5、3.5<a≦30、0≦b≦90(ここでa,bは原子%)の組成範囲であることを特徴とする燃料電池用セパレータ用非晶質金属薄帯。
- 一般式(Ni1−cFec)100−a−bXaYbで表され、式中のXは、Si,B,C,Ge,Pから選ばれる少なくとも1種類以上の元素を表し、YはZr,Nb,Cr,Ti,Hf,Ta,W,Mo,Co,V,Al,Pt,Rh,Ru,Sn,Sb,Cu,Mn、および希土類元素から選ばれる少なくとも1種類以上の元素で表し、c,a,bは、それぞれ、0≦c≦0.5、3.5<a≦30、0≦b≦30(ここでa,bは原子%)の組成範囲であることを特徴とする燃料電池用セパレータ用非晶質金属薄帯。
- 一般式(Ni1−cFec)100−a−bXaYbで表され、式中のXは、Si,B,C,Ge,Pから選ばれる少なくとも1種類以上の元素を表し、YはNb,Cr,W,Mo,Co,V,Al,Pt,Rh,Ru,Sn,Sb,Cu,Mn、および希土類元素から選ばれる少なくとも1種類以上の元素を表し、c,a,bは、それぞれ、0≦c≦0.5、3.5<a≦30、0≦b≦30(ここでa,bは原子%)で表され、かつYの内少なくともCrが8原子%以上30原子%以下、かつ、Pが13原子%より少ない組成範囲であることを特徴とする燃料電池用セパレータ用非晶質金属薄帯。
- 前記請求項1から請求項3の非晶質金属薄帯に樹脂を付与したことを特徴とする燃料電池のセパレータ用部材。
- 一般式(Ni1−cFec)100−a−bXaYbで表され、式中のXは、Si,B,C,Ge,Pから選ばれる少なくとも1種類以上の元素を表し、YはZr,Nb,Cr,Ti,Hf,Ta,W,Mo,Co,V,Al,Pt,Rh,Ru,Sn,Sb,Cu,Mn、および希土類元素から選ばれる少なくとも1種類以上の元素で表し、c,a,bは、それぞれ、0≦c≦0.5、3.5<a≦30、0≦b≦90(ここでa,bは原子%)の組成範囲であり、燃料電池用セパレータ用非晶質金属薄帯又はそれを用いた部材が用いられることを特徴とする燃料電池用セパレータ。
- 電極または集電体またはガス拡散層との接触面および反応ガス流路溝を有する燃料電池用セパレータにおいて、前記接触面が、前記請求項1から請求項3記載の非晶質金属薄帯またはそれを用いた部材が用いられていることを特徴とする燃料電池用セパレータ。
- 電極または集電体またはガス拡散層との接触面および反応ガス流路溝を有する燃料電池用セパレータにおいて、前記接触面および流路溝が請求項1〜3記載の非晶質金属薄帯またはそれを用いた部材が用いられていることを特徴とする燃料電池用セパレータ。
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