JP2007080463A - 多層相変化型光記録媒体とその記録方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 相変化記録層をN層(Nは2以上の整数)有する相変化型光記録媒体に対して記録を行なうに際し、記録マークは、バイアスパワーPbと記録パワーPpの間で変調されることにより形成され、かつ消去パワーPeと、先頭パルス直前及び最終パルス直後のバイアスパワーの少なくとも一方との間に、冷却パワーPc1〜PcM(Mは1以上の整数、Pp>Pe>Pc1>Pc>・・・>PcM>Pb)が設定されている記録方法を用いてN層の各記録層に情報を記録する方法であって、ε(Pe/Pp)及び/又はδ1(Pc1/Pp)〜δM(PcM/Pp)を、記録層ごとに変えて記録を行なう多層相変化型光記録媒体への記録方法。
【選択図】 図1
Description
相変化型記録材料は、レーザ光照射による加熱と冷却を繰り返すことにより、結晶状態とアモルファス状態の間を相変化し、急速加熱後に急冷するとアモルファスとなり、徐冷すると結晶化するものである。相変化型光記録媒体は、この性質を情報の記録に応用したものである。また情報の再生は、結晶状態とアモルファス状態の光学定数の違いから生じる反射率の差を利用する。
更に、光照射による加熱によって起こる記録層の酸化、蒸散又は変形を阻止する目的で、通常、基板と記録層との間に下部保護層(下部誘電体層ともいう)が、記録層と反射層との間に上部保護層(上部誘電体層ともいう)が設けられている。更に、これらの保護層は、その厚さを調節することによって、記録媒体の光学特性の調節機能を有するものであり、また下部保護層は、記録層への記録時の熱によって基板が軟化するのを防止する機能を併せ持つものである。
このような相変化型光記録媒体を用いて高記録密度化する方法として、例えば使用するレーザ波長を青色領域まで短波長化すること、あるいは記録再生を行なうピックアップに用いられる対物レンズの開口数NAを大きくして、光記録媒体に照射されるレーザ光のスポットサイズを小さくすることが提案され、研究、開発、更に実用化されるところまで来ている。
この2層相変化型光記録媒体については、未だ多くの課題が存在している。例えば、レーザ光照射側から見て手前側にある情報層(第1情報層)をレーザ光が十分に透過しなければ、奥側にある情報層(第2情報層)の記録層に情報を記録しそれを再生できないために、第1情報層を構成する反射層は極薄な半透明反射層としなければならない。
具体的なレーザ発光波形としては、図5、図6に示されているようなDVD+RW等で使用されているものがある。アモルファス状態からなるマークは、ピークパワー(Pp)光とバイアスパワー(Pb)光との交互繰り返しによるパルス照射によって形成され、結晶状態からなるスペースは、これらの中間レベルのイレースパワー(Pe)光を連続的に照射することにより形成される。
2層相変化型光記録媒体の第2情報層は光を透過させる必要が無いため、第2反射放熱層や第2記録層は上記従来の単層相変化型光記録媒体のような膜厚の構成で良く、第1情報層の透過率が高ければ良好な記録特性が得られ、再生も容易に行なうことができる。
しかし、2層相変化型光記録媒体の第1情報層へ記録を行なう際には、第1反射放熱層が10nm程度の非常に薄い半透明のものであり、放熱効果が小さいため急冷させ難く、アモルファスマークを形成することが困難になってしまう。
特許文献1のような、記録マークを形成する直前の消去パワーを一時的に大きくする相変化型光記録媒体への記録方法で記録した場合も、熱のかかり過ぎが問題となる。
また特許文献5には、書き換え可能な複数の情報記録層を有する光情報記録媒体に情報信号を良好に記録する方法として、光の入射側から最も遠い情報記録層よりも、光の入射側に近い情報記録層の方が、光ビームの集光による記録層の温度変化が時間的により急冷になるような記録パルスを用いて情報を記録する方法が開示されている。しかし、第1記録層と第2記録層への記録ストラテジが異なるようにして、それぞれの記録層の記録特性を良好にできるレーザ光の発光波形を選定しなければならないという課題がある。
そこで本発明者らは、先願発明の記録方法を用いて、第1情報層への記録ストラテジと同条件で第2情報層への記録を実施した。その結果、第2情報層についても良好な記録特性を得ることができた。しかし、記録パワーと消去パワーの比率、及び/又は記録パワーと冷却パワーの比率を第1情報層と第2情報層とで変えることによって、更に記録特性が良くなることを新たに見出した。
即ち、上記課題は、次の1)〜2)の発明(以下、本発明1〜2という)によって解決される。
1) 基板上に少なくとも相変化記録層をN層(Nは2以上の整数)有する相変化型光記録媒体に記録マークを形成するに際し、記録に用いるレーザ光などの光ビームの発光波形を複数のパルスからなる記録パルス列とし、このパルス列を変調することによって記録を行なう方法において、記録マークは、バイアスパワーPbと記録パワーPpの間で変調されることにより形成され、かつ消去パワーPeと、先頭パルス直前及び最終パルス直後のバイアスパワーの少なくとも一方との間に、冷却パワーPc1、Pc2、・・・、PcM(Mは1以上の整数、Pp>Pe>Pc1>Pc2>・・・>PcM>Pb)が設定されている記録方法を用いてN層の各記録層に情報を記録する方法であって、記録パワーPpと消去パワーPeの比率ε(=Pe/Pp)及び/又は記録パワーPpと冷却パワーPc1、Pc2、・・・、PcMの比率δ1、δ2、・・・δM(=Pc1/Pp、Pc2/Pp、・・・PcM/Pp)を、記録層ごとに変えて記録を行なうことを特徴とする多層相変化型光記録媒体への記録方法。
2) レーザ光束の照射によって相変化を起こすことにより情報を記録し得る相変化記録層を含む情報層がN層(Nは2以上の整数)設けられ、光束が照射される側から見て、N番目以外の各情報層が少なくとも下部保護層、相変化記録層、上部保護層、反射層、熱拡散層で構成され、N番目の情報層が少なくとも下部保護層、相変化記録層、上部保護層、反射層で構成され、上記請求項1記載の記録方法に関する情報が所定領域にプリフォーマットされていることを特徴とする多層相変化型光記録媒体。
多層相変化型光記録媒体の各情報層への記録方法は従来でも検討されている。例えば、レーザ照射側から見て手前側の情報層と奥側の情報層への記録方法をそれぞれ変えることが検討されている。前記特許文献5にもあるように、レーザ照射側から見て手前側の情報層への記録を行なう際には、奥側に記録する場合よりも冷却効果を高めるようにする必要がある。また、手前側の情報層に記録することにより発生する熱的なダメージを減少させるようにする必要がある。したがって、熱が記録層にかかる時間を出来るだけ少なくしなければならない。その主な原因は、手前側の情報層に含まれている反射層は、単層の光記録媒体に比べて膜厚を1/10〜1/20程度に極薄にしなければならないことにある。これにより、光透過率を確保することができるが、その分、反射層の放熱効果が極端に減少してしまい、手前の情報層に記録することが難しくなるためである。
しかしながら、本発明1のように記録方法を設定することによって、レーザ照射側から見て手前側の情報層への記録が行ない易くなる。更に、手前側の情報層と奥側の情報層への記録ストラテジを変えずに、同じ記録ストラテジで記録を行なうことが可能となる。
また、多層相変化型光記録媒体のどの情報層についても、同じ記録ストラテジを用いて記録特性を良好にすることができるようになる。
図1は、冷却パワーPcが、先頭パルス直前のバイアスパワーと消去パワーとの間に、1レベル(図中のPc1)だけ設定されたレーザ発光波形である。
図2は、冷却パワーPcが、先頭パルス直前のバイアスパワーと消去パワーとの間に、2レベル(図中のPc1、Pc2)設定されたレーザ発光波形である。
図3は、冷却パワーPcが、最終パルス直後のバイアスパワーと消去パワーとの間に、1レベル(図中のPc1)だけ設定されたレーザ発光波形である。
図4は、冷却パワーPcが、先頭パルス直前及び最終パルス直後のバイアスパワーと消去パワーとの間に1レベル(図中のPc1)ずつ設定されたレーザ発光波形である。
図4のように前端と後端に冷却パワーレベルを設定するときは、前端と後端それぞれで冷却パワーレベルの個数が異なっていても構わない。
図5や図6のような従来の記録方法においても記録は可能であるが、レーザ光を照射したときに発生する余熱の度合いを出来るだけ低く抑えるためには、本発明1の記録方法が好ましい。
本発明1により、先頭記録パルスや最終記録パルスの余熱によって記録層にかかる熱的影響を低減させることができ、更に記録・消去を的確に行なうことができるようになるため、記録特性が向上する。そして、多層相変化型光記録媒体の各情報層に記録する際に、同一の記録方法を用いて各情報層に記録を行なうことが可能となる。
ここでジッタとは、マークとスペースの反射率レベルをスライスレベルで2値化したとき、その境界とクロックとの時間的なずれをウィンドウ幅で規格化して表したものであり、この値が低いほど記録特性は良い。
またアシンメトリとは、14Tスペースに相当する結晶質反射率I14Hと14Tマークに相当するアモルファス反射率I14Lの平均値と、3Tスペースに相当する結晶質反射率I3Hと3Tマークに相当するアモルファス反射率I3Lの平均値とがどの程度ずれているかを表す特性値であり(図9参照)、次の式で表現される。
〔(I14H+I14L)−(I3H+I3L)〕/2(I14H−I14L)
反射率信号はスライスレベルにより2値化されるため、アシンメトリは0に近いほど良い。アシンメトリが崩れていると、マークとスペースの境界が正しく認識されない可能性が出てきてしまう。記録パワーPpが高すぎたり低すぎたりするか又は消去パワーPeが高すぎたり低すぎたりすることでアシンメトリが崩れ、結果としてジッタが悪くなる。そのため、それらの比率を固定してパワーのバランスを取ることで記録特性が悪化するのを防いでいる。
例えば、第1記録層と第2記録層に用いられる相変化記録材料及びその組成が同じである場合を考える。各情報層へ本発明1の記録方法を用いて同一の記録速度で記録する場合、ε、及びδ1、・・・δMの値を各情報層で同じにした場合と異ならせた場合について検討した結果、図8のような結果が得られた。図8は後述する実施例1に記載した2層相変化型光記録媒体に、図1に示した記録ストラテジを用いて記録したときのデータである。
表から、第1情報層での最適なパワー比率(ε=0.45、δ1=0.23)と同一のパワー比率で第2情報層に記録を行なう場合よりも、異なったパワー比率(ε=0.43、δ1=0.26)で記録を行なった方が記録特性は優れていることが分かる。特に、ボトムジッタは、同一のパワー比率で記録した場合が8.7%であるのに対し、異なったパワー比率で記録した場合は8.1%である。各情報層ごとに最適なパワー比率が存在することが分かる。また、第2情報層への記録を(ε=0.43、δ1=0.23)のパワー比率で行なうと、ボトムジッタは8.3%となった。比率εのみではなく、比率δ1の効果も記録特性に影響を与えていることが分かる。
まず相変化記録層について説明する。
従来の記録層の材料開発には、大きく分けて2通りの流れがある。一つの流れは、追記型の記録層材料であるGeTe、及び、可逆的に相変化可能なSbとTeとの合金であるSb2Te3、この2つの材料の固溶体又は共晶組成から発展したGeSbTeの三元合金からなる記録層材料である。もう一つの流れは、同じくSbとTeとの合金であるが、SbとSb2Te3との共晶組成であるSb含有量が70%前後となるSbTeに、他の元素を添加した記録層材料である。
第1記録層の膜厚は、5〜12nmの範囲にあることが好ましい。5nmよりも薄いと反射率が低くなりすぎて信号品質が低下するし、繰り返し記録特性が悪くなる。12nmよりも厚い場合は、光透過率が下がり好ましくない。
第2記録層の膜厚は、10〜20nmの範囲にあることが好ましい。10nmよりも薄いと繰り返し記録特性が悪くなり、20nmよりも厚い場合は記録感度が悪くなる。
図7のように、記録層が2層含まれる相変化型光記録媒体では、第2情報層に記録再生用のレーザ光をできるだけ透過させることが必要不可欠である。したがって、第1反射層を考えた場合に考慮されるべき事項として、第1反射層においてレーザ光が吸収され難くかつ透過し易い材料が好ましい。具体的にはAg、Cuが挙げられる。AgとCuの合金や、CuにMo、Ta、Nb、Cr、Zr、Ni、Ge、Auから選ばれる1つの金属元素を1重量%程度含有させたものでも良い。
第2反射層は、第1反射層のように半透明である必要はない。
第1反射層の膜厚は、6〜12nmの範囲にあることが好ましい。6nmよりも薄いと反射率が低くなりすぎて信号品質が低下するし、放熱性が悪くなるため繰り返し記録特性が悪くなる。12nmよりも厚い場合は、光透過率が下がり好ましくない。
第2反射層の膜厚は、100〜200nmの範囲にあることが好ましい。100nmよりも薄いと、充分な放熱性が得られず繰り返し記録特性が悪くなる。また、200nmよりも厚い場合は、放熱性が変わらず無駄な膜厚を成膜することになるし、記録媒体自体の機械特性が悪くなる。
第1反射層及び第2反射層の成膜方法としては、各種の気相成長法が挙げられ、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマCVD法、光CVD法、イオンプレーティング法、電子ビーム蒸着法などがある。中でも、スパッタリング法が量産性、膜質等に優れている。
まず、単層相変化型光記録媒体で上部保護層に用いられる材料としては、透明で光を良く通し、かつ融点が記録層よりも高い材料からなるものが好ましく、記録層の劣化変質を防ぎ、記録層との接着強度を高め、かつ記録特性を高めるなどの作用を有する金属酸化物、窒化物、硫化物、炭化物などが主に用いられる。
例えば、SiO、SiO2、ZnO、SnO2、Al2O3、TiO2、In2O3、MgO、ZrO2などの金属酸化物、Si3N4、AlN、TiN、BN、ZrNなどの窒化物、ZnS、In2S3、TaS4などの硫化物、SiC、TaC、B4C、WC、TiC、ZrCなどの炭化物、ダイヤモンド状カーボン、或いは、それらの混合物が挙げられる。
これらの材料は単体で保護膜とすることもできるが互いの混合物としても良い。また、必要に応じて不純物を含んでも良い。例えば、ZnSとSiO2を混合したZnS−SiO2、Ta2O5とSiO2を混合したTa2O5−SiO2が挙げられる。特にZnS−SiO2が良く用いられるが、その場合の混合比としては、ZnS:SiO2=80:20(モル比)が最も好ましい。
そのため、第1上部保護層はできるだけ熱伝導性の高い材料を用いた方が良い。したがって、ZnS−SiO2よりも放熱性が高い材料として、Snの酸化物を用いることが好ましい。またSnの酸化物に金属系酸化物(例えば、Ta酸化物、Al酸化物)が含まれていても良い。Snの酸化物を用いることによって、第1反射放熱層の膜厚が比較的薄くても、第1記録層にアモルファスマークを形成させ易くなる。Sn酸化物、Ta酸化物、Al酸化物は、それぞれが反射放熱層に対して劣化を促進しない材料であり、それぞれの組成比率は生産工程及びコスト、生産許容時間などにより選択する。但し、Sn酸化物が多い場合は記録に必要なパワーが大きくなる傾向にある。Ta酸化物が多い場合は成膜速度を低下させない材料ではあるが第1情報層において記録特性が出にくくなる。Al酸化物が多い場合は成膜速度が低下する傾向にある。
第2上部保護層については、従来どおりZnS−SiO2を用いても良いし、Snの酸化物を用いても良い。理由は、第2記録層に記録する場合は、第2反射放熱層を充分厚く成膜できるため充分な放熱性が得られるためである。
第1上部保護層の膜厚は2〜30nmの範囲にあることが好ましい。2nmよりも薄いと反射率が高くなりすぎて変調度が低下する。30nmよりも厚い場合は光透過率が下がり好ましくないし、熱が篭り易くなって記録特性が悪くなる。
第2上部保護層の膜厚は3〜30nmの範囲にあることが好ましい。3nmよりも薄いと記録感度が悪くなり、30nmよりも厚い場合は熱が篭り易くなって記録特性が悪くなる。
例えば、SiO、SiO2、ZnO、SnO2、Al2O3、TiO2、In2O3、MgO、ZrO2などの金属酸化物、Si3N4、AlN、TiN、BN、ZrNなどの窒化物、ZnS、In2S3、TaS4などの硫化物、SiC、TaC、B4C、WC、TiC、ZrCなどの炭化物、ダイヤモンド状カーボン、或いは、それらの混合物が挙げられる。
これらの材料は単体で保護膜とすることもできるが互いの混合物としても良い。また、必要に応じて不純物を含んでも良い。例えば、ZnSとSiO2を混合したZnS−SiO2、Ta2O5とSiO2を混合したTa2O5−SiO2が挙げられる。特にZnS−SiO2が良く用いられるが、その場合の混合比としては、ZnS:SiO2=80:20(モル比)が最も好ましい。この材料は屈折率nが高く消衰係数kがほぼゼロであるため、記録層の光の吸収効率を上げることができ、かつ、熱伝導率が小さいため光吸収により発生した熱の拡散を適度に抑えることができ、記録層を溶融可能な温度まで昇温することができる。
第1下部保護層の膜厚は40〜80nmの範囲にあることが好ましい。40nmよりも薄いと繰り返し記録耐久性が悪くなり記録特性が悪くなる。80nmよりも厚い場合は光透過率が下がり好ましくない。
第2下部保護層の膜厚は110〜160nmの範囲にあることが好ましい。110nmよりも薄いと反射率が低くなり再生信号品質が悪くなる。160nmよりも厚い場合は記録媒体自体の機械特性が悪くなる。
まず、ITO(酸化インジウム−酸化スズ)の酸化スズは、1〜10重量%含まれていることが好ましい。この範囲を外れると、熱伝導率及び透過率が低下してしまう。また、保存安定性の向上などを目的に他の元素を添加しても良い。これらの元素は、光学的性質に影響を与えない範囲で添加することができ、0.1〜5重量%含まれていることが好ましい。0.1重量%よりも少ないと効果が得られなくなるし、5重量%よりも多いと光吸収が大きくなり透過率が減少してしまう。
また、ITO(酸化インジウム−酸化スズ)の代りに、IZO(酸化インジウム−酸化亜鉛)を用いると、光記録媒体中での内部応力が小さくなるため、極微少な膜厚の変化などが起こり難くなり好ましい。
熱拡散層の膜厚は40〜80nmの範囲にあることが好ましい。40nmよりも薄いと放熱性が悪くなり繰り返し記録特性が悪くなる。80nmよりも厚い場合は光透過率が下がり好ましくない。
熱拡散層の成膜方法としては各種の気相成長法が挙げられ、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマCVD法、光CVD法、イオンプレーティング法、電子ビーム蒸着法などがある。中でも、スパッタリング法が量産性、膜質等に優れている。
第1基板の材料としては、通常ガラス、セラミックス又は樹脂等が用いられるが、特に樹脂が成形性、コストの点で好適である。
樹脂としては、例えばポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、シリコン系樹脂、フッ素系樹脂、ABS樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられるが、成形性、光学特性、コストの点で優れるポリカーボネート樹脂やポリメチルメタクリレート(PMMA)などのアクリル系樹脂が好ましい。
第1基板の情報層を形成する面には、必要に応じて、レーザ光のトラッキング用のスパイラル状又は同心円状の溝などであって、一般にグルーブ部及びランド部と称される凹凸パターンが形成されていてもよく、これは通常、射出成形法又はフォトポリマー法などによって成形される。第1基板の厚さは、10〜600μm程度が好ましい。
第2基板には、第1基板と同様の材料を用いても良いが、記録再生光に対して不透明な材料を用いてもよく、第1基板とは材質や溝形状が異なってもよい。
第2基板の厚さは特に限定されないが、第1基板の厚さとの合計が1.2mmになるように厚さを選択することが好ましい。
中間層には、第1基板と同様な、射出成形法又はフォトポリマー法などによって成形されるグルーブ、案内溝などの凹凸パターンが形成されていても良い。
中間層は、記録再生を行なう際に、ピックアップが第1情報層と第2情報層とを識別できるように光学的に分離するものであり、厚さは10〜70μmが好ましい。10μmよりも薄いと、情報層間クロストークが生じるし、70μmより厚いと第2記録層を記録再生するときに球面収差が発生し、記録再生が困難になる傾向がある。
なお、レーザ光束が照射される側から見て一番奥側の情報層以外の各情報層の光透過率は30〜70%であることが好ましい。2層相変化型光記録媒体の第1情報層の光透過率が30%よりも低いと、奥側の第2情報層への記録や消去及び再生が困難となる。また、第1情報層の光透過率が70%よりも高いと、第1情報層への記録や消去及び再生が困難となる。より好ましくは第1情報層の光透過率は35%以上である。
即ち、製造方法は、成膜工程、初期化工程、密着工程からなり、基本的にはこの順に各工程を行なう。
成膜工程では、第1基板のグルーブが設けられた面に第1情報層を、第2基板のグルーブが設けられた面に第2情報層をそれぞれ成膜する。
第1情報層、第2情報層は、各種気相成長法、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマCVD法、光CVD法、イオンプレーティング法、電子ビーム蒸着法などによって形成できる。中でもスパッタリング方が、量産性、膜質等に優れている。スパッタリング法は、一般にアルゴンなどの不活性ガスを流しながら成膜を行なうが、その際、酸素、窒素などを混入させながら反応スパッタリングさせても良い。
初期化工程の際にレーザ光エネルギーにより膜が浮いてきてしまう恐れのある場合には、初期化工程の前に、第1情報層、第2情報層の上にUV樹脂などをスピンコートし、紫外線を照射して硬化させ、オーバーコートを施しても良い。また、次の密着工程を先に行なった後に、第1基板側から第1情報層、第2情報層を初期化させても構わない。
密着工程では、第1情報層と第2情報層とを向かい合わせながら、第1基板と第2基板とを中間層を介して貼り合わせる。例えば、何れか一方の膜面にUV樹脂を塗布し、膜面同士を向かい合わせて両基板を加圧、密着させ、紫外線を照射して樹脂を硬化させることができる。
評価装置は、シバソク社製DVDtester LM330Aで、記録時に照射されるレーザ波長は660nm、対物レンズの開口数NA=0.65である。また、再生光パワーは1.4mWで行なった。記録は1トラックに行ない、そのトラックを再生することにより評価した。記録方法としては1T周期記録ストラテジを用い、特性評価の判断基準は3T〜11T及び14Tのマークとスペースをランダムに記録したときのジッタとした。ジッタの定義は前述したとおりである。
実施例及び比較例の記録特性結果を表2に示す。第1情報層及び第2情報層への記録に際し採用した記録速度、パワー比率条件(ε、δ)、記録波形(レーザ発光波形)を、記録特性(ボトムジッタ)と共に示した。なお、バイアスパワーPbは0.1mWに固定して記録を行なった。マルチパルスの幅は0.45Tとした。記録ストラテジは第1情報層で記録して最適化した。
直径12cm、厚さ0.6mmで、片面にトラックピッチ0.74μmの蛇行した連続溝からなるトラッキングガイド用の凹凸を持つポリカーボネート樹脂製の第1基板上に、ZnS(80モル%)−SiO2(20モル%)からなる膜厚60nmの第1下部保護層、In15Sb80Ge5からなる膜厚8nmの第1記録層、SnO2(90モル%)−Ta2O5(10モル%)からなる膜厚12.5nmの第1上部保護層、Moを1.0重量%含有させたCuからなる膜厚8nmの第1反射層、In2O3(90モル%)−ZnO(10モル%)からなる膜厚140nmの熱拡散層の順に、Arガス雰囲気中のスパッタリング法で成膜した。
次に、第1基板と同様の基板を第2基板として、その上に、Agからなる膜厚140nmの第2反射層、SnO2(80モル%)−Ta2O5(4モル%)−Al2O3(16モル%)からなる膜厚20nmの第2上部保護層、In15Sb80Ge5からなる膜厚15nmの第2記録層、ZnS(80モル%)−SiO2(20モル%)からなる膜厚120nmの第2下部保護層の順に、Arガス雰囲気中のスパッタリング法で成膜した。
次に、第1情報層、第2情報層に対して、それぞれ第1基板側、第2情報層膜面側からレーザ光を照射し、初期化処理を行なった。初期化は、半導体レーザ(発光波長810±10nm)から出射されるレーザ光を、光ピックアップ(開口数NA=0.55)により集光することにより行なった。第1記録層の初期化条件は、CLV(線速度一定)モードにより光記録媒体を回転させ、線速3m/s、送り量36μm/回転、半径位置23mm〜58mm、初期化パワー700mWとした。第2記録層の初期化条件は、CLV(線速度一定)モードにより光記録媒体を回転させ、線速2m/s、送り量36μm/回転、半径位置23mm〜58mm、初期化パワー660mWとした。
初期化後の第1情報層の光透過率は38%であり、充分な光透過率が得られている。光透過率の測定は、STEAG社製のエタオプティクスで行なった。
次に、第1情報層の膜面側に紫外線硬化樹脂(日本化薬製カヤラッドDVD576M)を塗布し、第2基板の第2情報層膜面側を貼り合わせてスピンコートし、第1基板側から紫外線光を照射して紫外線光硬化樹脂を硬化させて中間層とし、2つの情報層を有する2層相変化型光記録媒体を作成した。中間層の厚さは45μmとした。
上記2層相変化型光記録媒体に対し、図1の記録波形を採用し、記録速度8.4m/sで記録を行なって評価した。表1に示したように、第1情報層及び第2情報層へ記録する際のパワー比率ε及びδ1は異なっている。
実施例1と同じ2層相変化型光記録媒体に対し、第1情報層及び第2情報層へ記録する際のパワー比率ε及びδ1を同一にした点以外は、実施例1と同様にして評価した。
第1記録層及び第2記録層の材料をIn12Sb83Ge5に変えた点以外は、実施例1と同様にして2層相変化型光記録媒体を作成した。
この2層相変化型光記録媒体に対し、図1の記録波形を採用し、記録速度9.9m/sで記録を行なって評価した。第1情報層及び第2情報層へ記録する際のパワー比率ε及びδ1は異なっている。
実施例2と同じ2層相変化型光記録媒体に対し、第1情報層及び第2情報層へ記録する際のパワー比率ε及びδ1を同一にした点以外は、実施例2と同様にして評価した。
第1記録層及び第2記録層の材料をIn10Sb85Ge5に変えた点以外は、実施例1と同様にして2層相変化型光記録媒体を作成した。
この2層相変化型光記録媒体に対し、図1の記録波形を採用し記録速度11.5m/sで記録を行なって評価した。第1情報層及び第2情報層へ記録する際のパワー比率ε及びδ1は異なっている。
実施例3と同じ2層相変化型光記録媒体に対し、第1情報層及び第2情報層へ記録する際のパワー比率ε及びδ1を同一にした点以外は、実施例3と同様にして評価した。
実施例1と同じ2層相変化型光記録媒体に対し、図3の記録波形を採用し、記録速度8.4m/sで記録を行なって評価した。第1情報層及び第2情報層へ記録する際のパワー比率ε及びδ1は異なっている。
実施例1と同じ2層相変化型光記録媒体に対し、第1情報層及び第2情報層へ記録する際のパワー比率ε及びδ1を同一にした点以外は、実施例4と同様にして評価した。
実施例1と同じ2層相変化型光記録媒体に対し、図4の記録波形を採用し、記録速度8.4m/sで記録を行なって評価した。第1情報層及び第2情報層へ記録する際のパワー比率ε及びδ1は異なっている。
実施例1と同じ2層相変化型光記録媒体に対し、第1情報層及び第2情報層へ記録する際のパワー比率ε及びδ1を同一にした点以外は、実施例5と同様にして評価した。
実施例1と同じ2層相変化型光記録媒体に対し、図2の記録波形を採用し、記録速度8.4m/sで記録を行なって評価した。第1情報層及び第2情報層へ記録する際のパワー比率ε及びδ2は異なっている。
実施例1と同じ2層相変化型光記録媒体に対し、第1情報層及び第2情報層へ記録する際のパワー比率ε及びδ2を同一にした点以外は、実施例6と同様にして評価した。
Pb バイアスパワー
Pe 消去パワー
Pc1 冷却パワー
Pc2 冷却パワー
I3 3T信号の振幅(I3H‐I3L)
I3H 3Tスペースに相当する結晶質反射率
I3L 3Tマークに相当するアモルファス反射率
I14 14T信号の振幅(I14H‐I14L)
I14H 14Tスペースに相当する結晶質反射率
I14L 14Tマークに相当するアモルファス反射率
Claims (2)
- 基板上に少なくとも相変化記録層をN層(Nは2以上の整数)有する相変化型光記録媒体に記録マークを形成するに際し、記録に用いるレーザ光などの光ビームの発光波形を複数のパルスからなる記録パルス列とし、このパルス列を変調することによって記録を行なう方法において、記録マークは、バイアスパワーPbと記録パワーPpの間で変調されることにより形成され、かつ消去パワーPeと、先頭パルス直前及び最終パルス直後のバイアスパワーの少なくとも一方との間に、冷却パワーPc1、Pc2、・・・、PcM(Mは1以上の整数、Pp>Pe>Pc1>Pc2>・・・>PcM>Pb)が設定されている記録方法を用いてN層の各記録層に情報を記録する方法であって、記録パワーPpと消去パワーPeの比率ε(=Pe/Pp)及び/又は記録パワーPpと冷却パワーPc1、Pc2、・・・、PcMの比率δ1、δ2、・・・δM(=Pc1/Pp、Pc2/Pp、・・・PcM/Pp)を、記録層ごとに変えて記録を行なうことを特徴とする多層相変化型光記録媒体への記録方法。
- レーザ光束の照射によって相変化を起こすことにより情報を記録し得る相変化記録層を含む情報層がN層(Nは2以上の整数)設けられ、光束が照射される側から見て、N番目以外の各情報層が少なくとも下部保護層、相変化記録層、上部保護層、反射層、熱拡散層で構成され、N番目の情報層が少なくとも下部保護層、相変化記録層、上部保護層、反射層で構成され、上記請求項1記載の記録方法に関する情報が所定領域にプリフォーマットされていることを特徴とする多層相変化型光記録媒体。
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