以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施の形態は一例であり、本発明は以下の実施の形態に限定されない。また、以下の実施の形態では、同一の部分については同一の符号を付して重複する説明を省略する場合がある。
図1は、本発明の実施の形態に係る光記録再生装置の構成を示すブロック図である。図1に示す光記録再生装置は、記録系として、符号器113と、基準時間発生器119と、カウンタ200と、分類器201と、記録波形発生器112と、記録補償器118と、レーザ駆動回路111と、パワー設定器114と、レーザビーム源110と、対物レンズ116等を含む記録光学系とを備える。
また、図1に示す光記録再生装置は、再生系として、検出レンズ106等を含む再生光学系と、光検出器100と、プリアンプ101と、波形等化器103と、2値化器104と、復号器105と、再生シフト測定器170とを備える。なお、上記記録光学系は、対物レンズ116、コリメートレンズ109及びハーフミラー108を含み、上記再生光学系は、検出レンズ106、対物レンズ116及びハーフミラー108を含む。
光記録再生装置は、光記録媒体11に情報を記録する。光記録媒体11は、N層(Nは2以上の整数)の情報層を備える。N層の情報層のそれぞれは、レーザビームの集光による局所的な温度変化によって物理的な状態の変化を生じる記録膜を有する。なお、本実施の形態の光記録媒体11は、3層の情報層のみを備える。
まず、図1に示す光記録再生装置の各構成部材について説明する。符号器113は、記録される記録データ127を、光記録媒体11上に形成されるマーク及びスペースのマーク長及びスペース長と、マーク及びスペースの先頭位置情報とを表す記録符号列(NRZI(Non Return to Zero Inversion)系列)126に変換する。記録符号列126は、分類器201と記録波形発生器112とカウンタ200とに伝達される。
分類器201は、記録符号列126の各マークを、マークのマーク長(符号長)、当該マークの直前のスペースのスペース長及び当該マークの直後のスペースのスペース長に基づいて所定の規則にしたがって分類する。分類器201は、分類した結果を分類信号204として記録波形発生器112に出力する。
カウンタ200は、記録符号列126を参照し、基準時間発生器119によって発生される基準時間信号128を単位としてマークの先頭位置からの時間を計時し、カウント信号205を生成する。なお、符号器113及び記録波形発生器112は、それぞれ基準時間信号128に同期して動作する。基準時間信号128は、光記録媒体11上のウォブルから読み出された信号にPLL(Phase Locked Loop)を行って同期した信号から生成される。
記録補償器118は、光記録媒体11上の特定の領域にあらかじめ記録されている情報を読み出し、各マークの各マーク長、各マークの直前のスペース長及び各マークの直後のスペース長に応じた、記録波形発生器112で発生させる各記録パルス波形のパルス位置移動量である記録補償テーブルデータを保持している。記録補償器118は、記録補償テーブルデータを記録波形発生器112に送出する。
記録波形発生器112は、記録符号列(NRZI系列)126、分類信号204、及び記録補償テーブルデータに応じてパルス状の波形を時間軸上で補償する。これによって、記録符号列126は、記録波形に対応した記録パルス信号125に変換される。記録パルス信号125は、レーザパワーレベルに応じて3段階のレベルで構成されている。
記録波形発生器112は、マークを形成するための記録パルス列の制御パラメタを、マークのマーク長と、マークの直前の第1のスペースの第1のスペース長と、マークの直後の第2のスペースの第2のスペース長との組み合わせによって選択する。
制御パラメタは、記録パルス列の始端のパルスエッジの位置、記録パルス列の始端から2番目のパルスエッジの位置、記録パルス列の終端のパルスエッジの位置、及び記録パルス列の終端から2番目のパルスエッジの位置の少なくとも1つである。
記録補償器118は、後述するように記録パルス信号125のパルスエッジの位置を変化させるエッジ変化量dTS1、dTS2、dTE1及びdTE2に関する記録補償テーブルを格納している。記録補償器118は、記録補償テーブルを記録波形発生器112に送出し、記録波形発生器112は、上記分類信号204に応じて各マーク長のパルスを分類し、各記録パルスの位置及び幅が補償された記録パルス信号125をレーザ駆動回路111に送出する。記録波形発生器112は、記録膜に記録マークを形成するための記録パルス列を生成する。
パワー設定器114は、記録パルス列の各パルスのパワーを設定する。記録パルス列は、最も高いパワーを有する少なくとも1つのライトパルスと、ライトパルスが複数ある場合に複数のライトパルスの間に形成されるボトムパルスと、最後尾のライトパルスに後続して形成されるクーリングパルスとを含む。ライトパルスのパワーをピークパワーとし、ボトムパルスのパワーをボトムパワーとし、クーリングパルスのパワーをクーリングパワーとしたとき、パワー設定器114は、記録パルス列の各パルスのパワーを設定する。
なお、記録波形発生器112は、2つの連続する記録パルス列の間に消去パルスを生成する。消去パルスのパワーは、イレースパワーとする。パワー設定器114は、記録パルス列及び消去パルスの各パルスのパワーを設定する。
レーザ駆動回路111は、記録波形発生器112によって生成された記録パルス列に応じたレーザビームを、パワー設定器114によって設定されたパワーで出射するようにレーザビーム源110を駆動する。
レーザ駆動回路111は、パワー設定器114で設定されたパワーレベルで記録パルス信号125の3つのレベル(ピークパワーPw、イレースパワーPe及びボトムパワーPb)のそれぞれに応じたレーザパワーを設定し、レーザ駆動電流124によりレーザビーム源110を駆動する。レーザビーム源110は、光記録媒体11上にパルス状の光を照射して記録マークを形成する。レーザ駆動回路111は、選択された制御パラメタによる記録パルス列によってマークを記録する。
読出部130は、プリアンプ101、波形等化器103、2値化器104及び復号器105で構成される。読出部130は、光記録媒体11から各情報層のピークパワー及び各情報層のボトムパワーを含むパワー情報を読み出す。光記録媒体11は、各情報層のライトパルスのパワーを表すピークパワー及び各情報層のボトムパルスのパワーを表すボトムパワーを記録している。
なお、本実施の形態において、光記録再生装置が光学的情報記録装置の一例に相当し、レーザビーム源110が光源の一例に相当し、記録波形発生器112が記録パルス列生成部の一例に相当し、パワー設定器114がパワー設定部の一例に相当し、レーザ駆動回路111が駆動部の一例に相当し、読出部130が読出部の一例に相当する。
次に、光記録再生装置の記録系における光記録媒体11への情報の記録方法について説明する。
記録パルス信号125は、レーザ駆動回路111に送出される。レーザ駆動回路111は、記録パルス信号125と、パワー設定器114で設定されたパワーとを参照して、記録パルス信号125のレベルに応じてレーザ駆動電流124を発生し、レーザビーム源110を記録パルス信号125の所定の記録波形にしたがって発光させる。レーザビーム源110から放出されたレーザビーム123は、コリメートレンズ109、ハーフミラー108及び対物レンズ116を通って光記録媒体11上に集光され、記録膜を加熱してマーク及びスペースを形成する。
次に、光記録再生装置の再生系における光記録媒体11からの情報の再生方法について説明する。
情報の再生時には、レーザビーム源110は、記録されたマークを破壊しない程度の低いパワーレベルのレーザビーム123を出射し、光記録媒体11上のマーク列を走査する。光記録媒体11からの反射光は、対物レンズ116及びハーフミラー108を通って、検出レンズ106に入射する。レーザビームは、検出レンズ106を通って光検出器100上に集光される。集光された光は、光検出器100上の光強度分布の強弱に応じて、電気信号に変換される。電気信号は、各々の光検出器100に設けられたプリアンプ101によって増幅され、光記録媒体11上の走査位置におけるマークの有無に対応した再生信号120となる。再生信号120は、波形等化器103によって波形等化処理が行われる。波形等化処理が行われた再生信号120は、2値化器104において、“0”又は“1”の2値のデータに変換されるとともにPLLによる同期が行われて、2値化再生信号121に変換される。さらに、復号器105は、2値化再生信号121に対して符号器113における変換の逆変換を施して再生データ122を生成する。
ここで、例えば、基準時間信号128の周波数は、132MHzであり、Tw(チャネルクロック周期)は約7.5nsecである。光記録媒体11は、線速度一定の7.38m/secで回転させる。レーザビーム源110は、半導体レーザビーム源で構成され、波長405nmのレーザビームを出射する。対物レンズ116のNAは、0.85である。光記録媒体11は、複数の情報層を有する多層ディスクであって、2層ディスク、3層ディスク又は4層ディスクでもよい。また、光記録媒体11は、相変化記録材料を用いた書換型の光ディスク媒体の他に、1度だけ追記できる追記型の光ディスク媒体であってもよい。符号化方式は、(1―7)変調である。(1―7)変調では最短の符号長は2Twである。
図2は、本発明の実施の形態に係る光記録再生装置における記録符号列のマーク及びスペースと、マーク及びスペースを記録する記録波形発生動作の一例を説明するための図である。
図2の基準時間信号128は、記録動作の時間基準を表す信号であり、Twの周期である。図2の記録符号列126は、記録データ127を符号器113でNRZI変換した結果を表している。ここで、Twは検出窓幅であり、記録符号列126におけるマーク長及びスペース長の変化量の最小単位である。図2のマーク配列300は、光記録媒体11上に実際に記録されるマーク301及びスペース302のイメージを示したものである。レーザビームのスポットは、図2の紙面を左から右へ走査する。マーク301は、記録符号列126中の“1”レベルに1対1で対応しており、その期間に比例した長さで形成される。図2のカウント信号205は、マーク301及びスペース302の先頭からの時間をTw単位で計時する。このように、Twを単位としたマーク及びスペースの長さは、一般にラン長と呼ばれる。
図2の分類信号204は、本実施の形態の光記録再生装置における分類信号を模式的に示しており、本例では各マークのマーク長の値と、各マークの直前のスペースのスペース長と、各マークの直後のスペースのスペース長との3つの値の組み合わせによって分類している。例えば、図2の分類信号204において“4−5−2”とは、マーク長が5Twのマークについて、当該マークの直前のスペースのスペース長が4Twであり、当該マークの直後のスペースのスペース長が2Twであることを表している。なお、本実施の形態において、4Tw及び2Twの“w”を省略してそれぞれ4T及び2Tと表す場合がある。また、スペース長については4Tsのようにラン長の末尾に“s”を付け、マーク長については2Tmのようにラン長の末尾に“m”を付ける場合がある。
図2の記録パルス信号125は、図2の記録符号列126に対応した記録パルス信号であり、実際に記録される光波形の一例である。これらの記録パルス信号125は、カウント信号205、記録符号列126、分類信号204及び記録補償器118から送出される記録補償テーブルデータを参照して生成される。
次に、本実施の形態の光記録再生装置における記録補償方法について説明する。
図3は、マークのマーク長と記録パルス信号125の記録波形との関係を示す概略図である。図3の基準時間信号128は、記録動作の時間基準となる信号であり、Twの周期である。図3のカウント信号205は、カウンタ200によって発生する信号であり、マークの先頭からの時間を基準時間信号128の基準時間Tw単位で計時する。カウント信号205が0に移行するタイミングはマークもしくはスペースの先頭に対応する。図3の記録パルス信号125は、記録マーク形成時の記録パルス信号である。図3では、2Tw(Tm)マークの記録パルス信号125、3Tw(Tm)マークの記録パルス信号125、4Tw(Tm)マークの記録パルス信号125及び5Tw(Tm)マークの記録パルス信号125をそれぞれ表している。記録パルス信号125は、レベル変調されており、最も高いレベルであるピークパワー(Pw)、中間レベルのイレースパワー(Pe)、及び最も低いレベルであるボトムパワー(Pb)の3値で変調されている。また、最終パルスの後、冷却パルスがボトムパワーで形成される。
ただし、ここではパワーレベルを3値変調としているが、最終パルスの後の冷却パルスのボトムパワーと、中間パルスの間のボトムパワーとを互いに異なるレベルとして、合計4値のパワー変調としてもよい。このとき、冷却パルスのパワーは、クーリングパワー(Pc)と呼ぶ。また、図3では、ボトムパワーをイレースパワーよりも低いパワーレベルとしているが、ボトムパワーは、イレースパワーとピークパワーとの間のパワーレベルでもよい。また、図3では、4Twマークの記録パルス信号は中間パルスが1つであるが、5Tw及び6Twというようにマーク長(符号長)が1Twずつ長くなるとそれに応じて中間パルスの個数が1つずつ増えていく。
本実施の形態の記録補償(適応補償)では、各マークについて、マークのマーク長と、当該マークの直前のスペースのスペース長と、当該マークの直後のスペースのスペース長とによって分類する。そして、各マークを記録する記録パルス列のパルスエッジの位置が、上記分類結果に応じて、エッジ変化量dTS1、dTS2、dTE1及びdTE2だけ変化される。このように記録パルス信号125が制御されるので、光記録媒体11に形成するマークの始端位置又は後端位置を精密に制御することができる。さらに、記録するマークのマーク長だけでなく、当該マークの直前のスペースのスペース長と、当該マークの直後のスペースのスペース長とに応じてパルスエッジを制御するので、符号間干渉を考慮して、マークの始端位置又は後端位置をさらに精密に制御できる。
本実施の形態の光記録方法における記録補償方法について、図4のフローチャートを用いて説明する。図4は、本発明の実施の形態に係る光記録再生装置における光学的情報記録方法を説明するためのフローチャートである。
まず、符号器113は、記録データを符号化してマーク及びスペースの組み合わせである符号化データを作成する(ステップS1)。この符号化データは、図2の記録符号列126に対応する。
次に、分類器201は、マークについて、当該マークのマーク長と、当該マークの直前のスペースのスペース長と、当該マークの直後のスペースのスペース長との組み合わせに基づいて分類する(ステップS2)。図2の分類信号204では、2Tマークについては“2−2−3”に分類され、3Tマークについては“3−3−4”に分類され、5Tマークについては“4−5−2”に分類され、6Tマークについては“2−6−2”に分類されている。分類信号204は、それぞれ、“前スペース長”、“マーク長”及び“後スペース長”の順で組み合わせている。なお、“前スペース長”とは、マークの直前のスペースのスペース長を表し、“後スペース長”とは、マークの直後のスペースのスペース長を表す。
記録波形発生器112は、マークを形成するための記録パルス列のパルスエッジの位置を分類結果に対応して変化させることにより、記録パルス列を制御する(ステップS3)。記録波形発生器112は、マークを形成するための記録パルス列の制御パラメタを、マークのマーク長と、マークの直前の第1のスペースの第1のスペース長と、マークの直後の第2のスペースの第2のスペース長との組み合わせによって選択する。
例えば、図3の4Tmマークの記録パルス信号125において、記録波形発生器112は、始端のパルスエッジの位置をエッジ変化量dTS1、始端から2番目のパルスエッジの位置をエッジ変化量dTS2、終端のパルスエッジの位置をエッジ変化量dTE1、及び終端から2番目のパルスエッジの位置をエッジ変化量dTE2だけ変化させる。
次に、パワー設定器114は、記録パルス列の各パルスのパワーを設定する(ステップS4)。
次に、レーザ駆動回路111は、パワー設定器114によって設定されたパワー及び記録波形発生器112によって発生された記録パルス信号125に応じてレーザ駆動電流124を生成し、生成したレーザ駆動電流124をレーザビーム源110へ出力する。レーザビーム源110は、記録パルス列に応じたレーザビームを光記録媒体11に照射してマークを形成する(ステップS5)。
図5は、本発明の実施の形態に係る光学的情報記録方法における記録パルス列の制御の例を示す図である。図5では、マーク長が4Tであるマーク301を記録する場合に、記録パルス列のパルスエッジの位置をエッジ変化量dTS1、dTS2、dTE1及びdTE2だけ変化させる場合について示している。図5の基準時間信号128は、記録動作の時間基準となる信号であり、図5のカウント信号205は、カウンタ200によって発生する信号である。図5の記録パルス信号(記録パルス列)125は、パルスエッジの位置をエッジ変化量dTS1、dTS2、dTE1及びdTE2だけ変化させている。図5のマーク配列300は、図5の記録パルス信号(記録パルス列)125によって記録されたマーク長が4Tであるマーク301のイメージを示している。図5では、マーク301の始端位置を精密に制御できることを示している。
始端のエッジ変化量dTS1は、下記の表1に示すように、記録するマークのマーク長と、当該マークの直前のスペースのスペース長(前スペース長)と、当該マークの直後のスペースのスペース長(後スペース長)とによって分類した結果に基づいて規定されている。表1は、始端のエッジ変化量dTS1に関する記録補償テーブルの一例を示す表である。
始端のエッジ変化量dTS1は、記録するマークのマーク長については、2T、3T、4T及び5T以上の4通りに分け、マーク長が2Tのときのみ、後スペース長が2T及び3T以上の2通りに分け、前スペース長については、2T、3T、4T及び5T以上の4通りに分け、それぞれについて(4+1)×4=20通りに分類して規定されている。
エッジ変化量dTS1は、始端のパルスエッジの位置であるため、前スペース(マークの直前のスペース)の影響が支配的であるが、マーク長が2Tのときは後スペース(マークの直後のスペース)の影響も無視できないため、このように分類されている。
なお、ここでは、エッジ変化量dTS1について、マーク長について4通り、前スペース長について4通り、後スペース長について2通りに分類しているが、この場合に限定されるものではない。例えば、マーク長について2通り、3通り、5通り、又は6通り以上に分類してもよく、前スペース長及び後スペース長についてそれぞれ2通り、3通り、4通り、5通り、又は6通り以上に分類してもよい。エッジ変化量dTS1は、例えば、a1=2nsecのように絶対時間で規定してもよく、あるいは基準時間信号128に基づいてTw/32の整数倍の値で規定してもよい。
すなわち、記録パルス列の制御パラメタを選択する工程において、最短マーク長をkとしたとき、マーク長はk、k+1、k+2及びk+3以上の少なくとも4種類に分類される。なお、マーク長はk及びk+1以上の少なくとも2種類に分類されてもよく、マーク長はk、k+1及びk+2以上の少なくとも3種類に分類されてもよい。なお、本実施の形態において、最短マーク長が2Tである場合、k+1のマーク長は、3Tのマーク長を意味し、k+2のマーク長は、4Tのマーク長を意味し、k+3のマーク長は、5Tのマーク長を意味する。
また、記録パルス列の制御パラメタを選択する工程において、最短マーク長をkとしたとき、第1のスペース長(前スペース長)及び第2のスペース長(後スペース長)のそれぞれはk及びk+1以上の少なくとも2種類に分類される。なお、第1のスペース長及び第2のスペース長のそれぞれはk、k+1、k+2及びk+3以上の少なくとも4種類に分類されてもよい。
記録波形発生器112は、マーク長と第1のスペース長と第2のスペース長との組み合わせと、制御パラメタとを対応付けた記録補償テーブルを参照して、記録パルス列を制御する。
始端から2番目のエッジ変化量dTS2についてもエッジ変化量dTS1と同様であり、下記の表2に示すように、記録するマークのマーク長と、当該マークの直前のスペースのスペース長(前スペース長)と、当該マークの直後のスペースのスペース長(後スペース長)とによって分類した結果に基づいて規定されている。表2は、始端から2番目のエッジ変化量dTS2に関する記録補償テーブルの一例を示す表である。
終端のエッジ変化量dTE1は、下記の表3に示すように、記録するマークのマーク長と、当該マークの直前のスペースのスペース長(前スペース長)と、当該マークの直後のスペースのスペース長(後スペース長)とによって分類した結果に基づいて規定されている。表3は、終端のエッジ変化量dTE1に関する記録補償テーブルの一例を示す表である。
終端のエッジ変化量dTE1は、記録するマークのマーク長については、2T、3T、4T及び5T以上の4通りに分け、マーク長が2Tのときのみ、前スペース長が2T及び3T以上の2通りに分け、後スペース長については、2T、3T、4T及び5T以上の4通りに分け、それぞれについて(4+1)×4=20通りに分類して規定されている。
エッジ変化量dTE1は、終端のパルスエッジの位置であるため、後スペースの影響が支配的であるが、マーク長が2Tのときは前スペースの影響も無視できないため、このように分類されている。
なお、ここでは、エッジ変化量dTE1について、マーク長について4通り、後スペース長について4通り、前スペース長について2通りに分類しているが、この場合に限定されるものではない。例えば、マーク長について2通り、3通り、5通り、又は6通り以上に分類してもよく、前スペース長及び後スペース長についてそれぞれ2通り、3通り、4通り、5通り、又は6通り以上に分類してもよい。エッジ変化量dTE1は、例えば、i1=2nsecのように絶対時間で規定してもよく、あるいは基準時間信号128に基づいてTw/32の整数倍の値で規定してもよい。
終端から2番目のエッジ変化量dTE2は、下記の表4に示すように、記録するマークのマーク長と、当該マークの直前のスペースのスペース長(前スペース長)と、当該マークの直後のスペースのスペース長(後スペース長)とによって分類した結果に基づいて規定されている。表4は、終端から2番目のエッジ変化量dTE2に関する記録補償テーブルの一例を示す表である。
終端から2番目のエッジ変化量dTE2は、記録するマークのマーク長については、3T、4T及び5T以上の3通りに分け、後スペース長については、2T、3T、4T及び5T以上の4通りに分け、それぞれについて3×4=12通りに分類して規定されている。
エッジ変化量dTE2は、終端から2番目のパルスエッジの位置である。2Tマークのエッジ変化量dTE2は、始端から2番目のエッジ変化量dTS2と一致するため定義しない。
なお、ここでは、エッジ変化量dTE2について、マーク長について3通り、後スペース長について4通りに分類しているが、この場合に限定されるものではない。例えば、マーク長について2通り、4通り、又は5通り以上としてもよく、後スペース長について2通り、3通り、5通り、又は6通り以上としてもよい。エッジ変化量dTE2は、例えば、p1=2nsecのように絶対時間で規定してもよく、あるいは基準時間信号128に基づいてTw/32の整数倍の値で規定してもよい。
上述のように、記録パルス信号125の始端のパルスエッジの位置をエッジ変化量dTS1、dTS2、dTE1及びdTE2分だけ変化させることによってマーク301の始端位置をより精密に制御できる。さらに、記録するマークのマーク長だけでなく前スペース長に応じてパルスエッジを制御するので、符号間干渉を考慮して、マーク301の始端位置をさらに精密に制御できる。
なお、以上の例では、始端から2番目まで及び終端から2番目までのパルスエッジの位置を変化させているが、始端から3番目以降及び終端から3番目以降のパルスエッジの位置を変化させるようにしてもよい。
また、各エッジ変化量dTS1、dTS2、dTE1及びdTE2について、下記の表5〜表8のように前スペース長及び後スペース長の分類を2T及び3T以上の2通りに簡略化してもよい。表5は、始端のエッジ変化量dTS1に関する記録補償テーブルの一例を示す表であり、表6は、始端から2番目のエッジ変化量dTS2に関する記録補償テーブルの一例を示す表であり、表7は、終端のエッジ変化量dTE1に関する記録補償テーブルの一例を示す表であり、表8は、終端から2番目のエッジ変化量dTE2に関する記録補償テーブルの一例を示す表である。
光記録媒体11にレーザビームを絞って高密度記録を行う場合には、最小の記録マーク及びスペースは光スポットと同じぐらい小さくなる。そのため、光学的なMTF(Modulation Transfer Function)の影響により最短マークと最短スペースとに関する信号が符号間干渉をおこして正確なエッジ位置に記録もしくは再生できないことが起こる。したがって、最も短い2Tのスペース長とそれ以外のスペース長とに分けるだけで符号間干渉を考慮した十分な記録特性を得ることが可能な場合には、上記のように簡略化して分類することで、記録補償テーブルを簡便化できるので装置を簡略化できるというメリットがある。
さらに、上記各エッジ変化量dTS1、dTS2、dTE1及びdTE2に関する記録補償テーブルについて説明する。
記録補償器118内に保持されている記録補償テーブルは、以下の2つの方法のいずれかにより取得される。第1の方法では、記録補償器118は、光記録媒体11のリードインエリアとよばれる領域にディスク製造時あるいはディスク製造後にあらかじめ記録されている記録補償テーブルを読み出し、読み出した記録補償テーブルを記憶する。第2の方法では、記録補償器118は、光記録媒体11上の試し書き領域に実際に所定の記録パルス信号による試し書きを行って、その試し書きされたマーク及びスペースを再生してエッジシフト量を測定し、最も信号品質が良好な条件を探索する過程で求まる学習結果によって記録補償テーブルを取得する。
第1の方法では、光記録媒体11の所定領域に記録された記録補償テーブルは、再生データとして得られ、記録補償器118に格納される。
次に、第2の方法において、光記録媒体11に所定の記録符号列の試し書きを行って、記録補償テーブルを作成する方法について図6のフローチャートを用いて説明する。図6は、本発明の実施の形態に係る光学的情報記録方法における記録補償テーブルを作成する方法について説明するためのフローチャートである。
まず、光記録再生装置は、マークについて、当該マークのマーク長と、当該マークの直前のスペースのスペース長と、当該マークの直後のスペースのスペース長との組み合わせに基づいて分類し、その分類されたマークを光記録媒体11上の試し書き領域に試し書きする(ステップS11)。このとき、光記録再生装置は、2T、3T、4T及び5Tのそれぞれのマーク長を有するマークを試し書きするとともに、各マークのそれぞれに対して、2T、3T、4T及び5Tのスペース長を有する前スペースと、2T、3T、4T及び5Tのスペース長を有する後スペースとを試し書きする。
次に、光記録再生装置は、試し書きしたマーク及びスペースを再生して再生信号を得る(ステップS12)。
次に、光記録再生装置は、再生信号に基づいて、マークのマーク長と、マークの直前のスペースのスペース長と、マークの直後のスペースのスペース長との組み合わせにエッジ変化量を対応付けた記録補償テーブルを作成する(ステップS13)。その結果、光記録再生装置は、表1〜表4に示す記録補償テーブル、又は表5〜表8に示す記録補償テーブルを作成する。光検出器100によって光電変換された電気信号は、プリアンプ101で増幅され再生信号120となり、波形等化器103及び2値化器104を経て2値化再生信号121となる。得られた2値化再生信号121は、復号器105だけでなく、再生シフト測定器170にも送られる。再生シフト測定器170は、PLLによって同期化された2値化再生信号と、同期化される前の2値化再生信号とを比較して、各マーク及びスペースごとのシフト量(エッジ変化量)を測定し、測定結果を記録補償器118へ送信する。
なお、このように光記録媒体11上の試し書き領域での試し記録を行う場合には、光記録再生装置は、測定されたエッジ変化量に応じて記録補償テーブルデータを随時更新し、再度前述の記録動作を行い、再生時のPLLクロックと2値化再生信号とのエッジシフトを低減するような記録補償テーブルを探索すべく記録動作を繰り返し行ってもよい。
また、マーク長又はスペース長が小さいためエッジシフトの検出が困難となり、PRML方式によって信号パターンを判定する場合には、通常のエッジのシフト量に変えてMLSE(Maximum Likelihood Sequence Estimation)値のシフト成分を測定してもよい。
なお、本発明の実施の形態では、記録パワーを3値のレーザパワーレベルで変調する場合の例について説明しているが、中間パルス内のボトムパワーとは異なるパワーレベルを有する冷却パルスをさらに含む4値のレーザパワーレベルで変調にしたときにも同様の効果が得られることは言うまでもない。すなわち、記録パルス列は、レーザビームの強さが3値以上のパワーで切り替えられて変調される。
記録パワーは、パワー設定器114に一時的に記憶される。読出部130は、光記録媒体11のリードインエリアと呼ばれる領域にディスク製造時又はディスク製造後にあらかじめ記録されているパワー情報を読み出し、読み出したパワー情報をパワー設定器114に一時的に記憶する。パワー設定器114は、読出部130によって読み出されたパワー情報の値に基づいて、記録パルス列の各パルスのパワーを設定する。なお、パワー情報は、各情報層のピークパワー、ボトムパワー、クーリングパワー及びイレースパワーを含む。また、パワー情報は、各情報層のピークパワー、ボトムパワー、クーリングパワー及びイレースパワーを、ピークパワー(Pw)に対する比で表した情報であってもよい。
また、パワー設定器114は、光記録媒体11上の試し書き領域に試し書きするようレーザ駆動回路111に指示し、試し書きされた信号を再生した信号に基づいて、適当な条件を探索する過程で求まる学習結果によってピークパワーを再設定してもよい。パワー設定器114は、各情報層は、再設定されたピークパワーと、あらかじめ記憶されているピークパワーに対する比を用いて、イレースパワー、ボトムパワー及びクーリングパワーを再設定してもよい。
また、本実施の形態の記録パルスは、記録するマーク長が1つ増えるとパルスの数が1つ増えるとしているが、パルスの数の規則は異なっていてもよい。例えば、記録パルスは、記録するマーク長が2つ増えるとパルスの数が1つ増えるものでもよいし、最終パルスの後の冷却パルスがないものでもよい。
以下、記録するマーク長が2つ増えるとパルスの数が1つ増える記録パルスの例について説明する。図7は、本発明の実施の形態において、記録するマーク長が2つ増えるとパルスの数が1つ増える記録パルスの例について説明するための図である。なお、以降、記録するマーク長が2つ増えるとパルスの数が1つ増える記録パルスのことをN/2記録ストラテジと呼ぶ。
N/2記録ストラテジでは、最短マーク(2T)及び2番目に短いマーク(3T)を記録するための記録波形は、1つのパルス(トップパルス)のみからなる。また、3番目に短いマーク(4T)及び4番目に短いマーク(5T)を記録するための記録波形は、2つのパルス(前から、トップパルス及びラストパルス)からなる。また、5番目に短いマーク(6T)及び6番目に短いマーク(7T)を記録するための記録波形は、3つのパルス(前から、トップパルス、中間パルス及びラストパルス)からなる。7番目に短いマーク(8T)及び7番目に短いマークよりも長いマークを記録するための記録波形は、マーク長が2つ増える毎に中間パルスが1つ増える。
ここで、このN/2記録ストラテジの各パラメタは、図8に示すように記録マークの長さに応じて分類されて設定されてもよい。図8は、本発明の実施の形態において、N/2記録ストラテジの各パラメタを設定するための記録補償テーブルの一例を示す図である。
まず、トップパルスの立ち上がり位置dTtop及びトップパルスの幅Ttopは、例えば、記録マークの長さに対して「2T」、「3T」、「4T,6T,8T」及び「5T,7T,9T」の4つに分類されて設定されてもよい。
また、ラストパルスの立ち上がり位置dTlp及びラストパルスの幅Tlpは、例えば、記録マークの長さに対して「4T,6T,8T」及び「5T,7T,9T」の2つに分類されて設定されてもよい。
また、クーリングパワーPcの設定を終了する位置(イレースパワーPeの開始位置)dTeは、記録マークの長さに対して「2T」、「3T」、「4T,6T,8T」及び「5T,7T,9T」の4つに分類されて設定されてもよい。なお、ラストパルスの立ち下がりとイレースパワーPeの開始位置が一致するように、位置dTeが設定されることで、記録パルス列がクーリングパルスを有しないようにすることもできる。
また、中間パルスの立ち上がり位置は、記録マークの長さに対して「6T,8T」及び「7T,9T」の2つに分類されてもよい。前者の分類では、中間パルスの立ち上がりは、基準クロック位置と一致させる。後者の分類では、中間パルスの立ち上がりは、基準クロックからT/2ずらす。さらに、中間パルスの幅Tmpは、記録マークの長さに対して「6T,7T,8T,9T」の全てで同一の設定でもよい。
これらの記録マークの長さに応じて分類されるパラメタは、さらに記録マークの前後のスペース長によって分類されてもよい。
例えば、位置dTtop及び幅Ttopは、前スペース(記録マークの直前のスペース)の長さに対して「2T」、「3T」、「4T」及び「5T以上」の4つに分類されてもよい。さらに、位置dTtop及び幅Ttopは、2Tマークにおいては後スペース(記録マークの直後のスペース)の長さに対して「2T」及び「3T以上」の2つに分類されてもよい。
また、位置dTlp及び幅Tlpは、後スペースの長さに対して「2T」、「3T」、「4T」及び「5T以上」の4つに分類されてもよい。
また、位置dTeは、後スペースの長さに対して「2T」、「3T」、「4T」及び「5T以上」の4つに分類されてもよい。さらに、位置dTeは、2Tマークにおいては前スペースの長さに対して「2T」及び「3T以上」の2つに分類されてもよい。
また、幅Tmpは、記録マークの長さに対して「6T,7T,8T,9T」の全てで同一の設定でもよい。
以上の分類に基づき、N/2記録ストラテジの各パラメタを設定するための記録補償テーブルは図8のように示される。なお、図8に示す記録補償テーブルでは、各パラメタの具体的な値については省略している。
図9は、本発明の実施の形態に係るパワー情報の一例を示す図である。図9に示すように、パワー情報は、ピークパワーPw、イレースパワーPe、ボトムパワーPb及びクーリングパワーPcの値で設定されてもよいし、それぞれのパワーレベルのピークパワーに対する比で設定されてもよい。なお、図9に示すパワー情報では、各パワーの具体的な値については省略している。
続いて、本発明の実施の形態に係る光記録再生装置による光学的情報再生方法について説明する。一般に、良好に情報を再生するためには、光記録媒体11の各情報層の反射率が大きいこと、結晶相である記録膜の反射率と非晶質である記録膜の反射率との比が大きいこと、及び、再生時のレーザパワーが大きいことが重要である。加えて、本実施の形態で説明する光学的情報再生方法では、図10に示す周波数特性を有する波形等化を行うことを特徴とする。
本実施の形態の光学的情報再生方法では、光記録媒体11に記録されたマークがレーザビームで読み取られ、検出レンズ106、光検出器100及びプリアンプ101を用いて再生信号120が生成される。再生信号120は、波形等化器103で周波数特性を補正した信号となる。さらに、周波数特性が補正された再生信号120は、2値化器104で2値化再生信号121に変換される。復号器105は、2値化再生信号121に逆変換を施して再生データ122を生成する。
2Tw信号、3Tw信号、4Tw信号、及び8Tw信号等の中で、2Tw信号など周波数の高い信号ほど小さなマークであるため、再生される信号の振幅が小さくなるという、周波数に依存する光学的出力の減衰が観測される。そこで、このような出力の減衰を補正するために、本実施の形態の光学的情報再生方法では、周波数の高い信号ほど出力振幅を大きくするようにイコライザ特性が設定される。
図10は、本発明の実施の形態に係る波形等化器(イコライザ)103の周波数特性を模式的に示す図であり、入力信号に対する出力信号の振幅比を表すものである。図10において、横軸は、再生信号周波数であり、2Tw信号、3Tw信号、4Tw信号及び8Tw信号の周波数を模式的に示す。縦軸は、波形等化器103の出力振幅の対数表示である。波形等化器103としては、高域通過型フィルター(High Pass Filter)、2Twより少し高い周波数にピークを持たせたバンドパスフィルター(Band Pass Filter)、又は、高域通過型フィルターとバンドパスフィルターと増幅器とを組み合わせたものを用いることができる。
従って、マーク又はスペースが2Tw信号のような周波数の高い信号である場合の出力振幅と、マーク又はスペースが8Twのような周波数の低い信号である場合の出力振幅との差、すなわち特性曲線の傾きは、最短マーク長が短くなるほど大きくなる。それに伴い、例えば4Tw信号の周波数における出力振幅と、8Tw信号の周波数における出力振幅との差も大きくなる。
そこで、再生信号特性は、再生周波数特性のピークシフトを防止し、ノイズの周波数分布を変化させ、再生信号品質を良くし、再生信号のエラーレートを改善できる特性にすることが望ましい。
図11は、本発明の実施の形態に係る光学的情報再生方法における再生信号波形を示す概略図である。図11は、マーク形状の違いによる再生信号特性の違いを示す概略図である。図11のマーク配列300a,300bは、光スポットが図面の左から右へ走査し、記録マークが形成された後のマーク形状を表している。図11の再生信号120a,120bは、マーク配列300a,300bのそれぞれのマーク形状が形成された後、記録したマークを消去しない程度の強さの光でマークを読み出した後の再生信号を示す。
図11のマーク配列300aは、相変化を利用した書き換え型ディスクの代表的なマーク形状を示している。マーク配列300aでは、最も小さい2Twマーク401がイチョウ型のマークとして形成されている。冷却パルスによってマーク終端部が後から再結晶化されることによって、2Twマーク401のマーク形状は、イチョウ型となっている。図11の再生信号120aは、図11のマーク配列300aのマークを再生した時の再生信号である。図11のように2Twマーク401と2Twスペース402とが隣接している場合、最も再生信号振幅が小さくなる。この場合、I2が最小振幅となる。
一方、図11のマーク配列300bは、相変化を利用した追記型ディスクにおいて形成されるマーク形状の一例を示している。図11の再生信号120bは、図11のマーク配列300bのマークを再生した時の再生信号である。追記型ディスクでは、冷却パルスによる再結晶化を経ないでマークが形成される。そのため、2Twマーク403は、円形であって、他の長いマークに比べて幅方向に細く形成されることがある。このように、2Twマーク403の大きさが他のマークの大きさに比べて、幅方向に小さく形成される場合、図11の再生信号120bの最小振幅I2は、MTFの影響を受けて図11の再生信号120aにおける最小振幅I2よりも小さくなる。そのため、2Twマーク403の符号間干渉が増大し、再生ピークシフトが生じる。
図10に示す波形等化器103の再生周波数特性において、ピークブースト値(Bp)を大きくすると、再生信号120の振幅を大きくするのと同時にノイズを増大させることとなる。特に、過ブースト状態となると、信号帯域よりも高域側のノイズを増大させることとなり、この場合、再生信号120の品質が悪くなるという弊害がある。また、過ブースト状態では、信号成分のうち低域側(4Tw〜8Tw)の符号間干渉を増大させるため、かえって再生特性を悪くしてしまう。このように、2Twマークなどの記録マークが他のマークに比べ特に小さく形成される場合、マーク長のみの記録補償では、2Twのマークの符号間干渉を補償することができるが、スペースに関する符号間干渉が残ってしまい再生信号の特性を悪くする。
そこで、上述の実施の形態で説明したように、マーク記録時において、特に2Twスペースを考慮して、記録パルス信号125のパルスエッジを、マーク長と前スペース長と後スペース長とに応じたエッジ変化量dTS1、dTS2及びdTE1だけ変化させ、さらに記録パルス信号125の始端又は終端エッジを補償する。これにより、特に2Twスペースで生じていた符号間干渉を低減でき、低いブースト値でも再生信号120の特性を向上させることができる。
また、記録補償を行うときのターゲットブースト値は、追記型記録媒体など図11のマーク配列300bのような記録マークが形成される光記録媒体にデータを記録する場合、記録補償の補償精度にも依存する。例えばTw/32程度の補償精度で記録補償を行う場合は、ブースト値を1dB〜2dB程度増加させて記録することが望ましい。また、試し書きの際、初めにスペース補償をしない状態で記録を行い、エラーレートなどの再生信号特性が基準値を満たしていない場合に限り、スペース補償を含めた記録動作を行ってもよい。
また、あらかじめ記録する信号から最短マーク長を除いた符号系列で第1の試し書きを行い、3Tw以上のマーク長の記録補償テーブルを作成した後、2Tw信号を含んだ符号系列で第2の試し書きを行い、2Twのマーク長を含めた記録補償テーブルを作成してもよい。図11の再生信号120bのように再生信号振幅が極めて小さい場合、2Tw信号の記録マーク位置が正しくなければ、3Tw以上の長いマーク及びスペースの位置を正しく合わせるのが困難となる場合がある。前述のような非常に符号間干渉の大きい信号を再生する場合、初めに3Tw以上の符号長のマークを記録し、3Tw以上のマーク及びスペースのエッジ位置を正確に記録補償しておき、その後2Tw信号を含む信号を記録して、2Twのマーク及びスペースの記録位置を正確に補償する。これにより、より正確にかつ効率よく情報を記録することができ、再生信号品質を向上させることができる。
また、上記のように3Tw以上の符号長の信号を記録する際には、再生イコライザのブースト値を、2Tw信号を含んだ通常の記録符号列を記録するときに比べて1dBから2dB下げて、記録補償を行ってもよい。この場合、2Tw信号を含まないため、再生信号の振幅は比較的大きく符号間干渉の発生はゆるやかである。そのため、通常のブースト値よりもやや低めのブースト値で、マーク長の長いマークのエッジ位置を調整することで、エッジシフトの少ない信号を記録できる。
また、書換型の光記録媒体では、複数回の書換により記録された信号も正しく再生できなければならない。記録された信号を再生したときのエラーレートは、シンボルエラーレート(SER)が2.0×10−4以下であれば、実用上問題ないレベルである。
続いて、本発明の実施の形態に係る光学的情報記録媒体の一例を説明する。図12は、本発明の実施の形態に係る光記録媒体11を示す部分断面図である。光記録媒体11は、例として、対物レンズ32で集光したレーザビーム31を照射することによって情報の記録又は再生が可能な3層多層光記録媒体であるとする。
レーザビーム31の波長λが短いほど、対物レンズ32によって小さなスポット径に集光できるが、波長λが短すぎると、透明層23などによるレーザビーム31の光吸収が大きくなる。そのため、レーザビーム31の波長λは350nm〜450nmの範囲内であることが好ましい。
光記録媒体11には、基板21上に、分離層22、28を介して順次積層された、第1情報層41、第2情報層42及び第3情報層43の3個の情報層、及び透明層23がこの順に設けられている。
この光記録媒体11に対し、対物レンズ32は、透明層23側からレーザビーム31を各情報層に集光して、情報が記録又は再生される。
光記録媒体11では、第3情報層43よりも基板21に近い側にある情報層に到達するレーザビーム及びその反射光は、その情報層よりレーザビーム31の入射面側の情報層を透過することにより減衰してしまう。そのため、第1情報層41及び第2情報層42は高い記録感度と高い反射率とを有する必要があり、第2情報層42層及び第3情報層43は高い透過率を有する必要がある。
基板21は、円盤状の形状をしており、第1情報層41から透明層23までの各層を保持するために用いられる。基板21の第1情報層41側の面には、レーザビーム31を導くための案内溝が形成されていてもよい。基板21の第1情報層41側に対して反対側の面は、平滑であることが好ましい。基板21の材料は、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリオレフィン樹脂、ノルボルネン系樹脂、ガラス、あるいはこれらを適宜組み合わせた材料等を用いることができる。特にポリカーボネート樹脂は、転写性及び量産性に優れ、低コストであることから、基板21の材料として好ましい。
分離層22及び分離層28は、光記録媒体11の第1情報層41、第2情報層42及び第3情報層43のそれぞれのフォーカス位置を区別するために設けられる層である。分離層22及び分離層28の厚さは、対物レンズ32の開口数NAとレーザビーム31の波長λとにより決定される焦点深度以上であることが望ましい。一方、分離層22及び分離層28が厚すぎると、光記録媒体11のレーザビーム31の入射面から第1情報層41までの距離が長くなり、光記録媒体11が傾いたときのコマ収差が大きくなるため、第1情報層41に正しく集光できなくなってしまう。その点では、分離層22及び分離層28は薄いほうが良い。仮に、レーザビーム31の波長λが405nmであり、対物レンズ32の開口数NAが0.85である場合には、分離層22及び分離層28の厚さは5μm〜50μmの範囲内であることが好ましい。
分離層22及び分離層28は、レーザビーム31に対して光吸収が小さいことが好ましい。分離層22及び分離層28のレーザビーム31の照射側の面には、レーザビーム31を導くための案内溝が形成されていてもよい。分離層22及び分離層28の材料は、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリオレフィン樹脂、ノルポルレン系樹脂、紫外線硬化性樹脂、遅効性熱硬化樹脂、ガラス、あるいはこれらを適宜組み合わせた材料等を用いることができる。
透明層23は、第3情報層43のレーザビーム31の入射面側にあり、第3情報層43を保護する。透明層23は、レーザビーム31に対して光吸収が小さいことが好ましい。透明層23の材料は、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリオレフィン樹脂、ノルボルネン系樹脂、紫外線硬化性樹脂、遅効性熱硬化樹脂、ガラス、あるいはこれらを適宜組み合わせた材料等を用いることができる。また、透明層23の材料は、これらの材料よりなるシートを用いてもよい。
透明層23の厚さが薄すぎると、第3情報層43を保護する機能が発揮できなくなる。また、透明層23の厚さが厚すぎると、分離層22及び分離層28の場合と同様に、光記録媒体11のレーザビーム31の入射面から第1情報層41までの距離が長くなり、光記録媒体11が傾いたときのコマ収差が大きくなるため、第1情報層41に正しく集光できなくなってしまう。仮に、対物レンズ32の開口数NAが0.85である場合には、透明層23の厚さは5μm〜150μmの範囲内であることが好ましく、40μm〜110μmの範囲内であることがより好ましい。
また、図13は、本発明の実施の形態に係る光記録媒体11の各情報層をさらに詳細に示す部分断面図である。
図13に示すように、第1情報層41には、基板21に近い側から、金属膜412、第1の誘電体膜414、記録膜416及び第2の誘電体膜418がこの順に設けられている。また、必要に応じて、金属膜412と第1の誘電体膜414との間に金属膜側界面膜413を設けてもよく、第1の誘電体膜414と記録膜416との間に第1の界面膜415を設けてもよく、第2の誘電体膜418と記録膜416との間に第2の界面膜417を設けてもよい。なお、金属膜側界面膜413、第1の界面膜415及び第2の界面膜417の図示は省略している。
同様に、第2情報層42には、基板21に近い側から、透過率調整膜421、金属膜422、第1の誘電体膜424、記録膜426及び第2の誘電体膜428がこの順に設けられている。また、必要に応じて、金属膜422と第1の誘電体膜424との間に金属膜側界面膜423を設けてもよく、第1の誘電体膜424と記録膜426との間に第1の界面膜425を設けてもよく、第2の誘電体膜428と記録膜426との間に第2の界面膜427を設けてもよい。なお、金属膜側界面膜423、第1の界面膜425及び第2の界面膜427の図示は省略している。
同様に、第3情報層43には、基板21に近い側から、透過率調整膜431、金属膜432、第1の誘電体膜434、記録膜436及び第2の誘電体膜438がこの順に設けられている。また、必要に応じて、金属膜432と第1の誘電体膜434との間に金属膜側界面膜433を設けてもよく、第1の誘電体膜434と記録膜436との間に第1の界面膜435を設けてもよく、第2の誘電体膜438と記録膜436との間に第2の界面膜437を設けてもよい。なお、金属膜側界面膜433、第1の界面膜435及び第2の界面膜437の図示は省略している。
次に、第1情報層41を構成する各膜について説明する。
記録膜416は、レーザビーム31の照射によって結晶相と非晶質相との間で可逆的な相変化を起こす膜である。記録膜416の材料としては、(Ge−Sn)Te、GeTe−Sb2Te3、(Ge−Sn)Te−Sb2Te3、GeTe−Bi2Te3、GeTe−In2Te3、(Ge−Sn)Te−Bi2Te3、GeTe−(Sb−Bi)2Te3、(Ge−Sn)Te−(Sb―Bi)2Te3、GeTe−(Bi―In)2Te3、(Ge―Sn)Te−(Bi―In)2Te3、Sb−Te、Sb−Ge、(Gb−Te)−Ge、Sb−In、(Sb−Te)−In、Sb−Ga及び(Sb−Te)―Gaのいずれかを含む材料を用いることができる。記録膜416は、記録中のレーザビーム照射時には非晶質相から結晶相に容易に変化できること及びレーザビーム非照射時には非晶質相から結晶相に変化しないことが好ましい。
記録膜416の厚さが薄すぎると、十分な反射率、反射率変化及び消去率が得られなくなる。また、記録膜416の厚さが厚すぎると、熱容量が大きくなるため記録感度が低下する。そのため、記録膜416の厚さは、6nm〜15nmの範囲内であることが好ましく、8nm〜12nmの範囲内であることがより好ましい。
金属膜412は、記録膜416に吸収される光量を増やすという光学的な機能と、記録膜416で生じた熱を拡散させるという熱的な機能とを持つ。金属膜412の材料としては、Ag、Au、Cu、及びAlのうちの少なくとも1つの元素を含んだものを用いることができる。金属膜412の材料としては、例えば、Ag−Cu、Ag−Ga−Cu、Ag−Pd−Cu、Ag−Nd−Au、AlNi、AlCr、Au−Cr、又はAg−Inといった合金を用いることができる。特に、Ag合金は熱伝導率が大きいため金属膜412の材料として好ましい。金属膜412の厚さは厚いほど熱拡散機能が高い。しかしながら、金属膜412の厚さが厚すぎると熱拡散機能が高すぎて記録膜416の記録感度が低下する。そのため、金属膜412の厚さは、30nm〜200nmの範囲内であることが好ましく、70nm〜140nmであることがより好ましい。
第1の誘電体膜414は、記録膜416と金属膜412との間にあり、記録膜416から金属膜412への熱拡散を調節する熱的な機能と、反射率及び吸収率などを調節する光学的な機能とを持つ。第1の誘電体膜414の材料としては、例えば、ZrO2、HfO2、ZnO、SiO2、SnO2、Cr2O3、TiO2、In2O3、Ga2O3、Y2O3、CeO2、又はDyO2等の酸化物、ZnS又はCdS等の硫化物、SiCなどの炭化物の単体、あるいはこれらの混合物を用いることができる。混合物としては、例えばZrO2−SiO2、ZrO2−SiO2−Cr2O3、ZrO2−SiO2−Ga2O3、HfO2−SiO2−Cr2O3、ZrO2−SiO2−In2O3、ZnS−SiO2、又はSnO2−SiCを用いることができる。特にZnS−SiO2は、第1の誘電体膜414の材料として優れている。ZnS−SiO2は、成膜速度が速く、透明であり、機械特性及び耐湿性が良好であることによる。
第1の誘電体膜414の厚さが厚すぎると、金属膜412の冷却効果が弱くなり、記録膜416からの熱拡散が小さくなってしまうため非晶質化しにくくなってしまう。また、第1の誘電体膜414の厚さが薄すぎると、金属膜412の冷却効果が強くなり、記録膜416からの熱拡散が大きくなって感度が低下してしまう。そのため、第1の誘電体膜414の厚さは、5nm〜40nmの範囲内であることが好ましく、8nm〜30nmの範囲内であることがより好ましい。
金属膜側界面膜413は、第1の誘電体膜414の材料によって、金属膜412が腐食又は破壊されるのを防ぐ働きを持つ。具体的には、金属膜側界面膜413は、金属膜412に銀(Ag)を含んだ材料を用い、かつ、第1の誘電体膜414に硫黄(S)を含んだ材料(例えばZnS−SiO2)を用いたとき、AgがSと反応することによって腐食してしまうことを防ぐ。
金属膜側界面膜413の材料としては、Ag以外の金属、例えばAl、又はAl合金を用いることができる。
また、金属膜側界面膜413の材料としては、硫黄(S)を含まない誘電体材料、例えば、ZrO2、HfO2、ZnO、SiO2、SnO2、Cr2O3、TiO2、In2O3、Ga2O3、Y2O3、CeO2、又はDyO2等の酸化物、SiCなどの炭化物の単体、あるいはこれらの混合物を用いることができる。混合物としては、例えばZrO2−SiO2、ZrO2−SiO2−Cr2O3、ZrO2−SiO2−Ga2O3、HfO2−SiO2−Cr2O3、ZrO2−SiO2−In2O3、又はSnO2−SiCを用いることができる。または、金属膜側界面膜413の材料としては、炭素(C)などを用いることができる。
金属膜側界面膜413の厚さが厚すぎると、第1の誘電体膜414の熱的及び光学的な働きを妨げる。また、金属膜側界面膜413の厚さが薄すぎると、金属膜412の腐食及び破壊を防ぐ機能が低下する。そのため、金属膜側界面膜413の厚さは、1nm〜100nmの範囲内であることが好ましく、5nm〜40nmの範囲内であることがより好ましい。
第1の界面膜415は、繰り返し記録によって第1の誘電体膜414と記録膜416との間で生じる物質移動を防止する働きを持つ。第1の界面膜415は、記録の際に融けない程度の高融点を持ち、記録膜416との密着性が良い材料であることが好ましい。第1の界面膜415の材料としては、例えば、ZrO2、HfO2、ZnO、SiO2、SnO2、Cr2O3、TiO2、In2O3、Ga2O3、Y2O3、CeO2、DyO2等の酸化物、ZnS、又はCdS等の硫化物、SiCなどの炭化物の単体、あるいはこれらの混合物を用いることができる。混合物としては、例えばZrO2−SiO2、ZrO2−SiO2−Cr2O3、ZrO2−SiO2−Ga2O3、HfO2−SiO2−Cr2O3、ZrO2−SiO2−In2O3、ZnS−SiO2、又はSnO2−SiCを用いることができる。または、第1の界面膜415の材料としては、炭素(C)などを用いることができる。特にGa2O3、ZnO又はIn2O3などは、第1の界面膜415の材料として好ましい。Ga2O3、ZnO又はIn2O3は、記録膜416との密着性が良いことによる。
第1の界面膜415の厚さが薄すぎると、界面膜としての効果を発揮できなくなる。また、第1の界面膜415の厚さが厚すぎると、第1の誘電体膜414の熱的及び光学的な働きを妨げてしまう。そのため、第1の界面膜415の厚さは、0.3nm〜15nmの範囲内であることが好ましく、1nm〜8nmの範囲内であることがより好ましい。
第2の誘電体膜418は、記録膜416よりもレーザビームの入射面側にあり、記録膜416の腐食及び変形などを防止する機能と、反射率又は吸収率などを調整する光学的な機能とを持つ。また、第2の誘電体膜418の材料としては、第1の誘電体膜414と同様の材料を用いることができる。特にZnS−SiO2は、第2の誘電体膜418の材料として優れている。ZnS−SiO2は、成膜速度が速く、透明であり、機械特性及び耐湿性が良好である。
第2の誘電体膜418の厚さが薄すぎると、記録膜416の腐食及び変形などを防止する機能が低下する。また、第2の誘電体膜418の厚さは、マトリクス法に基づく計算により、結晶相である記録膜416と非晶質相である記録膜416との反射光量の変化が大きくなる条件を満足するように、厳密に決定することができる。第2の誘電体膜418の厚さは、20nm〜80nmの範囲内であることが好ましい。
第2の界面膜417は、第1の界面膜415と同様に、繰り返し記録によって第2の誘電体膜418と記録膜416との間で生じる物質移動を防止する働きを持つ。従って、第2の界面膜417の材料としては、第1の界面膜415と同様の性能を持つ材料であることが好ましい。
第2の界面膜417の厚さは、第1の界面膜415と同様に、0.3nm〜15nmの範囲内であることが好ましく、1nm〜8nmの範囲内であることがより好ましい。
第1情報層41は、金属膜412、第1の誘電体膜414、記録膜416及び第2の誘電体膜418で構成され、さらに必要に応じて金属膜側界面膜413、第1の界面膜415及び第2の界面膜417が加えられる。
次に、第2情報層42を構成する各膜について説明する。
記録膜426の材料としては、第1情報層41の記録膜416と同様の材料を用いることができる。記録膜426の厚さは、第2情報層42の透過率を高くするために、10nm以下であることが好ましく、5nm〜9nmの範囲内であることがより好ましい。
金属膜422は、第1情報層41の金属膜412と同様の機能を持つ。すなわち、金属膜422は、記録膜426に吸収される光量を増やすという光学的な機能と、記録膜426で生じた熱を拡散させるという熱的な機能とを持つ。そのため、金属膜422の材料としては、第1情報層41の金属膜412と同様の材料を用いることができる。特にAg合金は熱伝導率が大きいため金属膜422の材料として好ましい。
金属膜422の厚さは、第2情報層42の透過率を高くするために、20nm以下であることが好ましく、6nm〜14nmの範囲内であることがより好ましい。金属膜422の厚さが6nm〜14nmの範囲内にあることにより、金属膜422の光学的及び熱的な機能が十分になる。
第1の誘電体膜424は、第1情報層41の第1の誘電体膜414と同様の機能を持つ。すなわち、第1の誘電体膜424は、記録膜426から金属膜422への熱拡散を調節する熱的な機能と、反射率又は吸収率などを調節する光学的な機能とを持つ。そのため、第1の誘電体膜424の材料としては、第1情報層41の第1の誘電体膜414と同様の材料を用いることができる。
第1の誘電体膜424の厚さは、光学的及び熱的な機能が十分となるように、1nm〜40nmの範囲内であることが好ましく、4nm〜30nmの範囲内であることがより好ましい。
第2の誘電体膜428は、第1情報層41の第2の誘電体膜418と同様の機能を持つ。すなわち、第2の誘電体膜428は、記録膜426の腐食及び変形などを防止する機能と、反射率又は吸収率などを調整する光学的な機能とを持つ。そのため、第2の誘電体膜428の材料としては、第1情報層41の第2の誘電体膜418と同様の材料を用いることができる。第2の誘電体膜428の厚さは、マトリクス法に基づく計算により、結晶相である記録膜426と非晶質相である記録膜426との反射光量の変化が大きくなる条件を満足するように、厳密に決定することができる。
透過率調整膜421は、誘電体からなり、第2情報層42の透過率を調節する機能を持つ。この透過率調整膜421によって、記録膜426が結晶相である場合の第2情報層42の透過率Tc(%)と、記録膜426が非晶質相である場合の第2情報層42の透過率Ta(%)とを共に高くすることができる。
透過率調整膜421の材料としては、TiO2、ZrO2、HfO2、ZnO、Nb2O5、Ta2O5、Al2O3、SiO2、Cr2O3、CeO2、Ga2O3、又はBi2O3等の酸化物、Ti−N、Zr−N、Nb−N、Ge−N、Cr−N、又はAl−N等の窒化物、ZnSなど硫化物の単体、あるいはこれらの混合物を用いることができる。透過率調整膜421の屈折率ntと消衰係数ktとは、透過率Tc及び透過率Taを高めるために、nt≧2.4、かつ、kt≦0.1であることが好ましい。そのため、透過率調整膜421の材料としては、上記の材料中でも、TiO2又はTiO2を含む材料を用いることが好ましい。これらの材料は、屈折率ntが大きく(nt=2.6〜2.8)、消衰係数ktが小さい(kt=0.0〜0.1)。そのため、これらの材料を用いて形成した透過率調整膜421は第2情報層42の透過率を効果的に高める。
透過率調整膜421の厚さが略λ/8nt(ただし、λはレーザビーム31の波長であり、ntは透過率調整膜421の材料の屈折率である)であるとき、透過率Tc及び透過率Taを高める効果が大きい。仮に、レーザビーム31の波長λが405nmであり、透過率調整膜421の材料の屈折率ntが2.6である場合には、透過率調整膜421の厚さは、反射率など他の条件も考慮して、5nm〜36nmの範囲内であることが好ましい。
金属膜側界面膜423、第1の界面膜425及び第2の界面膜427は、それぞれ第1情報層41の金属膜側界面膜413、第1の界面膜415及び第2の界面膜417と同様の機能を持つ。また、金属膜側界面膜423、第1の界面膜425及び第2の界面膜427は、それぞれ第1情報層41の金属膜側界面膜413、第1の界面膜415及び第2の界面膜417と同様の材料を用いることができる。
次に、第3情報層43を構成する各膜について説明する。
第3情報層43を構成する各膜は、それぞれに対応する、第2情報層42を構成する各膜と同等の機能を持つ。また、第3情報層43を構成する各膜は、それぞれに対応する、第2情報層42を構成する各膜と同等の材料を用いることができる。
第3情報層43は第2情報層42よりも高い透過率が求められるため、記録膜及び金属膜などの消衰係数の大きい材料を使用する膜は膜厚を薄くする必要がある。そのため、第3情報層43の記録膜436の膜厚は、第2情報層42の記録膜426の膜厚よりも薄くすることが好ましい。
光記録媒体11は、以下に説明する方法によって製造できる。
まず、厚さが例えば1.1mmの基板21上に第1情報層41が積層される。第1情報層41は多層膜からなるが、第1情報層41の各膜は、順次スパッタリングすることによって形成できる。なお、基板21の材料によっては、基板21は高い吸湿性を持つ。そのため、必要に応じて、スパッタリングをする前に水分を除去する基板アニール工程を実施してもよい。
第1情報層41の各膜は、Arガス、Krガス又はXeガスなどの希ガス雰囲気中又は希ガスと反応ガス(酸素ガス及び窒素ガスから選ばれる少なくとも一つのガス)との混合ガス雰囲気中で、各膜を構成する材料のスパッタリングターゲットをスパッタリングすることによって形成できる。スパッタリング方法としては、DCスパッタリング法とRFスパッタリング法とを必要に応じて使い分ける。通常はDCスパッタリング法の方が成膜レートを高められるため好ましいが、誘電体材料など導電性の低い材料はDCスパッタリング法ではスパッタリングできない場合がある。そのため、導電性の低い材料を含む膜は、RFスパッタリング法によってスパッタリングされる。なお、誘電体材料であっても導電性の高い材料、又はスパッタリングターゲット作製時に工夫して導電性を高めた材料などは、DCスパッタリング法又はパルスDCスパッタリング法によってスパッタリングできる。
スパッタリングによって成膜される各膜の組成は、もとのスパッタリングターゲットの組成と完全には一致しないことがある。例えば、酸化物の場合、スパッタリングによって酸素欠損がおこりやすい。その場合、反応ガスとして酸素ガスを用いることで酸素欠損を補うことができる。スパッタリングターゲットの組成は、スパッタリングによって成膜された膜が所望の組成となるように決定される。なお、スパッタリングターゲット及びスパッタリングによって成膜された膜は、例えばX線マイクロアナライザーで分析して組成を確認することができる。
光記録媒体11の製造では、具体的には、まず、基板21上に金属膜412が成膜される。金属膜412は、金属膜412を構成する金属又は合金からなるスパッタリングターゲットを希ガス雰囲気中又は希ガスと反応ガスとの混合ガス雰囲気中でDCスパッタリングすることによって形成できる。
続いて、必要に応じて金属膜412上に、金属膜側界面膜413が成膜される。金属膜側界面膜413は、金属膜側界面膜413を構成する材料からなるスパッタリングターゲットを希ガス雰囲気中又は希ガスと反応ガスとの混合ガス雰囲気中でスパッタリングすることによって形成できる。金属膜側界面膜413の材料が、金属など導電性の高い材料の場合はDCスパッタリング法を用い、酸化物など導電性の低い材料の場合はRFスパッタリング法を用いればよい。
続いて、金属膜側界面膜413上又は金属膜412上に、第1の誘電体膜414が成膜される。第1の誘電体膜414は、第1の誘電体膜414を構成する材料からなるスパッタリングターゲットを希ガス雰囲気中又は希ガスと反応ガスとの混合ガス雰囲気中で主にRFスパッタリング法によりスパッタリングすることによって形成できる。RFスパッタリング法が使用されるのは、第1の誘電体膜414を構成する材料は導電性が低い材料が多く、DCスパッタリングが適していないことによる。
続いて、必要に応じて、第1の誘電体膜414上に、第1の界面膜415が成膜される。第1の界面膜415は、第1の界面膜415を構成する材料からなるスパッタリングターゲットを希ガス雰囲気中又は希ガスと反応ガスとの混合ガス雰囲気中で主にRFスパッタリング法によりスパッタリングすることによって形成できる。
続いて、第1の界面膜415上又は第1の誘電体膜414上に、記録膜416が成膜される。記録膜416は、記録膜416を構成する材料からなるスパッタリングターゲットを希ガス雰囲気中で主にDCスパッタリング法によりスパッタリングすることによって形成できる。
続いて、必要に応じて、記録膜416上に、第2の界面膜417が成膜される。第2の界面膜417は、第2の界面膜417を構成する材料からなるスパッタリングターゲットを希ガス雰囲気中又は希ガスと反応ガスとの混合ガス雰囲気中で主にRFスパッタリング法によりスパッタリングすることによって形成できる。
続いて、第2の界面膜417上又は記録膜416上に、第2の誘電体膜418が成膜される。第2の誘電体膜418は、第2の誘電体膜418を構成する材料からなるスパッタリングターゲットを希ガス雰囲気中又は希ガスと反応ガスとの混合ガス雰囲気中で主にRFスパッタリング法によりスパッタリングすることによって形成できる。
このようにして、基板21上に第1情報層41が積層され、その後、第1情報層41上に分離層22が形成される。分離層22は、以下のように形成できる。まず、紫外線硬化樹脂(例えばアクリル系樹脂又はエポキシ系樹脂)又は遅効性熱硬化樹脂が第1情報層41上に塗布される。次に、全体を回転させて樹脂が均一に延ばされ(スピンコート)、その後、この樹脂が硬化される。なお、分離層22がレーザビーム31の案内溝を備える場合、まず、溝が形成された基板(型)が硬化前の樹脂に密着される。その状態で全体を回転させてスピンコートされ、樹脂が硬化された後、基板(型)がはがされる。このようにして、分離層22に案内溝が形成できる。
第1情報層41の記録膜416は、通常、成膜したままの状態(アズデポ(as−depo)の状態)では非晶質状態である。よって、必要に応じてレーザビームを照射するなどして、記録膜416を結晶化する初期化工程を行ってもよい。なお、初期化工程は、他の情報層の形成が終わった後に行ってもよい。
また、初期化によって記録膜が非晶質状態から結晶状態に変化することにより、記録膜の膜厚が薄くなることがある。一般的に、初期化することにより記録膜の膜厚は元の膜厚に比べて2%〜9%程度薄くなる。
続いて、分離層22上に第2情報層42が形成される。
具体的には、まず分離層22上に透過率調整膜421が成膜される。透過率調整膜421は、透過率調整膜421を構成する材料からなるスパッタリングターゲットを希ガス雰囲気中又は希ガスと反応ガスとの混合ガス雰囲気中でRFスパッタリング法又はDCスパッタリング法によりスパッタリングすることによって形成できる。
続いて、透過率調整膜421上に、金属膜422が成膜される。金属膜422は、第1情報層41の金属膜412と同様の方法で形成できる。
続いて、必要に応じて金属膜422上に、金属膜側界面膜423が成膜される。金属膜側界面膜423は、第1情報層41の金属膜側界面膜413と同様の方法で形成できる。
続いて、金属膜側界面膜423上又は金属膜422上に、第1の誘電体膜424が成膜される。第1の誘電体膜424は、第1情報層41の第1の誘電体膜414と同様の方法で形成できる。
続いて、必要に応じて、第1の誘電体膜424上に、第1の界面膜425が成膜される。第1の界面膜425は、第1情報層41の第1の界面膜415と同様の方法で形成できる。
続いて、第1の界面膜425上又は第1の誘電体膜424上に、記録膜426が成膜される。記録膜426は、第1情報層41の記録膜416と同様の方法で形成できる。
続いて、必要に応じて、記録膜426上に、第2の界面膜427が成膜される。第2の界面膜427は、第1情報層41の第2の界面膜417と同様の方法で形成できる。
続いて、第2の界面膜427上又は記録膜426上に、第2の誘電体膜428が成膜される。第2の誘電体膜428は、第1情報層41の第2の誘電体膜418と同様の方法で形成できる。
このようにして、分離層22上に第2情報層42が積層され、その後、第2情報層42上に分離層28が形成される。分離層28は、分離層22と同様の方法により形成できる。
なお、第2の誘電体膜428を成膜した後、又は分離層28を形成した後、必要に応じてレーザビームを照射するなどして記録膜426を結晶化する初期化工程を行っても良い。なお、初期化工程は、他の情報層の形成が終わった後に行ってもよい。
続いて、分離層28上に第3情報層43が積層される。
具体的には、分離層28上に、透過率調整膜431、金属膜432、第1の誘電体膜434、記録膜436及び第2の誘電体膜438がこの順序で成膜される。このとき、必要に応じて、金属膜432と第1の誘電体膜434との間に金属膜側界面膜433が成膜され、第1の誘電体膜434と記録膜436との間に第1の界面膜435が成膜され、第2の誘電体膜438と記録膜436との間に第2の界面膜437が成膜されてもよい。第3情報層43の各膜は、第2情報層42の各膜と同様の方法で形成できる。
このようにして、分離層28上に第3情報層43が積層された後、第3情報層43上に透明層23が形成される。
透明層23は、以下のように形成できる。まず、第3情報層43上に紫外線硬化性樹脂(例えば、アクリル系樹脂又はエポキシ系樹脂)又は遅効性熱硬化樹脂が塗布されてスピンコートされた後、この樹脂が硬化される。また、透明層23は、円盤状のポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリオレフィン樹脂、又はノルボルネン系樹脂を用いて形成してもよい。また、透明層23は、ガラスなどからなる、円盤状の板又はシートを用いて形成してもよい。この場合、透明層23は、第3情報層43上に紫外線硬化性樹脂又は遅効性熱硬化性樹脂が塗布されて、塗布した樹脂に板又はシートを密着させてからスピンコートされた後、硬化性樹脂が硬化されることによって形成できる。なお、別の形成方法として、板又はシートに粘着性の樹脂が予め均一に塗布された後、板又はシートを第2の誘電体膜438に密着させることもできる。
なお、第2の誘電体膜438が成膜された後、又は透明層23が形成された後、必要に応じてレーザビームを照射するなどして記録膜436を結晶化する初期化工程を行っても良い。また、第1情報層の記録膜416及び第2情報層の記録膜426を結晶化する初期化工程は、透明層23が形成された後、第3情報層の記録膜436を結晶化する初期化工程の前に行っても良い。
以上のようにして、光記録媒体11を製造できる。なお、本実施の形態においては、情報層を構成する各膜の成膜方法としてスパッタリング法を用いたが、これに限定されず、真空蒸着法、イオンプレーティング法、又はMBE(Molecular Beam Epitaxy)法などを用いることも可能である。
また、本実施の形態では3つの情報層を備える、光記録媒体11について述べたが、情報層の数が2つである場合又は情報層の数が4つ以上である場合も、上記と同様の方法で製造できる。
複数の情報層を備える光学的情報記録媒体においては、各情報層の透過率は、レーザビームの入射面側の情報層ほど高くする必要がある。例として、波長が405nmであるレーザビーム及びNAが0.85である対物レンズを用いて情報が記録又は再生される場合、直径が12cmであり、1面当たりの記録容量が33.4GBである情報層を3つ備えたブルーレイディスクにおいては、第2情報層の透過率は40%〜55%であり、第3情報層の透過率は45%〜65%であることが好ましい。
高い透過率を得るためには、消衰係数が大きい相変化材料からなる記録膜を薄くする必要がある。しかしながら、一般的に、書換型光記録媒体において、相変化材料からなる記録膜の厚さが薄くなると、結晶化速度が遅くなる。そのため、非晶質相から結晶相への相変化が生じにくくなり、情報の消去性能が悪化する。第3情報層の透過率を第2情報層の透過率よりも高くするためには、第3情報層の記録膜の厚さは、第2情報層の記録膜の厚さよりも薄くする。このとき、第3情報層の消去性能が実用上の求められるレベルを満足するためには、記録方法に工夫が必要になる。
また、各情報層の実質的な反射率は、他の情報層を透過したことによる減衰を含まない膜反射率に、各情報層の透過率を2回乗算することにより算出され、レーザビームの入射面から遠い情報層の反射率は低くなる傾向がある。しかし、一般的に、異なる2つの情報層の反射率の比は0.5以上且つ2.0以下であることが望ましい。また、第2情報層おいては、高い透過率を持つことに加え、膜反射率は第3情報層の膜反射率よりもかなり高く(3倍程度に)する必要がある。
しかし、光透過性が求められる情報層においては、膜反射率を高くすると、結晶相である記録膜の反射率と非晶質である記録膜の反射率との比が小さくなる傾向があるため、信号振幅が小さくなる。第2情報層の再生信号品質を良くするためには、記録方法に工夫が必要になる。
(実施例)
以下、具体的な実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
実施例では、発明者らは、図12の光記録媒体11を作製し、第1情報層41、第2情報層42及び第3情報層43の各情報層の記録特性及び再生特性を調べた。
光記録媒体のサンプルは以下のようにして製造した。まず、基板21として、レーザビーム31を導くための案内溝(深さ20nm、トラックピッチ0.32μm)が形成されたポリカーボネート基板(直径120mm、厚さ1.1mm)を用意した。
そして、そのポリカーボネート基板上に、金属膜412としてAg−Ga−Cu膜(厚さ:100nm)、第1の誘電体膜414としてZrO2−Cr2O3膜(厚さ:18nm)、記録膜416としてGeTe−Sb2Te3膜(厚さ:10nm)、第2の界面膜417(図示せず)としてZrO2−Cr2O3膜(厚さ:5nm)、第2の誘電体膜418としてZnS−SiO2膜(厚さ:65nm)を順次スパッタリング法によって積層した。
次に、第2の誘電体膜418上に紫外線硬化性樹脂を塗布し、その上に案内溝(深さ20nm、トラックピッチ0.32μm)を形成した基板をかぶせて密着させて回転させた。これによって、均一な樹脂層が形成される。そして、樹脂を硬化させた後に基板をはがした。その結果、レーザビーム31を導く案内溝が第2情報層42側に形成された、厚さ25μmの分離層22が得られた。
その後、分離層22の上に、透過率調整膜421としてTiO2膜(厚さ:20nm)、金属膜422としてAg−Pd−Cu膜(厚さ:10nm)、第1の誘電体膜424としてZrO2−Cr2O3膜(厚さ:11nm)、記録膜426としてGeTe−Sb2Te3膜(厚さ:8nm)、第2の界面膜427(図示せず)としてZrO2−Cr2O3膜(厚さ:5nm)、第2の誘電体膜428としてZnS−SiO2膜(厚さ:35nm)を順次スパッタリング法によって積層した。
次に、第2の誘電体膜428上に紫外線硬化樹脂を塗布し、その上に案内溝(深さ20nm、トラックピッチ0.32μm)を形成した基板をかぶせて密着させて回転させた。これによって、均一な樹脂層が形成される。そして、樹脂を硬化させた後に基板をはがした。その結果、レーザビーム31を導く案内溝が第3情報層43側に形成された、厚さ18μmの分離層28が得られた。
その後、分離層28の上に、透過率調整膜431としてTiO2膜(厚さ:18nm)、金属膜432としてAg−Pd−Cu膜(厚さ:8nm)、第1の誘電体膜434としてZrO2−Cr2O3膜(厚さ:10nm)、記録膜436としてGeTe−Sb2Te3膜(厚さ:7nm)、第2の界面膜437(図示せず)としてZrO2−Cr2O3膜(厚さ:4nm)、第2の誘電体膜438としてZnS−SiO2膜(厚さ:33nm)を順次スパッタリング法によって積層した。
最後に、紫外線硬化性樹脂を第2の誘電体膜438上に塗布して回転させて、均一な樹脂層を形成した。その後、紫外線を照射して樹脂を硬化させることにより、厚さ57μmの透明層23を形成した。その後、記録膜416、記録膜426及び記録膜436をレーザビームで結晶化させる初期化工程を行った。以上のようにして、サンプルを製造した。
このようにして得られたサンプルについて、まず、各情報層の反射率が測定され、異なる2つの情報層の反射率の比は0.5以上且つ2.0以下であることが確かめられた。
すなわち、光記録媒体11の光入射面に最も近い第N情報層が有する記録膜の厚さDNは、第M情報層(MはN>M≧1の整数)が有する記録膜の厚さDMより小さい。また、第N情報層からの反射率RNは、第M情報層からの反射率RMの2倍よりも小さい。
次に、このサンプルについて、図1の光記録再生装置を用いて各情報層のシンボルエラーレート(SER)を測定した。このとき、1層あたりの容量を33.4GBとする記録方法にて記録を実施し、最短マーク長(2T)は0.112μmとした。また、記録時及び測定時のサンプルの線速度は7.38m/sとした。再生パワーは情報層によって切り替え、第1情報層及び第2情報層を再生する際は再生パワーを1.44mWとし、第3情報層を再生する際には再生パワーを1.00mWとした。再生信号はPR(1,2,2,2,1)でPRML処理した。また、未記録状態から1回だけ記録され、書換が行われていない状態(DOW0)と、未記録状態から11回記録され、10回の書換が行われた状態(DOW10)とのそれぞれについて、SERが測定された。SERは基準値(2.0×10−4)以下であることが好ましい。
その際、光記録再生装置は、試し書きによって、記録パルスのパルスエッジの位置を決める。光記録再生装置は、試し書きの際、初めに光記録媒体11のリードインエリアと呼ばれる領域にディスク製造時又はディスク製造後にあらかじめ記録されている記録パルスのパラメタを用いて試し書きを行う。なお、光記録再生装置は、他に最適なパラメタがある場合には、例えばパルスエッジの位置などを学習し、新しいエッジ変化量の記録補償テーブルを得て、パルスエッジの位置を決定してもよい。
本実施例では、図8に示すN/2記録ストラテジの記録補償テーブル、及び図9に示すパワー情報により記録が行われる。
図14は、本発明の実施の形態に係る光記録媒体の第1情報層の記録補償テーブルの一例を示す図であり、図15は、本発明の実施の形態に係る光記録媒体の第2情報層の記録補償テーブルの一例を示す図であり、図16は、本発明の実施の形態に係る光記録媒体の第3情報層の学習前の記録補償テーブルの一例を示す図である。本実施例では制御パラメタは、Tw/32単位で変化させた。後述するように、記録パワーのパワー比を変化させたときの、記録再生特性が測定されており、記録補償テーブルはパワー比に応じて最適化させてよい。
ここで、第1情報層の2TマークのイレースパワーPeの開始位置dTeはクーリングパルスを持たないように設定されている。これは、金属膜が厚い第1情報層においては、記録パルスがクーリングパルスを持つとマークが大きくなりすぎることにより、最短マーク長(2T)が0.112μmになるように記録することが困難になるからである。なお、3T以上のマークを形成するための記録パルスはクーリングパルスを持つように設定されている。
表9は、第1情報層に情報を記録するための記録パワーの一例と、当該記録パワーで記録された信号のSERとを示す表である。SERは、DOW0及びDOW10のそれぞれについて測定された。また、表9における判定は、SERが基準値(2.0×10−4)以下である場合は「可」とし、SERが基準値(2.0×10−4)を超える場合は「不可」とした。
表9に示すように、第1情報層の記録再生特性は基準を大きく満足することが可能であることがわかった。
表10及び表11は、第2情報層及び第3情報層に情報を記録するための記録パワーの一例と、当該記録パワーで記録した信号のSERとを示す表である。表10及び表11では、参考のため、表9で示した、第1情報層の結果を併記している。SERは状態DOW0及び状態DOW10のそれぞれについて測定された。また、表10及び表11における判定は、SERが基準値(2.0×10−4)以下である場合は「可」とし、SERが基準値(2.0×10−4)を超える場合は「不可」とした。また、総合判定は、各情報層の判定がすべて「可」である場合は「可」とし、1つでも「不可」がある場合は「不可」とした。
まず、表10に示す記録パワーが設定された場合、第2情報層のSERは、状態DOW0及び状態DOW10の両方で基準値を超えている。一方、表11に示す記録パワーが設定された場合、第2情報層のSERは、状態DOW0及び状態DOW10の両方で基準値を満足している。すなわち、表11に示す記録パワーでは、第2情報層のボトムパワーPb2が高いため、記録時の温度変化が急冷になり、非晶質相であるマーク部が形成しやすくなる。そのため、反射率を高くすることによって結晶相である記録膜の反射率と非晶質である記録膜の反射率との比が小さくなる傾向がある第2情報層においても、信号振幅を大きくし、再生信号品質を向上させることができる。
次に、表10に示す記録パワーが設定された場合、第3情報層のSERは、状態DOW0で基準値以下であるが、状態DOW10で基準値を超えている。一方、表11に示す記録パワーが設定された場合、第3情報層のSERは、状態DOW0及び状態DOW10の両方で基準値を満足している。すなわち、表11に示す記録パワーでは、第3情報層のボトムパワーPb3が高いため、記録時の温度変化が徐冷になり、非晶質相であるマーク部が小さめに形成され、書換を容易にする効果が得られる。そのため、透過率を高くするために記録膜の厚さが薄くなって消去性能が悪化しやすい第3情報層においても、実用上の求められる消去性能を確保し、再生信号品質を向上させることができる。
図17は、本実施の形態における各情報層の記録パルス列の一例を示す図である。図17では、第1〜第3情報層のそれぞれの記録パルス列を表している。
図17に示される各パワーは表11のように設定されることが好ましい。すなわち、第3情報層のピークパワーPw3、第3情報層のボトムパワーPb3、第2情報層のピークパワーPw2及び第2情報層のボトムパワーPb2は下記の式を満たしている。
Pb3/Pw3>Pb2/Pw2
すなわち、光記録媒体の光入射面に最も近い第N情報層のピークパワーPwN、第N情報層のボトムパワーPbN、第M情報層(MはN>M≧1の整数)のピークパワーPwM及び第M情報層のボトムパワーPbMは下記の式を満たす。
PbN/PwN>PbM/PwM
また、第3情報層のボトムパワーPb3が、第3情報層のクーリングパワーPc3よりも大きくなり、第2情報層のボトムパワーPb2が、第2情報層のクーリングパワーPc2と等しくなる。
すなわち、第N情報層のボトムパワーPbNが、第N情報層のクーリングパワーPcNよりも大きくなり、第M情報層のボトムパワーPbMが、第M情報層のクーリングパワーPcMと等しくなる。
また、光記録媒体の光入射面から最も遠い第1情報層のボトムパワーPb1は、第1情報層のクーリングパワーPc1と等しくなる。
さらに、第1情報層の記録膜に、最も短い記録マーク(2Tマーク)が形成される場合、クーリングパルスを含まない記録パルス列が生成される。
なお、表11の例では、ボトムパワーPbのみを高くしているが、クーリングパワーPcを高くしても、書換を容易にする効果を得ることができる。N/2記録ストラテジにおいては、クーリングパワーPcを低くすることにより、最短マーク(2T)記録時の温度変化が急冷になる。そのため、最短マークが形成しやすくなり、信号品質が向上する。ここで、最短マークが大きくなったとしても、長いマークに比べて書換性能への影響は小さい。そのため、N/2記録ストラテジにおいて、第3情報層のボトムパワーPb3はクーリングパワーPc3よりも大きくすることが有効である。
表11によれば、第3情報層のピークパワーPw3に対するボトムパワーPb3の比を、第2情報層のピークパワーPw2に対するボトムパワーPb2の比よりも大きくすることにより、全ての情報層で情報の記録及び再生を高品質に行うことができることがわかる。
また、表12は、第2情報層及び第3情報層に情報を記録するための記録パワーの一例と、ピークパワーに対するボトムパワーの比が、第2情報層及び第3情報層ともに0.100である記録パワーで記録した信号のSERとを示す表である。判定の方法は、表10及び表11と同様である。
表12によると、第2情報層及び第3情報層ともに、ピークパワーに対するボトムパワーの比が0.100である場合、良好な記録再生特性が得られていない。すなわち、第2情報層におけるピークパワーに対するボトムパワーの比は、0.100よりも小さくする必要があり、第3情報層におけるピークパワーに対するボトムパワーの比は、0.100よりも大きくする必要がある。
このことからも、第3情報層のピークパワーPw3に対するボトムパワーPb3の比を、第2情報層のピークパワーPw2に対するボトムパワーPb2の比よりも大きくすることが、全ての情報層で情報の記録及び再生を高品質に行うために必要であることがわかる。
なお、本実施例では、記録するマーク長が2つ増えるとパルスの数が1つ増えることを特徴とした記録パルスである、N/2記録ストラテジを使用しているが、記録するマーク長が1つ増えるとパルスの数が1つ増える記録パルスを使用してもよい。
なお、本実施例では、光記録媒体は、第1情報層、第2情報層及び第3情報層の3つの情報層を備えているが、4つの情報層を備える光記録媒体であっても本実施例と同様の効果が得られる。
図18は、本実施の形態の第1の変形例における各情報層の記録パルス列の一例を示す図である。本実施の形態の第1の変形例における光記録媒体は、4つの情報層を備えている。図18では、第1〜第4情報層のそれぞれの記録パルス列を表している。図18に示すように、本実施の形態の第1の変形例では、第2情報層の記録パルス列と、第3情報層の記録パルス列とが同じである。
また、第1の変形例における第1情報層の記録パルス列と、図17に示す第1情報層の記録パルス列とが同じであり、第1の変形例における第2情報層及び第3情報層の記録パルス列と、図17に示す第2情報層の記録パルス列とが同じであり、第1の変形例における第4情報層の記録パルス列と、図17に示す第3情報層の記録パルス列とが同じである。
図18に示すように、第4情報層のピークパワーPw4、第4情報層のボトムパワーPb4、第3情報層のピークパワーPw3及び第3情報層のボトムパワーPb3は下記の式を満たしている。
Pb4/Pw4>Pb3/Pw3
また、Pb3/Pw3は、Pb2/Pw2と等しい。
図19は、本実施の形態の第2の変形例における各情報層の記録パルス列の一例を示す図である。本実施の形態の第2の変形例における光記録媒体は、4つの情報層を備えている。図19では、第1〜第4情報層のそれぞれの記録パルス列を表している。図19に示すように、本実施の形態の第2の変形例では、第3情報層の記録パルス列と、第4情報層の記録パルス列とが同じである。
また、第2の変形例における第1情報層の記録パルス列と、図17に示す第1情報層の記録パルス列とが同じであり、第2の変形例における第2情報層の記録パルス列と、図17に示す第2情報層の記録パルス列とが同じであり、第2の変形例における第3情報層及び第4情報層の記録パルス列と、図17に示す第3情報層の記録パルス列とが同じである。
図19に示すように、第4情報層のピークパワーPw4、第4情報層のボトムパワーPb4、第2情報層のピークパワーPw2及び第2情報層のボトムパワーPb2は下記の式を満たしている。
Pb4/Pw4>Pb2/Pw2
また、Pb4/Pw4は、Pb3/Pw3と等しい。
なお、図19に示す第2の変形例では、第3情報層のボトムパワーPb3と、第4情報層のボトムパワーPb4とが同じであるが、本発明は特にこれに限定されず、第3情報層のボトムパワーPb3を、第4情報層のボトムパワーPb4よりも小さくしてもよい。すなわち、第4情報層のピークパワーPw4、第4情報層のボトムパワーPb4、第3情報層のピークパワーPw3、第3情報層のボトムパワーPb3、第2情報層のピークパワーPw2及び第2情報層のボトムパワーPb2は下記の式を満たしてもよい。
Pb4/Pw4>Pb3/Pw3>Pb2/Pw2
また、2つの情報層を備える光記録媒体であっても本実施例と同様の効果が得られる。
図20は、本実施の形態の第3の変形例における各情報層の記録パルス列の一例を示す図である。本実施の形態の第3の変形例における光記録媒体は、2つの情報層を備えている。図20では、第1及び第2情報層のそれぞれの記録パルス列を表している。図20に示すように、第3の変形例における第1情報層の記録パルス列と、図17に示す第2情報層の記録パルス列とが同じであり、第3の変形例における第2情報層の記録パルス列と、図17に示す第3情報層の記録パルス列とが同じである。
図20に示すように、第2情報層のピークパワーPw2、第2情報層のボトムパワーPb2、第1情報層のピークパワーPw1及び第1情報層のボトムパワーPb1は下記の式を満たしている。
Pb2/Pw2>Pb1/Pw1
このように、光記録媒体は、N層(Nは2以上の整数)の情報層を備える。また、N層の情報層のそれぞれは、レーザビームの集光による局所的な温度変化によって物理的な状態の変化を生じる記録膜を有する。また、記録パルス列に応じたレーザビームが照射されることで記録膜に記録マークが形成される。
さらに、本実施の形態では、パワー設定器114は、パワー情報を光記録媒体11から読み出しているが、本発明は特にこれに限定されず、パワー設定器114は、パワー情報をメモリから読み出してもよい。図21は、本実施の形態の第4の変形例に係る光記録再生装置の構成を示すブロック図である。なお、図21において、図1と同じ構成については同じ符号を付し、説明を省略する。
メモリ131は、各情報層のライトパルスのパワーを表すピークパワー及び各情報層のボトムパルスのパワーを表すボトムパワーを予め記憶する。なお、メモリ131は、ピークパワー及びボトムパワーだけでなく、クーリングパワー及びイレースパワーも記憶する。メモリ131は、ピークパワー、ボトムパワー、クーリングパワー及びイレースパワーをパワー情報として記憶する。
メモリ131に記憶されるパワー情報は、光記録再生装置の製造時に予め記憶してもよい。また、メモリ131に記憶されるパワー情報は、読出部130によって光記録媒体から読み出されたパワー情報を、光記録媒体を識別する識別情報と対応付けて記憶してもよい。なお、本実施の形態において、メモリ131が記憶部の一例に相当する。
パワー設定器114は、メモリ131に記憶されている各情報層のピークパワー及び各情報層のボトムパワーに基づいて、記録パルス列の各パルスのパワーを設定する。
なお、上記実施の形態及び実施例で挙げた材料及び膜厚は、本発明を実現するための種々の材料及び膜厚の一例であって、本発明はこれに限定されるものではない。本発明に係る光学的情報記録媒体は、上記実施の形態及び実施例で挙げた材料以外の材料を用いてもよいし、また、上記実施形態及び実施例で挙げた各層の厚さ以外の厚さに設定してもよい。
なお、上述した具体的実施形態には以下の構成を有する発明が主に含まれている。
本発明の一局面に係る光学的情報記録装置は、N層(Nは2以上の整数)の情報層を備える光学的情報記録媒体に情報を記録する光学的情報記録装置であって、前記N層の情報層のそれぞれは、レーザビームの集光による局所的な温度変化によって物理的な状態の変化を生じる記録膜を有し、前記レーザビームを出射する光源と、前記記録膜に記録マークを形成するための記録パルス列を生成する記録パルス列生成部と、前記記録パルス列の各パルスのパワーを設定するパワー設定部と、前記記録パルス列生成部によって生成された前記記録パルス列に応じた前記レーザビームを、前記パワー設定部によって設定されたパワーで出射するように前記光源を駆動する駆動部とを備え、前記記録パルス列は、最も高いパワーを有する少なくとも1つのライトパルスと、前記ライトパルスが複数ある場合に複数のライトパルスの間に形成されるボトムパルスと、最後尾のライトパルスに後続して形成されるクーリングパルスとを含み、前記ライトパルスのパワーをピークパワーとし、前記ボトムパルスのパワーをボトムパワーとしたとき、前記パワー設定部は、前記光学的情報記録媒体の光入射面に最も近い第N情報層のピークパワーPwN、前記第N情報層のボトムパワーPbN、第M情報層(MはN>M≧1の整数)のピークパワーPwM及び前記第M情報層のボトムパワーPbMが下記の式を満たすように、前記記録パルス列の各パルスの前記パワーを設定する。
PbN/PwN>PbM/PwM
この構成によれば、光源は、レーザビームを出射する。記録パルス列生成部は、記録膜に記録マークを形成するための記録パルス列を生成する。パワー設定部は、記録パルス列の各パルスのパワーを設定する。駆動部は、記録パルス列生成部によって生成された記録パルス列に応じたレーザビームを、パワー設定部によって設定されたパワーで出射するように光源を駆動する。記録パルス列は、最も高いパワーを有する少なくとも1つのライトパルスと、ライトパルスが複数ある場合に複数のライトパルスの間に形成されるボトムパルスと、最後尾のライトパルスに後続して形成されるクーリングパルスとを含む。ライトパルスのパワーをピークパワーとし、ボトムパルスのパワーをボトムパワーとしたとき、パワー設定部は、光学的情報記録媒体の光入射面に最も近い第N情報層のピークパワーPwN、第N情報層のボトムパワーPbN、第M情報層(MはN>M≧1の整数)のピークパワーPwM及び第M情報層のボトムパワーPbMが上記の式を満たすように、記録パルス列の各パルスのパワーを設定する。
したがって、N層の情報層のうち光学的情報記録媒体の光入射面に最も近い第N情報層のピークパワーPwNに対するボトムパワーPbNの比を、第M情報層(MはN>M≧1の整数)のピークパワーPwMに対するボトムパワーPbMの比よりも高くなるように、記録パルス列の各パルスのパワーが設定されるので、第M情報層における記録時の温度変化が相対的に急冷になり、非晶質相である記録マークを容易に形成することができる。そのため、反射率を高くすることによって結晶相である記録膜の反射率と非晶質である記録膜の反射率との比が小さくなる傾向にある第M情報層においても、信号振幅を大きくすることができ、再生信号品質を向上することができる。
また、第N情報層における記録時の温度変化が相対的に徐冷になり、非晶質相である記録マークがより小さく形成されるので、情報の書換が容易になる。そのため、透過率を高くするために記録膜の厚さが薄くなり消去性能が悪化しやすい第N情報層においても、実用上で求められる消去性能を確保することができる。
このように、2つ以上の情報層を備えた光記録媒体において、全ての情報層に高品質な情報を記録することができる。
また、上記の光学的情報記録装置において、前記記録パルス列は、前記クーリングパルスのパワーをクーリングパワーとしたとき、前記パワー設定部は、前記第N情報層のボトムパワーPbNが、前記第N情報層のクーリングパワーPcNよりも大きくなり、前記第M情報層のボトムパワーPbMが、前記第M情報層のクーリングパワーPcMと等しくなるように、前記記録パルス列の各パルスの前記パワーを設定することが好ましい。
この構成によれば、クーリングパルスのパワーをクーリングパワーとしたとき、パワー設定部は、第N情報層のボトムパワーPbNが、第N情報層のクーリングパワーPcNよりも大きくなり、第M情報層のボトムパワーPbMが、第M情報層のクーリングパワーPcMと等しくなるように、記録パルス列の各パルスのパワーを設定する。
したがって、第N情報層のボトムパワーPbNを、第N情報層のクーリングパワーPcNよりも大きくすることにより、最短マーク記録時の温度変化を急冷にすることができる。そのため、最短マークが形成しやすくなり、信号品質を向上させることができる。
また、M情報層のボトムパワーPbMが第M情報層のクーリングパワーPcMと等しくなるので、ピークパワー、ボトムパワー、及び消去パルスのパワーであるイレースパワーの3値のパワーレベルでレーザビームを変調することができる。
また、上記の光学的情報記録装置において、前記光学的情報記録媒体は、3層以上の情報層を備え、前記クーリングパルスのパワーをクーリングパワーとしたとき、前記パワー設定部は、前記光学的情報記録媒体の光入射面から最も遠い第1情報層のボトムパワーPb1が、前記第1情報層のクーリングパワーPc1と等しくなるように、前記記録パルス列の各パルスの前記パワーを設定し、前記記録パルス列生成部は、前記第1情報層の記録膜に、最も短い記録マークを形成する場合、前記クーリングパルスを含まない記録パルス列を生成することが好ましい。
この構成によれば、光学的情報記録媒体は、3層以上の情報層を備える。クーリングパルスのパワーをクーリングパワーとしたとき、パワー設定部は、光学的情報記録媒体の光入射面から最も遠い第1情報層のボトムパワーPb1が、第1情報層のクーリングパワーPc1と等しくなるように、記録パルス列の各パルスのパワーを設定する。記録パルス列生成部は、第1情報層の記録膜に、最も短い記録マークを形成する場合、クーリングパルスを含まない記録パルス列を生成する。
したがって、第1情報層の記録膜に、最も短い記録マークを形成する場合、クーリングパルスを含まない記録パルス列が生成されるので、金属膜が厚い第1情報層において記録マークを小さくすることができる。
また、上記の光学的情報記録装置において、前記N層の情報層は、3層の情報層のみを含むことが好ましい。
この構成によれば、3層の情報層のみを備える光学的情報記録媒体において、第1及び第2情報層の信号振幅を大きくすることができ、再生信号品質を向上することができ、第3情報層の実用上で求められる消去性能を確保することができる。
また、上記の光学的情報記録装置において、前記光学的情報記録媒体は、各情報層の前記ライトパルスのパワーを表すピークパワー及び各情報層の前記ボトムパルスのパワーを表すボトムパワーを記録し、前記光学的情報記録媒体から各情報層の前記ピークパワー及び各情報層の前記ボトムパワーを読み出す読出部をさらに備え、前記パワー設定部は、前記読出部によって読み出された各情報層の前記ピークパワー及び各情報層の前記ボトムパワーに基づいて、前記記録パルス列の各パルスの前記パワーを設定することが好ましい。
この構成によれば、光学的情報記録媒体は、各情報層のライトパルスのパワーを表すピークパワー及び各情報層のボトムパルスのパワーを表すボトムパワーを記録している。読出部は、光学的情報記録媒体から各情報層のピークパワー及び各情報層のボトムパワーを読み出す。そして、パワー設定部は、読出部によって読み出された各情報層のピークパワー及び各情報層のボトムパワーに基づいて、記録パルス列の各パルスのパワーを設定する。
したがって、光学的情報記録媒体から読み出された各情報層のピークパワー及び各情報層のボトムパワーに基づいて、記録パルス列の各パルスのパワーを設定することができる。
また、上記の光学的情報記録装置において、各情報層の前記ライトパルスのパワーを表すピークパワー及び各情報層の前記ボトムパルスのパワーを表すボトムパワーを予め記憶する記憶部をさらに備え、前記パワー設定部は、前記記憶部に記憶されている各情報層の前記ピークパワー及び各情報層の前記ボトムパワーに基づいて、前記記録パルス列の各パルスの前記パワーを設定することが好ましい。
この構成によれば、記憶部は、各情報層のライトパルスのパワーを表すピークパワー及び各情報層のボトムパルスのパワーを表すボトムパワーを予め記憶する。パワー設定部は、記憶部に記憶されている各情報層のピークパワー及び各情報層のボトムパワーに基づいて、記録パルス列の各パルスのパワーを設定する。
したがって、記憶部から読み出された各情報層のピークパワー及び各情報層のボトムパワーに基づいて、記録パルス列の各パルスのパワーを設定することができる。
本発明の他の局面に係る光学的情報記録方法は、N層(Nは2以上の整数)の情報層を備える光学的情報記録媒体に情報を記録する光学的情報記録方法であって、前記N層の情報層のそれぞれは、レーザビームの集光による局所的な温度変化によって物理的な状態の変化を生じる記録膜を有し、前記記録膜に記録マークを形成するための記録パルス列を生成する記録パルス列生成ステップと、前記記録パルス列の各パルスのパワーを設定するパワー設定ステップと、前記記録パルス列生成ステップにおいて生成された前記記録パルス列に応じた前記レーザビームを、前記パワー設定ステップにおいて設定されたパワーで出射するように光源を駆動する駆動ステップと、前記レーザビームを前記光源から出射するレーザビーム出射ステップとを含み、前記記録パルス列は、最も高いパワーを有する少なくとも1つのライトパルスと、前記ライトパルスが複数ある場合に複数のライトパルスの間に形成されるボトムパルスと、最後尾のライトパルスに後続して形成されるクーリングパルスとを含み、前記ライトパルスのパワーをピークパワーとし、前記ボトムパルスのパワーをボトムパワーとしたとき、前記パワー設定ステップは、前記光学的情報記録媒体の光入射面に最も近い第N情報層のピークパワーPwN、前記第N情報層のボトムパワーPbN、第M情報層(MはN>M≧1の整数)のピークパワーPwM及び前記第M情報層のボトムパワーPbMが下記の式を満たすように、前記記録パルス列の各パルスの前記パワーを設定する。
PbN/PwN>PbM/PwM
この構成によれば、記録パルス列生成ステップにおいて、記録膜に記録マークを形成するための記録パルス列が生成される。次に、パワー設定ステップにおいて、記録パルス列の各パルスのパワーが設定される。次に、駆動ステップにおいて、記録パルス列生成ステップで生成された記録パルス列に応じたレーザビームを、パワー設定ステップで設定されたパワーで出射するように光源が駆動される。次に、レーザビーム出射ステップにおいて、レーザビームが光源から出射される。記録パルス列は、最も高いパワーを有する少なくとも1つのライトパルスと、ライトパルスが複数ある場合に複数のライトパルスの間に形成されるボトムパルスと、最後尾のライトパルスに後続して形成されるクーリングパルスとを含む。ライトパルスのパワーをピークパワーとし、ボトムパルスのパワーをボトムパワーとしたとき、パワー設定ステップにおいて、光学的情報記録媒体の光入射面に最も近い第N情報層のピークパワーPwN、第N情報層のボトムパワーPbN、第M情報層(MはN>M≧1の整数)のピークパワーPwM及び第M情報層のボトムパワーPbMが下記の式を満たすように、記録パルス列の各パルスのパワーが設定される。
したがって、N層の情報層のうち光学的情報記録媒体の光入射面に最も近い第N情報層のピークパワーPwNに対するボトムパワーPbNの比を、第M情報層(MはN>M≧1の整数)のピークパワーPwMに対するボトムパワーPbMの比よりも高くなるように、記録パルス列の各パルスのパワーが設定されるので、第M情報層における記録時の温度変化が相対的に急冷になり、非晶質相である記録マークを容易に形成することができる。そのため、反射率を高くすることによって結晶相である記録膜の反射率と非晶質である記録膜の反射率との比が小さくなる傾向にある第M情報層においても、信号振幅を大きくすることができ、再生信号品質を向上することができる。
また、第N情報層における記録時の温度変化が相対的に徐冷になり、非晶質相である記録マークがより小さく形成されるので、情報の書換が容易になる。そのため、透過率を高くするために記録膜の厚さが薄くなり消去性能が悪化しやすい第N情報層においても、実用上で求められる消去性能を確保することができる。
このように、2つ以上の情報層を備えた光記録媒体において、全ての情報層に高品質な情報を記録することができる。
本発明の他の局面に係る光学的情報記録媒体は、N層(Nは2以上の整数)の情報層を備え、前記N層の情報層のそれぞれは、レーザビームの集光による局所的な温度変化によって物理的な状態の変化を生じる記録膜を有し、記録パルス列に応じたレーザビームが照射されることで前記記録膜に記録マークが形成され、前記光学的情報記録媒体の光入射面に最も近い第N情報層が有する記録膜の厚さDNは、第M情報層(MはN>M≧1の整数)が有する記録膜の厚さDMより小さく、前記第N情報層からの反射率RNは、前記第M情報層からの反射率RMの2倍よりも小さく、前記記録パルス列は、最も高いパワーを有する少なくとも1つのライトパルスと、前記ライトパルスが複数ある場合に複数のライトパルスの間に形成されるボトムパルスと、最後尾のライトパルスに後続して形成されるクーリングパルスとを含み、前記N層の情報層のうちの少なくとも1つの情報層は、各情報層の前記ライトパルスのパワーを表すピークパワー及び各情報層の前記ボトムパルスのパワーを表すボトムパワーを記録し、前記第N情報層のピークパワーPwN、前記第N情報層のボトムパワーPbN、前記第M情報層のピークパワーPwM及び前記第M情報層のボトムパワーPbMは下記の式を満たす。
PbN/PwN>PbM/PwM
この構成によれば、光学的情報記録媒体の光入射面に最も近い第N情報層が有する記録膜の厚さDNは、第M情報層(MはN>M≧1の整数)が有する記録膜の厚さDMより小さい。また、第N情報層からの反射率RNは、第M情報層からの反射率RMの2倍よりも小さい。記録パルス列は、最も高いパワーを有する少なくとも1つのライトパルスと、ライトパルスが複数ある場合に複数のライトパルスの間に形成されるボトムパルスと、最後尾のライトパルスに後続して形成されるクーリングパルスとを含む。N層の情報層のうちの少なくとも1つの情報層は、各情報層のライトパルスのパワーを表すピークパワー及び各情報層のボトムパルスのパワーを表すボトムパワーを記録している。そして、第N情報層のピークパワーPwN、第N情報層のボトムパワーPbN、第M情報層のピークパワーPwM及び第M情報層のボトムパワーPbMは上記の式を満たす。
したがって、N層の情報層のうち光学的情報記録媒体の光入射面に最も近い第N情報層のピークパワーPwNに対するボトムパワーPbNの比が、第M情報層(MはN>M≧1の整数)のピークパワーPwMに対するボトムパワーPbMの比よりも高いので、第M情報層における記録時の温度変化が相対的に急冷になり、非晶質相である記録マークを容易に形成することができる。そのため、反射率を高くすることによって結晶相である記録膜の反射率と非晶質である記録膜の反射率との比が小さくなる傾向にある第M情報層においても、信号振幅を大きくすることができ、再生信号品質を向上することができる。
また、第N情報層における記録時の温度変化が相対的に徐冷になり、非晶質相である記録マークがより小さく形成されるので、情報の書換が容易になる。そのため、透過率を高くするために記録膜の厚さが薄くなり消去性能が悪化しやすい第N情報層においても、実用上で求められる消去性能を確保することができる。
このように、2つ以上の情報層を備えた光記録媒体において、全ての情報層に高品質な情報を記録することができる。
なお、発明を実施するための形態の項においてなされた具体的な実施態様又は実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、そのような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではなく、本発明の精神と特許請求事項との範囲内で、種々変更して実施することができるものである。