JP2007077355A - 灯油組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】灯油自体の酸化安定性を改善した灯油組成物を提供すること。
【解決手段】初留点135〜170℃、50%留出温度165〜220℃、70%留出温度170〜240℃、90%留出温度215〜265℃、95%留出温度230〜270℃の蒸留性状を有し、硫黄分80質量ppm以下であり、下記式(I)で示される酸化安定性指数Yが4.0以下であることを特徴とする灯油組成物。
Y=0.83×(ナフテンベンゼン類含有量vol%)+0.07×(ナフテン類含有量vol%)−0.37×(ナフタレン類含有量vol%)−0.44×LN(ベンゾチオフェン類由来の硫黄分量 質量ppm) …式(I)
ここで、式(I)は以下の(a)〜(c)を満たす
(a)ナフテンベンゼン類含有量(vol%)≦8
(b)0.1≦ナフタレン類含有量(vol%)≦2.5
(c)1≦ベンゾチオフェン類由来の硫黄分量(質量ppm)≦50
【選択図】なし

Description

本発明は、灯油組成物、特に石油ストーブなどに用いる灯油組成物に関し、詳しくは酸化安定性に優れた灯油組成物に関する。
現在石油ストーブに使用されている灯油の種類と規格は、日本工業規格(JIS K 2203)に示されており、その中でも1号灯油は、家庭用の暖房機器等に広く用いられている。灯油留分は主に、原油を常圧蒸留により所定の蒸留性状となるように分留することで得られる。次いで水素化脱硫装置により硫黄分が所定量以下となるように水素化精製される。さらに灯油製造過程において、ストリッパにより軽質分を蒸発させることで引火点が40℃以上となるように調整される。
このようにして得られる灯油の品質は前述したように、JIS K 2203に示される規格に基づき管理されているが、実用面では規格外の品質として酸化安定性も重要であると思われる。そして酸化安定性を向上させる方法としては特許文献1及び2で示されているような酸化防止剤を添加する方法が挙げられる。さらに特許文献3及び4のように、臭気や燃焼性を良好にする灯油組成物に関する技術もある。
特開2004-182744 特開2004-182745 特公平7-103384 特開平3-182594
しかしながら、上記特許文献1及び2の場合は、酸化安定性は酸化防止剤の作用に依存してしまい、特許文献3及び4の場合は、灯油組成物の酸化安定性の向上には至っていない、という問題点がある。
そこで本発明の目的は、上記従来の状況に鑑み、灯油自体の酸化安定性を改善した灯油組成物を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、灯油の酸化安定性には灯油の組成が大きく影響することを突き止め、組成を適正化することで灯油自体の酸化安定性を改善することが可能になるという知見を得て本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、以下に示す特徴を有する燃料油組成物を提供するものである。
初留点135〜170℃、50%留出温度165〜220℃、70%留出温度170〜240℃、90%留出温度215〜265℃、95%留出温度230〜270℃の蒸留性状を有し、硫黄分80質量ppm以下であり、下記式(I)で示される酸化安定性指数Yが4.0以下であることを特徴とする灯油組成物。
Y=0.83×(ナフテンベンゼン類含有量vol%)+0.07×(ナフテン類含有量vol%)−0.37×(ナフタレン類含有量vol%)−0.44×LN(ベンゾチオフェン類由来の硫黄分量 質量ppm) …式(I)
ここで、式(I)は以下の(a)〜(c)を満たす
(a)ナフテンベンゼン類含有量(vol%)≦8
(b)0.1≦ナフタレン類含有量(vol%)≦2.5
(c)1≦ベンゾチオフェン類由来の硫黄分量(質量ppm)≦50
本発明によれば、灯油自体の組成を適正化することでパーオキサイド生成を抑制し、酸化安定性が改善された、優れた灯油組成物を得ることができる。特に、燃料機器の高温下にさらされるような過酷な条件においても、優れた酸化安定性を発揮できるものである。
以下に本発明の詳細を記載する。
本発明における灯油組成物の蒸留性状は、初留点135〜170℃、好ましくは140〜170℃、50%留出温度165〜220℃、好ましくは195〜220℃、70%留出温度170〜240℃、好ましくは205〜240℃、90%留出温度215〜265℃、好ましくは220〜260℃、95%留出温度230〜270℃、好ましくは240〜270℃である。初留点が170℃より低ければ、着火し難い等の問題が生じる可能性が少ないため好ましい。初留点が135℃より高ければ、引火点が低くなりJIS K2203で定められる灯油の引火点規格値である40℃を下回る可能性が少なくなるため好ましい。また、50%留出温度が220℃、70%留出温度が240℃、90%留出温度が265℃、95%留出温度が270℃より低ければ、着火し難く定常燃焼に至るまでに時間がかかる等の問題が生じる可能性が少なくなるため好ましい。また50%留出温度が165℃、70%留出温度が170℃、90%留出温度が215℃、95%留出温度が230℃より高ければ、芯式・放射形石油ストーブ使用時において、炎を燃焼筒の上部から出さずに、燃焼筒を赤熱した状態に保つという安定した燃焼状態が保て、また、消火の際に鎮火し難い等の問題が起きる可能性が少なくなるため好ましい。
また本発明における灯油組成物に含まれる硫黄分は80質量ppm以下、好ましくは50質量ppm以下であることが好ましい。硫黄分が80質量ppmより少なければ、硫黄分に由来する臭気等が強くならないため好ましい。
なお本発明における、蒸留性状はJIS K2254の常圧法蒸留試験、硫黄分はJIS K2541の微量電量滴定式酸化法により、それぞれ測定できる。
更に、本発明における灯油組成物は、上記式(I)で表される酸化安定性指数Yが4.0以下、好ましくは3.7以下である。この酸化安定性指数Yは、灯油組成物の酸化反応におけるパーオキサイド(過酸化物)生成量の度合いを示すものであり、上記式(I)中の各係数は、ナフテンベンゼン類、ナフテン類、ナフタレン類、そしてベンゾチオフェン類の各酸化安定性から算出された値である。なお、上記式(I)において、LNとは自然対数を意味する。
ここで言うナフテンベンゼン類とは、テトラリンおよびそのアルキル置換基誘導体や、インダンおよびそのアルキル置換基誘導体等を示す。またナフテン類とは、デカリン等の環状飽和炭化水素およびそれらのアルキル置換基誘導体等を示し、ナフタレン類とはナフタレンおよびそのアルキル置換基誘導体等を示す。そしてここで言うベンゾチオフェン類とは、ベンゾチオフェンおよびそのアルキル置換基誘導体等を示す。
ナフテンベンゼン類、ナフテン類、ナフタレン類、そしてベンゾチオフェン類の含有量は酸化安定性に影響を与える重要な成分であり、これらは、酸化安定性を向上させる成分と抑制する成分に分類できる。上記式(I)はこの関係を示しており、式(I)の係数は、ナフテンベンゼン類およびナフテン類は、酸化反応によるパーオキサイド生成量が多く、灯油組成物の酸化安定性を低下させるため正の係数となり、ナフタレン類およびベンゾチオフェン類は、パーオキサイド生成を抑制し、灯油組成物の酸化安定性の向上に貢献するため負の係数となっている。
ベンゾチオフェン類の量の指標としては、ベンゾチオフェン類が由来となる物質の硫黄分量を用いた。ベンゾチオフェン類以外が由来となる硫黄含有物質としては、チオフェン類、ジベンゾチオフェン類などが挙げらえるが、特に、ベンゾチオフェン類は、極微量であっても強力なラジカル捕捉剤となり、灯油の酸化安定性を向上させる効果を与えるため、これを加味した指数を算出することで、より酸化安定性に優れた灯油を得ることができる。また、ベンゾチオフェン類に比べ、他の硫黄化合物は灯油の酸化安定性の向上に効果が低い。
また、式(I)においては、以下の関係が必要である。
(a) ナフテンベンゼン類含有量(vol%)≦8
(b) 0.1≦ナフタレン類含有量(vol%)≦2.5
(c) 1≦ベンゾチオフェン類由来の硫黄分量(質量ppm)≦50
ナフテンベンゼン類含有量が、8 vol%以下ならば、酸化安定性が良好となる。ナフテンベンゼン類は、ナフテン類と比べ、電子的に不安定なベンゼン環のα位の炭素を有するため、特に酸化され易く、パーオキサイドを発生し易い。そのため、ナフテン類に比べ、少量であっても灯油組成物の酸化安定性を低下させるため、この量を規定することで、より酸化安定性に優れた灯油を得ることができる。
また、ナフタレン類含有量が0.1vol%以上ならば、酸化安定性を向上させることができ、2.5vol%以下ならば、酸化安定性が高く、さらに灯油自身の臭気が弱い上、燃焼性が良好で煤の発生を抑制できる。
そして、ベンゾチオフェン類由来の硫黄分量が1質量ppm以上ならば、酸化安定性を著しく向上させることができ、50質量ppm以下ならば、硫黄分由来の臭気が弱くなる。なお、灯油組成物に含まれる硫黄分が10質量ppm以下まで低減された灯油組成物の場合は、ベンゾチオフェン類由来の硫黄分量としては、8質量ppm以下が好ましい。
本発明における灯油組成物は、上記(a),(b),(c)を満足するだけでなく、式(I)も同時に満足させることで酸化安定性に優れた灯油組成物を得ることができる。灯油組成物には、パーオキサイドの生成を抑制する成分と促進する成分が存在するため、(a),(b),(c)を満足するだけでは不十分であり、式(I)を満足しなければ燃料油としての総合的な酸化安定性を改善することはできない。すなわち、酸化安定度指数Yが4を超えないようにすることで、より酸化安定性に優れ、例えば室温で1年間貯蔵した場合などよりも、燃料機器の高温下にさらされるようなより過酷な条件、例えば、100℃で20時間貯蔵してもパーオキサイドの発生を抑制することができる。
なおここでのナフテン類含有割合は、高速液体クロマトグラフ法(HPLC)により燃料油組成物を芳香族分と飽和分に分画採取した後、飽和分をガスクロマトグラフ法−質量分析法(GC−MS)で分析し、ASTM D 2786に従って解析を行い飽和分中のナフテン類割合を算出し、ここで得られた割合を、JPI−5S−49−97「石油製品−炭化水素タイプ試験方法−高速液体クロマトグラフ法」により求めた飽和分割合に乗ずることで求められる。
また、ナフテンベンゼン類およびナフタレン類含有割合は、高速液体クロマトグラフ法(HPLC)により分画採取した芳香族分を、ガスクロマトグラフ法−質量分析法(GC−MS)で分析し、ASTM D 3239に従って解析を行い芳香族分中のナフテンベンゼン類割合とナフタレン類割合を算出し、ここで得られた割合を、JPI−5S−49−97により求めた芳香族分割合に乗ずることで求めることができる。
ベンゾチオフェン類由来の硫黄分量は、ガスクロマトグラフ法−硫黄化学発光法(GC−SCD)により、硫黄化合物のタイプ別分析を行い、硫黄化合物中のベンゾチオフェン類の割合を算出し、ここで得られた割合を微量電量滴定式酸化法により求めた全硫黄分量に乗ずることで求めることができる。
また、本発明における灯油組成物の組成は、芳香族分含有量が25vol%以下、好ましくは20vol%以下であることが好ましい。芳香族分が25vol%以下であれば、煙点が低く燃焼性が不良で煤の発生につながる可能性が少なくなるため好ましい。なお、ここでの芳香族分の含有割合(組成割合)は、JPI−5S−49−97「石油製品−炭化水素タイプ試験方法−高速液体クロマトグラフ法(HPLC)」に基づいて求められる。
本発明における灯油組成物は、2環芳香族分含有量が上記芳香族分25vol%の内の2.5vol%以下、好ましくは2.25vol%以下、3環以上芳香族分含有量が0.5vol%以下、好ましくは0.4vol%以下であることが好ましい。2環芳香族分含有量が2.5vol%以下であり、3環以上芳香族分含有量が0.5vol%以下ならば、臭気が弱く、さらに燃焼性が良好となり、煤の発生の可能性が低くなるため好ましい。
ここでの2環芳香族分および3環以上芳香族分の含有割合は、JPI−5S−49−97に基づき求めることができる。
本発明における灯油組成物の製造方法は特に定めるものではないが、市販溶剤の混合、あるいは本発明で規定する性状を有するように種々の原料を精製することで得ることができる。例えば、原油を常圧蒸留して得られる灯油留分やそれらを脱硫した脱硫灯油を用いることが出来る。さらに、直接脱硫装置から得られる直接脱硫灯油留分、および重油や残油の水素化分解により得られる灯油留分等が使用可能であり、特に定めるものではないが、脱硫反応後の精製油中のナフタレン類含有量が2.5vol%以下で、ベンゾチオフェン類由来の硫黄分量が50質量ppm以下となるように、選択的な脱硫触媒、および反応条件(温度、水素分圧など)、さらには反応方式(2段脱硫など)を適切に設定し脱硫することが好ましい。また、別の方法として市販溶剤を混合することや特定の化合物としてナフタレン類やベンゾチオフェン類を添加することでも得ることができる。
本発明の灯油組成物においては、必要に応じて種々の燃料油添加剤を適宜添加することができる。この燃料油添加剤としては、フェノール系、アミン系等の酸化防止剤、シッフ型化合物やチオアミド型化合物等の金属不活性剤、有機りん系化合物等の表面着火防止剤、琥珀酸イミド、ポリアルキルアミン、ポリエーテルアミン等の清浄分散剤、多価アルコール及びそのエーテル等の氷結防止剤、有機酸のアルカリ金属やアルカリ土類金属塩、高級アルコールの硫酸エステル等の助燃剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤等の帯電防止剤、アルケニル琥珀酸エステル等の錆止め剤等の公知の燃料油添加剤が挙げられる。これらは、1種添加することも複数種組み合わせて添加することもできる。また、これらの燃料油添加剤の添加量は必要に応じて適宜設定することができる。
本発明の灯油組成物は、所謂民生用暖房機器、例えば各種石油ストーブ類、石油ファンヒーター類、あるいは石油式給湯器等に好ましく用いることができ、さらには直火式の食品乾燥用燃料、工業用燃料、石油発動機用燃料、ソルベント等各種用途にも好ましく使用できる。
次に、本発明を実施例、比較例によりさらに具体的に説明する。なお本発明は、これらの例によって何ら制限されるものではない。実施例、比較例において、引火点、蒸留性状、硫黄分、煙点は、JIS K2203に定められる方法に準拠して測定を行なった。
飽和分、芳香族分の割合と、芳香族分の環数別割合は、JPI-5S-49-97に基づいて測定を行った。HPLCの装置構成及び分析条件を以下に示す。
装置:Agilent 1100 Series(ALS:G1329A, Bin Pump: G1312A, Degasser: G1379A, Rid:G1362A, Colcom: G1316A)
移動相:n−ヘキサン
流量:1.0ml/min
カラム:硝酸銀含浸シリカカラム(4.6mml.D.*70mmL. センシュー科学製 AgNO3-1071-Y)
:アミン修飾カラム(4.0mml.D.*250mmL.2本 センシュー科学製 LICHROSORB-NH2)
カラム温度:35℃
試料濃度:10vol%
注入量:5μl
また、飽和分、芳香族分のタイプ分析は下記方法で行なった。
まず、試料をHPLCにより飽和分と芳香族分に分画後、飽和分、芳香族分それぞれについて、GC−MSによりタイプ分析を行なった。ここで得られた分析結果を基に、飽和分はASTMD 2786に、芳香族分はASTM D 3239に従って解析を行い、飽和分中のナフテン類割合と環数別ナフテン類割合、及び芳香族分中のナフテンベンゼン類割合とナフタレン類割合を求めた。分析条件を以下に示す。
装置:HP−6890 HP5973 四重極質量分析計
カラム:DB−1:30m×0.25mmI.D.×0.25μm
オーブン温度:40℃(1min)→10℃/min→280℃(5min)
注入口温度:43℃ Oven track mode ON
インターフェース温度:300℃
キャリアガス:He:55KPa Constant flow mode ON
Solvent Delay:4.5min
イオン化電圧:70eV
注入方法:オンカラム注入 3.0μl(芳香族分)、1.0μl(飽和分)
ベンゾチオフェン類由来の硫黄分量は、GC−SCDにより硫黄化合物のタイプ別分析を行い、そこで得られたベンゾチオフェン類割合を微量電量滴定式酸化法により求めた全硫黄分量に乗ずることで求めた。GC−SCDの分析条件を下記に示す。
装置:GC;GC−2010(SHIMADZU)
SCD;7090S(ANTEK)
カラム:HP−1MS(Polydimethyl siloxane)
カラム温度:40℃(1min)−(10℃/min)−300℃(3min)
測定時間:30min
Inlet温度:300℃、検出器温度:300℃
キャリアガス:He;80kPa、2.62mL/min、40.3cm/sec
制御モード:線速度
Total flow:34.4mL/min、Purge flow:3.0mL/min
注入モード:Split、Split ratio 11:1
Sample size:0.5μL
〔貯蔵試験〕
得られた各試験体について、貯蔵試験を行った。
まず、従来の酸化安定性の評価よりも更に過酷な燃料機器の高温下にさらされるような条件、100℃で20時間貯蔵した際のパーオキサイドの発生について試験を行った。試験方法は以下のとおりである。
貯蔵試験条件を下記に示す。
試験温度:100℃、試料量:650ml、容器材質:ほう珪酸ガラス、
容器容量:1000ml、雰囲気:大気開放、光の有無:暗所、
鋼片(SPCC):1×20×50mmを1枚入れる
試験期間:20時間
貯蔵試験後のパーオキサイド測定は、JPI−5S−46−96に準拠して行なった。
また、参考までに、従来の温和な貯蔵試験も実施した。その試験方法は以下のとおりである。
試験温度:43℃、試料量:650ml、容器材質:ほう珪酸ガラス、
容器容量:1000ml、雰囲気:大気開放、光の有無:暗所、
鋼片(SPCC):1×20×50mmを1枚入れる
試験期間:13週間
貯蔵試験後のパーオキサイド測定は、JPI−5S−46−96に準拠して行なった。
実施例1
原油を常圧蒸留することで得られる沸点範囲149〜271℃、硫黄分0.19質量%の直留灯油留分を、WABT301℃、水素分圧4.5MPa、液空間速度(LHSV)5.2h−1の条件下での脱硫処理により、沸点範囲145〜262℃、硫黄分42質量ppmの灯油組成物を得た。得られた灯油組成物の性状、および貯蔵試験結果を表1に示す。
実施例2
原油を常圧蒸留することで得られる沸点範囲149〜280℃、硫黄分0.22質量%の直留灯油留分を、WABT325℃、水素分圧4.5MPa、液空間速度(LHSV)5.2h−1の条件下での脱硫処理により、沸点範囲145〜275℃、硫黄分9質量ppmの灯油組成物を得た。得られた灯油組成物の性状、および貯蔵試験結果を表1に示す。
実施例3
原油を常圧蒸留することで得られる沸点範囲140〜278℃、硫黄分0.31質量%の直留灯油留分を、WABT327℃、水素分圧4.5MPa、液空間速度(LHSV)4.2h−1の条件下での脱硫処理により、沸点範囲149〜274℃、硫黄分4質量ppmの灯油組成物を得た。これに、ナフタレン類含有量が2.25vol%となるように、市販の特級ナフタレンを添加した。得られた灯油組成物の性状、および貯蔵試験結果を表1に示す。
Figure 2007077355
比較例1
純度98.0vol%以上の市販n−パラフィン溶剤(n−C8〜n−C15)を用いて沸点範囲が145〜258℃になるように調整したn−パラフィン溶剤を15質量%、沸点範囲が166〜219℃である純度98.0vol%以上の市販イソパラフィン溶剤を11.5vol%、沸点範囲が202〜262℃である純度98.0vol%以上の市販イソパラフィン溶剤を3.5vol%の割合で、さらに沸点範囲が157〜179℃である純度99.0vol%以上の市販ナフテン系溶剤を35.0vol%、沸点範囲が201〜217℃である純度99.0vol%以上の市販ナフテン系溶剤を5.0vol%、沸点範囲が221〜240℃である純度99.0vol%以上の市販ナフテン系溶剤を10.0vol%の割合で、さらに沸点範囲が180〜209℃である純度99.0vol%以上の市販芳香族系溶剤を12.0vol%、市販の特級テトラリンを6.0vol%混合することで、沸点範囲164〜245℃、硫黄分1質量ppmの灯油組成物を得た。得られた灯油組成物の性状および貯蔵試験結果を表2に示す。
比較例2
原油を常圧蒸留することで得られる沸点範囲139〜293℃、硫黄分0.29質量%の直留灯油留分を、WABT325℃、水素分圧3.5MPa、液空間速度(LHSV)2.8h−1の条件下での脱硫処理により、沸点範囲146〜291℃、硫黄分7質量ppmの灯油組成物を得た。得られた灯油組成物の性状、および貯蔵試験結果を表2に示す。
比較例3
市販の特級テトラリンを8.0vol%混合した点を除き、比較例1と同様に調製し、灯油組成物を得た。これに、市販の特級ベンゾチオフェンを40質量ppm添加し、さらに、ナフタレン類含有量が2.25vol%となるように、市販の特級ナフタレンを添加した。得られた灯油組成物の性状および貯蔵試験結果を表2に示す。
比較例4
原油を常圧蒸留することで得られる沸点範囲139〜293℃、硫黄分0.29質量%の直留灯油留分を、WABT316℃、水素分圧3.5MPa、液空間速度(LHSV)2.8h−1の条件下での脱硫処理により、沸点範囲149〜289℃、硫黄分28質量ppmの灯油組成物を得た。得られた灯油組成物の性状、および貯蔵試験結果を表2に示す。
比較例5
実施例3と同じように、原油を常圧蒸留することで得られる沸点範囲140〜278℃、硫黄分0.31質量%の直留灯油留分を、WABT327℃、水素分圧4.5MPa、液空間速度(LHSV)4.2h−1の条件下での脱硫処理により、沸点範囲149〜274℃、硫黄分4質量ppmの灯油組成物を得た。これに、さらに市販の特級ジベンゾチオフェンを5質量ppm添加し、硫黄分9質量ppmとした。得られた灯油組成物の性状、および貯蔵試験結果を表2に示す。
Figure 2007077355
上記結果より、ベンゾチオフェン由来の硫黄分量を調整し、酸化安定性指数Yが本発明で規定する範囲に入る実施例1〜3は、いずれも酸化安定性に優れ、従来の灯油貯蔵試験条件43℃で13週間貯蔵した際はもとより、より過酷な貯蔵試験条件100℃で20時間貯蔵した際にもパーオキサイドは発生しない結果となり、より貯蔵安定性に優れた灯油を発明するに至った。

Claims (1)

  1. 初留点135〜170℃、50%留出温度165〜220℃、70%留出温度170〜240℃、90%留出温度215〜265℃、95%留出温度230〜270℃の蒸留性状を有し、硫黄分80質量ppm以下であり、下記式(I)で示される酸化安定性指数Yが4.0以下であることを特徴とする灯油組成物。
    Y=0.83×(ナフテンベンゼン類含有量vol%)+0.07×(ナフテン類含有量vol%)−0.37×(ナフタレン類含有量vol%)−0.44×LN(ベンゾチオフェン類由来の硫黄分量 質量ppm) …式(I)
    ここで、式(I)は以下の(a)〜(c)を満たす
    (a)ナフテンベンゼン類含有量(vol%)≦8
    (b)0.1≦ナフタレン類含有量(vol%)≦2.5
    (c)1≦ベンゾチオフェン類由来の硫黄分量(質量ppm)≦50
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