木材のほぞ先面に番付けを印字しておくことにより、建築現場に束ねた状態で搬入されてきた木材の取り付け位置を、束ねたままの状態で認識できるという効果がある。
しかし、特許文献1は、手書きによって木口部分に番付けを記入するものであるから、プレカット工場における作業が繁雑となる。
また、特許文献2は番付けを自動的に印字できるが、木口への印字はできない。
特許文献3は、ほぞ先面に自動的に印字できるものの、ほぞ先面は、面取りがされたり背割りが加工される等しているため、印字可能な面積が狭く、大きな文字を印字できない。このため、ほぞ先面に印字する文字は小さな文字となり、インクのにじみによって不鮮明になるという問題がある。
特許文献4は、面積の広い胴付き面に印字することも提案しているが、インクのにじみによって文字が不鮮明になるという問題は解決できない。それにもまして、印字を行う際に、インクジェット式の印字ヘッドとほぞとが干渉することから、特許文献4が開示する技術では、現実的には胴付き面への印字は困難である。このため、特許文献4で提案はされたものの、現実には胴付き面への印字は実用化できていない。
そこで、本発明は、印字ヘッドと木材の干渉を防止すると共に、にじみによって文字が不鮮明とならない様にすることを第1の目的とする。また、第1の目的に加えて、束ねた状態でも情報を容易に読み取ることができる様に、ほぞ先面や胴付き面に対して鮮明な文字情報を印字できる様にすることを第2の目的とする。
上記第1の目的を達成するためになされた本発明のプレカット加工装置は、加工ライン中に設置されている印字装置により、加工材の所定箇所に印字を実行する機能を備え、さらに、以下の構成をも備えたことを特徴とする。
(1−1)前記印字装置として、該印字装置から所定距離離れた被走査面内で、レーザ光を集光して形成した光スポットを走査することにより、該被走査面内の所定の走査範囲内において、木材の表面に文字,記号,図形等の印字情報を描画することのできるレーザマーキング装置を用いること。
(1−2)前記加工材の印字対象面を、前記被走査面に一致する様に該加工材を配置する加工材配置手段を備えていること。
(1−3)前記加工材の寸法,形状,加工の内容等の加工情報と前記レーザマーキング装置による前記被走査面内での走査可能範囲との関係に基づいて、前記印字対象面内での印字可能範囲を決定する印字可能範囲決定手段を備えていること。
(1−4)前記印字可能範囲決定手段の決定した印字可能範囲と、前記加工材に対して印字すべき情報とから、前記印字装置に対する印字制御データを生成する印字制御データ生成手段を備えていること。
(1−5)前記印字制御データ生成手段の生成した印字制御データに基づいて、前記印字装置を駆動制御することによって前記加工材に対するレーザ光による印字を実行する印字制御手段を備えていること。
本発明のプレカット加工装置によれば、構成要件(1−1)「レーザマーキング装置」を用いることにより、インクジェット方式における様なインクのにじみによる視認性の悪化を防止することができる。また、レーザマーキング装置を用いることにより、印字ヘッドを印字面から離れた位置とすることができるので、印字ヘッドと加工材との干渉という問題も解決できる。
本発明のプレカット加工装置は、かかる作用・効果を発揮するために解決すべき新たな課題として、レーザマーキング装置で加工材に印字するための制御処理的な面での工夫を行っている。即ち、「印字対象である加工材が種々の寸法を呈すると共に、印字対象面に、ほぞ、継ぎ手、溝、スリット、孔などの加工が施されている場合がある。」という、プレカット加工装置特有の問題に対して、単にレーザマーキング装置を印字装置として用いただけではなく、構成要件(1−2)の「加工材配置手段」により、加工材の印字対象面をレーザマーキング装置の被走査面に一致する様に配置し、構成要件(1−3)の「印字可能範囲決定手段」により、加工材の寸法,形状,加工の内容等の加工情報とレーザマーキング装置による被走査面内での走査可能範囲とに基づいて印字対象面内の印字可能範囲を求め、構成要件(1−4)の「印字制御データ生成手段」により、印字可能範囲と加工材に対して印字すべき情報とから印字制御データを生成し、構成要件(1−5)の「印字制御手段」により、生成された印字制御データに基づいて印字装置を駆動制御することによって加工材に対するレーザ光による印字を実行する構成を採用することによって、本発明の第1の目的が達成されているのである。
なお、ここで、レーザマーキング装置による被走査面は、光スポットが若干ぼけた状態となる様に設定することもできる。印字対象である加工材は木材であるから、完全に焦点が合った状態の光スポットでなくても印字が可能だからである。これは、印字の視認性という観点において、文字の大きさ等によっては、焦点を多少ぼかしたほうがよい場合もあるからである。また、本発明において、「被走査面と印字対象面を一致させる」とは、「完全な一致」に限らず、「ほぼ一致」を含む。これは、上述の通り、多少焦点がぼけても印字は可能だからである。また、本発明において「加工材」とは、加工が全て完了しているものに限らず、加工の途中であっても、被走査面に印字対象面を配置でき、加工の内容を考慮した印字可能範囲を求めることができるものであれば足りる。
ここで、(1−3)「印字可能範囲決定手段」を、(1−3−1)「幾何学的な演算処理によって前記印字可能範囲を決定する手段」として構成することができる。
より具体的には、(1−3−1−1)「前記印字可能範囲決定手段を、前記加工情報と前記走査可能範囲との関係に基づいて、前記加工材配置手段によって前記被走査面に配置された印字対象面が占める範囲と、当該印字対象面に対する加工の内容に応じて印字対象面から除外すべき範囲と、前記レーザマーキング装置による走査可能範囲との重なり状況を算出することにより、前記印字可能範囲を決定する手段」として構成することもできる。
この場合、「印字対象面から除外すべき範囲」としては、印字対象面に形成される凹入部(孔,スリット,切り欠き,面取り,溝等)や突出部(ほぞ,継ぎ手等)の占める範囲を挙げることができる。さらに、印字対象面に突出部が形成される場合は、突出部がレーザマーキング装置による走査光の印字対象面への到達を邪魔する範囲(以下、「影の範囲」という。)を「印字対象面から除外すべき範囲」とすることが望ましい。加えて、プリンタで紙に印刷する際の綴じ代の様に、印字対象面、凹入部、突出部、影の範囲の周縁から所定範囲についても除外の対象としてもよい。
また、プレカット加工装置による加工の対象から言えば、加工材の断面寸法は、例えば、柱材では、通常、90mm角,105mm角,120mm角,135mm角,150mm角、180mm角のいずれかの正方形断面を呈するものとなる。従って、加工材の端部を印字対象面とする場合、加工材配置手段による配置条件と、レーザマーキング装置の走査可能範囲との関係から、ある寸法以上の加工材については、自ずと、印字対象面中の偏った範囲にしか印字できない場合がある。また、柱材の胴付き面を印字対象面とするとき、胴付き面には、在来工法用の柱材であれば縦長のほぞ又は横長のほぞが形成されることがある。この場合、走査可能範囲ではなく、自ずとほぞの一方の側にだけ印字可能範囲を決定すべきことがある。金物工法用の横架材であれば、木口面に金物取り付け用の凹溝やスリットが形成されることから、やはり同様に、凹溝やスリットとの関係から、印字可能範囲として決定し得る領域が自ずと決まる。
そこで、(1−3)「印字可能範囲決定手段」を、(1−3−2)「前記レーザマーキング装置による走査可能範囲内に収まる複数の既定パターンを予め定めておいて、その中からの選択によって前記印字可能範囲を決定する手段」として構成することもできる。
より具体的には、例えば、(1−3−2−1)「前記印字可能範囲決定手段を、前記レーザマーキング装置による走査可能範囲内に収まる複数の既定パターンを定めておき、該複数の既定パターンの中から、印字対象となっている加工材の前記加工情報に応じて選択したパターンを印字可能範囲として決定する手段」として構成することもできる。
また、柱材の胴付き面を印字対象面とする場合を考えたとき、胴付き面に縦ほぞが形成されるときは、当該縦ほぞの場合にはほぞの左右のいずれかに縦長のパターンで印字するのが適切である。そして、縦ほぞが胴付き面において左右のいずれかに寄っているときは、より面積を大きく確保できる側に印字することとしておくのが適切な場合もある。もちろん、この関係は、レーザマーキング装置の走査可能範囲と、加工材の寸法と、加工材の印字対象面を被走査面に配置する方法とによって変化する。
加工材の配置方法としては、レーザマーキング装置による走査可能範囲の左右の端のいずれかに対して加工材の左右(機械を中心にいうときは前後)の側面を一致させる方法や、若しくは当該左右の側面が常に所定距離となる様に配置する方法や、加工材を走査可能範囲に対して求心状態で配置する方法などを採用することができる。例えば、求心状態で配置する方法では、縦ほぞが左右いずれにずれているかでほぞの左右いずれの側に印字可能範囲を決定したらよいかを一義的に定めておくという決定方法を採用することもできる。この場合、ほぞが半ほぞであるか否かという観点も組み入れるのもよい。横長のほぞが形成される場合は、常にほぞの上に印字可能範囲を決定する様に定めることもできる。また、加工材の側面を走査可能範囲に一致させる配置方法を採用する場合にも、求心状態に配置するときと同じく、ほぞの方向や位置によって、印字可能範囲をほぞのどの側に決定し得るかを決めておくことができる。また、この様にしてほぞのどちら側に印字可能範囲を決定するかの定めに加えて、加工材Wの寸法から最終的な印字可能範囲を決定する様にしておくこともできる。もちろん、金物工法用の横架材の様にスリットが形成される場合も同様に考えることができる。
そこで、より具体的な構成として、(1−3−2−1−1)「前記印字可能範囲決定手段を、前記レーザマーキング装置による走査可能範囲内に収まる複数の既定パターンを定めておき、該複数の既定パターンの中から、印字対象となっている加工材の寸法に応じて選択したパターンを印字可能範囲として決定する手段」として構成することもできる。
また、上述の加工材の配置方法を側面を基準位置とする方法と求心位置を基準位置とする方法で選択し得る様な場合には、さらに、(1−3−2−1−2)「前記印字可能範囲決定手段を、前記レーザマーキング装置による走査可能範囲内に収まる複数の既定パターンを定めておき、該複数の既定パターンの中から、印字対象となっている加工材の寸法及び前記加工材配置手段による配置方法の基準に応じて選択したパターンを印字可能範囲として決定する手段」として構成することもできる。
さらに、ほぞ先面に印字をする場合は、ほぞの縦横により、パターンを縦長とするか横長とするかが自ずと決まってくる。そこで、(1−3−2−2)「前記印字可能範囲決定手段を、ほぞが縦長か横長かによって縦長のパターンと横長のパターンのいずれかを選択し、該選択結果に基づいて前記前記印字可能範囲を決定する手段」として構成することができる。
この場合、縦長のパターンを選択した後、その位置が加工材の中心にあるのか左右に寄っているのかを考慮して、レーザマーキング装置による走査可能範囲と重なる範囲から印字可能範囲を最終的に決定する様にしておくことができる。
これに対し、例えば、在来工法用の柱材を対象とするプレカット加工装置においては、柱材に形成されるほぞのパターンを分類しておき、加工材の寸法と、ほぞが縦長か横長かと、ほぞが通常のほぞか半ほぞかの相違と、加工材の木口面に対するほぞのずれ量のパターンとに基づいて、予め印字可能範囲となり得るパターンを定めておき、加工材の加工情報から一義的に選択されるパターンをもって印字可能範囲を決定する手段として構成することもできる。これは、ほぞ先面に印字する場合においても胴付き面へ印字する場合においてもいえることである。
これは、在来工法用の柱材に限らず、金物工法用の横架材において金物挿入用のスリットや凹溝を避けて印字する場合にも適用し得る考え方である。在来工法用の横架材においても、その木口面に形成される継ぎ手,仕口を避けて印字する場合にも適用し得る考え方である。
そこで、本発明においては、(1−3−2−3)「前記印字可能範囲決定手段を、前記レーザマーキング装置による走査可能範囲内に収まる複数の既定パターンを加工材の寸法及び加工の内容に対応して定めておき、該複数の既定パターンの中から、印字対象となっている加工材の寸法及び加工の内容に応じて選択したパターンを印字可能範囲として決定する手段」として構成することもできる。
また、金物工法の柱材の木口面に形成されるパイプ孔の様に、縦横の長さが変わらない様な加工部分を避けて印字する場合には、次の様に構成することができる。
即ち、(1−3−2−4)「前記印字可能範囲決定手段を、前記レーザマーキング装置による走査可能範囲内に収まる複数の既定パターンを加工材の寸法及木口面への加工の位置に対応して定めておき、該複数の既定パターンの中から、印字対象となっている加工材の寸法及び木口面への加工の位置に応じて選択したパターンを印字可能範囲として決定する手段」として構成することもできる。
なお、この(1−3−2−4)は、在来工法の柱材等においても適用できる。
さらに、(1−3−3)「前記印字可能範囲決定手段を、前記レーザマーキング装置による走査可能範囲内に収まる複数の既定パターンを定めておき、該複数の既定パターンの中から、印字対象となっている加工材の前記加工情報に応じて選択したパターンを印字可能範囲として決定する手段であって、選択可能なパターンが複数あるときは、所定のルールに従って、その中の一つを選択する手段」として構成することもできる。
この様に構成する場合は、既定パターンとしては、印字可能範囲を最大とする様なパターンに限らず、ある程度安全側に設定したパターンを定めておき、その中から加工情報に基づいて選択し得るパターンを特定し、どちらでもよい場合は、所定のルールに従ってそのいずれかを選択する様な構成となり、予め定めておくべき既定パターンの数を減らすことができる。
ここで、第2の目的をも達成するためになされた本発明のプレカット加工装置は、さらに、以下の構成をも備えたことを特徴とする。
(2−1)前記加工材を載置する載置部の載置面に対して垂直な面として前記被走査面を形成し得る様に前記印字装置を配置すること。
(2−2)前記加工材配置手段は、前記加工材の中心線又は一方の側面が、前記被走査面に垂直な所定の基準線に一致する様に、該加工材を前記載置面上で横移動させる手段として構成されていること。
構成要件(2−1)及び(2−2)をも備えたプレカット加工装置によれば、加工材を、その長手方向の端部側の垂直面(木口面、胴付き面又はほぞ先面)をレーザマーキング装置の被走査面と一致させることができ、しかも、この際に、加工材の中心線又は一方の側面を被走査面に垂直な基準線に一致させている。従って、加工材は、載置部の載置面によって定まる上下方向の基準線(以下、「上下方向基準線」という。)と、載置部の載置面に垂直な被走査面によって定まる長手方向の基準線(以下、「長手方向基準線」という。)と、被走査面に垂直な基準線(以下、「前後方向基準線」という。)の直交する3本の直線によって構成される直交座標系に対して一定の位置関係となり、かつ、被走査面と印字対象面を一致させた状態で配置される。これにより、印字可能な範囲が狭い加工材の端面部に対して、(1−3)の「印字可能範囲決定手段」による適切な印字可能範囲の決定が可能となる。この結果、胴付き面やほぞ先面への印字を正しく実行することができる。
ここで、胴付き面への印字の場合は、さらに、以下の構成をも備える様にするとよい。
(2−1−1)前記加工材配置手段は、前記加工材の胴付き面が前記被走査面と一致する様に、該加工材を配置した後に前記横移動を実行する手段として構成されていること。
(2−2−1)前記印字可能範囲決定手段は、前記加工情報に基づいて、前記胴付き面上のほぞの影となる範囲を考慮して前記印字可能範囲を決定する手段として構成されていること。
構成要件(2−1−1)を備えることによって胴付き面を正しい位置に容易に配置することができ、構成要件(2−2−1)を備えることにより、ほぞの影をも考慮して、印字可能範囲を求めることができる。
また、ほぞ先面への印字の場合は、さらに、以下の構成をも備える様にするとよい。
(2−1−2)前記加工材配置手段は、前記加工材のほぞ先面が前記被走査面と一致する様に、該加工材を配置した後に前記横移動を実行する手段として構成されていること。
(2−2−2)前記印字可能範囲決定手段は、前記加工情報に基づいて、前記ほぞ先面の前記印字可能範囲を決定する手段として構成されていること。
構成要件(2−1−2)を備えることいよりほぞ先面を正しい位置に容易に配置することができ、構成要件(2−2−2)を備えることにより、ほぞの先端の狭い印字可能範囲を正しく求めることができる。
また、胴付き面及びほぞ先面のいずれにも印字できる様にすることもできる。その場合は、以下の構成を備える様にすればよい。
(3−1)前記加工材の胴付き面とほぞ先面のいずれを印字対象面とするかを選択する印字対象面選択手段を備えていること。
(2−1−3)前記加工材配置手段は、前記印字対象面選択手段の選択結果が胴付き面であるときは、前記加工材の胴付き面が前記被走査面と一致する様に、該加工材を配置した後に前記横移動を実行し、前記印字対象面選択手段の選択結果がほぞ先面であるときは、前記加工材のほぞ先面が前記被走査面と一致する様に、該加工材を配置した後に前記横移動を実行する手段として構成されていること。
(2−2−3)前記印字可能範囲決定手段は、前記印字対象面選択手段の選択結果が胴付き面であるときは、前記加工情報に基づいて、前記胴付き面上のほぞの影となる範囲を考慮して前記印字可能範囲を決定し、前記印字対象面選択手段の選択結果がほぞ先面であるときは、前記加工情報に基づいて、前記ほぞ先面の面取りを考慮して前記印字可能範囲を決定する手段として構成されていること。
構成要件(3−1)の「印字対象面選択手段」は、一棟分の加工において、胴付き面又はほぞ先面のいずれを印字対象面とするかを一義的に選択する手段として構成することもできるし、加工材毎に選択可能な手段として構成することもできる。また、一棟分について一旦いずれかを選択した上で、必要に応じて印字対象面を胴付き面からほぞ先面へ、ほぞ先面から胴付き面へと変更する手段として構成することもできる。構成要件(3−1)を備え、「加工材配置手段」を構成要件(2−1−3)の如く構成し、「印字可能範囲決定手段」を構成要件(2−1−3)の如く構成することにより、胴付き面又はほぞ先面を選択結果に応じて容易に正しい位置へ配置することができ、かつ、胴付き面へもほぞ先面へも的確な印字を実行することができる。
なお、これら胴付き面及びほぞ先面への印字に当たっては、さらに、以下の構成をも備える様にするとよい。
(4−1)前記印字可能範囲決定手段は、前記加工情報として、ほぞの先端部の加工情報をも考慮して、前記印字可能範囲を決定する手段として構成されていること。
構成要件(4−1)により、ほぞの先端部の加工情報、例えば、面取りの寸法や角度を考慮することで、ほぞの影となる範囲を正確に求めたり、ほぞ先の垂直面を正確に求めることができる。
なお、端面部にレーザマーキングによる印字を行い得る様にした本発明のプレカット加工装置においては、さらに、以下の構成をも備える様にするとよい。
(5−1)前記加工材配置手段によって配置された加工材の上面に対して、印字可能な位置に側面部印字装置を備えていること。
かかる構成を採用することにより、端面部への印字と並行して、加工材の上面に印字することができるので、印字工程に要する時間の短縮を図ることができる。
また、第1の目的を達成するためになされた本発明の印字装置は、プレカット加工された加工材に対してレーザマーキングによって印字することのできる装置であって、以下の構成を備えたことを特徴とする。
(6−1)前記加工材の寸法,形状,加工の内容等の加工情報と当該印字装置が光スポットを走査する被走査面との関係に基づいて、該加工材の印字対象面内の印字可能範囲を決定する印字可能範囲決定手段を備えていること。
(6−2)前記印字可能範囲決定手段の決定した印字可能範囲と、前記加工材に対して印字すべき情報とから、前記印字装置に対する印字制御データを生成する印字制御データ生成手段を備えていること。
(6−3)前記印字制御データ生成手段の生成した印字制御データに基づいて、前記印字装置を駆動制御することによって前記加工材に対するレーザ光による印字を実行する印字制御手段を備えていること。
この本発明の印字装置によれば、構成要件(6−1)〜(6−3)を備えることで、プレカット加工によって加工された加工材に対し、レーザマーキングによる的確に印字を行うことができる。
なお、この印字装置においては、以下の様に構成することで、加工材の端部の胴付き面及びほぞ先面に対して、的確な印字を実行することができる。
(7−1)前記加工材の胴付き面とほぞ先面のいずれを印字対象面とするかを選択する印字対象面選択手段を備えていること。
(7−2)前記印字可能範囲決定手段は、前記印字対象面選択手段の選択結果が胴付き面であるときは、前記加工情報に基づいて、前記胴付き面上のほぞの影となる範囲を考慮して前記印字可能範囲を決定し、前記印字対象面選択手段の選択結果がほぞ先面であるときは、前記加工情報に基づいて、前記ほぞ先面の前記印字可能範囲を決定する手段として構成されていること。
なお、本発明の印字装置は、胴付き面への印字専用として、(7−1),(7−2)に代えて、以下の様に構成することもできる。
(8−1)前記印字可能範囲決定手段は、前記加工情報に基づいて、前記加工材の胴付き面上のほぞの影となる範囲を考慮して前記印字可能範囲を決定する手段として構成されていること。
また、本発明の印字装置は、ほぞ先面への印字専用として、(7−1),(7−2)に代えて、以下の様に構成することもできる。
(9−1)前記印字可能範囲決定手段は、前記加工情報に基づいて、前記加工材のほぞ先面の前記印字可能範囲を決定する手段として構成されていること。
なお、これら胴付き面又はほぞ先面に印字可能な本発明の印字装置において、さらに、以下の構成をも備える様にすると、ほぞの面取りをも考慮して、より的確に印字可能範囲を求めることができる。
(10−1)前記印字可能範囲決定手段は、前記加工情報として、ほぞの先端部の加工情報をも考慮して、前記印字可能範囲を決定する手段として構成されていること。
本発明によれば、プレカット加工された加工材への印字手段としてレーザマーキング装置を用いることを可能にし、これによって、「印字ヘッドと木材の干渉を防止すると共に、にじみによって文字が不鮮明とならない様にする」という第1の目的を達成することができる。
また、構成要件(1−1)〜(1−5)に加えて、構成要件(2−1)等を備えることにより、加工材の胴付き面又はほぞ先面への印字を可能にすることができ、これにより、「束ねた状態でも情報を容易に読み取ることができる様に、ほぞ先面や胴付き面に対して鮮明な文字情報を印字できる様にする」という第2の目的を達成することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。実施の形態は、柱材プレカット加工機に関するものである。図1,図2に示す様に、この柱材プレカット加工機1は、大きく分けて、投入コンベア部100と、加工機本体部300と、取り出しコンベア部900とから構成されている。
投入コンベア部100には、図1,図2に示す様に、素材ストックコンベア110と、移送体120と、投入コンベア130と、残材取り出し装置140とが備えられている。
素材ストックコンベア110は、投入コンベア130側が低くなる様に傾斜した複数列のホイールコンベアを備えたものである。また、素材ストックコンベア110は、その排出側(投入コンベア側)の高さが、投入コンベア130のローラ面よりも低くなっている。従って、加工材は、この素材ストックコンベア110により、ローラコンベア130の正面位置まで搬送され、ローラコンベア130の正面に設置されているストッパに押し付けられた状態にストックされる。
移送体120は、3本のエアシリンダにより、本体の昇降動作及び前後移動動作と、持ち上げ部の前後位置シフト動作とを行うことができる様に構成されている。この前後位置シフト動作は、移送すべき加工材の材幅の大きいものと小さいものの2段階位置のいずれかに、持ち上げ部を移動させて待機しておくための動作である。加工材の投入前には、移送体120は、素材投入コンベア110によってローラコンベア130正面のストッパ当設位置まで供給された加工材の下部において、加工材の幅に応じて前後シフトした状態で待機した状態となる。そして、加工材投入の指令が入力されると、本体の上昇動作を実行して加工材を素材ストックコンベア110から持ち上げ、続いて本体の前進動作を行って加工材を投入コンベア130の上方に横移動させてから本体を下降することにより、加工材を投入コンベア130の上に供給する。この供給動作が完了したら本体を前後移動させて待機位置に戻る。なお、この移送体の作動によって先頭の加工材が持ち上げられると、素材ストックコンベア110の傾斜により、次の加工材が先頭位置へと移動してくる。
投入コンベア130は、フリーローラコンベアを備えたもので、加工材を載置し、本体部300に送り込む役割と、本体部300から送り側に戻されてきた残材を受ける役割をもっている。
残材取り出し装置140は、3本のエアシリンダにより、持ち上げ部の昇降動作と、本体の前後移動動作及び昇降動作とを行うことができる様に構成されている。そして、残材を排出する際には、持ち上げ部を上昇させて投入コンベア130から残材を持ち上げ、後方移動によって残材を投入コンベア130の後方に移動し、その後下降動作を行うことで残材を投入コンベア130の下方に配置されて前方へ向かって下り傾斜となっているホイールコンベア上に移す動作を実行する。こうして投入コンベア下のホイールコンベアに移された残材は、ホイールコンベアの傾斜によって投入コンベア130の脚の間を通って加工機の正面側に排出される。
本体部300は、図1〜図4(特に、図3,図4)に示す様に、テーブルローラ群310と、第1〜第5ピンチローラ321〜325と、第1,第2傾斜ローラ331,332と、第1〜第5バイス341〜345と、第1上クランプ351と、第2上クランプ352と、第1,第2求芯ローラ361,362と、第1,第2上押さえローラ371,372と、第1〜第4横転装置381〜384と、固定木ロストッパ390と、クロスカットソーユニット500と、面加工ユニット600A,600Bと、ほぞ加工ユニット700とを備えている。ここで、面加工ユニット600A,600Bは、図4に示す様に、加工機における面加工位置P1に対して加工機正面側と背面側の対面する位置に設置されている。また、ほぞ加工位置P2,P3は、ほぞ加工ユニットが木材の後端の木口部に対する加工を行っているときに、面加工位置P1に次の木材の先端を送り込み、ストッパ873により位置決めしておける様に、木材送り方向に離して設定されている。
テーブルローラ群310は、図3,図4に示す様に、バイステーブル上やほぞ取りユニット700の後部に装備された回転自在のローラ群である。テーブルローラ群310は、ローラ上に加工材を載置し、加工材をその長手方向(左右方向)に移送する役割を持っている。なお、加工材移送のための駆動は、加工材移送位置決めユニット920(図1,図2参照。詳細は後述。)又は第1〜第5ピンチローラ321〜325による。
第1〜第5ピンチローラ321〜325は、ギヤーモータにより回転し、エアシリンダにより昇降する様に構成されている。これらは、投入コンベア130及び本体のローラ上の加工材を押さえつけながら長手(左右)方向に送る動作を実行する役割を持っている。なお、各ピンチローラ321〜325は、加工材検出センサーによる加工材の有無検出で昇降する様に構成されている。
第1,第2傾斜ローラ331,332は、エアシリンダによりローラ前側(正面側)が下方向に傾斜し、他のローラ上面より低くなる様に構成されている。この傾斜ローラ331,332は、切断後の端材及び短い残材を機械前側に落下させる役割をもっている。
第1〜第5バイス341〜345は、油圧駆動で加工材の幅方向(機械の前後方向)に開閉する。これらのバイス341〜345は、加工材を幅方向に求芯状態でクランプ固定する役割をもっている。
第1上クランプ351は、第4バイス344の上部に有り、油圧シリンダで上下方向に動作する。この第1上クランプ351は、加工材をローラ面に押しつけ固定する役割を持っている。
第2上クランプ352は、第5バイス345の上部に2台有り、油圧シリンダで上下方向に動作する。この第2上クランプ352は、加工材をローラ面に押しつけ固定する役割を持っている。なお、加工種類により2台が選択的に動作する。
第1,第2求芯ローラ361,362は、エアシリンダにより加工材の幅方向に開閉する。これらの求芯ローラ361,362は、加工材を求芯状態で長手方向移動可能にクランプする役割を持っている。
第1,第2上押さえローラ371,372は、第1,第2求芯ローラ361,362の上部に位置し、油圧シリンダで上下方向に動作する。これらの上押さえローラ371,372は、油圧シリンダの圧力を制御することで、加工種類に応じて、加工材を長手方向移動可能にローラ面に押しつける場合は弱く、固定的に押し付ける場合は強く押さえる役割を果たしている。
以上の構成により、この柱材プレカット加工機1で加工材を固定して加工する場合は、バイス341〜345と上クランプ351,352又は上押さえローラ371,372の内で必要なものを動作させ、強い押さえにより加工材をしっかりと固定することができる。また、しゃくり加工の様に加工材を移送しながら加工する場合は、求芯ローラ361,362と上押さえローラ371,372の内の必要なものを動作させ、弱い押さえにより加工材を移送可能な状態に押さえることができる。
第1〜第4横転装置381〜384は、2本のエアシリンダにより、加工材受け部の昇降動作と回転動作とを実行する。この横転装置381〜384は、コンベア及び本体のローラ上の加工材を持ち上げて横転させる役割を持っている。なお、この横転装置381〜384は、加工材受け部を正転方向と逆転方向に回転することができ、1動作につき加工材を90度横転させることができる。
固定木ロストッパ390は、ほぞ加工ユニット700の左右動ベース851(後述する)の上に固定されている。下ほぞ加工時に退避の必要があるためこの構造になっている。従って、左右動位置が一定している上ほぞ加工時にのみ機能できる。この固定木口ストッパ390は、エアシリンダによって上下(出没)する。なお、ストッパヘッド面には加工材が当接した事を検 出するセンサが装備されている。この固定木口ストッパ390は、上ほぞ加工時にストッパヘッドがローラコンベア面上に突出し、ピンチローラ321〜325によって送られる次の加工材の先端を当接させ、下ほぞ加工位置を決める役割を果たしている。
クロスカットソーユニット500は、図3,図4に示す様に、主軸モータによって回転する丸鋸510を備え、エアシリンダにより昇降する構造となっている。クロスカットソーユニット500は、丸鋸510を回転させて下降動作を実行することにより、加工材を切断する。
面加工ユニット600A,600Bは、図3〜図6(特に、図5,図6)に示す様に、いずれも刃物を装備する第1,第2ルータ軸611,612、座ぐりキリ軸613及びしゃくりカッタ軸614を備えており、加工機1の面加工位置P1を挟んで、1台が前(正面側)に、もう1台が後(背面側)に、互いに対面する様に設置されている。また、各主軸611〜614は、上下方向に並べて配置されている。そして、これら面加工ユニット600A,600Bは、それぞれが独立した動作を行うことができる様に構成されている。この独立した動作は、各面加工ユニット600A,600Bに設けた左右動サーボモータ、上下動サーボモータ及び前後動サーボモータを、後述する制御装置が各独立に制御することによって実行される。各面加工ユニット600A,600Bは、さらに、各主軸611〜614のそれぞれに対して突出位置と後退位置を選択的に取ることができる様に主軸毎のエアシリンダを備えている。面加工ユニット600A,600Bは、エアシリンダを突出位置に動作させることで4つの主軸611〜614の中から加工に使用する主軸を選択することができる。
面加工ユニット600A,600Bは、エアシリンダの突出動作によって選択された主軸を回転し、3つのサーボモータを制御することで、前後方向、左右方向及び上下方向の3方向の組み合わせ動作を実行し、第1ルータ軸611による貫き穴加工など、第2ルータ軸612による差し穴加工,えり輪彫り加工,回り縁加工など、座ぐりキリ軸613によるボルト穴加工,座ぐり加工,ピン穴加工など、しゃくりカッタ軸614による壁しゃくり加工,ボードしゃくり加工,ラス下しゃくり加工などを実行することができる。
ほぞ加工ユニット700は、図3,図4及び図7〜図9(特に、図7〜図9)に示す様に、1台のほぞ取り軸モータ711を備えている。なお、図7は機械の背面側からほぞ取りユニット700を見た背面図であって、他の図と左右が逆である。このほぞ取り軸モータ711は、図7〜図9における主軸の右端(面加工ユニット600A,600B側)に下ほぞ切削カッタ721,下ほぞ先面取りカッタ722及び端面仕上げカッタ723を装備し、主軸の左端に上ほぞ切削カッタ731,上ほぞ先面取りカッタ732及び持たせ・回り縁加工カッタ733を装備している。また、ほぞ取り軸モータ711は、サーボモータ866により左右動する。この左右動によって右寄りに移動されたときに下ほぞ加工位置に位置し、左寄りに移動されたときに上ほぞ加工位置に位置する。また、ほぞ取り軸モータ711は、ほぞ取り軸前後動用サーボモータ856により前後動し、ほぞ取り軸上下動用サーボモータ846により上下動する。
上述した刃物の内、下ほぞ切削カッタ721及び上ほぞ切削カッタ731は、ほぞ取り軸モータ711の主軸に固定されている。それ以外のカッタ722,723,732,733は、ほぞ長さ変更用サーボモータ835により一体的に左右方向(軸方向)に移動する構成となっており、ほぞ取りカッタ721(731)とほぞ先面取りカッタ722(733)との間の軸方向間隔を変更することができる。これによってほぞ加工長さを変更することができる。また、ほぞ加工ユニット700は、下ほぞ側カバー昇降用エアシリンダ741により昇降する下ほぞ側カッタカバー751と、上ほぞ側カバー昇降用エアシリンダ742により昇降する上ほぞ側カッタカバー752とを備えている。
上述した各刃物は、次の様な加工を行うためのものである。下ほぞ切削カッタ721及び下ほぞ先面取りカッタ722は、下ほぞの加工を行うものである。端面仕上げカッタ723は、加工材が先端部をクロスカットユニット500で切断されない場合に木口面の仕上げを実行する。上ほぞ切削カッタ731及び上ほぞ先面取りカッタ732は、上ほぞの加工を行う。持たせ・回り縁加工カッタ733は、回り縁加工や窓台窓まぐさ欠き加工などを実行する。エアシリンダ741,742は、左右のカバー751,752を通常時は上昇位置に退避させておき、加工時に下降してカッタ周辺を覆い、切削屑の飛散を防止し集塵効率を上げる役割を持っている。
取出しコンベア部900は、図1,図2及び図10〜図13(特に、図10〜図13)に示す様に、取り出しローラコンベア910と、加工材移送位置決めユニット920と、側面部印字装置930と、加工材押し出し装置940と、加工済材受け渡し装置950と、ホイールコンベア980と、端面部印字装置990とを備えている。
取り出しローラコンベア910は、フリーローラによって構成されている。この取り出しローラコンベア910は、切削加工が終了し、加工材移送位置決めユニット920によって送り出されてきた加工材を受ける役割を持っている。
加工材移送位置決めユニット920は、サーボモータにより加工材長手方向に移動する。移動範囲はクロスカットソーユニット500の近くから取り出しコンベア910の左端部近くまでになっている。また、把持装置開閉用エアシリンダにより加工材把持装置が開閉し、ストッパ出入用エアシリンダにより木ロストツパが出入りする様に構成されている。この加工材移送位置決めユニット920は、加工材の木口又は中間を把持して長手方向(左右方向)に移送し、長手方向の位置決めをする。このとき、加工材の加工部位を面加工位置P1、下ほぞ加工位置P2及び上ほぞ加工位置P3に位置決めする他に、加工材を横転位置及び加工済材押出し位置などへの位置決めも行う。また、加工材の木口又は中間を把持して、加工中の加工材を長手方向に移動するしゃくり加工のための移動も実行する。なお、加工材の位置決めに当たっては、ユニット920に備えられている木ロストツパに加工材を押しつけて、基準位置を割り出す様に構成されている。
側面部印字装置930は、インクジェット方式によって加工材の上面に部材番号や位置情報を印字するものであって、図14〜図16に示す様に、フレームに立設し上部が水平方向(図14の右方向)に伸びたコラム931と、コラム931に設けられている左右動ガイドレール936と、コラム931の水平方向に伸びた端部に設けられている左右動サーボモータ935と、左右動ガイドレール936にガイドされる左右動スライドベース937と、左右動スライドベース937に設けられた昇降ガイドレール933と、左右動スライドベース937の上端部に設けられた昇降サーボモータ932と、昇降ガイドレール933にガイドされる昇降体934と、この昇降体934に装着されている印字ヘッド938と、図示省略したインクタンクとを備えている。この側面印字装置930は、2台のサーボモータ932,935により、上下方向移動で加工材から所定距離の高さに印字ヘッドを合わせ、左右方向移動をしながらインクを吐出することで、加工材の上面の側面印字範囲930a(図15,図16参照)に印字を実行する。
加工材押し出し装置940は、図11に示す様に、押し出しバー前後動用エアシリンダ941により前後動する押し出しバーを備えている。加工材押し出し装置940は、切削加工が終了し、取出しコンベア910の上にある加工材を加工済材受け渡し装置950上の印字位置に押し出す役割を持っている。
加工済材受け渡し装置950は、前後動用エアシリンダ951(図10参照)により、全体がホイールコンベア980の上側ホイールコンベア981への受け渡し位置(ホイールコンベア端部)まで前後動する。また、全体昇降用エアシリンダ952(図10,図13参照)により、載置部分全体が上側ホイールコンベア981の上面より下がった位置まで下降する。さらに、もう一つの短尺材載置部昇降用エアシリンダ953(図10参照)により、短尺材載置部分970のみが下側ホイールコンベア982の上面より下がった位置まで下降する。
この加工済み材受け渡し装置950は、加工済み材が長い場合、受け渡し装置950は、載置された長い木材Wlと共にホイールコンベア980の端部まで前方に移動し、載置部分全体が上側ホイールコンベア981の上面より下がった位置まで下降し、上側ホイールコンベア981の上に加工済みの長い木材Wlを受け渡す。一方、加工済み材が短い場合には、受け渡し装置950の短尺材載置部分970のみが、載置された短い木材Wsと共に下側ホイールコンベア982の上面より下がった位置まで下降し、下側ホイールコンベア982に加工済みの短い木材Wsを受け渡す。
ホイールコンベア980は、遊転ローラを備え、前方に向かって低くなる様に傾斜した上側ホイールコンベア981と下側ホイールコンベア982とからなる上下2段の構成になっている。上側ホイールコンベア981は長い加工済材を受け取るためのものであり、下側ホイールコンベア982は短い加工済材を受け取るものである。コンベア上に受け取られた加工材は自重によってコンベア上を転がり、手前に排出される。
端面部印字装置990は、レーザマーキング装置によって構成されている。例えば、株式会社キーエンス製のCO2レーザマーカ(製品番号:ML−G9311)などを採用することができる。株式会社キーエンス製のCO2レーザマーカは、発振器、スキャンミラー、スキャナモータ、fθレンズを備えており、次の様な動作によって印字を行うことができる様に構成されている。
(1)発振器内に充填したCO2ガスに電気エネルギーを加え励起させる。
(2)励起されたレーザ光は、発振器内の反射ミラー間を往復するうちに増幅され、出力される。
(3)出力された光は、fθレンズを通して対象物の表面で集光される。
(4)集光され、熱を帯びたレーザ光のポイントをX軸、Y軸それぞれの印字用スキャモータで走査し、熱加工で一筆書きの文字を表現する。
端面部印字装置990は、発振器、スキャンミラー、スキャナモータ、fθレンズなどの機構を内蔵した本体991の前面に、レーザ出射口となる印字ヘッド992を備えたものである。そして、本体991内で発生したレーザ光は、内蔵されたスキャナモータの動作に応じて、印字ヘッド992から射出される。レーザ光は、fθレンズを中心に放射方向に向かって直線的に射出される。
この端面部印字装置990は、図14,図16に示す様に、加工材Wの一方の端部に印字ヘッド992が対面する様に設置されている。また、その前後方向(奥行き方向)の設置位置は、図15,図16に示す様に、側面部印字装置930と整合した位置関係になっている。即ち、端面部印字装置990は、側面部印字装置930による側面印字を実施するための位置にセットされた加工材Wを、当該位置から移動することなく、その「胴付き面」又は「ほぞ先面」に対してレーザマーキングが可能な位置に設置されているのである。
端面部印字装置991の印字ヘッド992から出射されるレーザ光は、スキャナモータの動作によって上下左右に走査され、印字ヘッド992から一定の距離に所定範囲の印字エリア993を形成する。そして、この印字エリア993に対して、一筆書きの要領で文字、記号等を描画することができる。本実施形態では、印字ヘッド992から約210mmの距離において、約110mm四方の正方形の範囲を印字エリア993となる様に構成してある。
本実施形態では、この印字エリア993内に、加工材Wの胴付き面W2又はほぞ先面W3を位置させておき、端面部印字装置990による印字を行うこととしている。この際、レーザ光は、レーザ光源を中心として放射方向に射出されることから、印字エリア993にある垂直な印字面に対して、外側にいくほど斜めに当たることになり、射程距離が長くなる。そこで、本実施形態では、端面部印字装置990のスキャナモータによる走査角度に応じて補正を行う様に制御している。なお、この補正はより鮮明な文字を描くために行うものであって、仮に、この補正をしない場合でも、本発明の目的を達成する上での実用上の問題はない。
端面部印字装置990は、加工制御用のCAD/CAMデータ及び印字データ(印字位置,印字向き,印字フォント,印字大きさ,印字濃度など)に基づいて制御されている。以下に、印字制御について説明する。
まず、胴付き面W2に印字するか、ほぞ先面W3に印字するかを選択する。この選択は、一棟分の柱材について同じ条件にすることとしている。
(1)胴付き面への印字
(1−1)印字対象面の選択
胴付き面W2が長手方向基準線L1に位置する様に、加工材取り出し工程に関する取り出し条件を設定する。
(1−2)加工材の長手方向位置決め
ほぞW1の加工後の取り出し工程において、加工材移送位置決めユニット920は、加工材Wの左端部(背面から見た場合の左端部)の胴付き面W2が、印字ヘッド992から約220mmの距離に設定された長手方向基準線L1に位置する様に、取り出しローラコンベア910上に加工材Wを長手方向の位置決めを実行する(図15の2点鎖線で描画した加工材Wの位置参照)。この加工材Wの長手方向位置決め制御には、加工材移送位置決めユニット920の位置と、加工材Wの長さと、ほぞW1の長さとが考慮される。なお、加工材移送位置決めユニット920の位置はエンコーダ等による検出データとして得られ、加工材Wの長さ及びほぞW1の長さはCAD/CAMデータとして得られる。
(1−3)加工材の押し出し
上述の様にして加工材の長手方向位置決めが完了したら、加工材押し出し装置940は、加工材Wを、取り出しローラコンベア910の上から長尺材受け渡しバー968及び短尺材受け渡しバー971の上へと押し出す(図16の矢印参照)。この押し出し動作の完了時、即ち、受け渡しバー968,971への載置完了時の加工材Wの幅方向(前後方向)の位置は、押し出し装置940の押し出しストロークエンドによって決められる。従って、加工材Wの幅寸法に関係なく押し出された面(加工材の前後方向の基準面996)が常に一定の位置になっている。換言すれば、押し出し装置940の押し出し面の位置が前後方向基準線L2と一致する様にストロークエンドが設計されている(図16参照)。なお、加工材Wは長手方向に対して直角に押し出されるので、(1−2)で決められた長手方向の位置は、ほとんどずれることがない。
(1−4)胴付き面への印字
図17に示す様に、印字エリア993の内、ほぞW1が邪魔をする範囲993aを避けた範囲(図17(C)の斜線で示した部分)と胴付き面W2の重なる範囲993b(同図中のクロスハッチで示した範囲)が印字可能範囲となる。この胴付き面印字可能範囲993bは、CAD/CAMデータとして得られる加工材の幅、高さと、ほぞの位置、幅、高さと、長手方向基準線L2に垂直な面に対する端面部印字装置990の走査可能範囲との関係から算出することができる。こうして演算により求まった胴付き面印字可能範囲993bを印字エリアとして印字データを展開し、端面部印字装置990を駆動制御することにより、胴付き面W2に対して、レーザーマーキングによる印字を実行する。なお、受け渡しバー968,971の上面が高さ方向基準線L3となっている。
(2)ほぞ先面への印字
(2−1)印字対象面の選択
ほぞ先面W3が長手方向基準線L1に位置する様に、加工材取り出し工程に関する取り出し条件を設定する。
(2−2)加工材の長手方向位置決め
ほぞW1の加工後の取り出し工程において、加工材移送位置決めユニット920は、加工材Wの左端部(背面から見た場合の左端部)のほぞ先面W3が、印字ヘッド992から約220mmの距離に設定された長手方向基準線L1に位置する様に、取り出しローラコンベア910上に加工材Wを長手方向の位置決めを実行する(図18の2点鎖線で描画した加工材Wの位置参照)。この加工材Wの長手方向位置決め制御には、加工材移送位置決めユニット920の位置と、加工材Wの長さと、ほぞW1の長さとが考慮される。なお、加工材移送位置決めユニット920の位置はエンコーダ等による検出データとして得られ、加工材Wの長さはCAD/CAMデータとして得られる。
(2−3)加工材の押し出し
加工材の長手方向位置決めが完了したら、加工材押し出し装置940をストロークエンドまで駆動して、加工材Wを、取り出しローラコンベア910の上から長尺材受け渡しバー968及び短尺材受け渡しバー971の上へと押し出す。胴付き面への印字の際に説明した通り、押し出し装置940のストロークエンドは、前後方向基準線L2と一致するから、加工材Wは、そのほぞ先面W3が長手方向基準線L1と一致し、後面996が前後方向基準線L2と一致する位置へと押し出されて停止する。
(2−4)ほぞ先面への印字
図19にハッチングで示す様に、印字エリア993とほぞ先面W2とが重なる範囲が、ほぞ先面印字可能範囲993cとなる。このほぞ先面印字可能範囲993cは、CAD/CAMデータとして得られるほぞの位置、幅、高さと、長手方向基準線L2に垂直な面に対する端面部印字装置990の走査可能範囲との関係から算出することができる。こうして演算により求まったほぞ先面印字可能範囲993cを印字エリアとして印字データを展開し、端面部印字装置990を駆動制御することにより、ほぞ先面W3に対して、レーザーマーキングによる印字を実行する。
次に、印字制御に用いるデータについて説明する。
印字制御に用いるデータは、以下のものである。
(1)加工材Wの上下方向の基準面995の位置(基準線L3)
(2)加工材Wの前後方向の基準面996の位置(基準線L2)
(3)加工材Wの幅と高さ
(4)印字エリア993の高さ方向範囲
(5)印字エリア993の前後方向範囲
(6)ほぞW1の厚さと幅
(7)ほぞW1の向き
(8)ほぞW1の位置
(9)ほぞW1の長さ
(10)ほぞW1の先端部の状態
ここで、「(1)加工材Wの上下方向の基準面995の位置」は、受け渡しバー968,971の高さである上下方向基準線L3により定まり、一定値となっている。
また、「(2)加工材Wの前後方向の基準面996の位置」は、加工材押し出し装置940のストロークエンドである前後方向基準線L2により定まり、これも一定値となっている。
「(3)加工材Wの幅と高さ」は、正方形の柱材においては、一般的に、90mm,105mm,120mm,135mm,150mmのいずれかになる。
「(4)印字エリア993の高さ方向範囲」は、本実施形態では、上下方向基準線L3の上方20mm〜130mmの範囲となっている。
「(5)印字エリア993の前後方向範囲」は、本実施形態では、前後方向基準線L2の前方20mm〜130mmの範囲となっている。
「(6)ほぞW1の厚さと幅」は、一般的に30×30〜30×120mmである。なお、ほぞには、半ほぞもある。
「(7)ほぞW1の向き」は、上下方向基準面995に対して縦向きと横向きがある。
「(8)ほぞW1の位置」は、柱材の芯が一般的であるが、7.5mm〜15mmくらいの位置ズレもある。
「(9)ほぞW1の長さ」は、接合箇所によって異なる場合がある。
「(10)ほぞW1の先端部の状態」は、ほぞを差し込み易くするためにされる面取り加工の数値的な条件である。
次に、印字制御の内容について説明する。
印字制御では、CAD/CAMデータ及び印字すべき情報に基づき、印字の位置及び印字の向きを決定し、フォント、文字の大きさ、濃さなどのデータを端面部印字装置990に印字データとしてインプットする。端面部印字装置990は、その情報によって印字を実行する。
ここで、印字の位置は、ほぞの胴付き面W2又はほぞ先面W3のいずれへ印字するかの選択状況と、「(3)加工材Wの幅と高さ」、「(4)印字エリア993の高さ方向範囲」、「(5)印字エリア993の前後方向範囲」、「(6)ほぞW1の厚さと幅」、「(7)ほぞW1の向き」、「(8)ほぞW1の位置」、「(9)ほぞW1の長さ」、「(10)ほぞW1の先端部の状態」といったデータから定まる。
なお、「(4)印字エリア993の高さ方向範囲」及び「(5)印字エリア993の前後方向範囲」は、端面部印字装置990の設置位置と長手方向基準線L1,前後方向基準線L2,上下方向基準線L3の関係から、機械に固有の値として一義的に定まる。
胴付き面W2への印字の場合に必要なCAD/CAMデータは、「(3)加工材Wの幅と高さ」、「(6)ほぞW1の厚さと幅」、「(7)ほぞW1の向き」、「(8)ほぞW1の位置」、「(9)ほぞW1の長さ」、「(10)ほぞW1の先端部の状態」である。
これらのデータが必要となるのは、次の理由による。
印字可能範囲993の外周部分は、加工材Wの大きさによって制限される。即ち、印字可能範囲993であっても、加工材Wの大きさから外れた外周部には印字できない。よって、印字可能範囲993と加工材Wの重なる範囲を算出するために、「(3)加工材の幅と高さ」が必要になるのである。
さらに、加工材Wの大きさと印字可能範囲993の重なる範囲であっても、ほぞW1によって邪魔される範囲993aには印字することができない。ほぞによって邪魔される範囲993aには、ほぞW1自体があることにより邪魔される範囲と、レーザ光が光源中心から放射方向に向かって射出されることによるほぞW1の影の範囲とによって定まる(図20(A)参照)。なお、もたせがある場合は、印字可能範囲と加工材Wの胴付き面の重なり範囲自体がさらに小さくなる(図20(C)参照)。
ほぞW1自体により邪魔される範囲は、「(6)ほぞW1の厚さと幅」、「(7)ほぞW1の向き」、「(8)ほぞW1の位置」のデータから算出することができる。ほぞW1の影になる範囲は、これらに加えて、「(9)ほぞW1の長さ」、「(10)ほぞW1の先端部の状態」によって定まる。
以上より、胴付き面W2への印字が可能な範囲993bを算出したら、文字の方向は、加工材Wの上下方向の基準面995を下にした正立文字とし、印字可能な範囲993bの状態によって縦書き、横書きのいずれかを決定する。例えば、印字可能な範囲が縦長の場合は縦書きに、横長の場合は横書きに決定する。そして、文字数が多い場合は文字を小さくするか複数行にするかを決定する。この様に、胴付き面W2の印字可能な範囲993bに対して読みやすく印字するために、文字の上下、文字列の方向、文字の大きさ、複数行にするか否かといった事項について加工材WのCAD/CAMデータ及びほぞW1のCAD/CAMデータから判定を行うのである。
また、ほぞ先面W3への印字の場合に必要なCAD/CAMデータは、「(6)ほぞW1の厚さと幅」、「(7)ほぞW1の向き」、「(8)ほぞW1の位置」及び「(10)ほぞW1の先端部の状態」である。ほぞ先面W3は、加工材Wの他の部分によって邪魔されるということがないので、これらのデータで足りるのである。また、ほぞ先面W3は、ほぞW1の長さに関係なく、長手方向基準線L1に合わされるので、「(9)ほぞW1の長さ」は用いなくてもよいのである。ほぞ先面W3の印字可能な範囲993cは、端面部印字装置990の印字可能範囲993とほぞ先面W3の重なる部分から、面取り部分を除いた範囲となる。文字の向きは、胴付き面W2への印字の場合と同様に、上下方向の基準面995を下にした正立文字とし、文字列の方向は、ほぞW1の向きによって縦書き、横書きのいずれかを決定する。また、文字の大きさ、複数行とするか否かについては、印字可能な範囲993cの面積から判定する。この様にして、ほぞ先面W3の印字可能な範囲993cに対して読みやすく印字するために、文字の上下、文字列の方向、文字の大きさ、複数行にするか否かといった事項についてほぞW1のデータから判定を行うのである。
以上の様な演算結果に基づいて、加工材Wの胴付き面W2又はほぞ先面W3に対する印字工程が終了する。
前述の様に、端面部印字装置990は、前後方向位置を側面部印字装置930と整合させた配置としてある。また、端面部印字装置990は印字動作に当たって、それ自体が移動することがなく、側面部印字装置930の印字動作と干渉することがない。よって、本実施形態では、上述の様な端面部印字装置990による印字動作と並行して、側面部印字装置930による加工材Wの上面の側面部印字範囲930aに対して必要な情報を印字する。この際、側面部印字装置930にあっては、CAD/CAMデータとして得られる加工材Wの高さデータに基づいて、印字ヘッド938と加工材Wの上面とが所定距離となる様に、昇降用サーボモータ932によって昇降体934が下降される。そして、左右動サーボモータ935を駆動しつつインクを吐出することで、必要な情報を加工材Wの上面に印字することができる。印字終了後は、印字ヘッド938を元の位置へ戻すべく、サーボモータ932,935を駆動制御する。
なお、この側面印字装置930による印字については、胴付き面W2やほぞ先面W3に印字する番付け以外に、その加工材Wに取り付く相手材や金物の情報、建物における階層の情報、加工材の全長又は胴付き長、物件番号、部材番号、邸名、ハウスメーカー名などの情報も印字することができる。これらは、情報の必要度、印字可能な面積、印字可能な位置などの要因によって選択することができる。
こうして印字装置930,990による印字が終了すると、以下の様にして、加工済み材の排出動作が、以下の様にして実行される。
[長尺の加工材Wlの排出動作]
長尺の加工材Wlは、長尺材受け渡しバー968及び短尺材受け渡しバー976の上に載っている(図11のWl及び図12,図13のWaの状態)。この状態で、前後動用エアシリンダ951にロッド前進動作をさせることで、加工材Wlは上側ホイールコンベア981の先端上部に送られる。続いて、全体昇降用エアシリンダ952にロッド後退動作をさせることにより、受け渡しバー968,976は、上側ホイールコンベア981の先端部高さよりやや低い位置まで下降する。この結果、加工材Wlは、上側ホイールコンベア981の先端上部に掛かった状態となる(図12,図13のWb参照)。受け渡しバー968,971,976は、さらに少し下降する。この結果、加工材Wlは、上側ホイールコンベア981の上を、コンベアの傾斜によって転がり排出される。こうして加工材を排出したら、前後動用エアシリンダ951は後退動作し、全体昇降用エアシリンダ952は上昇動作し、受け渡しバー968,971,976は元の状態になる。
[短尺の加工材Wsの排出動作]
短尺の加工材Wsは、短尺材受け渡しバー976の上に載っている。この状態で、全体昇降用エアシリンダ952及び短尺材受け渡し部昇降用エアシリンダ953の下降動作により、加工材Wsは、下側ホイールコンベア982の先端上部に載せられる(図12のWcの状態)。短尺材受け渡しバー976は更に少し下降する。すると、加工材Wsは、下側ホイールコンベア982の上を、その傾斜によって手前に転がり排出される。こうして加工材Wsを排出したら、全体昇降用エアシリンダ952及び短尺材受け渡し部昇降用エアシリンダ953は上昇動作し、短尺材受け渡しバー976は元の状態に戻る。
上述した排出動作は、加工データに基づいて、加工済み材が、判定基準長さよりも長いか短いかを判定することにより、選択される。
次に、本実施形態に特有の印字制御の内容について説明する。実施形態における特有の印字制御系統は、図21に示す様に、側面部印字装置930及び端面部印字装置990に対して印字制御データを出力する印字制御装置1100を中心に構成されている。印字制御装置1100及び加工制御装置1200には、CAD/CAMデータ入力装置1300から、CAD/CAMデータが入力される様に構成されている。また、印字制御装置1100と加工制御装置1200との間では、互いの動作状況について、特に、印字の開始及び完了と、加工材の押し出し動作の開始・完了の情報がやり取りされる様になっている。また、印字制御装置1100及び加工制御装置1200に対して、端面部印字装置990による印字対象面を胴付き面W2とするかほぞ先面W3とするかを選択するための印字対象面選択スイッチ1400からの選択信号が入力される様にも構成されている。さらに、印字制御装置1100には、長手方向基準線L1、前後方向基準線L2、上下方向基準線L3、印字ヘッド991のレーザ光の射出中心位置の各座標位置に関するデータを記憶した機械データ記憶手段1500が備えられている。
まず、加工制御装置1200によって実行される加工制御処理の内、本実施形態に特有の部分について説明する。
図22に示す様に、加工制御装置1200は、CAD/CAMデータ入力装置1300からCAD/CAMデータを読み込むと共に(S10)、印字対象面選択スイッチ1400から端面部印字装置990による印字対象面の選択信号を読み込む(S20)。そして、CAD/CAMデータに従い、投入コンベア部100から加工機本体部300へと素材を取り込み、加工機本体部300においてCAD/CAMデータに従った加工を行い、加工材Wを取り出しコンベア部900へと送り出す(S30)。そして、S20で読み込んだ選択信号が胴付き面W2かほぞ先面W3かを判定し(S40)、選択信号が胴付き面W2であるときは、上述した「(1−2)加工材の長手方向位置決め」を実行し(S50)、一方、選択信号がほぞ先面W3であるときは、上述した「(2−2)加工材の長手方向位置決め」を実行する(S60)。そして、長手方向位置決めが完了したら、加工材押し出し装置940をストロークエンドまで押し出し(S70)、印字制御装置1100に対して押し出し完了信号を出力する(S80)。そして、印字制御装置1100から印字終了信号が入力されるのを待ち(S90)、印字終了信号が入力されたら、加工材排出動作を実行する(S100)。なお、この制御処理の間、工程間の干渉が起こらない限りは、次々と加工材の投入、加工、取り出しを実行している。工程間の干渉の有無は、加工ライン中の位置検出センサ等の検出信号により判定される。
次に、印字制御装置1100における制御処理の内容について説明する。印字制御処理においては、図23に示す様に、印字制御装置1100は、CAD/CAMデータ入力装置1300からCAD/CAMデータを読み込むと共に(S210)、印字対象面選択スイッチ1400から端面部印字装置990による印字対象面の選択信号を読み込む(S220)。また、機械データ記憶手段1500に記憶されたデータから、印字エリア993の座標を算出する(S230)。そして、印字対象面選択スイッチ1400からの選択信号に応じて、胴付き面印字データ生成処理(S240→S300)又はほぞ先面印字データ生成処理(S240→S400)を実行して印字データを生成する。また、印字対象の加工材Wに対して側面部印字装置930による印字のためのデータも従来より実施されているのと同様の方法によって生成する(S500)。そして、加工制御装置1200から押し出し完了信号が入力されると(S250:YES)、S300〜S500の処理によって生成された印字データに基づいて、端面部印字装置990を駆動制御してレーザ光による印字を実行すると共に、側面部印字装置930を駆動制御してインクジェットによる加工材Wの上面への印字を実行する(S260)。なお、端面部印字装置990に対する駆動制御は、その発振器、スキャナモータに対する駆動制御として実行され、側面部印字装置930に対する駆動制御は、そのサーボモータ932,935による印字ヘッドの移動とインクの吐出タイミングの指令として実行される。そして、これら端面部印字装置990及び側面部印字装置930による印字が終了したら、印字終了信号を加工制御装置1200に対して出力する(S270)。
ここで、本実施形態に特有の胴付き面印字データ生成処理(S300)について説明する。この処理では、図24に示す様に、まず、CAD/CAMデータから印字データ生成対象となっている加工材Wの幅及び高さと、ほぞW1の長さ、幅、高さ、位置、方向、面取り条件のデータとを読み込む(S310)。S310で読み込んだデータから、胴付き面をL1−L2−L3座標系における座標データとして特定する(S320)。ここで、L1−L2−L3座標系とは、長手方向基準線L1、前後方向基準線L2及び上下方向基準線L3を3本の直交座標軸とする三次元座標系である。続いて、面取りによってほぞの先端に形成された長方形(以下、「ほぞ先端部」という。)及び面取りによってほぞの先端から若干後方に下がった位置に形成される長方形(以下、「面取り元部」という。)について、L1−L2−L3座標系における座標データとしてそれぞれ特定する(S330)。そして、S330で特定した「ほぞ先端部」及び「面取り元部」の座標データと、端面部印字装置990のレーザ光射出中心のL1−L2−L3座標系における座標データとから、ほぞの影に相当する部分の座標データを算出する(S340)。そして、胴付き面の座標データと印字エリア993の重なった部分から、ほぞの影に相当する部分と重なる部分993aを除くことにより、当該加工材Wの胴付き面の印字可能範囲993bを算出する(S350、図17(C)のクロスハッチ参照。)。
次に、当該加工材Wの胴付き面W2に印字すべき情報に基づいて、文字の上下、文字列の方向、文字の大きさ、行数を決定する(S360)。ここで、本実施形態では、前述の様に、文字の上下は、加工材Wの下面(上下方向の基準面995)を下にした正立文字にすることとしている。また、文字列の方向は、印字可能な範囲が縦長の場合は縦書きに、横長の場合は横書きに決定することとしている。さらに、文字の大きさ及び行数は、文字数と印字可能範囲993bの面積とから、所定の判定基準に基づいて自動的に決定する様に構成してある。
一方、ほぞ先面印字データ生成処理(S400)では、図25に示す様に、まず、CAD/CAMデータから印字データ生成対象となっている加工材WのほぞW1の長さ、幅、高さ、位置、方向、面取り条件のデータとを読み込む(S410)。S410で読み込んだデータから、面取りによってほぞの先端に形成された長方形(ほぞ先端部)のL1−L2−L3座標系における座標データを特定する(S420)。そして、S420で特定した「ほぞ先端部」の座標データと印字エリア993の重なった部分として、ほぞ先面の印字可能範囲993cを算出する(S430、図19(C)のハッチング参照。)。
次に、当該加工材Wのほぞ先面W3に印字すべき情報に基づいて、文字の上下、文字列の方向、文字の大きさ、行数を決定する(S440)。ここでも、文字の上下は加工材Wの下面(上下方向の基準面995)を下にした正立文字にすることとしている。また、文字列の方向は、印字可能な範囲が縦長の場合は縦書きに、横長の場合は横書きに決定することとしている。さらに、文字の大きさ及び行数は、文字数と印字可能範囲993cの面積とから、所定の判定基準に基づいて自動的に決定する様に構成してある。
以上説明した様に、本実施形態によれば、加工材Wの胴付き面W2及びほぞ先面W3に対して、的確な印字を実行することができ、束ねた状態においても見やすい位置に番付け等の必要な情報を印字することができる。
また、本実施形態では、押し出し装置940のストロークエンドを前後方向基準線L2と加工材Wの背面(前後方向の基準面996)とが一致する構造としたので、長手方向の位置決めをした後にストロークエンドまで押し出すだけで、太い柱材Waも中位の太さの柱材Wbも細い柱材Wcも、前後方向基準線L1、長手方向基準線L2及び前後方向基準線L3によって構成される直交座標系の原点Oに下端角部を位置させて同一の象限に配置される(図26(A)参照)。また、ほぞW1の方向により、胴付き面印字可能範囲993bがほぞW1の左側になったり、上側になったりする(図26(B),(C)参照)。
さらに、上述の端面部への印字のための加工材Wのセッティング位置が、同時に側面部印字装置930による印字のためのセッティング位置となる様に、側面部印字装置930と端面部印字装置990の配置を、互いに干渉せず、かつ整合させたことから、両印字装置930,990による印字を並行して実行することができる。この結果、側面及び端面への印字を実行するにも拘わらず、印字のための時間を節約することができている。
加えて、レーザマーキング装置を用いたことにより、端面部の様な木材繊維による毛細管現象が生じ易い部位への印字であるにも拘わらず、にじみによる視認性の悪化がないという効果もある。
以上説明した実施形態(以下、「第1実施形態」という。)は、幾何学的な演算処理によって前記印字可能範囲を決定する構成を採用したものである。より具体的には、印字可能範囲を、加工情報とレーザマーキング装置の走査可能範囲との関係に基づいて、加工材配置手段によって被走査面に配置された印字対象面が占める範囲と、当該印字対象面に対する加工の内容に応じて印字対象面から除外すべき範囲と、レーザマーキング装置による走査可能範囲との重なり状況を算出することにより、印字可能範囲を決定する構成を採用している。
また、幾何学的な演算処理では、印字対象面に形成される凹入部(孔,スリット,切り欠き,面取り,溝等)や突出部(ほぞ,継ぎ手等)の占める範囲を印字対象面から除外している。さらに、この演算処理において、印字対象面に突出部が形成される場合は、突出部がレーザマーキング装置による走査光の印字対象面への到達を邪魔する影の範囲を印字対象面から除外すべき範囲としている。
第1実施形態のプレカット加工装置は、幾何学的演算処理方法を採用することにより、ほぼ全ての加工材の胴付き面又はほぞ先面に対して情報を的確に印字することが可能となり、汎用性という点で優れた作用・効果を発揮することができる。
また、第1実施形態の装置は、胴付き面及びほぞ先面のいずれかを選択して印字可能なことから、「加工材の胴付き面とほぞ先面のいずれを印字対象面とするかを選択する印字対象面選択手段を備え、加工材配置手段が、印字対象面選択手段の選択結果が胴付き面であるときは、加工材の胴付き面が被走査面と一致する様に、加工材を載置部上へ配置した後に横移動を実行し、印字対象面選択手段の選択結果がほぞ先面であるときは、加工材のほぞ先面が前記被走査面と一致する様に、加工材を載置部上へ配置した後に横移動を実行する手段として構成され、印字可能範囲決定手段を、印字対象面選択手段の選択結果が胴付き面であるときは、加工情報に基づいて、胴付き面上のほぞの影となる範囲を考慮して印字可能範囲を決定し、印字対象面選択手段の選択結果がほぞ先面であるときは、加工情報に基づいて、ほぞ先面の面取りを考慮して印字可能範囲を決定する手段として構成された装置」であるということもできる。
次に、第2実施形態を説明する。第2実施形態は、装置構成としては、前述した第1実施形態と同様である。この第2実施形態は、柱材Wの寸法情報及び端部加工情報に基づいて、規定パターンの中からの選択により、胴付き面へ印字する際の印字エリアを決定する手法を採用している。
第2実施形態のプレカット加工装置は、特に、柱材に対するものである。柱材は、通常、90mm角,105mm角,120mm角,135mm角,150mm角,180mm角のいずれかの正方形断面を呈するものとなっている。従って、加工材の端部を印字対象面とする場合、加工材配置手段による配置条件と、レーザマーキング装置の走査可能範囲Aall との関係から、ある寸法以上の加工材WXについては、自ずと、印字対象面中の偏った範囲にしか印字できない場合がある。また、柱材の胴付き面を印字対象面とするとき、胴付き面には、在来工法用の柱材であれば縦長のほぞ又は横長のほぞが形成されることがある。
この場合、縦長のほぞがある場合には、図27に示す様に、寸法によっては、自ずとほぞの左右いずれか一方の側に縦書きによる印字可能範囲を決定すべきことがある((D)〜(F)参照)。また、横長のほぞがある場合においても、図28に示す様に、寸法によっては、自ずとほぞの上下いずれか一方の側にだけ横書きによる印字可能範囲を決定すべきことがある((D)〜(F)参照)。さらに、金物工法用の柱材についても、金物取り付け用のスリットの位置や方向と寸法との関係から、印字可能範囲として決定し得る領域が自ずと決まる(図29,図30参照)。
そこで、この第2実施形態では、「レーザマーキング装置による走査可能範囲内に収まる複数の既定パターンを定めておき、この複数の既定パターンの中から、印字対象となっている加工材の加工情報に応じて選択したパターンを印字可能範囲を決定する構成」を採用したものである。
本実施形態では、レーザマーキング装置による走査可能範囲の右下端に対して加工材の右下端(機械を中心にいうときは後下端)を一致させる方法(図27(A)等を参照)を採用し、以下の様なテーブルからの検索により印字エリアを決定する手法を採用している。
本実施形態では、図31に例示する様に、胴付き面に印字するための複数の既定パターンを、縦ほぞの加工条件と加工材の寸法とから一義的に定めるための既定パターンテーブルを備えている。そして、CAD/CAMデータとして与えられる寸法と縦ほぞの加工条件とによる検索処理により、印字可能範囲を決定する構成を採用している。なお、横ほぞについても同様に既定パターンを、寸法と横ほぞの加工条件とから一義的に決定するためのテーブルを備えている(図32参照)。さらに、金物工法用にも、加工条件と加工材の寸法とをパラメータとして印字範囲を決定するためのテーブルも備えている(図33参照)。これらのテーブルから分かる様に、ほぞ及びスリットが形成される場合は、これらが縦か横かによって文字を縦書きにするか横書きにするかを決定することができる。一方、本実施形態では、金物工法におけるパイプ穴の場合は、図34に示す様に、左右方向にずれて穴開けされているときは縦書きとし、それ以外は横書きとしている。しかし、これに限らず、全て横書きとしても構わない。なお、在来工法様の柱材における角柱状のほぞの場合にもパイプ穴と同様の条件で既定パターンを定めておけばよい(図35参照)。
この第2実施形態は、具体的には、「縦ほぞ中央」、「縦ほぞ右ずれ」等の加工条件毎に見たときは、「レーザマーキング装置による走査可能範囲内に収まる複数の既定パターンを定めておき、これら複数の既定パターンの中から、印字対象となっている加工材の寸法に応じて選択したパターンを印字可能範囲として決定する構成」を採用しているものということもできる。
また、「120mm角の加工材」について見たときは、加工の種類によって印字可能範囲を変えているということができるから、第2実施形態は、「レーザマーキング装置による走査可能範囲内に収まる複数の既定パターンを定めておき、これら複数の既定パターンの中から、印字対象となっている加工材の加工内容に応じて選択したパターンを印字可能範囲として決定する構成」を採用しているということもできる。
一方、全体として見たときは、「レーザマーキング装置による走査可能範囲内に収まる複数の既定パターンを加工材の寸法及び加工の内容に対応して定めておき、これら複数の既定パターンの中から、印字対象となっている加工材の寸法及び加工の内容に応じて選択したパターンを印字可能範囲として決定する構成」を採用しているともいえる。
さらに、パイプ穴や角ほぞの場合の印字可能範囲決定手法に着目すれば、「レーザマーキング装置による走査可能範囲内に収まる複数の既定パターンを加工材の寸法及木口面への加工の位置に対応して定めておき、これら複数の既定パターンの中から、印字対象となっている加工材の寸法及び木口面への加工の位置に応じて選択したパターンを印字可能範囲として決定する構成」を採用しているともいうことができる。
次に、第3実施形態を説明する。第3実施形態も装置構成としては、前述した第1実施形態と同様である。この第3実施形態では、端部加工情報に基づいて、胴付き面へ印字する際の印字方向を決定した上で、既定パターンから印字エリアを決定する手法を採用している。
本実施形態においては、柱材の胴付き面に縦ほぞが形成されるときは、当該縦ほぞの場合にはほぞの左右のいずれかに縦長のパターンで印字するのが適切であり、当該縦ほぞが左右のいずれかに寄っているときは、より面積を大きく確保できる側に印字することとしておくのが適切であるとの考え方を基本としている。
そして、本実施形態においては、縦書き用として、図36(A)に示す様に、「左端」、「左中」、「中央」、「右中」、「右端」の5つの既定パターンを定めている。そして、加工材の配置方法としては、レーザマーキング装置による走査可能範囲の右辺から15mm右に加工材の右側面(機械を中心にいうときは後側面)を一致させる方法(図35(B)等を参照)を採用している。
従って、中心に縦ほぞあるいは縦スリットを形成する場合には、加工材の寸法によって印字可能範囲が一義的に決定できる。図示の例では、加工材の寸法によって、90mm角及び105mm角については「中央」を、120mm角及び135mm角については「左中」を、150mm角については「左端」を、180mm角については「右端」を選択する様に定めてある。
一方、横ほぞ、横スリットの場合は、全て、走査可能範囲の下部右端付近の横書き用の印字可能範囲を採用することにしている。これは、加工材の下面と走査可能範囲の下辺が一致していることから、どの寸法であっても走査可能範囲の下部右端に横書きすることが可能だからである。
従って、この第3実施形態は、縦書きか横書きかを加工情報から判断し、縦書きの場合はさらに寸法に応じて印字可能範囲を決定し、横書きの場合は、当該加工情報のみから印字可能範囲を決定する手法を採用しているのである。
なお、加工材の配置方法を求心位置を基準位置とする方法とする場合には、縦書きの場合は、90mm角及び105mm角のものに対しては「左中」、「右中」のいずれかを、120mm角以上のものについては、「左端」、「左中」、「右中」、「右端」のいずれかを選択する様に定めておくことができる。求心位置に配置する方法での横書きについては、全ての寸法に対して、「下部中央」を選択する様にしておくとよい。
即ち、第1〜第3実施形態として説明した技術事項からは、各実施形態は、「レーザマーキング装置による走査可能範囲内に収まる複数の既定パターンを定めておき、これら複数の既定パターンの中から、印字対象となっている加工材の寸法及び加工材配置手段による配置方法の基準に応じて選択したパターンを印字可能範囲として決定する構成」を採用しているということもできる。
また、第3実施形態は、例えば、180mm角の加工材への印字エリアとしては、「右中」も選択可能であるが、印字失敗を避ける意味での安全性を考慮して「右端」を選択するものであるから、「レーザマーキング装置による走査可能範囲内に収まる複数の既定パターンを定めておき、これら複数の既定パターンの中から、印字対象となっている加工材の加工情報に応じて選択したパターンを印字可能範囲として決定する構成であって、選択可能なパターンが複数あるときは、所定のルールに従って、その中の一つを選択する構成」を採用したものということもできる。
次に、第4実施形態について説明する。第4実施形態も装置構成としては、前述した第1実施形態と同様である。この第4実施形態では、端部加工情報に基づいて、胴付き面へ印字する際の印字方向を決定した上で、印字可能範囲の面積が大きい領域に印字エリアを決定する手法を採用している。
本実施形態においては、図37に示す様に、「ほぞ」、「ほぞなし」、「金物穴加工」、「金物スリット」といった加工条件毎に、縦書き・横書きのいずれを採用するかを定めたテーブルを備えており、加工情報から最初に、縦書き、横書きの別を決定する構成を採用している。これにより、縦ほぞ、縦スリットの場合は「縦書き」が、それ以外の加工条件に対しては「横書き」が選択されることになる。なお、本実施形態では、金物穴加工の場合は、「横書き」をデフォルトとするものの「縦書き」も選択可能にしてある。
こうして縦書きか横書きかを決定した後は、第1実施形態で説明したのと同様の幾何学的演算手法によって、例えば加工条件が「縦ほぞ」であればその左右における印字可能範囲の面積計算をして大きい方を採用し、そこに縦書きの印字エリアを決定していくという手法を採用している。
従って、この第4実施形態は、「ほぞが縦長か横長かによって縦長のパターンと横長のパターンのいずれかを選択し、この選択結果に基づいて印字可能範囲を決定する構成」を採用したものということができる。
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明は上述した実施の形態に限られることなく、その要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々の態様にて実施することができる。
例えば、実施形態は柱材の一方の端部(背面から見たときの左側の端部)への印字を行うものとしたが、反対側の端部へ印字するものとしてもよいし、両端部へ印字するものとすることもできる
また、柱材に限らず、横架材などについても、レーザマーキングによる印字を行う様にすることができる。横架材へのレーザマーキングでは、例えば、蟻継ぎ手や蟻溝を避けた胴付き面への印字などとして端部への印字を実施できる。
さらに、加工材の側面部に対して、レーザマーキングによって印字を行う様に構成することもできる。側面部にも、カッタ溝、丸孔、角孔等が形成されることから、これら加工の内容を考慮して印字可能範囲を決定する必要があり、本発明の構成を適用して鮮明な印字を可能にすることができる。
また、在来工法用のプレカット加工装置に限らず、金物工法用のプレカット加工装置にも本発明を適用することができる。この場合、金物工法用のプレカット加工では、ほぞの様な突出部はない変わりに、金物挿入用の溝や孔が木口面に存在することから、これら加工によって形成される溝や孔を避けて印字可能範囲を決定し、印字するという本発明の方法は有効である。
なお、金物工法及び在来工法のいずれの場合も、突出部分の根元以外の面については、溝や孔が加工される前に印字する様にしてもよい。それは、加工情報から溝や孔の位置や大きさ等を把握できるので、印字対象面における印字可能範囲は孔や溝の加工前に特定し得るからである。
加えて、印字のための加工材のセッティング方法は、ロボットアーム等によって加工材を持ち上げてセットする様にしてもよいし、押される側の反対側に面を定位置に停止させるためのストッパ機構を用いる様にしてもよい。側面部への印字にレーザマーキング装置を用いる場合には、この様なストッパ機構を用いる様にすると、位置合わせが容易である。
また、実施形態では、レーザマーキング装置は固定としたが、前後・上下・左右に移動できる様にして、より広い印字範囲を確保できる様に構成することもできる。例えば、上下・左右に移動できる様にしておき、ほぞの両側の胴付き面に対して印字することができる様にすることもできる。また、上下・左右に加えて前後へも移動できる様にすることで、胴付き面をレーザ光の集光面とすると共に、ほぞ先面をもレーザ光の集光面とし、胴付き面及びほぞ先面の両方に印字するといったことができる様にしてもよい。こうした動作を実行することによって、より多くの情報やより大きい文字が印字できる様にしてもよいのである。
なお、半ほぞの場合には、ほぞの方向に沿わずにほぞに交差する方向に文字を並べる様な印字方法を採用することとしても構わない。