JP3640618B2 - 櫛刃形の対向刃物台を有する数値制御旋盤、この数値制御旋盤によるワークの加工方法及びそのプログラム - Google Patents

櫛刃形の対向刃物台を有する数値制御旋盤、この数値制御旋盤によるワークの加工方法及びそのプログラム Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、対向する一対の櫛刃形刃物台を有する数値制御旋盤、この数値制御旋盤におけるワークの加工方法及びそのプログラムに関する。
【0002】
【従来の技術】
主軸の両側に一対の櫛刃形刃物台を配置し、この櫛刃形刃物台に複数の工具を装着して、工具を加工位置に割り出しながらワークの加工を行う数値制御旋盤が知られている。図11は、上記したような数値制御(以下、NCと略記することがある)旋盤の一例を示す概略平面図である。
このNC旋盤200は、主軸220を回転自在に支持する主軸台210と、主軸220の軸線Cの両側に配置された櫛刃形の一方の刃物台240及び他方の刃物台260とを有している。
一方の刃物台240は、図11の紙面に直交する方向であるY軸方向に移動できるようにサドル241に設けられ、他方の刃物台260は、Y軸方向に移動できるように、サドル261に設けられている。サドル241,261は、主軸軸線Cと水平面内で直交するX軸方向に移動できるように、刃物台本体230,250に設けられている。刃物台本体230,250は、主軸軸線Cと同方向のZ軸方向に移動できるように、NC旋盤のベッド201に設けられている。
【0003】
主軸220の回転中心には図示しない貫通孔が形成されていて、長尺棒状のワークWが、主軸220のこの貫通孔を挿通し、所定長さずつ送られながら、連続加工が行われるようになっている。また、ワークWは、主軸220の前方(図面の左側)に設けられたガイドブッシュ271から所定長さ先端を突出させた状態で、主軸220の先端に設けられた図示しないチャックによって把持される。
工具TL,TRは、刃物台240,260のY軸方向の移動によって加工位置に割り出され、刃物台本体230,250のZ軸方向の移動及びサドル241,261のX方向の移動の組み合わせにより、ワークWに対して位置決めがなされる。
【0004】
図12は、図11のNC旋盤を図中I方向から見た主要部分の拡大正面図である。
図示するように、対向する二つの櫛刃形の刃物台260,240には、それぞれ、複数(図示する例では3本づつ)の工具TL1〜TL3,TR1〜TR3が、刃先位置を直線上に揃えて装着されている。
このように、刃先位置を直線上に揃えて装着するのは、互いに対向する刃物台の工具との干渉を避けるためと、割り出し動作を行う際にワークと工具とが干渉しないようにするためである。
【0005】
しかしながら、上記したNC旋盤には以下のような問題がある。
(1) 一方の刃物台240の工具TL1〜TL3と他方の刃物台260の工具TR1〜TR3を切り換えながら種々の加工を行うためには、刃物台240,260に種類の異なる複数の工具TL1〜TL3,TR1〜TR3を装着する必要がある。このような工具TL1〜TL3,TR1〜TR3は、工具長や工具径、形状、大きさ等が異なるため、工具TL1〜TL3,TR1〜TR3の刃先を一様に揃えるのは容易ではない。そのため、刃物台240,260に装着することのできる工具TL1〜TL3,TR1〜TR3の種類が限定され、多種多様の加工が制限されることになる。
(2) 特に、小物ワークを加工するNC旋盤では、工具の刃先を揃えて刃物台に装着すると、対向する刃物台の工具の刃先が接近してスペースが無くなり、加工終了後に製品を回収するための回収装置等を挿入することができなくなる。
【0006】
(3) 工具の刃先を異ならせて刃物台に装着すると、短尺の工具でワークの加工を行う際に、長尺の工具が他方の刃物台の工具に干渉するおそれが生じる。そのため、他方の刃物台を十分にワークから離間させて待機させる必要があるが、一方の刃物台の工具によるワークの加工終了後に、他方の刃物台をワーク側に移動させて他方の刃物台の工具でワークの加工を開始するまでに長時間を要することになり、加工効率が低下する。
また、干渉が生じない範囲で他方の刃物台をワークに可能な限り近づけて待機させることも可能であるが、所定の工具が加工位置に割り出されるごとに干渉の生じるおそれのある工具の組を探索し、どこまでワークに接近させることができるのについての判断をオペレータが行うのは容易ではなく、かつ、加工プログラムに予め組み込むとしても面倒なプログラム作業が必要であるという問題がある。
さらに、設定ミスやプログラムミスによって工具が折損したり、ワークに傷が付いたりするなどの問題が生じるおそれもある。
【0007】
(4) 工具の割り出し動作を行う際にも、工具どうしの干渉や工具とワークとの干渉を避けるために刃物台を最も後退した位置まで移動させなければならず、一つの工具によるワークの加工時間が短いような場合には、一方の刃物台の割り出し動作中に他方の刃物台の工具による加工が終了してしまい、多大な無駄時間を生じることになって加工コストを増大させるという問題がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の問題点を一挙に解決するためになされたもので、オペレータに複雑な設定値の入力を要求することなく、かつ、通常の手順で作成された加工プログラムを用いて、最適な待機位置の決定や割り出し動作を行う後退位置の決定を自動的に行うことのできる、多種多様の加工が可能でワークの加工効率にも優れる櫛刃形の対向刃物台を有するNC旋盤、このNC旋盤によるワークの加工方法及びそのプログラムを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、対向する一対の櫛刃形刃物台を有する数値制御旋盤において、前記一対の櫛刃形刃物台の一方又は両方に刃先位置を変えて複数の工具を装着し、前記櫛刃形刃物台の移動を制御する数値制御装置が、加工プログラム中で指定された工具情報に基づいて、所定の工具を加工位置に割り出したときにおける干渉が生じる可能性がある工具の組を決定し、加工プログラム中で設定された加工情報に基づいて、今回使用する一方の櫛刃形刃物台の今回工具が最もワーク側に移動したときにおける前記工具の組ごとの工具刃先間の距離を求めるともに、次に使用する他方の櫛刃形刃物台の次回工具とワークとの距離を求め、求められたこれらの距離の中から、最小の前記距離を選択し、選択された前記最小の距離にしたがって、前記他方の櫛刃形刃物台を前記ワーク側に移動させる指令を出力する構成してある。
【0010】
この構成によれば、NC装置が加工プログラムの中で指定された工具に関する情報、例えば工具長と工具が装着されているポストとに基づいて、各工具の刃先位置を割り出すことで、干渉が生じる可能性のある工具の組を決定する。NC装置は、一方の櫛刃形刃物台の工具によるワークの加工中に、一方の櫛刃形刃物台の工具の刃先がどこまで移動するかを演算によって求め、各組ごとの刃先間の距離及び次回工具の刃先からワークまでの距離を割り出す。ここで、「距離」とは、ワーク加工の際の櫛刃形刃物台の移動方向と同方向であるX方向(図11参照)の距離をいう。
これにより、他方の櫛刃形刃物台をどこまで前進させることができるかを自動的に判断することが可能になる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、対向する一対の櫛刃形刃物台を有する数値制御旋盤において、前記一対の櫛刃形刃物台の一方又は両方に刃先位置を変えて複数の工具を装着し、前記櫛刃形刃物台の移動を制御する数値制御装置が、加工プログラム中で指定された工具情報に基づいて、各櫛刃形刃物台に装着された工具の中から工具長が最も長い最長工具を判断し、加工プログラム中の加工情報に基づいて、今回使用する一方の櫛刃形刃物台今回工具が最もワーク側に移動したときにおける各櫛刃形刃物台の前記最長工具の刃先間距離が、少なくとも0より大きくなるように、次に使用する次回工具を装着した他方の櫛刃形刃物台を前記ワーク側に移動させる指令を出力する構成としてある。
【0012】
この構成によれば、NC装置が加工プログラムの中で指定された工具に関する情報、例えば工具長に基づいて、最長工具を割り出す。NC装置は、一方の櫛刃形刃物台の工具によるワークの加工中に、一方の櫛刃形刃物台の工具の刃先がどこまで移動するかを演算によって求め、最長工具どうしの刃先間距離を割り出す。ここで、「刃先間距離」とは、ワーク加工の際の櫛刃形刃物台の移動方向と同方向であるX方向(図11参照)の距離をいう。
そして、これにより、他方の櫛刃形刃物台をどこまで前進させることができるかを自動的に判断することが可能になる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記刃先間距離が、ワークの直径Dよりも大きく、前記ワークの直径Dに所定の設定値α(α>0)を加えた値よりも小さくなるように構成してある。
このように構成すれば、ワーク加工時だけでなく、工具の割り出し時にも工具どうし及び工具とワークとが干渉することがない。設定値αは、ワークの加工形態や工具の種類等によって任意に設定することのできるもので、例えば、0.1mm等を設定することが可能である。
この発明によれば、きわめて簡単な手順で、一方の櫛刃形刃物台の工具によるワーク加工時の他方の櫛刃形刃物台の工具の待機位置、及び割り出しを行う際の櫛刃形刃物台の後退位置を決定することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、対向する一対の櫛刃形刃物台を有し、前記櫛刃形刃物台一方又は両方の櫛刃形刃物台に刃先位置を異ならせて複数の工具を装着した数値制御旋盤における前記工具によるワークの加工方法であって、加工プログラムの工具情報に基づいて、今回使用する一方の櫛刃形刃物台の今回工具を加工位置に割り出し、次に使用する他方の櫛刃形刃物台の次回工具を加工位置に割り出したときにおける前記一方の櫛刃形刃物台の工具のそれぞれに対応する前記他方の櫛刃形刃物台の対応工具を判断し、加工プログラムの加工情報に基づいて、前記今回工具によってワークを加工する際の前記今回工具の最前進位置における前記今回工具を除く他の工具の刃先位置と、前記他方の櫛刃形刃物台が後退位置にあるときの前記対応工具の刃先位置との距離を求めるとともに、前記次回工具からワークまでの距離を求め、これら距離の中から、最小の距離を選択し、選択された前記最小の距離に基づいて、前記他方の櫛刃形刃物台をワーク側に移動させて前記次回工具を前記ワークの手前で待機させる方法である。
【0015】
この方法によれば、NC装置が加工プログラムの中で指定された工具に関する情報、例えば工具長と工具が装着されているポストとに基づいて、各工具の刃先位置を割り出すことで、一方の櫛刃形刃物台の工具と干渉が生じる可能性の他方の櫛刃形刃物台の工具(対応工具)を決定する。NC装置は、一方の櫛刃形刃物台の工具によるワークの加工中に、一方の櫛刃形刃物台の工具の刃先がどこまで移動するかを演算によって求める。そして、互いに対応する工具ごとに刃先間の距離を求め、さらに、次回工具の刃先からワークまでの距離を求める。NC装置は、求められた距離の中の最も小さい距離に基づいて、他方の櫛刃形刃物台をどこまで前進させることができるかを自動的に判断することができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、前記今回工具の刃先が最前進位置において前記ワークから前記他方の櫛刃形刃物台側に突き出すかどうかを判断し、突き出すと判断した場合に、前記最前進位置における前記今回工具の刃先位置と前記他方の櫛刃形刃物台が後退位置にあるときの前記次回工具の刃先位置との距離を求める方法である。
この方法によれば、ドリルでワークの外周面に貫通穴を形成するような場合にも、本発明を適用することが可能になる。すなわち、貫通穴から突出するドリルの刃先を基準に待機位置等を決定しているので、両櫛刃形刃物台の工具が干渉することがない。
【0017】
請求項6に記載の発明は、前記今回工具によるワークの加工終了後に、前記一方の櫛刃形刃物台を前記ワークから遠ざける方向に移動させるとともに、前記一方の櫛刃形刃物台に装着された最長の工具の刃先位置と、前記他方の櫛刃形刃物台に装着された最長の工具の刃先位置との距離が、少なくとも予め設定された距離を保つ位置で、前記一方の櫛刃形刃物台の割り出しを行う方法である。
この場合、請求項7に記載するように、二つの櫛刃形刃物台に装着された前記最長の工具の刃先間距離が、今回工具によるワークの加工を開始する際のワーク直径Dよりも大きく、前記ワーク直径Dに所定の設定値α(α>0)を加えた値よりも小さいものとするとよい。
このようにすることで、割り出しの際にも、工具どうしが干渉したり、工具とワークとが干渉したりすることがない。
【0018】
請求項8に記載の発明は、前記次回工具が、前記ワークから前記一方の櫛刃形刃物台側に突き出すことが無い場合に、前記今回工具によるワークの加工終了後に、前記一方の櫛刃形刃物台を前記ワークから遠ざける方向に移動させるとともに、前記一方の櫛刃形刃物台に装着された最長の工具の刃先位置と、前記ワークの軸心との距離が、少なくとも前記次回工具による前記ワークの加工開始の際における前記ワークの半径よりも所定の設定値α(α>0)だけ大きい位置で、前記一方の櫛刃形刃物台の割り出しを行う方法である。
この方法によれば、割り出しを行う櫛刃形刃物台の工具とワークとが干渉しない最小位置で、櫛刃形刃物台の割り出し動作を行うことが可能になり、ワークの加工時間が短いような場合でも、無駄時間を最小にしたり、無くしたりすることができる。
【0019】
請求項9に記載の発明は、前記今回工具によるワークの加工終了後、前記次回工具によるワークの加工中に、前記今回工具を装着した前記一方の櫛刃形刃物台を後退させて割り出しを行う場合において、両櫛刃形刃物台の最長工具を判断し、前記次回工具によるワークの加工中の前記他方の櫛刃形刃物台の最大移動量を求め、前記他方の櫛刃形刃物台が最もワーク側に移動した位置における前記他方の櫛刃形刃物台の前記最長工具の刃先がワークから前記一方の櫛刃形刃物台側に突出するかどうかを判断し、突出しないと判断した場合には、前記一方の櫛刃形刃物台の後退位置をワークの軸心から少なくともワークの半径よりも大きい位置に設定し、突出すると判断した場合は、前記最前進位置にある前記他方の櫛刃形刃物台の最長工具の刃先と干渉しない位置に前記後退位置を設定した方法である。
【0020】
この方法によれば、両櫛刃形刃物台の工具どうし及び工具とワークとが干渉しない最小の後退位置に一方の櫛刃形刃物台を後退させて割り出し動作を行うことが可能になり、次回工具によるワークの加工時間が短い場合でも、割り出した工具を迅速にワークに向けて移動させて加工を開始させることができ、無駄時間を短縮したり、無くしたりすることができる。
【0021】
請求項10に記載の発明は、前記今回工具によるワークの加工終了後、前記次回工具によるワークの加工中に、前記今回工具を装着した前記一方の櫛刃形刃物台を後退させて割り出しを行う場合において、前記一方の櫛刃形刃物台に装着された最長の工具の刃先位置と、前記他方の櫛刃形刃物台に装着された最長の工具の刃先位置との距離が、前記次回工具によるワーク加工開始の際におけるワークの直径Dよりも大きく、この直径Dに所定の設定値α(α>0)を加えた値よりも小さくなる位置で割り出しを行う方法である。
最長工具どうしの刃先間距離を少なくともワークの直径以上に保つことで、ワークの加工中において割り出し動作を行っても、両櫛刃形刃物台の工具どうしが干渉したり、工具とワークとが干渉したりすることはない。この方法によれば、最も簡単な手法で、工具どうしや工具とワークとの干渉を回避しつつ、無駄時間の短縮を図ることができるという利点がある。
【0022】
請求項11に記載の発明は、対向する一対の櫛刃形刃物台を有し、前記一対の櫛刃形刃物台の一方又は両方に刃先位置を変えて複数の工具を装着した数値制御旋盤における前記工具によるワークの加工方法であって、今回使用する一方の櫛刃形刃物台の今回工具によってワークを加工する際に、次回使用する次回工具を装着した前記他方の櫛刃形刃物台をワークに向けて移動させ、前記今回工具の最前進位置において、前記一方の櫛刃形刃物台に装着された最長の工具の刃先位置と、前記他方の櫛刃形刃物台に装着された最長の工具の刃先位置との距離が、前記今回工具によるワーク加工開始の際における前記ワークの直径Dよりも大きく、この直径Dに所定の設定値α(α>0)を加えた値よりも小さくなる位置で、前記他方の櫛刃形刃物台を停止させ、前記次回工具を待機させたこと方法である。
【0023】
最長工具どうしの刃先間距離を少なくともワークの直径以上に保つことで、ワークの加工中及び割り出し動作時において、両櫛刃形刃物台の工具どうしが干渉したり、工具とワークとが干渉したりすることはない。この方法によれば、最も簡単な手法で、工具どうしや工具とワークとの干渉を回避しつつ、無駄時間の短縮を図ることができるという利点がある。
【0024】
請求項12に記載の発明は、対向する一対の櫛刃形刃物台を有し、前記櫛刃形刃物台の一方又は両方に刃先位置を変えて複数の工具を装着した数値制御旋盤の数値制御装置に読み込まれ、ワークの加工を行うための加工プログラムの中から必要事項を抽出して上記請求項4〜11のいずれかに記載の加工方法を実行するプログラムである。
このプログラムは、FD、CD、ROM、RAM及びHD等の記憶媒体からNC装置に読み込ませることが可能であるが、通信回線を介してNC装置に読み込ませることも可能である。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
なお、以下の説明で「待機位置」とは、今回工具によるワークの加工中において、次回工具が停止状態で待機している位置をいい、「後退位置」とは、刃物台が割り出し動作を行う位置をいうものとする。
【0026】
[NC旋盤の説明]
図1は本発明の一実施形態にかかるNC旋盤の概略図である。
図1に示すように、主軸台3に回転自在に主軸4が支持され、この主軸4の先端に図示しないチャックが設けられている。ワークWは、このチャックによって把持されて、主軸4に保持される。
主軸4の両側には、一対の櫛刃形の刃物台1,2が配置されている。一方の刃物台1は、主軸軸線と直交する平面内でX1軸方向及びY1軸方向に移動自在である。また、他方の刃物台2は、X1軸方向と同方向のX2軸方向及びY1軸方向と同方向のY2軸方向に移動自在である。刃物台1のX1軸方向の移動及びY1軸方向の移動、刃物台2のX2軸方向及びY2軸方向の移動は、図示しないNC装置によって制御される。
【0027】
刃物台1には、複数の工具TL1〜TL3(これらをTLと総称することがある)が装着され、刃物台2には、複数の工具TR1〜TR3(これらをTRと総称することがある)が装着される。図1に示す刃物台1,2には、各々三本の工具TL1〜TL3,TR1〜TR3が装着されているが、三本以上であってもよいことは勿論である。また、刃物台1,2には、バイト等の切削工具の他に、ドリル等の回転工具を装着することも可能である。
これら工具TL1〜TL3及び工具TR1〜TR3は、刃先位置を異ならせて刃物台1,2に装着される。
そして、X1軸方向の移動によって刃物台1の工具TL1〜TL3の中のいずれか一つが、ワークWの加工位置Aに割り出され、X2軸方向の移動によって刃物台2の工具TR1〜TR3の中のいずれか一つが、ワークWの加工位置Bに割り出される。この割り出し動作は、この実施形態では、刃物台1,2を最もワークWから後退させた位置(以下、最後退位置という。この位置を各刃物台1,2の原点位置GL0,GR0とする)で行われる。
【0028】
本発明のNC旋盤では、一方の刃物台1の工具TL(例えば工具TL2)でワークWの加工を行っている間に、他方の刃物台2の工具TR1〜TR3が、工具TL1〜TL3に干渉しない範囲内で、前記最後退位置からワークWに可能な限り接近して待機し、一方の刃物台1の工具TL1でのワークWの加工終了後に、可能な限り短時間で他方の刃物台2の工具TR(例えば工具TR2)でワークWの加工を開始できるように、NC装置によって刃物台2の待機位置が決定される。
NC装置によるこの待機位置決定の手順を、図2〜図4を参照しながら説明する。
【0029】
[待機位置決定の手順の説明]
図2は、他方の刃物台の待機位置を決定するための手順を説明するフローチャート、図3は、一方の刃物台の工具と、他方の刃物台の工具の対応関係を求めるための一手法を模式的に示した図、図4は、図2のフローチャートのステップS12〜ステップS18までの処理を行う場合における、両刃物台及び各工具の位置関係を説明する図である。
まず、NC装置は、加工プログラムに基づいて、今回使用する刃物台1の工具と、次に使用する刃物台2の工具とを判断する(ステップS11)。この判断は、加工プログラム中に含まれる工具指定コード(例えば、Tコード)によって行うことができる。
【0030】
加工プログラムには、刃物台1,2のどのポストに工具TL1〜TL3,TR1〜TR3が装着されているかの情報が含まれている。そのため、NC装置は、一方の刃物台1及び他方の刃物台2のそれぞれについて、一つの工具(例えば工具TL2,TR2)が加工位置A,B(図1参照)に割り出されたときに、一方の刃物台1の工具TL1〜TL3のそれぞれに対向して位置する他方の刃物台2の工具(対応工具)が何であるかを判断することができる(ステップS12)。ここで、「対応工具」とは、今回工具である工具TL2でワークWの加工を行っているときに、次回工具である工具TR2をワークW側に移動させた場合、刃物台1の工具TL1,TL3と干渉が生じるおそれがある他方の刃物台2の工具TR1,TR3をいう。
この判断を行うときの考え方を簡単に示したものが図3である。
【0031】
図3(a)は、一方の刃物台1で今回工具として工具TL2が割り出され、他方の刃物台2で次回工具として工具TR2が割り出された場合を示している。
図3(a)の図から、工具TL1の対応工具が工具TR1であり、工具TL3の対応工具が工具TR3であることがただちに判断できる。
図3(b)は、一方の刃物台1で今回工具として工具TL2が割り出され、他方の刃物台2で次回工具として工具TR3が割り出された場合を示している。
図3(b)の図から、工具TL1の対応工具が工具TR2であり、工具TL3については対応工具が存在せず、干渉を考慮しなくてもよいことがただちに判断できる。
【0032】
図3(c)は、一方の刃物台1で今回工具として工具TL3が割り出され、他方の刃物台2で次回工具として工具TR1が割り出された場合を示している。
図3(c)の図から、工具TL1、工具TL2については対応工具が存在せず、これらについては干渉を考慮しなくてもよいことがただちに判断できる。
図3に示した考え方は、刃物台1,2に装着される工具が4本以上の場合であっても適用が可能である。また、刃物台1,2に装着される工具TL、TRの本数が異なる場合であっても適用が可能である。そして、図3に示すような考え方を利用することで、干渉を生じるおそれのある工具(互いに対応関係にある工具)の組み合わせを、簡単かつ迅速に求めることができる。
【0033】
図2に示すように、NC装置は、ステップS12で対応工具を判断した後に、今回工具である工具TL2の最大移動量、すなわち刃物台1の最大移動量を演算によって求める(ステップS13)。ここで、「最大移動量」とは、刃物台1が最後退位置から、工具TL2によるワークWの加工が終了したときにおける刃物台1の最前進位置(図1の仮想線で示す位置)まで移動する距離ML2をいう。
次に、次回工具である工具TR2を除く他方の刃物台2の工具TR1,TR3の刃先位置を、他方の刃物台2の最後退位置を基準に求め、この工具TR1,TR3の刃先位置と、一方の刃物台1が最前進位置にあるときの、一方の刃物台1の工具TL1,TL3の刃先位置との距離を求める(ステップS14)。
【0034】
また、NC装置は、今回工具である工具TL2が、ドリルなどのような、ワークWを突き抜けて加工する工具かどうかを、加工プログラムの中から判断する(ステップS15)。これは、Tコード等によって指定された工具TL2の種類と工具長、ワークWの径、一方の刃物台1の最大移動量ML2から判断することができる。
ステップS15で、今回工具である工具TL2がバイト等のような工具で、ワークWを突き抜けて加工するような工具でないと判断された場合、工具TL2とワークWとの距離を演算する(ステップS17)。
今回工具である工具TL2がドリルなどのような回転工具であり、ワークWを突き抜けて加工するような工具であると判断された場合には、最大前進位置における工具TL2の刃先と次回工具である工具TR2の刃先との距離を演算によって求める(ステップS16)。
【0035】
次いで、ステップS14〜S17の中で求められた一つ又は複数の距離の中から、最も小さいものを選択する(ステップS18)。そして、選択された距離に基づいて、次回工具である工具TR2の待機位置を決定する(ステップS19)。
この待機位置決定の手順を、図3及び図4を参照しながら、さらに具体的に説明する。
図3に示すように、NC装置は、各刃物台1,2の工具TL,TRの対応関係を判断するとともに、互いに対応関係にある工具TL1〜TL3,TR1〜TR3の刃先間の距離及び次回工具とワークとの間の距離を、距離▲1▼▲2▼▲3▼のように指定する。ここで、距離▲1▼▲2▼▲3▼は、ワークWの加工を行う際の刃物台1,2の移動方向と同方向であるX方向の距離をいう。
【0036】
例えば、図3(a)に示す例では、互いに対応関係にある工具TL1と工具TR1との刃先間距離を距離▲1▼として指定し、工具TL3と工具TR3との刃先間距離を距離▲3▼として指定する。さらに、ワークWと次回工具である工具TR2の刃先との距離を距離▲2▼として指定する。
図3(b)に示す例では、互いに対応関係にある工具TL1と工具TR2との刃先間距離を距離▲1▼として指定し、ワークWと次回工具である工具TR3の刃先との距離を距離▲2▼として指定する。
図3(c)に示す例では、互いに対応関係にある工具が存在しないので、ワークWと次回工具である工具TR1の刃先との距離を距離▲1▼として指定する。
【0037】
上記した距離▲1▼▲2▼▲3▼の値は、以下のようにして求めることができる。
各工具TL1〜TL3,TR1〜TR3の工具長l1〜l3,r1〜r3は、予め加工プログラム中に工具情報として含まれている。したがって、図4(a)に示すように、刃物台1,2の原点位置GL0,GR0を基準にした各工具TL1〜TL3,TR1〜TR3の刃先位置、刃物台1,2が所定距離移動したときの各工具TL1〜TL3,TR1〜TR3の刃先位置は、演算によって求めることができる。
【0038】
図4(b)に示すように、今回工具である工具TL2が一方の刃物台1とともに最前進位置まで移動したとする。このときの刃物台1の移動量は、最大移動量ML2であるから、各工具TL1〜TL3,TR1〜TR3の刃先の座標位置から、互いに対応関係にある工具TL1と工具TR1との刃先間の距離▲1▼、工具TL3と工具TR3との刃先間の距離▲3▼を求めることができる。
具体的には、図4(b)に示す状態での距離▲1▼は、原点位置GL0,GR0間の距離L0から、工具TL1と工具TR1の工具長l1,r21及び一方の刃物台2の最大移動量ML2を差し引けばよい。すなわち、L0−(l1+r1+ML2)により求めることができる。
同様にして図4(b)に示す状態での距離▲3▼も、L0−(l3+r3+ML2)により求めることができる。
【0039】
また、図4(b)に示す状態でのワークWと次回工具である工具TR2の刃先との距離▲2▼は、今回工具である工具TL2によるワークWの加工を行う前のワーク直径Dに基づいて、原点位置GR0とワークWの軸心との距離R1から工具TR2の工具長r2とD/2を差し引くことによって求めることができる。すなわち、距離▲2▼は、R1−(r2+D/2)である。
なお、今回工具である工具TL2がワークWを突き抜けて刃物台2側に突出するようなドリルのようなものである場合については、図2のステップS16に示したように、最前進位置における今回工具の刃先と次回工具の刃先との間の距離を演算によって求めるが、この点については、後に具体例を挙げて説明する。
【0040】
上記のようにして距離▲1▼,▲2▼,▲3▼が求まれば、ステップS18に示したように、この距離▲1▼,▲2▼,▲3▼を比較して、最も小さい距離を選択する。図4に示す例では、距離▲2▼が最も小さいので、この距離▲2▼を選択する。
刃物台2は、最後退位置から距離▲2▼−αだけ、ワークW側に移動することが可能である。αは工具TRの種類やワークWの加工形態等に応じて任意に設定することができる設定値で、0より大きく、可能な限り小さい値であるのが好ましい。例えば、ワークWの外周面の仕上げをバイト等の工具で行うような場合には、0.3mm〜0.5mm程度を選択するのが好ましい。このようにすることで、次回工具を、ワークWの表面から近接した距離(設定値αに等しい)のところで待機させることが可能で、今回工具から次回工具への切り換えを短時間で行うことが可能になる。
設定値αは、対話型の画面をとおしてオペレータが入力を行うようにしてもよいし、予め加工プログラムに組み込むものとしてもよい。また、NC装置やNC旋盤のメーカーが、初期設定として予め設定するものとしてもよい。
【0041】
[他の加工例の説明]
図4では、今回工具として工具TL2が割り出され、次回工具として工具TR2が割り出された場合について説明した。以下、図5及び図6を参照しながら、他の工具が加工位置に割り出された場合について説明する。
図5及び図6の各図において、(a)は刃物台1,2が最後退位置にある場合を示し、(b)は一方の刃物台1が再前進位置まで移動した場合を示し、(c)は干渉を生じない範囲で他方の刃物台2をワークW側に移動させた場合を示している。
図5に示す例では、今回工具として切削工具である工具TL2と、次回工具として切削工具である工具TR3を所定位置に割り出す。
このとき、干渉を考慮しなければならない工具は、図3に示すように、工具TL1と工具TR2である。工具TL3については、対向する位置に他方の刃物台2の工具が存在しないので、干渉は考慮しなくてもよい。
NC装置は、互いに対応関係にある工具TL1と工具TR2との刃先間の距離を距離▲1▼として指定し、ワークWと工具R2の刃先との間の距離を距離▲2▼として指定する。
【0042】
上記で説明したように、L0−(l1+r2+ML2)によって図5(b)に示す状態での距離▲1▼を求め、R1−(r3+D/2)によって図5(b)に示す状態での距離▲2▼を求めることができる。そして、距離▲1▼,▲2▼の大きさを比較し、どちらか小さい方を選択する。図5に示す例では、距離▲1▼<距離▲2▼であるため、距離▲1▼−α(設定値αは例えば0.3mm〜0.5mm)だけ、刃物台2を原点位置GR0からワークWに向けて移動させる。
これにより、次回工具である工具TR3は、ワークWから(距離▲2▼−距離▲1▼+α)離れたところで待機する。この待機位置は、図4に示した加工例の場合よりもワークWからの距離が大きいが、工具TL2の加工中において一方の刃物台1の工具TL1,TL3と他方の刃物台2の工具TR1,TR2が干渉しない最小の距離のところである。
【0043】
図6に示す例では、今回工具としてドリルである工具TL2と、次回工具として切削工具である工具TR3を所定位置に割り出す。
このとき、干渉を考慮しなければならない工具は、図3に示すように、工具TL1と工具TR2である。
上記の場合と同様に、図6(b)に示す状態において、互いに対応関係にある工具TL1と工具TR1との間の距離▲1▼を求める。ドリルTL2は、ワークWを径方向に貫通して、先端が所定長さ刃物台2側に突出するので、図2のフローチャートのステップS15の判断に従い、最前進位置における工具TL2の刃先と工具TR3の刃先との間の距離(図6(b)に示す状態における距離▲2▼)を求める。
【0044】
この場合の距離▲2▼は、L0−(ML2+l2+r3)から求めることができる。
そして、距離▲1▼,▲2▼の大きさを比較し、どちらか小さい方を選択する。図6に示す例では、距離▲1▼>距離▲2▼であるため、距離▲2▼−α(設定値αは例えば0.3mm〜0.5mm)分だけ、刃物台2をワークWに向けて移動させる。
これにより、刃物台1の工具TL1,TL2と刃物台2の工具TR2,TR3とが干渉しない距離のところまで、刃物台2をワークW側に近づけて、工具TR3を待機させることができる。
【0045】
[刃物台の割り出し]
上記のNC旋盤及び加工方法の説明では、刃物台1,2の割り出しはそれぞれ最後退位置で行うものとして説明した。しかし、最後退位置での割り出しには多大な無駄時間をともなうことは、先にも述べたとおりである。以下の説明では、このような無駄時間を可能な限り短縮する刃物台1,2の割り出し動作について、図7及び図8を参照しながら説明する。
図7は、この実施形態の割り出し動作の手順を説明するフローチャート、図8は、図7のフローチャートに従って割り出し動作を行う際の、両刃物台及び各工具の位置関係を説明する概略図である。
【0046】
最初に、図8(a)に示すように、刃物台2の最長の工具TR2の刃先がワークWから刃物台1側に突出しない場合について説明する。
割り出しを行う際に、NC装置は、刃物台1の工具TL1,TL2,TL3のうち、最も長い工具TL1の刃先位置を判断するとともに、刃物台2の工具TR1,TR2,TR3のうち、最も長い工具TR2の刃先位置を判断する(ステップS31,S32)。最長の工具TL1,TR2の刃先位置は、刃物台1,2の現在位置(工具TL2によるワークWの加工が終了したときの位置)と、工具長l1,r2とから求めることができる。
【0047】
次いで、工具TR2によってワークWの加工を行う際の、刃物台2の最大移動量MR2を、加工プログラムに基づいて求める(ステップS33)。
この最大移動量MR2から、最長工具である工具TR2が最前進位置でワークWから刃物台1側へ突出するかしないかを判断する(ステップS34)。図8(a)の例では、工具TR2は最前進位置でワークWから刃物台1側へ突出しないから、刃物台1の最長工具である工具TL1の刃先が、ワークWの軸心から距離σ1だけ離間する位置まで、刃物台1を後退させる(ステップS35)。距離σ1は、ワークWの直径をDとした場合に、D/2+α(α>0)とするとよい。αは工具の種類等に応じて任意に設定することができる設定値で、可能な限り0に近い値であるのが好ましい。例えば、工具がバイト等の切削工具である場合には、0.3mm〜0.5mm程度を選択するのが好ましい。
そして、この位置で刃物台1の割り出し動作を行う(ステップS37)。最長の工具TL1がワークWよりも原点位置GL0側に引っ込んでいるので、刃物台1の工具TL1〜TL3とワークWとが干渉することはない。
【0048】
次いで、図8(b)に示すように、刃物台2の最長の工具TR3がワークWから刃物台1側に突出する場合について説明する。
この場合は、刃物台1の最長の工具TL1と刃物台2の最長の工具TR3とが干渉しない位置まで、刃物台1を後退させる必要がある。ステップS31〜S34までは先の説明と同様である。ステップ34で、加工プログラムから、工具TR3がワークWから刃物台1側に突出すると判断したときは、刃物台2が最前進位置まで移動したときの工具TR3の刃先位置からσ2だけ離間した位置に、工具TL1の刃先が位置するように、刃物台1を後退させる(ステップS36)。
【0049】
そして、この位置で、刃物台1の割り出し動作を行う(ステップS37)。
距離σ2は、0に近い可能な限り小さい値であるのが好ましい。例えば、0.1mm程度とするとよい。
最長の工具TL1はワークWよりも原点位置GL0側に引っ込んでいて、かつ、最長の工具TR3との間でも間隙が保たれているので、刃物台1の工具TL1〜TL3とワークWとが干渉することはなく、かつ、刃物台1の工具TL1〜TL3と刃物台2の工具TR1〜TR3とが干渉することもない。
【0050】
[第二の実施形態]
次に、本発明の第二の実施形態を図9及び図10を参照しながら説明する。
図9は、この実施形態のNC旋盤における刃物台2の待機位置を決定する手順を説明するためのフローチャート、図10は、刃物台1,2及び各工具TL1〜TL3,TR1〜TR3の位置関係を説明する図である。
先の実施形態と同様に、今回工具と次回工具の指定を行い(ステップS51)、図3で示したものと同様の手法で対応工具を決定する(ステップS52)。また、加工プログラムに基づいて、今回工具である工具TL2によってワークWの加工を行う際の、一方の刃物台1の最大移動量を演算によって求める(ステップS53)。
【0051】
また、加工プログラムのTコード等に基づいて、一方の刃物台1に装着された工具TL1〜TL3の中から、工具長が最も長い最長工具を求め、同様に、他方の刃物台2に装着された工具TR1〜TR3の中から工具長が最も長い最長工具を求める(ステップS54)。なお、この実施形態では、図10に示すように、最長工具は工具TL1と工具TR3であるとして説明する。
そして、原点位置GL0,GR0を基準として、工具TL1の工具長l1と工具TR3の工具長r3とから、各刃物台1,2の工具TL1,TR3の刃先位置を求める(ステップS55)。
次いで、今回工具である工具TL2でワークWの加工を行う場合の、刃物台1の最大移動距離ML2を加工プログラムから求める(ステップS56)。
【0052】
最後に、刃物台1とともに工具TL2が最大移動距離ML2だけ移動したときの工具TL1の刃先位置から、所定の距離σだけ離れた位置に、工具TR3の刃先が位置するように、工具TR3の待機位置を決定する。前記距離σは、少なくとも今回工具TL2によるワークWの加工開始前におけるワークWの直径Dに、任意の設定値αを加えた距離とするのがよい。すなわち、σ=D+αである。なお、設定値αは、工具の種類やワークの加工形態等に応じて任意に設定するとよく、0より大きい値であって、可能な限り小さい値であるのが好ましい。例えば、ワークWの外周面の仕上げをバイト等の工具で行うような場合には、0.3mm〜0.5mm程度とするのが好ましい。
【0053】
図10は、この実施形態における作用を説明する図で、図10(a)は今回工具である工具TL2でワークWの加工を行う場合を示し、図10(b)は、今回工具である工具TL2でワークWの加工を行っている間に、刃物台2の割り出し動作を行う場合を示し、図10(c)は次回工具である工具TR3でワークWの加工を行っている間に、刃物台1の割り出し動作を行う場合を示している。
【0054】
図10に示すように、この実施形態では、最長工具TL1,TR3の刃先間距離を、少なくともワークWの直径Dより大きい距離に保っているので、ワークWの加工中のみならず割り出し動作を行う際にも、両刃物台1,2の工具TL1〜TL3及び工具TR1〜TR3が干渉したり、工具とワークWとが干渉したりすることはない。この方法によれば、最も簡単な手法で、無駄時間の短縮を図ることができるという利点がある。
【0055】
本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は上記の実施形態により何ら限定されるものではない。
例えば、第一の実施形態において、最長工具の刃先間距離を少なくともワークWの直径D以上に保つという手法を、刃物台1の工具TLによるワークWの加工終了後、刃物台2の工具TRによるワークWの加工中に、刃物台1の割り出しを行う場合に適用することで、工具TLと工具TR、工具TLとワークWとの干渉を生じることなく、割り出し動作を行うことができる。
【0056】
【発明の効果】
本発明は上記のように構成されているので、刃物台に装着する工具の刃先を揃える必要がなくなり、装着することのできる工具の種類を大幅に増やすことができ、これらの工具を用いて多種多様の加工を行うことが可能になるうえ、無駄時間を短縮することができる。
また、特に、小物ワークを加工する場合においても、対向する櫛刃形刃物台の工具と工具の間に所定のスペースを確保することができ回収装置等を挿入することが容易になる。
さらに、一方の刃物台の工具によるワークの加工中における他方の刃物台の工具の最適な待機位置、割り出し時の後退位置を自動的に決定することができ、オペレータに複雑な設定値の入力を要求したり、加工プログラム作成の際に複雑なプログラムを組んだりする必要もない。
したがって、本発明によれば、今まで以上に多種多様の加工が可能になり、ワークの加工効率にも優れるNC旋盤、このNC旋盤によるワークの加工方法及びそのプログラムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態にかかるNC旋盤の概略図である。
【図2】他方の刃物台の待機位置を決定するための手順を説明するフローチャートである。
【図3】一方の刃物台の工具と、他方の刃物台の工具の対応関係を求めるための一手法を模式的に示した図である。
【図4】図2のフローチャートのステップS12〜ステップS18までの処理を行う場合における、両刃物台及び各工具の位置関係を説明する図である。
【図5】本発明によるワーク加工の他の例を示す概略図である。
【図6】本発明によるワーク加工のさらに他の例を示す概略図である。
【図7】この実施形態における刃物台の割り出し動作の手順を説明するフローチャートである。
【図8】割り出し動作を行う際の両刃物台及び各工具の位置関係を説明する概略図である。
【図9】本発明の第二の実施形態にかかり、他方の刃物台の待機位置を決定するための手順を説明するフローチャートである。
【図10】両刃物台及び各工具の位置関係を説明する図である。
【図11】対向して一対の櫛刃形刃物台を有するNC旋盤の概略構成を説明する平面図である。
【図12】図11のNC旋盤を図中I方向から見た主要部分の拡大正面図である。
【符号の説明】
1 一方の刃物台
2 他方の刃物台
3 主軸台
4 主軸
TL,TL1〜TL3 一方の刃物台の工具
TR,TR1〜TR3 他方の刃物台の工具
W ワーク
GL0 一方の刃物台の原点位置
GR0 他方の刃物台の原点位置

Claims (12)

  1. 対向する一対の櫛刃形刃物台を有する数値制御旋盤において、
    前記一対の櫛刃形刃物台の一方又は両方に刃先位置を変えて複数の工具を装着し、
    前記櫛刃形刃物台の移動を制御する数値制御装置が、加工プログラム中で指定された工具情報に基づいて、所定の工具を加工位置に割り出したときにおける干渉が生じる可能性がある工具の組を決定し、加工プログラム中で設定された加工情報に基づいて、今回使用する一方の櫛刃形刃物台の今回工具が最もワーク側に移動したときにおける前記工具の組ごとの工具刃先間の距離を求めるともに、次に使用する他方の櫛刃形刃物台の次回工具とワークとの距離を求め、求められたこれらの距離の中から、最小の前記距離を選択し、選択された前記最小の距離にしたがって、前記他方の櫛刃形刃物台を前記ワーク側に移動させる指令を出力すること、
    を特徴とする櫛刃形の対向刃物台を有する数値制御旋盤。
  2. 対向する一対の櫛刃形刃物台を有する数値制御旋盤において、
    前記一対の櫛刃形刃物台の一方又は両方に刃先位置を変えて複数の工具を装着し、
    前記櫛刃形刃物台の移動を制御する数値制御装置が、加工プログラム中で指定された工具情報に基づいて、各櫛刃形刃物台に装着された工具の中から工具長が最も長い最長工具を判断し、加工プログラム中の加工情報に基づいて、今回使用する一方の櫛刃形刃物台今回工具が最もワーク側に移動したときにおける各櫛刃形刃物台の前記最長工具の刃先間距離が、少なくとも0より大きくなるように、次に使用する次回工具を装着した他方の櫛刃形刃物台を前記ワーク側に移動させる指令を出力することを特徴とする櫛刃形の対向刃物台を有する数値制御旋盤。
  3. 前記刃先間距離が、ワークの直径Dよりも大きく、前記ワークの直径Dに所定の設定値α(α>0)を加えた値よりも小さいことを特徴とする請求項2に記載の櫛刃形の対向刃物台を有する数値制御旋盤。
  4. 対向する一対の櫛刃形刃物台を有し、前記櫛刃形刃物台一方又は両方の櫛刃形刃物台に刃先位置を異ならせて複数の工具を装着した数値制御旋盤における前記工具によるワークの加工方法であって、
    加工プログラムの工具情報に基づいて、今回使用する一方の櫛刃形刃物台の今回工具を加工位置に割り出し、
    次に使用する他方の櫛刃形刃物台の次回工具を加工位置に割り出したときにおける前記一方の櫛刃形刃物台の工具のそれぞれに対応する前記他方の櫛刃形刃物台の対応工具を判断し、
    加工プログラムの加工情報に基づいて、前記今回工具によってワークを加工する際の前記今回工具の最前進位置における前記今回工具を除く他の工具の刃先位置と、前記他方の櫛刃形刃物台が後退位置にあるときの前記対応工具の刃先位置との距離を求めるとともに、前記次回工具からワークまでの距離を求め、
    これら距離の中から、最小の距離を選択し、
    選択された前記最小の距離に基づいて、前記他方の櫛刃形刃物台をワーク側に移動させて前記次回工具を前記ワークの手前で待機させること、
    を特徴とするワークの加工方法。
  5. 前記今回工具の刃先が最前進位置において前記ワークから前記他方の櫛刃形刃物台側に突き出すかどうかを判断し、突き出すと判断した場合に、前記最前進位置における前記今回工具の刃先位置と前記他方の櫛刃形刃物台が後退位置にあるときの前記次回工具の刃先位置との距離を求めることを特徴とする請求項4に記載のワークの加工方法。
  6. 前記今回工具によるワークの加工終了後に、前記一方の櫛刃形刃物台を前記ワークから遠ざける方向に移動させるとともに、前記一方の櫛刃形刃物台に装着された最長の工具の刃先位置と、前記他方の櫛刃形刃物台に装着された最長の工具の刃先位置との距離が、少なくとも予め設定された距離を保つ位置で、前記一方の櫛刃形刃物台の割り出しを行うことを特徴とする請求項4又は5に記載のワークの加工方法。
  7. 二つの櫛刃形刃物台に装着された前記最長の工具の刃先間距離が、前記今回工具によるワークの加工を開始する際のワーク直径Dよりも大きく、前記ワーク直径Dに所定の設定値α(α>0)を加えた値よりも小さいことを特徴とする請求項6に記載のワークの加工方法。
  8. 前記次回工具が、前記ワークから前記一方の櫛刃形刃物台側に突き出すことが無い場合に、前記今回工具によるワークの加工終了後に、前記一方の櫛刃形刃物台を前記ワークから遠ざける方向に移動させるとともに、前記一方の櫛刃形刃物台に装着された最長の工具の刃先位置と、前記ワークの軸心との距離が、少なくとも前記次回工具による前記ワークの加工開始の際における前記ワークの半径よりも所定の設定値α(α>0)だけ大きい位置で、前記一方の櫛刃形刃物台の割り出しを行うことを特徴とする請求項4又は5に記載のワークの加工方法
  9. 前記今回工具によるワークの加工終了後、前記次回工具によるワークの加工中に、前記今回工具を装着した前記一方の櫛刃形刃物台を後退させて割り出しを行う場合において、両櫛刃形刃物台の最長工具を判断し、前記次回工具によるワークの加工中の前記他方の櫛刃形刃物台の最大移動量を求め、前記他方の櫛刃形刃物台が最もワーク側に移動した位置における前記他方の櫛刃形刃物台の前記最長工具の刃先がワークから前記一方の櫛刃形刃物台側に突出するかどうかを判断し、突出しないと判断した場合には、前記一方の櫛刃形刃物台の後退位置をワークの軸心から少なくともワークの半径よりも大きい位置に設定し、突出すると判断した場合は、前記最前進位置にある前記他方の櫛刃形刃物台の最長工具の刃先と干渉しない位置に前記後退位置を設定したことを特徴とする請求項4〜8のいずれかに記載のワークの加工方法。
  10. 前記今回工具によるワークの加工終了後、前記次回工具によるワークの加工中に、前記今回工具を装着した前記一方の櫛刃形刃物台を後退させて割り出しを行う場合において、前記一方の櫛刃形刃物台に装着された最長の工具の刃先位置と、前記他方の櫛刃形刃物台に装着された最長の工具の刃先位置との距離が、前記次回工具によるワーク加工開始の際におけるワークの直径Dよりも大きく、この直径Dに所定の設定値α(α>0)を加えた値よりも小さくなる位置で割り出しを行うことを特徴とする請求項4〜8のいずれかに記載のワークの加工方法。
  11. 対向する一対の櫛刃形刃物台を有し、前記一対の櫛刃形刃物台の一方又は両方に刃先位置を変えて複数の工具を装着した数値制御旋盤における前記工具によるワークの加工方法であって、
    今回使用する一方の櫛刃形刃物台の今回工具によってワークを加工する際に、次回使用する次回工具を装着した前記他方の櫛刃形刃物台をワークに向けて移動させ、前記今回工具の最前進位置において、前記一方の櫛刃形刃物台に装着された最長の工具の刃先位置と、前記他方の櫛刃形刃物台に装着された最長の工具の刃先位置との距離が、前記今回工具によるワーク加工開始の際における前記ワークの直径Dよりも大きく、この直径Dに所定の設定値α(α>0)を加えた値よりも小さくなる位置で、前記他方の櫛刃形刃物台を停止させ、前記次回工具を待機させたことを特徴とするワークの加工方法。
  12. 対向する一対の櫛刃形刃物台を有し、前記櫛刃形刃物台の一方又は両方に刃先位置を変えて複数の工具を装着した数値制御旋盤の数値制御装置に読み込まれ、ワークの加工を行うための加工プログラムの中から必要事項を抽出して上記請求項4〜11のいずれかに記載の加工方法を実行することを特徴とするプログラム。
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