しかしながら、このような従来の昇降装置は、駒片を係合可能位置に位置付けた場合、駒片の先端部に設けた単一の爪(歯部)が、回動するラチェットに設けた複数の歯部のうち単一の歯部にのみ係合する態様、つまり、単一の歯部同士のみを係合させている態様であり、このような単一の歯部同士の係合であっても係合状態が容易に解除されないように、係合深さを在る程度深く設定している。そのため、ラチェットの歯部のピッチをある程度大きく(例えば数十mm単位)設定せざるを得ず、結果的に、昇降天板の高さ調整もラチェットの歯部の間隔に対応するピッチ(数十mm単位)でのみしか行うことができなくなり、併設する机の天板の高さ位置と略面一となるように、昇降天板の高さ位置を数mm単位で微調整することができないという不具合が生じるものである。
このような不具合は、昇降部材にその高さ方向に沿って複数の溝を有する第1噛合部を設け、静止部材に溝に選択的に係合する単一のピンを設けた態様であっても同様に生じる。
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、主たる目的は、良好な噛合状態を確保しつつ昇降天板等の家具構成部材高さ位置を数mm単位で微調整可能な昇降装置を提供することにある。
すなわち、本発明の昇降装置は、筐体等の家具本体に対して昇降天板等の家具構成部材を昇降させ得る昇降装置であって、前記家具本体に設けられた静止部材と、当該静止部材に対して昇降移動し且つ前記家具構成部材を支持する昇降部材と、前記静止部材と前記昇降部材との間に設けられ前記昇降部材の昇降移動を規制するロック状態又は前記昇降部材の昇降移動を許容するロック解除状態を取り得る噛合機構とを具備してなり、当該噛合機構が、前記静止部材にその高さ方向に沿って所定間隔で設けた複数の第1歯部を有する第1噛合部と、前記昇降部材にその高さ方向に沿って所定間隔で設けた複数の第2歯部を有する第2噛合部とを備え、前記ロック状態において複数の前記第1歯部と複数の前記第2歯部とを相互に噛合させるものであることを特徴とする。
ここで、家具本体としては、筐体(ワゴン)や椅子本体等が挙げられ、家具構成部材としては、筐体や椅子本体に対して昇降し得る昇降天板や肘掛けが挙げられる。
このようなものであれば、噛合状態(噛合機構のロック状態)において、複数の第1歯部部と複数の第2歯部とが相互に噛合するため、従来のような単一の歯同士が噛合する態様と比較して、より良好な噛合状態を実現することができ、その上、第1歯部及び第2歯部のそれぞれのピッチを小さく設定した場合であっても十分な耐荷重性も確保することができる。その結果、第1歯部及び第2歯部のそれぞれのピッチを小さく設定し、昇降天板の高さ位置を、併設して使用する机等の天板の高さ位置と略面一となるように数ミリ単位で調節することができる。しかも、各歯部を、静止部材又は昇降部材の高さ方向に沿って複数設けているため、ラチェット方式の噛合機構と比較して複数の歯部同士を確実に噛合させることができる。
また、少なくとも前記噛合機構が前記ロック状態にある場合に、前記第1噛合部と前記第2噛合部とが厚み方向に相対変位することを規制する相対変位規制手段を具備していれば、これら第1噛合部及び2噛合部の厚み方向への相対変位(面ずれ)することによって生じ得る第1噛合部と第2噛合部との噛合状態の悪化を不具合を有効に解消することができる。
具体的な実施態様としては、前記第2噛合部が、前記第1噛合部と噛合可能な噛合可能位置と、前記第1噛合部との噛合状態を解除し得る噛合解除位置との間で進退移動し得るものであり、前記相対変位規制手段が、少なくとも前記第2噛合部を前記昇降部材の内面部との間で挟持し得る挟持部材を用いてなり、前記第2噛合部を前記噛合可能位置に位置付けた場合に、前記第1噛合部及び前記第2噛合部を前記昇降部材の内面部と挟持部材との間に挟み込むことにより、前記第1噛合部と前記第2噛合部とが厚み方向に相対変位することを規制するものであることが挙げられる。なお、第2噛合部を、昇降部材の内面部に直接設けた態様又は所定の部材を介して間接的に設けたもの何れであってもよい。このようなものであれば、簡単な構造を作用しつつ、第1噛合部及び第2噛合部が薄板状のものであっても、これら各噛合部を挟み込むことにより相対的な面ずれを防止し、良好な噛合状態を維持することができる。
特に、前記第2噛合部が、前記昇降部材にスライド移動可能に設けたスライダ部材に取り付けられ、前記第1噛合部と噛合可能な噛合可能位置と、前記第1噛合部との噛合状態を解除し得る噛合解除位置との間でスライダ部材と共にスライド移動し得るものであり、前記相対変位規制手段が、少なくとも前記第2噛合部を前記スライダ部材との間で挟持し得る挟持部材を用いてなり、前記第2噛合部を前記噛合可能位置に位置付けた場合に、前記第1噛合部及び前記第2噛合部を前記スライダ部材と挟持部材との間に挟み込むことにより、前記第1噛合部と前記第2噛合部とが厚み方向に相対変位することを規制するものであることが挙げられる。このようなものであれば、上述した効果と略同様の効果を得ることができ、しかも、スライダ部材を利用して第2噛合部の移動をスムーズ且つ適切に行うことができる。
相対変位規制手段が、前記第2噛合部を前記噛合解除位置に位置付けた場合に、前記第1噛合部の前記挟込状態を解除し得るようにしたものであれば、第2噛合部を噛合解除位置に位置付けたロック解除状態において、第1歯部がスライダ部材及び連動部材と干渉しないため、昇降部材のスムーズな昇降移動を実現することができる。
また、前記第2噛合部が、前記昇降部材にスライド移動可能に設けたスライダ部材に取り付けられ、前記第1噛合部と噛合可能な噛合可能位置と、前記第1噛合部との噛合状態を解除し得る噛合解除位置との間でスライダ部材と共にスライド移動し得るものであり、所定の操作力の付与又は停止に連動して前記第2噛合部及び前記スライダ部材に対して昇降移動する連動部材の動作を、前記第2噛合部の前記噛合可能位置から前記噛合解除位置への移動又は前記噛合解除位置から前記噛合可能位置への進退移動に変換する動作変換手段を設けていれば、この動作変換手段を利用して第2噛合部の進退動作を的確に行うことができるとともに、スライダ部材により第2噛合部の移動を円滑に行うことができる。
動作変換手段の具体的な実施態様としては、前記動作変換手段が、前記連動部材と、当該連動部材と前記スライダ部材とを連結する連結部材とを用いてなり、前記連動部材又は前記連結部材の何れか一方にガイド用溝を設けるとともに、他方に当該ガイド用溝に沿って移動し得るガイド用突起部を設け、前記連動部材の昇降移動に基づいて前記ガイド用突起部を前記ガイド用溝に案内させるさせることにより前記連結部材を介して前記第2噛合部を前記噛合可能位置から前記噛合解除位置へ又は前記噛合解除位置から前記噛合可能位置へ移動させるようにしたものが挙げられる。
この場合、前記ガイド用溝を前記連動部材又は前記連結部材の何れか一方に複数設けるとともに、前記ガイド用突起部を、前記ガイド用溝に対応させて他方に複数設ければ、動作変換の確実性向上に資する。
動作変換手段の他の具体的な実施態様としては、前記動作変換手段が、前記スライダ部材と、連動部材とを用いてなり、前記スライダ部材の一側縁部にその高さ方向に沿って所定角度で傾斜させた第1傾斜部を設けるとともに、前記連動部材の側縁部のうち前記スライダの一側縁部に対向し得る一側縁部にその高さ方向に沿って前記第1傾斜部に対応する第2傾斜部を設け、前記連動部材の昇降移動に基づいて第1傾斜部及び第2傾斜部を相互に摺動させることにより前記第2噛合部を前記噛合可能位置から前記噛合解除位置へ又は前記噛合解除位置から前記噛合可能位置へ移動させるようにしたものが挙げられる。このような態様であっても、簡単な構成でありながら、第2噛合部の噛合可能位置と前記噛合解除位置との間における移動を確実に行うことができる。
なお、動作変換手段を、ガイド用溝とガイド用突起部との組み合わせ又は第1傾斜部と第2傾斜部との組み合わせの何れか一方のみから構成してもよく、或いは両方を用いて構成してもよい。
また、前記スライダ部材及び前記連動部材が、合成樹脂素材から形成されたものであれば、スライダ部材及び連動部材を金属素材等から形成した場合と比較して、それぞれの部材の移動時又は移動停止時に生じ得る衝撃音や摩擦音を低減することができる。
第1噛合部と第2噛合部との噛合及び噛合解除をスムーズ且つ的確に行えるようにするには、前記第1噛合部及び前記第2噛合部の各歯部の突出方向を、前記静止部材又は前記昇降部材の高さ方向に直交する仮想直線に対して若干傾斜させた方向に設定すればよい。
さらに、本発明に係る昇降天板付ワゴンは、家具本体たる筐体と、当該筐体に取り付けられ高さ位置を調整可能な前記家具構成部材たる昇降天板と、前記筐体に対して前記昇降天板を昇降させ得る前記昇降装置とを具備していることを特徴とするものであり、上述した昇降装置に係る効果と同様の効果を得ることができ、実用性に優れたものとなる。
以上説明したように本発明によれば、噛合状態(噛合機構のロック状態)において、複数の第1歯部部と複数の第2歯部とが相互に噛合するため、耐荷重性に優れた良好な噛合状態を実現することができ、第1歯部及び第2歯部のそれぞれのピッチを小さく設定した場合であっても良好な噛合状態が損なわれることがない。その結果、家具本体に対する家具構成部材の高さ位置を数ミリ単位で調節することが可能となり、ユーザの種々の使用態様に柔軟に対応することができ、実用性に優れたものとなる。
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
本実施形態に係る昇降装置Dは、図1(同図は昇降天板付ワゴンAを一部省略して示す全体概略図である)に示すような昇降天板付ワゴンAに適用されるものである。
昇降天板付ワゴンAは、筐体Bと、筐体Bの天面部B2側に設けられ且つ筐体Bに対して昇降移動し得る昇降天板Cと、筐体Bに対して昇降天板Cを昇降させ得る昇降装置Dとを具備している。
筐体Bは、図1及び図2(図2は筐体Bの平面を一部簡略化して示す図である)に示すように、左右の側面部B1を、天面部B2、底面部及び背面部B3により連結してなり、一又は複数の抽斗BHを収容する収容空間を前方に開放させている。ない、図示しない底面部にキャスタを設け、床面上を水平移動可能に構成している。側面部B1には、前端部に内方に突出する前補強部B11を折曲加工等により一体に設けるとともに、後端部側に、平面視略凸状に折曲加工し且つ前補強部B11と略同程度内方に突出する後補強部B12を溶接等により一体的に設け、これら前補強部B11及び後補強部B12を跨ぐ位置にレールB13(サスペンションレールであってもよい)を抽斗BHの段数に対応させて設け、このレールB13によりに抽斗BHをスライド可能に支持している。そして、前補強部B11と後補強部B12との間に、後述する静止部材Eを筐体Bに固定するための固定部材B14を設けている。固定部材B14は、側面部B1に添接し得る添接部B14aと、添接部B14aの前縁部及び後縁部からそれぞれ平面視略凸状に折曲加工され前記各補強部B11、B12の突出寸法よりも若干小さい突出寸法を有する前縁突出部B14b及び後縁突出部B14cとを一体に備え、前縁突出部B14bと後縁突出部B14cとの間に、後述する昇降部材Fを収容し得る昇降部材収容空間B14sを形成したものであり、溶接等により側面部B1に一体的に設けている。また、筐体Bの天面部B2の両側縁部近傍には、前記昇降部材収容空間B14sに挿通し得る開口部B21を形成している。この開口部B21の内側縁部と固定部材B14との間に後述する静止部材Eの本体部H1が挿入可能なスペースが形成してある。なお、抽斗BHは、上方を開口させてなる収容体の前端部に鏡板を組み付けた周知のものである。
昇降天板Cは、筐体Bの平面視形状に略対応する平面視形状を有するものである。
昇降装置Dは、図3〜図5(図3(a)、(b)、(c)はそれぞれ昇降装置Dの正面図、背面図、側面図であり、図4(a)、(b)は昇降装置Dをそれぞれ異なる角度から見た全体斜視図であり、図5は図3(c)におけるx−x線断面図である)等に示すように、筐体Bに固定される静止部材Eと、静止部材Eに対して昇降移動し且つ昇降天板Cを支持する昇降部材Fと、静止部材Eと昇降部材Fとの間に設けられ昇降部材Fの昇降移動を規制するロック状態又は昇降部材Fの昇降移動を許容するロック解除状態を取り得る噛合機構Gとを具備したものである。
静止部材Eは、例えば一枚の板金から形成され、前記筐体Bの側面部B1に取り付けられる静止部材本体Hと、静止部材本体Hの上端部に取り付けられ且つ筐体Bの天面部B2に形成した開口部B21に嵌め込み可能なキャップ部材Iとを備えたものである。
静止部材本体Hは、図6(同図は静止部材本体Hの全体斜視図である)等に示すように、主として、高さ方向に沿って延び正面視略矩形状をなす長尺の本体部H1と、本体部H1の巾方向略中央部に高さ方向に沿って延び且つ後述する昇降部材Fを組み付けた状態において昇降部材Fに設けた後述する連結部材Qの一部が表出し得るように正面視略矩形状に切り欠いてなる窓部H3と、窓部H3の一方の側縁部から内方に突出するように起立させた起立片の先端縁から窓部H3の他方の側縁部に向かって突出する複数の第1歯部H21を高さ方向に沿って所定間隔で設けてなる第1噛合部H2とを備えたものである。本実施形態では、第1歯部H21の突出方向を、静止部材本体Hの高さ方向に直交する仮想直線に対して若干上方に傾斜させた方向に設定し、隣接する第1歯部H21間の離間距離を略2mmに設定している。本体部H1の上端部には、内方に突出し且つキャップ部材Iを取り付けるためのキャップ部材取付用孔H11aを有する内方突出部H11を設けている。また、本体部H1の下端部近傍部位を内方に向かって平面視略L字状に切り起こしてなり、昇降部材Fを昇降移動可能に抱かかえ得る一対の抱込部H12を形成している。さらに、本体部H1の上端部に、他の部位より上方に突出してなる上方突出部H13と、後述する同期用ピニオンVのボス部V1が表出して引っ掛かり得るピニオン用丸孔H14を形成している。
キャップ部材Iは、図3〜図5等に示すように、例えば合成樹脂素材から形成され、前記静止部材本体Hの内方突出部H11の上面側を被覆し得る上面被覆部I1と、上面被覆部I1の縁部から下方に垂下し静止部材本体Hの内方突出部H11の縁部を弾性保持し得る鍔部I2とを一体に有するものである。上面被覆部I1に、キャップ部材取付用孔H11aに対応し且つ昇降部材Fが挿通可能な昇降部材用挿通孔I1aを形成するとともに、昇降部材用挿通孔I1aの縁部から下方に垂下し且つキャップ部材取付用孔H11a及び筐体Bの天面部B2に形成した開口部B21に嵌入してそれぞれの開口縁部に弾性係合し得る垂下部I11と、静止部材本体Hの上方突出部H13を嵌合状態で被覆し得る上方突出部被覆部I12とを設けている。
一方、昇降部材Fは、主として、例えば一枚の板金を平面視略コ字状に折曲加工してなり前記静止部材本体Hより大きい高さ寸法を有する昇降部材本体Jと、昇降部材本体Jの上端部に設けられ前記昇降天板Cを支持するステーKと、所定の操作力が付与される操作部Lと、昇降部材本体Jに設けられその巾方向に沿ってスライド移動し得るスライダ部材Mと、当該スライダ部材Mに設けられ前記第1噛合部H2に噛合可能な第2噛合部Nと、昇降部材本体Jに設けられ前記操作部Lに付与される操作力に連動して前記第2噛合部N及び前記スライダ部材Mに対して昇降移動し得る連動部材Pと、スライダ部材Mと連動部材Pとを連結する連結部材Qとを備えたものである。
昇降部材本体Jは、図7(同図(a)、(b)は昇降部材本体Jをそれぞれ異なる角度から見た全体斜視図である)等に示すように、静止部材Eに組み付けた状態で本体部H1に対面し得る平板部J1と、平板部J1の両側縁部から平板部J1の内方に向かって突出する一対の側板部J2と、高さ方向略中央部を側面視略L字状に切り起こし且つスライダ部材Mをスライド移動可能に保持し得るスライダ保持部J3とを備えたものである。本実施形態では、先端部を相互に近接する方向に延出させてなる一対のスライダ保持部J3を巾方向に所定間隔離間させて二組設けており、その離間距離を静止部材本体Hの第1噛合部H2に設けた各第1歯部H21の突出寸法よりも大きく設定している。
ステーKは、昇降部材本体Jの上端部に設けられ昇降天板Cの奥行き寸法に略相当する奥行き寸法を有するものである(図1参照)。
操作部Lは、図3〜図5等に示すように、主として、昇降部材本体Jに対して昇降移動可能な昇降レバーL1と、昇降レバーL1の両側縁にそれぞれ隣接し得る位置に設けられ昇降移動不能な静止レバーL2とから構成されている。この昇降レバーL1は、下端部を連動部材Pに係合させてなるロッドRの上端部に接続されている。また、これら昇降レバーL1及びロッドRは、バネSの付勢力により、連動部材Pと共に下降し得る方向に常時付勢されている。バネSは、その上端部を連動部材Pに引っ掛けるとともに下端部を平板部J1の下端部近傍に引っ掛けたものである。
スライダ部材Mは、図3〜図5及び図8(図8は昇降装置Dの要部拡大断面図である)等に示すように、例えば合成樹脂素材から形成されたものであり、巾方向中央部に他の部位より薄肉に設定してなる薄肉部M1を有し、薄肉部M1を巾方向に挟み得る第1厚肉部M2及び第2厚肉部M3の上縁部及び下縁部に、前記スライダ保持部J3にスライド移動可能に保持され得る被保持部M4をそれぞれ設けている。また、スライダ部材Mの一方の側縁部(図示例では連動部材P側に位置する側縁部)にその高さ方向に沿って第1凹凸部M5を形成している。この第1凹凸部M5は、突出端部がフラット状をなす一対の第1凸部M51と、第1凸部M51の突出方向に対して所定角度で傾斜し且つ各第1凸部M51に連続する一対の第1傾斜部M52とを備えている。そして、本実施形態では、第1厚肉部M2及び第2厚肉部M3のうち、連動部材P側に位置する第1厚肉部M2に第2噛合部Nを取り付けている。
第2噛合部Nは、例えば薄板の金属素材から形成され、第1厚肉部M2に重合し得る重合部N1と、静止部材本体Hに設けた第1噛合部H2の第1歯部H21に対応する複数の第2歯部N2とを一体に有するものである。第2歯部N2は、高さ方向に沿って複数設けられ、第1歯部H21と噛合し得るように、その方向を昇降部材本体Jの高さ方向に直交する仮想直線に対して若干下方に傾斜させた方向に設定し、隣接する第2歯部N2間の離間距離を略2mmに設定している。なお、本実施形態では、第2噛合部Nの重合部N1に、巾方向に延びる第1横長孔と、高さ方向に延びる第1縦長孔とを形成し、これら第1横長孔及び第1縦長孔を、それぞれスライダ部材Mの第1厚肉部M2に設けられた巾方向に延びる横状突出部M21及び高さ方向に延びる縦状突出部M22に嵌合させることにより、第2歯部N2の突出方向が下方に傾斜する方向となるようにしている。すなわち、第1横長孔、第1縦長孔、横状突出部M21及び縦状突出部M22により、スライダ部材Mに対する第2噛合部Nの取付方向を位置決めする位置決め手段を構成している。また、第1厚肉部M2に、他の部位より外方に突出し内部にその突出方向に沿って雌ねじ部を形成した雌ねじ突出部M23を設け、スライダ部材Mに第2噛合部Nを取り付けた状態において、雌ねじ突出部M23に、重合部N1に形成した雌ねじ用第1丸孔が挿入し得るようにしている。そして、第2噛合部Nをスライダ部材Mに取り付けた状態において、第2歯部N2は、スライダ部材Mの第1厚肉部M2に重合せず、第2厚肉部M3に向かって薄肉部M1に飛び出た状態となる。なお、本実施形態では、被保持部M4をスライダ保持部J3に保持させる作業を容易に行えるように、スライダ部材Mの他方の側縁部近傍領域(図示例では第2厚肉部M3)に相互に相寄る方向に弾性変形可能な一対の弾性変形部M31を設けている。
連動部材Pは、図3〜図5及び図8等に示すように、例えば合成樹脂素材から形成され、スライダ部材Mよりも大きい高さ寸法を有するものであり、一方の側縁部(図示例ではスライダ部材M側の側縁部)にその高さ方向に沿って設けられ且つ前記第1凹凸部M5に対応する第2凹凸部P1と、前記ロッドRの下端部位を保持するロッド保持部P2と、前記バネSの上端部が引っ掛け可能なバネ引掛部P3とを備えている。第2凹凸部P1は、第1凹凸部M5と同様に、突出端部がフラット状をなす一対の第2凸部P11と、第2凸部P11の突出方向に対して所定角度で傾斜し且つ各第2凸部P11に連続する一対の第2傾斜部P12とを有している。第1傾斜部Q21と第2傾斜部P12とは、相互に平行をなすように設定してある。また、第2凹凸部P1を設けた一方の側縁部近傍領域を他の部位よりも薄肉に設定し、この薄肉の領域を、連動部材Pと後述する連結部材Qとが相互に干渉して連動部材Pの昇降移動及びスライダ部材Mのスライド移動が規制されることを回避する干渉回避部P4として機能させている。この干渉回避部P4に、外方に突出し後述する連結部材Qのガイド用溝Q21に案内されるガイド用突起部P41を一対設けている。
連結部材Qは、図3〜図5及び図8(図8において想像線に囲まれパターンを付した部位は連結部材Qの一部を示すものである)等に示すように、例えば合成樹脂素材から形成され、スライダ部材Mと略同じ高さ寸法を有する正面視略矩形状をなすものであり、第2噛合部Nに形成した第1横長孔、第1縦長孔及び雌ねじ用第1丸孔にそれぞれ対応する第2横長孔、第2縦長孔及び雌ねじ用第2丸孔を形成している。そして、この連結部材Qは他の部位より内方に膨出させてなる内方膨出部Q2を設け、この内方膨出部Q2に、前記連動部材Pのガイド用突起部P41を案内し得るガイド用溝Q21を一対形成している。各ガイド用溝Q21は、前記第1傾斜部M52及び第2傾斜部P12の傾斜角度に対応し且つ高さ方向に所定寸法離間させてなる第1傾斜片及び第2傾斜片と、各傾斜部(第1傾斜片及び第2傾斜片)の上端部同士を接続する上接続片と、各傾斜部(第1傾斜片及び第2傾斜片)の下端部同士を接続する下接続片とからなり、正面視視略菱形状をなすものである。本実施形態では、相対的に高さ位置が高い方を第1傾斜片とし、低い方を第2傾斜片としている。
このような構成をなす連結部材Qは、連動部材Pのガイド用突起部P41をガイド用溝Q21内に収容し、且つ第2噛合部Nを重合させたスライダ部材Mの横状突出部M21、縦状突出部M22及び雌ねじ突出部M23にそれぞれ第2横長孔、第2縦長孔及び雌ねじ用第2丸孔を嵌合し、雌ねじ用第2丸孔に挿入したねじを雌ねじ突出部M23の雌ネジ部を螺合することにより、連動部材Pとスライダ部材Mとを連結した状態でスライダ部材Mに取り付けられる。この取付状態において、第2噛合部Nはスライダ部材Mと連結部材Qとの間に挟持され、第2噛合部Nの各第2歯部N2は連結部材Qによって被覆されている。
昇降部材本体Jの上半部には、昇降部材本体Jの平板部J1と対向し得る位置に配される上半部カバー部材Tを適宜の手段で取り付けており、平板部J1と上半部カバー部材Tとの間に、高さ方向に沿って複数の係合爪を設けた同期用ラックUと、同期用ラックUに係合しながら回動し得る同期用ピニオンVとを収容している。同期用ピニオンVの中央部には他の部位より内方に膨出するボス部V1を設け、このボス部V1に後述する同期用シャフトが挿入可能な正面視四角形状をなすシャフト挿入部V2を形成している。上半部カバー部材Tの巾方向略中央部に、上端部近傍部位から下端部まで高さ方向に沿って切り欠いてなる切欠部T1を形成し、この切欠部T1を巾方向に跨ぐ位置に同期用ピニオンVを配するとともに、同期用ラックUの係合爪が切欠部T1に臨むようにしてある。なお、上半部カバー部材Tには、同期用ラックUを保持するためのラック保持用リブT3と、ロッドRを昇降移動可能に保持するロッド保持部T4と、先端部位を屈曲させてなるロッドRの屈曲部R1に添接し上半部カバー部材Tに対するロッドRの位置ずれを防止する位置ずれ防止部T5と、バネSによって下方へ付勢されるロッドRと当接し、このロッドRに取り付けられる昇降レバーL1の初期位置を規定するための当接部T6とを設けている(図5参照)。
このような昇降部材Fを、前記静止部材Eに組み付けるには、上半部カバー部材Tと静止部材本体Hの本体部H1とが添接し得るように静止部材Eに対する昇降部材Fの向きを決定した上で、昇降部材Fをキャップ部材Iの昇降部材用挿通孔I1aに上方から挿通し、静止部材本体Hの下端部に設けた一対の抱込部H12にスライド移動可能に保持させることにより行う。このようにして一体的に組み付けてなる静止部材E及び昇降部材Fを、筐体Bの天面部B2に形成した一対の開口部B21にそれぞれ挿入して筐体Bに組み込み、昇降部材Fを昇降部材収容空間B14sに収容するとともに、静止部材本体Hの本体部H1を、筐体Bの側面部B1に設けた固定部材B14の前縁突出部B14b及び後縁突出部B14cに添接させた状態でねじ等所定の取付部材を用いて取り付ける。なお、固定部材B14の前縁突出部B14b及び後縁突出部B14cの所定部位に切り起こし部を形成し、静止部材本体Hの本体部H1の所定部位をこれら切り起こし部に挿し込むように引っ掛けることにより、静止部材E及び昇降部材Fを筐体Bに取り付けるようにしても構わない。このような取付態様を採用することによって、ねじ止めする手間を省略又は軽減することが可能となる。そして、筐体Bの天面部B2の下面側において、各本体部H1のピニオン用丸孔H14から表出する同期用ピニオンVのシャフト挿入部V2に、断面視四角形状をなす棒状の同期用シャフトの端部をそれぞれ挿入する。その結果、昇降部材Fの昇降移動に伴って同期用ピニオンVが同期用シャフトを介して同期回転しながら同期用ラックUの係合爪に順次係合し、左右一対の昇降部材Fが同調して昇降移動し得る。なお、昇降部材本体Jの下端部に、例えば合成樹脂素材から形成された緩衝部材Wを設けるとともに、昇降部材本体Jの所定部位に、静止部材本体Hの一部に干渉することにより昇降部材Fのそれ以上の上昇移動又は下降移動を規制する移動規制部を設けている。本実施形態では、昇降部材本体Jの各側板部J2に高さ方向に沿って所定距離離間させて設けた一対のねじ孔に、それぞれねじ頭を側板部J2より側方に突出させた状態でねじを螺合し、このねじのねじ頭を静止部材Eの抱込部H12に干渉させることにより昇降部材Fのそれ以上の上昇移動又は下降移動を規制するようにしている(図示省略)。また、図10(同図(a)は昇降部材本体Jの要部拡大斜視図であり、同図(b)は静止部材本体Hの要部拡大斜視図であり、同図(c)は昇降部材本体Jと静止部材本体Hとの組付状態を示す要部拡大斜視図である)に示すように、昇降部材本体Jに、内方に向かって切り起こしてなる内方切起片J5を設け、この内方切起片J5を、静止部材本体Hの本体部H1に設けた外方に切り起こしてなる外方切起片H15に干渉させることにより、昇降部材Fのそれ以上の下降移動を規制するようにしても構わない。この場合、内方切起片J5又は外方切起片H15の何れか一方あるいは両方に、緩衝部材(例えば薄板状のゴム等)を設ければよい。
しかして、昇降部材Fを静止部材Eに組み付けた状態において、静止部材Eの第1噛合部H2は、昇降部材Fのスライダ部材Mの第1厚肉部M2と第2厚肉部M3との間に位置し、スライダ部材Mと連結部材Qとによりスライド移動可能に保持されており、第1歯部H21が、スライダ部材Mの薄肉部M1に臨む位置に位置付けられた第2噛合部Nの各第2歯部N2にそれぞれ噛合し得る。第1噛合部H2と第2噛合部Nとが相互に噛合している場合、昇降部材Fの昇降移動は規制され、一方、第1噛合部H2と第2噛合部Nとの噛合状態が解除された場合、昇降部材Fの昇降移動は許容される。すなわち、第1噛合部H2と第2噛合部Nとを用いて、昇降部材Fの昇降移動を規制するロック状態又は昇降部材Fの昇降移動を許容するロック解除状態を取り得る噛合機構Gを構成している。
本実施形態では、第1噛合部H2及び第2噛合部Nを相互に噛合可能な状態でスライダ部材Mと連結部材Qとの間に挟み込むことにより、第1噛合部H2と第2噛合部Nとが厚み方向に相対変位することを規制している(図8参照)。すなわち、連結部材Qが、第1噛合部H2及び第2噛合部Nをスライダ部材Mとの間で挟持し得る本発明の「挟持部材」としても機能し、これら連結部材Q及びスライダ部材Mを用いて、本発明の「相対変位規制手段」を構成している。
前記第2噛合部Nは、図9に示すように、第1噛合部H2と噛合可能な噛合可能位置(同図(a−1)参照)と、第1噛合部H2との噛合状態を解除し得る噛合解除位置(同図(b―1)参照)との間でスライダ部材Mと共に移動し、前記操作部Lの昇降レバーL1を上昇させる操作力が付与された場合に噛合解除位置を取り、前記操作力が停止された場合に噛合可能位置を取るように設定してある。
次に、図9を参照して、第2噛合部Nを噛合可能位置と噛合解除位置との間で移動させる方法及び作用について説明する。なお、図9における(a―2)、(b−2)は、それぞれ同図(a―1)、(b−1)を連結部材Qを省略して示す拡大図である。
先ず、第2噛合部Nを噛合可能位置(同図(a―1)参照)から噛合解除位置(同図(b−1)参照)へ移動させるには、前記昇降レバーL1を上方に押し上げる操作力を付与することにより行う。この操作力に連動してロッドR及び連動部材Pが前記バネSの付勢力に抗して上昇することによって、スライダ部材Mに対する連動部材Pの高さ位置が変位し、後述する第1凸部M51と第2凸部P11との当接状態が解除されるとともに、連動部材Pに設けたガイド用突起部P41を連結部材Qのガイド用溝Q21の下接続片及び第1傾斜片に沿って案内させることにより、連結部材Qが前記干渉回避部P4を利用して連動部材Pに近寄る方向に巾方向に沿って移動し、これに伴ってスライダ部材Mも連結部材Qと共に連動部材Pに近寄る方向に巾方向に沿ってスライド移動する。この際、スライダ部材Mが、第1凹凸部M5と第2凹凸部P1が相互に係合し得る方向に沿って、その第2凹凸部P1の第2傾斜部P12を連動部材Pの第1凹凸部M5の第1傾斜部M52に摺動させることにより、スライダ部材Mの移動を確実に行うことができる。その結果、スライダ部材Mに保持された第2噛合部Nが、連動部材Pに近寄る方向、換言すれば第1噛合部H2から離間する方向に移動して第1噛合部H2と噛合し得ない噛合解除位置に位置付けられる。第2噛合部Nが噛合解除位置に位置付けられた場合、連結部材Qは、第1噛合部H2を被覆し得ない位置に位置付けられており、この連結部材Qとスライダ部材Mとによる第1噛合部H2の挟込状態が解除される。また、第1凹凸部M5及び第2凹凸部P1は、相互に係合した状態をとる(同図(a―2)参照)。
一方、第2噛合部Nの噛合解除位置から噛合可能位置への移動は、前記操作力の停止、つまり昇降レバーL1から手を離す(又は操作力を弱める)動作に伴って行われる。昇降レバーL1から手を離すと、前記バネSの弾性復帰力により連動部材P、ロッドR及び昇降レバーL1が元の位置(操作力付与前の位置)まで下降し、この連動部材Pの下降移動により、第1凹凸部M5の第1傾斜部M52と第2凹凸部P1の第2傾斜部P12とを相互に摺動させながらスライダ部材Mが連動部材Pから離間する方向に巾方向に沿って移動し、連動部材Pの一連の下降移動により、経時的に、第1凹凸部M5の第1傾斜部M52と第2凹凸部P1の第2傾斜部P12との摺動状態が解除され、続いて第2凹凸部P1の第2凸部P11と第1凹凸部M5の第1凸部M51とがそれぞれフラット状の突出端部同士を相互に面的に当接させた状態となり、且つ、連動部材Pの他側縁部(第2凹凸部P1を設けていない側の側縁部)が昇降部材本体Jの内面部(側板部J2の内面部)に当接することにより、第2噛合部Nの噛合可能位置から噛合解除位置への退避(後退)移動が禁止される(同図(b―2)参照)。この際、連結部材Qが、そのガイド用溝Q21の上接続片及び第2傾斜片に沿って連動部材Pのガイド用突起部P41を案内させることにより、スライダ部材Mの移動を確実に行うことができる。その結果、スライダ部材Mに保持された第2噛合部Nが、連動部材Pから離間する方向、換言すれば第1噛合部H2に近寄る方向に移動して第1噛合部H2と噛合可能な噛合可能位置に位置付けられる。このように、本実施形態では、第1凸部M51と、第2凸部P11とを用いて、これら第1凸部M51及び第2凸部P11を相互に当接させることにより第2噛合部Nの係合可能位置から係合解除位置への退避移動を禁止する「ストッパ手段」を構成している。また、ガイド用溝Q21とガイド用突起部P41との組み合わせ、及び、第1傾斜部M52と第2傾斜部P12との組み合わせにより、連動部材Pの昇降移動を、第2噛合部Nの噛合可能位置から噛合解除位置への移動又は噛合解除位置から噛合可能位置への移動に変換する本発明の「動作変換手段」を構成している。
以上に説明した昇降装置Dを備えた昇降天板付ワゴンAの使用方法について説明する。
先ず、各静止レバーL2に人差し指と小指を掛けながら中指と薬指で昇降レバーL1を押し上げる操作力を付与すると、第1噛合部H2と第2噛合との噛合状態、及び連結部材Qとスライダ部材Mとによる第1噛合部H2の挟込状態が解除され、昇降部材Fの昇降移動を許容するロック解除状態となり、前記操作力を付与し続けたまま昇降天板Cを任意の高さ位置まで上昇移動又は下降移動させる操作に伴って、昇降部材Fが静止部材Eに対してスライドしながら上昇移動又は下降移動する。そして、昇降天板Cを任意の高さ位置に位置付けた状態で昇降レバーL1に対する前記操作力を停止すると、第1噛合部H2と第2噛合部Nとが噛合し、昇降部材Fの昇降移動が規制されるロック状態となり、昇降天板Cの高さ位置が固定される。なお、一対の昇降部材Fは、各昇降装置Dに高さ位置変更不能に設けられた前記同期用ピニオンVを、そのシャフト挿入部V2に挿入した同期用シャフトにより同期回転させながらそれぞれ同期用ラックUの係合爪に係合させることにより同期して昇降し得るように設定している。また、本実施形態では、第1噛合部H2及び第2噛合部Nにそれぞれ第1歯部H21又は第2歯部N2をそれぞれ2mm間隔で設けているため、昇降天板Cの高さ位置を2mm単位で微調整することができ、昇降天板Cを、この昇降天板付ワゴンAと組み合わせて使用される図示しない机の天板と略面一の高さ位置に設定することが可能となる。
このように、本実施形態に係る昇降装置Dは、昇降部材Fの昇降移動を規制するロック状態又は前記昇降部材Fの昇降移動を許容するロック解除状態を取り得る噛合機構Gを、静止部材Eにその高さ方向に沿って所定間隔で設けた複数の第1歯部H21を有する第1噛合部H2と、昇降部材Fにその高さ方向に沿って所定間隔で設けた複数の第2歯部N2を有する第2噛合部Nとを用いて構成し、ロック状態において複数の第1歯部H21と複数の第2歯部N2とを相互に噛合させるようにしたものであるため、従来のように第1歯部と第2歯部が1対1で噛合する態様と比較して、安定した噛合状態を実現することができのみならず、耐荷重性も向上し、第1歯部H21及び第2歯部N2のそれぞれのピッチを小さく設定することが可能となり、その結果、昇降天板Cの高さ位置を数ミリ単位で調節することが可能となり、利用者の種々の使用態様に柔軟に対応することができ、実用性に優れたものとなる。
特に、第2噛合部Nを噛合可能位置に位置付けた場合に、第1噛合部H2及び第2噛合部Nをスライダ部材Mと連結部材Qとの間に挟み込むことにより、第1噛合部H2と第2噛合部Nとが厚み方向に相対変位することを規制する相対変位規制手段を備えているため、第1噛合部H2及び第2噛合部Nが薄板状のものであってもこれら第1噛合部H2及び第2噛合部Nを確実に噛合させることができ、第1噛合部H2と第2噛合部Nとが厚み方向に相対変位(面ずれ)することによって生じ得る噛合状態の悪化を防止し、より良好な噛合状態を確保することが可能となる。
しかも、相対変位規制手段が、第2噛合部Nを噛合解除位置に位置付けた場合に、第1噛合部H2の挟込状態を解除するようにしたものであるため、ロック解除状態において第1歯部H2がスライダ部材M及び連動部材Pと干渉しないため、静止部材Eに対する昇降部材Fのスムーズな昇降移動を実現することができる。
また、連動部材Pにガイド用溝Q21を設けるとともに、連結部材Qにガイド用溝Q21に沿ってスライド移動し得るガイド用突起部P41を設け、連動部材Pの昇降移動に基づいてガイド用突起部P41をガイド用溝Q21に沿ってスライド移動させることにより連結部材Qを介して連動部材Pの昇降移動を第2噛合部Nの噛合可能位置と噛合解除位置との間の進退移動に変換する動作変換手段を備えているため、第2噛合部Nの移動を安定したものとすることができる。
加えて、ガイド用溝Q21及びガイド用突起部P41を、それぞれ相互に対応するように複数設けているため、連動部材Pの動作を第2噛合部Nの動作に効率良く変換させることができる。
さらに、本実施形態では、ガイド部として、スライダ部材Mに第1傾斜部M52を設けるとともに、連動部材Pに第1傾斜部M52に対応する第2傾斜部P12を設け、連動部材Pの昇降移動に基づいて第1傾斜部M52及び第2傾斜部P12を相互に摺動させることによって第2噛合部Nを噛合可能位置と前記噛合解除位置との間で進退移動させる態様をも採用しているため、前述のガイド用溝Q21とガイド用突起部P41の案内作用と相俟って、第1傾斜部M52及び第2傾斜部P12の摺動作用を利用して、第2噛合部Nの移動をよりスムーズ且つ的確に行うことが可能である。特に、第1傾斜部M52及び第2傾斜部P12を、それぞれ相互に対応するように複数設けているため、連動部材Pの動作を第2噛合部Nの動作に効率良く変換させることができる。
このような案内作用及び摺動作用を利用した動作変換手段であるため、バネ等の付勢力を利用した態様と比較して、移動停止時に生じ得る衝撃音を低減することができる。
また、スライダ部材M及び連動部材Pが、合成樹脂素材から形成されたものであるため、これら部材M、Pの移動時の衝撃音、摩擦音をさらに抑えることができる。
殊に、第1噛合部H2及び第2噛合部Nの各歯部H21、N2の突出方向を、静止部材E又は昇降部材Fの高さ方向に直交する仮想直線に対して若干傾斜させた方向に設定しているため、相互の噛合及び噛合解除をスムーズに行うことができる。
なお、本発明は、以上に詳述した実施形態に限られるものではない。
例えば、相対変位規制手段が、噛合機構がロック状態にある場合のみならず、ロック解除状態(すなわち第2噛合部が噛合解除位置に位置付けられた場合)にある場合にも、第1噛合部と第2噛合部とが厚み方向に相対変位することを規制するものであってもよい。具体的には、第2噛合部が噛合解除位置に位置付けられた場合にも、第1噛合部を、スライダ部材と連結部材(挟持部材)との間にスライド移動可能に挟み込むように設定すればよい。
また、相対規制手段が、第2噛合部を、昇降部材(昇降部材本体の平板部)の内面部と連結部材(挟持部材)との間に挟み込むことにより、第1噛合部と第2噛合部とが厚み方向に相対変位することを規制するようにしたものであっても構わない。この場合、前記スライダ部材は不要となり、部品点数の削減を図ることができる。なお、前記実施形態においてスライダ部材の一側縁部に設けた第1傾斜部及び第1凸部を、第2噛合部の一側縁部に設けてもよい。
また、相対変位規制手段を構成する挟持部材として、連結部材とは異なる専用の部材を適用してもよい。
前記実施形態におけるロッドそのものを本発明の連動部材として機能させ、このロッドの所定部位に、第2傾斜部及び第2凸部を設けた態様であってもよい。この場合、実施形態に示す連動部材Pが不要となり、部品点数の削減を図ることができる。
また、前記実施形態では、連動部材Pの上昇移動を第2噛合部Nの噛合可能位置から噛合解除位置への移動に変換する場合に、ガイド用溝Q21とガイド用突起部P41との案内作用を積極的に利用するとともに、連動部材Pの下降移動を第2噛合部Nの噛合解除位置から噛合可能位置への移動に変換する場合に、第1傾斜部M52と第2傾斜部P12との摺動作用を積極的に利用した態様を示したが、ガイド溝の形状や各傾斜部の傾斜角度を適宜変更することにより、連動部材Pの上昇移動を第2噛合部Nの噛合可能位置から噛合解除位置への移動に変換する場合に、第1傾斜部M52と第2傾斜部P12との摺動作用を積極的に利用するとともに、連動部材Pの下降移動を第2噛合部Nの噛合解除位置から噛合可能位置への移動に変換する場合に、ガイド用溝Q21とガイド用突起部P41との案内作用を積極的に利用するようにしても構わない。さらに、動作変換手段を、ガイド用溝とガイド用突起部との組み合わせ又は第1傾斜部と第2傾斜部との組み合わせの何れか一方のみにより構成し、第2係合要素の係合可能位置から係合解除位置への移動、及び係合解除位置から係合可能位置への移動を前記何れか一方の組み合わせにより実現するようにしてもよい。なお、ガイド用溝及びガイド用突起部はそれぞれ単一のものであってもよく、同様に、第1傾斜部及び第2傾斜部もそれぞれ単一のものでも構わない。
さらに、第2噛合部をスライダ部材に保持させる態様を採用する場合、第2噛合部をスライダ部材に対して面方向に回動不能に固定する固定手段を設けてもよい。具体的には、図11(同図(a)は一変形例に係るスライダ部材Mの全体斜視図であり、同図(b)は、図9(a―2)に対応させて示す図である)に示すように、スライダ部材Mの第1厚肉部M2に、他の部位より窪ませてなる凹陥部M24を形成し、当該凹陥部M24にこの凹陥部M24より僅かに小さい平面形状を有する第2噛合部Nの重合部N1を嵌入し、凹陥部M24を区成する段部M24aに第2噛合部Nの縁部を添接させることにより、第2噛合部Nをスライダ部材Mに対して面方向に回動不能に固定するようにしたものが挙げられる。なお、凹陥部M24には、内周に雌ねじ部を形成した一対の雌ねじ突出部M23を設け、この雌ねじ突出部M23を第2噛合部Nに形成した丸孔、及び図示しない連結部材の丸孔に挿入し、ねじを用いて螺合することにより、スライダ部材Mと連結部材とによって第2噛合部Nを挟持し得るようにしている。また、凹陥部M24及び第2噛合部Nの重合部N1を上下非対称形状とすることにより、第2歯部N2の突出方向が下方に傾斜する方向となるようにスライダ部材Mに対する第2噛合部Nの取付方向を位置決めする位置決め手段を構成している。
また、隣接する第1歯部間の離間距離、及び隣接する第2歯部間をそれぞれ略2mmに設定したものを例示したが、これに限らず、任意の数値に設定してもよいことはいうまでもない。
また、上述した昇降装置を、静止部材を設けてなる椅子本体と、昇降部材に支持され椅子本体に対する高さ位置を調整可能な肘掛けとを備えた椅子に適用しても構わない。
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。