以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
本実施形態に係る同機構を備えた昇降装置Dは、図1(同図は昇降天板付ワゴンAを一部省略して示す全体概略図である)に示すような昇降天板付ワゴンAに適用されるものである。
昇降天板付ワゴンAは、筐体Bと、筐体Bの天面部B2側に設けられ且つ筐体Bに対して昇降移動し得る昇降天板Cと、筐体Bに対して昇降天板Cを昇降させ得る昇降装置Dとを具備している。
筐体Bは、図1及び図2(図2は筐体Bの平面を一部簡略化して示す図である)に示すように、左右の側面部B1を、天面部B2、底面部及び背面部B3により連結してなり、一又は複数の抽斗BHを収容する収容空間を前方に開放させている。なお、図示しない底面部にキャスタを設け、床面上を水平移動可能に構成している。側面部B1には、前端部に内方に突出する前補強部B11を折曲加工等により一体に設けるとともに、後端部側に、平面視略凸状に折曲加工し且つ前補強部B11と略同程度内方に突出する後補強部B12を溶接等により一体的に設け、これら前補強部B11及び後補強部B12を跨ぐ位置にレールB13(サスペンションレールであってもよい)を抽斗BHの段数に対応させて設け、このレールB13によりに抽斗BHをスライド可能に支持している。そして、前補強部B11と後補強部B12との間に、後述する静止部材Eを筐体Bに固定するための固定部材B14を設けている。固定部材B14は、側面部B1に添接し得る添接部B14aと、添接部B14aの前縁部及び後縁部からそれぞれ平面視略凸状に折曲加工され前記各補強部B11、B12の突出寸法よりも若干小さい突出寸法を有する前縁突出部B14b及び後縁突出部YB14cとを一体に備え、前縁突出部B14bと後縁突出部B14cとの間に、後述する昇降部材Fを収容し得る昇降部材収容空間B14sを形成したものであり、溶接等により側面部B1に一体的に設けている。また、筐体Bの天面部B2の両側縁部近傍には、前記昇降部材B14sに挿通し得る開口部B21を形成している。この開口部B21の内側縁部と固定部材B14との間に後述する静止部材Eの本体部H1が挿入可能なスペースが形成してある。なお、抽斗BHは、上方を開口させてなる収容体の前端部に鏡板を組み付けた周知のものである。
昇降天板Cは、筐体Bの平面視形状に略対応する平面視形状を有するものである。
昇降装置Dは、図3〜図5(図3(a)、(b)、(c)はそれぞれ昇降装置Dの正面図、背面図、側面図であり、図4(a)、(b)は昇降装置Dをそれぞれ異なる角度から見た全体斜視図であり、図5は図3(c)におけるx−x線断面図である)等に示すように、筐体Bに固定される一対の静止部材Eと、各静止部材Eに対して昇降移動し且つ昇降天板Cを支持する一対の昇降部材Fと、各静止部材Eと各昇降部材Fとの間に設けられ昇降部材Fの昇降移動を規制するロック状態又は昇降部材Fの昇降移動を許容するロック解除状態を取り得る噛合機構Gと、一対の静止部材Eに対する一対の昇降部材Fの昇降移動を同期させる同期機構Xを具備したものである。
静止部材Eは、例えば一枚の板金から形成され、前記筐体Bの側面部B1に取り付けられる静止部材本体Hと、静止部材本体Hの上端部に取り付けられ且つ筐体Bの天面部B2に形成した開口部B21に嵌め込み可能なキャップ部材Iとを備えたものである。
静止部材本体Hは、図6(同図は静止部材本体Hの全体斜視図である)等に示すように、主として、高さ方向に沿って延び正面視略矩形状をなす長尺の本体部H1と、本体部H1の巾方向略中央部に高さ方向に沿って延び且つ後述する昇降部材Fを組み付けた状態において昇降部材Fに設けた後述する連結部材Qの一部が表出し得るように正面視略矩形状に切り欠いてなる窓部H3と、窓部H3の一方の側縁部から内方に突出するように起立させた起立片の先端縁から窓部H3の他方の側縁部に向かって突出する複数の第1歯部H21を高さ方向に沿って所定間隔で設けてなる第1噛合部H2とを備えたものである。本実施形態では、第1歯部H21の突出方向を、静止部材本体Hの高さ方向に直交する仮想直線に対して若干上方に傾斜させた方向に設定し、隣接する第1歯部H21間の離間距離を略2mmに設定している。本体部H1の上端部には、内方に突出し且つキャップ部材Iを取り付けるためのキャップ部材取付用孔H11aを有する内方突出部H11を設けている。また、本体部H1の下端部近傍部位を内方に向かって平面視略L字状に切り起こしてなり、昇降部材Fを昇降移動可能に抱かかえ得る一対の抱込部H12を形成している。さらに、本体部H1の上端部に、他の部位より上方に突出してなる上方突出部H13と、後述する同期用ピニオンVの小径ボス部V3が表出して引っ掛かり得るピニオン用丸孔H14を形成している。
キャップ部材Iは、図3〜図5等に示すように、例えば合成樹脂素材から形成され、前記静止部材本体Hの内方H11の上面側を被覆し得る上面被覆部I1と、上面被覆部I1の縁部から下方に垂下し静止部材本体Hの内方H11の縁部を弾性保持し得る鍔部I2とを一体に有するものである。上面被覆部I1に、キャップ部材取付用孔H11aに対応し且つ昇降部材Fが挿通可能な昇降部材用挿通孔I1aを形成するとともに、昇降部材用挿通孔I1aの縁部から下方に垂下し且つキャップ部材取付用孔H11a及び筐体Bの天面部B2に形成した開口部B21に嵌入してそれぞれの開口縁部に弾性係合し得る垂下部I11と、静止部材本体Hの上方H13を嵌合状態で被覆し得る上方被覆部I12とを設けている。
一方、昇降部材Fは、主として、例えば一枚の板金を平面視略コ字状に折曲加工してなり前記静止部材本体Hより大きい高さ寸法を有する昇降部材本体Jと、昇降部材本体Jの上端部に設けられ前記昇降天板Cを支持するステーKと、所定の操作力が付与される操作部Lと、昇降部材本体Jに設けられその巾方向に沿ってスライド移動し得るスライダ部材Mと、当該スライダ部材Mに設けられ前記第1噛合部H2に噛合可能な第2噛合部Nと、昇降部材本体Jに設けられ前記操作部Lに付与される操作力に連動して前記第2噛合部N及び前記スライダ部材Mに対して昇降移動し得る連動部材Pと、スライダ部材Mと連動部材Pとを連結する連結部材Qとを備えたものである。
昇降部材本体Jは、図7(同図(a)、(b)は昇降部材本体Jをそれぞれ異なる角度から見た全体斜視図である)等に示すように、静止部材Eに組み付けた状態で本体部H1に対面し得る平板部J1と、平板部J1の両側縁部から平板部J1の内方に向かって突出する一対の側板部J2と、高さ方向略中央部を側面視略L字状に切り起こし且つスライダ部材Mをスライド移動可能に保持し得るスライダ保持部J3とを備えたものである。本実施形態では、先端部を相互に近接する方向に延出させてなる一対のスライダ保持部J3を巾方向に所定間隔離間させて二組設けており、その離間寸法を、第1歯部H21と第2歯部N2との噛合を十分に許容する寸法に設定している。
ステーKは、昇降部材本体Jの上端部に設けられ昇降天板Cの奥行き寸法に略相当する奥行き寸法を有するものである(図1参照)。
操作部Lは、図3〜図5等に示すように、主として、昇降部材本体Jに対して昇降移動可能な昇降レバーL1と、昇降レバーL1の両側縁にそれぞれ隣接し得る位置に設けられ昇降移動不能な静止レバーL2とから構成されている。この昇降レバーL1は、下端部を連動部材Pに係合させてなるロッドRの上端部に接続されている。また、これら昇降レバーL1及びロッドRは、バネSの付勢力により、連動部材Pと共に下降し得る方向に常時付勢されている。バネSは、その上端部を連動部材Pに引っ掛けるとともに下端部を平板部J1の下端部近傍に引っ掛けたものである。
スライダ部材Mは、図3〜図5及び図8(図8は昇降装置Dの要部拡大断面図である)等に示すように、例えば合成樹脂素材から形成されたものであり、巾方向中央部に他の部位より薄肉に設定してなる薄肉部M1を有し、薄肉部M1を巾方向に挟み得る第1厚肉部M2及び第2厚肉部M3の上縁部及び下縁部に、前記スライダ保持部J3にスライド移動可能に保持され得る被保持部M4をそれぞれ設けている。また、スライダ部材Mの一方の側縁部(図示例では連動部材P側に位置する側縁部)にその高さ方向に沿って第1凹凸部M5を形成している。この第1凹凸部M5は、突出端部がフラット状をなす一対の第1凸部M51と、第1凸部M51の突出方向に対して所定角度で傾斜し且つ各第1凸部M51に連続する一対の第1傾斜部M52とを備えている。そして、本実施形態では、第1厚肉部M2及び第2厚肉部M3のうち、連動部材P側に位置する第1厚肉部M2に第2噛合部Nを取り付けている。
第2噛合部Nは、例えば薄板の金属素材から形成され、第1厚肉部M2に重合し得る重合部N1と、静止部材本体Hに設けた第1噛合部H2の第1歯部H21に対応する複数の第2歯部N2とを一体に有するものである。第2歯部N2は、高さ方向に沿って複数設けられ、第1歯部H21と噛合し得るように、その方向を昇降部材本体Jの高さ方向に直交する仮想直線に対して若干下方に傾斜させた方向に設定し、隣接する第2歯部N2間の離間距離を略2mmに設定している。なお、本実施形態では、第2噛合部Nの重合部N1に、巾方向に延びる第1横長孔と、高さ方向に延びる第1縦長孔とを形成し、これら第1横長孔及び第1縦長孔を、それぞれスライダ部材Mの第1厚肉部M2に設けられた巾方向に延びる横状突出部M21及び高さ方向に延びる縦状突出部M22に嵌合させることにより、第2歯部N2の突出方向が下方に傾斜する方向となるようにしている。すなわち、第1横長孔、第1縦長孔、横状M21及び縦状M22により、スライダ部材Mに対する第2噛合部Nの取付方向を位置決めする位置決め手段を構成している。また、第1厚肉部M2に、他の部位より外方に突出し内部にその突出方向に沿って雌ねじ部を形成した雌ねじ突出部M23を設け、スライダ部材Mに第2噛合部Nを取り付けた状態において、雌ねじ突出部M23に、重合部N1に形成した雌ねじ用第1丸孔が挿入し得るようにしている。そして、第2噛合部Nをスライダ部材Mの凹陥状の収容部M24に収容して取り付けた状態において、第2歯部N2は、スライダ部材Mの第1厚肉部M2に重合せず、第2厚肉部M3に向かって薄肉部M1に飛び出た状態となる。なお、本実施形態では、被保持部M4をスライダ保持部J3に保持させる作業を容易に行えるように、スライダ部材Mの他方の側縁部近傍領域(図示例では第2厚肉部M3)に相互に相寄る方向に弾性変形可能な一対の弾性変形部M31を設けている。
連動部材Pは、図3〜図5及び図8等に示すように、例えば合成樹脂素材から形成され、スライダ部材Mよりも大きい高さ寸法を有するものであり、一方の側縁部(図示例ではスライダ部材M側の側縁部)にその高さ方向に沿って設けられ且つ前記第1凹凸部M5に対応する第2凹凸部P1と、前記ロッドRの下端部位を保持するロッド保持部P2と、前記バネSの上端部が引っ掛け可能なバネ引掛部P3とを備えている。第2凹凸部P1は、第1凹凸部M5と同様に、突出端部がフラット状をなす一対の第2凸部P11と、第2凸部P11の突出方向に対して所定角度で傾斜し且つ各第2凸部P11に連続する一対の第2傾斜部P12とを有している。第1傾斜部Q21と第2傾斜部P12とは、相互に平行をなすように設定してある。また、第2凹凸部P1を設けた一方の側縁部近傍領域を他の部位よりも薄肉に設定し、この薄肉の領域を、連動部材Pと後述する連結部材Qとが相互に干渉して連動部材Pの昇降移動及びスライダ部材Mのスライド移動が規制されることを回避する干渉回避部P4として機能させている。この干渉回避部P4に、外方に突出し後述する連結部材Qのガイド用溝Q21に案内されるガイド用突起部P41を一対設けている。
連結部材Qは、図3〜図5及び図8(図8において想像線に囲まれパターンを付した部位は連結部材Qの一部を示すものである)等に示すように、例えば合成樹脂素材から形成され、スライダ部材Mと略同じ高さ寸法を有する正面視略矩形状をなすものであり、第2噛合部Nに形成した第1横長孔、第1縦長孔及び雌ねじ用第1丸孔にそれぞれ対応する第2横長孔、第2縦長孔及び雌ねじ用第2丸孔を形成している。そして、この連結部材Qは他の部位より内方に膨出させてなる内方膨出部Q2を設け、この内方膨出部Q2に、前記連動部材Pのガイド用突起部P41を案内し得るガイド用溝Q21を一対形成している。各ガイド用溝Q21は、前記第1傾斜部M52及び第2傾斜部P12の傾斜角度に対応し且つ高さ方向に所定寸法離間させてなる第1傾斜片及び第2傾斜片と、各傾斜部(第1傾斜片及び第2傾斜片)の上端部同士を接続する上接続片と、各傾斜部(第1傾斜片及び第2傾斜片)の下端部同士を接続する下接続片とからなり、正面視視略菱形状をなすものである。本実施形態では、相対的に高さ位置が高い方を第1傾斜片とし、低い方を第2傾斜片としている。
このような構成をなす連結部材Qは、連動部材Pのガイド用突起部P41をガイド用溝Q21内に収容し、且つ第2噛合部Nを重合させたスライダ部材Mの横状M21、縦状M22及び雌ねじM23にそれぞれ第2横長孔、第2縦長孔及び雌ねじ用第2丸孔を嵌合し、雌ねじ用第2丸孔に挿入したねじを雌ねじM23の雌ネジ部を螺合することにより、連動部材Pとスライダ部材Mとを連結した状態でスライダ部材Mに取り付けられる。この取付状態において、第2噛合部Nはスライダ部材Mと連結部材Qとの間に挟持され、第2噛合部Nの各第2歯部N2は連結部材Qによって被覆されている。
同期機構Xは、図4、図5、図9〜図13(図9は同期機構Xの一部を省略して示す分解斜視図であり、図10は同期用ピニオンVの取付部分を示す要部拡大図であり、図11は収容部Y21を示す図であり、図13は同期機構Xの作用説明図である)に示すように、昇降部材Fに関連付けて設けた同期用ラックUと、静止部材Eに対して一定の位置で位置決めされた状態で静止部材Eに対する各昇降部材Fの昇降移動に対応して回動する一対の作動子たる同期用ピニオンVと、これら同期用ピニオンV同士を連結し筐体Bの収納空間に配されるシャフトYとを備えたものである。
同期用ラックUは、図4及び図5等に示すように、昇降部材本体Jの平板部J1とこの平板部J1と対向し得る位置に適宜の手段で取り付けられた上半部カバーTとの間に挟持され、高さ方向に沿って複数の係合爪U1を設けたものである。
同期用ピニオンVは、図9、図10及び図11等に示すように、例えば合成樹脂素材から形成され、外周に同期用ラックUの係合爪U1に係合する係合歯V11を所定間隔で設けたピニオン本体V1と、ピニオン本体V1の中央部から内方に膨出する大径ボス部V2と、大径ボス部V2の中央部からさらに内方に膨出する小径ボス部V3とを各軸心を一致させて備えたものである。
シャフトYは、図9等に示すように、シャフト本体Y1と、シャフト本体Y1の両端部に設けられシャフトY全体の長手寸法の伸縮を惹起する伸縮惹起部Y2とを備えたものである。
シャフト本体Y1は、単一の金属素材から形成した中実の棒状をなすものである。本実施形態では一辺が略5mmの横断面略正方形状をなすシャフト本体Y1を適用している。
伸縮惹起部Y2は、シャフト本体Y1の端部を収容する収容部Y21と、収容部Y21内に配され且つシャフト本体Y1の端部に押圧された状態で収容部Y21に対するシャフト本体Y1の挿入度合いに応じて伸縮し得る伸縮部本体Y22とを備えたものである。収容部Y21は、図11(同図(a)は収容部Y21の平面図、同図(b)は(a)におけるA方向矢視図、同図(c)は同B方向矢視図である)に示すように、例えば合成樹脂素材から形成され、内方にのみ開口し且つシャフト本体Y1の端部を収容し得る収容空間Y21Sを有する有底筒状のものである。本実施形態では、収容空間Y21Sの正面視における開口形状をシャフト本体Y1の横断面形状に対応させた略正方形状としている。この収容部Y21は、概略円筒状をなす収容部本体Y211と、収容部本体Y211の一端部から外方に突出し且つシャフトY全体の回動を同期用ピニオンVに空転させることなく伝達する概略中空直方体状の回動伝達部Y212とを一体に有する。そして、前記収容空間Y21Sが、収容部本体Y211から回動伝達部Y212に亘る領域に形成されている。伸縮部本体Y22は、収容部Y21の収容空間Y21Sに配される弾性変形可能なものであり、本実施形態ではスプリングバネを適用している。
このような伸縮惹起部Y2をシャフト本体Y1の両端部に取り付けるには、図12(a)に示すように、収容部Y21の収容空間Y21Sにシャフト本体Y1の端部を挿入することにより行う。シャフト本体Y1の端部を収容部Y21の収容空間Y21Sに挿入した状態において、シャフト本体Y1の端部と伸縮部本体Y22とが当接し、収容部Y21に対するシャフト本体Y1の挿入度合いに応じて伸縮部本体Y22がシャフト本体Y1の端部と圧接した状態で収容空間Y21S内で伸縮し得る(同図(b)参照)。このようにして、収容部Y21に対するシャフト本体Y1の挿入度合いを調節することによりシャフトY全体の長手寸法が変化する単一のシャフトYが構成される。なお、本実施形態では、シャフト本体Y1と収容部Y21の収容空間Y21Sの周壁との間に、伸縮惹起部Y2がシャフト本体Y1の両端部から容易に抜け外れない程度の摩擦抵抗が生じるように設定してある。一方で、この摩擦抵抗は収容部Y21に対するシャフト本体Y1の挿入度合いの変更をスムーズに行える程度のものである。
他方、前記同期用ピニオンVには、図12に示すように、収容部Y21の回動伝達部Y212が嵌合可能な第1嵌合部V4と、収容部Y21の収容部本体Y211の一部が嵌合可能な第2嵌合部V5とを設けている。第1嵌合部V4及び第2嵌合部V5は、それぞれ収容部Y21の回動伝達部Y212の横断面外形状、収容部本体Y211の横断面外形状と略同一又は若干大きな開口形状を有する凹陥部であり、同期用ピニオンVの大径ボス部V2から小径ボス部V3に亘る領域に連続して形成している。そして、前記上半部カバー部材Tの巾方向略中央部に上端部近傍部位から下端部まで高さ方向に沿って切り欠いてなる切欠部T1を形成し、各同期用ピニオンVを、切欠部T1を巾方向に跨ぐ位置であって且つ小径ボス部V3が内方を向く姿勢で配する(図10参照)。この状態において切欠部T1から大径ボス部V2及び小径ボス部V3が表出している。また、同期用ラックUの係合爪U1が切欠部T1に臨むようにしてある。なお、上半部カバー部材Tには、同期用ラックUを保持するためのラック保持用リブT3と、ロッドRを昇降移動可能に保持するロッド保持部T4と、先端部位を屈曲させてなるロッドRの屈曲部R1に添接し上半部カバー部材Tに対するロッドRの位置ずれを防止する位置ずれ防止部T5と、バネSによって下方へ付勢されるロッドRと当接し、このロッドRに取り付けられる昇降レバーL1の初期位置を規定するための当接部T6とを設けている(図5参照)。
前記昇降部材Fを、前記静止部材Eに組み付けるには、上半部カバー部材Tと静止部材本体Hの本体部H1とが添接し得るように静止部材Eに対する昇降部材Fの向きを決定した上で、昇降部材Fをキャップ部材Iの昇降部材用挿通孔I1aに上方から挿通し、静止部材本体Hの下端部に設けた一対の抱込部H12にスライド移動可能に保持させることにより行う。この状態において、同期用ピニオンVの小径ボス部V3が静止部材本体Hのピニオン用丸孔H14から表出して引っ掛かり、静止部材Eに対する同期用ピニオンVの相対高さ位置が固定される。なお、昇降部材本体Jの下端部に、例えば合成樹脂素材から形成された緩衝部材Wを設けるとともに、昇降部材本体Jの所定部位に、静止部材本体Hの一部に干渉することにより昇降部材Fのそれ以上の上昇移動又は下降移動を規制する移動規制部を設けている。本実施形態では、昇降部材本体Jの各側板部J2に高さ方向に沿って所定距離離間させて設けた一対のねじ孔に、それぞれねじ頭を側板部J2より側方に突出させた状態でねじを螺合し、このねじのねじ頭を静止部材Eの抱込部H12に干渉させることにより昇降部材Fのそれ以上の上昇移動又は下降移動を規制するようにしている(図示省略)。また、図14(同図(a)は昇降部材本体Jの要部拡大斜視図であり、同図(b)は静止部材本体Hの要部拡大斜視図であり、同図(c)は昇降部材本体Jと静止部材本体Hとの組付状態を示す要部拡大斜視図である)に示すように、昇降部材本体Jに、内方に向かって切り起こしてなる内方切起片J5を設け、この内方切起片J5を、静止部材本体Hの本体部H1に設けた外方に切り起こしてなる外方切起片H15に干渉させることにより、昇降部材Fのそれ以上の下降移動を規制するようにしても構わない。この場合、内方切起片J5又は外方切起片H15の何れか一方あるいは両方に、緩衝部材(例えば薄板状のゴム等)を設ければよい。なお、図10及び図15に示すように、内方切起片H15、HA15が、抱込部H12を設けた開口部H16の周縁部を内方に屈曲させて形成してものであってもよく、本体部H1(図示例では開口部H16の周縁部)における内方切起片の形成箇所・形状は適宜変更しても構わない。また、内方切起片に対応させて外方切起片の形成箇所や形状は適宜変更してもよい。内方切起片が当接(干渉)する対象は外方切起片に限らず、例えば、昇降部材本体Jの側板部J2に、内方切起片と当接し得る方向に突出するように螺合したねじを内方切起片が当接する対象としてもよい。この場合、ねじを例えば合成樹脂製の被覆部で被覆することにより、内方切起片との当接時に生じる衝撃音を抑制することができる。
このようにして一体的に組み付けてなる静止部材E及び昇降部材Fを、筐体Bの天面部B2に形成した一対の開口部B21にそれぞれ挿入して筐体Bに組み込み、昇降部材Fを昇降部材B14sに収容するとともに、静止部材本体Hの本体部H1を、筐体Bの側面部B1に設けた固定部材B14の前縁突出部B14b及び後縁突出部B14cに添接させた状態でねじ等所定の取付部材を用いて取り付ける。なお、固定部材B14の前縁突出部B14b及び後縁突出部B14cの所定部位に切り起こし部を形成し、静止部材本体Hの本体部H1の所定部位をこれら切り起こし部に挿し込むように引っ掛けることにより、静止部材E及び昇降部材Fを筐体Bに取り付けるようにしても構わない。その一例として、図15(同図は、筐体Bの固定板B14に対する静止部材Eの取付態様を示す図であり、同図(a)は要部拡大正面を一部省略して示す図であり、同図(b)は(a)におけるA−A線断面図である)に示すように、固定部材B14の前縁突出部B14b及び後縁突出部B14cにそれぞれ切り起こし部B14bx、B14cxを設ける一方、静止部材本体Hの本体部H1の下縁部に一対の切欠H1xを形成し、これら切欠H1xを切り起こし部B14bx、B14cxに引っ掛けて係合させるともに、本体部H1の上縁部を、固定部材B14の前縁突出部B14b及び後縁突出部B14cにねじ止め等により静止部材Eを筐体Bに取り付けるようにしても構わない。このように、引っ掛け係合とねじ止めとを併用するようにしてもよい。このような取付態様を採用することによって、ねじ止めする手間を省略又は軽減することが可能となる。
次に、以上の手順を経て静止部材E及び昇降部材Fを筐体Bに組み付けた状態で、各静止部材Eに対して一定の場所に回動可能に保持された同期用ピニオンV間にシャフトYを取り付ける手順を説明する。
先ず、一方の伸縮惹起部Y2を一方の同期用ピニオンVに取り付ける。具体的には、伸縮惹起部Y2を構成する収容部Y21の収容部本体Y211を同期用ピニオンVの第1嵌合部V4に挿入するとともに、収容部Y21の回動伝達部Y212を同期用ピニオンVの第1嵌合部V4に挿入する。この際、収容部Y21に回動伝達部Y212の向きを示唆する表示部を刻設又はシール等で貼着するとともに、同期用ピニオンVのうち視認できる部位に第1嵌合部V4の向きを示唆する表示部を刻設又はシール等で貼着すれば、各表示部を一致するように同期用ピニオンVにシャフトYの端部を挿入することにより回動伝達部Y212と第1嵌合部V4との嵌合をスムーズ且つ的確に行うことができる。次いで、他方の伸縮惹起部Y2を他方の同期用ピニオンVに取り付ける。具体的には、他方の伸縮惹起部Y2をシャフトYの他端部側に押圧する操作力を付与し、これにより、他方の伸縮惹起部Y2の伸縮部本体Y22がシャフトYの他端部と回動伝達部Y212の内壁部Y212aとの間で自身の弾性に抗して縮小し、その結果、シャフトY自体の長手寸法が小さくなる(図12(b)参照)。この場合、前記操作力により、一方の同期用ピニオンVに取り付けた伸縮惹起部Y2に対するシャフト本体Y1の挿入度合いも深くなり、一方の伸縮部本体Y22が自身の弾性に抗して縮小している。そして、前記操作力を付与し続けたまま、他方の伸縮惹起部Y2を他方の同期用ピニオンVの第1嵌合部V4に挿入可能な位置に位置付け、前記操作力を解除すると、各伸縮惹起部Y2の伸縮部本体Y22が弾性復帰力により伸長し、シャフト本体Y1が一方の伸縮惹起部Y2の収容部Y21に対する挿入度合いを浅くする方向に相対的に移動するとともに、他方の伸縮惹起部Y2がシャフトYの他端部から離間する方向に相対的に移動する。これにより、シャフトY全体の長手寸法が伸長し、他方の伸縮惹起部Y2の回動伝達部Y212を他方の同期用ピニオンVの第1嵌合部V4に挿入することによって、他方の伸縮惹起部Y2を他方の同期用ピニオンVに取り付けることができる(図12(c)参照)。このようにして同期用ピニオンV間にシャフトYを取り付けた状態において、各伸縮惹起部Y2がそれぞれの伸縮部本体Y22の弾性力により各同期用ピニオンVを押圧した状態となり、シャフトYが同期用ピニオンV間に突っ張った状態で保持される。また、シャフト本体Y1の両端部に伸縮惹起部Y2を設けているため、各伸縮惹起部Y2の収容部Y21に対するシャフト本体Y1の挿入度合い(飲み込み量)が均等になり、一方の伸縮惹起部Y2を一方の同期用ピニオンVに挿入した後、他方の伸縮惹起部Y2を他方の同期用ピニオンVに挿入する場合のシャフト本体Y1の移動量を、シャフト本体Y1の両端部に伸縮惹起部Y2を設けている場合と比較して、略半分にすることができ、取付作業をスムーズに行うことができる。なお、伸縮惹起部Y2の一部(収容部Y21の一部)が同期用ピニオンVから露出し得るが、この露出し得る部位が、抽斗BHの図示しない側板よりも内方に露出しないように設定することにより、抽斗BHの有効内寸(有効高さ寸法)を損なうことがない。また、シャフトYの空転を防止すべく各回動伝達部Y212をそれぞれ同起用シャフトYの第1嵌合部V4に嵌合させているため、昇降部材Fの昇降移動に伴って同期用ピニオンVがシャフトYを介して同期回転しながら同期用ラックUの係合爪U1に順次係合し、左右一対の昇降部材Fが同調して昇降移動し得る。
また、昇降部材Fを静止部材Eに組み付けた状態において、静止部材Eの第1噛合部H2は、昇降部材Fのスライダ部材Mの第1厚肉部M2と第2厚肉部M3との間に位置し、スライダ部材Mの薄肉部M1に臨む位置に位置付けられた第2噛合部Nの各第2歯部N2にそれぞれ噛合し得る。第1噛合部H2と第2噛合部Nとが相互に噛合している場合、昇降部材Fの昇降移動は規制され、一方、第1噛合部H2と第2噛合部Nとの噛合状態が解除された場合、昇降部材Fの昇降移動は許容される。すなわち、第1噛合部H2と第2噛合部Nとを用いて、昇降部材Fの昇降移動を規制するロック状態又は昇降部材Fの昇降移動を許容するロック解除状態を取り得る噛合機構Gを構成している。
本実施形態では、第1噛合部H2及び第2噛合部Nを相互に噛合可能な状態でスライダ部材Mと連結部材Qとの間に挟み込むことにより、第1噛合部H2と第2噛合部Nとが厚み方向に相対変位することを規制している(図8参照)。すなわち、連結部材Qが、第1噛合部H2及び第2噛合部Nをスライダ部材Mとの間で挟持し得る「挟持部材」としても機能している。
前記第2噛合部Nは、図13に示すように、第1噛合部H2と噛合可能な噛合可能位置(同図(a−1)参照)と、第1噛合部H2との噛合状態を解除し得る噛合解除位置(同図(b―1)参照)との間でスライダ部材Mと共に移動し、前記操作部Lの昇降レバーL1を上昇させる操作力が付与された場合に噛合解除位置を取り、前記操作力が停止された場合に噛合可能位置を取るように設定してある。
次に、図13を参照して、第2噛合部Nを噛合可能位置と噛合解除位置との間で移動させる方法及び作用について説明する。なお、図13における(a―2)、(b−2)は、それぞれ同図(a―1)、(b−1)を連結部材Qを省略して示す拡大図である。
先ず、第2噛合部Nを噛合可能位置(同図(a―1)参照)から噛合解除位置(同図(b−1)参照)へ移動させるには、前記昇降レバーL1を上方に押し上げる操作力を付与することにより行う。この操作力に連動してロッドR及び連動部材Pが前記バネSの付勢力に抗して上昇することによって、スライダ部材Mに対する連動部材Pの高さ位置が変位し、後述する第1凸部M51と第2凸部P11との当接状態が解除されるとともに、連動部材Pに設けたガイド用突起部P41を連結部材Qのガイド用溝Q21の下接続片及び第1傾斜片に沿って案内させることにより、連結部材Qが前記干渉回避部P4を利用して連動部材Pに近寄る方向に巾方向に沿って移動し、これに伴ってスライダ部材Mも連結部材Qと共に連動部材Pに近寄る方向に巾方向に沿ってスライド移動する。この際、スライダ部材Mが、第1凹凸部M5と第2凹凸部P1が相互に係合し得る方向に沿って、その第2凹凸部P1の第2傾斜部P12を連動部材Pの第1凹凸部M5の第1傾斜部M52に摺動させることにより、スライダ部材Mの移動を確実に行うことができる。その結果、スライダ部材Mに保持された第2噛合部Nが、連動部材Pに近寄る方向、換言すれば第1噛合部H2から離間する方向に移動して第1噛合部H2と噛合し得ない噛合解除位置に位置付けられる。第2噛合部Nが噛合解除位置に位置付けられた場合、連結部材Qは、第1噛合部H2を被覆し得ない位置に位置付けられており、この連結部材Qとスライダ部材Mとによる第1噛合部H2の挟込状態が解除される。また、第1凹凸部M5及び第2凹凸部P1は、相互に係合した状態をとる(同図(b―2)参照)。
一方、第2噛合部Nの噛合解除位置から噛合可能位置への移動は、前記操作力の停止、つまり昇降レバーL1から手を離す(又は操作力を弱める)動作に伴って行われる。昇降レバーL1から手を離すと、前記バネSの弾性復帰力により連動部材P、ロッドR及び昇降レバーL1が元の位置(操作力付与前の位置)まで下降し、この連動部材Pの下降移動により、第1凹凸部M5の第1傾斜部M52と第2凹凸部P1の第2傾斜部P12とを相互に摺動させながらスライダ部材Mが連動部材Pから離間する方向に巾方向に沿って移動し、連動部材Pの一連の下降移動により、経時的に、第1凹凸部M5の第1傾斜部M52と第2凹凸部P1の第2傾斜部P12との摺動状態が解除され、続いて第2凹凸部P1の第2凸部P11と第1凹凸部M5の第1凸部M51とがそれぞれフラット状の突出端部同士を相互に面的に当接させた状態となり(同図(a―2)参照)、且つ、連動部材Pの他側縁部(第2凹凸部P1を設けていない側の側縁部)が昇降部材本体Jの内面部(側板部J2の内面部)に当接することにより、第2噛合部Nの噛合可能位置から噛合解除位置への退避(後退)移動が禁止される(同図(a―1)参照)。この際、連結部材Qが、そのガイド用溝Q21の上接続片及び第2傾斜片に沿って連動部材Pのガイド用突起部P41を案内させることにより、スライダ部材Mの移動を確実に行うことができる。その結果、スライダ部材Mに保持された第2噛合部Nが、連動部材Pから離間する方向、換言すれば第1噛合部H2に近寄る方向に移動して第1噛合部H2と噛合可能な噛合可能位置に位置付けられる。このように、本実施形態では、第1凸部M51と、第2凸部P11とを用いて、これら第1凸部M51及び第2凸部P11を相互に当接させることにより第2噛合部Nの係合可能位置から係合解除位置への退避移動を禁止する「ストッパ手段」を構成している。また、ガイド用溝Q21とガイド用突起部P41との組み合わせ、及び、第1傾斜部M52と第2傾斜部P12との組み合わせにより、連動部材Pの昇降移動を、第2噛合部Nの噛合可能位置から噛合解除位置への移動又は噛合解除位置から噛合可能位置への移動に変換する「動作変換手段」を構成している。
以上に説明した昇降装置Dを備えた昇降天板付ワゴンAの使用方法について説明する。
先ず、各静止レバーL2に人差し指と小指を掛けながら中指と薬指で昇降レバーL1を押し上げる操作力を付与すると、第1噛合部H2と第2噛合部Nとの噛合状態、及び連結部材Qとスライダ部材Mとによる第1噛合部H2の挟込状態が解除され、昇降部材Fの昇降移動を許容するロック解除状態となり、前記操作力を付与し続けたまま昇降天板Cを任意の高さ位置まで上昇移動又は下降移動させる操作に伴って、昇降部材Fが静止部材Eに対してスライドしながら上昇移動又は下降移動する。そして、昇降天板Cを任意の高さ位置に位置付けた状態で昇降レバーL1に対する前記操作力を停止すると、第1噛合部H2と第2噛合部Nとが噛合し、昇降部材Fの昇降移動が規制されるロック状態となり、昇降天板Cの高さ位置が固定される。そして、一対の昇降部材Fは、各昇降装置Dに高さ位置変更不能に設けられた前記同期用ピニオンVを、その第1嵌合部V4及び第2嵌合部V5に挿入したシャフトYにより同期回転させながらそれぞれ係合歯V11に対する同期用ラックUの係合爪U1の係合位置を順次変化させることにより同期して昇降し得るように設定している。また、本実施形態では、第1噛合部H2及び第2噛合部Nにそれぞれ第1歯部H21又は第2歯部N2をそれぞれ2mm間隔で設けているため、昇降天板Cの高さ位置を2mm単位で微調整することができ、昇降天板Cを、この昇降天板付ワゴンAと組み合わせて使用される図示しない机の天板と略面一の高さ位置に設定することが可能となる。
このように本実施形態に係る同期機構Xは、静止部材Fに対して一定の位置で位置決めされた状態で静止部材Eに対する各昇降部材Fの昇降移動に対応して回動する一対の同期用ピニオンVと、これら同期用ピニオンV同士を連結し筐体Bの収容空間に配されるシャフトYとを備えてなり、シャフトYが、剛性の高い素材から形成したシャフト本体Y1と、シャフト本体Y1の両端部に設けられシャフトY全体の長手寸法の伸縮を惹起する伸縮惹起部Y2とを備えているため、シャフト本体Y1が剛性の高い素材から形成したものであるため、昇降部材Fの昇降移動中にシャフトYに過度の捩れの力が作用した場合であっても、撓み変形が生じ難く、同期用ピニオンVに対するシャフトYの良好な取付状態を実現することができる。加えて、シャフトYの横断面形状を小さく設定することが可能であるため、筐体B内の収容空間の有効高さ寸法を不要に狭めることがなく、収容効率を向上させることができる。また、伸縮惹起部Y2の作用によりシャフトY全体の長手寸法を調節することができるため、離間寸法が変位しない同期用ピニオンV間に取り付ける際には、一時的にシャフトY全体の長手寸法を小さくした状態で同期用ピニオンV間に位置付け、その後シャフトY全体を長くすることにより、シャフトYを同期用ピニオンV間に好適に取り付けることができる。このように、取付時の便を図りつつ、十分な捩れ剛性を有し、且つ筐体Bの収容空間Y21Sの有効内寸を確保することができる同期機構Xを提供することができる。
特に、伸縮惹起部Y2が、シャフト本体Y1の端部を収容する収容部Y21と、収容部Y21内に配され且つシャフト本体Y1の端部に押圧された状態で収容部Y21に対するシャフト本体Y1の挿入度合いに応じて伸縮し得る伸縮部本体Y22とを備えたものであるため、シャフト本体と伸縮惹起部とをそれぞれの端部同士で接続した態様と比較して、シャフト本体Y1と収容部Y21との取付強度を有効に向上させることができる。さらに、筐体Bの収容部内に配した伸縮部本体Y22がシャフト本体Y1の挿入度合いに応じて伸縮し得るものであるため、シャフトY全体の長手寸法を伸縮させる操作を容易に行うことできる。
さらに、伸縮部本体Y22としてバネを適用しているため、やはり構造の簡素化、専用品を使用する場合と比較してコストの削減を図ることができる。
また、伸縮惹起部Y2をシャフト本体Y1の両端部に設けているため、各伸縮惹起部Y2に対するシャフト本体Y1の挿入度合いを有効に稼ぐことができ、シャフト本体Y1と伸縮惹起部Y2とが相互に分離し難くなり、良好な取付強度を実現することができる。
さらに、伸縮惹起部Y2の両端部のうち、同期用ピニオンVに取り付けられる一方の端部に、シャフトYの回動を同期用ピニオンVに伝達する回動伝達部Y212を設けるとともに、同期用ピニオンVに、回動伝達部Y212が嵌合可能な第1嵌合部V4と、伸縮惹起部Y2のうち、回動伝達部Y212を除く部位の全部又は一部が嵌合可能な第2嵌合部V5とを設けているため、回動伝達部Y212を第1嵌合部V4に挿入して嵌合することにより、シャフトYの空転を防止することができるとともに、伸縮惹起部Y2の全部又は一部を同期用ピニオンVに挿入(収容)することにより、同期用ピニオンVより内方に表出する伸縮惹起部Y2の領域を皆無又は微小とすることができ、筐体の収容空間Y21Sを可及的に広くすることができる。
また、本実施形態に係る昇降装置D、及びこの昇降装置Dを備えた昇降天板付ワゴンAは、上述した同期機構Xを有するものであるため、上述した各効果と同様の効果を得ることができる。
なお、本発明は、以上に詳述した実施形態に限られるものではない。
例えば、シャフト本体は、十分な曲げ強度を有する剛性の高い素材から形成したものであればよく、金属製の他、硬質樹脂素材から形成したものや、集成材等の木材から形成したものであってもよい。
シャフト本体の一端部にのみ伸縮惹起部を備えた態様であっても構わない。この場合、シャフト全体の最縮小時の長手寸法が、作動子間の離間距離よりも小さくなればよい。
また、伸縮惹起部の伸縮部本体として、スプリングバネに代えて、又は併用して、皿バネや板バネ等の各種バネ、或いはゴム素材から形成したものを適用してもよい。
また、伸縮惹起部の収容部に、この収容部内(収容空間)における伸縮部本体の収容位置を位置決めする位置決め部を設けてもよい。
位置決め部の例として、収容部の所定位置に厚み方向に貫通する貫通孔を形成し、収容部内(収容空間)に伸縮部本体を収容した状態で前記貫通孔から挿入したピン等の挿入部を前記伸縮部本体に圧接する態様や、収容部の内周面又は前記内壁部Y212aから所定方向に突出させた突起を用いた態様等が挙げられる。
このようなものであれば、伸縮部本体を、当該伸縮部本体がその機能を有効に発揮し得る位置に位置決めすることにより、シャフトの長手寸法を調節する操作の簡便性を確保することができるとともに、収容部に対する伸縮部本体の取付作業も簡単に行うことができる。また、位置決め部が、収容部内から伸縮部本体が不意に抜け外れることを防止する「ストッパ部」としても機能するようにすれば、別途専用のストッパ部を用いる必要がなく、構造の簡素化、コストの削減を図ることができる。
また、作動子には、少なくともシャフトの回動伝達部が嵌合する第1嵌合部があればよく、当該第1嵌合部によりシャフトの空転を確実に防止することができる。なお、回動伝達部の断面形状は、略正方形状のものに限らず、正方形以外の長方形状や、多角形状、あるいは楕円形状や不規則に突出部を設けた異形状であってもよく、作動子の第1嵌合部の開口形状を、回動伝達部の断面形状に対応させて適宜変更すればよい。また、作動子に第2嵌合部を設ける場合、当該第2嵌合部が伸縮惹起部の回動伝達部を除く全部位を外嵌するものであってよい。このようなものであれば、回動伝達部が作動子よりも内方(筐体の収容空間側)に露出することがなく、収容空間をより広く確保することができる。
また、伸縮惹起部として、シャフト本体の端部から、シャフト本体の長手方向に沿って突没し得る突没部を採用しても構わない。この場合、シャフト本体に対する突没部の突没量を無段階又は所定ピッチで調整できるようにしてもよい。
また、シャフト本体を概略円柱状とすれば、概略角柱状の場合と比較して、家具本体の収容空間内で当該シャフト本体と書類等の収容物とがたとえ干渉した場合であっても、干渉音を抑制することが可能である。この場合、伸縮惹起部を構成する収容部の収容空間の開口形状をシャフト本体に対応させて略円状とすればよい。
なお、第1噛合部と第2噛合部とのより良好な噛合状態を確保するために第2噛合部の第2歯部の本数を増加してもよい。その一例として、図16(同図(a)は第2噛合部Nの一変形例である第2噛合部2Nの正面図であり、同図(b)はスライダ部材Mの一変形例であるスライダ部材1Mの正面図であり、前記実施形態における符号の頭数字「1」を付して示すものである)に示すように、第2噛合部1Nの縁部のうち、第2歯部1N2を設けた側の縁部の高さ寸法を、前記実施形態で示す第2噛合部Nのそれよりも大きくし、この縁部に第2歯部1N2を多数(図示例では14本)設けたものが挙げられる(同図(a)参照)。なお、第2噛合部1Nの形状に対応させて、スライダ部材1Mのうち、第2噛合部1Nを収容し得る凹陥状の収容部1M24の形状を適宜変形させてもよいことはいうまでもない(同図(b)参照)。
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。