以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
本実施形態に係る昇降装置1Dは、図1(同図は昇降天板付ワゴンAを一部省略して示す全体概略図である)に示すような昇降天板付ワゴンAに適用される昇降装置Dと略同様のものである。そこで、先ず、図1に示す昇降装置Dについて、当該昇降装置Dを構成する各部材の構造及び作用について説明し、その後、本発明に係る昇降装置1Dについて詳細に説明する。
昇降装置Dを備えた昇降天板付ワゴンAは、昇降装置Dに加え、筐体Bと、筐体Bの天面部B2側に設けられ且つ筐体Bに対して昇降移動し得る昇降天板Cとを具備している。
筐体Bは、図1及び図2(図2は筐体Bの平面を一部簡略化して示す図である)に示すように、左右の側面部B1を、天面部B2、底面部及び背面部B3により連結してなり、一又は複数の抽斗BHを収容する収容空間を前方に開放させている。なお、図示しない底面部にキャスタを設け、床面上を水平移動可能に構成している。側面部B1には、前端部に内方に突出する前補強部B11を折曲加工等により一体に設けるとともに、後端部側に、平面視略凸状に折曲加工し且つ前補強部B11と略同程度内方に突出する後補強部B12を溶接等により一体的に設け、これら前補強部B11及び後補強部B12を跨ぐ位置にレールB13(サスペンションレールであってもよい)を抽斗BHの段数に対応させて設け、このレールB13によりに抽斗BHをスライド可能に支持している。そして、前補強部B11と後補強部B12との間に、後述する静止部材Eを筐体Bに固定するための固定部材B14を設けている。固定部材B14は、側面部B1に添接し得る添接部B14aと、添接部B14aの前縁部及び後縁部からそれぞれ平面視略凸状に折曲加工され前記各補強部B11、B12の突出寸法よりも若干小さい突出寸法を有する前縁突出部B14b及び後縁突出部B14cとを一体に備え、前縁突出部B14bと後縁突出部B14cとの間に、後述する昇降部材Fを収容し得る昇降部材収容空間B14sを形成したものであり、溶接等により側面部B1に一体的に設けている。また、筐体Bの天面部B2の両側縁部近傍には、前記昇降部材収容空間B14sに挿通し得る開口部B21を形成している。この開口部B21の内側縁部と固定部材B14との間に後述する静止部材Eの本体部H1が挿入可能なスペースが形成してある。なお、抽斗BHは、上方を開口させてなる収容体の前端部に鏡板を組み付けた周知のものである。
昇降天板Cは、筐体Bの平面視形状に略対応する平面視形状を有するものである。
昇降装置Dは、図3〜図5(図3(a)、(b)、(c)はそれぞれ昇降装置Dの正面図、背面図、側面図であり、図4(a)、(b)は昇降装置Dをそれぞれ異なる角度から見た全体斜視図であり、図5は図3(c)におけるx−x線断面図である)等に示すように、筐体Bに固定される静止部材Eと、静止部材Eに対して昇降移動し且つ昇降天板Cを支持する昇降部材Fと、静止部材Eと昇降部材Fとの間に設けられ昇降部材Fの昇降移動を規制するロック状態又は昇降部材Fの昇降移動を許容するロック解除状態を取り得る本発明の係合機構たる噛合機構Gとを具備したものである。
静止部材Eは、例えば一枚の板金から形成され、前記筐体Bの側面部B1に取り付けられる静止部材本体Hと、静止部材本体Hの上端部に取り付けられ且つ筐体Bの天面部B2に形成した開口部B21に嵌め込み可能なキャップ部材Iとを備えたものである。
静止部材本体Hは、図6(同図は静止部材本体Hの全体斜視図である)等に示すように、主として、高さ方向に沿って延び正面視略矩形状をなす長尺の本体部H1と、本体部H1の巾方向略中央部に高さ方向に沿って延び且つ後述する昇降部材Fを組み付けた状態において昇降部材Fに設けた後述する連結部材Qの一部が表出し得るように正面視略矩形状に切り欠いてなる窓部H3と、窓部H3の一方の側縁部から内方に突出するように起立させた起立片の先端縁から窓部H3の他方の側縁部に向かって突出する複数の第1歯部H21(本発明の「第1係合部」に相当)を高さ方向に沿って所定間隔で設けてなる第1噛合部H2(本発明の「第1係合体」に相当)とを備えたものである。本実施形態では、第1歯部H21の突出方向を、静止部材本体Hの高さ方向に直交する仮想直線に対して若干上方に傾斜させた方向に設定し、隣接する第1歯部H21間の離間距離を略2mmに設定している。本体部H1の上端部には、内方に突出し且つキャップ部材Iを取り付けるためのキャップ部材取付用孔H11aを有する内方突出部H11を設けている。また、本体部H1の下端部近傍部位を内方に向かって平面視略L字状に切り起こしてなり、昇降部材Fを昇降移動可能に抱かかえ得る一対の抱込部H12を形成している。さらに、本体部H1の上端部に、他の部位より上方に突出してなる上方突出部H13と、後述する同期用ピニオンVのボス部V1が表出して引っ掛かり得るピニオン用丸孔H14を形成している。
キャップ部材Iは、図3〜図5等に示すように、例えば合成樹脂素材から形成され、前記静止部材本体Hの内方突出部H11の上面側を被覆し得る上面被覆部I1と、上面被覆部I1の縁部から下方に垂下し静止部材本体Hの内方突出部H11の縁部を弾性保持し得る鍔部I2とを一体に有するものである。上面被覆部I1に、キャップ部材取付用孔H11aに対応し且つ昇降部材Fが挿通可能な昇降部材用挿通孔I1aを形成するとともに、昇降部材用挿通孔I1aの縁部から下方に垂下し且つキャップ部材取付用孔H11a及び筐体Bの天面部B2に形成した開口部B21に嵌入してそれぞれの開口縁部に弾性係合し得る垂下部I11と、静止部材本体Hの上方突出部H13を嵌合状態で被覆し得る上方突出部被覆部I12とを設けている。
一方、昇降部材Fは、主として、例えば一枚の板金を平面視略コ字状に折曲加工してなり前記静止部材本体Hより大きい高さ寸法を有する昇降部材本体Jと、昇降部材本体Jの上端部に設けられ前記昇降天板Cを支持するステーKと、所定の操作力が付与される操作部Lと、昇降部材本体Jに設けられその巾方向に沿ってスライド移動し得るスライダ部材Mと、当該スライダ部材Mに設けられ前記第1噛合部H2に噛合可能な第2噛合部N(本発明の「第2係合体」に相当)と、昇降部材本体Jに設けられ前記操作部Lに付与される操作力に連動して前記第2噛合部N及び前記スライダ部材Mに対して昇降移動し得る連動部材Pと、スライダ部材Mと連動部材Pとを連結する連結部材Qとを備えたものである。
昇降部材本体Jは、例えば板金素材から形成され、図7(同図(a)、(b)は昇降部材本体Jをそれぞれ異なる角度から見た全体斜視図である)等に示すように、静止部材Eに組み付けた状態で本体部H1に対面し得る平板部J1と、平板部J1の両側縁部から平板部J1の内方に向かって突出する一対の側板部J2と、高さ方向略中央部を側面視略L字状に切り起こし且つスライダ部材Mをスライド移動可能に保持し得るスライダ部材保持部J3とを備えたものである。本実施形態では、先端部を相互に近接する方向に延出させてなる一対のスライダ部材保持部J3を巾方向に所定間隔離間させて二組設けており、その離間寸法を、第1歯部H21と第2歯部N2との噛合を十分に許容する寸法に設定している。
ステーKは、昇降部材本体Jの上端部に設けられ昇降天板Cの奥行き寸法に略相当する奥行き寸法を有するものである(図1参照)。
操作部Lは、図3〜図5等に示すように、主として、昇降部材本体Jに対して昇降移動可能な昇降レバーL1と、昇降レバーL1の両側縁にそれぞれ隣接し得る位置に設けられ昇降移動不能な静止レバーL2とから構成されている。この昇降レバーL1は、下端部を連動部材Pに係合させてなるロッドRの上端部に接続されている。また、これら昇降レバーL1及びロッドRは、バネSの付勢力により、連動部材Pと共に下降し得る方向に常時付勢されている。バネSは、その上端部を連動部材Pに引っ掛けるとともに下端部を平板部J1の下端部近傍に引っ掛けたものである。
スライダ部材Mは、図3〜図5及び図8(図8は昇降装置Dの要部拡大断面図である)等に示すように、例えば合成樹脂素材から形成されたものであり、巾方向中央部に他の部位より薄肉に設定してなる薄肉部M1を有し、薄肉部M1を巾方向に挟み得る第1厚肉部M2及び第2厚肉部M3の上縁部及び下縁部に、前記スライダ部材保持部J3にスライド移動可能に保持され得る被保持部M4をそれぞれ設けている。また、スライダ部材Mの一方の側縁部(図示例では連動部材P側に位置する側縁部)にその高さ方向に沿って第1凹凸部M5を形成している。この第1凹凸部M5は、突出端部がフラット状をなす一対の第1凸部M51と、第1凸部M51の突出方向に対して所定角度で傾斜し且つ各第1凸部M51に連続する一対の第1傾斜部M52とを備えている。そして、本実施形態では、第1厚肉部M2及び第2厚肉部M3のうち、連動部材P側に位置する第1厚肉部M2に第2噛合部Nを取り付けている。
第2噛合部Nは、例えば薄板の金属素材から形成され、第1厚肉部M2に重合し得る重合部N1と、静止部材本体Hに設けた第1噛合部H2の第1歯部H21に対応する複数の第2歯部N2(本発明の「第2係合部」に相当)とを一体に有するものである。第2歯部N2は、高さ方向に沿って複数設けられ、第1歯部H21と噛合し得るように、その方向を昇降部材本体Jの高さ方向に直交する仮想直線に対して若干下方に傾斜させた方向に設定し、隣接する第2歯部N2間の離間距離を略2mmに設定している。なお、本実施形態では、第2噛合部Nの重合部N1に、巾方向に延びる第1横長孔と、高さ方向に延びる第1縦長孔とを形成し、これら第1横長孔及び第1縦長孔を、それぞれスライダ部材Mの第1厚肉部M2に設けられた巾方向に延びる横状突出部M21及び高さ方向に延びる縦状突出部M22に嵌合させることにより、第2歯部N2の突出方向が下方に傾斜する方向となるようにしている。すなわち、第1横長孔、第1縦長孔、横状突出部M21及び縦状突出部M22により、スライダ部材Mに対する第2噛合部Nの取付方向を位置決めする位置決め手段を構成している。また、第1厚肉部M2に、他の部位より外方に突出し内部にその突出方向に沿って雌ねじ部を形成した雌ねじ突出部M23を設け、スライダ部材Mに第2噛合部Nを取り付けた状態において、雌ねじ突出部M23に、重合部N1に形成した雌ねじ用第1丸孔が挿入し得るようにしている。そして、第2噛合部Nをスライダ部材Mに取り付けた状態において、第2歯部N2は、スライダ部材Mの第1厚肉部M2に重合せず、第2厚肉部M3に向かって薄肉部M1に飛び出た状態となる。なお、本実施形態では、被保持部M4をスライダ部材保持部J3に保持させる作業を容易に行えるように、スライダ部材Mの他方の側縁部近傍領域(図示例では第2厚肉部M3)に相互に相寄る方向に弾性変形可能な一対の弾性変形部M31を設けている。
連動部材Pは、図3〜図5及び図8等に示すように、例えば合成樹脂素材から形成され、スライダ部材Mよりも大きい高さ寸法を有するものであり、一方の側縁部(図示例ではスライダ部材M側の側縁部)にその高さ方向に沿って設けられ且つ前記第1凹凸部M5に対応する第2凹凸部P1と、前記ロッドRの下端部位を保持するロッド保持部P2と、前記バネSの上端部が引っ掛け可能なバネ引掛部P3とを備えている。第2凹凸部P1は、第1凹凸部M5と同様に、突出端部がフラット状をなす一対の第2凸部P11と、第2凸部P11の突出方向に対して所定角度で傾斜し且つ各第2凸部P11に連続する一対の第2傾斜部P12とを有している。第1傾斜部Q21と第2傾斜部P12とは、相互に平行をなすように設定してある。また、第2凹凸部P1を設けた一方の側縁部近傍領域を他の部位よりも薄肉に設定し、この薄肉の領域を、連動部材Pと後述する連結部材Qとが相互に干渉して連動部材Pの昇降移動及びスライダ部材Mのスライド移動が規制されることを回避する干渉回避部P4として機能させている。この干渉回避部P4に、外方に突出し後述する連結部材Qのガイド用溝Q21に案内されるガイド用突起部P41を一対設けている。
連結部材Qは、図3〜図5及び図8(図8において想像線に囲まれパターンを付した部位は連結部材Qの一部を示すものである)等に示すように、例えば合成樹脂素材から形成され、スライダ部材Mと略同じ高さ寸法を有する正面視略矩形状をなすものであり、第2噛合部Nに形成した第1横長孔、第1縦長孔及び雌ねじ用第1丸孔にそれぞれ対応する第2横長孔、第2縦長孔及び雌ねじ用第2丸孔を形成している。そして、この連結部材Qは他の部位より内方に膨出させてなる内方膨出部Q2を設け、この内方膨出部Q2に、前記連動部材Pのガイド用突起部P41を案内し得るガイド用溝Q21を一対形成している。各ガイド用溝Q21は、前記第1傾斜部M52及び第2傾斜部P12の傾斜角度に対応し且つ高さ方向に所定寸法離間させてなる第1傾斜片及び第2傾斜片と、各傾斜部(第1傾斜片及び第2傾斜片)の上端部同士を接続する上接続片と、各傾斜部(第1傾斜片及び第2傾斜片)の下端部同士を接続する下接続片とからなり、正面視略菱形状をなすものである。本実施形態では、相対的に高さ位置が高い方を第1傾斜片とし、低い方を第2傾斜片としている。なお、各ガイド用溝Q21は、内方にのみ開口したものである。
このような構成をなす連結部材Qは、連動部材Pのガイド用突起部P41をガイド用溝Q21内に収容し、且つ第2噛合部Nを重合させたスライダ部材Mの横状突出部M21、縦状突出部M22及び雌ねじ突出部M23にそれぞれ第2横長孔、第2縦長孔及び雌ねじ用第2丸孔を嵌合し、雌ねじ用第2丸孔に挿入したねじを雌ねじ突出部M23の雌ネジ部を螺合することにより、連動部材Pとスライダ部材Mとを連結した状態でスライダ部材Mに取り付けられる。この取付状態において、第2噛合部Nはスライダ部材Mと連結部材Qとの間に挟持され、第2噛合部Nの各第2歯部N2は連結部材Qによって被覆されている。このように、スライダ部材M及び連結部材Qが、それぞれ本発明の「第1挟持部材」、「第2挟持部材」として機能し、第1噛合部H2と第2噛合部Nとが厚み方向に相対変位することを規制している(図8参照)。
昇降部材本体Jの上半部には、昇降部材本体Jの平板部J1と対向し得る位置に配される上半部カバー部材Tを適宜の手段で取り付けており、平板部J1と上半部カバー部材Tとの間に、高さ方向に沿って複数の係合爪を設けた同期用ラックUと、同期用ラックUに係合しながら回動し得る同期用ピニオンVとを収容している。同期用ピニオンVの中央部には他の部位より内方に膨出するボス部V1を設け、このボス部V1に後述する同期用シャフトが挿入可能な正面視四角形状をなすシャフト挿入部V2を形成している。上半部カバー部材Tの巾方向略中央部に、上端部近傍部位から下端部まで高さ方向に沿って切り欠いてなる切欠部T1を形成し、この切欠部T1を巾方向に跨ぐ位置に同期用ピニオンVを配するとともに、同期用ラックUの係合爪が切欠部T1に臨むようにしてある。なお、上半部カバー部材Tには、同期用ラックUを保持するためのラック保持用リブT3と、ロッドRを昇降移動可能に保持するロッド保持部T4と、先端部位を屈曲させてなるロッドRの屈曲部R1に添接し上半部カバー部材Tに対するロッドRの位置ずれを防止する位置ずれ防止部T5と、バネSによって下方へ付勢されるロッドRと当接し、このロッドRに取り付けられる昇降レバーL1の初期位置を規定するための当接部T6とを設けている(図5参照)。
このような昇降部材Fを、前記静止部材Eに組み付けるには、上半部カバー部材Tと静止部材本体Hの本体部H1とが添接し得るように静止部材Eに対する昇降部材Fの向きを決定した上で、昇降部材Fをキャップ部材Iの昇降部材用挿通孔I1aに上方から挿通し、静止部材本体Hの下端部に設けた一対の抱込部H12にスライド移動可能に保持させることにより行う。このようにして一体的に組み付けてなる静止部材E及び昇降部材Fを、筐体Bの天面部B2に形成した一対の開口部B21にそれぞれ挿入して筐体Bに組み込み、昇降部材Fを昇降部材収容空間B14sに収容するとともに、静止部材本体Hの本体部H1を、筐体Bの側面部B1に設けた固定部材B14の前縁突出部B14b及び後縁突出部B14cに添接させた状態でねじ等所定の取付部材を用いて取り付ける。なお、固定部材B14の前縁突出部B14b及び後縁突出部B14cの所定部位に切り起こし部を形成し、静止部材本体Hの本体部H1の所定部位をこれら切り起こし部に挿し込むように引っ掛けることにより、静止部材E及び昇降部材Fを筐体Bに取り付けるようにしても構わない。その一例として、図16(同図は、筐体Bの固定板B14に対する静止部材Eの取付態様を示す図であり、同図(a)は要部拡大正面を一部省略して示す図であり、同図(b)は(a)におけるA−A線断面図である)に示すように、固定部材B14の前縁突出部B14b及び後縁突出部B14cにそれぞれ切り起こし部B14bx、B14cxを設ける一方、静止部材本体Hの本体部H1の下縁部に一対の切欠H1xを形成し、これら切欠H1xを切り起こし部B14bx、B14cxに引っ掛けて係合させるともに、本体部H1の上縁部を、固定部材B14の前縁突出部B14b及び後縁突出部B14cにねじ止め等により静止部材Eを筐体Bに取り付けるようにしても構わない。このように引っ掛け係合とねじ止めとを併用するようにしてもよい。このような取付態様を採用することによって、ねじ止めする手間を省略又は軽減することが可能となる。そして、筐体Bの天面部B2の下面側において、各本体部H1のピニオン用丸孔H14から表出する同期用ピニオンVのシャフト挿入部V2に、断面視四角形状をなす棒状の同期用シャフトの端部をそれぞれ挿入する。その結果、昇降部材Fの昇降移動に伴って同期用ピニオンVが同期用シャフトを介して同期回転しながら同期用ラックUの係合爪に順次係合し、左右一対の昇降部材Fが同調して昇降移動し得る。なお、昇降部材本体Jの下端部に、例えば合成樹脂素材から形成された緩衝部材Wを設けるとともに、昇降部材本体Jの所定部位に、静止部材本体Hの一部に干渉することにより昇降部材Fのそれ以上の上昇移動又は下降移動を規制する移動規制部を設けている。本実施形態では、昇降部材本体Jの各側板部J2に高さ方向に沿って所定距離離間させて設けた一対のねじ孔に、それぞれねじ頭を側板部J2より側方に突出させた状態でねじを螺合し、このねじのねじ頭を静止部材Eの抱込部H12に干渉させることにより昇降部材Fのそれ以上の上昇移動又は下降移動を規制するようにしている(図示省略)。また、図10(同図(a)は昇降部材本体Jの要部拡大斜視図であり、同図(b)は静止部材本体Hの要部拡大斜視図であり、同図(c)は昇降部材本体Jと静止部材本体Hとの組付状態を示す要部拡大斜視図である)に示すように、昇降部材本体Jに、内方に向かって切り起こしてなる内方切起片J5を設け、この内方切起片J5を、静止部材本体Hの本体部H1に設けた外方に切り起こしてなる外方切起片H15に干渉させることにより、昇降部材Fのそれ以上の下降移動を規制するようにしても構わない。この場合、内方切起片J5又は外方切起片H15の何れか一方あるいは両方に、緩衝部材(例えば薄板状のゴム等)を設ければよい。なお、図10及び図16に示すように、内方切起片H15、HA15が、抱込部H12を設けた開口部H16の周縁部を内方に屈曲させて形成してものであってもよく、本体部H1(図示例では開口部H16の周縁部)における内方切起片の形成箇所・形状は適宜変更しても構わない。また、内方切起片に対応させて外方切起片の形成箇所や形状は適宜変更してもよい。内方切起片が当接(干渉)する対象は外方切起片に限らず、例えば、昇降部材本体Jの側板部J2に、内方切起片と当接し得る方向に突出するように螺合したねじを内方切起片が当接する対象としてもよい。この場合、ねじを例えば合成樹脂製の被覆部で被覆することにより、内方切起片との当接時に生じる衝撃音を抑制することができる。
また、昇降部材Fを静止部材Eに組み付けた状態において、静止部材Eの第1噛合部H2は、昇降部材Fのスライダ部材Mの第1厚肉部M2と第2厚肉部M3との間に位置し、スライダ部材Mの薄肉部M1に臨む位置に位置付けられた第2噛合部Nの各第2歯部N2にそれぞれ噛合し得る。第1噛合部H2と第2噛合部Nとが相互に噛合している場合、昇降部材Fの昇降移動は規制され、一方、第1噛合部H2と第2噛合部Nとの噛合状態が解除された場合、昇降部材Fの昇降移動は許容される。すなわち、第1噛合部H2と第2噛合部Nとを用いて、昇降部材Fの昇降移動を規制するロック状態又は昇降部材Fの昇降移動を許容するロック解除状態を取り得る噛合機構Gを構成している。
前記第2噛合部Nは、図9に示すように、第1噛合部H2と噛合可能な噛合可能位置(同図(a−1)参照)と、第1噛合部H2との噛合状態を解除し得る噛合解除位置(同図(b―1)参照)との間でスライダ部材Mと共に移動し、前記操作部Lの昇降レバーL1を上昇させる操作力が付与された場合に噛合解除位置(本発明の「係合可能位置」に相当)を取り、前記操作力が停止された場合に噛合可能位置(本発明の「係合解除位置」に相当)を取るように設定してある。
次に、図9を参照して、第2噛合部Nを噛合可能位置と噛合解除位置との間で移動させる方法及び作用について説明する。なお、図9における(a―2)、(b−2)は、それぞれ同図(a―1)、(b−1)を連結部材Qを省略して示す拡大図である。
先ず、第2噛合部Nを噛合可能位置(同図(a―1)参照)から噛合解除位置(同図(b−1)参照)へ移動させるには、前記昇降レバーL1を上方に押し上げる操作力を付与することにより行う。この操作力に連動してロッドR及び連動部材Pが前記バネSの付勢力に抗して上昇することによって、スライダ部材Mに対する連動部材Pの高さ位置が変位し、後述する第1凸部M51と第2凸部P11との当接状態が解除されるとともに、連動部材Pに設けたガイド用突起部P41を連結部材Qのガイド用溝Q21の下接続片及び第1傾斜片に沿って案内させることにより、連結部材Qが前記干渉回避部P4を利用して連動部材Pに近寄る方向に巾方向に沿って移動し、これに伴ってスライダ部材Mも連結部材Qと共に連動部材Pに近寄る方向に巾方向に沿ってスライド移動する。この際、スライダ部材Mが、第1凹凸部M5と第2凹凸部P1が相互に係合し得る方向に沿って、その第2凹凸部P1の第2傾斜部P12を連動部材Pの第1凹凸部M5の第1傾斜部M52に摺動させることにより、スライダ部材Mの移動を確実に行うことができる。その結果、スライダ部材Mと連結部材Qとの間に保持された第2噛合部Nが、連動部材Pに近寄る方向、換言すれば第1噛合部H2から離間する方向に移動して第1噛合部H2と噛合し得ない噛合解除位置に位置付けられる。第2噛合部Nが噛合解除位置に位置付けられた場合、連結部材Qは、第1噛合部H2を被覆し得ない位置に位置付けられており、この連結部材Qとスライダ部材Mとによる第1噛合部H2の挟込状態が解除される。また、第1凹凸部M5及び第2凹凸部P1は、相互に係合した状態をとる(同図(b―2)参照)。
一方、第2噛合部Nの噛合解除位置から噛合可能位置への移動は、前記操作力の停止、つまり昇降レバーL1から手を離す(又は操作力を弱める)動作に伴って行われる。昇降レバーL1から手を離すと、前記バネSの弾性復帰力により連動部材P、ロッドR及び昇降レバーL1が元の位置(操作力付与前の位置)まで下降し、この連動部材Pの下降移動により、第1凹凸部M5の第1傾斜部M52と第2凹凸部P1の第2傾斜部P12とを相互に摺動させながらスライダ部材Mが連動部材Pから離間する方向に巾方向に沿って移動し、連動部材Pの一連の下降移動により、経時的に、第1凹凸部M5の第1傾斜部M52と第2凹凸部P1の第2傾斜部P12との摺動状態が解除され、続いて第2凹凸部P1の第2凸部P11と第1凹凸部M5の第1凸部M51とがそれぞれフラット状の突出端部同士を相互に面的に当接させた状態となり(同図(a―2)参照)、且つ、連動部材Pの他側縁部(第2凹凸部P1を設けていない側の側縁部)が昇降部材本体Jの内面部(側板部J2の内面部)に当接することにより、第2噛合部Nの噛合可能位置から噛合解除位置への退避(後退)移動が禁止される(同図(a―1)参照)。この際、連結部材Qが、そのガイド用溝Q21の上接続片及び第2傾斜片に沿って連動部材Pのガイド用突起部P41を案内させることにより、スライダ部材Mの移動を確実に行うことができる。その結果、スライダ部材Mに保持された第2噛合部Nが、連動部材Pから離間する方向、換言すれば第1噛合部H2に近寄る方向に移動して第1噛合部H2と噛合可能な噛合可能位置に位置付けられる。このように、本実施形態では、第1凸部M51と、第2凸部P11とを用いて、これら第1凸部M51及び第2凸部P11を相互に当接させることにより第2噛合部Nの係合可能位置から係合解除位置への退避移動を禁止する「ストッパ手段」を構成している。また、ガイド用溝Q21とガイド用突起部P41との組み合わせ、及び、第1傾斜部M52と第2傾斜部P12との組み合わせにより、連動部材Pの昇降移動を、第2噛合部Nの噛合可能位置から噛合解除位置への移動又は噛合解除位置から噛合可能位置への移動に変換する「動作変換手段」を構成している。
以上に説明した昇降装置Dを備えた昇降天板付ワゴンAの使用方法について説明する。
先ず、各静止レバーL2に人差し指と小指を掛けながら中指と薬指で昇降レバーL1を押し上げる操作力を付与すると、第1噛合部H2と第2噛合部Nとの噛合状態、及び連結部材Qとスライダ部材Mとによる第1噛合部H2の挟込状態が解除され、昇降部材Fの昇降移動を許容するロック解除状態となり、前記操作力を付与し続けたまま昇降天板Cを任意の高さ位置まで上昇移動又は下降移動させる操作に伴って、昇降部材Fが静止部材Eに対してスライドしながら上昇移動又は下降移動する。そして、昇降天板Cを任意の高さ位置に位置付けた状態で昇降レバーL1に対する前記操作力を停止すると、第1噛合部H2と第2噛合部Nとが噛合し、昇降部材Fの昇降移動が規制されるロック状態となり、昇降天板Cの高さ位置が固定される。なお、一対の昇降部材Fは、各昇降装置Dに高さ位置変更不能に設けられた前記同期用ピニオンVを、そのシャフト挿入部V2に挿入した同期用シャフトにより同期回転させながらそれぞれ同期用ラックUの係合爪に係合させることにより同期して昇降し得るように設定している。また、本実施形態では、第1噛合部H2及び第2噛合部Nにそれぞれ第1歯部H21又は第2歯部N2をそれぞれ2mm間隔で設けているため、昇降天板Cの高さ位置を2mm単位で微調整することができ、昇降天板Cを、この昇降天板付ワゴンAと組み合わせて使用される図示しない机の天板と略面一の高さ位置に設定することが可能となる。
しかして、本発明に係る昇降装置1Dは、図11〜図15に示すように、第2噛合部1Nを挟持する挟持部材(スライダ部材1M、連結部材1Q)のうち、一方の挟持部材(本実施形態では連結部材1Q)に、当該挟持部材の厚み方向の変形を防止する補強部材Xを設けている点において上述した昇降装置Dと異なる。なお、以下の説明において、スライダ部材1M、第2噛合部1N、連結部材1Qを構成する各部位について、上述のスライダ部材M、第2噛合部N、連結部材Qと略同様の構造及び作用を奏するものについては対応する符号の頭文字に「1」を付し、その詳細な説明は省略し、特にスライダ部材M、第2噛合部N、連結部材Qと異なる点について詳述する。
スライダ部材1Mは、図11(同図(a)、(b)、(c)はそれぞれスライダ部材1Mの正面図、背面図、(a)におけるA−A線断面図である)等に示すように、例えば合成樹脂素材からなり、第1厚肉部1M2にその肉厚方向に貫通する貫通孔1M25を形成している。本実施形態では、高さ方向に所定距離離間させた位置に一対の貫通孔1M25を形成している。各貫通孔1M25は、小径部1M25aと、この小径部1M25aと中心を一致させ且つナット1M6を保持し得るナット保持部1M25bとを連続して有し、ナット保持部1M25bが外方側(底面部側)に形成している(同図(c)参照)。ナット保持部1M25bは、背面視略六角形状をなし、このナット保持部1M25bにナット1M6を圧入した状態においてナット保持部1M25b内でのナット1M6の回動を防止する(同図(b)参照)。なお、ナット1M6の内周径を、小径部1M25aの内周径より若干小さく設定し、ナット保持部1M25bにナット1M6を保持した状態において、ナット1M6の内周面が小径部1M25aの内周面よりも若干内方に位置し、後述するボルトYがナット1M6に確実に螺合するようにしている。また、スライダ部材1Mの背面部は所定部位を肉盗みしたリブ構造をなし、他の部位より外方に突出し且つ昇降部材Fに取り付けた状態において昇降部材本体Jの平板部J2に優先して当接する優先当接部1M7をスライダ部材1Mのスライド方向(本実施形態ではスライダ部材1Mの巾方向)に沿って設けている(同図(b)、(c)参照)。本実施形態では、略線状の優先当接部1M7を高さ方向に沿って所定距離離間させた位置に対にして設けている。このように優先当接部1M7を設けることにより、スライダ部材1Mの背面部全体を昇降部材本体Jの平板部J2に当接させる態様と比較してスライダ部材1Mのスライド移動を円滑に行うことができる。なお、本実施形態において、各優先当接部1M7は、貫通孔1M25を跨ぎ得る位置に設けており、貫通孔1M25に重複し得る部位は非連続としている(同図(c)参照)。また、第1厚肉部1M2に、第2噛合部1Nを収容し得る凹陥状の収容部1M24を設けるとともに、この収容部1M24に、この収容部1M24に対する第2噛合部1Nの取付方向を示唆する取付方向指示手段1M24xを設けている。本実施形態では、取付方向指示手段1M24xとして、収容部1M24の縁部から高さ方向に沿って延びる縦状突出部1M24aを用いている(同図(a)参照)。
第2噛合部1Nは、図12(同図(a)、(b)は、それぞれ第2噛合部1Nの正面図、(a)におけるA方向矢視図である)に示すように、例えば薄板の金属素材(板金)から形成され、重合部1N1に、この重合部1N1をスライダ部材1Mの収容部1M24に収容して第1厚肉部1M2に重合させた状態において第1厚肉部1M2の貫通孔1M25と連通する貫通孔1N11を形成している。この貫通孔1N11の内周径をスライダ部材1Mの貫通孔1M25の内周径と略同一又は若干大きく設定している。また、重合部1N1に、スライダ部材1Mの収容部1M24に設けた縦状突出部1M24aに嵌合し得る嵌合部1N12を設けている。
連結部材1Qは、図13(同図(a)、(b)、(c)はそれぞれ連結部材1Qの正面図、背面図、(a)におけるA方向矢視図である)に示すように、例えば合成樹脂素材から形成され、第1厚肉部1M2の貫通孔1M25及び第2噛合部1Nの貫通孔1N11と連通し得る貫通孔1Q1を形成している。この貫通孔1Q1の内周径をスライダ部材1Mの貫通孔1M25の内周径と略同一又は若干大きく設定している。また、この連結部材1Qに、後述する補強部材Xの取付位置を位置決めする位置決め部1Q3を設けている。位置決め部1Q3は、補強部材Xを略緊密に収容し得る凹陥状のものである。この位置決め部1Q3に、補強部材Xの取付方向を示唆する取付方向指示手段1Q3xを設けている。本実施形態では、取付方向指示手段1Q3xとして、位置決め部1Q3を他の部位と区成する段部1Q3aを一部非連続とすることにより、補強部材Xの取付方向を示唆する態様を採用している。また、内方膨出部1Q2に、連動部材Pのガイド用突起部P41を案内し得るガイド用溝1Q21を一対形成している(同図(b)、(c)参照)。各ガイド用溝1Q21は、スライダ部材1Mの前記第1傾斜部1M52及び連動部材Pの第2傾斜部P12の傾斜角度に対応し且つ高さ方向に所定寸法離間させてなる第1傾斜片1Q211及び第2傾斜片1Q212と、各傾斜部(第1傾斜片1Q211及び第2傾斜片1Q212)の上端部同士を接続する上接続片1Q213と、各傾斜部(第1傾斜片1Q211及び第2傾斜片1Q212)の下端部同士を接続する下接続片1Q214とからなり、背面視略菱形状をなすものである。各ガイド用溝1Q21は、内方にのみ開口したものである。
補強部材Xは、図14(同図(a)、(b)は、それぞれ補強部材の正面図、(a)におけるA方向矢視図である)に示すように、例えば薄板の金属素材(板金)から形成され、連結部材1Qの位置決め部1Q3に収容されるものであり、その厚み寸法を、連結部材1Qの位置決め部1Q3を他の部位と区成する段部1Q3aの高さ寸法と略同一又は若干小さく設定している。また、この補強部材Xに、連結部材1Qの位置決め部1Q3に収容した状態において貫通孔1Q1と連通する貫通孔X1を形成している。この貫通孔X1の内周径をスライダ部材1Mの貫通孔1M25の内周径と略同一又は若干大きく設定している。さらに、補強部材Xの一部に、連結部材1Qの取付方向指示手段1Q3xに対応する切欠部X2を形成している。
次に、これらスライダ部材1M、第2噛合部1N、連結部材1Q及び補強部材Xを一体に組み付ける手順について図15(同図はこれら各部材の重合状態を示すものであり、第2噛合部1Nをパターンを付して示している)を参照して説明する。
先ず、昇降部材Fの昇降部材本体Jのスライダ部材保持部J3に、スライダ部材1Mの被保持部1M4を保持させるようにしてスライダ部材1Mを昇降部材本体Jに取り付け、次いで、このスライダ部材1Mに第2噛合部1Nを、その嵌合部1N12をスライダ部材1Mの収容部1M24に設けた縦状突出部1M24aに嵌合させて第2噛合部N1をスライダ部材1Mに対して面方向に回動不能な状態でスライダ部材1Mに重合する。引き続き、連結部材1Qを、そのガイド用溝1Q21内に連動部材Pの図示しない前記ガイド用突起部P41を収容するととともに、貫通孔1Q1を第2噛合部1Nの貫通孔1N11に一致させるようにして第2噛合部1Nに重合する。そして、補強部材Xを、連結部材1Qの取付方向指示手段1Q3xに切欠部X2を添接するように連結部材1Qの位置決め部1Q3に収容し、補強部材Xを連結部材1Qに対して面方向に回動不能な状態で連結部材1Qに重合する。この重合状態において、各貫通孔1M25、貫通孔1N11、貫通孔1Q1、貫通孔X1が重合方向に連通し、補強部材Xの各貫通孔X1からそれぞれボルトYを挿入し、貫通孔1M25のナット保持部1M25bに保持させたナット1M6に緊締することにより、第2噛合部1Nはスライダ部材1Mと連結部材1Qとの間に第1噛合部H2に対する噛合方向への相対移動を許容した状態で挟持されるとともに、連結部材1Qが補強部材Xに圧接されている。また、スライダ部材1Mは昇降部材本体Jの平板部J1に当接しバックアップされている。そして、噛合機構1Gがロック状態にある場合、すなわち第2噛合部1Nが噛合可能位置に位置付けられ第1噛合部H2の第1歯部H21と第2歯部1N2とが相互に噛合している場合、第1噛合部H2及び第2噛合部1Nをスライダ部材1Mと連結部材1Qとの間に挟み込むことにより、第1噛合部H2と第2噛合部Nとが厚み方向に相対変位することを規制している。
このように、少なくとも噛合機構1Gがロック状態にある場合に、第1噛合部H2及び第2噛合部1Nを挟持部材として機能するスライダ部材1Mと連結部材1Qとの間に挟み込むことにより、第1噛合部H2と第2噛合部1Nとが厚み方向に相対変位することを規制し、これら第1噛合部H2及び第2噛合部1Nを確実に噛合させることができ、第1噛合部H2と第2噛合部1Nとが厚み方向に相対変位(面ずれ)することによって生じ得る噛合状態の悪化を防止し、より良好な噛合状態を確保することが可能となる。しかも、スライダ部材1M及び連結部材1Qをそれぞれ平板部J1、補強部材Xでバックアップし、スライダ部材1M及び連結部材1Qの剛性を有効に高めているため、外部からの衝撃等により第2噛合部1Nに対して、第1歯部H21に対する第2歯部1N2の噛合度合いをさらに深くする方向へ過度の力が作用した場合であっても、従来のような不具合、つまり第2噛合部1Nの撓み変形に応じてスライダ部材1M及び連結部材1Qが厚み方向に変形する、という不具合が生じず、第1歯部H21に対する第2歯部1N2との良好な噛合状態を維持でき、実用性に優れたものとなる。
特に、スライダ部材1Mを挟持部材として機能させているため、挟持部材とは別に専用のスライダ部材を用いる態様と比較して構造の簡略化及び部品点数の削減を図ることができる。
加えて、スライダ部材1M、第2噛合部1N、連結部材1Q及び補強部材Xに、これら各部材をこの順で重合させた状態においてその重合方向に連通する貫通孔1M25、1N11、1Q1、X1をそれぞれに形成するとともに、スライダ部材1Mの貫通孔1M25にナット1M6を設け、補強部材Xの貫通孔X1から挿入したボルトYをナット1M6に緊締することにより、スライダ部材1M、第2噛合部1N及び連結部材1Qと共に補強部材Xを共締めしているため、簡単な構造でありながらスライダ部材1Mと連結部材1Qとの間に第2噛合部1Nを強固に挟み込むことができ、第2噛合部1Nの厚み方向への変位を確実に防止することができるのみならず、補強部材Xを連結部材1Qに圧接させる作業も容易に行うことができ、スライダ部材1Mと連結部材1Qとの間に第2噛合部1Nを挟持させる作業とは別に補強部材Xを別途ボルト止めする作業を省略でき、取付作業効率を向上することができる。
また、上述したように、補強部材Xにより第1噛合部H2及び第2噛合部1Nの撓み変形を防止できるため、第1噛合部H2及び第2噛合部1Nを板材から形成し、第1歯部H21及び第2歯部1N2のピッチを数mm単位に設定することが可能となり、静止部材Eに対する昇降部材Fの高さ位置、すなわち筐体Bに対する昇降天板Cの高さ位置を数mm単位で微調整することが可能であり、利用者の種々の使用態様に柔軟に対応することができる昇降装置となる。
殊に、補強部材Xを剛性の高い素材、実施形態では金属素材から形成しているため、連結部材1Qの撓み変形をより確実に防止することができる。
補強部材Xにバックアップされる連結部材1Qが合成樹脂素材から形成されたものであるため、第1噛合部H2及び第2噛合部1Nをそれぞれ板金素材から形成したものであっても、第2噛合部1Nの係合方向への移動時に生じる摩擦音、衝撃音を低減することができる。
また、補強部材Xにバックアップされる連結部材1Qに、この連結部材1Qに対する補強部材Xの取付位置を位置決めする位置決め部1Q3を設けているため、補強部材Xの取付作業の簡便性向上に資する。
特に、位置決め部1Q3が、補強部材Xを略緊密に収容し得る凹陥状のものであるため、位置決め部1Q3内で補強部材Xが面方向に回動することを防止することができるとともに、連結部材1Qの厚み寸法内に補強部材Xを収容することができ、補強部材Xを設けることによって不要に嵩が増えるという不具合を回避することができる。
さらに、挟持部材として機能するスライダ部材1M、連結部材1Qのうち、連結部材1Qが補強部材Xにバックアップされ、スライダ部材1Mが昇降部材Fのバックアップ面(本実施形態では昇降部材本体Jの平板部J1)に当接しているため、スライダ部材1M、連結部材1Qの何れにも補強部材Xを設ける態様と比較して、部品点数の削減、取付工数の簡略化及びコストの削減を図ることができる。
加えて、噛合機構G1がロック状態にある場合、複数の第1歯部H21と複数の第2歯部1N2とを相互に噛合させるようにしたものであるため、安定した噛合状態を実現することができ、且つ耐荷重性も向上する。
なお、本発明は、以上に詳述した実施形態に限られるものではない。
前記実施形態では、それぞれ歯部を有する第1噛合部と第2噛合部とを用いて昇降部材の昇降移動を規制するロック状態又は昇降部材の昇降移動を許容するロック解除状態を取り得る本発明の係合機構たる噛合機構を構成していたが、係合機構として、静止部材又は昇降部材の何れか一方に設けられ複数の係合凹部を有する第1係合体と、他方に設けられ係合凹部に係合可能なピン又は係合爪を有する第2係合体とを用いたものや、ラチェット方式のもの等、静止部材又は昇降部材の何れか一方に設けられ複数の第1係合部を有する第1係合体と、他方に設けられ第1係合部に係合可能な第2係合部を有する第2係合体とを用いたものであればどのような態様を採用してもよい。なお、係合機構がロック状態にある場合に、単数の第1係合部と単数の第2係合部とが相互に係合する態様であっても構わない。
また、前記実施形態に示すスライダ部材を用いず、第2係合体を昇降部材又は静止部材のバックアップ面に直接添接させた態様の場合、このバックアップ面が第1挟持部又は第2挟持部材として機能する。
また、第1挟持部材及び第2挟持部材の何れもが昇降部材又は静止部材のバックアップ面に添接していない場合は、第1挟持部材及び第2挟持部材のそれぞれに補強部材を設ければよい。
さらに、第1挟持部材及び第2挟持部材として、前記実施形態に示すスライダ部材や連結部材ではなく、専ら第2係合体を挟持する機能のみを有する専用の挟持部材を採用しても構わない。
また、補強部材は、挟持部材の剛性向上に寄与し、挟持部材の厚み方向の変形を防止するものであればよく、その形状や、挟持部材に対する取付位置(収容位置)を、挟持部材に対する第2係合体の相対位置(換言すれば挟持部材が撓み変形しやすい箇所)等を考慮して適宜変更してもよい。なお、前記実施形態のように、補強部材の貫通孔補強部材の貫通孔周縁部に、ボルトの頭部を収容し得る凹陥部を形成してもよい。
挟持部材、第2係合体及び補強部材を相互に相対変位不能に組み付ける態様として、前述したボルトとナットとの緊締によらず、例えば、これら各部材を一括又は相互に重合(隣接)する部材同士毎に結束する結束(係合)手段を用いた態様を採用しても構わない。
また、第1係合体及び第2係合体が各係合部を板材の一部又は縁部に刻設したものに限らず、ラチェット等ある程度厚みのあるものであってもよい。
補強部材にバックアップされる第1挟持部材又は第2挟持部材の何れか一方或いは両方に設けられ挟持部材に対する補強部材の取付位置を位置決めする位置決め部として、補強部材を略緊密に収容し得る凹陥状のものに替えて、又は併用して、補強部材に設けた係合部が係合可能な被係合部(フック部や係合孔等)を採用してもよい。
また、係合機構がロック解除状態にある場合、すなわち第2係合体を係合解除位置に位置付けた場合に、第1係合体が挟持部材の間で挟み込まれる状態を解除するようにしたものであれば、ロック解除状態において第1係合部が挟持部材と干渉しないため、静止部材に対する昇降部材のスムーズな昇降移動を実現することができる。一方、係合機構がロック状態にある場合のみならず、ロック解除状態(すなわち第2係合体が係合解除位置に位置付けられた場合)にある場合にも、第1係合体及び第2係合体を挟持部材の間に挟み込むようにしてもよい。
また、前記実施形態では、隣接する第1歯部間の離間距離、及び隣接する第2歯部間をそれぞれ略2mmに設定したものを例示したが、これに限らず、任意の数値に設定してもよいことはいうまでもない。
また、より良好な係合(噛合)状態を確保するために第2係合体の第2係合部の本数を増加してもよい。その一例として、図17(同図(a)は第2噛合部1Nの一変形例である第2噛合部2Nの正面図であり、同図(b)はスライダ部材1Mの一変形例であるスライダ部材2Mの正面図であり、前記実施形態における符号の頭数字「1」を「2」に替えて示すものである)に示すように、第2噛合部2Nの縁部のうち、第2歯部2N2を設けた側の縁部の高さ寸法を、前記実施形態で示す第2噛合部1Nのそれよりも大きくし、この縁部に第2歯部2N2を多数(図示例では14本)設けたものが挙げられる(同図(a)参照)。なお、第2噛合部2Nの形状に対応させて、スライダ部材2Mのうち、第2噛合部2Nを収容し得る凹陥状の収容部2M24の形状を適宜変形させてもよいことはいうまでもない(同図(b)参照)。
また、上述した昇降装置を、静止部材を設けてなる椅子本体と、昇降部材に支持され椅子本体に対する高さ位置を調整可能な肘掛けとを備えた椅子に適用しても構わない。
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。