JP2007070580A - 複合化改質澱粉の製造方法及び複合化改質澱粉 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 生澱粉又は改質澱粉(澱粉粒子形状を保持したままで糊化された澱粉)を、界面活性剤の共存下で高圧処理することにより改質した澱粉であって同時にその糊化した澱粉のアミロースが前記界面活性剤と複合化した複合化澱粉でもある複合化改質澱粉を製造する方法。この方法により製造される複合化改質澱粉。
【選択図】 図1
Description
上記課題を解決するための本願第1発明の構成は、生澱粉又は改質澱粉(澱粉粒子形状を保持したままで糊化された澱粉)を、界面活性剤の共存下で高圧処理することにより、改質澱粉であって、同時に、その糊化した澱粉のアミロースが前記界面活性剤と複合化した複合化澱粉でもある複合化改質澱粉を製造する、複合化改質澱粉の製造方法である。
上記課題を解決するための本願第2発明の構成は、前記第1発明に係る改質澱粉が、水分の存在下に生澱粉を加熱又は加圧して調製されたものである、複合化改質澱粉の製造方法である。
上記課題を解決するための本願第3発明の構成は、前記第1発明又は第2発明に係る高圧処理が100MPa以上の加圧による処理である、複合化改質澱粉の製造方法である。
上記課題を解決するための本願第4発明の構成は、前記第1発明〜第3発明のいずれかに係る高圧処理を、下記(1)及び/又は(2)の条件下で行う、複合化改質澱粉の製造方法である。
上記課題を解決するための本願第5発明の構成は、澱粉粒子形状を保持したままで糊化された改質澱粉であり、同時に、その糊化した澱粉のアミロースが界面活性剤と複合化した複合化澱粉でもある、複合化改質澱粉である。
上記課題を解決するための本願第6発明の構成は、前記第5発明に係る複合化改質澱粉において、下記の式1で表される糊化度が15%以上である、複合化改質澱粉である。
(式1において、△Hg1は複合化改質澱粉の示差走査型熱量計分析での50°C〜70°C付近に検出される糊化吸熱ピーク面積であり、△Hg2は複合化改質前の未処理状態における当該生澱粉の示差走査型熱量計分析での50°C〜70°C付近に検出される糊化吸熱ピーク面積である。)
(第7発明の構成)
上記課題を解決するための本願第7発明の構成は、前記第6発明に係る糊化度が20%以上である、複合化改質澱粉である。
上記課題を解決するための本願第8発明の構成は、前記第5発明に係る複合化改質澱粉において、下記の式2で表される複合化度が2.5%以上である、複合化改質澱粉である。
(式2において、△Hc1は複合化改質澱粉の示差走査型熱量計分析での90°C〜120°C付近に検出されるアミロースと界面活性剤との複合化物融解吸熱ピーク面積であり、△Hc2は、当該生澱粉に脂質が内在する場合において、複合化改質前の未処理状態における当該生澱粉の示差走査型熱量計分析での90°C〜120°C付近に検出されるアミロースと上記の内在性脂質との複合化物融解吸熱ピーク面積であり、△Hg2は複合化改質前の未処理状態における当該生澱粉の示差走査型熱量計分析での50°C〜70°C付近に検出される糊化吸熱ピーク面積である。当該生澱粉に脂質が内在しない場合には、式2から△Hc2の項を削除する。)
上記の第8発明において、式2の計算上、生澱粉に脂質が内在する場合には、△Hc1から△Hc2を差し引く。その理由は、△Hc1の根拠となるピークと同じ温度領域に、△Hc2の根拠となる(複合化度と無関係な)ピークが出るので、(△Hc1−△Hc2)の演算を行わないと、正確な複合化度を算出できないためである。
上記課題を解決するための本願第9発明の構成は、前記第8発明に係る複合化度が3.5%以上である、複合化改質澱粉である。
上記課題を解決するための本願第10発明の構成は、前記第5発明〜第9発明のいずれかに係る複合化改質澱粉が、澱粉精製前の穀粉である、とうもろこし粉、米粉、小麦粉、大麦粉、そば粉、ポテト粉、甘薯粉、キャサバ粉、葛粉、蕨粉及び緑豆粉から選ばれる1種又は2種以上である、複合化改質澱粉である。
上記課題を解決するための本願第11発明の構成は、前記第5発明〜第9発明のいずれかに係る複合化改質澱粉が、コーンスターチ、ハイアミロースコーンスターチ、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、米澱粉、小麦澱粉、大麦澱粉、サゴ澱粉、甘薯澱粉、葛澱粉、蕨澱粉及び緑豆澱粉から選ばれる1種又は2種以上である、複合化改質澱粉である。
上記課題を解決するための本願第12発明の構成は、前記第5発明〜第11発明のいずれかに係る界面活性剤が食品用乳化剤である、複合化改質澱粉である。
第1発明に係る複合化改質澱粉の製造方法によれば、澱粉粒子形状を保持したままで糊化された澱粉であって、しかも糊化した澱粉のアミロースが界面活性剤と複合化された複合化改質澱粉を、換言すれば、改質澱粉の特性と複合化澱粉の特性とを同時に備えた澱粉を、製造することができる。
前記したように、第1発明の製造方法では生澱粉の他、未複合化状態の改質澱粉を原料とすることもできるが、このような未複合化状態の改質澱粉としては、前記の特許文献1に開示された技術による改質澱粉も、本願発明者が開発した高圧処理による澱粉改質法に基づく改質澱粉も利用できることを確認している。
複合化改質澱粉の製造方法において、高圧処理における加圧の程度は必ずしも限定されないが、好ましくは100MPa以上の加圧による処理を行う。更に好ましくは、200MPa以上の加圧による処理を行う。
複合化改質澱粉の製造方法において、高圧処理における各種の実施条件は必ずしも限定されないが、好ましくは原料の最終水分含量が第4発明の(1)に規定する範囲内であり、及び/又は、処理時間が第4発明の(2)に規定する範囲内である。
第5発明の複合化改質澱粉は、澱粉粒子形状を保持したままで糊化された澱粉であって、しかも糊化した澱粉のアミロースが界面活性剤と複合化されているため、改質澱粉の特性と複合化澱粉の特性とを同時に備える。
複合化改質澱粉の糊化の度合いは必ずしも限定されないが、好ましくは第6発明に定義する糊化度において15%以上であり、更に好ましくは第7発明に規定するように20%以上である。
複合化改質澱粉におけるアミロースの複合化の度合いは必ずしも限定されないが、好ましくは第8発明に定義する複合化度において2.5%以上であり、更に好ましくは第9発明に規定するように3.5%以上である。
本願発明者は、現在に到るまで、複合化改質澱粉に加工することが困難あるいは不可能である種類の澱粉を知らない。従って、複合化改質澱粉の原料たる澱粉の種類については、全く限定がない。
本願発明者は、複合化改質澱粉が食品用にのみ使用できるものである、とは考えていない。従って、複合化に用いる界面活性剤の種類については、前記の複合化効果を奏し得るものである限りにおいて全く限定がない。しかしながら、より好ましくは、食品用乳化剤が用いられる。
本発明に係る複合化改質澱粉の製造方法は、生澱粉又は改質澱粉を、界面活性剤の共存下で高圧処理することにより、改質澱粉であって同時にその糊化した澱粉のアミロースが前記界面活性剤と複合化した複合化澱粉でもある複合化改質澱粉を製造する点に特徴がある。
本発明に係る複合化改質澱粉は、澱粉粒子形状を保持したままで糊化された改質澱粉であり、同時にその糊化した澱粉のアミロースが界面活性剤と複合化した複合化澱粉でもある点に特徴がある。現在までのところ、本願発明者は、上記した複合化改質澱粉の製造方法によって本発明に係る複合化改質澱粉を得ているが、この複合化改質澱粉は、将来的には他の製造方法によって得られる可能性もあり、それらの複合化改質澱粉も、勿論、本発明に係る複合化改質澱粉に該当する。
(式1において、△Hg1は複合化改質澱粉の示差走査型熱量計分析での50°C〜70°C付近に検出される糊化吸熱ピーク面積であり、△Hg2は複合化改質前の未処理状態における当該生澱粉の示差走査型熱量計分析での50°C〜70°C付近に検出される糊化吸熱ピーク面積である)。
(式2において、△Hc1は複合化改質澱粉の示差走査型熱量計分析での90°C〜120°C付近に検出されるアミロースと界面活性剤との複合化物融解吸熱ピーク面積であり、△Hc2は、当該生澱粉に脂質が内在する場合において、複合化改質前の未処理状態における当該生澱粉の示差走査型熱量計分析での90°C〜120°C付近に検出されるアミロースと上記の内在性脂質との複合化物融解吸熱ピーク面積であり、△Hg2は複合化改質前の未処理状態における当該生澱粉の示差走査型熱量計分析での70°C付近に検出される糊化吸熱ピーク面積である。当該生澱粉に脂質が内在しない場合には、式2から△Hc2の項を削除する)。
〔実施例における測定・観察〕
(1)結晶構造のX線回折測定
澱粉の結晶構造を分類する手法としてX線回折測定があり、澱粉種によって、このX線回折図形が異なることが知られている。即ち、コーンスターチ、小麦澱粉、米澱粉等の穀類澱粉ではA型、馬鈴薯澱粉等の根茎や球根類澱粉ではB型、サゴ澱粉、タピオカ澱粉等の根や豆類澱粉はその中間型のC型図形に分類されている。
(2)糊化度・複合化度
糊化度及び複合化度は、示差走査型熱量計(DSC)分析で算出した。即ち、実施例に係る複合化改質澱粉や、比較用の生澱粉、改質澱粉等の澱粉試料を水/乾燥澱粉が重量比で7/3以上(分数として、7/3又はそれより大きな値)となるように調整後、ステンレススチール製大容量カプセルに封入し、示差走査型熱量計(Perkin−Elmaer社製 Diamond DSC)により昇温速度10°C/min、20°C〜150°Cの範囲でそのエンタルピー変化(ΔH)を測定し、50°C〜70°C付近に検出される糊化吸熱ピーク面積(ΔHg)、90°C〜120°C付近に検出されるアミロースと界面活性剤又は内在性脂質との複合化物融解吸熱ピーク面積(ΔHc)を求めた。そして、前記した「式1」によって糊化度(%)を、前記した「式2」によって複合化度(%)を、それぞれ算出した。
(3)顕微鏡観察
下記の各実施例においては、各種の高圧処理条件(圧力・温度・水分含量・添加界面活性剤種)を選択的に制御することで、幅広い糊化度の複合化改質澱粉を製造することができたが、これらの複合化改質澱粉の粒状態について顕微鏡観察を行ったところ、いずれの糊化度のものでも、澱粉粒状を保持していた。
複合化素材(界面活性剤)としてラウリン酸ナトリウム(関東化学株式会社製)を蒸留水に加え、60°Cで30分攪拌し20%w/wの分散液を調製した。この分散液を、ラウリン酸ナトリウム固形分添加量が澱粉固形分当たり5%となるように小麦澱粉へ添加混合し、最終水分含量50%w/wとなるように水分調整したものをレトルト用ポリ袋に封入した。これを超高圧装置(テラメックス株式会社製HPS−1400)により500MPaの圧力下で40°C、1時間処理し、蒸留水でアミロースと未複合なラウリン酸ナトリウムを洗浄除去した後、凍結乾燥させ複合化改質小麦澱粉を得た。
複合化素材(界面活性剤)として、ショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ(株)社製、商品名:リョートーシュガーエステルL−1695)、ジグリセリンモノエステル(太陽化学(株)社製、商品名:サンソフトQ−17D)、ソルビタン脂肪酸エステル(理研ビタミン(株)社製、商品名:L−300)、ポリグリセリン脂肪酸エステル(理研ビタミン(株)社製、商品名:ポエムJ−0021)を、それぞれ用いた。
複合化素材(界面活性剤)として酵素分解レシチン(理研ビタミン(株)社製、商品名:レシマールEL)を蒸留水に加え、60°Cで30分攪拌して30%w/w分散液を調製した。この分散液を、酵素分解レシチン固形分添加量が澱粉固形分当たり1、5、10%となるようにタピオカ澱粉へ添加混合し、最終水分含量70%w/wとなるように水分調整したものをレトルト用ポリ袋に封入した。これらを、超高圧装置(テラメックス株式会社製HPS−1400)によって、500MPaの圧力下で50°C、1時間処理し、蒸留水でアミロースと未複合な酵素分解レシチンを洗浄除去した後、凍結乾燥させ、複合化改質タピオカ澱粉を得た。
複合化素材(界面活性剤)としてラウリン酸ナトリウム(関東化学(株)社製)を蒸留水に加え、60°Cで30分攪拌して20%w/w分散液を調製した。この分散液を、ラウリン酸ナトリウム固形分添加量が澱粉固形分当たり5%となるようにコーンスターチへ添加混合し、最終水分含量30%〜90%w/wとなるようにそれぞれ水分調整したものをレトルト用ポリ袋に封入した。これらを超高圧装置(テラメックス株式会社製HPS−1400)により600MPaの圧力下で40°C、1時間処理を行い、蒸留水でアミロースと未複合なラウリン酸ナトリウムを洗浄除去した後、凍結乾燥させ複合化改質澱粉を得た。これら試料の糊化度と複合化度はDSC分析により算出した。これらの糊化度と複合化度の算出結果を表4に示す。
複合化素材(界面活性剤)としてラウリン酸ナトリウム(関東化学(株)社製)を蒸留水に加え、60°Cで30分攪拌して20%w/w分散液を調製した。この分散液を、ラウリン酸ナトリウム固形分添加量が澱粉固形分当たり0、1.5、3、5及び10%となるようにコーンスターチへそれぞれ添加混合し、最終水分含量70%w/wとなるように水分調整したものをレトルト用ポリ袋に封入した。これらを超高圧装置(テラメックス株式会社製HPS−1400)により600MPaの圧力下で40°C、1時間処理を行い、蒸留水でアミロースと未複合なラウリン酸ナトリウムを洗浄除去した後、凍結乾燥させ複合化改質澱粉を得た。これら試料の糊化度と複合化度はDSC分析により算出した。これらの糊化度と複合化度の算出結果を表5に示す。
複合化素材(界面活性剤)としてラウリン酸ナトリウム(関東化学(株)社製)を蒸留水に加え、60°Cで30分攪拌して20%w/w分散液を調製した。この分散液を、ラウリン酸ナトリウム固形分添加量が澱粉固形分当たり5%となるようにコーンスターチへそれぞれ添加混合し、最終水分含量60%w/wとなるように水分調整したものをレトルト用ポリ袋に封入した。これを、超高圧装置(テラメックス株式会社製HPS−1400)により、600MPaの圧力下、40°Cで、1、5、10、30及び60分処理をそれぞれ行い、蒸留水でアミロースと未複合なラウリン酸ナトリウムを洗浄除去した後、凍結乾燥させ複合化改質澱粉を得た。これら試料の糊化度と複合化度をDSC分析により算出した。これらの糊化度と複合化度の算出結果を表6に示す。
複合化素材(界面活性剤)として、ショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ(株)社製、商品名:リョートーシュガーエステルL−1695)、ジグリセリン脂肪酸エステル(理研ビタミン(株)社製、商品名:ポエムDM−100)、ジグリセリン脂肪酸エステル(太陽化学(株)社製、商品名:サンソフトQ−17D)、酵素分解レシチン(理研ビタミン(株)社製、商品名:レシマールEL)、ソルビタン脂肪酸エステル(理研ビタミン(株)社製、商品名:L−300)、グリセリン脂肪酸エステル(太陽化学(株)社製、商品名:サンソフト♯8000)をそれぞれ用いた。
複合化素材(界面活性剤)としてジグリセリン脂肪酸エステル(太陽化学(株)社製、商品名:サンソフトQ−17D)を蒸留水に加え、60°Cで30分攪拌して10%w/w分散液を調製した。この分散液を、ジグリセリン脂肪酸エステル固形分添加量が澱粉固形分当たり5%となるようにタピオカ澱粉へ添加混合し、最終水分含量70%w/wとなるように水分調整したものをレトルト用ポリ袋に封入した。これを超高圧装置(テラメックス株式会社製HPS−1400)により300MPaの圧力下で、20、30、40、50及び60°Cで、それぞれ1時間の処理を行った。これらを、蒸留水でアミロースと未複合な複合化素材を洗浄除去した後、凍結乾燥させ複合化改質澱粉を得た。これら試料の糊化度と複合化度をDSC分析により算出した。これらの糊化度と複合化度の算出結果を表8に示す。
複合化素材(界面活性剤)としてジグリセリン脂肪酸エステル(太陽化学(株)社製、商品名:サンソフトQ−17D)を蒸留水に加え、60°Cで30分攪拌して20%w/w分散液を調製した。この分散液を、ジグリセリン脂肪酸エステル固形分添加量が澱粉固形分当たり5%となるように、各種澱粉(コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、小麦澱粉、米澱粉、サゴ澱粉)へ添加混合し、最終水分含量50%w/wとなるように水分調整したものをレトルト用ポリ袋に封入した。これらを超高圧装置(テラメックス株式会社製HPS−1400)により500MPaの圧力下で50°C、1時間処理を行い、蒸留水でアミロースと未複合なジグリセリン脂肪酸エステルを洗浄除去した後、凍結乾燥させ複合化改質澱粉を得た。これら試料の糊化度と複合化度を、DSC分析により算出した。これらの糊化度と複合化度の算出結果を表9に示す。
複合化素材(界面活性剤)としてジグリセリン脂肪酸エステル(太陽化学(株)社製、商品名:サンソフトQ−17D)を蒸留水に加え、60°Cで30分攪拌して20%w/w分散液を調製した。この分散液を、ジグリセリン脂肪酸エステル固形分添加量が澱粉固形分当たり5%となるようにタピオカ澱粉へ添加混合し、最終水分含量60%w/wとなるように水分調整したものをレトルト用ポリ袋に封入した。これを超高圧装置(テラメックス株式会社製HPS−1400)により0.1、100、200、400、500、600、800及び1000MPaの圧力下で、それぞれ40°C、1時間処理を行った。これらを、蒸留水でアミロースと未複合なジグリセリン脂肪酸エステルを洗浄除去した後、凍結乾燥させ複合化改質澱粉を得た。これらの試料の糊化度と複合化度をDSC分析により算出した。これらの糊化度と複合化度の算出結果を表10に示す。
複合化素材(界面活性剤)としてソルビタン脂肪酸エステル(理研ビタミン(株)社製、商品名:L−300)を蒸留水に加え、60°Cで30分攪拌して、20%w/w分散液を調製した。この分散液を、ソルビタン脂肪酸エステル固形分添加量が澱粉固形分当たり5%となるように、糊化度が37%である熱処理改質馬鈴薯澱粉(水分含量90%、58°C、10分処理)及び糊化度が41%である圧力処理改質馬鈴薯澱粉(水分含量70%、600MPa、40°C、1時間処理)へ添加混合し、最終水分含量50%w/wとなるように水分調整したものをレトルト用ポリ袋に封入した。これらを超高圧装置(テラメックス株式会社製HPS−1400)により600MPaの圧力下で50°C、30分処理を行った。これを、蒸留水でアミロースと未複合なソルビタン脂肪酸エステルを洗浄除去した後、凍結乾燥させて複合化改質澱粉を得た。これらの試料の糊化度と複合化度をDSC分析により算出した。これらの糊化度と複合化度の算出結果を表11に示す。
複合化素材(界面活性剤)としてショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ(株)社製、商品名:リョートーシュガーエステルL−1695)を蒸留水に加え、60°Cで30分攪拌して20%w/w分散液を調製した。この分散液を、ショ糖脂肪酸エステル固形分添加量が澱粉固形分当たり5%となるように、糊化度が61%である熱処理改質コーンスターチ(水分含量90%、68℃、90秒処理)及び糊化度が62%である圧力処理改質馬鈴薯澱粉(水分含量70%、500MPa、40°C、30分間処理)へ添加混合し、最終水分含量50%w/wとなるように水分調整したものをレトルト用ポリ袋に封入した後、超高圧装置(テラメックス株式会社製HPS−1400)により600MPaの圧力下で、50°C、30分処理を行った。これを、蒸留水でアミロースと未複合なショ糖脂肪酸エステルを洗浄除去した後、凍結乾燥させて複合化改質澱粉を得た。これらの試料の糊化度と複合化度をDSC分析により算出した。これらの糊化度と複合化度の算出結果を表12に示す。
以下において、複合化改質澱粉の糊化度(%)、複合化度(%)に加えて老化度、粘度特性変化及び粒子構造の維持を併せ評価した試験例1〜試験例3について述べる。これらの試験例における老化度と粘度特性変化との評価方法は、それぞれ次の通りである。
各試験例に係る複合化改質澱粉、比較用の生澱粉、改質澱粉等の試料に対して、それぞれ水分含量70%となるように蒸留水を加えて混合した後、密閉容器内に4°Cで1、2、5日間保存した。その後、試料をそれぞれステンレススチール製の大容量カプセルに封入し、示差走査型熱量計(Perkin−Elmaer社製 Diamond DSC)により、昇温速度10°C/min、20°C〜150°Cの範囲で測定し、50°C〜70°C付近に検出される老化結晶融解吸熱ピーク面積(△Hr)を求めた。そして、△Hrと、△Hg2(複合化改質前の未処理状態における当該生澱粉のDSC分析での50°C〜70°C付近に検出される糊化吸熱ピーク面積)とから、下記の「式3」によって老化度(%)を算出した。
(試験例における粘度特性変化の評価方法)
各試験例に係る複合化改質澱粉、比較用の生澱粉、改質澱粉等の試料に、それぞれ蒸留水を加えて8%w/w濃度になるように懸濁液を調整した。これらの懸濁液のそれぞれ28gを用い、ラピッド・ビスコ・アナライザー(ニューポートサイエンティフィック社製 RVA−4)により、以下の温度プログラムにて粘度(RVU)測定を行った。
(試験例1)
複合化素材(界面活性剤)としてオレイン酸ナトリウム(関東化学(株)社製)を蒸留水に加え、60°Cで30分攪拌して20%w/w分散液を調製した。この分散液を、オレイン酸ナトリウム固形分添加量が澱粉固形分当たり0.5、1、5%となるようにタピオカ澱粉へ添加混合し、最終水分含量70%w/wとなるように水分調整したものをレトルト用ポリ袋に封入した。これを超高圧装置(株式会社山本水圧工業所製HYPREX R7K―3−15)により500MPaの圧力下で50°C、15分間処理を行った。これらを、蒸留水でアミロースと未複合なオレイン酸ナトリウムを洗浄除去した後、凍結乾燥させ複合化改質澱粉を得た。
複合化素材(界面活性剤)としてジグリセリン脂肪酸エステル(太陽化学(株)社製、商品名:サンソフトQ−17D)を蒸留水に加え、60°Cで30分攪拌し20%w/w分散液を調製した。この分散液を、ジグリセリン脂肪酸エステル固形分添加量が澱粉固形分当たり5%となるようにタピオカ澱粉へ添加混合し、最終水分含量60%w/wとなるように水分調整したものをレトルト用ポリ袋に封入した。これを超高圧装置(株式会社山本水圧工業所製HYPREX R7K―3−15)により、0.1(常圧)、100、150、200、300、400、500、600MPaの圧力下で50°C、15分間処理を行った。これらを、蒸留水でアミロースと未複合なジグリセリン脂肪酸エステルを洗浄除去した後、凍結乾燥させ複合化改質澱粉を得た。
複合化素材(界面活性剤)としてジグリセリン脂肪酸エステル(太陽化学(株)社製、商品名:サンソフトQ−17D)を蒸留水に加え、60°Cで30分攪拌し20%w/w分散液を調製した。この分散液を、ジグリセリン脂肪酸エステル固形分添加量が澱粉固形分当たり0.05、0.1、0.25、0.5、1、5%となるようにタピオカ澱粉へ添加混合し、最終水分含量70%w/wとなるように水分調整したものをレトルト用ポリ袋に封入した。これらを、超高圧装置(株式会社山本水圧工業所製HYPREX R7K―3−15)により、300MPaの圧力下で50°C、15分間処理を行った。これらを、蒸留水でアミロースと未複合なジグリセリン脂肪酸エステルを洗浄除去した後、凍結乾燥させて、複合化改質澱粉を得た。
以上の試験例1〜試験例3の結果から、複合化素材(界面活性剤)の種類や、複合化度、糊化度の違いにより、複合化改質澱粉における粘度特性等の物性の改変をコントロールでき、老化抑制率も制御できることが分かる。
Claims (12)
- 生澱粉又は改質澱粉(澱粉粒子形状を保持したままで糊化された澱粉)を、界面活性剤の共存下で高圧処理することにより、改質澱粉であって、同時に、その糊化した澱粉のアミロースが前記界面活性剤と複合化した複合化澱粉でもある複合化改質澱粉を製造することを特徴とする複合化改質澱粉の製造方法。
- 前記改質澱粉が、水分の存在下に生澱粉を加熱又は加圧して調製されたものであることを特徴とする請求項1に記載の複合化改質澱粉の製造方法。
- 前記高圧処理が、100MPa以上の加圧による処理であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の複合化改質澱粉の製造方法。
- 前記高圧処理を、下記(1)及び/又は(2)の条件下で行うことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の複合化改質澱粉の製造方法。
(1)生澱粉又は改質澱粉と、界面活性剤とに対して、水分が30〜90%w/wとなるように水分含量を調整したもとで高圧処理を行う。
(2)1分間〜120分間の範囲内で高圧処理を行う。 - 澱粉粒子形状を保持したままで糊化された改質澱粉であり、同時に、その糊化した澱粉のアミロースが界面活性剤と複合化した複合化澱粉でもあることを特徴とする複合化改質澱粉。
- 前記複合化改質澱粉において、下記の式1で表される糊化度が15%以上であることを特徴とする請求項5に記載の複合化改質澱粉。
〔式1〕糊化度(%)=〔(△Hg2−△Hg1)/△Hg2〕×100
(式1において、△Hg1は複合化改質澱粉の示差走査型熱量計分析での50°C〜70°C付近に検出される糊化吸熱ピーク面積であり、△Hg2は複合化改質前の未処理状態における当該生澱粉の示差走査型熱量計分析での50°C〜70°C付近に検出される糊化吸熱ピーク面積である。) - 前記糊化度が20%以上であることを特徴とする請求項6に記載の複合化改質澱粉。
- 前記複合化改質澱粉において、下記の式2で表される複合化度が2.5%以上であることを特徴とする請求項5に記載の複合化改質澱粉。
〔式2〕複合化度(%)=〔(△Hc1−△Hc2)/△Hg2〕×100
(式2において、△Hc1は複合化改質澱粉の示差走査型熱量計分析での90°C〜120°C付近に検出されるアミロースと界面活性剤との複合化物融解吸熱ピーク面積であり、△Hc2は、当該生澱粉に脂質が内在する場合において、複合化改質前の未処理状態における当該生澱粉の示差走査型熱量計分析での90°C〜120°C付近に検出されるアミロースと上記の内在性脂質との複合化物融解吸熱ピーク面積であり、△Hg2は複合化改質前の未処理状態における当該生澱粉の示差走査型熱量計分析での50°C〜70°C付近に検出される糊化吸熱ピーク面積である。当該生澱粉に脂質が内在しない場合には、式2から△Hc2の項を削除する。) - 前記複合化度が3.5%以上であることを特徴とする請求項8に記載の複合化改質澱粉。
- 前記複合化改質澱粉が、澱粉精製前の穀粉である、とうもろこし粉、米粉、小麦粉、大麦粉、そば粉、ポテト粉、甘薯粉、キャサバ粉、葛粉、蕨粉及び緑豆粉から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項5〜請求項9のいずれかに記載の複合化改質澱粉。
- 前記複合化改質澱粉が、コーンスターチ、ハイアミロースコーンスターチ、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、米澱粉、小麦澱粉、大麦澱粉、サゴ澱粉、甘薯澱粉、葛澱粉、蕨澱粉及び緑豆澱粉から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項5〜請求項9のいずれかに記載の複合化改質澱粉。
- 前記界面活性剤が食品用乳化剤であることを特徴とする請求項5〜請求項11のいずれかに記載の複合化改質澱粉。
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