JP2007070276A - 1−ハロ−e,z−4,6−ヘキサデカジエン及びその製造方法並びにこれを用いた性フェロモン化合物の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 カキノヘタムシガの3種の性フェロモンの合成に共通に適応可能な中間体である1−ハロ−E,Z−4,6−ヘキサデカジエンを短い工程で、効率良く、かつ純度良く合成でき、これを用いてカキノヘタムシガでは3種の性フェロモンを効率的に合成できる製造方法を提供する。
【解決手段】 6−ハロ−E−2−ヘキセナールとホスホニウム塩とのウイティッヒ(Wittig)反応により、1−ハロ−E,Z−4,6−ヘキサデカジエン化合物を製造することができ、更にこれを用いてカキノヘタムシガでは3種の性フェロモンを効率的に製造することができる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、日本の柿の最重要難防除害虫といわれているカキノヘタムシガ(Stathmopoda masinissa)の性フェロモンで成分であるE,Z−4,6−ヘキサデカジエニルアセタートの製造方法に関する。
カキノヘタムシガ(Stathmopoda masinissa)は、古くより柿果実の重要害虫として知られている。特に日本では年2回発生し、柿の新芽に産卵された卵が孵化して幼虫が茎に潜って成長し、やがてへたの中心や横に穴をあけて果実を加害する。特に茎や果実内部で成長するため、殺虫剤が効果的に使えないケースが多く、更に近年農薬散布を減少させる防除方法の確立が求められており、性フェロモンを利用した防除方法の検討が進められつつある。
カキノヘタムシガの性フェロモンは、E,Z−4,6−ヘキサデカジエニルアセタート、E,Z−4,6−ヘキサジエナール、E,Z−4,6−ヘキサジエン−1−オールの3種が同定されている(非特許文献1)。いずれも炭素数16の直鎖状不飽和脂肪族化合物であり、4位にE体、6位にZ体の幾何構造を有することがその大きな特徴となっている。
性フェロモンの利用については、その強い誘引性から発生予察に用いて、虫の発生時期を正確にとらえることにより、殺虫剤を効果的に使用する発生予察への利用だけでなく、近年はその性フェロモン成分を化学的に大量に合成して、圃場に高濃度のその香気を漂わせ、雄と雌の交信を撹乱して交尾を阻害し次世代の虫の発生を抑制する試みである交信撹乱防除が注目されている。交信撹乱法には、性フェロモンの工業的な大量合成法(百Kg以上のレベル)が不可欠であり、フェロモン利用技術の重要な要因の一つとなっている。しかしながら、カキノヘタムシガの性フェロモンについては、これまで合成が報告されていない。
一般には性フェロモン成分が複数存在する場合、その天然成分に近い化合物組成で交信撹乱剤を開発することが望ましいと考えられており、その複数のフェロモンを効果的に経済的に合成する方法が交信撹乱法にとって特に重要である。特にカキノヘタムシガでは3種の性フェロモン成分を効率的に合成できる経済的な共通の合成中間体が求められていた。
第49回日本応用動物昆虫学会大会要旨、p185(2005年)
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、カキノヘタムシガの3種の性フェロモンの合成に共通に適応可能な中間体である1−ハロ−E,Z−4,6−ヘキサデカジエンを短い工程で、効率良く、かつ純度良く合成でき、これを用いてカキノヘタムシガでは3種の性フェロモンを効率的に合成できる製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、好ましくは6−ハロ−E−2−ヘキセナールとホスホニウム塩とのウイティッヒ(Wittig)反応により、1−ハロ−E,Z−4,6−ヘキサデカジエン化合物を製造することができることを見出し、更にこれを用いてカキノヘタムシガでは3種の性フェロモンを効率的に製造することができることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
具体的には、下記一般式(I)で示される1−ハロ−E,Z−4,6−ヘキサデカジエンを提供する。また、下記一般式(II)で示される6−ハロ−E−2−ヘキセナールと、下記一般式(III)で示されるトリフェニルホスホニウム塩とのウイティッヒ(Wittig)反応による、下記一般式(I)で示される1−ハロ−E,Z−4,6−ヘキサデカジエン化合物の製造方法を提供する。
X−(CH23CH=CHCH=CH(CH28CH3 ...(I)
X−CH2CH2CH2CH=CHCHO ...(II)
CH3(CH2)8CH2−P+(Ph)3X' - ...(III)
(上式中、XとX' は独立して塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表し、Phはフェニル基を示す。)
本発明によれば、カキノヘタムシガの3種の性フェロモンの合成に共通に適応可能な中間体である1−ハロ−E,Z−4,6−ヘキサデカジエンを短い工程で、効率良く、かつ純度良く製造でき、これによりカキノヘタムシガの3種の性フェロモンも効率的に製造することができる。
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明の1−ハロ−E,Z−4,6−ヘキサデカジエンの製造方法において、6−ハロ−E−2−ヘキセナールを得るには、以下の方法による。
出発物質である5−ハロ−1−ペンチン(化合物2)は、公知の方法で調製可能である。5−ハロ−1−ペンチンとしては、5−クロロ−1−ペンチン、5−ブロモ−1−ペンチン、5−ヨード−1−ペンチン等が挙げられるが、反応工程での生成物を蒸留操作等で単離する場合、塩素原子>臭素原子>沃素原子の順で安定性が高いので、5−クロロ−1−ペンチンが好ましい。
例えば、ハロゲン原子が塩素原子である場合について説明すると、アセチレンにn−ブチルリチウム等の有機金属を反応させ、これに1−ブロモ−3−クロロプロパンを反応させることにより、5−クロロ1−ペンチンが容易に得られる。
更に、これにメチルマグネシウムクロリド等のGrignard試薬を反応させて5−クロロ1−ペンチン−1−イルマグネシウムクロリド(化合物3)を導き、これにオルト蟻酸エチル、オルト蟻酸メチル等のアセタール化剤を反応させ、6−クロロ−2−ヘキシナールジエチルアセタール(化合物4)を合成する。このとき用いられる溶媒は、THF又はTHF/トルエン等の混合溶媒であり、Grignard試薬1モルの対して、溶媒200〜500gを用いるのが好ましい。
次に、得られたアセタール化合物を触媒存在下、部分水素添加反応を行い、6−クロロ−Z−2−ヘキセナールジエチルアセタール(化合物5)を導く。このとき用いられる触媒は、P−2ニッケルに代表されるニッケル系触媒又はPd−C、リンドラー触媒等の市販のPd系触媒等を用いることができる。この場合の反応条件は、水素圧1〜5Kgf/cm2で、温度25〜80℃の範囲で反応させる。このようにして得られる6−クロロ−Z−2−ヘキセナールジエチルアセタール(化合物5)は、5〜25%の塩酸水と反応させると瞬時にアセタール部がアルデヒド基に加水分解され、同時に二重結合は生成するカルボニル基と共役するためE体へと変化し、6−クロロ−E−2−ヘキセナール(化合物6)に変換される。このときアルデヒド(化合物5)は比較的水に溶けやすいので、塩化メチレン、ジエチルエーテル等の極性溶媒で抽出することが収率向上にとって好ましい。
このようにして得られた6−クロロ−E−2−ヘキセナール(化合物6)は最終工程であるWittig反応において、重要なWittig試薬となる。すなわち、下記一般式(III)で示されるトリフェニルホスホニウム塩を塩基で処理して得られるホスホラニリデン化合物(化合物7)と上記の6−クロロ−E−2−ヘキセナール(化合物6)を反応させるとWittig反応がシス体を優先してオレフィンカ化が進行し、1−ハロ−E,Z−4,6−ヘキサデカジエン(化合物I)が生成する。
CH3(CH2)8CH2−P+(Ph)3X' - ...(III)
(上式中、Xは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を示し、Phはフェニル基を示す。)
このとき用いられる溶媒や塩基は、公知の方法により得られる。すなわち、溶媒はテトラヒドロフラン (THF)やジエチルエーテル等の極性溶媒やヘキサン、トルエン等の炭化水素系溶媒が用いられ、トリフェニルホスホニウム塩1モルあたり600〜1,500gの溶媒が用いられる。
また、塩基は、n−ブチルリチウム等の有機金属やカリウム−tert−ブトキシド等のアルカリ金属アルコラート等が用いられ、トリフェニルホスホニウムに対して、等モルの塩基を投入してホスホラニリデン化する。その際の温度は−10〜30℃が好ましい。次に、6−クロロ−E−2−ヘキセナール(化合物6)をホスホラニリデン化合物(化合物7)へ滴下する。この際の反応温度は、−78〜30℃、特に−78〜−30℃が好ましい。反応温度を−78〜−30℃にすると約90%以上の幾何純度でE、Z体を合成することが可能であり、反応温度が20℃程度の制御であっても、E、Z体の幾何純度は77%以上を達成することができる。このように反応温度がより低温である方が、Z体の選択性が高くなる傾向にある。
また、このときWittig反応の進行と同時に末端のハロゲン基がハロゲン化水素として脱離することなく、収率良く目的物が得られる。また、本発明ではその他最終工程で蒸留分離しにくい不純物は副成しないため、幾何異性体を含めた1−ハロ−E,Z−4,6−ヘキサデカジエンは95%以上の純度で、かつ高収率で得られる。
反応後、少量の水を滴下して反応を停止し、溶媒を除去して、濾過等一般的な手法で副成するトリフェニルホスフィンオキシドを除去する。最後に蒸留することで、目的物である1−ハロ−E,Z−4,6−ヘキサデカジエン(化合物I)が得られる。
Figure 2007070276
なお、直鎖炭素数16の骨格を有する1−ハロ−E,Z−4,6−ヘキサデカジエンの製造方法としては、炭素数の短いE,Zジエン体を合成して、その後に炭素数を延長して最終的に直鎖炭素数16の骨格を有する1−ハロ−E,Z−4,6−ヘキサデカジエンを導くことも考えられる。
例えば、上記6−ハロ−E−2−ヘキセナール(化合物II)よりメチレン炭素の1つ少ない1−ハロ−E−2−ペンテナールを用いてWittig反応により、直鎖炭素数15の骨格を有する1−ハロ−E,Z−3,5−ペンタデカジエンを合成して、その後に炭素数を1つ延長して最終的に直鎖炭素数16の骨格を有する1−ハロ−E,Z−4,6−ヘキサデカジエンを製造する場合がこれに当たる。
しかし、同じWittig反応でも、この場合は本発明の製造方法とは比較にならないほど不安定となり、反応中のハロゲンの脱離を引き起こして、その結果収率が著しく低下する。これは、Wittig反応では、トリフェニルホスホニウム塩を塩基で反応してホスホラニリデン化することが必須であるため、塩基での処理に官能基が変化しないで耐えられなかったためと考えられる。
すなわち、同じWittig反応でも、アルデヒドの官能基の種類と炭素数が極めて重要であり、本発明のように6−ハロ−E−2−ヘキセナール(化合物II)を用いれば、反応中の官能基の安定性が高く、収率よく合成することができる。
本発明の方法によって製造される1−ハロ−E,Z−4,6−ヘキサデカジエン(化合物I)は、Wittig反応中に官能基が脱離してしまう等の副反応の懸念が殆どなく、収率が良好で蒸留操作によって極めて高純度に収率良く単離できる点が極めて優れている。
一方、Wittig反応に着目すると、本発明の1−ハロ−E,Z−4,6−ヘキサデカジエンを経ることなく、その官能基が水酸基であるE,Z−4,6−ヘキサデカジエン−1−オールを直接Wittig反応で合成することができれば、カキノヘタムシガの性フェロモンの一成分であるE,Z−4,6−ヘキサデカジエン−1−オールを簡便に得られて、更に優位であると考えられる。
しかし、この場合には6−ハロ−E−2−ヘキセナール(化合物II)の代わりに1−ヒドロキシ−E−2−ヘキセナールが必要となるが、水酸基がそのままであれば、Wittig反応のホスホラニルデン化合物を分解してしまうため、水酸基の保護が必要となってくる。すなわち、Wittig反応の前に水酸基の保護基をつける工程及びWittig反応後に水酸基の保護基を外す工程が必須となり、更に工程が煩雑となる。
これに対して、本発明の6−ハロ−E−2−ヘキセナール(化合物II)のようにハロゲン原子を有する場合は、Wittig反応に対しても不活性であり、保護基は必要ない。更に、6−ハロ−E−2−ヘキセナール(化合物II)を合成する際にも、上述の水酸基の保護に比べて制約が少なく、合成の煩雑さの解消の点においても極めて有利である。
このようにして得られた1−ハロ−E,Z−4,6−ヘキサデカジエンは、アルカリ金属酢酸塩との公知の官能基交換反応によって、カキノヘタムシガ性フェロモン主成分であるE,Z−4,6−ヘキサデカジエニルアセタートに容易に変換することができる。
アルカリ金属酢酸塩としては、無水酢酸ナトリウム、無水酢酸カリウム、無水酢酸リチウム等が挙げられる。
具体的には、酢酸やN,N―ジメチルホルムアミド等の溶媒中で、無水酢酸ナトリウムや無水酢酸カリウム等のアルカリ金属酢酸塩と1−ハロ−E,Z−4,6−ヘキサデカジエンとを120〜170℃の温度で反応させることにより、相当するアセタート体に変換する。
更に、E,Z−4,6−ヘキサデカジエニルアセタートとアルカリ金属水酸化物とによる加水分解反応によって、相当するアルコール体、すなわちE,Z−4,6−ヘキサジエン−1−オールに導くことができる。
アルカリ金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等が挙げられ、アルカリ土金属水酸化物としては、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。
具体的には、メタノールやエタノール等のアルコール系溶媒存在下に、上記E,Z−4,6−ヘキサデカジエニルアセタートに水酸化ナトリウムの20%(w/w)水溶液を40〜70℃の温度で反応させることにより、相当するアルコール体E,Z−4,6−ヘキサデカジエン−オールへ変換することができる。
また、アルコール体は、金属塩、金属酸化物、有機酸化剤又は過酸化剤等の各種酸化剤を用いて相当するアルデヒド体、E,Z−4,6−ヘキサデカジエナールに導くことができる。
金属塩としては、塩化マンガン、四酢酸鉛、炭酸銀(I)等が挙げられる。金属酸化物としては、二酸化マンガン、クロム酸、酸化銀(II)等が挙げられる。有機酸化剤としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)等が挙げられ、過酸化剤としては、過酸化水素等が挙げられる。
具体的には、金属塩、金属酸化物、有機酸化剤又は過酸化剤等の各種酸化剤が用いられるが、特にジメチルスルホキシド(DMSO)を用いたSwern酸化法が優れている。例えば、塩化オキサリルを含む溶媒中にDMSOを−70℃付近の低温で反応させ、これに上記アルコールE,Z−4,6−ヘキサデカジエン−1−オールを反応させ、最後にトリエチルアミンを加えて反応させると、相当するアルデヒド体E,Z−4,6−ヘキサデカジエナールを得ることができる。
これらアセタート、アルコール、アルデヒドはいずれも蒸留やカラムクロマトグラフィー等の一般的な単離操作によって化合物を容易に単離精製することが可能である。
このように中間体1−ハロ−E,Z−4,6−ヘキサデカジエンは、カキノヘタムシガの3種の性フェロモンのうち、その主成分であるE,Z−4,6−ヘキサデカジエニルアセタートを効率的に合成できることによって、残りの2種のアルコール体、アルデヒド体へ変換することができる。その点で、本発明の1−ハロ−E,Z−4,6−ヘキサデカジエンは、中間体として極めて有用であると考えられる。
以下に合成例及び実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
[合成例1]
6−クロロ−2−ヘキシナールジエチルアセタール(化合物4)の合成
反応器にマグネシウム24.3gと乾燥THF300gを仕込み、少量のヨウ素を加え、メチルクロリド56gを吹き込み、THFを還流させて、メチルマグネシウムクロリドを生成させる。
次いで、そこに5−クロロ−1−ペンチン88gを40〜60℃で滴下し、滴下後、1時間熟成して5−クロロ−1−ペンチン−1−イルマグネシウムクロリド(化合物3)を調製する。次に乾燥したトルエン300gを投入後、オルト蟻酸エチル150gを滴下し、内温90〜100℃で8時間攪拌した。反応後、冷却して飽和塩化アンモニウム水溶液500gを滴下し、分液してその有機層を取り出す。溶媒を濃縮除去したのち、蒸留したところ、6−クロロ−2−ヘキセナールジエチルアセタール(化合物4)138gが得られた(収率72%、沸点99〜105℃/3mmHg、GC 10.5分;DB−WAX 0.25mm×30m capillary column 150〜230℃(5℃/分昇温))。
[合成例2]
6−クロロ−Z−2−ヘキセナールジエチルアセタール(化合物5)の合成
オートクレーブに酢酸ニッケル3g、エタノール200gを加え、充分溶解した後、水素化ホウ素ナトリウム1.2gを加えて、P−2Ni触媒を調製した。
次に、そこへ6−クロロ−2−ヘキシナールジエチルアセタール(化合物4) 138gを仕込み、窒素置換をした後、水素圧5kgf/cm2の圧力で、内温が50℃を超えないように水素をフィードして反応を完結させた。
反応後、エタノールを除去して、純水200gを投入後、n−ヘキサン200gで2回抽出し、その有機層を単離して、n−ヘキサンを除去し、6−クロロ−Z−2−ヘキセナールジエチルアセタール(化合物5)135gを得た(収率97%、GC 6.70分;DB−WAX 0.25mm×30m capillary column 150〜230℃(5℃/分昇温))。
得られた化合物は蒸留せずに、そのまま6−クロロ−E−2−ヘキセナール(化合物6)の合成に用いた。
[合成例3]
6−クロロ−E−2−ヘキセナール(化合物6)の合成
反応器に塩化メチレン200g、6−クロロ−Z−2−ヘキセナールジエチルアセタール(化合物5)135gを仕込み、窒素雰囲気下、10%塩酸水100gを加えて、約30分間攪拌した。反応後、分液して有機層を取り出し、水層は塩化メチレン100gで抽出した。得られた有機層と塩化メチレン層を混合して、純水100g、1%重曹水、純水100gの順に順次洗浄した。
得られた有機層は無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧下塩化メチレンを完全に除去して6−クロロ−E−2−ヘキセナール(化合物6)71gが得られた(収率76%、GC 8.25分;DB−WAX 0.25mm×30m capillary column 150〜230℃(5℃/分昇温))。
得られた化合物は蒸留せずに、そのまま1−ハロ−E,Z−4,6−ヘキサデカジエン(化合物1)に用いた。
[実施例1]
1−クロロ−E,Z−4,6−ヘキサデカジエンの合成
反応器にn−デシルトリフェニルホスホニウムブロミド201gとTHF500gを仕込み、窒素雰囲気下、tert−ブトキシカリウム47gを内温15〜20℃で投入し、そのまま30分間攪拌した。
次いで、内温を−60℃まで急冷し、これに6−クロロ−E−2−ヘキセナール(化合物6)を55g滴下し、30分間攪拌した後、冷却を中止して徐々に室温まで約1時間かけて内温を上昇させながら攪拌を継続した。
その後、純水10mlを加えて反応を停止し、反応液のTHFを減圧下、内温が50℃を超えないように除去した。
得られた残渣に純水300g、n−ヘキサン300gを投入して攪拌し、ヌッチェで濾過した後、減圧下n−ヘキサンを除去して蒸留したところ、1−クロロ−E,Z−4,6−ヘキサデカジエン80gが得られた(収率75%、純度 E,Z体92%、E,E体5%、GC 8.29分(E,Z体)、8.84分(E,E体);DB−WAX 0.25mm×30m capillary column 150〜230℃(5℃/分昇温)、沸点162〜166℃/3mmHg)。なお、スペクトルデータは、下記に示すとおりである。
[実施例2]
1−ブロモ−E,Z−4,6−ヘキサデカジエンの合成
反応器にn−デシルトリフェニルホスホニウムブロミド201gとTHF500gを仕込み、窒素雰囲気下、tert−ブトキシカリウム47gを内温15〜20℃で投入し、そのまま30分間攪拌した。
次いで、内温を−60℃まで急冷し、これに6−ブロモ−E−2−ヘキセナールを61g滴下し、30分間攪拌した後、冷却を中止して徐々に室温まで約1時間かけて内温を上昇させながら攪拌を継続した。
その後、純水10mlを加えて反応を停止し、反応液のTHFを減圧下、内温が50℃を超えないように除去した。
得られた残渣に純水300g、n−ヘキサン300gを投入して攪拌し、ヌッチェで濾過した後、減圧下n−ヘキサンを除去して蒸留したところ、1−ブロモ−E,Z−4,6−ヘキサデカジエン69gが得られた(収率67%、純度 E,Z体91%、E,E体6%、GC 9.90分(E,Z体)、10.74分(E,E体);DB−WAX 0.25mm×30m capillary column 150〜230℃(5℃/分昇温)、沸点167〜173℃/3mmHg)。なお、スペクトルデータは、下記に示すとおりである。
[実施例3]
E,Z−4,6−ヘキサデカジエニルアセタート(カキノヘタムシガの性フェロモン第一成分)の合成
実施例1によって得られた1−クロロ−E,Z−4,6−ヘキサデカジエン80g と無水酢酸ナトリウム52gとN,N−ジメチルホルムアルデヒド140gを反応器に仕込み、窒素雰囲気下で、110〜120℃にて約4時間激しく攪拌した。反応後、40℃以下に冷却して、純水150gを投入した。
更に、n−ヘキサン200gと純水150gで洗浄した後、その有機層を取り出し、n−ヘキサンを減圧下除去した。得られた残渣を減圧下蒸留したところ、E,Z−4,6−ヘキサデカジエニルアセタート43gが得られた(収率84%、純度 E,Z体91%、E,E体5%、GC 11.68分(E,Z体)、12.04分(E,E体);DB−WAX 0.25mm×30m capillary column 150〜230℃(5℃/分昇温)、沸点167〜170℃/3mmHg)。なお、スペクトルデータは、下記に示すとおりである。
[実施例4]
E,Z−4,6−ヘキサデカジエン−1−オールの合成
反応器に窒素雰囲気下、実施例3によってE,Z−4,6−ヘキサデカジエニルアセタート140g、メタノール20gを仕込み、そこへ20%苛性ソーダ水溶液100gを内温が60℃を超えないように滴下し、滴下後55℃で1時間激しく攪拌した。
反応後、70℃以下に冷却して、純水60gを投入した。分液して得られた有機層に純水100gを加え、更に酢酸を加え、pHを中性に調整した後、更に純水200gで洗浄した。有機層を減圧して水分を除去した後、減圧蒸留したところ、E,Z−4,6−ヘキサデカジエン−1−オール 108gが得られた(収率92%、純度 E,Z体90%、E,E体6%、GC 14.17分(E,Z体)、15.15分(E,E体);DB−WAX 0.25mm×30m capillary column 150〜230℃(5℃/分昇温)、沸点162〜166℃/3mmHg)。なお、スペクトルデータは、下記に示すとおりである。
[実施例5]
E,Z−4,6−ヘキサデカジエナールの合成の合成
反応器に窒素雰囲気下、塩化オキサリル7g、塩化メチレン100mlを仕込み、そこへジメチルスルホキシド10gを含む塩化メチレン20mlを内温−78℃下で滴下し、滴下後15分間激しく攪拌した。
反応後、E,Z−4,6−ヘキサデカジエン−1−オール 12gを含む塩化メチレン溶液20mlを約5分間で滴下し、そのまま−70℃で30分間攪拌した後、トリエチルアミン12gを加えて、0℃付近まで温度を戻して、更に1時間攪拌した。
塩化アンモン10gと純水60gを投入し、ヘキサン100mlを投入後、分液して得られた有機層を更に純水200gで洗浄した。有機層を減圧してヘキサンを除去した後、減圧蒸留したところ、E,Z−4,6−ヘキサデカジエナール9.1gがえられた(収率79%、純度E,Z体90%、E,E体6%、GC 10.74分(E,Z体)、11.24分(E,E体);DB−WAX 0.25mm×30m capillary column 150〜230℃(5℃/分昇温)、沸点149〜152℃/2mmHg)。なお、スペクトルデータは、下記に示すとおりである。
実施例1の化合物のMSスペクトルを示した図である。 実施例1の化合物のIRスペクトルを示した図である。 実施例2の化合物のMSスペクトルを示した図である。 実施例3の化合物のMSスペクトルを示した図である。 実施例3の化合物のIRスペクトルを示した図である。 実施例4の化合物のMSスペクトルを示した図である。 実施例4の化合物のIRスペクトルを示した図である。 実施例5の化合物のMSスペクトルを示した図である。 実施例5の化合物のIRスペクトルを示した図である。

Claims (5)

  1. 下記一般式(I)で示される1−ハロ−E,Z−4,6−ヘキサデカジエン。
    X−(CH23CH=CHCH=CH(CH28CH3 ...(I)
    (上式中、Xは、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を示す。)
  2. 下記一般式(II)で示される6−ハロ−E−2−ヘキセナールと、下記一般式(III)で示されるトリフェニルホスホニウム塩とのウイティッヒ(Wittig)反応による、下記一般式(I)で示される1−ハロ−E,Z−4,6−ヘキサデカジエン化合物の製造方法。
    X−(CH23CH=CHCH=CH(CH28CH3 ...(I)
    X−CH2CH2CH2CH=CHCHO ...(II)
    CH3(CH2)8CH2−P+(Ph)3X' - ...(III)
    (上式中、XとX' は独立して塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表し、Phはフェニル基を示す。)
  3. 1−ハロ−E,Z−4,6−ヘキサデカジエン(ハロは、ハロゲンを表す。)とアルカリ金属酢酸塩とを反応させることを特徴とするE,Z−4,6−ヘキサデカジエニルアセタートの製造方法。
  4. E,Z−4,6−ヘキサデカジエニルアセタートと、アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土金属水酸化物とを反応させることを特徴とするE,Z−4,6−ヘキサデカジエン−1−オールの製造方法。
  5. E,Z−4,6−ヘキサデカジエン−1−オールを、金属塩、金属酸化物、有機酸化剤又は過酸化剤によって酸化することを特徴とするE,Z−4,6−ヘキサデカジエナールの製造方法。
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