JP4903774B2 - 天然カロチノイド生成物の合成のための4−クロロ−3−メチル−2−ブテニルフェニルサルファイド、ジ(4−クロロ−3−メチル−2−ブテニル)サルファイドおよびジ(4−クロロ−3−メチル−2−ブテニル)スルホンの調製方法 - Google Patents

天然カロチノイド生成物の合成のための4−クロロ−3−メチル−2−ブテニルフェニルサルファイド、ジ(4−クロロ−3−メチル−2−ブテニル)サルファイドおよびジ(4−クロロ−3−メチル−2−ブテニル)スルホンの調製方法 Download PDF

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Description

本発明はカロチノイド生成物の合成に必要な中間体の調製方法に関するものである。より詳しく、本発明は、二重結合の形成のためにスルホン化合物を用いてジュリア(Julia)反応によって天然カロチノイド生成物を合成するときに、イソプレニルユニットを延長するためのC5−ユニット化合物として、以下の式1によって表される4−クロロ−3−メチル−2−ブテニルフェニルサルファイドを、および中央トリエン部を提供するためのC10−ユニット化合物として、以下の式2によって表されるジ(4−クロロ−3−メチル−2−ブテニル)サルファイドを調製する方法、ならびに、ジ(4−クロロ−3−メチル−2−ブテニル)サルファイドの選択的酸化物としての以下の式3によって表されるジ(4−クロロ−3−メチル−2−ブテニル)スルホン、ならびに、ジ(4−クロロ−3−メチル−2−ブテニル)スルホンを調製する方法に関する。
以下の式4によって表されるベータ−カロチン、リコピン、およびアスタキサンチンに代表されるカロチノイド化合物は、生体組織の分化および成長に重要な影響を与えるビタミンAの前駆体として作用する。
更に、このような化合物は人体に無害な食用着色料として使用され、かつ、栄養摂取を促進するため、そして、癌を予防する効果により健康を補助するために使用されている。カロチン化合物は、緑黄色野菜からごく少量抽出されるので、カロチノイド化合物のための有機合成方法の開発が研究されている。このような試みは、かなり長い期間行われている。
数百種の天然カロチノイドのなかで、数種の重要なカロチノイド化合物について、有機合成方法が開発された。代表的な合成は、二重結合の形成法によって、3つの方法、例えば、アセチリドを使用するロシュ(Roche)法、ウィッティヒ(Wittig)反応を使用するBASF AG法、およびスルホン化合物を使用するジュリア反応、に分類される。具体的には、ロシュ法は、アセチリドから所望の炭素バックボーンが得られた後に、三重結合を部分的にハロゲン化することによって二重結合を形成する。しかし、この方法は、調製段階が多く、かつ、比較的低い生化学的活性を有する多くのシス二重結合が形成されるという点で不利である。また、BASF AG法は、ウィッティヒ反応を使用することによって二重結合を有するカロチノイド化合物を生成し、比較的簡単かつ効率的な調製方法であるという点で有利である。しかし、上記方法は、ポリエンを含むウィッティヒ塩の調製および反応副生物の処理における困難性のような欠点を有する(suffers from drawbacks)。最後に、本発明者らによって開発された、スルホン化合物を用いる二重結合の形成によってカロチノイド化合物を合成するジュリア法は、合成中間体として、比較的安定なスルホン化合物を使用し、反応工程が簡単であり、かつ、副生物の処理が容易であるという利点を有し、そして、優れた合成法として認められている(J. Org. Chem. 1999, 64, 8051-8053; Angew. Chem. Int. Ed. 2001, 40, 3627-3629; 韓国特許公開公報第2002−59202号)。
スルホン化合物を使用してジュリア反応によってカロチノイド化合物を合成する方法は、以下の反応スキーム1に示すように、C15スルホン化合物2分子を、上記式2によって表されるC10-ユニットとしてのジ(4-クロロ-3-メチル-2-ブテニル)サルファイドとカップリングさせてカロチノイド化合物の合成に必要な基本的な炭素バックボーンを形成し、それを、ランベルク−バックルント(Ramberg-Baecklund)反応に付して炭素バックボーンの中央トリエン部を形成し、次いで、それを脱スルホン化するとともに二重結合を形成することによって、カロチノイド化合物を得ることを特徴とする:
上記工程後のリコピンの合成における使用に適しているので、以下の反応スキーム2に示すように、C10-ユニット化合物としての容易に生成し得るゲラニルスルホンとC5イソプレニルユニットとしての式1によって表される4-ハロ-3-メチル-2-ブテニルフェニルサルファイドとのカップリングによって、C15スルホン化合物が提供された(Angew. Chem. Int. Ed. 2001, 40, 3627-3629; 韓国公開特許第2002−59202号)。
上記反応スキーム1および2のように、本発明者らによって開発され、かつ、カロチノイド化合物の合成に効率的に使用される、C5-ユニットとしての4−クロロ−3−メチル−2−ブテニルフェニルサルファイド(式1)およびC10-ユニットとしてのジ(4−クロロ−3−メチル−2−ブテニル)サルファイド(式2)が、以下の反応スキーム3により提供される。
反応スキーム3において、イソプレンを酸化させてイソプレンモノオキサイドを形成し、それを、Cu(I)触媒存在下でベンゼンチオール(PhSH)と反応させて開環反応を行い、ヒドロキシ−サルファイド化合物を得て、それを、水酸基のハロゲン化反応に付すことによって、4−クロロ−3−メチル−2−ブテニルフェニルサルファイド(式1)を得る(Angew. Chem. Int. Ed. 2001, 40, 3627-3629)。別に、イソプレンモノオキサイドを、塩化銅(II)(CuCl2)を用いる開環反応に付してクロロアルデヒドを形成し、その2分子を、硫化ナトリウム(Na2S)とカップリングさせてC10ジアルデヒド化合物を得て、次いで、アルデヒド還元によって対応するアルコールを形成し、その後、アルコール化合物を塩素化反応に付すことによって、C10-ユニット化合物としてジ(4−クロロ−3−メチル−2−ブテニル)サルファイド(式2)を得る(J. Org. Chem. 1999, 64, 8051-8053)。
しかし、上記反応スキーム3の工程によりC5-ユニット化合物としての4−クロロ−3−メチル−2−ブテニルフェニルサルファイド(式1)およびC10-ユニット化合物としてのジ(4−クロロ−3−メチル−2−ブテニル)サルファイド(式2)を大規模に調製することには、以下の欠点がある:第一に、ベンゼンチオール(PhSH)を用いるイソプレンモノオキサイドの開環反応後、ベンゼンチオールの酸化物であるフェニルジサルファイド(PhS−SPh)が相当量生成され、上記オキサイドを除去するために、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを更に行うべきである;第二に、塩化銅(II)を用いるイソプレンモノオキサイドの開環反応によって得られるクロロアルデヒド化合物が、低収率で生成され、かつ、脱塩素化されたアルデヒド化合物も副生物として生成され、操作工程において、反応混合物および副生物の塩化銅(I)を処理することは困難である;第三に、C10ジアルデヒドの還元によって得られるアルコールの塩素化反応は、反応混合物の処理および副生物の除去という問題がある。
式1および2によって表される化合物を用いてカロチノイド生成物を大規模に合成するためには、上記の問題を克服しつつ、式1および2によって表される化合物を容易かつ効率的に合成する方法を開発することが必要である。また、反応スキーム1によるカロチノイド化合物の合成において、中央のサルファイド部をスルホン基に選択的に酸化することは、炭素バックボーンに存在する多くの二重結合により実施が困難である。よって、酸化の達成に関連する問題は、解決すべきである。
したがって、本発明の目的は、従来技術において直面していた問題を解決すること、および、C5-ユニット化合物としての式1によって表される4−クロロ−3−メチル−2−ブテニルフェニルサルファイドを調製する方法を提供することである。
本発明の別の目的は、C10-ユニット化合物としての式2によって表されるジ(4−クロロ−3−メチル−2−ブテニル)サルファイドを調製する方法を提供することである。
本発明のさらに別の目的は、C10-ユニット化合物としての式3によって表されるジ(4−クロロ−3−メチル−2−ブテニル)スルホンを提供することである。
本発明の更なる目的は、ジ(4−クロロ−3−メチル−2−ブテニル)スルホンを調製する方法を提供することである。
本発明の一態様によれば、以下の反応スキーム4によって表される段階を含む、C5-ユニット化合物としての4−クロロ−3−メチル−2−ブテニルフェニルサルファイド(式1)の調製方法であって、(1)イソプレンからクロロヒドリン化合物として1-クロロ-2-メチル-3-ブテン-2-オール(A)を合成する段階;(2)1-クロロ-2-メチル-3-ブテン-2-オール(A)のアリル型アルコールのアリル転位(allylic rearrangement)を含むハロゲン化(臭素化またはヨード化)によって4-ハロ-1-クロロ-2-メチル-2-ブテン(B)を合成する段階;および(3)Clよりも高い反応性を有するXを選択的に脱離しながら(while selectively leaving X)、塩基の存在下で4-ハロ-1-クロロ-2-メチル-2-ブテン(B)とベンゼンチオール(PhSH)とをカップリングする段階を含む、前記方法が提供される:
ここで、XはBrまたはIを示す。
本発明の別の態様によれば、以下の反応スキーム5によって表される段階を含む、C10-ユニット化合物としてのジ(4−クロロ−3−メチル−2−ブテニル)サルファイド(式2)の調製方法であって、(1)イソプレンからクロロヒドリン化合物として1-クロロ-2-メチル-3-ブテン-2-オール(A)を合成する段階;(2)1-クロロ-2-メチル-3-ブテン-2-オール(A)のアリル型アルコールのアリル転位を含むハロゲン化(臭素化またはヨード化)によって4-ハロ-1-クロロ-2-メチル-2-ブテン(B)を合成する段階;および(3')Clよりも高い反応性を有するXを選択的に脱離しながら、4-ハロ-1-クロロ-2-メチル-2-ブテン(B)の2分子を硫化ナトリウム(Na2S)とカップリングする段階を含む、前記方法が提供される:
ここで、XはBrまたはIを示す。
本発明のさらに別の態様によれば、上記式2によって表されるC10-ユニットとしてのジ(4−クロロ−3−メチル−2−ブテニル)サルファイドの選択的酸化物としての、以下の式3によって表される新たなC10-ユニットとしてのジ(4−クロロ−3−メチル−2−ブテニル)スルホン化合物が提供される:
本発明の更なる態様によれば、以下の反応スキーム6によって表される段階を含む、C10-ユニット化合物としての、式3によって表されるジ(4-クロロ-3-メチル-2-ブテニル)スルホンの調製方法であって、金属酸化物触媒の存在下で酸化剤としてH22を使用して、式2によって表されるジ(4-クロロ-3-メチル-2-ブテニル)サルファイドを選択的に酸化することを含む、前記方法が提供される:
本発明の更なる態様によれば、以下の反応スキーム7によって表される段階を含む、カロチノイド化合物の合成のために使用される、C40トリスルホン化合物(D)の調製方法であって、C15-ユニットとしてのスルホン化合物(C)を脱プロトン化し、かつ、脱プロトン化されたスルホン化合物を、式3のジ(4-クロロ-3-メチル-2-ブテニル)スルホンと反応させることを含む、前記方法が提供される:
天然カロチノイド生成物の合成に必要な中間体の調製を目的とする本発明に基づいて、C5-ユニット化合物としての4−クロロ−3−メチル−2−ブテニルフェニルサルファイド(式1)およびC10-ユニット化合物としてのジ(4−クロロ−3−メチル−2−ブテニル)サルファイド(式2)の従来の合成方法における問題を克服した、より効率的かつ実用的な調製方法、ならびに、ポリエンの存在下でのサルファイドのスルホンへの選択的酸化の問題を解決するために、C10-ユニット化合物として新たに提案されたジ(4−クロロ−3−メチル−2−ブテニル)スルホン(式3)およびその調製方法が提供される。
以下の反応スキーム4に示すように、4−クロロ−3−メチル−2−ブテニルフェニルサルファイド(式1)は、(1)イソプレンからのクロロヒドリンの形成により1−クロロ−2−メチル−3−ブテン−2−オール(A)を合成し、(2)1−クロロ−2−メチル−3−ブテン−2−オール(A)のアリル型アルコールのアリル転位によるハロゲン化(臭素化またはヨード化)によって4−ハロ−1−クロロ−2−メチル−2−ブテン(B)を合成し、そして、(3)Clよりも高い反応性を有するXを選択的に脱離しながら、塩基の存在下で4−ハロ−1−クロロ−2−メチル−2−ブテン(B)とベンゼンチオール(PhSH)とをカップリングすることによって調製される:
ここで、XはBrまたはIを示す。
以下の反応スキーム5に示すように、C10-ユニット化合物としてのジ(4−クロロ−3−メチル−2−ブテニル)サルファイド(式2)は、(1)イソプレンからのクロロヒドリンの形成により1−クロロ−2−メチル−3−ブテン−2−オール(A)を合成し、(2)1−クロロ−2−メチル−3−ブテン−2−オール(A)のアリル型アルコールのアリル転位によるハロゲン化(臭素化またはヨード化)によって、4−ハロ−1−クロロ−2−メチル−2−ブテン(B)を合成し、そして、(3')Clよりも高い反応性を有するXを選択的に脱離しながら、4−ハロ−1−クロロ−2−メチル−2−ブテン(B)の2分子と硫化ナトリウム(Na2S)とをカップリングすることによって得られる:
ここで、XはBrまたはIを示す。
上記反応中の段階(1)において、イソプレンからクロロヒドリン化合物(A)を形成する工程は、NaOClの水溶液にCO2を吹き込む方法に関する、英国特許第978,892号(1964)、および、室温(20−25℃)で水を含む極性溶媒を用いて、イソプレンとNCS(N−クロロスクシニミド)とを反応させる方法に関する、ロシア特許第2,047,591号(1995)に開示されている。前者の方法は、安価な試薬を使用するためより経済的であるのに対し、後者の方法は、反応効率が高いという点で優れている。
本発明では、極性溶媒は使用されず、30−100℃で水の存在下、わずかに過剰なイソプレン(1.2当量)を、NCS(1当量)と反応させて、収率が高く、かつ、更なる精製工程を必要としないほど純度が高いクロロヒドリン化合物(A)を得る。
上記反応スキーム4および5中の段階(2)のアリル転位を含むハロゲン化は、PBr3、Br2/P、Br2/PPh3、NBS/PPh3、I2/PPh3、NIS/PPh3などを用いることができる。特に、CuI、CuBr、CuClおよびCuCNを含む銅(I)塩触媒の存在下、クロロヒドリン化合物(A)に基づき0.4当量のPBr3を使用する場合、トランス二重結合(8:1以上)が主に形成される。更に、アリル転位なしの非ハロゲン化化合物、すなわち、2−ブロモ−1−クロロ−2−メチル−3−ブテンは、銅(I)塩の存在下ではまったく生成されない。
上記反応スキーム4中の段階(3)において、上記段階(2)において得られたアリル型ジハロ化合物(B)の2つのハロゲン置換基ClとX(BrまたはI)との間のベンゼンチオール(PhSH)求核試薬に対する反応性の違いを利用して、ジハロ化合物(B)とベンゼンチオールとのカップリング反応を誘発しつつ、Xを選択的に脱離することによって、式1によって表される4−クロロ−3−メチル−2−ブテニルフェニルサルファイドを合成する。この際、この際、化合物(B)に基づいて、求核試薬としてのベンゼンチオール0.95当量およびトリエチルアミン(Et3N)1当量を添加し、そして、反応の選択性を増大させるため、0℃以下の温度でこの段階を行うことが好ましい。
同様に、上記反応スキーム5中の段階(3')において、上記段階(2)において得られたアリル型ジハロ化合物(B)の2つのハロゲン置換基ClとX(BrまたはI)との間のNa2S求核試薬に対する反応性の違いを利用して、ジハロ化合物(B)とS2-とのカップリングを誘発しつつ、Xを選択的に脱離することによって、式2によって表されるジ(4−クロロ−3−メチル−2−ブテニル)サルファイドを合成する。この際、Na2S求核試薬1当量に基づき、2当量の化合物(B)を使用すべきである。C10-ユニット化合物の2つの二重結合について、トランス−トランス型のトランス−シス型に対する割合は、4:1以上である。反応の選択性を増大させるために反応を低温(0℃以下)で行い、かつ、反応溶媒として、THFまたは低級アルコールを使用することが好ましい。
以下の反応スキーム6に示すように、式2によって表されるジアリル型サルファイドを選択的酸化に付すことによって、式3によって表されるジアリル型スルホン化合物が提供される:
カロチノイド化合物が、式2のジアリル型サルファイドを用いて典型的に合成される場合(反応スキーム1)、カップリングしたC40サルファイド化合物中に存在する、多くの共役二重結合により、サルファイド基の望ましくない非選択的酸化が起こる。従って、サルファイドの非選択的酸化を解決するために、簡単な構造を含む式2によって表されるサルファイド化合物の選択的酸化によって得られる、式3のジアリル型スルホン化合物が新たに提案される。サルファイドからスルホンへの選択的酸化に関して、好ましくは、V25、LiNbMoO6、およびNaVO3のような金属酸化物が触媒として使用され、かつ、酸化剤としてのH22が式2の化合物に基づき2当量以上の量で使用される。
この際、式2の化合物中の二重結合およびアリル型塩化物(allylic chloride)は、酸化条件に対して安定である。更に、式2のジアリル型サルファイド化合物とは異なり、式3のジアリル型スルホンの場合は、トランス二重結合を有する化合物が再結晶によって単離され得る。これにより、式3によって表されるC10-ユニット化合物としてジ(4−クロロ−3−メチル−2−ブテニル)スルホンを用いてカロチノイド化合物を合成する場合、問題のある酸化が回避され得る。
更に、以下の反応スキーム7に示すように、C15スルホン化合物(C)を脱プロトン化し、次いで、スルホン化合物(C)に基づき1/2当量の式3のジアリル型スルホン化合物と反応させることにより、カロチノイド化合物の合成に使用されている、C40トリスルホン化合物(D)が得られる。
C15スルホン化合物(C)の脱プロトン化は、塩基、例えば、NaH、NaNH2、n-BuLi、s-BuLi、t-BuLi、Ph-Li、LDA(リチウムジイソプロピルアミド)、EtONa、MeONa、EtOK、MeOK、t-BuOK、の作用によって行われる。スルホン化合物(C)と式3の化合物とのカップリングが、低温で、好ましくは−90−0℃で、DMFまたはTHF溶媒を用いて行われ、C40トリスルホン化合物(D)が得られる。温度が0℃を超えると(above 0℃)、塩基の作用による式3の化合物の脱塩化水素により、収率が低下し得る。
化合物(D)からのカロチノイド化合物としてのベータ−カロチンおよびリコピンの合成は、本発明者らにより報告されている(J. Org. Chem. 1999, 64, 8051-8053; 韓国特許公開公報第2002−59202)。
本発明を一般的に説明したが、ある特定の実施例を参照することによって、本発明を更に理解することができる。それら実施例は、特に記載しない限り、説明の目的のためだけに提供されたものであり、本発明を限定するものではない。
実施例1
1−クロロ−2−メチル−3−ブテン−2−オール(A)の合成
イソプレン(24ml、0.24mol)と水(100ml)との混合物に、NCS(N−クロロスクシニミド、26.7g、0.20mol)を添加した後、反応混合物を60℃で24時間保ち、室温に冷却した。結果物をジエチルエーテルで抽出し、水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させて濾過し、減圧下で濃縮することによって、更なる精製が必要ないほど純粋な、1−クロロ−2−メチル−3−ブテン−2−オール(18.8g、0.156mol、78%)を得た。
1H NMR δ1.38 (3H, s), 2.17 (1H, br s), 3.53 (1H, ABqのAのd, Jd = 11.0, JAB = 12.1 Hz), 3.57 (1H, ABqのBのd, Jd = 11.0, JAB = 12.1 Hz), 5.21 (1H, dd, J = 10.7, 1.0 Hz), 5.38 (1H, dd, J = 17.3, 1.0 Hz), 5.92 (1H, dd, J = 17.3, 10.7 Hz) ppm.
13C NMR δ25.3、54.0、72.5、114.7、141.9ppm
実施例2
4−ブロモ−1−クロロ−2−メチル−2−ブテン(B)の合成
上記実施例1で得た1−クロロ−2−メチル−3−ブテン−2−オール(23.5g、0.195mol)を無水ジエチルエーテル(100ml)に溶解し、そこへCuBr(559mg、3.9mmol)を添加し、そして、更にPBr3(6.5ml、78.1mmol)を0℃で慎重に添加した。反応混合物を室温で2時間撹拌し、ジエチルエーテル100mlを用いて希釈し、水で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させて濾過し、減圧下で濃縮して、4−ブロモ−1−クロロ−2−メチル−2−ブテン(28.2g、0.146mol、75%)を得た。この際、トランス二重結合のシス二重結合に対する割合は、8:1以上であった。更に、アリル転位なしの臭素化による2−ブロモ−1−クロロ−2−メチル−3−ブテンは、まったく生成されなかった。
トランス: 1H NMR δ1.85 (3H, s), 3.98 (2H, dd, J = 8.3, 0.9Hz), 4.03 (2H, s), 5.87 (1H, dt, Jd = 0.9, Jt = 8.3 Hz) ppm
13C NMR δ14.1, 27.3, 50.6, 125.3, 137.8 ppm
シス: 1H NMR δ1.92 (3H, s), 4.00 (2H, dd, J = 8.3, 0.7Hz), 4.10 (2H, s), 5.73 (1H, dt, Jd = 0.7, Jt = 8.3Hz) ppm
実施例3
式1によって表される4−クロロ−3−メチル−2−ブテニルフェニルサルファイドの合成
上記実施例2で得られた4−ブロモ−1−クロロ−2−メチル−2−ブテン(10.7g、55.4mmol)をテトラヒドロフラン(100ml)に溶解し、そこへ、ベンゼンチオール(5.9ml、52.6mmol)とトリエチルアミン(7.9ml、55.4mmol)を0℃で連続的に添加した。反応混合物を0℃で6時間撹拌し、水を添加し、ジエチルエーテルで抽出し、1MのHClおよび水で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させて濾過し、減圧下で濃縮させた。未精製生成物を、シリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、4−クロロ−3−メチル−2−ブテニルフェニルサルファイド(9.92g、46.5mmol、84%)を得た。この際、トランス二重結合のシス二重結合に対する割合は、8:1であった。
トランス: 1H NMR δ1.62 (3H, s), 3.52 (2H, d, J = 7.7Hz), 3.97 (2H, s), 5.64 (1H, t, J = 7.7 Hz), 7.18-7.40 (5H, m) ppm
シス: 1H NMR δ 1.83 (3H, s), 3.56 (2H, d, J = 7.7 Hz), 3.87 (2H, s), 5.52 (1H, t, J = 7.7 Hz), 7.18-7.40 (5H, m) ppm
実施例4
式2によって表されるジ(4−クロロ−3−メチル−2−ブテニル)サルファイドの合成
上記実施例2で得られた4−ブロモ−1−クロロ−2−メチル−2−ブテン(15.6g、80.7mmol)をテトラヒドロフラン(100ml)に溶解し、そこへ、0℃でNa2S(6.76g、40.3mmol)を添加した。反応混合物を0℃で6時間撹拌し、水を添加し、ジエチルエーテルで抽出し、水で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させて濾過し、減圧下で濃縮した。未精製生成物をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、ジ(4−クロロ−3−メチル−2−ブテニル)サルファイド(7.83g、32.7mmol、81%)を得た。この際、二重結合構造における、トランス−トランス化合物のトランス−シス化合物に対する割合は、4:1以上であった。
トランス−トランス: 1H NMR δ 1.78 (3H, s), 3.10 (2H, d, J = 7.6 Hz), 4.03 (2H, s), 5.62 (1H, t, J = 7.6 Hz) ppm
トランス−シス: 1H NMR δ 1.83 (3H, s), 3.12 (2H, d, J = 8.1 Hz), 4.01 (2H, s), 5.44 (1H, t, J = 8.1 Hz) ppm
実施例5
式3によって表されるジ(4−クロロ−3−メチル−2−ブテニル)スルホンの合成
上記実施例4で得られた式2のジ(4−クロロ−3−メチル−2−ブテニル)サルファイド(170.86g、純度70%、0.5mol)およびメタノール200mlを1Lの丸底フラスコに入れ、撹拌しながらNaVO3(0.61g、5mmol)を添加した。反応温度30℃を保ちながら、30%の過酸化水素水溶液(226.73g、2mol)を5時間にわたって徐々に滴下して反応混合物へ添加した。液体クロマトグラフィーによって反応の完了を確認した後、500mlのジクロロメタンおよび200mlの水を反応混合物に添加して攪拌し、その後、水層から有機層を分離した。有機層を200mlの水で2回洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、そして、攪拌エバポレーターを用いてジクロロメタンを留去し、ジ(4−クロロ−3−メチル−2−ブテニル)スルホンを定量的に得た(134g、純度70%、収率100%)。トランス構造のジ(4−クロロ−3−メチル−2−ブテニル)スルホンが、−5℃でのメタノール400mlを用いた結晶化によって得られた(40.2g、純度95%、収率30%)。
トランス−トランス: 1H NMR δ1.87 (3H, s), 3.74 (2H, d, J = 7.7 Hz), 4.08 (2H, s), 5.69 (1H, t, J = 7.7 Hz) ppm
13C NMR δ 15.1, 50.2, 51.9, 115.3, 141.5 ppm
トランス−シス: 1H NMR δ 1.74 (3H, s), 3.71 (2H, d, J = 8.6 Hz), 4.08 (2H, s), 5.29 (1H, t, J = 8.1 Hz) ppm
実施例6
ジ(11−ベンゼンスルホニル−11,12−ジヒドロレチニル)スルホン(D−1)の合成
500mlの丸底フラスコ内へ、DMF100mlおよびt-BuOK(12.9g、0.11mol)を入れ、25℃で撹拌した。その後、C15スルホン化合物(C−1)としての3−メチル−5−(2,6,6−トリメチル−1−シクロヘキセン−1−イル)−2,4−ペンタジエニルフェニルスルホンの溶液(35.15g、0.1mol、100mlのDMF中)を、30分間にわたって25℃で徐々に滴下してフラスコ内へ添加し、25℃で1時間攪拌し、そして−10℃に冷却した。その後、式3のC10スルホン溶液(18.08g、0.06mol、100mlのDMF中)を、2時間にわたって−10℃で徐々に滴下してフラスコ内へ更に添加した。1時間後、反応が完了したかを液体クロマトグラフィーによって確認した。その後、フラスコ中の温度を25℃に上げ、300mlの水をフラスコ内へ入れた後、フラスコを10分間攪拌した。この際、濾過によって得られた結晶化した生成物を、300mlの1M HCl水溶液に添加し、10分間攪拌して酸性化反応混合物を得た。その後、濾過した結晶生成物を300mlのメタノールに添加して、10分間攪拌した後、結晶生成物を濾過した。メタノールを使用する洗浄工程を2回繰り返して、最終的に、C40トリスルホン(D−1)(37.71g)を85%の収率で得た。
1H NMR: δ 0.91 (s, 6H), 0.96 (s, 6H), 1.22 (s, 6H), 1.37-1.49 (m, 4H), 1.55-1.67 (m, 4H), 1.62 (s, 6H), 1.65 (s, 6H), 1.99 (t, 4H, J = 5.9 Hz), 2.47 (dd, 2H, J = 13.0, 11.3 Hz), 3.05 (d, 2H, J = 13.0 Hz), 3.47 (d, 4H, J = 4.5 Hz), 4.06 (dt, 2H, Jd = 3.1 Hz, Jt = 10.8 Hz), 5.07 (d, 2H, J = 10.5 Hz), 5.24 (t, 2H, J = 7.4 Hz), 5.92 (ABqのA, 2H, J = 16.4 Hz), 5.97 (ABqのB, 2H, J = 16.4 Hz), 7.40-7.55 (m, 4H), 7.55-7.70 (m, 2H), 7.75-7.90 (m, 4H) ppm
13C NMR: δ 12.3, 17.0, 19.1, 21.5, 28.7, 28.8, 32.8, 34.0, 37.3, 39.3, 51.0, 63.4, 114.1, 121.0, 128.8, 129.0, 129.3, 129.7, 133.7, 135.5, 137.1, 137.2, 140.8, 142.8 ppm
実施例7
ジ(5−ベンゼンスルホニル−3,7,11,15−テトラメチル−2,6,8,10,14−ヘキサデカペンタエニル)スルホン(D−2)の合成
1000mlの丸底フラスコ内へ、500mlのTHFおよびt-BuOK(34.33g、0.306mol)を添加し、t-BuOKが完全に溶解するまで25℃で撹拌した。フラスコを−78℃に冷却した後、C15スルホン化合物(C−2)としての3,7,11−トリメチル−2,4,6,10−ドデカテトラエニルフェニルスルホンの溶液(90.0g、純度90%、0.235mol、100mlのTHF中)を、30分間にわたって徐々に滴下してフラスコ内へ添加し、−78℃で1時間攪拌した。その後、式3のC10スルホン溶液(37.46g、0.118mol、100mlのTHF中)を、2時間にわたって−78℃で徐々に滴下してフラスコ内へ更に添加した。1時間後、反応が完了したかを液体クロマトグラフィーによって確認した。その後、抽出溶媒として1000mlの1MのHCl水溶液および700mlの酢酸エチルを反応へ添加し、所定時間攪拌し、フラスコ中の温度を室温に上昇させた。有機溶媒層を除去し、1000mlの飽和NaHCO3水溶液で1回洗浄し、1000mlの食塩水で更に1回洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。未精製生成物をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、最終的に、C40トリスルホン(D−2)(88.79g、純度96%)を85%の収率で得た。
1H NMR: δ 1.29 (6H, s), 1.61 (6H, s), 1.62 (6H, s), 1.69 (6H, s), 1.75 (6H, s), 2.09 (8H, br s), 2.43 (2H, dd, J = 13.5, 11.2 Hz), 3.02 (2H, br d, J = 13.5 Hz), 3.48 (4H, d, J = 7.4 Hz), 4.04 (2H, ddd, J = 11.2, 9.7, 3.1 Hz), 5.08 (2H, d, J = 9.7 Hz), 5.10 (2H, br s), 5.23 (2H, t, J = 7.4 Hz), 5.85 (2H, d, J = 10.9 Hz), 6.05 (2H, d, J = 15.2 Hz), 6.33 (2H, dd, J = 15.2, 10.9 Hz), 7.45-7.57 (4H, m), 7.57-7.68 (2H, m), 7.74-7.85 (4H, m) ppm
13C NMR: δ 12.5, 16.9, 17.0, 17.7, 25.7, 26.6, 37.7, 40.1, 51.3, 63.5, 114.1, 121.2, 123.7, 124.7, 126.8, 128.9, 129.2, 131.9, 132.8, 133.7, 137.3, 140.9, 141.5, 142.7 ppm
産業上の利用可能性
前述のように、スルホン化合物を使用する天然カロチノイド生成物の合成において、C5-ユニット化合物としての式1によって表される4−クロロ−3−メチル−2−ブテニルフェニルサルファイド、およびC10-ユニット化合物としての式2によって表されるジ(4−クロロ−3−メチル−2−ブテニル)サルファイドの本発明の調製方法は、従来の合成方法における問題を解決するとともに、比較的簡単な方法であるため調製効率が高く、かつ、大規模な調製に適しているという点で有利である。また、2つのC15スルホン(C)と式2の化合物とのカップリングから得られるC40ジアリル型サルファイド化合物において起こり得るサルファイド基の非選択的酸化を解決するために、スルホン基を含む新たなC10-ユニット化合物として、ジ(4−クロロ−3−メチル−2−ブテニル)スルホン、更に、その調製方法が提供される。これにより、本発明の方法によって、様々なカロチノイド化合物を効率的かつ経済的に調製することができる。
本発明は、例示的に記載され、使用された専門用語は限定するよりもむしろ説明することを目的としている。本発明の多くの修正及び変形は、上記の教示に照らして可能である。それ故、添付の特許請求の範囲内で、本発明は具体的に説明された以外の別の方法で実施することもできる。

Claims (4)

  1. 以下の式3によって表されるC10−ユニットとしてのジ(4−クロロ−3−メチル−2−ブテニル)スルホン化合物。
  2. 以下の反応スキーム6によって表される段階を含む、ジ(4−クロロ−3−メチル−2−ブテニル)スルホンの調製方法であって、
    金属酸化物触媒の存在下で2当量以上のH22酸化剤を使用して、式2によって表されるジ(4−クロロ−3−メチル−2−ブテニル)サルファイドを選択的に酸化することにより、C10−ユニット化合物として式3によって表されるジ(4−クロロ−3−メチル−2−ブテニル)スルホンを提供する段階を含む、前記方法。
  3. 以下の反応スキーム7によって表される段階を含む、C40トリスルホン(D)の調製方法であって、
    C15スルホン化合物(C)を脱プロトン化する段階;および
    脱プロトン化されたスルホン化合物(C)を、スルホン化合物(C)に基づき1/2当量の式3のジ(4−クロロ−3−メチル−2−ブテニル)スルホンと反応させることにより、C40化合物としてトリスルホン(D)を提供する段階を含む、前記方法。
  4. 脱プロトン化段階が、−90−0℃でDMFまたはTHF溶媒中でt-BuOKを用いて行われる、請求項3に記載の方法。
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