JP2007068424A - 二機能性ホルムアルデヒド固定酵素遺伝子 - Google Patents
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Abstract
【課題】 常温にてヘキスロース6−リン酸シンターゼ活性および6−ホスホ−3−ヘキスロイソメラーゼ活性を有する二機能性ホルムアルデヒド固定酵素をコードする遺伝子を提供する。
【解決手段】 5’から3’の順に、常温で生育可能な細菌由来のヘキスロース6−リン酸シンターゼ遺伝子および常温で生育可能な細菌由来の6−ホスホ−3−ヘキスロイソメラーゼ遺伝子の融合遺伝子を含み、常温にてヘキスロース6−リン酸シンターゼ活性および6−ホスホ−3−ヘキスロイソメラーゼ活性を有する二機能性ホルムアルデヒド固定酵素をコードする単離遺伝子、および該遺伝子の遺伝子産物である二機能性ホルムアルデヒド固定酵素を提供する。
【選択図】 なし
【解決手段】 5’から3’の順に、常温で生育可能な細菌由来のヘキスロース6−リン酸シンターゼ遺伝子および常温で生育可能な細菌由来の6−ホスホ−3−ヘキスロイソメラーゼ遺伝子の融合遺伝子を含み、常温にてヘキスロース6−リン酸シンターゼ活性および6−ホスホ−3−ヘキスロイソメラーゼ活性を有する二機能性ホルムアルデヒド固定酵素をコードする単離遺伝子、および該遺伝子の遺伝子産物である二機能性ホルムアルデヒド固定酵素を提供する。
【選択図】 なし
Description
本発明は、ホルムアルデヒド固定酵素をコードする遺伝子に関する。本発明はさらに、該遺伝子によりコードされるホルムアルデヒド固定化酵素に関する。本発明はまた、宿主生物に対してホルムアルデヒド耐性を付与する方法を提供する。
メタノールあるいはメタンなどの還元型C1化合物をエネルギー源や炭素源として利用できる微生物をメチロトローフと呼ぶ。メチロトローフにはC1化合物からエネルギーを獲得するための酸化経路と細胞構成成分を合成するための資化経路があり、C1化合物が酸化されて生じたホルムアルデヒドが酸化経路と資化経路の分岐点となる。メチロトローフの資化経路として細菌ではセリン経路とリブロースモノリン酸(RuMP)経路が、酵母ではキシルロースリン酸経路が知られており、これらの経路によってホルムアルデヒドが固定される。
これらのうちRuMP経路は、ホルムアルデヒドの糖リン酸への固定、細胞構成成分合成のための糖リン酸の開裂、および糖リン酸の再生の3段階から構成されている(図1)。特に、ホルムアルデヒド固定には本経路特有の酵素群が関与する。すなわち、ホルムアルデヒドがリブロース5−リン酸とアルドール縮合してヘキスロース6−リン酸を合成するヘキスロース6−リン酸シンターゼ(HPS)、続いて生じた3−ヘキスロース6−リン酸をフルクトース6−リン酸へ異性化する6−ホスホ−3−ヘキスロイソメラーゼ(PHI)がRuMP経路の鍵酵素である。
HPSおよびPHIについては数種のメチロトローフ由来の遺伝子の特許が公開されている(特許文献1、および特許文献2)。数多くのメチロトローフは、このHPSおよびPHIをコードする遺伝子であるhps、phiをオペロン状で保持していることが知られている(例えば非特許文献1)。
ホルムアルデヒドを解毒する酵素を異種生物に導入して強制発現させることにより、その生物のホルムアルデヒド耐性を高め、さらにはかかる生物を用いて環境中からホルムアルデヒドを除去しようとする試みがある。従来このような手法に用いられてきた酵素としてもっとも一般的であるのが、ホルムアルデヒドデヒドロゲナーゼ(FALDH)である。しかしながら、本酵素は反応産物としてギ酸を生じ、この毒性除去も考慮する必要があった。これに対し、メタノール資化性細菌をはじめとする多くの細菌がもつHPS−PHI酵素系は、FALDHとは異なりエネルギーやコファクターを必要とせず、ホルムアルデヒドは糖リン酸に固定されるので、毒性のある反応生成物は生じず、むしろホルムアルデヒドを固定することによりバイオマスを増加させることも可能である。
メチロトローフ由来のhps、phiを植物に導入することにより植物体へホルムアルデヒド耐性を与える技術について、本発明者らの一部が先に特許出願している(特許文献3)。
特許文献3では、hps, phiそれぞれ独立に含む2つのDNAコンストラクトを植物へ導入し、これらを葉緑体内へ発現させることによって、カルビン回路を介してホルムアルデヒドを代謝させる経路を有する形質転換植物を得たことを報告している。
興味深いことに、RuMP経路に特徴的な酵素であるHPS、PHIと相同性の高い遺伝子が自然界に広く存在していることが報告されている。これらの遺伝子を持つ生物は、メタン生成菌や硫酸還元菌などの古細菌や、枯草菌などの真正細菌、マイコプラズマまで多岐にわたっている。
多くの微生物においては、上記のとおりhps、phi遺伝子がオペロン状で保持されているのに対し、超好熱性アーキアPyroccocus horikoshiiでは、hpsとphiの完全な読み枠が一つのORF(PH1938)にコードされていることを本発明者らは明らかにした(非特許文献2)。この融合酵素の配列は非特許文献2に開示され、またアミノ酸配列はデータベースB71209で得られる。
多くの微生物においては、上記のとおりhps、phi遺伝子がオペロン状で保持されているのに対し、超好熱性アーキアPyroccocus horikoshiiでは、hpsとphiの完全な読み枠が一つのORF(PH1938)にコードされていることを本発明者らは明らかにした(非特許文献2)。この融合酵素の配列は非特許文献2に開示され、またアミノ酸配列はデータベースB71209で得られる。
しかしながらアーキア由来の融合酵素は、高温でのみ活性を示すものであり、常温付近で活性を示すHPS-PHI融合酵素およびその遺伝子については知られていない。
特開平11−127869
欧州特許公開第1170371号公報
国際公開公報WO2005/054474
Mitsui et al., Journal of Bacteriology, vol. 182, No. 4 p944-948 (2000)
Orita et. al., Journal of Bacteriology, vol. 187, No. 11, 3636-3642 (2005)
本発明は、常温にてヘキスロース6−リン酸シンターゼ活性および6−ホスホ−3−ヘキスロイソメラーゼ活性を有する二機能性ホルムアルデヒド固定酵素をコードする遺伝子を提供することを目的とする。
本発明はまた、常温にてヘキスロース6−リン酸シンターゼ活性および6−ホスホ−3−ヘキスロイソメラーゼ活性を有する二機能性ホルムアルデヒド固定酵素を提供することを目的とする。
本発明はさらに、本発明の遺伝子を含有する組み換えベクター、および本発明の遺伝子により形質転換された宿主生物を提供することを目的とする。
別の観点からは、本発明は、宿主生物へホルムアルデヒド耐性を付与し、さらにはホルムアルデヒド固定化能を付与する方法、および該方法によりホルムアルデヒド耐性が付与された生物を提供することを目的とする。
本発明はまた、常温にてヘキスロース6−リン酸シンターゼ活性および6−ホスホ−3−ヘキスロイソメラーゼ活性を有する二機能性ホルムアルデヒド固定酵素を提供することを目的とする。
本発明はさらに、本発明の遺伝子を含有する組み換えベクター、および本発明の遺伝子により形質転換された宿主生物を提供することを目的とする。
別の観点からは、本発明は、宿主生物へホルムアルデヒド耐性を付与し、さらにはホルムアルデヒド固定化能を付与する方法、および該方法によりホルムアルデヒド耐性が付与された生物を提供することを目的とする。
本発明は、5’から3’の順に、常温で生育可能な細菌由来のヘキスロース6−リン酸シンターゼ遺伝子および常温で生育可能な細菌由来の6−ホスホ−3−ヘキスロイソメラーゼ遺伝子の融合遺伝子を含み、常温にてヘキスロース6−リン酸シンターゼ活性および6−ホスホ−3−ヘキスロイソメラーゼ活性を有する二機能性ホルムアルデヒド固定酵素をコードする単離遺伝子を提供する。
本発明はまた、本発明の遺伝子によりコードされ、常温でヘキスロース6−リン酸シンターゼ活性および6−ホスホ−3−ヘキスロイソメラーゼ活性を有する二機能性ホルムアルデヒド固定酵素を提供する。
さらに本発明は、本発明の遺伝子を含む組換えベクター、および本発明の遺伝子にて形質転換された宿主生物を提供する。
本発明はまた、本発明の遺伝子によりコードされ、常温でヘキスロース6−リン酸シンターゼ活性および6−ホスホ−3−ヘキスロイソメラーゼ活性を有する二機能性ホルムアルデヒド固定酵素を提供する。
さらに本発明は、本発明の遺伝子を含む組換えベクター、および本発明の遺伝子にて形質転換された宿主生物を提供する。
本発明はさらに、本発明の遺伝子を用いて宿主生物を形質転換する工程を含む、該宿主生物へホルムアルデヒド耐性を付与する方法を提供する。
本発明の遺伝子は、HPSおよびPHI両方の活性を有する二機能性酵素をコードする。この遺伝子産物である酵素は、ホルムアルデヒド固定反応の触媒効率に優れている。また、従来は本反応系を異種生物に導入するためには2度の形質転換操作が必要であったが、当該融合遺伝子では1度の形質転換操作で反応系の異種生物への導入が可能となり、より簡便にホルムアルデヒド耐性を異種生物に与えることができる。この作用により、本遺伝子は安価なホルムアルデヒドを利用した形質転換系におけるマーカー遺伝子としての利用が可能である。
また、本発明の遺伝子を持つ生物は、ホルムアルデヒドなどのC1化合物をバイオマスとして資源化し、通常の糖リン酸変換経路と代謝上融合することにより生産性の増大や生育促進効果が期待できる。さらには環境中のホルムアルデヒドの除去にも利用可能である。
また、本発明の遺伝子を持つ生物は、ホルムアルデヒドなどのC1化合物をバイオマスとして資源化し、通常の糖リン酸変換経路と代謝上融合することにより生産性の増大や生育促進効果が期待できる。さらには環境中のホルムアルデヒドの除去にも利用可能である。
本発明の二機能性酵素は、常温で十分な反応効率を示す。従って、本発明の遺伝子を用いて形質転換された宿主生物は、上記の効果を常温下にて発揮することができる。
本発明において、「常温で生育可能な細菌」とは、約10℃〜45℃の条件下で生育可能な細菌であって、HPSおよびPHIの相同遺伝子を有しているものをいう。常温で生育可能であるメチロトローフが例示されるが、メチロトローフ以外であってもよい。具体的にはBacillus subtilis、Methylomonas aminofaciens、Mycobacterium gastri、Methylococcus capslatus、Brevibacillus brevisなどが例示される。特に、Mycobacterium gastriおよびBacillus subtilisが好ましく用いられる。
HPS遺伝子およびPHI遺伝子、およびそれぞれの発現産物のDNA配列、アミノ酸配列については、既に知られている。例えばMycobacterium gastri、Methylomonas aminofacience、Bacillus brevis、Bacillus subtilis由来のHPSのDNA配列、アミノ酸配列、PHIのDNA配列、アミノ酸配列をそれぞれ配列番号1〜16に示す。
本発明において用いられるHPS遺伝子としては、配列表の配列番号1、5、9、13に記載の配列、および常温で生育可能である細菌由来の遺伝子であって、かかる配列のいずれかと実質的に相同であり、かつ該遺伝子がコードするタンパク質がHPS活性を有する遺伝子が例示される。
本発明において用いられるPHI遺伝子は、配列表の配列番号3、7、11、15に記載の配列、および常温で生育可能な細菌由来の遺伝子であって、かかる配列のいずれかと実質的に相同であり、かつ該遺伝子がコードするタンパク質がPHI活性を有する遺伝子が例示される。
本発明において、「実質的に相同」の配列とは、対象とする配列と60%以上の、好ましくは80%以上の、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは98%以上の相同性を有する配列をいう。配列の同一性は、FASTA検索 (Pearson W.R. and D.J. Lipman (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 85:2444-2448)、SOSUIプログラムURL< http://sosui.proteome.bio.tuat.ac.jp/~sosui/proteome/sosuiframe0.html>やBLAST検索により決定することができる。
常温で生育可能な細菌のゲノム遺伝子配列を得、該配列を公知のPHIおよびHPS遺伝子配列と比較して、これらと実質的に相同の配列を有していることが確認された場合、該細菌由来のHPSおよびPHI遺伝子を本発明において採用することができる。
本発明において用いられるHPS遺伝子はまた、配列表の配列番号2、6、10および14いずれかに記載のアミノ酸配列をコードするものであってもよい。
本発明において用いられるPHI遺伝子はまた、配列表の配列番号4、8、12および16いずれかに記載のアミノ酸配列をコードするものであってもよい。
本発明において、「融合遺伝子」とは、HPS遺伝子とPHI遺伝子が同一のORFに含まれる遺伝子をいう。該ORF内においてHPSをコードする遺伝子と、PHIをコードする遺伝子は直接融合していてもよいし、両者の間に適当なリンカー、例えばグリシンリンカーを含むものであってもよい。
本発明の融合遺伝子の調製は、常温で生育可能なHPS遺伝子を有する細菌および常温で生育可能なPHI遺伝子を有する細菌よりそれぞれの遺伝子を切り出し、両者を結合させればよい。上記のとおり、HPSおよびPHI共にその遺伝子及びアミノ酸配列が解析されていることから、従来より当分野にて使用されている所望の遺伝子を切り出す手段、および切り出した遺伝子を連結する手段を適宜採用すればよい。例えば、Mycobacterium gastri MB19株のhps、phi配列は、phiの73塩基下流にhpsが同方向に存在するオペロンを形成しているが、hps、phi融合遺伝子を作成するにあたっては、phi配列、およびhps配列C末端のストップコドンを除いたものをそれぞれ適当なプライマーを用いてPCRにより増幅し、5’→3’方向にHPS、PHIとなるようにライゲートすればよい。
本発明の融合遺伝子において、HPS遺伝子とPHI遺伝子は同一菌株に由来するものであっても、それぞれ異なる菌株に由来するものであっても、どちらでもよい。同一菌株に由来するものである方が、より好ましく用いられる。
本発明はさらに、本発明の遺伝子によりコードされ、常温でHPS活性およびPHI活性を有する二機能性ホルムアルデヒド固定酵素を提供する。
本明細書において、「常温でHPS活性およびPHI活性を有する」とは、下記実施例に記載されるHPS/PHIアッセイにおいて30℃にて測定した精製酵素の比活性が10U/mg以上の活性を有することを意味する。
本発明の二機能性ホルムアルデヒド固定酵素は、例えばMycobacterium gastri M19株由来のHPS遺伝子およびPHI遺伝子を融合して得た遺伝子産物である場合には、配列番号18記載のアミノ酸配列を有する酵素が得られる。また、本発明の二機能性ホルムアルデヒド固定酵素としては、配列表の配列番号2、6、10、および14で示されるHPS酵素のアミノ酸配列のうちのいずれか1つと、配列表の配列番号4、8、12および16で示されるPHI酵素のアミノ酸配列のうちのいずれか1つを連結したアミノ酸配列のものが例示されるが、これらに限定されるものではない。
本発明はさらに、本発明の遺伝子を含有する組み換えベクターを提供する。本発明のベクターは、形質転換の対象とする異種生物への発現を可能となるよう、適当なベクター系を用いて、これに常套法により本発明の遺伝子を組み込めばよい。
本発明の組み換えベクターには、必要に応じて、所望の宿主における発現を促進するためのプロモーター配列を含み、また形質転換の確認のためのマーカー配列を含んでいてよい。プロモーター配列、マーカー配列は従来から知られているものより、宿主生物に応じて適宜選択すればよい。
例えば、大腸菌に発現させる場合には、プラスミドベクターが好適に用いられる。
本発明はさらに、本発明の遺伝子により形質転換された宿主細胞を提供する。宿主細胞としては、特に限定的でなく、大腸菌、枯草菌、酵母、植物、動物細胞などが例示される。例えば本発明の遺伝子がMycobacterium gastriなどのグラム陰性菌由来のHPS遺伝子およびPHI遺伝子の融合遺伝子である場合、大腸菌に発現させるためにはプラスミドpRAREを有したRosetta(DE3)株を宿主として用いると、本発明の遺伝子を大腸菌中に効率よく発現させることができる。
宿主生物が植物である場合は、WO2005/054474に開示された方法に準じて形質転換を行えばよい。例えば、本発明の遺伝子を発現させるためのDNAコンストラクトとして、プロモーター配列、本発明の遺伝子および、該遺伝子を目的部位、例えば葉緑体で発現させるためのトランジットペプチドを有するものが例示される。植物へのかかるDNAコンストラクトの導入は、アグロバクテリウム法、プロトプラスト法、PEG法、エレクトロポレーション法、パーティクルガン法等、公知の方法のいずれを用いてもよい。本発明の遺伝子を導入することにより、カルビン酸回路を介してホルムアルデヒドを代謝させる経路を有する形質転換植物を得ることができる。
形質転換により得られる本発明の遺伝子を持つ宿主生物は、常温でホルムアルデヒドなどのC1化合物のバイオマスとしての資源化や、通常の糖リン酸変換経路と代謝上融合することにより生産性の増大や生育促進効果が期待でき、また環境中のホルムアルデヒドの除去もしくは低減にも利用可能である。
・Mycobacterium gastri MB19由来HPSおよびPHIの大腸菌発現株の構築
M. gastri MB19株のhps-phiオペロン領域を含むプラスミドpUHM1(Mitsui et al., J Bacteriol 182, 944-948 (2000))を鋳型として用いた。hps(624 bp)の増幅にはプライマーgastri-HPS-NN+とgastri-HPS-EC+を用いて、またphi(600 bp)の増幅にはプライマーgastri-PHI-NN+とgastri-PHI-EC+を用いて、Pyrobest DNA polymerase(タカラバイオ)により、<98℃ 10秒−58℃ 30秒−72℃ 1分、25サイクル>の条件でPCR反応を行った。アガロース電気泳動によりこれらのPCR産物を精製し、それぞれ制限酵素EcoR IとNde Iで処理した。これらのPCR産物と制限酵素EcoR IとNde Iで処理したpET23a(+)(Novagen)のライゲーションを行った。E. coli JM109の形質転換株を任意に選び、それぞれプラスミドを調製し、制限酵素EcoR IとNde Iで切断してこれらのPCR産物の挿入の確認を行った。これにより適当と思われたプラスミドの塩基配列の決定を行い、PCR産物の挿入が確認されたプラスミドをpEHMB19とpEPMB19とした。さらにこのプラスミドをE. coli Rosetta(DE3)(タカラバイオ)に形質転換することにより、HPSおよびPHIそれぞれの大腸菌発現株である、RHMB19株、RPMB19株を得た。
M. gastri MB19株のhps-phiオペロン領域を含むプラスミドpUHM1(Mitsui et al., J Bacteriol 182, 944-948 (2000))を鋳型として用いた。hps(624 bp)の増幅にはプライマーgastri-HPS-NN+とgastri-HPS-EC+を用いて、またphi(600 bp)の増幅にはプライマーgastri-PHI-NN+とgastri-PHI-EC+を用いて、Pyrobest DNA polymerase(タカラバイオ)により、<98℃ 10秒−58℃ 30秒−72℃ 1分、25サイクル>の条件でPCR反応を行った。アガロース電気泳動によりこれらのPCR産物を精製し、それぞれ制限酵素EcoR IとNde Iで処理した。これらのPCR産物と制限酵素EcoR IとNde Iで処理したpET23a(+)(Novagen)のライゲーションを行った。E. coli JM109の形質転換株を任意に選び、それぞれプラスミドを調製し、制限酵素EcoR IとNde Iで切断してこれらのPCR産物の挿入の確認を行った。これにより適当と思われたプラスミドの塩基配列の決定を行い、PCR産物の挿入が確認されたプラスミドをpEHMB19とpEPMB19とした。さらにこのプラスミドをE. coli Rosetta(DE3)(タカラバイオ)に形質転換することにより、HPSおよびPHIそれぞれの大腸菌発現株である、RHMB19株、RPMB19株を得た。
・PHI-HPSおよびHPS-PHI融合遺伝子の作成と大腸菌発現株の構築
pUHM1を鋳型とし、gastri-PHI-NN+とgastri-HPS-EC+を用いて、<98℃ 10秒−58℃ 30秒−72℃ 1分30秒>の条件で25サイクルPCR反応を行った。アガロース電気泳動によりこのPCR産物を精製し、制限酵素EcoR IとNde Iで処理した。このPCR産物と制限酵素EcoR IとNde Iで処理したpET−23a(+)のライゲーションを行った。E. coli JM109の形質転換株を任意に選び、それぞれプラスミドを調製し、制限酵素EcoR IとNde Iで切断してこのPCR産物の挿入の確認を行った。さらに、このプラスミドDNAを鋳型とし、gastri-HPS-Nとgastri-PHI-C(stop-)を用いて、<98℃ 10秒−58℃ 30秒−72℃ 2分>の条件で25サイクル行った。アガロース電気泳動によりこのPCR産物を精製し、キナーゼ処理を行った。このPCR産物のセルフライゲーションを行った。E. coli JM109の形質転換株を任意に選び、それぞれプラスミドを調製し、制限酵素EcoR IとNde Iで切断してこのPCR産物の挿入の確認を行った。これにより適当と思われたプラスミドの塩基配列の決定を行い、PCR産物の挿入が確認されたプラスミドをpEPHMB19とした。さらにこのプラスミドをE. coli Rosetta(DE3)に形質転換することにより、PHI-HPS融合遺伝子の大腸菌発現株である、RPHMB19株を得た。
pUHM1を鋳型とし、gastri-PHI-NN+とgastri-HPS-EC+を用いて、<98℃ 10秒−58℃ 30秒−72℃ 1分30秒>の条件で25サイクルPCR反応を行った。アガロース電気泳動によりこのPCR産物を精製し、制限酵素EcoR IとNde Iで処理した。このPCR産物と制限酵素EcoR IとNde Iで処理したpET−23a(+)のライゲーションを行った。E. coli JM109の形質転換株を任意に選び、それぞれプラスミドを調製し、制限酵素EcoR IとNde Iで切断してこのPCR産物の挿入の確認を行った。さらに、このプラスミドDNAを鋳型とし、gastri-HPS-Nとgastri-PHI-C(stop-)を用いて、<98℃ 10秒−58℃ 30秒−72℃ 2分>の条件で25サイクル行った。アガロース電気泳動によりこのPCR産物を精製し、キナーゼ処理を行った。このPCR産物のセルフライゲーションを行った。E. coli JM109の形質転換株を任意に選び、それぞれプラスミドを調製し、制限酵素EcoR IとNde Iで切断してこのPCR産物の挿入の確認を行った。これにより適当と思われたプラスミドの塩基配列の決定を行い、PCR産物の挿入が確認されたプラスミドをpEPHMB19とした。さらにこのプラスミドをE. coli Rosetta(DE3)に形質転換することにより、PHI-HPS融合遺伝子の大腸菌発現株である、RPHMB19株を得た。
pEPMB19を鋳型とし、gastri-PHI-NとpET-Nde(Rv)を用いて、<98℃ 10秒−58℃ 30秒−72℃ 2分>の条件で25サイクルPCR反応を行った。また、pEHMB19を鋳型とし、gastri-HPS-NN+とgastri-HPS-C(stop-)を用いて、<98℃ 10秒−58℃ 30秒−72℃ 1分>の条件で25サイクルPCR反応を行った。アガロース電気泳動によりこれら2種のPCR産物を精製し、それぞれ制限酵素Nde Iで処理し、キナーゼ処理後、ライゲーションを行った。E. coli JM109の形質転換株を任意に選び、それぞれプラスミドを調製し、制限酵素EcoR IとNde Iで切断してこのPCR産物の挿入の確認を行った。これにより適当と思われたプラスミドの塩基配列の決定を行い、PCR産物の挿入が確認されたプラスミドをpEHPMB19とした。さらにこのプラスミドをE. coli Rosetta(DE3)に形質転換することにより、HPS-PHI融合遺伝子の大腸菌発現株である、RHPMB19株を得た。
本実施例で使用したプライマーを下記に示す。
プライマー名 配列(5' - 3')
gastri-HPS-NN+ GGAATTCCATATGAAGCTCCAAGTCGCCAT
gastri-HPS-EC+ GGAATTCTCAGGCGATCGCGGCGCGCAGTT
gastri-HPS-N ATGAAGCTCCAAGTCGCCATCGACCTGCTG
gastri-HPS-C(stop-) GGCGATCGCGGCGCGCAGTTCCTTCGC
gastri-PHI-NN+ GGAATTCCATATGACGCAAGCCGCAGAAGC
gastri-PHI-EC+ GGAATTCTCACTCGAGGTTGGCGTGGCGCG
gastri-PHI-N ATGACGCAAGCCGCAGAAGCCGACGGCGCC
gastri-PHI-C(stop-) CTCGAGGTTGGCGTGGCGCGTCCAGAGTTC
pET-Nde(Rv) CATATGTATATCTCCTTCTTAAAGTTAAAC
プライマー名 配列(5' - 3')
gastri-HPS-NN+ GGAATTCCATATGAAGCTCCAAGTCGCCAT
gastri-HPS-EC+ GGAATTCTCAGGCGATCGCGGCGCGCAGTT
gastri-HPS-N ATGAAGCTCCAAGTCGCCATCGACCTGCTG
gastri-HPS-C(stop-) GGCGATCGCGGCGCGCAGTTCCTTCGC
gastri-PHI-NN+ GGAATTCCATATGACGCAAGCCGCAGAAGC
gastri-PHI-EC+ GGAATTCTCACTCGAGGTTGGCGTGGCGCG
gastri-PHI-N ATGACGCAAGCCGCAGAAGCCGACGGCGCC
gastri-PHI-C(stop-) CTCGAGGTTGGCGTGGCGCGTCCAGAGTTC
pET-Nde(Rv) CATATGTATATCTCCTTCTTAAAGTTAAAC
・大腸菌発現株の培養
上記で得た各菌株および、コントロールとして形質転換していないE. coli Rosetta(DE3)菌株を、次のとおり培養した。LB培地(含アンピシリン50 μg/ml、クロラムフェニコール34 μg/ml)で前培養し、LB培地(含アンピシリン50 μg/ml、クロラムフェニコール34 μg/ml)に1%植菌し、3時間、37℃で振とう培養した後、0.5 mM IPTGを加えさらに3時間培養した。
上記で得た各菌株および、コントロールとして形質転換していないE. coli Rosetta(DE3)菌株を、次のとおり培養した。LB培地(含アンピシリン50 μg/ml、クロラムフェニコール34 μg/ml)で前培養し、LB培地(含アンピシリン50 μg/ml、クロラムフェニコール34 μg/ml)に1%植菌し、3時間、37℃で振とう培養した後、0.5 mM IPTGを加えさらに3時間培養した。
・無細胞抽出液の調整
各大腸菌発現株の培養液を 5000 x g、4℃、10分間遠心し、20 mMトリス-塩酸緩衝液(Tris-HCl) pH 7.5 MgCl2 5 mM, DTT 1 mM, PMSF 0.15 mM, 10%gulycerin (バッファーA)で洗浄した後に、菌体湿重量の10%となるようにバッファーA に懸濁し、氷水で冷却しながらINSONATOR Model 201M(KUBOTA)により180 W で5分間超音波処理した。これを5000 x g、4℃、30分間遠心して得られた上清を無細胞抽出液とした。
各大腸菌発現株の培養液を 5000 x g、4℃、10分間遠心し、20 mMトリス-塩酸緩衝液(Tris-HCl) pH 7.5 MgCl2 5 mM, DTT 1 mM, PMSF 0.15 mM, 10%gulycerin (バッファーA)で洗浄した後に、菌体湿重量の10%となるようにバッファーA に懸濁し、氷水で冷却しながらINSONATOR Model 201M(KUBOTA)により180 W で5分間超音波処理した。これを5000 x g、4℃、30分間遠心して得られた上清を無細胞抽出液とした。
得られた無細胞抽出液にSDS-PAGEを行うことにより発現の確認を行った。さらに、無細胞抽出液、可溶性画分、膜画分についてのWestern解析からも発現の確認を行い、また、各酵素の局在を確認した。
・精製酵素の調製
得られた無細胞抽出液19.6 mlを40,000 rpm、60分、4℃の遠心分離で沈殿を除去し、上清をDEAE-Toyopearlカラム(φ2.2×20 cm)を用いて、0から0.5 M KClの直線濃度勾配で溶出を行った。溶出速度は3 ml/min とし、溶出液は8 mlずつ回収した。
得られた画分24 mlに、撹拌しながら固形硫安を2.83 Mになるまで少量ずつ加え、30分氷冷後、10,000 g、15分、4℃の遠心分離により上清を除去し、沈殿をバッファーA 20 mlに懸濁した。これら全ての過程は4℃で行った。
なお、SDS-PAGEの結果、単一のバンドが得られたことから、上記各精製酵素は電気泳動的に均一であることが確認された。
得られた無細胞抽出液19.6 mlを40,000 rpm、60分、4℃の遠心分離で沈殿を除去し、上清をDEAE-Toyopearlカラム(φ2.2×20 cm)を用いて、0から0.5 M KClの直線濃度勾配で溶出を行った。溶出速度は3 ml/min とし、溶出液は8 mlずつ回収した。
得られた画分24 mlに、撹拌しながら固形硫安を2.83 Mになるまで少量ずつ加え、30分氷冷後、10,000 g、15分、4℃の遠心分離により上清を除去し、沈殿をバッファーA 20 mlに懸濁した。これら全ての過程は4℃で行った。
なお、SDS-PAGEの結果、単一のバンドが得られたことから、上記各精製酵素は電気泳動的に均一であることが確認された。
・酵素活性の測定
Orita et al., J Bacteriol 187, 3636-3642 (2005)に掲載の方法で、HPS活性、PHI活性、HPS/PHI活性を測定した。その方法を簡単に記載する。
Orita et al., J Bacteriol 187, 3636-3642 (2005)に掲載の方法で、HPS活性、PHI活性、HPS/PHI活性を測定した。その方法を簡単に記載する。
表1記載の試薬を混合し、30分間30℃にてプレインキュベーションした。次いで10mMのホルムアルデヒド溶液を0.1ml(最終濃度2mM)添加し、さらに5分間インキュベートした後、反応を0.1mlの0.5N HClを添加して反応を止めた。
反応液中のホルムアルデヒトの濃度を ナッシュ(Nash)法により定量した(Nash試薬:酢酸アンモニウム 15 g、酢酸 0.3 ml、アセチルアセトン 0.2 ml /100 ml)。反応液を水で20倍希釈し、ここへNash試薬2mlを添加した。410nmにおける吸光度を測定し、ホルムアルデヒド濃度を算出した。酵素単位は、1分間に1μmolのホルムアルデヒドを減少させる酵素量を1ユニット(U)とし、HPSタンパク質1mg当たりのユニット数を比活性 (U/mg・protein) とした。ブランクとしては、Ri5Pを水に置き換えたものを用いた。
・PHI活性の測定
PHIの酵素活性測定法をスキーム2に示す。
PHIの酵素活性測定法をスキーム2に示す。
Fu6P:フルクトース−6−リン酸
G6P:グルコース−6−リン酸
PRI:ホスホリボイソメラーゼ
PGI:ホスホグルコースイソメラーゼ
G6PDH:グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ
G6P:グルコース−6−リン酸
PRI:ホスホリボイソメラーゼ
PGI:ホスホグルコースイソメラーゼ
G6PDH:グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ
PHI活性は、生成されるFu6Pの量を測定することにより求めた。初めにアッセイ混合液1を30℃、5分、反応させることによりRu5Pを作らせた。次にHu6Pを合成するために、十分量の精製したHPSを添加し、さらに反応混合物内に測定対象であるPHIを加えた。このHPSとPHIの反応は30℃、5分行い、反応混合物を氷上に置くことによって反応を止めた。
反応混合物中の生成されたFu6Pの量を、G6PDHの補酵素であるNADP+による340nmの吸光度変化を30℃で測定することにより算出した。反応を止めた後のアッセイ混合液1へ、NADP+を加え、ここへPGIとG6PDH加えることにより反応を開始した。酵素単位は、1分間にG6PDHによってG6PをPGRに酸化するFu6Pを1μmol生産する酵素量を1ユニット(U)とし、タンパク質1mg当たりのユニット数を比活性 (U/mg・protein) とした。
・HPS/PHI活性(オーバーオール活性)
オーバーオール活性は、PHI活性の測定法に準じて行った。PHI活性の測定においてアッセイ混合液1へ添加したHPSおよびPHIの代わりに、HPS−PHI融合酵素、PHI−HPS融合酵素あるいは測定対象であるHPSおよびPHIの混合物を添加し、30℃で5分間反応させた。得られた反応混合物中のFu6P量の測定を、上記と同様にして行った。1分間にG6PDHによってG6PをPGRに酸化するFu6Pを1μmol生産する融合酵素あるいはHPSとPHIの合計酵素量を1ユニット(U)とし、タンパク質1mg当たりのユニット数を比活性 (U/mg・protein) とした。
オーバーオール活性は、PHI活性の測定法に準じて行った。PHI活性の測定においてアッセイ混合液1へ添加したHPSおよびPHIの代わりに、HPS−PHI融合酵素、PHI−HPS融合酵素あるいは測定対象であるHPSおよびPHIの混合物を添加し、30℃で5分間反応させた。得られた反応混合物中のFu6P量の測定を、上記と同様にして行った。1分間にG6PDHによってG6PをPGRに酸化するFu6Pを1μmol生産する融合酵素あるいはHPSとPHIの合計酵素量を1ユニット(U)とし、タンパク質1mg当たりのユニット数を比活性 (U/mg・protein) とした。
・HPS-PHIとPHI-HPSの活性の比較
RPHMB19株およびRHPMB19株から得た無細胞抽出液のHPS/PHI酵素活性を調べた。RHPMB19株の無細胞抽出液(HPS−PHI)は、17.6U/mgの比活性を示したが、RPHMB19株の無細胞抽出液(PHI−HPS)は活性が検出できなかった。
RPHMB19株およびRHPMB19株から得た無細胞抽出液のHPS/PHI酵素活性を調べた。RHPMB19株の無細胞抽出液(HPS−PHI)は、17.6U/mgの比活性を示したが、RPHMB19株の無細胞抽出液(PHI−HPS)は活性が検出できなかった。
・RHMB19株およびRPMB19株からそれぞれ得られたHPSおよびPHIを等モル量混合して用いた場合と、RHPMB19株より得られたHPS−PHI融合酵素を用いた場合のHPS/PHI反応における触媒効率を比較した。結果を図2に示す。HPS−PHI融合酵素では、単独酵素の混合物に比べて触媒効率が約2倍向上していた。
・至適pHおよび至適温度の測定
各精製酵素を用いた。緩衝液のpHを調節して、酵素反応液中のpHを、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0(KPBでpH 6.0〜7.5、Tris-HClでpH 8.0〜9.0)とし、それぞれの条件で活性を測定した。また、酵素反応の反応温度を20、30、40、50、60、70、80℃とし、それぞれの条件での活性を測定して至適温度を調べた。結果を表4に示す。
各精製酵素を用いた。緩衝液のpHを調節して、酵素反応液中のpHを、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0(KPBでpH 6.0〜7.5、Tris-HClでpH 8.0〜9.0)とし、それぞれの条件で活性を測定した。また、酵素反応の反応温度を20、30、40、50、60、70、80℃とし、それぞれの条件での活性を測定して至適温度を調べた。結果を表4に示す。
・ホルムアルデヒドに対するKm値
添加するホルムアルデヒド濃度を、2、4、6、8、10、12 mMとし、それぞれの条件でのHPS活性を測定し、Lineweaver-Burkプロットをとることにより、ホルムアルデヒドに対するKm値を求めた。結果を表4に示す。
添加するホルムアルデヒド濃度を、2、4、6、8、10、12 mMとし、それぞれの条件でのHPS活性を測定し、Lineweaver-Burkプロットをとることにより、ホルムアルデヒドに対するKm値を求めた。結果を表4に示す。
非特許文献2記載の方法にて超好熱性アーキアPyroccocus horikoshii由来のHPS、PHIおよびHPS−PHI(PH1938)を発現する大腸菌発現株を得、それぞれの無細胞抽出液を得、精製酵素を得た。各生成物の酵素活性、至適pH、至適温度およびホルムアルデヒドに対するKm値を確認した。なお、Pyroccocus horikoshii由来の各酵素の生成物の酵素活性については、80℃で試験した。
各値を下記表4に示す。
各値を下記表4に示す。
P. horikoshii株由来rHps-Phiの至適温度は80℃と非常に高く、常温ではほとんど活性が見られなかったのに対して、M. gastri MB19株由来rHps-Phiの至適温度は30℃であり、常温で高い活性が認められた。
・ホルムアルデヒド耐性およびホルムアルデヒド除去能の確認
上記で得たRHPMB19株(HPS−PHI遺伝子発現株)および、コントロールとしてpET23aで形質転換した大腸菌E. coli Rosetta(DE3)菌株を、次のとおり培養した。LB培地(含アンピシリン50 μg/ml、クロラムフェニコール34 μg/ml)で前培養し、LB培地(含アンピシリン50 μg/ml、クロラムフェニコール34 μg/ml)に1%植菌し、3時間、37℃で振とう培養した後、0.5 mM IPTGを加えさらに3時間培養した。
次いで各培養物へホルムアルデヒドが1mMとなるよう添加し、さらに培養した。ホルムアルデヒド添加前から経時的に各菌株の増殖をOD610にて測定し、および培地中のホルムアルデヒド濃度を測定した。結果を図3に示す。
上記で得たRHPMB19株(HPS−PHI遺伝子発現株)および、コントロールとしてpET23aで形質転換した大腸菌E. coli Rosetta(DE3)菌株を、次のとおり培養した。LB培地(含アンピシリン50 μg/ml、クロラムフェニコール34 μg/ml)で前培養し、LB培地(含アンピシリン50 μg/ml、クロラムフェニコール34 μg/ml)に1%植菌し、3時間、37℃で振とう培養した後、0.5 mM IPTGを加えさらに3時間培養した。
次いで各培養物へホルムアルデヒドが1mMとなるよう添加し、さらに培養した。ホルムアルデヒド添加前から経時的に各菌株の増殖をOD610にて測定し、および培地中のホルムアルデヒド濃度を測定した。結果を図3に示す。
図3より明らかなごとく、本発明の遺伝子にて形質転換された大腸菌は、ホルムアルデヒドを速やかに除去しつつ、生育することが可能である。
・ホルムアルデヒド耐性の付与
上記で得た各大腸菌株(HPS遺伝子発現株(MGhps)、PHI遺伝子発現株(MGphi)、HPS―PHI遺伝子発現株(MGpsMGphi)それぞれ、およびコントロールとしてpET23aで形質転換した宿主菌株(pET23a)を、上記と同様の条件下で培養した。結果を図4に示す。
図4から明らかなように、HPSあるいはPHIのいずれかを単独で発現した株は、コントロール株と同等のホルムアルデヒドに対する感受性を示したが、HPSおよびPHIの両方を発現した株には、良好なホルムアルデヒド耐性が認められた。
上記で得た各大腸菌株(HPS遺伝子発現株(MGhps)、PHI遺伝子発現株(MGphi)、HPS―PHI遺伝子発現株(MGpsMGphi)それぞれ、およびコントロールとしてpET23aで形質転換した宿主菌株(pET23a)を、上記と同様の条件下で培養した。結果を図4に示す。
図4から明らかなように、HPSあるいはPHIのいずれかを単独で発現した株は、コントロール株と同等のホルムアルデヒドに対する感受性を示したが、HPSおよびPHIの両方を発現した株には、良好なホルムアルデヒド耐性が認められた。
また、HPS―PHI遺伝子発現株(MGpsMGphi)のホルムアルデヒド耐性を調べたところ、培地中にホルムアルデヒドが2mMまで含まれていても良好な成長を示し、同時に培地中のホルムアルデヒドを除去することが可能であった。
Claims (16)
- 5’から3’の順に、常温で生育可能な細菌由来のヘキスロース6−リン酸シンターゼ遺伝子および常温で生育可能な細菌由来の6−ホスホ−3−ヘキスロイソメラーゼ遺伝子の融合遺伝子を含み、常温にてヘキスロース6−リン酸シンターゼ活性および6−ホスホ−3−ヘキスロイソメラーゼ活性を有する二機能性ホルムアルデヒド固定酵素をコードする単離遺伝子。
- 常温で生育可能な細菌が、Bacillus subtilis、Methylomonas aminofaciens、Mycobacterium gastri、Methylococcus capslatusおよびBrevibacillus brevisからなる群から選択される、請求項1記載の遺伝子。
- ヘキスロース6−リン酸シンターゼ遺伝子が、配列番号1、5、9および13いずれかに記載のDNA配列、またはこれらのDNA配列と実質的に相同であり、ヘキスロース6−リン酸シンターゼをコードするDNA配列を有する、請求項1または2記載の遺伝子。
- ヘキスロース6−リン酸シンターゼ遺伝子が、配列番号2、6、10および14記載のアミノ酸配列をコードするDNA配列を有する、請求項1〜3いずれかに記載の遺伝子。
- 6−ホスホ−3−ヘキスロイソメラーゼ遺伝子が、配列番号3、7、11および15いずれかに記載のDNA配列、またはこれらのDNA配列と実質的に相同であり、6−ホスホ−3−ヘキスロイソメラーゼをコードするDNA配列を有する、請求項1〜4いずれかに記載の遺伝子。
- 6−ホスホ−3−ヘキスロイソメラーゼ遺伝子が、配列番号4、8、12および16いずれかに記載のアミノ酸配列をコードするDNA配列を有する、請求項1〜5いずれかに記載の遺伝子。
- 配列番号17記載のDNA配列、または配列番号26記載のDNA配列と実質的に相同であり、常温にてヘキスロース6−リン酸シンターゼ活性および6−ホスホ−3−ヘキスロイソメラーゼ活性を有する二機能性ホルムアルデヒド固定酵素をコードする単離遺伝子。
- 配列番号18記載のアミノ酸配列をコードするDNA配列を有し、常温でヘキスロース6−リン酸シンターゼ活性および6−ホスホ−3−ヘキスロイソメラーゼ活性を有する二機能性ホルムアルデヒド固定酵素をコードする単離遺伝子。
- 請求項1〜8いずれかに記載の遺伝子によりコードされ、常温でヘキスロース6−リン酸シンターゼ活性および6−ホスホ−3−ヘキスロイソメラーゼ活性を有する二機能性ホルムアルデヒド固定酵素。
- 配列番号18記載のアミノ酸配列、または該配列と実質的に相同の配列を有し、常温でヘキスロース6−リン酸シンターゼ活性および6−ホスホ−3−ヘキスロイソメラーゼ活性を有する二機能性ホルムアルデヒド固定酵素。
- 請求項1〜8いずれかに記載の遺伝子を含む、組み換えベクター。
- 請求項1〜8いずれかに記載の遺伝子にて形質転換され、ホルムアルデヒド耐性を有する宿主生物。
- 大腸菌である、請求項12記載の宿主生物。
- 植物である、請求項12記載の宿主生物。
- 請求項11記載のベクターにより、宿主生物を形質転換する工程を含む、該生物へホルムアルデヒド耐性を付与する方法。
- ホルムアルデヒドが存在する環境下において、常温にて請求項12〜14いずれかに記載の宿主生物を生育させることを含む、環境からホルムアルデヒドを除去する方法。
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