JP6047143B2 - cyclicdi−GMPの実践的酵素合成法 - Google Patents

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Description

本発明は、ジグアニレートシクラーゼ活性を有する新規な酵素、及び当該酵素を用いた実践的なサイクリックdi-GMP合成法に関するものである。
サイクリックdi-GMP(以下「c-di-GMP」と称する)は、細菌のバイオフィルム形成、運動性、病原因子の発現などに関与する細菌のシグナル伝達物質であり、近年その生理活性やシグナル伝達機構等が注目を集めている。例えば最近では、c-di-GMPが免疫賦活作用を有することが明らかにされたほか、アジュバントやアレルギー調節剤の有効成分としての利用等、c-di-GMPは医薬品として有望視されている。
しかしながら、これまでc-di-GMPは入手が限定的であり、かつ非常に高価であった。そこで従来、c-di-GMPの効率的な製造法として、化学合成法や酵素合成法が研究され、中でも実践的な製造法として酵素合成法が検討されてきた。
c-di-GMPは、ジグアニレートシクラーゼ(以下「DGC」と称する)の触媒作用により、2分子のGTPから2段階の酵素反応によって合成することができる。各種生物由来のDGCは、活性の本体であって生物種間でよく保存された「GGDEFドメイン」を有している。また、GGDEFドメイン内のi-siteと呼ばれる部位は、c-di-GMP合成反応における生成物阻害に関与することが知られている。GGDEFドメインを有し、DGC活性を有すると予測される遺伝子は様々な生物に存在し、それぞれのGGDEFドメイン間の相同性は高いものの、GGDEFドメイン以外の領域は各遺伝子間で大きく異なり、多様な構造をとる。
従来のc-di-GMP酵素合成法として、公知例ではCaulobacter crescentus由来DGCの変異体を大腸菌等に封入体の形で大量発現させ、当該変異DGCとグアニル酸キナーゼ、ヌクレオシド二リン酸キナーゼを併用することで、ワンポットでc-di-GMPを合成したことが記載されている(特許文献1)。しかしながら、特許文献1の方法は、c-di-GMPの製造工程において、大腸菌の菌体から封入体を精製する工程、さらに封入体として得られたDGCをリフォールディングし、再度活性化するための工程が必要とするものであり、工業的大量合成においては煩雑な処理が多く、課題の多い方法であった。
また、他の公知例では好熱性細菌Thermotoga maritima由来DGCを利用した例が知られている(特許文献2、非特許文献1)。当該公知例では、T.maritima由来DGCにおいて、最小機能領域であるGGDEFドメインのみを発現させ、さらにi-siteにアミノ酸変異を導入することによって生成物阻害を解除した改変酵素を用いて合成を行ったことが記載されている。
また、本願発明者らは、Geobacillus stearothermophilus由来のDGC(以下「GsDGC」と称する)を用いて、c-di-GMP合成系を構築したことを報告している(非特許文献2)。非特許文献2には、酵素反応系において、Acinetobacter johnsonii由来ポリリン酸:AMPホスホトランスフェラーゼと、緑膿菌由来ポリリン酸依存的ヌクレオシド二リン酸キナーゼを組み合わせることによって、ポリリン酸をドナーとしたGMPからのGTP供給系を構築したことが記載されている。上記特許文献2及び非特許文献1の合成系ではGTPによる基質阻害が生じるため、GTPの添加を繰り返し行わなければならなかったが、非特許文献2の合成系は、その必要がないという点で優れた合成系であった。また、GTPは高価であるため、非特許文献2の合成系はコストの面でも優れていた。
国際公開第2010/066666号 国際公開第2010/101526号
Analytical Biochemistry、Vol.389 138-142頁(2009) 日本農芸化学会・大会講演要旨集(2011・京都)、119頁
しかしながら、非特許文献2のGsDGCを用いたc-di-GMP製造法では、酵素の活性が十分に高いものとは言えず、反応液に対して著しく多量のGsDGC用菌体培養液が必要であった。さらに反応に際して酵素の精製が不可欠であり、煩雑な工程を経ることが必要であるなどの欠点があることから、依然として現実的な工業レベルでの酵素合成法とは到底なり得ないものであった。
また本願発明者らは後述する実施例に記載しているように、特許文献2及び非特許文献1に記載されている遺伝子操作をG.stearothermophilus由来の酵素を用いて試みた。具体的には、G.stearothermophilus由来のDGCにおいて、GGDEFドメインのみを発現させ、さらにi-siteにアミノ酸変異を導入した。しかしながら、この場合も十分な酵素活性は得られなかった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、実践的なc-di-GMPの酵素合成法を提供することを目的とする。
本願発明者らは鋭意検討を行った結果、従来の改変酵素よりも著しく高い比活性や生産性及び熱安定性を有する新たな改変酵素を作成し、きわめて高効率のc-di-GMP酵素合成系を確立することで、本発明を完成させた。
具体的には、後述する実施例に記載のように、GsDGCの最小機能領域のみを発現させ、i−siteへの変異導入を行った改変酵素(以下「tiGs3466」と称する)に対して、54番目のアスパラギン残基をグリシン残基へと変える変異を導入した。こうして得られた酵素は、従来のDGCと比べて比活性や酵素生産性が著しく向上し、しかも熱安定性がきわめて高いという性質を有していた。これによってc-di-GMPを工業レベルでより実践的に合成しうることを見出し、本発明を完成させたものである。
即ち本発明によれば、下記の理化学的性質を有するジグアニレートシクラーゼが提供される。
(A)作用:下記の反応を触媒する。
2GTP → c-di-GMP
(B)分子量:19800±2000
(C)至適pH:7.3〜9.4
(D)至適温度:35〜60℃
(E)熱安定性:50℃、pH7.8の条件で60分加熱したときの残存活性が90%以上である。
(F)GGDEFドメインを含み、且つi-siteにKXXDのアミノ酸配列を有さない。
この構成を有するDGCは、従来のDGCと比べて比活性や酵素生産性が著しく高く、しかも熱安定性がきわめて高いことが後述の実施例で実証されている。そのため、c-di-GMPを工業レベルでより実践的に合成することが可能になる。なお、GGDEFドメインとはジグアニレートシクラーゼの最小機能領域をいう。また、i-siteとはGGDEFドメイン内に存在する、生成物阻害を制御する部位のことをいう。さらに、i-site中にはアミノ酸配列KXXD(配列番号23)で示される特徴的なモチーフが存在する。KXXDにおいてXは任意のアミノ酸残基を示す。
また本発明によれば、(G)配列番号6のアミノ酸配列、(H)配列番号6のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有し、且つ配列番号6のアミノ酸配列の54位のグリシン残基は保存され、i-siteにKXXDのアミノ酸配列を有さないアミノ酸配列、(I)配列番号6のアミノ酸配列の1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加され、且つ配列番号6のアミノ酸配列の54位のグリシン残基は保存され、i-siteにKXXDのアミノ酸配列を有さないアミノ酸配列、(J)配列番号6のアミノ酸配列をコードする塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸に対して、ストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸の塩基配列にコードされ、且つ配列番号6のアミノ酸配列の54位のグリシン残基は保存され、i-siteにKXXDのアミノ酸配列を有さないアミノ酸配列、からなる群から選ばれる1種以上のアミノ酸配列を含む、DGCが提供される。
また本発明によれば、上記DGCのN末端に、二量体化能を有する蛋白質を融合化した、融合化酵素が提供される。又は、上記DGC又は上記融合化酵素の、ジグアニレートシクラーゼ活性を有する蛋白質断片が提供される。
また本発明によれば、上記DGC、上記融合化酵素の蛋白質断片、もしくは上記蛋白質断片をコードするポリヌクレオチド又は発現ベクターが提供される。又はそのポリヌクレオチドもしくは発現ベクターによって形質転換された形質転換体が提供される。
また本発明によれば、酵素を用いて2分子のGTPからc-di-GMPを製造する方法において、酵素として、上記発現ベクターを用いて宿主微生物を形質転換し、得られた形質転換体を培養して産生させたジグアニレートシクラーゼ、又はジグアニレートシクラーゼを含む融合化酵素を用いる、c-di-GMPの製造法が提供される。
本発明の酵素は、従来知られていたDGCと比較して、比活性、酵素生産性及び熱安定性が著しく向上しているものである。したがって当該酵素を用いた製造法では、従来の酵素合成法に比べて、きわめて高い効率でc-di-GMPを合成することが可能である。また、合成に当たって、菌体由来の粗酵素液をそのまま用いることができ、酵素液の使用量も少量で十分である。このように、本発明の酵素及び当該酵素を用いたc-di-GMPの合成法は、c-di-GMPの実践的製造法としてきわめて有用である。
図1は、実施例に記載の、各種プラスミドの作製手順の概念図である。 図2は、GTP供給系を利用したc-di-GMP合成系の反応工程の模式図である。 図3は、実施例に記載の各種改変酵素について、精製酵素を用いたときのc-di-GMPの合成の様子を示すものである。横軸は反応時間、縦軸は培養液中のc-di-GMP濃度を示す。 図4は、実施例に記載の各種改変酵素について、粗酵素を用いたときのc-di-GMPの合成の様子を示すものである。横軸は反応時間、縦軸は培養液中のc-di-GMP濃度を示す。 図5は、tiGs3466Gについて、pH6.5〜10.0の範囲におけるDGC活性を測定したときグラフである。 図6は、実施例に記載の各種改変酵素について、pH6.5〜10.0の範囲におけるDGC活性を測定したときグラフである。 図7は、tiGs3466Gについて、30〜60℃の範囲におけるDGC活性を測定したときのグラフである。 図8は、実施例に記載の各種改変酵素について、30〜60℃の範囲におけるDGC活性を測定したときのグラフである。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、同様な内容については繰り返しの煩雑を避けるために、適宜説明を省略する。
(1)新規のDGC
本発明の一実施形態は、新規のDGCである。このDGCは、下記(A)〜(F)の理化学的性質を有していてもよい。(A)作用:下記の反応を触媒する。2GTP → c-di-GMP、(B)分子量:19800±2000、(C)至適pH:7.3〜9.4、(D)至適温度:35〜60℃、(E)熱安定性:50℃、pH7.8の条件で60分加熱したときの残存活性が90%以上である、(F)GGDEFドメインを含み、且つi-siteにKXXDのアミノ酸配列を有さない。この(A)〜(F)の性質を有するDGCは、tiGs3466(配列番号4のアミノ酸配列を有するDGC)に比べて、比活性や酵素生産性が著しく高く、しかも熱安定性のきわめて高いことが後述の実施例において実証されている。そのため、上記の理化学的性質を有するDGC を用いれば、c-di-GMPを工業レベルでより実践的に合成することが可能になる。
また本発明の一実施形態のDGCは、配列番号6のアミノ酸配列を有していてもよい。該アミノ酸配列は、tiGs3466における54番目のアスパラギン残基をグリシン残基へと変える変異を有し、かつDGC活性を維持する限りにおいて、配列番号6で示されるアミノ酸配列に限定されるものではなく、配列番号6に示されるアミノ酸配列における1個もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、修飾又は付加されたアミノ酸配列であってもかまわない。又は、tiGs3466における54番目のアスパラギン残基をグリシン残基へと変える変異を有し、DGC活性を維持する限りにおいて、配列番号6に示すアミノ酸配列と90%以上の同一性を有する酵素であってもかまわない。又は、tiGs3466における54番目のアスパラギン残基をグリシン残基へと変える変異を有し、DGC活性を維持する限りにおいて、配列番号6のアミノ酸配列をコードする塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸に対して、ストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸の塩基配列にコードされているアミノ酸配列を有する酵素であってもかまわない。
本発明の一実施形態のDGCは、i-siteに変異を有していてもよい。具体的には、例えばKXXD(配列番号23)のアミノ酸配列を有さないアミノ酸配列であってもよい。i-siteの位置は当業者に周知である。例えば、被験DGCと、Geobacillus stearothemophilus由来DGCとの配列を比較し、Geobacillus stearothemophilus由来DGCのKEGDに対応する領域をi-siteとしてもよい。また、本発明の一実施形態のDGCは、GGDEFドメインを含んでいてもよい。GGDEFドメインの配列は生物間でよく保存されている。そのため、GGDEFドメインの位置は、公知のGGDEFドメインの塩基配列、アミノ酸配列等をもとに検索(又は比較)することで適宜決定できる。
また、本発明の一実施形態のDGCは、そのDGCと、二量体化能を有する蛋白質との融合化酵素の形態であってもよい。例えば後述する実施例では、DGCに二量体化能を有する無機ピロホスファターゼを融合させると、c-di-GMPの製造効率が向上することが実証されている。二量体化能を持つ蛋白質としては、当業者であれば種々選択できるが、例えば無機ピロホスファターゼ(yPPA)などを挙げることができる。
本発明の一実施形態のDGCは、例えば下記の方法によって得ることが可能である。
(2)tiGs3466の作製
(2−1)GsDGC最小機能領域のクローニング
Geobacillus stearothermophilusからGsDGCの最小機能領域をコードする遺伝子(以下「tGs3466遺伝子」と称する)を取得し、これを用いて組換えベクターを作製する。クローニングにおいては例えばGeobacillus stearothemophilusのゲノムDNAを鋳型として、後述の実施例に記載のプライマー(a)及び(b)に示したDNA断片をPCRプライマーとして用い、公知のクローニング方法によって大腸菌等の微生物に発現せしめればよい。
(2−2)変異の導入;i-siteへのアミノ酸置換の導入
生成物阻害の原因となるi-siteへの変異導入法については、例えば上記特許文献2の方法に準拠すればよい。具体的には、tGs3466のDGC活性を失わず、かつ生成物阻害が十分に低減される変異であれば、どのようなものでも構わないが、例えばtGs3466のアミノ酸配列において、74番目のリジン残基をアラニン残基に、77番目のアスパラギン酸残基をグルタミン酸残基に変異させる変異導入などを挙げることができる。このようにして、tiGs3466を作製できる。
(3)酵素の改変
(3−1)アミノ酸変異の導入
本発明の一実施形態のDGCは、tiGs3466のアミノ酸配列において、54番目のアスパラギン残基をグリシン残基へと変える変異を導入することによって得られることを特徴とするものである。変異導入の方法については、公知の方法(Nucleic Acids Res.2004 Aug 10;32(14):e115等)に従えばよい。変異を有しているDGCを変異型DGCと称してもよい。
(3−2)融合化酵素の作成
本発明の一実施形態のDGCは、上記変異を導入したtiGs3466と二量体化能を有する蛋白質との融合化酵素として発現させることもできる。酵素の融合化については公知の方法を用いることができる。例えば、上記tiGs3466のアミノ酸配列において54番目のアスパラギン残基をグリシン残基へと変える変異を導入することで作製した改変tiGs3466酵素をコードする遺伝子と二量体化能を有する蛋白質をコードする遺伝子とをそれぞれ個別にクローニングし、任意の制限酵素によって切り出した遺伝子を融合させることで融合化酵素遺伝子とし、その融合化酵素遺伝子をプラスミドに組み込み、これを大腸菌等に発現させればよい。また、二量体化能を有する蛋白質は、その二量体化能を失わない限りにおいて任意の変異を導入していても構わない。
(4)改変酵素を用いたc-di-GMPの合成
本発明の一実施形態のDGCを用いてc-di-GMPを合成するには、上記tiGs3466のアミノ酸配列において54番目のアスパラギン残基をグリシン残基へと変える変異を導入した改変tiGs3466酵素、又は当該改変tiGs3466と二量体化能を有する蛋白質とを融合化した酵素を大腸菌等の微生物に発現させ、これをもとにした精製酵素又は粗酵素液の形態として利用することができる。
具体的には、粗酵素液として菌体の処理物を、又は精製酵素として当該処理物から得られる酵素を例示することができる。微生物の菌体の調製は、当該微生物が生育可能な培地を用い、常法により培養後、遠心分離等で集菌する方法で行うことができる。具体的に、大腸菌を例に挙げ説明すれば、培地としてブイヨン培地、LB培地(1%トリプトン、0.5%イーストエキス、1%食塩)又は2xYT培地(1.6%トリプトン、1%イーストエキス、0.5%食塩)などを使用することができ、当該培地に種菌を接種後、30〜50℃で1〜100時間程度必要により撹拌しながら培養し、得られた培養液を遠心分離することによって微生物菌体を回収することができる。
粗酵素液としては、上記微生物菌体を機械的破壊(ワーリングブレンダー、フレンチプレス、ホモジナイザー、乳鉢などによる)、凍結融解、自己消化、乾燥(凍結乾燥、風乾などによる)、酵素処理(リゾチームなどによる)、超音波処理、化学処理(酸、アルカリ処理などによる)などの一般的な処理法に従って処理し、当該破砕菌体を遠心分離して得られる上清を例示することができる。
精製酵素としては、上記菌体処理物から所望の酵素活性を有する画分を通常の酵素の精製手段(塩析処理、等電点沈澱処理、有機溶媒沈澱処理、透析処理、各種クロマトグラフィー処理など)を施して得られるものを例示することができる。
c-di-GMPの合成系では、原料としてGTP、酵素として本発明の実施形態に係るDGCを添加する。添加量としては、GTPが1〜200mM、好ましくは10〜100mMの範囲、上記DGCが0.001〜50units/mLの範囲とすることが好ましいが、この条件に限定されるものではない。また、反応系には、さらに金属塩としてマグネシウム塩、マンガン塩などを添加しても良い。金属塩の具体例としては、塩化マグネシウム、塩化マンガンなどを挙げることができる。当該反応系を15℃以上、好ましくは30〜50℃で0.5〜100時間、必要により攪拌しながら反応させることによりc-di-GMPを合成することができる。
さらにc-di-GMPの合成系では、原料であるGTPによる基質阻害が発生することから、反応系にAMPリン酸転移酵素(PAP)及びポリリン酸依存的ヌクレオシド5'−ジリン酸キナーゼ(PNDK)から成るGTP供給系を共役させることができる。
すなわち、上記合成系において、原料としてGTPではなくGMPを用い、さらにGTP供給系として、ポリリン酸を無機リン酸に換算して例えば1〜1000mM、好ましくは30〜300mMの範囲、PAPを例えば0.001〜50units/mLの範囲、PNDKを例えば0.001〜50units/mLの範囲で添加し、好ましくは30〜50℃で0.5〜100時間、必要により攪拌しながら反応させることにより、c-di-GMPを合成することができる。
なお、上記いずれの反応においても、反応により生成するピロリン酸が生成物阻害を起こす場合があるため、0.001units/mL以上、好ましくは0.001〜10units/mLの無機ピロホスファターゼ(yPPA)を添加することができる。
反応後、反応液中に生成したc-di-GMPは、活性炭やイオン交換樹脂などを用いた通常のクロマトグラフィー処理法により単離精製することができる。
(5)その他のDGC
本発明の一実施形態のDGCは、配列番号10のアミノ酸配列を含む、DGCである。この構成を有するDGCは、tiGs3466G(配列番号6のアミノ酸配列を有するDGC)に比べて高いDGC活性を有する。なお、上記配列番号10のアミノ酸配列は、配列番号10のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有し、且つ配列番号10のアミノ酸配列の352位のグリシン残基は保存され、i-siteにKXXDのアミノ酸配列を有さないアミノ酸配列と置き換えても良い。また、上記配列番号10のアミノ酸配列は、配列番号10のアミノ酸配列の1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加され、且つ配列番号10のアミノ酸配列の352位のグリシン残基は保存され、i-siteにKXXDのアミノ酸配列を有さないアミノ酸配列と置き換えても良い。また、上記配列番号10のアミノ酸配列は、配列番号10のアミノ酸配列をコードする塩基配列に相補的な塩基配列からなる核酸に対して、ストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸の塩基配列にコードされ、且つ配列番号10のアミノ酸配列の352位のグリシン残基は保存され、i-siteにKXXDのアミノ酸配列を有さないアミノ酸配列と置き換えても良い。
本発明の一実施形態のDGCは、Geobacillus stearothemophilus由来DGCの291位のアスパラギン残基に相当するアミノ酸が、グリシン残基に置換されていてもよい。上記291位のアスパラギン残基に相当するアミノ酸としては、例えば、被験DGCと、Geobacillus stearothemophilus由来DGCとの配列を比較し、Geobacillus stearothemophilus由来DGC の291位のアスパラギン残基に対応するアミノ酸残基を選択してもよい。Geobacillus stearothemophilus由来DGCとしては、例えば、配列番号25のアミノ酸配列を有するDGCであってもよい。
本発明の一実施形態のDGCは、DGCと、蛋白質又はペプチドとが融合化した融合化酵素の形態であってもよい。融合化させる蛋白質としては、二量体化能を有する蛋白質であることが好ましい。また、融合化させる蛋白質としては、ピロリン酸を加水分解する酵素であってもよい。例えば後述する実施例では、DGCに二量体化能を有する無機ピロホスファターゼを融合させると、c-di-GMPの製造効率が顕著に向上することが実証されている。また本発明の一実施形態のDGCは、DGC活性を維持している限り蛋白質断片の形態であってもよい。
本発明の一実施形態のDGCのDGC活性の強度は、従来のDGC又はtiGs3466に比べて有意に高い。このDGC活性の強度は、例えば1.2、1.5、1.8、2.0、3.0、5.0、又は10.0倍であってもよく、それらの値以上、又はそれらの値の範囲内であっても良い。なお「有意に」は、例えば統計学的有意差をスチューデントのt検定(片側又は両側)を使用して評価し、p<0.05であるときを含む。
本発明の一実施形態のDGCにおいて、pH7.8、50℃の条件下で60分加熱処理した後の残存活性は、例えば80、90、又は100%であってもよく、それらの値以上、又はそれらの値の範囲内であっても良い。なお、10又は30分加熱処した場合も同様である。また本発明の一実施形態のDGCにおいて、加熱処理した後の残存活性の強度は、従来のDGC又はtiGs3466に比べて有意に高い。このDGC活性の強度は、例えば1.5、2.0、5.0、10.0、20.0、又は30.0倍であってもよく、それらの値以上、又はそれらの値の範囲内であっても良い。
本発明の一実施形態のDGCの分子量は、19800±2000であってもよい。具体的には、例えば17800、18300、18800、19300、19800、20300、20800、21300、又は21800であってもよく、それらの値の範囲内であっても良い。又は約19800であってもよい。この分子量は、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動により、測定した値(Da)であってもよい。
また至適pHは、7.3、7.70、7.85、8.0、8.5、9.05、9.15、又は9.4であってもよく、それらの値の範囲内であっても良い。又は約8.0〜約8.5であってもよい。また至適pHは、pH8.0での活性の値を100として相対活性を求めたときに、60、70、80、又は90%以上の活性を示すときのpHであってもよい。また本発明の一実施形態のDGCは、pH8.0での活性の値を100として相対活性を求めたときに、pH9.5のときの活性の値が55%以下であってもよい。
また至適温度は、35、40、45、50、55、又は60℃であってもよく、それらの値の範囲内であっても良い。又は約55℃であってもよい。また至適温度は、55℃での活性の値を100として相対活性を求めたときに、60、70、80、又は90%以上の活性を示すときの温度であってもよい。
本発明の一実施形態は、本発明の実施形態に係るDGCを含む、c-di-GMP製造用材料である。このc-di-GMP製造用材料は、例えば、本発明の実施形態に係るDGCの至適pHの範囲内のpHを有する、水溶液又はゾルを含んでいてもよい。また、このc-di-GMP製造用材料と無機ピロホスファターゼとをc-di-GMP製造用キットとして使用することもできる。
本発明の一実施形態は、本発明の実施形態に係るDGCをコードするポリヌクレオチドである。また本発明の一実施形態は、そのポリヌクレオチドを含む、ベクターである。また本発明の一実施形態は、そのポリヌクレオチド又はベクターによって形質転換された、形質転換体である。このポリヌクレオチド、ベクター、又は形質転換体を用いれば、本発明の実施形態に係るDGCを製造することができる。なお形質転換体は、細胞又は生物個体を含む。
本発明の一実施形態は、PAP及びPNDKを利用したGTP供給系を共役させたc-di-GMP製造法である。この製造法は、本発明の実施形態に係るDGC、GMP、ポリリン酸、PAP、PNDKを使用する。この製造法によれば、基質阻害による製造効率の低下を防ぐことができる。なお、反応溶液にはyPPA、塩化マグネシウム、塩化マンガンを添加してもよい。
本明細書において「アミノ酸」とは、アミノ基とカルボキシル基を持つ有機化合物の総称である。特に限定されないが、例えばAla、Arg、Asn、Asp、Cys、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、Valを含む。本発明の実施形態に係るDGCが特定のアミノ酸配列を含むとき、そのアミノ酸配列中のいずれかのアミノ酸が化学修飾を受けていてもよい。そのような場合でも、本発明の実施形態に係るDGCは、特定のアミノ酸配列を含むといえる。一般的に、蛋白質に含まれるアミノ酸が生体内で受ける化学修飾としては、例えばN末端修飾(例えば、アセチル化 、ミリストイル化等)、C末端修飾(例えば、アミド化、グリコシルホスファチジルイノシトール付加等)、又は側鎖修飾(例えば、リン酸化、糖鎖付加等)等が知られている。
本明細書において「ポリヌクレオチド」とは、ヌクレオチドもしくは塩基、又はそれらの等価物が、複数結合した形態で構成されているものを含む。ヌクレオチド及び塩基は、DNA塩基又はRNA塩基を含む。上記の等価物は、例えばDNA塩基又はRNA塩基がメチル化等の化学修飾を受けているもの、又はヌクレオチドアナログを含む。ヌクレオチドアナログは、非天然のヌクレオチドを含む。「DNA鎖」とは、DNA塩基又はそれらの等価物が2個以上連結した形態のことを表す。「RNA鎖」とは、RNA塩基又はそれらの等価物が2個以上連結した形態のことを表す。「塩基配列」とは、ポリヌクレオチドを構成するヌクレオチド又はその等価物の配列である。一般的に塩基配列は、A(アデニン)、G(グアニン)、C(シトシン)、T(チミン)によって表すことができる。また、TとU(ウラシル)は、用途に合わせて互いに読み替えることが可能である。また、ポリヌクレオチドがA、G、C、T、又はUからなる特定の塩基配列を含むとき、その塩基配列中のいずれかの塩基がその等価物に置き換わっていてもよい。そのような場合でも、上記ポリヌクレオチドは、上記特定の塩基配列を含むといえる。なお、ポリヌクレオチドはDNA/RNA合成装置を用いて合成可能である。その他、DNA塩基又はRNA塩基合成の受託会社(例えば、インビトロジェン社やタカラバイオ社等)から購入することもできる。
本明細書において「ベクター」は、例えば大腸菌由来のプラスミド(例えばpBR322、pUC12、pET-Blue-2)、枯草菌由来のプラスミド(例えばpUB110、pTP5)、酵母由来プラスミド(例えばpSH19、pSH15)、動物細胞発現プラスミド(例えばpA1-11、pcDNAI/Neo)、λファージなどのバクテリオファージ、アデノウイルス、レトロウイルス、バキュロウイルスなどのウイルス由来のベクターなどを用いることができる。これらのベクターは、プロモーター、複製開始点、又は抗生物質耐性遺伝子など、蛋白質発現に必要な構成要素を含んでいてもよい。ベクターは発現ベクターであってもよい。
本明細書において、DGCの1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加している場合、「数個」は15、10、8、6、4、又は2個であってもよく、それらいずれかの値以下であってもよい。この数は少ないほど好ましい。なぜならば、上記「数個」が少ないほど、アミノ酸配列が欠失等を受けていない場合のDGCに近い特性を有していることになるからである。一般に、1もしくは数個のアミノ酸残基の欠失、付加、挿入、又は他のアミノ酸による置換を受けたポリペプチドが、その生物学的活性を維持することは知られている(Mark et al., Proc Natl Acad Sci U S A.1984 Sep;81(18):5662-5666.、Zoller et al., Nucleic Acids Res. 1982 Oct 25;10(20):6487-6500.、Wang et al., Science. 1984 Jun 29;224(4656):1431-1433.)。
本明細書において、DGCの1もしくは数個のアミノ酸が別のアミノ酸に置換している場合には、アミノ酸側鎖の性質が保存されている別のアミノ酸に置換していることが好ましい。例えばアミノ酸側鎖の性質としては、疎水性アミノ酸(A、I、L、M、F、P、W、Y、V)、親水性アミノ酸(R、D、N、C、E、Q、G、H、K、S、T)、脂肪族側鎖を有するアミノ酸(G、A、V、L、I、P)、水酸基含有側鎖を有するアミノ酸(S、T、Y)、硫黄原子含有側鎖を有するアミノ酸(C、M)、カルボン酸及びアミド含有側鎖を有するアミノ酸(D、N、E、Q)、塩基含有側鎖を有するアミノ離(R、K、H)、及び芳香族含有側鎖を有するアミノ酸(H、F、Y、W)を挙げることができる(括弧内はいずれもアミノ酸の一文字標記を表す)。これらの各グループ内のアミノ酸同士の置換は「保存的置換」と総称される。
本明細書において、DGCのアミノ酸配列の同一性を表すときに用いる「90%以上」は、例えば90、95、98、99、又は100%であってもよい。又はそれらいずれかの値以上、又は範囲内であってもよい。この数は大きいほど好ましい。なぜならば、上記「90%以上」が大きいほど、もとのDGCに近い特性を有していることになるからである。
本明細書において「同一性」とは、一般的に2つもしくは複数間のアミノ酸配列において同一なアミノ酸数の割合を、当該技術分野で公知の方法に従って算定したものである。割合を算定する前には、比較するアミノ酸配列群のアミノ酸配列を整列させ、同一の割合を最大にするために必要である場合はアミノ酸配列の一部に間隙を導入する。整列のための方法、割合の算定方法、比較方法、及びそれらに関連するコンピュータプログラムは、当該技術分野で従来からよく知られている(例えばBLAST、GENETYX等)。本明細書において「相同性」は、特に断りのない限りNCBI(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)のBLASTによって測定された値で表すことができる。BLASTでアミノ酸配列を比較するときのAlgorithmには、Blastpをデフォルト設定で使用できる。測定結果はPositives又はIdentitiesとして数値化される。又は、「同一性」は2つもしくは複数間の塩基配列において、同一の塩基の割合を、上記と同様に当該技術分野で公知の方法に従って算定したものである。このとき、BLAST のAlgorithmには、Blastnをデフォルト設定で使用できる。
本明細書において「ストリンジェントな条件」は、例えば以下の条件を採用することができる。(1)洗浄のために低イオン強度及び高温度を用いる(例えば、50℃で、0.015Mの塩化ナトリウム/0.0015Mのクエン酸ナトリウム/0.1%のドデシル硫酸ナトリウム)、(2)ハイブリダイゼーション中にホルムアミド等の変性剤を用いる(例えば、42℃で、50%(v/v)ホルムアミドと0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%フィコール/0.1%のポリビニルピロリドン/50mMのpH6.5のリン酸ナトリウムバッファー、及び750mMの塩化ナトリウム、75mMクエン酸ナトリウム)、又は(3)20%ホルムアミド、5×SSC、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハード液、10%硫酸デキストラン、及び20mg/mlの変性剪断サケ精子DNAを含む溶液中で、37℃で一晩インキュベーションし、次に約37−50℃で1×SSCでフィルターを洗浄する。なお、ホルムアミド濃度は50%又はそれ以上であってもよい。洗浄時間は、5、15、30、60、もしくは120分、又はそれら以上であってもよい。ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーに影響する要素としては温度、塩濃度など複数の要素が考えられ、詳細はAusubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Wiley Interscience Publishers, (1995)を参照することができる。
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。また、上記実施形態に記載の構成を組み合わせて採用することもできる。
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明がこれに限定されるものではないことは明らかである。また、実施例におけるDNAの調製、制限酵素による切断、T4DNAリガーゼによるDNA連結、並びに大腸菌の形質転換法は全て「Molecular Cloning, A Laboratory Manual,Second Edition」(Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,New York(1989))に従って行った。また、反応液中のヌクレオチド類の定量はHPLC法に従って行った。また、実施例に記載の、各種プラスミドの作製手順の概念図を図1に示す。
<実施例1> tiGs3466への部位特異的変異の導入
(1)c-di-GMP合成酵素遺伝子の同定とクローニング
Geobacillus stearothemophilus由来DGC遺伝子は未同定であるため、まずはゲノムDNA配列が公知であるGeobacillus kaustophilusのゲノムDNA配列情報(Accession No. BA000043)を用いてDGC遺伝子の探索を行った。c-di-GMP合成活性を有するCaulobacter crescentus由来PleDのGGDEFドメインのアミノ酸配列について、Geobacillus kaustophilusのゲノムDNA配列中に、当該アミノ酸配列と類似したオープンリーディングフレーム(以下、ORFと略称する)をコードするDNA領域が存在するか否かを、tBLASTnプログラムを用いて検索した。その結果、DGC遺伝子と期待される未同定のDNA配列が検出された。当該未同定DNA配列情報を用い、Geobacillus stearothemophilus TH6−2株中における同遺伝子ホモログ(以下「Gs3466遺伝子」と称す)のクローニングを試みた。なお、当該TH6−2株は、平成17年12月7日付で、FERM BP−10466として、独立行政法人産業技術総合研究所・特許生物寄託センターに国際寄託されている。
まず、上記Geobacillus stearothemophilusTH6−2株由来染色体DNAをテンプレートとし、下記(a)及び(b)のプライマーとして用いて、N末端領域のアミノ酸残基が欠失したDGCをコードする遺伝子をPCR法により増幅した。
(a) AACCATGGGACTCCGAGCACGACCGATTAT (配列番号11)
(b) AAACTCGAGCCCGCATTGGGCTGATAC (配列番号12)
該DNA断片を制限酵素NcoI及びXhoIで切断し、同じくプラスミドpET-Blue-2(Novagen社より入手)を制限酵素NcoI及びXhoIで消化した後、2つのDNA断片をT4DNAリガーゼを用いて連結し、大腸菌JM109菌を形質転換した。得られたアンピシリン耐性形質転換体よりプラスミドpET-tGs3466を単離した。
プラスミドpET-tGs3466は、Gs3466の239番目のアミノ酸残基から408番目のアミノ酸残基までをコードする遺伝子(以下tGs3466遺伝子と称する)を含むDNA断片を乗せたプラスミドである。クローン化した遺伝子の塩基配列を解析した結果、tGs3466遺伝子は配列番号1に表したDNA塩基配列であった。このDNA塩基配列をアミノ酸配列に翻訳した結果、tGs3466は配列番号2に表したアミノ酸配列であった。tGs3466はCaulobacter crescentus由来DGC(PleD)のGGDEFドメインのアミノ酸配列と34%のアミノ酸配列相同性を示した。
さらにDGCには、c-di-GMPの結合部位であり、生成物阻害を引き起こす原因となるi-siteと呼ばれる部位が存在する。そこで、生成物阻害を回避するため、pET-tGS3466のi-siteに部位特異的変異を導入した。部位特異的変異の導入法は公知の方法(Nucleic Acids Res. 2004 Aug 10;32(14):e115)に従い、変異導入の際には下記のプライマー(c)、(d)を用いた。
(c) GTTTCTCGCAGAGGGCGAATTCTTGTTCCGCAGCGG (配列番号13)
(d) CGCCCTCTGCGAGAAACTGTTTCAAGGTTGAG (配列番号14)
結果、プラスミドpET-tiGs3466を単離した。プラスミドpET-tiGs3466はGs3466の239番目のアミノ酸残基から408番目のアミノ酸残基から成り、i-siteに相当するGs3466の311番目及び314番目のアミノ酸残基に変異を有する蛋白質をコードする遺伝子(以下「tiGs3466遺伝子」と称す)を含むDNA断片を乗せたプラスミドである。クローン化した遺伝子の塩基配列を解析した結果、tiGs3466遺伝子は配列番号3に表したDNA塩基配列であった。このDNA塩基配列をアミノ酸配列に翻訳した結果、tiGs3466は配列番号4に表したアミノ酸配列であった。なお、Gs3466遺伝子の全長のDNA塩基配列は配列番号24に表した塩基酸配列であり、アミノ酸配列翻訳した結果は配列番号25に表したアミノ酸配列であった。
(2)tiGs3466への部位特異的変異の導入
以下のプライマー(q)、(r)を用い、PCRを行うことにより、tiGs3466の54番目のアスパラギン残基に変異を導入した。
(q)CACGTATGGCCATGCCGTCGGCGACGA (配列番号15)
(r)CGGCATGGCCATACGTGTCGTTGATCGTTTTAAA (配列番号16)
増幅反応により得られた該DNAを精製した後、制限酵素DpnIで処理した。当該DNAを用いて、大腸菌JM109株の形質転換を行い、得られたアンピシリン耐性形質転換体よりプラスミドpET-tiGs3466Gを単離した。
プラスミドpET-tiGs3466Gは、tiGs3466のアミノ酸配列において、54番目のアスパラギン残基がグリシン残基に変異した蛋白質をコードする遺伝子(以下「tiGs3466G遺伝子」と称す)を含むDNA断片を乗せたプラスミドである。クローン化した両遺伝子の塩基配列を解析した結果、tiGs3466G遺伝子は配列番号5に表したDNA塩基配列であった。これらのDNA塩基配列をアミノ酸配列に翻訳した結果、tiGs3466Gは配列番号6に表したアミノ酸配列であった。プラスミドpET-tiGs3466Gを用いて大腸菌Tuner(DE3) pLacIの形質転換を行い、形質転換体を得た。
その後、粗酵素液中のDGC活性の単位(ユニット)を、以下に示す方法で測定、算出した。すなわち、10mM塩化マグネシウム、1mM塩化マンガン、及び2mMGTPを含有する50mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)に、上記形質転換体から精製した精製酵素液0.6 mg/mLを添加し、37℃で保温することで反応させ、100℃、30秒の熱処理により反応を停止させた。HPLCを用いて反応液中のヌクレオチドを定量し、37℃で1分間に1μmoleのpppGpG及びc-di-GMPを生成する活性を1単位(ユニット)とした。なお、上記精製酵素は後述の実施例2(3)と同様の方法で精製して得た。
tiGs3466及びtiGs3466Gを用いて、DGC活性を測定した結果を表1に示す。
tiGs3466の一アミノ酸変異体であるtiGs3466Gは、改変を行っていないtiGs3466に比べて比活性が3.3倍に大きく向上していることが判明した。
さらに、両酵素の熱安定性について調べた。各酵素をpH7.8、50℃で加熱処理し、処理開始後0、10、30、60分後にそれぞれ酵素を取得して、活性を測定した。加熱処理0分での活性を100(%)としたときの残存活性を表2に示す。
結果、改変を行っていないtiGs3466は熱処理によって速やかに活性を失ってしまうのに対し、tiGs3466Gは高い熱安定性を有しており、c-di-GMP合成酵素として非常に好ましい性質を有していることが判明した。
<実施例2>融合化tiGs3466の創製
(1) tiGs3466融合体のクローニング
tiGs3466と二量体形成蛋白質(二量体化能を有する蛋白質)との融合体をクローニングするため、まず、tiGs3466のクローニングを行った。クローニングに当たっては以下(e)、(f)に示すプライマーを用い、実施例1記載のプラスミドpET-tiGs3466を鋳型として用いてPCRを行った。
(e) AAGAGCTCGGTGGCGGTGGCTCGGGCGGTGGTGGGTCGGACCACTTCGAAAAAATGGC (配列番号17)
(f) AAACTCGAGCCCGCATTGGGCTGATAC (配列番号18)
PCRによって増幅したDNA断片を制限酵素SacI及びXhoIで切断した後、pET-Blue-2のSacI-XhoI部位にクローニングを行い、プラスミドpET-linker-tiGs3466を単離した。プラスミドpET-linker-tiGs3466は、tiGs3466のN末端に10個のアミノ酸残基GGGGSGGGGSをコードするDNA配列を付加した遺伝子が、pET-Blue-2のpETプロモーター下流のSacI−XhoI切断部位に挿入されたものである。
次に、二量体化能を有する蛋白質として、サッカロミセス・セレビシエ由来の無機ピロホスファターゼ(yPPA)を用いることとした。yPPAと融合させたtiGsDGCを発現させるため、まずサッカロミセス・セレビシエのゲノムDNAを鋳型とし、(g)〜(j)に示すプライマーを用いてPCRを行うことでyPPA遺伝子を増幅した。その後、制限酵素NcoI-SacIにより処理し、プラスミドpET-linker-tiGs3466のNcoI-SacI部位にクローニングした。
(g)CATGCCATGGCCTACACTACCAGACAAA (配列番号19)
(h)GTTAGAAACTGTTTCCCTCATCATGGTTACATTCACAACT (配列番号20)
(i)AACCATGATGAGGGAAACAGTTTCTAAC (配列番号21)
(j)TTGAGCTCAACAGAACCGGAGATGAAGAACC (配列番号22)
PCRは常法で行った。ただし、yPPA遺伝子の増幅には、配列内部にあるNcoI切断部位を除去するため、SOE-PCR(Gene. 1989 Apr 15;77(1):51-9.)の手法を用いて、サイレントミューテーションを導入した。具体的には、プライマー(g)と(h)を用いたPCRにより603 bpのDNA断片を、プライマー(i)と(j)を用いたPCRにより261 bpのDNA断片を得た後に、2つの断片を鋳型として、プライマー(g)及び(j)を用いたPCRを行い、想定の864 bpのDNA断片を得た。
クローニングの結果、各形質転換菌より、プラスミドpET-yPPAtiGs3466を得た。プラスミドpET-yPPAtiGs3466は、tiGs3466のN末端にリンカー配列をはさんでyPPAを融合させた融合化酵素をコードする遺伝子(以下「yPPA-tiGs3466遺伝子」と称す)のDNA配列を載せたプラスミドである。yPPA-tiGs3466遺伝子を含有するNcoI−XhoI DNA断片は、pET-Blue-2のpETプロモーター下流のNcoI−XhoI切断部位に挿入されている。クローン化した融合化酵素遺伝子の塩基配列を解析した結果、yPPA-tiGs3466遺伝子は配列番号7に示すDNA塩基配列であった。また、当該DNA塩基配列をアミノ酸配列に翻訳した結果、yPPA-tiGs3466は配列番号8に示すようなアミノ酸配列であった。
(3)DGC酵素液の調製
上記のtiGs3466遺伝子及びyPPA-tiGs3466遺伝子を含有するプラスミドを大腸菌Tuner(DE3)pLacI株に形質転換した。当該菌株を100μg/mLのアンピシリン及び、0.15% グルコースを含有する2xYT培地50 mLに植菌し、37℃で振とう培養した。4x10菌/mLに達した時点で、培養液を30℃に冷却した後、終濃度1mMとなるようにIPTGを添加し、さらに一晩振とう培養を続けた。培養終了後、遠心分離(10,000xg,10分)により菌体を回収し、5 mLの緩衝液(50mMトリス塩酸(pH7.8)、500 mM NaClおよび20 mMイミダゾールを含む)に懸濁した後、超音波処理を行うことによって菌体を破砕した。さらに遠心分離(10,000xg、10分)により菌体残さを除去した。このようにして得られた上清画分を、Ni-sepharose樹脂を用い精製した。精製酵素の蛋白質濃度はprotein assay kit (Bio-rad社) を用いて測定した。
(4)tiGs3466酵素及び融合酵素の活性測定
上記の粗酵素液中のDGC活性の単位(ユニット)を、以下に示す方法で測定、算出した。すなわち、10mM塩化マグネシウム、1mM塩化マンガン、及び2mMGTPを含有する50mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)に上記の精製酵素液0.6 mg/mLを添加し、37℃で保温することで反応を行った後、100℃、30秒の熱処理により反応を停止させた。HPLCを用いて反応液中のヌクレオチドを定量し、37℃で1分間に1μmoleのpppGpG及びc-di-GMPを生成する活性を1単位(ユニット)とした。
上記のtiGs3466、融合酵素(yPPA-tiGs3466)、融合酵素中のyPPAの重量と同等のyPPA(約0.36 mg/mL)を反応液に添加した場合(tiGs3466 + yPPA)の、DGC相対活性を表3に示す。
上記表3からtiGs3466に別途yPPAを添加しても活性の向上は認められないが、yPPAとの融合化酵素を作製することにより、無処理のtiGs3466に比較してDGC活性が向上することが明らかになった。このとき、融合化酵素においては、yPPAが別のyPPAと二量体を形成することによって、tiGs3466と別のtiGs3466との二量体化が促進されていると考えられた。
<実施例3>yPPA-tiGs3466Gの調製
実施例1と実施例2で行った2つの酵素改変を組み合わせ、yPPAとtiGs3466Gの融合酵素を調製するべく、以下のクローニングを行った。
上記(e),(f)の2つのプライマーを用い、前項で作製したプラスミドpET-tiGs3466GをテンプレートとしてPCRを行った後、SacI, XhoIにて制限酵素処理を行い、プラスミドpET-yPPAtiGs3466のSacI, XhoI siteにクローニングした。得られた形質転換体から、プラスミドpET-yPPAtiGs3466Gを単離した。当該プラスミドpET-yPPAtiGs3466Gは、tiGs3466GのN末端にリンカー配列をはさんでyPPAを結合させた融合化酵素をコードする遺伝子(以下「yPPA-tiGs3466G遺伝子」と称する)を含むDNA断片を乗せたプラスミドである。クローン化した両遺伝子の塩基配列を解析した結果、yPPA-tiGs3466G遺伝子は配列番号9に表したDNA塩基配列であった。これらのDNA塩基配列をアミノ酸配列に翻訳した結果、yPPA-tiGs3466Gは配列番号10に表したアミノ酸配列であった。当該プラスミドpET-yPPAtiGs3466Gを用いて大腸菌Tuner(DE3) pLacIの形質転換を行い、形質転換体を得た後、上記実施例2(3)と同様の方法で精製酵素調製を行った。
実施例1に記載の活性測定系を用い、それぞれの精製酵素濃度を0.1 mg/mLに調製して、精製酵素の活性測定を行った。その結果、下記表4に示すように、tiGs3466G及びyPPA-tiGS3466G変異体の比活性は、無改変の酵素tiGS3466に比べて著しく向上していた。なお、各酵素のアミノ酸配列を表5に記載する。
<実施例4>DGC精製酵素を用いたc-di-GMP合成反応
(1)Acinnetobacter johnsonii由来ポリリン酸:AMPリン酸転移酵素(PAP)の調製
Acinetobacter johnsonii由来PAPを、公知文献(WO03/100056)に記載の方法によって調製し、活性測定を行った。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて反応液中のATPを定量し、1分間に1μmoleのADPを生成させる活性を1単位(ユニット)とした。
(2)Pseudomonas aeruginosa由来ポリリン酸依存的ヌクレオシド5'−ジリン酸キナーゼ(PNDK)の調製
Pseudomonas aeruginosa、PAO1株由来PNDKを公知文献(WO2006/080313)に記載の方法によって調製し、活性測定を行った。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて反応液中のATPを定量し、37℃で1分間に1μmoleのATPを生成する活性を1単位(ユニット)とした。
(3)無機ピロホスファターゼ(yPPA)の調製
yPPAはロシュ・ダイアグノスティックス(Roche Diagnostics)社のものを使用した。公知文献(WO2006/080313)に記載の方法で活性測定を行い、生成物を定量し、1分間に2μmolの無機リン酸を生成させる無機ピロホスファターゼの量を1単位(ユニット)とした。
(4)PAP及びPNDKを利用したGTP供給系を共役させたc-di-GMP合成
GTP供給系を利用してc-di-GMP合成を行った。なお、この合成系の反応工程の模式図を図2に示す。具体的な反応手順は以下の通りとした。
20mM 塩化マグネシウム、40mM GMP、1mM塩化マンガン、ポリリン酸(無機リン酸に換算して50mM)を含有する50mM トリス塩酸緩衝液(pH9.0)の水溶液200mLを調製し、PAP(0.5units/mL)、PNDK(1.0units/mL)及び下記表6に示すユニット量のDGCをそれぞれ添加して37℃で反応を開始した。反応開始8時間後に、無機リン酸に換算して50 mMに相当するポリリン酸を添加し、引き続き反応を行った。tiGs3466及び、tiGs3466Gを用いた合成反応には、さらに無機ピロホスファターゼ(1.0units/mL)を添加した。この結果、反応開始24時間後のc-di-GMPの生成量はいずれの酵素を用いた場合もおよそ12.6 mM(対1/2GMP転換率63%)に達した(図3)。なお表6に記載の添加量は、上述の活性測定で求めたユニットに基づいて決定した。
以上に示すように、本発明の改変酵素はいずれも十分なDGC活性を有することが明らかになった。
さらに、培養液当たりの精製酵素の回収量をもとに、同一量のc-di-GMPを合成する際の反応液量全体に対する必要菌体培養量を算出した結果、下記表7のようになった。
以上の結果から、本発明の改変酵素を用いることにより、酵素調製に必要な培養量を著しく低減させることが可能であることが明らかになった。
<実施例5>DGC粗酵素を用いたc-di-GMP合成反応
(1)各酵素の比活性の測定
各DGC酵素に関して、酵素精製の工程を省略するため、粗酵素を用いてc-di-GMPを合成することを検討した。
上記と同様の方法で培養した各酵素生産菌体を5 mLの50 mM トリス塩酸緩衝液(pH7.8)に懸濁し、超音波処理より菌体を破砕した後、遠心分離を行って上清を得た。当該上清を粗酵素液として、DGC酵素活性測定を行った。活性測定法は実施例1に記載した精製酵素の測定系と同様とし、反応系に各粗酵素液を下記表のように添加して、反応を行った。
粗酵素液あたりの活性と、蛋白質あたりの活性(比活性)を算出し、下表8に示す。
各粗酵素の粗酵素液活性を比較した結果、本発明の改変酵素においては、改変を行っていないtiGs3466と比べてその比活性が大きく向上していた。
(2)各粗酵素を用いたc-di-GMPの合成
粗酵素を用いた合成反応について検討した。合成反応は実施例4(4)と同様の条件で行い、tiGs3466あるいはtiGs3466Gの反応にはyPPA1.0 Units/mLを添加した。各酵素の添加量は粗酵素活性に応じて下記の通りとした。
・yPPA-tiGs3466 0.075 units/mL
・tiGs3466G 0.075 units/mL
・yPPA-tiGs3466G 0.075 units/mL
・tiGs3466 0.065 units/mL相当
(tiGs3466については、粗酵素活性から算出した量では膨大な量を添加することになってしまい実施が困難であることから、酵素精製時の酵素回収量をもとに粗酵素液中の存在量を推定した結果に基づいて、反応液の1.4倍量の粗酵素を添加した。)
結果、図4に示すように、粗酵素yPPA-tiGs3466Gを用いた場合、10 mMという高濃度の c-di-GMPを合成可能であることが判明した。tiGs3466Gについても粗酵素液によるc-di-GMP合成が可能であることが判明した。
<実施例6>DGCの理化学的性質
(1)分子量
tiGs3466Gに関して精製酵素を調整した後、分子量をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動により評価した。その結果、分子量は約19800であった。また、tiGs3466、yPPA-tiGs3466、yPPA-tiGs3466Gについても同様に分子量を測定した結果、tiGs3466は約19800、yPPA-tiGs3466及びyPPA-tiGs3466Gは約52800であった。
(2)至適pH
tiGs3466Gに関して精製酵素を調整した後、実施例1と同様の測定系において、反応液のpHを6.5〜10.0の範囲で調整し、DGC活性を測定した。緩衝液にはMES緩衝液、Tris緩衝液、Glycine緩衝液を用いた。その結果、tiGS3466GはpH8.0〜8.5において最も高い活性を示した。pH8.0での活性の値を100として相対活性を求めた結果を表9及び図5に示す。tiGs3466Gの活性値は、pH7.3〜9.4の範囲において、pH8.0のときの活性値の60%以上の活性を示した。そのため、tiGs3466Gの至適pHの範囲はpH7.3〜9.4であると評価した。
また、tiGs3466、yPPA-tiGs3466、yPPA-tiGs3466Gに関して、上記と同様の手順でpHが6.5〜10.0の範囲のときの活性を測定した。その結果を表10及び図6に示す。
(3)至適温度
tiGs3466Gに関して精製酵素を調整した後、実施例1と同様の測定系において、反応液の温度を30〜60℃の範囲で調整し、DGC活性を測定した。その結果、tiGs3466Gは、約55℃において最も高い活性を示した。37℃での活性の値を100として相対活性を求めた結果を表11及び図7に示す。tiGs3466Gの活性値は、35〜60℃の範囲において、55℃のときの活性値の60%以上を示した。そのため、tiGs3466Gの至適温度の範囲は35〜60℃であると評価した。
また、tiGs3466、yPPA-tiGs3466、yPPA-tiGs3466Gに関して、上記と同様の手順で反応液の温度が30〜60℃の範囲のときの活性を測定した。その結果を表12及び図8に示す。
以上の結果から、本実施例の酵素では、アミノ酸配列において54番目のアスパラギン残基をグリシン残基に変異させることによって比活性及び酵素生産性が著しく向上し、さらにyPPAとの融合化酵素として用いることでさらに活性の強い酵素を得ることができた。そのため、本実施例の酵素を用いればc-di-GMPの製造工程における酵素液の必要培養量を大幅に削減でき、さらに精製に必要なカラムも必須ではなくなった。これらのことから従来の方法に比較してより実践的なc-di-GMP合成を行うことが可能であることが判明した。
以上、本発明を実施例に基づいて説明した。この実施例はあくまで例示であり、種々の変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。

Claims (9)

  1. (G)配列番号6のアミノ酸配列、
    (H)配列番号6のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有し、且つ配列番号6のアミノ酸配列の54位のグリシン残基は保存され、i-siteにKXXDのアミノ酸配列を有さないアミノ酸配列、
    (I)配列番号6のアミノ酸配列の1もしくは15個以下のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加され、且つ配列番号6のアミノ酸配列の54位のグリシン残基は保存され、i-siteにKXXDのアミノ酸配列を有さないアミノ酸配列、
    からなる群から選ばれる1種以上のアミノ酸配列を含む、ジグアニレートシクラーゼ。
  2. ジオバチルス(Geobacillus)属に由来するものである、請求項1に記載のジグアニレートシクラーゼ。
  3. 請求項1または2に記載のジグアニレートシクラーゼのN末端に、二量体化能を有する蛋白質を融合化した、融合化酵素。
  4. 前記二量体化能を有する蛋白質が無機ピロホスファターゼである、請求項に記載の融合化酵素。
  5. 請求項1または2に記載のジグアニレートシクラーゼ、又は請求項若しくはに記載の融合化酵素の、ジグアニレートシクラーゼ活性を有する蛋白質断片。
  6. 請求項1または2に記載のジグアニレートシクラーゼ、請求項若しくはに記載の融合化酵素、又は請求項に記載の蛋白質断片の、いずれかをコードするポリヌクレオチド。
  7. 請求項に記載のポリヌクレオチドを含む、発現ベクター。
  8. 請求項に記載のポリヌクレオチド、又は請求項に記載の発現ベクターによって形質転換された、形質転換体。
  9. 酵素を用いて2分子のGTPからc-di-GMPを製造する方法において、酵素として、請求項に記載の発現ベクターを用いて宿主微生物を形質転換し、得られた形質転換体を培養して産生させたジグアニレートシクラーゼ、又はジグアニレートシクラーゼを含む融合化酵素を用いる、c-di-GMPの製造法。
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