JP2007060870A - 電力系統脱調予測装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】電力系統脱調予測装置は、少なくとも1つの発電機と母線とを含むとともに上記母線が連絡線を介して接続されることにより連系されている複数の電力系統における上記発電機の脱調を予測する電力系統脱調予測装置にあって、上記連絡線の一端に接続された上記母線の電圧と上記連絡線から該母線に流れる電流とから上記一端に連系された上記発電機がそのまま運転を継続したとき脱調に至ることを予測する。
【選択図】図4
Description
また、一端から脱調ローカスの生じる箇所までのリアクタンスを一端における電圧と電流から求めて、連系線の単位長さのリアクタンスを用いて一端から脱調ローカスの生じる箇所までの距離を求めるので、脱調中心の判定が困難であるという問題がある。
また、電力系統の母線間の位相差を考慮していないために、誤判定が行われやすいという問題がある。
まず1台の発電機が無限大母線に連系しているときの発電機が脱調に至る様子を説明する。図1は、1機無限大母線系統に接続される発電機の内部電圧の位相角δGと電気的出力Peとの関係を示すP−δ曲線図である。内部電圧の位相角δGは、無限大母線の電圧の位相角をゼロとしたときの値である。
1機無限大母線系統に接続されている発電機の運動方程式は式(1)により表される。
発電機の運転点は、事故などに係わって系統擾乱がある場合、P−δ曲線に沿って移動する。図1のC点は不安定平衡点である。そして、発電機の運転点が、不安定平衡点C点より位相角δGが大きな側に移ると、そのままの運転を続けると運転点が逆に戻ることができずに発電機は加速して脱調に至っていく。
そして、発電機の運転点がC点より位相角の大きな側に移る条件は3つある。
第1の条件は、位相角δGが増大していることであり、式(2)に示されるように、発電機の位相角δGの1階微分が零を超えていることである。
第2の条件は、電気的出力Peが機械的入力Pm未満にあることであり、式(1)の左辺のMは正の実数であるので、式(3)に示されるように、発電機の位相角δGの2階微分が零を超えていることである。
第3の条件は、発電機の電気的出力Peが減少傾向にあることであり、式(4)に示されるように、発電機の電気的出力Peの1階微分が零未満であることである。
そして、これらの関係を図2に示すような2つの電力系統(A系統1aとB系統1b)が連絡線2により連系されている場合について検討する。図2は、2つの電力系統が連絡線により連系されている様子を示す図である。この場合、A系統1aの発電機3の内部電圧の位相角は、上述の1機無限大母線系統の場合と同様に、上述の3つの条件を満足するときこの発電機3はそのまま運転を続けると脱調に至ると予測できる。連絡線2がA系統1aのM母線4aとB系統1bのN母線4bとを連系しているとき、M母線4aの電圧とN母線4bの電圧の位相差δおよび連絡線2を経由してM母線4aに流れる有効電力Pに関する上述の3つの条件は維持されている。そして、その連絡線2に脱調中心が来ることを判別すれば、A系統1aに連系する発電機3がそのまま運転を続けると脱調に至ると予測することができる。
そして、スパイラルベクトル理論に基づいてN母線4bにおける電圧vN(t)は、式(5)のように表される。但し、VMはM母線4aの電圧実効値、ωは回転ベクトルの角速度、Iは連絡線2を流れる電流実効値、θはM母線4aの電圧と連絡線2を流れる電流との位相差、XMNは連絡線2のインピーダンスである。
このようにM母線4aの電圧の位相とN母線4bの電圧の位相の位相差δ、連絡線2からM母線4aに流れる有効電力Pおよび中心電圧VCを求めて、第1の条件乃至第4の条件をすべて満足するとき、発電機3をそのまま運転すると脱調に至ると予測できる。
次に、この発明の実施の形態1に係わる電力系統脱調予測装置について説明する。この電力系統脱調予測装置10は、図4に示すような連絡線2で連系されている一方の電力系統1aのM母線4aで測定された値を用いて発電機G3の脱調を予測し、遮断器9を開放する。図4は、実施の形態1に係わる電力系統脱調予測装置を配備した電力系統である。
また、M母線4aの電圧は、デジタル電圧出力端子を有する電圧計7で計測され、連絡線2を流れる電流は、デジタル電流出力端子を有する計器用変流器8で計測されて電力系統脱調予測装置10に入力される。
また、遮断器操作指令受信手段24と遮断器操作実施手段25は、デジタル量処理ユニットからなる。
電圧実数瞬時値、電流実数瞬時値を計測する時点(以下、計測タイミングと称す。)は、サンプリング周期を定めることにより決まる。サンプリング周期は電力系統の基準波の1周期をN(Nは正の整数)等分できる値であればよい。基準波の1周期は、電気角度で表して2π(ラジアン)である。例えば、基準波の電気角度π/6、π/12、π/24、π/48などをサンプリング周期にあらかじめ設定する。
また、有効電力・無効電力算出手段15が、計測タイミングのそれぞれのタイミングにおいて、連絡線2からM母線4aに流れる無効電力Q(k)を式(19)から電圧実効値VA(k)、VB(k)、VC(k)、電流実効値IA(k)、IB(k)、IC(k)を用いて算出する。この値を記憶手段13に記憶する。
ステップ111で、脱調予測手段22が発電機3が脱調に至ると予測したとき系統分離指令手段23が、デジタル量処理ユニットに開放操作指令を送信する。
図7は、この発明の実施の形態2に係わる電力系統脱調予測装置を配備して脱調の予測をシミュレーションしたEAST10モデル系統である。
この発明の実施の形態2に係わる電力系統脱調予測装置は、電気学会の電力系統解析標準モデルの1つであるEAST10モデル系統の11母線に設置されている。すなわち、11母線が自端であり、他の21母線との連絡線が11連絡線であり、11母線につながっている発電機が発電機G1である。
そして、点Aにおいて三相短絡事故が発生し、70ms後に復旧したときのEAST10モデル系統の変化をシミュレーションする。このとき、比較のためにモデル系統に含まれる発電機G1〜G10の内部電圧の位相角を計測すると、図8に示すように、11母線につながっている発電機G1が0.9秒後に脱調していることが分かる。なお、図示しないが、他の発電機は脱調しなかった。
また、電力系統脱調予測装置10は、11母線の電圧と11連絡線の電流との実数瞬時値を計測し、基準波の1サイクルの実数瞬時値を用いて電圧実効値と電流実効値を算出し、実施の形態1と同様にして11母線に11連絡線から流れる有効電力を算出し、有効電力1階微分を求める。その結果を図12に示す。
また、電力系統脱調予測装置10は、電圧実効値と11母線の電圧と11連絡線から11母線に流れる電流の電圧電流間位相差とを用いて、電圧実効値と電圧電流間位相差の余弦との積からなる中心電圧を求める。その結果を図13に示す。
このようにして求められた母線間位相差1階微分、母線間位相差2階微分、有効電力1階微分、中心電圧に関して式(26)〜式(29)を満足するか否かを図14に示すように判断する。そして、4つの条件が満足したとき発電機G1はこのまま運転すると脱調に至ると予測し11母線を系統から解列する。
実施の形態1に係わる発電機は電力系統に対して同期を失い内部電圧の位相角が単調に発散する発電機を例に挙げて、脱調を予測する4つの条件のすべてを同時に満足したとき発電機が脱調に至ると予測している。
しかし、発電機の中には制動トルク係数が負で、内部電圧の位相角が複数回振動してから発散する発電機がある。このような発電機に連系している母線の場合、脱調を予測する4つの条件のすべてを同時に所定の回数だけ満足したとき、発電機がそのまま運転を継続すると脱調に至ると予測する。
図15は、この発明の実施の形態4に係わる電力系統脱調予測装置が配備された電力系統の構成図である。図16は、実施の形態4に係わる電力系統脱調予測装置の機能ブロック図である。
実施の形態4に係わる電力系統は、図15に示すように、A系統に2台の発電機3a、3bが連系されており、発電機3a、3bと母線4aとの間に遮断器9b、9cが介設されていることが実施の形態1に係わる電力系統と異なりその他は同様である。このように2台の発電機3a、3bが連系されていると、遮断器9b、9cを遮断することにより電力系統の安定度を制御することができる。なお、電力系統の安定度を制御する装置として遮断器9b、9cを例に挙げて以下説明するが、制動抵抗器、高速バルブ制御装置、超高速励磁装置、直列コンデンサなど電力系統の安定度を制御できるものであればこの発明に適用することができる。
実施の形態4に係わる安定度制御手段30は、脱調予測手段22が発電機3a、3bを1つの発電機と見なして脱調に至ると予測したとき、一方の発電機3bを母線4aから解列することにより不安定平衡点を大きな位相側に移して発電機3aの内部電圧の位相角を不安定平衡点より小さい位相側に来るようにする。このように発電機3bを一台解列することにより、他の発電機3aが脱調に至ることを防止することができる。
Claims (6)
- 少なくとも1つの発電機と母線とを含むとともに上記母線が連絡線を介して接続されることにより連系されている複数の電力系統における上記発電機の脱調を予測する電力系統脱調予測装置にあって、
上記連絡線の一端に接続された上記母線の電圧と上記連絡線から該母線に流れる電流とから上記一端に連系された上記発電機がそのまま運転を継続したとき脱調に至ることを予測することを特徴とする電力系統脱調予測装置。 - 基準波の1周期のN(Nは正の整数)分の1の周期で上記母線の電圧と上記連絡線から該母線に流れる電流とを計測する電圧・電流計測手段と、
上記電圧と上記電流とを計測した各タイミングにおいて、自らのタイミングを含む過去のN個のタイミングにおける計測された上記電圧および上記電流から自らのタイミングにおける電圧実効値および電流実効値を求める電圧実効値・電流実効値算出手段と、
上記電圧と上記電流とを計測した各タイミングにおいて、自らのタイミングを含む過去のN個のタイミングにおける計測された上記電圧および上記電流から
に従って上記各タイミングにおける上記連絡線から該母線に流れる有効電力を算出し、
に従って上記各タイミングにおける上記連絡線から該母線に流れる無効電力を算出する有効電力・無効電力算出手段と、
上記電圧と上記電流とを計測した各タイミングにおいて、上記無効電力と上記有効電力とから
に従って上記各タイミングにおける該母線の電圧と上記連絡線から該母線に流れる電流との位相差を算出する電圧電流間位相差算出手段と、
を有することを特徴とする請求項1に記載する電力系統脱調予測装置。 - 上記連絡線の両端間の位相差に関する1階微分および2階微分がそれぞれ零を超え、且つ上記連絡線から上記一端に流れる有効電力に関する1階微分が零未満であるとともに上記連絡線から上記一端に流れる電流と同位相の中心電圧が所定の閾値より小さいという4つの条件のすべてを同時に予め定められた回数満足したとき、上記一端に連系された上記発電機がそのまま運転を継続したとき脱調に至るとともに上記連絡線に脱調中心が現れると予測することを特徴とする請求項3に記載する電力系統脱調予測装置。
- 脱調に至ると予測したとき電力系統の安定度を制御する装置に対して安定度向上対策を上記電力系統に施すように指令することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載する電力系統脱調予測装置。
- 上記電力系統に安定度向上対策を施した後で再度脱調に至ると予測したとき上記連絡線を遮断するように遮断器に指令することを特徴とする請求項5に記載する電力系統脱調予測装置。
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