JP2007057293A - 粒子測定装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】荷電粒子について、標識化することなく光学的に拡散情報を測定することができる粒子測定装置を提供する。
【解決手段】 セル10内の液体試料と近接する位置に形成され、光源から光が照射されたときに基本回折光パターンを発生する回折格子11aと、回折格子一部を構成する電極11aと、電極に電圧を印加することにより粒子分布を変化させて基本回折光パターンとは異なる派生回折光パターンを発生させるとともに電圧印加を停止して派生回折光パターンを消失させる印加電圧制御部22aと、派生回折光パターンの一部の派生回折光を検出する光検出器18と、光検出器18により検出された派生回折光の発生および消失に伴う信号変化に基づいて粒子の拡散情報を解析する信号解析部とを備え、印加電圧制御部22aは、直流電圧に交流電圧を重畳した電圧を印加することで、荷電粒子のクラスター化を防ぎつつ拡散測定を行う。
【選択図】図1

Description

本発明は、液体中の粒子の拡散・移動による密度変化から、粒子の拡散に関する情報を光学的に計測する粒子測定装置に関する。ここで、粒子の拡散に関する情報とは、液体中の粒子の拡散現象に関係する情報であり、拡散係数、拡散による濃度変化、屈折率変化、あるいは拡散係数から求められる粒径等の粒子情報が含まれる。
従来、液体中の粒子の拡散係数や濃度変化等の拡散に関する情報を測定するには、顕微蛍光分光法が用いられている。
これは、計測の対象となる粒子を蛍光分子で標識し、顕微鏡下で、これを励起照明し、蛍光を発する計測対象粒子のブラウン運動に伴う蛍光強度変化を計測することにより、計測対象粒子の拡散係数等を求めるものである(特許文献1参照)。
特表平11−502608号公報
上述した特許文献1に開示された顕微蛍光相関分光法による粒子の光学的測定では、測定前の前処理として、計測対象粒子を蛍光分子で標識化する必要があり、標識化のための煩わしい作業を行わなければならない。
また、測定する際は、粒子に標識化処理を施してしまうことになるので、粒子を完全な自然状態で測定することができない。
さらに、顕微鏡視野下で、ブラウン運動によるφ100μm程度以上の蛍光強度変動を計測する必要があるため、拡散係数が小さく、そのため、ブラウン運動速度の遅い粒子では、計測に長時間(例えば計測時間が数十秒から数千秒)を要することになる。
そこで、出願人は、標識化を行うことなく粒子の拡散しやすさを計測するための光学的測定装置として、液体中の粒子に誘電泳動を生じさせて移動することにより、粒子集中領域を形成し、その後、誘電泳動を停止して粒子集中領域から粒子を拡散させたときの屈折率変化から、粒子の拡散に関する評価を行う装置を提案している(特願2004−204024号)。この光学的測定装置では、電極を通じて被測定液体に電圧を印加して誘電泳動を引き起こすことにより、溶液の局所的な屈折率変化を発生させている。
また、出願人は回折格子兼電極に、交流電圧を印加して粒子に誘電泳動を起こさせることにより、周期的に粒子集中領域を形成し、これにより周期的な粒子密度分布を形成することにより、派生的な回折格子(密度回折格子という)を発生させることで、回折格子兼電極により本来的に生じる基本回折光パターンとは異なる派生回折光パターンを発生させ、派生回折光パターンに基づいて液体中の粒子の有無など、粒子に関する情報を、液体中の比較的広い領域から計測することを提案している(特願2004−241907号)。
図6は、出願人が提案している誘電泳動現象および回折現象を利用して粒子移動による屈折率変化を測定する光学的測定の動作原理を説明する図である。
液体試料を保持するセル10の壁面を構成するガラス基板12a上に、2本の平行な直線状電極片13a、13bの対と、同じく2本の平行な直線状電極片14a、14bの対とを交互に配列することにより、回折格子兼電極11が構成される。回折格子兼電極11に交流電源15から交流電圧を印加する。電極13a、13bに対して、電極14a、14bが反対極となるようにして、交流電圧を印加することにより、電気力線が集中する13a−14b間、および14a−13b間に、誘電泳動によって粒子が凝集する。粒子が凝集する領域Pは、回折格子兼電極11の格子間隔(L)に対し、その2倍の周期(2L)で一定間隔ごとに形成される。粒子が凝集する領域Pは、他の領域より粒子密度が高く、屈折率が異なることから、格子間隔2Lの回折格子(密度回折格子という)が形成されることになる。
この状態のときに、光源16、光源光を集束するレンズ光学系17を用いて、回折格子兼電極11に向けて光を照射すると、回折格子兼電極11により生じる本来の基本回折光パターンが発生するとともに、密度回折格子による派生回折光パターンが重畳して発生するので、光検出器18を新しく発生した派生回折光パターンの一次光、二次光、・・・が検出できる位置に合わせることで、派生回折光強度の変化から屈折率の変化、濃度変化を検出することができる。また、電圧印加後に電圧印加を停止すると、粒子が領域Pから拡散することにより、派生回折光が経時的に消失するので、その変化を測定することにより屈折率変化や濃度変化、さらには濃度変化から拡散方程式に基づいて拡散係数を求めることができる。
図7は、図6の動作原理に基づいて屈折率を測定する光学的測定装置の構成を示す概略ブロック図である。光源16とレンズ光学系17は、セル10の回折格子兼電極11に測定光を照射するようにしてある。なお、この図の例では、セル10の回折格子兼電極11に垂直入射させているが、入射角は図5で示したように傾斜させてあってもよい。
回折格子兼電極11を通過した透過回折光は、回折格子兼電極11による複数次数の基本回折光パターンA(図中太線で示す)と、密度回折格子による複数次数の派生回折光B(図中細線で示す)とを発生するが、このうち派生回折光パターンBのいずれかの派生回折光が発生する角度に光検出器18の位置が合うように、図示しない角度調整機構により調整してある。
さらに、上述した光学的測定装置の制御系として、装置全体の制御を行う制御部20および制御部20により制御される信号解析部21、電圧印加部22、液輸送・回収部23を備えている。これら制御系はCPU、ROM、RAMからなるコンピュータシステムにより構成される。信号解析部21は、光検出器18で検出した1つの派生回折光の検出信号を取り込んで、屈折率変化等の解析を行う。電圧印加部22は、交流電源15からの出力電圧を電極へ印加するときの電圧の周波数、電圧値、オンオフのタイミング等の制御を行う。液輸送・回収部23は、セル10に取り付けられている図示しない液体供給弁、排出弁を制御して液体試料のセル10への注入、排出を行う。
この光学的測定装置により、粒子移動に伴う密度回折格子の変化を、派生回折光の変化として検出することができ、派生回折光の変化として検出した密度回折格子の情報から拡散係数等を算出することができる。
上述したような、派生回折光パターンに基づいて液体中の粒子の光学的測定を行う方法では、標識化処理の必要がないので、前処理の煩わしさがなく、また、粒子を完全な自然状態で測定することができる。
さらに、派生回折光パターンに基づいて測定を行う場合は、液体試料中のごく狭い特定点からの局所的な情報ではなく、密度回折格子が形成される比較的広い範囲からの情報であるため、拡散係数等を求める場合に、局所的な影響を受けにくいので、平均的な値を得ることができる。
ところで、誘電泳動現象で液体中の粒子を移動するには、粒子が分極することが必要であり、測定対象は分極が可能な中性粒子の場合に限られる。これに対し、測定対象粒子が荷電粒子の場合は、誘電泳動に代えて、電気泳動を利用して粒子を移動することになる。例えば、蛋白質分子等は荷電粒子であるため、移動するには、電気泳動を利用する必要がある。
電気泳動により液体中の粒子を移動する場合は、粒子を含む液体に直流電圧を印加すれば、荷電粒子は異極側の電極に向けて移動することができ、誘電泳動の場合と同様に粒子集中領域を形成することができる。したがって、まず直流電圧を印加して、電極近傍に粒子集中領域を発生し、その後に、直流電圧の印加を停止すれば、原理的には拡散現象に伴う変化を検出することができることになる。
しかしながら、荷電粒子を含む液体試料に対し、単純に直流電圧を印加して電気泳動を生じさせた場合に、状況によっては、粒子間の会合・凝縮力が強くなりすぎ、粒子同士がクラスター化してしまう。クラスターが形成されてしまうと、電圧印加を停止した後は、元の液体のように1つ1つの粒子が個々に変動するのではなく、クラスター状態で移動することになる。そのため、クラスター単位での測定を行うこととなり、荷電粒子単位の拡散係数等の情報を得ることができない。
そこで、本発明は、荷電粒子であっても、粒子の拡散係数等の拡散に関する情報を適切に測定することができる粒子測定装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するためになされた本発明の粒子測定装置は、光源と、電源と、荷電粒子を含有する液体試料を保持するセルと、セル内の液体試料と近接する位置に形成され、光源から光が照射されたときに基本回折光パターンを発生する回折格子と、回折格子の少なくとも一部を構成するとともに電源から電圧が印加される電極と、電極に電圧を印加することにより粒子分布を変化させて基本回折光パターンとは異なる派生回折光パターンを発生させるとともに電圧印加を停止して派生回折光パターンを消失させる印加電圧制御部と、派生回折光パターンの少なくとも一部の派生回折光を検出する光検出器と、光検出器により検出された派生回折光の発生および消失に伴う信号変化に基づいて粒子の拡散に関する情報を解析する信号解析部とを備えた粒子測定装置であって、印加電圧制御部は、直流電圧に交流電圧を重畳した電圧を印加するようにしている。
本発明によれば、セル内に荷電粒子含有液体試料を入れて保持した状態で、回折格子に向けて、光源から光を照射する。このとき、回折格子によって光が回折され、回折光パターンを生じる。このときの回折光パターンが基本回折光パターンとなる。
印加電圧制御部により電源から(回折格子の周期を利用した)周期的構造を有する電極(回折格子兼電極)に対し、直流電圧に交流電圧を重畳した電圧を印加する。液体試料中の荷電粒子が電気泳動現象により粒子移動することにより、液体試料の密度分布に周期的な濃淡が生じ、回折格子の近傍の電界分布により周期的に変化する密度分布が発生する。このとき、荷電粒子には直流電界とともに、交流電圧による交流電界が印加されているため、粒子間に働く会合・凝集力が抑えられ、粒子どうしは強く結合することがなく、直流電圧のみ印加する場合のように粒子がクラスター化することはない。
そして、粒子移動によって粒子の分布が周期的な濃淡を生じるようになると、基本回折光パターンを生じる回折格子とは異なる派生的な回折格子(密度回折格子という)が、新たに発生する。この密度回折格子によって、新たに派生回折光が発生し、その結果、基本回折光パターンに新たな派生回折光パターンが重畳する。
続いて、印加電圧制御部が直流および交流電圧の印加を停止または変調する。これにより、粒子の拡散が始まる。このとき、交流電界の影響で粒子はクラスター化していないので、クラスターとしての拡散ではなく、1つ1つの粒子のそれぞれが単独の粒子状態で拡散するようになる。光検出器は、単独の粒子状態による拡散を、派生回折光の変化として検出し、これにより、粒子の拡散による時間変化を検出することができる。
このときの拡散による粒子の濃度変化は、次式(1)で示される拡散方程式で表現することができる。
Figure 2007057293
ここで、u(x,y,z,t)は粒子濃度、x,y,z移動方向の位置座標、tは時間、Dは拡散係数である。
予め、粒子ごとに、粒子濃度の変化と派生回折光強度の変化との関係を求めておく。そして、測定対象の粒子を含む液体試料について、回折光強度の経時変化を測定し、データを蓄積する。蓄積した経時データに基づいて、(1)式から拡散係数を求めることができる。また、拡散係数が求まることによりアインシュタイン・ストークスの関係から、次式(2)に基づいて粒径についても求めることができる。
Figure 2007057293
ここで、kはボルツマン定数、Tは絶対温度、μは粘性率、dは粒径である。
本発明によれば、荷電粒子について標識化処理を施すことなく拡散測定を行うことができ、しかも、粒子がクラスター化することなく、本来の単独の粒子としての拡散係数等の拡散情報を得ることができる。
(その他の課題を解決するための手段及び効果)
上記発明において、電極表面に荷電粒子が接することを防ぐ保護膜が形成されるようにしてもよい。
これにより、荷電粒子が電極と接触することによる電気分解等の化学変化が発生するのを防止することができる。
また、上記発明において、電極は、対となる第一極と第二極とが平面方向に交互に配置されるようにしてもよい。
これにより、第一極と第二極との間で直流電圧を印加することにより、1つおきの電極上に荷電粒子が凝集するようになり、本来の回折格子の2倍周期の密度回折格子を形成することができ、基本回折光パターンの中間に派生回折光パターンを出現させることができる。
また、上記発明において、電極は、対となる第一極と第二極とからなり、第一極が回折格子の一部を兼ねるようにして周期的に配置されるとともに、第二極が液体試料を挟んで回折格子と対向するように配置されるようにしてもよい。
これにより、回折格子のうちで、周期的に配置され、第一極となる一部の回折格子近傍に荷電粒子が凝集するようになり、その周期に応じた位置に派生回折光パターンを出現させることができる。
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は、以下に説明するような実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の態様が含まれることはいうまでもない。
(実施形態1)
図1は、本発明の一実施形態である粒子測定装置の全体構成を示す概略構成図である。
図において、図7と同じものについては、同符号を付すことにより、説明を一部省略する。
粒子測定装置1は、セル10a、回折格子兼電極11a、直流交流電源15a、光源16、レンズ光学系17、検出器18、アパーチャ19、制御部20、信号解析部21、印加電圧制御部22a、液輸送・回収部23とから構成される。
図2は、本実施形態で使用するセル10aおよびそれに形成された回折格子兼電極11aを説明する図であり、図2(a)は断面図、図2(b)は平面図である。
セル10aは、セル壁面を形成するガラス基板12a上に、互いに平行に並ぶ直線状電極片13aと直線状電極片14aとが交互に配列することにより、回折格子兼電極11が構成される。直線状電極片13aと直線状電極片14aとは、互いに反対極となる第一極と第二極とを構成しており、これらが直流交流電源15aに接続されることにより、直流電圧に交流電圧が重畳された電圧が印加できるようにしてある。ガラス基板12aの裏側からは光源16、レンズ光学系17により測定光が照射され、回折光が発生するようにしてある。
なお、直線状電極片13aと直線状電極片14aには、金、白金等の金属薄膜を用いればよいが、その場合は、電極幅を細くしたり、金属薄膜の膜厚を薄くしたりして、測定光の一部が金属薄膜のセル側表面に存在する粒子にも到達するようにして、金属薄膜のセル側表面近傍の粒子密度の光学的変化が観測できるようにしておく。あるいは、電極片の材料として透明電極(例えばITO)を用いることで測定光が透明電極を透過するようにして、セル側表面近傍の変化を観測できるようにしてもよい。本実施形態では、電極材料にITOを用いている。
回折格子兼電極11を構成する直線状電極片13aと直線状電極片14aとの表面には、例えばTaからなる絶縁性の保護膜25が形成されており、セル内の液体試料に含まれる粒子がこれら電極片と直接接触することにより、化学変化が生じないようにしてある。Taの保護膜25の膜厚が厚すぎると、粒子の可動領域に強い電界領域が形成できなくなるので、50nm〜500nmとするのが好ましい。
光源16は、密度回折格子により派生回折光を発生することができる光源であれば、特に限定されないが、例えばレーザ光源やLEDを用いることができる。
直流交流電源15aは、直流電圧と交流電圧とが重畳して出力できる電源であり、印加電圧制御部22aにより、直流電圧値、交流電圧値、交流周波数、および、電圧印加、電圧停止の制御ができるようにしてある。
検出器18には、例えばフォトダイオードが用いられ、検出光以外の不要光を遮光するためのアパーチャ19が受光面に取り付けてある。また、検出器18は、図示しない角度調整機構が設けてあり、所望の角度の回折光を検出することができるようにしてある。なお、本実施形態では1つの回折光を検出するために1つの検出器を用いているが、複数の検出器を用いて複数の回折光を測定するようにしてもよい。
制御部20は、信号解析部21、印加電圧制御部22a、液輸送・回収部23を始め、装置全体の制御を行う。
信号解析部21は、検出器18で検出した派生回折光の検出信号を取り込んで、拡散係数の解析を行う。すなわち、検出器18の信号から粒子濃度変化を求め、式(1)の拡散方程式に基づいて、拡散係数を算出する。
印加電圧制御部22aは、直流交流電源15aからの出力電圧を電極へ印加するときの電圧の周波数、交流電圧値、直流電圧値、オンオフのタイミング等の制御を行う。
液輸送・回収部23は、セル10に取り付けられている図示しない液体供給弁、排出弁を制御して試料液体のセル10への注入、排出を行う。
次に、この装置による拡散測定の動作について説明する。液輸送・回収部22の制御により、セル10a内に荷電粒子を含む液体試料を注入する。この状態で直流交流電源15aから直流電圧に交流電圧を重畳した電圧を印加する。図3(a)は電圧印加後の粒子の状態を説明する図である。今、液体中の荷電粒子が負電荷を有しているとすると、正極側(第一電極)の電極近傍に荷電粒子が凝集するようになり、周期的に粒子密度が高い領域が形成され、密度回折格子が発生する。正極側電極(第一電極)と負極側電極(第二電極)とは交互に配列されているので、密度回折格子の周期は、本来の回折格子の周期(d)の2倍周期(2d)となる。
このとき印加される電圧成分には、直流成分とともに交流成分が含まれる。交流成分の電圧は、粒子どうしが強く結合するのを妨げる効果を有しているので、正極近傍に凝集する粒子どうしはクラスター化することはない。
そして、発生した密度回折格子によって、派生的に生じた派生回折光パターンのうちの1つの派生回折光を光検出器18により検出し、以後、検出信号の経時的変化を測定する。
続いて、印加電圧制御部22は、電圧印加を停止する。これにより、図3(b)に示すように、正電極近傍に凝集している荷電粒子が拡散を開始し、時間経過とともに、密度回折格子が消失するようになる。このときの、派生回折光の変化を検出し、信号解析部21に送る。
信号解析部21は、派生回折光についての検出信号の時間変化から、式(1)に基づいて拡散係数を算出する。
以上の動作により、荷電粒子についての拡散係数を測定することができる。
(実施形態2)
図4は、本発明の他の一実施形態である粒子測定装置のセル部分10bの構成を示す概略構成図である。本実施形態のセル以外の全体構成については、図1におけるセル10aを、セル10bに置換したものと基本的には同じであるので、以下の説明では、同符号を付すことにより説明を省略する。
本実施形態で使用するセル10bは、セル壁面を形成するガラス基板12a上に、互いに平行に並ぶ複数の透明電極からなる直線状電極片26が形成される。透明電極にはITO、SnO等が好適である。隣接する直線状電極片26の中間位置には、直線状のブロック27が配列するようにしてあり、直線状電極片26とブロック27とにより、回折格子11bが形成されるようにしてある。ブロック27の材料は、回折格子11bとして機能させることができるものであればよく、直線状電極片26と同じ導電性材料であってもよいし(その場合は浮遊電極となる)、絶縁性材料でもよい。直線状電極片26とブロック27とは絶縁性保護膜25により覆われており、荷電粒子が直線状ブロ電極片26と直接接触することを防ぐことにより、化学変化が生じないようにしている。
直線状電極片26に対し、液体試料を挟んで対向する側のセル壁面には、ITO等の透明電極で形成された電極28が形成してある。
そして、直線状電極片26と電極28との間には、直流電圧および交流電圧を印加するための直流交流電源15aが接続してある。
次に、この装置による拡散測定の動作について説明する。液輸送・回収部23の制御により、セル10b内に荷電粒子を含む液体試料を注入する。この状態で直流交流電源15aから直流電圧に交流電圧を重畳した電圧を印加する。ここでは、荷電粒子が負電荷を有し、直線状電極片26が正、電極28が負となるように直流電圧を印加するものとする。図5(a)は電圧印加後の粒子の状態を説明する図である。正極側(第一電極)の電極片26近傍に、荷電粒子が凝集するようになり、周期的に粒子密度が高い領域が形成され、密度回折格子が発生する。正極側となる電極片26(第一電極)とブロック27とは、交互に配列されているので、密度回折格子の周期は、本来の回折格子(電極片26とブロック27とによる回折格子)の周期(L)の2倍周期(2L)となる。
このとき印加される電圧成分は、直流成分とともに交流成分が含まれる。交流成分の電圧は、粒子どうしが強く結合するのを妨げる効果を有しているので、正極である電極片26近傍に凝集する粒子どうしはクラスター化することはない。
そして、発生した密度回折格子によって、派生的に生じた派生回折光パターンのうちの1つの派生回折光を光検出器18により検出し、以後、検出信号の経時的変化を測定する。
続いて、印加電圧制御部22は、電圧印加を停止する。これにより、図5(b)に示すように、正極である電極片26近傍に凝集している荷電粒子が拡散を開始し、時間経過とともに、密度回折格子が消失するようになる。このときの、派生回折光の変化を検出し、信号解析部21に送る。
信号解析部21は、派生回折光についての検出信号の時間変化から、式(1)に基づいて拡散係数を算出する。以上の動作により、荷電粒子についての拡散係数を測定することができる。
上記実施形態では、正極に負電荷を有する荷電粒子が集中する例を説明したが、負極に正電荷を有する荷電粒子を集中させるようにしてもよいのは言うまでもない。
本発明は、液体試料中の粒子の拡散係数を光学的に測定する粒子測定装置に利用することができる。
本発明の一実施形態である粒子測定装置の全体構成を示す概略構成図。 図1の粒子測定装置におけるセルの構成を説明する図。 図1の粒子測定装置で電圧を印加、停止したときの動作を説明する図。 本発明の一実施形態である粒子測定装置のセルの構成を示す概略構成図。 図4の粒子測定装置で電圧を印加、停止したときの動作を説明する図。 中性粒子を誘電泳動させることにより密度回折格子を発生させるときの状態を説明する図。本発明の他の一実施形態である光学的測定装置の全体構成を示す概略構成図。 図6の原理を用いた粒子測定装置の全体構成を示す概略構成図。
符号の説明
1: 粒子測定装置
10a、10b: セル
11a: 回折格子兼電極
11b: 回折格子
12a: 15: 交流電源
13a、14a: 直線状電極片
15a: 直流交流電源
16: 光源
18: 光検出器
20: 制御部
21: 信号解析部
22a: 印加電圧制御部
25: 保護膜
26: 直線状電極片
27: ブロック

Claims (4)

  1. 光源と、電源と、荷電粒子を含有する液体試料を保持するセルと、セル内の液体試料と近接する位置に形成され、光源から光が照射されたときに基本回折光パターンを発生する回折格子と、回折格子の少なくとも一部を構成するとともに電源から電圧が印加される電極と、電極に電圧を印加することにより粒子分布を変化させて基本回折光パターンとは異なる派生回折光パターンを発生させるとともに電圧印加を停止して派生回折光パターンを消失させる印加電圧制御部と、派生回折光パターンの少なくとも一部の派生回折光を検出する光検出器と、光検出器により検出された派生回折光の発生および消失に伴う信号変化に基づいて粒子の拡散に関する情報を解析する信号解析部とを備えた粒子測定装置であって、
    印加電圧制御部は、直流電圧に交流電圧を重畳した電圧を印加することを特徴とする粒子測定装置。
  2. 電極表面に荷電粒子が接することを防ぐ保護膜が形成されることを特徴とする請求項1に記載の粒子測定装置。
  3. 電極は、対となる第一極と第二極とが平面方向に交互に配置されることを特徴とする請求項1に記載の粒子測定装置。
  4. 電極は、対となる第一極と第二極とからなり、第一極が回折格子の一部を兼ねるようにして周期的に配置されるとともに、第二極が液体試料を挟んで回折格子と対向するように配置されることを特徴とする請求項1に記載の粒子測定装置。
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