以下に本発明に関する実施の形態の例を示すが、本発明の態様はこれらに限定されるものではない。
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
図1は、本発明に係る印画装置の一実施形態を示す構成概要図である。
本発明における印画装置とは、インクジェットヘッドのノズルからインク滴を吐出させ、記録紙等の記録媒体上に着弾させて画像記録を行うインクジェット装置だけでなく、液晶ディスプレイのカラーフィルタを製造するカラーフィルタ製造装置、有機ELディスプレイ、FED(面発光ディスプレイ)等の電極を形成する電極形成装置、バイオチップを製造するバイオチップ製造装置などの産業用途を有するその他の印画装置も含む。印画部材にインク滴を着弾させる印画装置をすべて含む。
図1において、100は印画装置本体、1は基板である。基板1としては、産業用途では、一般にガラス基板が用いられるが、その用途として必要とされる特性、例えば透明性、平滑性、機械的強度等の諸特性を満足するものであれば、必ずしもガラス基板に限定されない。
また、110は装置架台、120はインクジェットヘッド、121はヘッド駆動回路、130はインクジェットヘッド120が移動するX軸ガイドレール、140は基板1を載置する基板載置台、150は基板載置台140が移動するY軸ガイドレール、190はノズル欠(インクの不吐出)を検知するインク滴モニタ装置である。
インクジェットヘッド120は、図示しないインク供給機構から供給されるインクをノズルからインク滴として吐出させ、基板1表面に付着させて印画パターンを形成するものであり、装置架台110上方に横架されたX軸ガイドレール130に、インク滴を吐出するノズルを下方に向けて取付けられており、該X軸ガイドレール130に沿ってX方向モータ303(図9)、X方向モータ駆動回路302(図9)によりX方向に移動しながらインク滴を吐出するようになっている。
なお、インクとしては、例えばカラーフィルタの色材(BMあるいはR、G、B等のカラーフィルタの色材)や、有機ELディスプレイ、FED(面発光ディスプレイ)等の電極を形成する電極ペーストや、バイオチップ製造装置の生体有機物などである。
このインクジェットヘッド120は、1つのヘッドを有するものであるが、用途により複数色を構成する、例えばB、G、Rの3色に対応した3つのヘッドを有するものでもよい。また、印画工程の時間短縮を図るために、4つ以上のヘッドを有するものであってもよく、ヘッドの数は1つ以上であれば任意である。
インクジェットヘッド120の吐出手段は、フレキシケーブル(不図示)を介して、ヘッド駆動回路121に電気的に接続されている。またヘッド駆動回路121は制御部300(図9)と接続される。ヘッド駆動回路121は、制御部300から送信される制御信号に基づいてインクジェットヘッド120の吐出手段に電圧を印加する。吐出手段は、後述するように、せん断モード型の圧電素子で構成されている。
図2(a)は、インクジェットヘッド120を上方から見た場合に、下方のノズル面のノズルの配置を示している。X方向、Y方向は図1に対応している。また、3はノズルであり、多数のノズルのうちの一部のノズル(19個)のみが示されている。Pはノズルピッチであり、等間隔で多数のノズルが配置されている。
また、インクジェットヘッド120のノズル面のノズルの配置としては、同一平面上に一定間隔Pで複数個並んでいることが望ましいが、その並び方は、本実施形態では、図2(a)に示すようなスタガー状に配列させている。図2(b)に示すような一直線状でもよく、本発明においては特に限定されない。また図2(a)や(b)に示すヘッドを2つ用意し、各ヘッドのノズル列が、相互に1/2ピッチずらされて配置するように貼り合わせてもよい。
本発明の印画装置は、前記ノズル列を、ノズルN個(Nは2以上の整数)おきにノズルを選択して1つのグループとして、複数のグループに分割し、いずれか1つのグループに属するノズルを印画ノズル列として使用するノズルピッチ調整手段と、前記印画ノズル列の前記移動方向に対する角度を調整するための角度調整手段とを有することに特徴がある。
特に上述の産業用途においては、印画ピッチは比較的粗い場合(例えば0.5mm前後)が多く、ノズルのピッチの方が印画のピッチより細かくなる場合が多い。よって、何本かおきのノズルを使用して印画することになる。また、印画のピッチとノズルのピッチの倍数が合わない場合は、インクジェットヘッドを回転させ、その角度を移動方向に垂直ではなくある角度をつけて印画のピッチに合わせるようにセットする。これにより、1つのインクジェットヘッドで、印画ピッチの異なる複数種類の印画パターンの印画に対応可能となる。
図2(a)においては、N=3としてノズル3個おきにノズルを選択して1つのグループとして、Aグループ(ノズルのA,A1,A2,A3)、Bグループ(ノズルのB,B1,B2,B3)、Cグループ(ノズルのC,C1,C2,C3)の3つのグループに分割し、いずれか1つのグループに属するノズルを印画ノズル列として使用する。またヘッドは、後述の回転機構によりX方向に対して角度θだけ傾斜させることができる。即ち、
ノズルピッチPに対して、実効的なX方向のノズルピッチP’はP’=3P(COSθ)
となり、θの調整により、P’とX方向の印画ピッチを合わせることができる。
また、Nは3に限らず、2以上の整数であればよく、Nとθの調整によりP’と印画ピッチを合わせる様にしてもよい。即ち、P’=NP(COSθ)に基づいて、P’を印画ピッチに合わせればよい。
本実施例において、制御部300(図9)がノズルピッチ調整手段に相当し、印画ピッチから、Nを決定し、ヘッド駆動回路121を介して、所定のグループのノズル列の圧電素子を駆動させるように制御する。また、選択された印画ノズル列のノズルピッチをNP、印画ピッチをP1(本実施形態においては、X方向の印画ピッチ)としたとき、P1/NP=0.4〜1.0となるようにNを設定することが好ましい。このようにすることでヘッド角度θの調整が容易になる。
また、図2の(a)のスタガー配列ヘッドにおいて、ユーザーがθを1つに固定して使用する場合は、角度θとノズルのスタガー配列の角度θ’をθ=θ’とすることにより、後述するように、前記1つのグループを印画ノズル列として使用し、このグループに属するノズルに不吐出などの不具合が生じた時に、別のグループを印画ノズル列として選択し印画を継続する場合に、X方向の吐出タイミングを調整するだけで良く、Y方向のタイミング調整が不要になる。
次に、この回転機構について説明する。インクジェットヘッド120は、これらのヘッドを水平面内で回動させるためのθ方向モータ307(図9)、θ方向モータ駆動回路306(図9)に接続されており、このモータ307の回転により、インクジェットヘッドの図2に示すような移動方向に対する傾き角度θが調整される。本実施例において、θ方向モータ307は角度調整手段に相当する。
なお、図1中、190はインク滴モニタ装置であり、インクジェットヘッド120が非記録時のホームポジション等の待機位置に設けられている。インクジェットヘッド120がこの待機位置にある時、このインク滴モニタ装置190に向けてインク滴を少量空吐出するようにする。
インク滴モニタ装置190は、例えば上部が開口された箱状体であり、内側面部に吐出検知手段が設置されている。上記空吐出の際、ノズルから空吐出されるインクを回収するとともに、ノズルからインク滴が吐出されているかどうかを検知する。
具体的には、吐出検知手段は、発光部及び受光部を備えて構成される。発光部及び受光部は、例えば内側面部に互いに対向して設けられる。発光部は例えばLED(Light Emitting Diode)やレーザーダイオードであり、受光部に向けて光を発光する。受光部は例えばフォトダイオードであり、発光部から発光された光を受光し、この受光状態を受光信号として出力する。
インク滴が吐出されている場合にはインク滴に光が散乱されて受光部に到達しないが、吐出されていないとき(不吐出のとき)には光が通過して受光部に到達することにより吐出を検出することができる。
インク滴モニタ装置は、これに限らず、吐出検知ができれば何でも良く、公知の装置を用いることができる。
更に、待機位置に、インクの目詰まりを回復させる機能を備え、一定間隔毎に目詰まりの回復動作を行うようにしてもよい。
基板載置台140は、装置架台110上において上記X軸ガイドレール130と直交する方向に沿って設けられたY軸ガイドレール150に取付けられ、該Y軸ガイドレール150に沿ってY方向モータ305(図9)、Y方向モータ駆動回路304(図9)によりY方向に移動するようになっている。従って、X軸ガイドレール130とY軸ガイドレール150は、インクジェットヘッド120と基板載置台14とを互いに直交する方向に相対的に移動させる相対移動手段を構成している。
上記基板載置台140は、その上面がインクジェットヘッド120のノズル面と平行に配置されており、Y方向の端部における基板受納排出位置(装置架台110上の図示右端位置)において、搬送されてきた基板1を自動的に受け取り、その上に載置する。この基板1を受け取る際の基板載置台140には、基板1に瑕疵の発生なく自動的に受納及び排出できるようにするため、基板受納排出手段が設けられる。
なお、本明細書において、基板の「受納」とは、基板載置台上に搬入された基板を該基板載置台上に密接した載置状態とすることをいい、基板の「排出」とは、基板載置台上に載置されている基板が搬出のために該基板載置台上から離れて密接した載置状態が解除されることをいう。
図1では、基板受納排出手段が、基板載置台140表面から突出可能な4ケのリフトピン160による基板押し上げ機構からなる場合を示している。各リフトピン160は、上昇動作することにより基板載置台140表面から突出して、その先端で基板1を押し上げて該基板1を基板載置台140上から自動的に排出し、下降動作することにより基板載置台140内に没入して、リフトピン160で押し上げられていた基板1が基板載置台140の上面に載置されて基板1を基板載置台140上に自動的に受納する。
各リフトピン160の上昇により基板載置台140表面と各リフトピン160によって押し上げられた基板1との間に後述する基板搬送ロボット200のアーム210が侵入するに十分なスペースを形成し得るようにするため、少なくとも基板搬送ロボット200のアーム210が侵入する側のリフトピン160は、アーム210が侵入し得るだけの間隔をあけて設けられている。
また、各リフトピン160は、上記基板搬送ロボット200のアーム210が侵入し得るように、基板載置台140上から5mm以上、好ましくは10mm以上の突出高さを有している。
リフトピン160の昇降動作は、図示しないが、各リフトピン160を固定している基盤の下面側に偏芯カムを当接させ、ステッピングモータの駆動により偏芯カムを回転させることにより、全てのリフトピン160を同時に昇降動作させるようにしたり、また、油圧又は空気圧を利用したリフト機構を用いて各リフトピン160を同時に昇降動作させるようにすることができる。
基板1が当接するリフトピン160の先端は、基板1との接触面積を小さくするために、曲面状に形成されることが好ましく、基板1に対する損傷を防止するために、軟質合成樹脂やゴム等の軟質部材により少なくとも被覆されることが更に好ましい。
リフトピン160の数は、基板1をその下面から支持して昇降させることができるように3ケ以上必要であるが、基板1を安定して支持することができるようにするため、4ケ以上あることが好ましい。
また、基板載置台140には、リフトピン160の下降動作によって基板載置台140上に載置された基板1に対してインクジェットヘッド120による印画作業を行っている間中、基板1を基板載置台140上でずれることなく載置しておくことができるようにするための基板密着手段を備えている。
この基板密着手段としては、基板1の下面側を吸引して基板載置台140上面に密着させる真空吸着手段や、基板載置台140上面に、例えば軟質塩化ビニル系樹脂等からなる自己粘着性プラスチックシートを貼設して、該シートの粘着性を利用して基板1を基板載置台140上面に密着させる手段、等を採用することができるが、なかでも、基板1を確実に基板載置台140上に密着させることができると共に基板1自体に密着のための機械的な外力を直接及ぼすことがなく、基板1の排出時には密着状態を速やかに解除して排出できるようにするため、真空吸着手段を採用することが好ましい。
本実施形態に用いられる真空吸着手段は、図1に示すように、基板載置台140表面に適宜数開穿された直径2mm程度の真空吸着用の孔170から、図示しない吸引ポンプを駆動させて空気を吸引することにより、基板1を基板載置台140上面に吸着させ密着させるようにしている。この真空吸着手段は、リフトピン160の昇降動作に連動させ、リフトピン160が下降して基板1が基板載置台140上に載置された時に吸引を開始して基板1を該基板載置台140上に密着させ、印画作業終了後、リフトピン160が上昇する直前に吸引を終了させて、基板1がリフトピン160の上昇動作により基板載置台140上から速やかに排出されるようにする。
図1において200は基板搬送ロボットであり、印画装置本体100への基板1の搬入及び搬出は、この基板搬送ロボット200により自動的に行われることが好ましい。基板搬送ロボット200は、印画装置本体100の基板受納排出位置側に配置されており、上部に水平方向に回動可能及び垂直方向に昇降可能で、且つ前後に伸縮可能なアーム210を備えている。アーム210には真空吸着手段を備え、このアーム210に基板1の下面を吸着支持して搬送するようにすることが好ましい。本実施形態では円筒座標系のロボットを使用しているが、他の方式のロボットを用いてもよい。
この基板搬送ロボット200による基板1の搬入及び搬出は、各種印画基板の製造ラインに印画装置本体100を組み入れ、搬送ライン(図示せず)を搬送されてくる印画前の基板を、該基板搬送ロボット200によって印画装置本体100に搬入し、印画済みの基板を該印画装置本体100から搬出して同一の搬送ライン又は別の搬送ラインに戻すようにしたり、印画前の基板を多段状に収容した収容棚(図示せず)から該基板搬送ロボット200によって1枚ずつ取り出して印画装置本体100に搬入し、印画後の基板を該印画装置本体100から再度同じ収容棚又は別の収容棚に搬出するようにすることができるが、各種印画基板の一連の製造工程を自動化、高速化させる観点から、前者の態様が好ましい。
次に、かかる印画装置本体100の全体の動作を、基板搬送ロボット200により搬送ライン(図示せず)から基板1を搬入及び搬出させる場合について説明する。以下に説明する動作は、印画装置本体100、基板搬送ロボット200及び基板を搬送する搬送ラインを統括して制御する制御部300(図9)によって制御される。
まず、初期の状態では、印画装置本体100の基板載置台140がY方向端部の基板受納排出位置に位置し、基板搬送ロボット200のアーム210に載せられて搬送されてきた基板1を受納すべく、基板載置台140に設けられたリフトピン160を、基板搬送ロボット200のアーム210が侵入するのに十分な高さまで上昇させて待機する。
基板搬送ロボット200のアーム210に載せられて基板載置台140上方まで搬入されてきた基板1が、該アーム210の下降により基板載置台140上のリフトピン160先端に接触し、更にアーム210が下降することにより、基板1がアーム210上から離れてリフトピン160によって支持されるようになると、アーム210が基板載置台14と基板1との間から退出し、そのアーム210の退出動作完了に連動してリフトピン160を下降させる。これにより基板1は基板載置台140上に載置され、自動的に受納される。更にリフトピン160の下降完了に連動して孔170から吸引を開始することにより基板1は基板載置台140上に吸着されて密着する。
次いで、所定の1グループのノズル列が選択され、モーター250を駆動させることによって、インクジェットヘッド120の傾き角度θが調整され、インクジェットヘッド120の1グループの印画ノズル列による印画動作が開始される。
インクジェットヘッド120は、X軸ガイドレール130に沿ってX方向に移動し、続いて基板載置台140がY軸ガイドレール150に沿って移動し、基板1がY方向に移動するタイミングに合わせるようにノズルからインク滴が吐出制御され、基板1上に対してY方向に印画していく。Y方向の最初の列の印画が終了すると、次いでインクジェットヘッド120はX方向に移動し、Y方向の次の列の印画が開始され、更にX方向のインクジェットヘッド120の移動、Y方向の基板載置台140の移動及びインク滴の吐出制御を所定数繰り返すことにより、基板1全面に亘る印画作業が終了する。
印画作業が終了すると、基板載置台140はY方向に移動して基板受納排出位置まで復帰し、その復帰動作完了に連動して真空吸着用の孔170からの基板1の吸着を解除する。次いで、基板1の吸着解除動作に連動してリフトピン160を上昇させ、基板1を基板載置台140上面から押し上げ、同時に、基板載置台140と基板1との間に基板搬送ロボット200のアーム210の侵入スペースを形成して待機する。これにより基板1は基板載置台140上から自動的に排出される。基板搬送ロボット200は、上記侵入スペースにアーム210を侵入させ、アーム210を上昇させて該アーム210上面に基板1を載置させ、印画装置本体100から基板1を搬出する。
印画装置本体100からの基板1の搬出終了後は、基板載置台140を基板受納排出位置において次の基板1を自動的に受納するべく、吸着を解除状態にし、リフトピン160を上昇させた状態で待機する。
この印画装置本体100によれば、リフトピン160からなる基板受納排出手段によって、基板載置台140と基板1との間に基板搬送ロボット200のアーム210が侵入するのに十分なスペースを形成することができ、そのリフトピン160の昇降動作により基板載置台140上への基板1の受納及び基板載置台140上からの基板1の排出を自動で行うことができるので、基板搬送ロボット200による基板1の自動搬入及び搬出作業が円滑に行われ、工程の完全自動化により単位時間当たりの製造速度を向上させることができ、工程時間の短縮化を図ることができると共に、大型の基板1であっても、基板載置台14上に搬入された基板1を該基板載置台140上に載置させて受納するため、基板1の反り等の変形を生ずることなく、基板1とインクジェットヘッド120のノズル面とが互いに平行を維持した状態で印画作業を実施でき、高品位な印画パターンを印画することができる。
次に図1、図2(a)に示したインクジェットヘッド120について詳細に説明する。
インクジェットヘッドは種々の方式が提案されているが、本実施形態では、その一つの隣接したインク流路間の隔壁の少なくとも一部がせん断モードで変形する圧電材料で構成されたせん断モード型のインクジェットヘッドを用いている。
せん断モード型の圧電素子では、矩形波の駆動パルスをより効果的に利用することができ、駆動電圧が下げられ、より効率的な駆動が可能となるため好ましい。また、圧力発生室であるインクチャネルが隔壁を隔てて連続しているヘッドの例を示したが、インクチャネルとダミーチャネルとを交互に配列して、インクチャネルが1つおきに配置されており、インクチャネルからインクを吐出するようにしたダミーチャネル型ヘッドにも本発明は適用できる。この場合、インクチャネルの隔壁がせん断変形しても、隣接した他のインクチャネルに影響することがなく、インクチャネルの駆動が容易である。
但し、本発明はこれらに限られるものではなく、例えば、圧電素子を単板型の圧電アクチュエータや縦振動タイプの積層型圧電素子等、別の形態の圧電素子を用いてもかまわない。また、静電力や磁力を利用した電気機械変換素子や、沸騰現象を利用して圧力を付与させるための電気熱変換素子等、他の圧力付与手段を用いてもかまわない。
図3は、せん断モードインクジェットヘッドのインク流路に沿った断面図である。図3で10はインクチューブ、2はノズル形成部材、3はノズル、Sは側壁、6はカバープレート、7はインク供給口、8は基板である。
図4は、せん断モードインクジェットヘッドの駆動の様子を示すインク流路を横切る断面図である。図4のインク流路を横切る断面図に示すようにインク流路であるチャネルAは側壁Sとカバープレート6及び基板8によって形成されている。
図5は、駆動パルスの波形を示すグラフであり、横軸が時間、縦軸が電圧である。
図3には1個のノズルを有する1個のチャネルの断面図が示されているが、実際のせん断モードインクジェットヘッド120では、図2(a)のように多数のノズルを有し、図4(a)に示すようにカバープレート6と基板8の間には複数の側壁S、即ち、S1、S2・・Sn+1で隔てられたチャネルが多数形成されている。図ではチャネルA1、B1、C1の3チャネルのみが示されている(チャネルA1、B1、C1には、各々図2(a)のノズルA1、B1、C1が設けられている)。チャネルの一端はノズル形成部材2に形成されたノズル3につながり、他端は供給口7を経て、インクチューブ1によって図示されていないインクタンクに接続されている。そして、例えば側壁S1には密着形成された電極Q1、Q2、と側壁S2には密着形成された電極Q3、Q4が設けてある。同様に各側壁にはそれぞれ電極が密着形成されている。
ここでは、チャネルA1のノズルからインク滴を吐出する場合の駆動について説明する。まず、図4(b)に示すように、電極Q1をアースに接続し、電極Q2に図5に示すような、正電圧+Vのパルスと、負電圧−Vのパルスとからなる駆動パルスを印加し、同様に、電極Q4をアースに接続し、電極Q3に前記駆動パルスを印加することにより、以下述べる動作によってインク滴がノズル3から飛翔する。
なお、かかるせん断モードタイプのインクジェット記録ヘッドでは、側壁の変形は壁の両側に設けられる電極に掛かる電圧差で起こるので、インク吐出を行うチャネルの電極(Q2,Q3)に負電圧を掛ける代わりに、インク吐出を行うチャネルの電極を接地して、その両隣のチャネルの電極(Q1,Q4)に正電圧を掛けるようにしても同様に動作させることができる。この方法によれば、正電圧だけで駆動できるため、電源コストの点で好ましい態様である。
側壁Sは図4(a)の矢印で示すように分極方向が異なる2個の圧電材料からなる側壁SaとSbとから構成されていて、駆動パルスを印加することによって変形するアクチュエータとして動作する。電極Q2及びQ3に駆動パルスが印加されない時は図4(a)のように側壁S1、S2は変形しないが、前記駆動パルスが電極Q2及びQ3に印加されると、正電圧パルスが印加されている間は圧電材料の分極方向に直角な方向の電界が生じ、側壁S1a、S1bともに側壁の接合面にズリ変形を生じ、また、側壁S2a、S2bも同様に反対方向にズリ変形を生じて、図4(b)に示すように側壁S1a、S1b及び側壁S2a、S2bは互いに外側に向けて変形し、この例ではチャネルA1の容積を拡大する。次に、図4(c)に示すように、負電圧パルスが印加されている間は前記側壁S1a、S1b及びS2a、S2bは互いに逆方向に変形して、チャネルA1の体積は急激に縮小して、チャネルA1内の圧力が変化する。この動作によってチャネルA1を満たしているインクの一部がインク滴としてノズル3から飛翔する。各チャネルも駆動パルスの印加によって同様に動作し、インク滴を飛翔させる。
しかし例えば、前記のようにチャネルA1の側壁S1及びS2が変形の動作をすると、隣のチャネルB1が影響を受けるため、従来からよく知られているように、複数のチャネルを構成したヘッド120を駆動する場合には、n個のチャネルをL個の単位に区分し、L個の周期で駆動する。
ここでは、全チャネル(ノズル)を3つおきに選んでA,B,Cの3グループに分けて吐出する、いわゆる3サイクル吐出法について説明する。
かかる3サイクル吐出動作について図6、図7を用いて更に説明する。
図6は、せん断モードインクジェットヘッドの3サイクル駆動の様子を示すインク流路を横切る断面図である。
図6に示す例では、図2(a)のインクジェットヘッド120の9個のチャネル(ノズル)であるA1、B1、C1、A2、B2、C2、A3、B3、C3を示している。図6のヘッドの各チャネルの駆動のタイムチャートを図7に示す。図7は縦軸にはチャネルA1〜C3を、また、横軸には時間をとってある。図7のDはエンコーダーのパルス信号であり、図7では、2回分の3サイクル駆動のタイミングチャートが示されているが、以降同様に3サイクル駆動が繰り返される。
図6(a)及び図7に示すように、初め第1周期t1の駆動パルスPaをA1、A2、A3の3チャネルに同時に印加し駆動すると、これらA1、A2、A3の3チャネルの側壁が同時に変化し、各ノズルからインク滴が飛翔する。前記のようにインク滴を飛翔するチャネルは初め体積を増加した後、急激に体積を縮小する。図4には、各チャネルが縮小した時の状態を示してある。以下同様に、図6(b)、図6(c)に示すように、第2周期t2の駆動パルスPbをB1、B2、B3の3チャネルに同時に印加して駆動した後、更に第3周期t3の駆動パルスPcをC1、C2、C3の3チャネルに同時に印加して駆動すると、各側壁が逐次変形し、t1、t2、t3の3周期で、各チャネルの駆動が一巡し、9チャネル全てが駆動されてインク滴を飛翔することになる。なお、図2(a)に示される他のAグループのノズルは、A1、A2、A3と同様に駆動され、Bグループのノズルは、B1、B2、B3と同様に駆動され、Cグループのノズルは、C1、C2、C3と同様に駆動される。
実際には前記のように常に、全てのチャネルが駆動されるとは限らず、画像信号に従って、選択されたチャネルのみ駆動し、インク滴を飛翔させて画像を形成する。
なお、図6(a)にのみノズル3を示し、図6(b)及び図6(c)では、煩雑になるのを避けるために、実際には形成されているノズルを省略している。
また、図2(a)で説明したように、このような分割駆動に合わせてノズルをずらして配置させるスタガー配列が行われる。スタガー配列のズレ量については、特開2001ー301163公報に記載されているように3サイクルの駆動周期とヘッドと基板の相対移動速度で決められる。
本発明においては、前述のように、ノズル列を、ノズルN個(Nは2以上の整数)おきにノズルを選択して1つのグループとして、複数のグループに分割し、いずれか1つのグループに属するノズルを印画ノズル列として使用する点及び前記印画ノズル列の前記移動方向に対する角度を調整する点に特徴がある。
この1サイクル駆動のタイムチャートを図8に示す。図8は縦軸にはチャネルA1〜C3を、また、横軸には時間をとってある。
まず、図8(a)に示すようにA1、A2、A3の3チャネルを含むAグループのノズル列を印画ノズル列として使用する。
初め第1周期t1の駆動パルスPaをA1、A2、A3の3チャネルに同時に印加し駆動すると、これらA1、A2、A3の3チャネルの側壁が同時に変化し、各ノズルからインク滴が飛翔する。前記のようにインク滴を飛翔するチャネルは初め体積を増加した後、急激に体積を縮小する。第2周期t2、第3周期t3では、駆動は行われず、以下同様に繰り返される。
このようにして、Aグループのチャネルのノズル列のみを使用して印画を継続する。
そして、Aグループの印画ノズル列の少なくとも1つのノズルに不吐出等の不具合が生じたときに、他のグループに属するノズルを印画ノズル列として使用する。Bグループを使用する場合は、図8(b)のように、B1、B2,B3のチャンネルの側壁に駆動パルスを印加し、印画ノズル列として使用する。
さらに、Bグループの印画ノズル列の少なくとも1つのノズルに不吐出等の不具合が生じたときに、Cグループに属するノズルを印画ノズル列として使用する。図8(c)のように、C1、C2,C3のチャンネルの側壁に駆動パルスを印加し、印画ノズル列として使用する。
なお、図2(a)に示される他のAグループのノズルは、A1、A2、A3と同様に駆動され、Bグループのノズルは、B1、B2、B3と同様に駆動され、Cグループのノズルは、C1、C2、C3と同様に駆動される。
実際には前記のように常に、全てのチャネルが駆動されるとは限らず、画像信号に従って、選択されたチャネルのみ駆動し、インク滴を飛翔させて画像を形成する。
このように1つのグループを印画ノズル列として使用し、このグループに属するノズルに不吐出が生じた時に、ヘッドを交換することなく、別のグループを印画ノズル列として選択し印画を継続できる。このことにより、ヘッド交換の回数を減らして稼働率の高い印画作業ができると共に、高い信頼性、高スループットが実現できる。
特に、本実施形態で用いたような隣接したインク流路間の隔壁の少なくとも一部がせん断モードで変形する圧電材料で構成されたせん断モード型のインクジェットヘッドの場合、1つのグループを印画ノズル列として使用することにより、ヘッドを高周波で駆動するができる。
図9には、そのような、図1の印画装置の制御系のブロック図が示してある。
制御部300は、図9に示すように、インターフェイス(I/F)308、ROM(Read Only Memory)311、RAM(Random Access Memory)309、NVRAM312、CPU(Central Processing Unit)310等から構成され、ROM311中に書き込まれている制御プログラムや制御データに従いインターフェイス308に接続された各種機器を制御するようになっている。また、制御部300は、不図示の印画ノズル列m(何番目のグループのノズル列を印画ノズル列として選択して使用しているかを示す数。ここでは、m=1ではAグループが、m=2ではBフループが、m=3ではCグループのノズル列が選択される)のカウント手段や印画枚数カウント手段を有している。また、印画ピッチから最適のヘッド角度、ノズルピッチ(NP、即ち、Nの値)を算出する演算部を有している。
インターフェイス308には、X方向モータ駆動回路302、Y方向モータ駆動回路304,θ方向モータ駆動回路306、ヘッド駆動回路121、インク滴モニタ装置190、基板搬送ロボット200、エラーや各部の状態などを表示する表示部を有し、X方向、Y方向の印画ピッチなどを設定する操作入力手段301などが電気的に接続されている。
ROM311には、各種データや印画装置の各部の動作に関する各種制御プログラムや制御データなどが格納されている。各種データには、ヘッド交換すべき印画ノズル列mのカウント値Mや、印画ノズル列mをカウントアップすべき所定の印画枚数の値などが記憶されている。
RAM309は、画像形成装置に電力が供給されている間だけ入力されたデータを複数記憶可能であり、基板上への印画を行うための印画データ等の各種データを記憶する記憶領域とCPU310による作業領域などが備えられている。
NVRAM312は、バックアップ電源により、画像形成装置の電源が切断されても、情報の記憶ができるように構成されており、前述の印画ノズル列mのカウント値や、印画枚数のカウント値などが記憶される。
CPU310は、ROM311に格納されている各種プログラムの中から指定されたプログラムを、RAM309内の作業領域に展開し、各入力手段からの入力信号に応じて、プログラムに従った各種処理を実行する。
図1の印画装置の1サイクル駆動の動作の流れの一例について、図10のフローチャートを用いて説明する。ここでは、所定の1つの印画ピッチに対して、印画を行う場合を例に挙げて説明する。
開始時には、印画装置の電源がONされていて、ヘッドは、未使用の新しいヘッドがセットされているものとする。また制御部300の印画枚数カウント手段のカウント値は0に設定されている。
ステップS100では、操作入力手段301からX方向、Y方向の印画ピッチが入力される。
ステップS101では、制御部300は、X方向の印画ピッチから、ヘッド角度θとノズルピッチ(NP)の算出を行い、θ方向モータによりヘッド角度を調整する。ノズルピッチは、1サイクル駆動なので、基本的には3個おきのノズル、即ち、1グループに属するノズルを選択する。即ち、ノズルピッチはNP=3Pとなる。
ステップS102では、基板搬送ロボット200により基板がセットされる。
ステップS103では、印画ノズル列カウント手段のカウント値m=1に設定される。
印画ノズル列として、m=1に相当するAグループのノズル列が設定される。
ステップS104では、印画ノズル列として、印画ノズル列カウント手段のカウント値mに相当するグループのノズル列が選択される。
ステップS105では、印画ノズル列mの値が、ヘッド交換に必要な値Mに達したかどうかを判断する。到達していれば(ステップS105でYES)、ステップS106の処理が実行され、到達していなければ(ステップS105でNO)、ステップS107の処理が実行される。なお、ここでは、A,B,Cの3つのグループの印画ノズル列があり、mの最大値は3なので、M=4に設定されている。
ステップS106では、制御部300は、操作入力手段301の表示部にヘッド交換が必要であることを表示してユーザーに指示し、ヘッド交換させる。また、交換後は、S103の処理が実行され、印画ノズル列m=1となる。
ステップS107では、インク滴モニタ装置190により、印画ノズル列カウント手段のカウント値mに相当するm番目のグループのノズル列の吐出検知を行う。m=1ならAグループの、m=2ならBグループの、m=3ならCグループのノズル列が選択され、吐出検知を行う。
ステップS108では、制御手段300は、インク滴モニタ装置190からの情報により、1つのノズルでもノズル欠(不吐出)が有れば(ステップS108でYES)、ステップS114の処理が実行され、すべてのノズルのノズル欠がなければ(ステップS108でNO)、ステップS109の処理が実行される。
ステップS109では、RAM309に入力されている印画データに従って、1枚分の印画が実行される。制御手段300は、印画枚数カウント手段のカウント値を1だけカウントアップさせる。
ステップS110では、制御手段300は、印画を終了してもよいかどうかを判断する。終了であれば(ステップS110でYES)、ステップS111の処理が実行され、終了でなく、印画継続であれば(ステップS110でNO)、ステップS112の処理が実行される。
ステップS111では、印画動作は終了となり待機状態あるいは電源切断された状態に入る。その時点での印画ノズル列mのカウント値や印画枚数カウント値は、NVRAMに記憶される。再度印画動作を開始するときは、この記憶データをアップロードして、この値に基づいて印画が開始される。
ステップS112では、基板搬送ロボット200により次基板がセットされる。
ステップS113では、制御手段300は、印画枚数カウント手段のカウント値が、印画ノズル列mのカウント値をカウントアップさせるべく所定の印画枚数に到達したかどうかを判断する。到達していれば(ステップS113でYES)、印画枚数カウント手段のカウント値を0にリセットしてステップS114の処理が実行され、到達していなければ(ステップS113でNO)、ステップS107の処理が実行される。
ステップS114では、制御手段300は、m=m+1として、印画ノズル列カウント手段のmを1だけカウントアップさせた後、ステップS104の処理を実行させる。
上記フローにおいては、ノズル列を、3個のノズルおきにノズルを選択して1つのグループとして、複数のグループに分割し、いずれか1つのグループに属するノズルを印画ノズル列として使用するノズルピッチ調整手段と前記印画ノズル列の前記移動方向に対する角度を調整するための角度調整手段により、印画ピッチに応じて、ノズルピッチを調整すべく1つのグループを選択し、さらに角度を調整すると共に、前記印画ノズル列のノズルにノズル欠などの不具合が生じたときに、あるいは、所定の印画枚数に達したときに、順次に他のグループに属するノズルを印画ノズル列として使用することしている。
このことにより、1つのインクジェットヘッドで、ユーザーの仕様に応じた印画ピッチの異なる複数種類の印画パターンの印画に対応可能となるとともに、前記1つのグループを印画ノズル列として使用し、このグループに属するノズルに不吐出が生じた時に、ヘッドを交換することなく、別のグループを印画ノズル列として選択し印画を継続できる。このことにより、ヘッド交換の回数を減らして稼働率の高い印画作業ができると共に、高い信頼性、高スループットが実現できる。
特に、本実施形態で用いたような隣接したインク流路間の隔壁の少なくとも一部がせん断モードで変形する圧電材料で構成されたせん断モード型のインクジェットヘッドの場合、1つのグループを印画ノズル列として使用することにより、ヘッドを高周波で駆動するができる。
また、前述のように、前記スタガー配列の前記移動方向に対する角度θ’が、前記印画ノズル列の前記移動方向に対する角度θと一致していることが好ましい。このことにより、前記1つのグループを印画ノズル列として使用し、このグループに属するノズルに不吐出が生じた時に、別のグループを印画ノズル列として選択し印画を継続する場合に、X方向の吐出タイミングを調整するだけで良く、Y方向のタイミング調整が不要になる。
さらに、1サイクル駆動でない場合は、上記フローにおいて、印画ピッチに応じて、随時、ノズルを何個おきに選択するか(Nの値)及び印画ノズル列の移動方向に対する角度θを調整するようにしても良い。また、1サイクル駆動においても、ノズルピッチは、3の倍数で有れば、選択可能であり、印画ピッチが粗い場合は、1グループ内で、例えば6個おきのノズルや9個おきのノズルを選択することも可能である。