JP2007050417A - 鋼板の熱間圧延設備及び鋼板の熱間圧延方法 - Google Patents

鋼板の熱間圧延設備及び鋼板の熱間圧延方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 自然放冷のための待機時間をなくし、また、空きスペースが限られた既存の設備に適用可能であり、しかも冷却による温度降下幅を細かく制御することが可能な鋼板の熱間圧延設備を提供する。
【解決手段】 鋼板5の搬送方向に沿って複数の圧延スタンドが順次設置されてなる仕上げ圧延装置を少なくとも備えた鋼板の熱間圧延設備において、仕上げ圧延装置の第1圧延スタンドF1手前に鋼板冷却用の冷却水噴射ノズル群3が備えられ、冷却水噴射ノズル群3による鋼板冷却時の単位長さ当たりの温度降下幅が0K/m〜140K/mの範囲で自在にかつ幅方向に均一に制御可能とされていることを特徴とする熱間圧延設備を採用する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、鋼板の熱間圧延設備及び鋼板の熱間圧延方法に関するものであり、特に、生産効率を向上させ得る鋼板の熱間圧延設備及び熱間圧延方法に関する。
一般に鋼板の熱間圧延設備は、加熱炉と粗圧延装置と仕上げ圧延装置とが、鋼板の移動方向に沿って1列に配列されて概略構成されている。仕上げ圧延装置は、複数の圧延スタンドが直列に配列されて構成されている。鋳造設備から供給された鋼スラブは、圧延を容易にするために、例えば加熱炉によって1200℃程度に加熱されてから粗圧延装置に供給され、粗圧延装置によって厚さ30〜50mm程度の粗圧延鋼板に加工される。その後、クロップシャー処理、デスケーリング処理、を経て仕上げ圧延装置に送られる。仕上げ圧延装置の手前における粗圧延鋼板の表面温度は、鋼板の種類や加熱炉の温度設定にもよるが、例えば1100℃ないし1150℃程度になる。
仕上げ圧延前における粗圧延鋼板の温度が上記のように1100℃ないし1150℃程度であると、仕上げ圧延装置の第1圧延スタンドにおける圧延加工に伴う加工発熱が加わって更に鋼板温度が上昇し、これにより鋼板表面にスケールが発生し、このスケールが後段の圧延スタンドに噛み込まれる際にスケール痕を生じさせる可能性がある。従って、スケール痕の発生防止のために、少なくとも仕上げ圧延装置の第1圧延スタンド手前または第2圧延スタンド手前において、鋼板の温度を例えば1000℃〜1050℃以下に調整する必要がある。
そこで従来は、仕上げ圧延装置の手前で粗圧延鋼板の搬送を一旦停めることによって鋼板を自然放冷させ、鋼板の表面温度が1000℃〜1050℃程度になるのを待ってから鋼板を仕上げ圧延装置に搬送していた。
しかし、自然放冷のために鋼板の搬送を停止させると、熱間圧延設備の稼働率が低下してしまい、生産能力の向上が図れないという問題が生じる。熱間圧延設備の稼働率向上のためには、仕上げ圧延前において鋼板の温度を強制的に100℃程度降下させて、鋼板の停止時間を少なくする必要がある。
鋼板の温度を強制的に降下させるには、仕上げ圧延装置の手前に冷却装置を配置させる必要がある。
しかし、現実には、仕上げ圧延装置の手前には、デスケーリング装置、表面温度計、エッジャー装置、クロップシャー装置等の設備が既に配置されており、冷却装置を設置しようにも、鋼板の移動方向に沿った長さで例えば2000mm程度の空きスペースしか確保できないという事情が有る。
そこで、特許文献1(特開昭51−86050号公報)には、仕上げ圧延装置の上流側にある粗圧延装置の最終スタンド若しくは最終スタンドから1台前のスタンドの手前に強制水冷装置を設けることによって、最終粗圧延段階に導入させる前の鋼板を50〜100℃の範囲で温度低下させる技術が開示されている。
しかし、特許文献1の記載によれば、60〜70℃程度の温度低下を達成させるためには、鋼板の上側から水量密度1500(m/時)の冷却水を、また鋼板の下側から水量密度500(m/時)の冷却水を大量供給する必要があるとされている。このため、仮に100℃程度の幅で温度降下を達成しようとすれば、最大で2000(m/時)を超える膨大な量の冷却水が必要となり、冷却装置及びその付帯設備が大がかりなものになってしまう問題があった。
また、特許文献2(特開2003−94101号公報)には、タンデムに配置された複数の圧延スタンドで圧延を行いつつ、後段の2以上の圧延スタンドの出口側において、カーテンウォール型冷却手段によって冷却を行う技術が開示されている。
この特許文献2に記載された技術によれば、カーテンウォール型冷却手段を用いるために冷却能力は十分に確保できるが、上述したように仕上げ圧延装置における空きスペースの問題から、特に仕上げ圧延装置の手前にはカーテンウォール型冷却手段を設置できないという問題がある。また、カーテンウォール型冷却手段は一般に、長尺なスリット状のノズルから冷却水をカーテンの如く噴射させるものであるため、水量の細やかな制御が難しいという特性があり、冷却能力の調整ができず、鋼板を必要以上に冷却してしまう問題がある。すなわち、鋼板の種類によっては、粗圧延装置の最終圧延スタンドの出口側において、鋼板温度が比較的低くなっている場合があり、このような鋼板に対して冷却能力が調整が効かない冷却手段を用いた場合には、鋼板温度をAr3点以下の温度まで低下させてしまい、鋼板の組織中にフェライト組織を生じさせてしまう場合がある。
また、鋼板は圧延によってその長さが次第に長くなり、これにより鋼板の最先部と最後部の間で放冷時間の差によって温度差が生じる場合があり、こうした場合に鋼板全体に対して一律の冷却条件で冷却すると、鋼板最先部の冷却が不十分になったり、鋼板最後部の冷却が過剰になったりする問題があった。
要するに、特許文献2に記載の技術は、一律の冷却能力が要求される圧延設備には好適だが、一つの圧延設備で他品種の圧延鋼板を製造したり、温度分布のある鋼板を圧延しようとすると、冷却能力の調整が難しく、鋼板温度を適宜調整できないという問題があった。
特許文献3(特公昭60−48241号公報)には、仕上げ圧延前で40〜50℃下げる技術が記載されているが、この特許文献3では、冷却温度を自在に可変することは記載されていない。また、冷却は鋼板の中央部のみ行うと記載されている。
また、従来から、仕上げ圧延の前にはスケールブレーカー(FSB)が設置されている例が多い。この場合には、FSBで表面温度は一時的に100℃程度低下する。しかし、FSBは本来、スケールを除去する目的で設置されており、冷却温度を自在に可変することは出来ないので本発明の目的の為には使用できない。このFSBの長さは3m〜5m程度の長さを有しているので、単位長さ当たりの温度降下幅は高々33K/m程度で固定されている。
一方、従来から様々な鋼板の冷却装置が提案されている。
例えば、特許文献4(特開2001−240915号公報)には、鋼板上に複数の冷却ノズルを配置し、各冷却ノズルから棒状の水噴流を噴射させて鋼板を冷却する技術が開示されている。この特許文献4に記載の技術によれば、鋼板上における棒状の水噴流の噴流衝突領域が相互に離間しており、鋼板に対する噴流衝突領域の面積率が数%程度と低くなっている。またこの特許文献4に記載の技術は、仕上げ圧延後という記載から、表面温度900℃以下の鋼板に適用されるものであり、仕上げ圧延前の1000℃程度の高温の鋼板に適用されるものではない。1000℃程度の鋼板に対し,本技術を適用して棒状の水噴流を噴射させると、鋼板上の水噴流の衝突領域では水が直接鋼板に当たって効率よく冷却が行なわれるものの、衝突領域の周辺では水流が鋼板表面に沿って流れるため、950℃以上の高温鋼板を冷却する際には水流と鋼板との境界で水の蒸発による蒸気膜が発生し、この蒸気膜の影響によって効率よく冷却が行なわれなくなる。このように、特許文献4に記載の技術を高温の鋼板に適用しても、冷却能力を高めることができない問題があった。
仕上げ圧延前の高温の鋼板に対して特許文献4に記載の技術を適用するためには、冷却能力を補うために冷却ノズルを何台も設置する必要が生じるが、上述のように粗圧延装置と仕上げ圧延装置の間のスペースが限られているので、設置台数が制限され、結果的に冷却能力が不足してしまう。
更に、仕上げ圧延後では板厚が3mm程度以下と、粗圧延後の鋼板(厚みが20mm〜80mm)に比べて格段に薄いために冷却しやすい。また、仕上げ圧延後の温度は900℃以下と、粗圧延後で仕上げ圧延前(1000℃程度以上)に比べて低い為に、大きい冷却速度も確保しやすい。
しかし、粗圧延後で仕上げ圧延前の鋼板は、上記の様に厚みが大きく、温度も高い為に大きい冷却速度を確保することが困難だった。
したがって、従来の技術では、仕上げ圧延前で、表面温度が1000℃程度以上で、粗圧延後の厚みが20mm〜80mmの鋼板を、単位長さ当たりの温度降下幅が全幅に亘って均一に0K/m〜140K/mで自在に冷却を制御することは可能でなかった。
特開昭51−86050号公報 特開2003−94101号公報 特公昭60−48241号公報 特開2001−240915号公報
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、自然放冷のための待機時間をなくし、また、空きスペースが限られた既存の設備に適用可能であり、しかも冷却による温度降下幅を細かく制御することが可能な鋼板の熱間圧延設備及び鋼板の熱間圧延方法を提供することを目的とする。
ここで、仕上げ圧延機前の空きスペースとは、多くても圧延方向に2000mm以内のスペースであり、更に限られた場合には500mm以内のスペースのことを言う。
上記の目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
本発明の鋼板の熱間圧延設備は、鋼板の搬送方向に沿って複数の圧延スタンドが順次設置されてなる仕上げ圧延装置を少なくとも備えた鋼板の熱間圧延設備において、前記仕上げ圧延装置の第1圧延スタンドの手前に鋼板冷却用の冷却水噴射ノズル群が備えられ、前記冷却水噴射ノズル群による前記鋼板冷却時の単位長さ当たりの温度降下幅が鋼板の全幅に亘って均一に0K/m〜140K/mの範囲で自在に制御可能とされていることを特徴とする。
また、冷却水噴射ノズル群が設置されているスペースの圧延方向の長さが2000mm以下であることが好ましい。
また、本発明の鋼板の熱間圧延設備においては、冷却水噴射ノズル群が、前記鋼板の搬送方向及び前記鋼板の幅方向のそれぞれに沿って配列された複数のフルコーン型スプレーノズルからなり、前記スプレーノズルから各々略充錐体形状の水噴流を噴射させ、前記各水噴流の噴流衝突領域が鋼板の幅方向に沿って少なくとも相互に連続するとともに鋼板の幅方向に対する傾斜方向に沿って少なくとも相互に連続するように配列された複数のフルコーン型スプレーノズルからなることが好ましい。
また、本発明の鋼板の熱間圧延設備においては、前記鋼板が、前記冷却水噴射ノズル群から前記第1圧延スタンドに搬送されるまでの間に、2秒以上の搬送時間が確保されるように、前記冷却水噴射ノズル群と前記第1圧延スタンドとが離間されていることが好ましい。
上記構成の熱間圧延設備によれば、第1圧延スタンドの手前に、冷却水噴射ノズル群を配置して鋼板を強制的に冷却するので、仕上げ圧延装置(第1圧延スタンド)の手前で鋼板の搬送を停止させて自然放冷を行なう必要がなく、自然放冷のための待機時間をなくすことが可能になる。
また、上記の熱間圧延設備によれば、第1圧延スタンド手前に、冷却水噴射ノズル群を配置するので、空きスペースが限られた既存の熱間圧延設備に対しても冷却水噴射ノズルを後から付加させることができ、既存の設備にも好適に適用することが可能となる。
更に、前記冷却水噴射ノズル群による前記鋼板冷却時の単位長さ当たりの温度降下幅が全幅に亘って均一に0K/m〜140K/mの範囲で自在に制御可能とされているので、鋼板温度や圧延条件等に合わせて鋼板の温度を制御することが可能になり、鋼板の品質の向上が図られる。
また、冷却水噴射ノズル群が、複数のフルコーン型スプレーノズルから構成されるので、カーテンウォール型の冷却装置等に比べて、設置面積が小さくなるとともに高い冷却能力を確保することができ、空きスペースの少ない既存の設備にも好適に適用することができる。
また、冷却水噴射ノズル群を構成する複数のフルコーン型スプレーノズルの作動状態を個別に制御することによって、前記冷却水噴射ノズル群による前記鋼板冷却時の単位長さ当たりの温度降下幅が全幅に亘って均一に0K/m〜140K/mの範囲で自在にすることが可能になる。
更に、鋼板に2秒以上の搬送時間が確保されるように冷却水噴射ノズル群と第1圧延スタンドとが離間されるので、第1圧延スタンドによる圧延の前に、冷却水噴射ノズル群によって冷やされた鋼板の表面温度が、2秒以上の搬送時間の間に鋼板内部の熱によって回復され、これにより鋼板全体の温度が均一になった状態で第1圧延スタンドで圧延されることになり、不具合の発生を防止できる。また、仮に鋼板の表面温度がAr3点以下に下がったとしても、2秒間の搬送時間を確保することによって鋼板表面の温度がAr3点以上に回復し、これにより鋼板内部におけるフェライト相の発生が防止され、鋼板の品質をより高めることができる。
次に、本発明の鋼板の熱間圧延方法は、鋼板の搬送方向に沿って順次設置された複数の圧延スタンドからなる仕上げ圧延装置を少なくとも備えた熱間圧延設備による鋼板の熱間圧延方法であって、前記仕上げ圧延装置の第1圧延スタンドの手前に鋼板冷却用の冷却水噴射ノズル群を配置し、前記冷却水噴射ノズル群によって前記鋼板を冷却する際に、前記鋼板冷却時の単位長さ当たりの温度降下幅が全幅に亘って均一に0K/m〜140K/mの範囲で自在に制御しながら冷却することを特徴とする。
また、本発明の鋼板の熱間圧延方法においては、前記鋼板が、前記冷却水噴射ノズル群から前記第1圧延スタンドに搬送されるまでの間に、2秒以上の搬送時間を設けることが好ましい。
上記構成の熱間圧延方法によれば、第1圧延スタンドの手前に、冷却水噴射ノズル群を配置して鋼板を強制的に冷却するので、仕上げ圧延装置(第1圧延スタンド)の手前で鋼板の搬送を停止させて自然放冷を行なう必要がなく、自然放冷のための待機時間をなくすことが可能になる。
また、上記の熱間圧延方法は、第1圧延スタンドの手前に、冷却水噴射ノズル群を配置することで実現できるので、空きスペースが限られた既存の熱間圧延設備に対しても好適に適用することが可能となる。
更に、冷却水噴射ノズル群による鋼板冷却時の単位長さ当たりの温度降下幅が全幅に亘って均一に0K/m〜140K/mの範囲で自在に制御可能なので、鋼板温度や圧延条件等に合わせて鋼板の温度を制御することが可能になり、鋼板の品質の向上が図られる。
本発明によれば、自然放冷のための待機時間をなくすことが可能になり、熱間圧延鋼板の生産性を大幅に高めることができる。
また、本発明によれば、空きスペースが限られた既存の設備に対しても適用することができる。
更に、本発明によれば、鋼板の品種や圧延条件によって冷却による温度降下幅を細かく制御することができ、鋼板の過冷却を防止して熱間圧延鋼板の品質を高めることができる。
更にまた、本発明によれば、冷却水噴射ノズル群によって鋼板を冷却することで、仕上げ圧延工程の段階で鋼板温度を精密に調整することが可能となり、これにより、仕上げ圧延工程後の圧延鋼板の温度調整を精度良く行うことができる。即ち、本発明によれば、仕上げ圧延工程における鋼板温度ばかりでなく、仕上げ圧延工程後における鋼板温度をも精密に制御することが可能になる。
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。なお、以下の説明において参照する図は、本発明に係る鋼板の熱間圧延設備の構成等を説明するためのものであり、図示される各部の大きさや厚さや寸法等は、実際の熱間圧延設備の寸法関係とは異なる場合がある。
本発明は、圧延鋼板または厚みが20〜150mm程度の厚鋼板(以下、鋼板と総称する)を冷却対象とし、冷却水噴射ノズル群を熱間圧延設備に組み込み、鋼板の上面側と下面側に対して当該冷却水噴射ノズル群からの水(例えば、水、または水と空気の混合体などの冷却媒体で、本発明では「水」という)噴流によって冷却を行なう場合に適用されるものである。
図1には本実施形態の鋼板の熱間圧延設備(以下、圧延設備と表記する。)の一例を示す。この圧延設備は、図1に示すように、粗圧延装置1と、仕上げ圧延装置2と、本発明に係る冷却水噴射ノズル群3とから概略構成されている。粗圧延装置1の上流側には図示略の加熱抽出炉が備えられており、この加熱抽出炉によって圧延前の鋼スラブを1200℃ないし1250℃程度に加熱できるようになっている。この加熱によって鋼スラブが圧延されやすくなるとともに、狭幅処理における疵の発生が防止される。粗圧延装置1は、複数の粗圧延ロールが鋼板5の移動方向に沿って一列に配列されて構成されている。なお、図1には粗圧延装置の最終粗圧延ロール1aのみを示している。この粗圧延装置1によって、圧延前の鋼スラブが20〜80mm程度の厚みになるまで圧延される。
粗圧延装置1の下流側には、図示しないデスケーリング装置、エッジャー装置、クロップシャー装置、鋼板の表面温度計等が配置されている。
冷却水噴射ノズル群3は仕上げ圧延装置2の手前に設置されるが、その位置は、圧延前の鋼スラブの搬送速度がなるべく低下する場所に設置することが望ましい。搬送速度が遅ければ、同じ冷却時の熱伝達係数を用いても、単位時間当たりおよび単位長さ当たりの冷却量が大きくなる為である。この為には、仕上げ圧延機前に設置されているデスケーリング装置の近傍が最適であり、通板速度は40mpm〜80mpm(最大100mpm程度)になる。ちなみに、粗圧延直後の通板速度は250mpm〜300mpm程度である。
しかし、仕上げ圧延機前には、デスケーリング装置、エッジャー装置、クロップシャー装置、鋼板の表面温度計等が配置されているので、冷却装置のために割くことのスペース(圧延方向の長さ)は非常に限られている。このスペースは、本発明の実施の態様では高々500mm程度であり、他の仕上げ圧延前の装置の再配列をしても、高々2000mm程度であると推定される。
尚、図1では粗圧延と仕上げ圧延による板厚の変化は図示していない。
また、図1には、仕上げ圧延装置2の一部を示している。仕上げ圧延装置2は、第1圧延スタンドF1及び第2圧延スタンドF2を含む複数の圧延スタンドが鋼板5の搬送方向に沿って一列に配列されて構成されている。図1には、第1圧延スタンドF1の圧延ローラ2aと第2圧延スタンドF2の圧延ローラ2bを示している。
更に、仕上げ圧延装置2の下流側には、熱間圧延鋼板を巻き取るための図示しない巻取装置が配置されている。
次に図1に示すように、第1圧延スタンドF1の直前には、本発明に係る冷却水噴射ノズル群3が設置されている。この冷却水噴射ノズル群3は、厚さが20〜80mm程度であって表面温度が1000℃〜1250℃程度の鋼板の温度を、最大70K程度の温度降下幅で降下させることが可能な能力を備えたものである。
図1に示すように、冷却水噴射ノズル群3は、鋼板5の上面5a側及び下面5b側にそれぞれ設置された複数のスプレーノズル3b…から構成されている。スプレーノズル3bは、充錐体状の水噴流を噴射可能なものであり、図1に示すように鋼板5の上面5a側及び下面5b側にそれぞれ設置されたノズルボックス3a、3aに組み込まれている。各ノズルボックス3a、3aにおいては、スプレーノズル3b…が鋼板5の移動方向及び幅方向に沿って4列ずつ配置され、合計で16基のスプレーノズル3b…が設置されている。ノズルボックス3aは鋼板5の上下にそれぞれ設置されているので、第1冷却水噴射ノズル群3全体では32基のスプレーノズル3bが設置されている。そして、各スプレーノズル3bから充錐状の水噴流を鋼板5の上面5a及び下面5bにそれぞれ噴射させて鋼板5を冷却できるようになっている。
また、各ノズルボックス3a、3aは、第1圧延スタンドF1手前にある鋼板5のガイドローラ11a、11bの間に設置されている。このガイドローラ11a、11b間の間隔は1500mm程度とされている。各ノズルボックス3aに組み込まれたスプレーノズル3bは、各ノズルボックス3aをガイドローラ11a、11b間に収めるために、鋼板の搬送方向に沿って稠密に配置されている。
冷却水噴射ノズル群3を構成するスプレーノズル3bは、図2に示すように、水噴流が円錐形状となるフルコーン型スプレーノズルであっても良く(図2A)、水噴流が楕円錐形状となる楕円型スプレーノズルであっても良く(図2B)、水噴流が長円錐形状となる長円型スプレーノズルであっても良く(図2C)、これら図2Aないし図2Cに示すスプレーノズルが混在していても良い。
そして、冷却水噴射ノズル群3は、図示略の制御手段によって作動条件が制御されている。すなわち、冷却水噴射ノズル群3を構成するスプレーノズル3b毎に冷却水の噴射を行なったり行なわなかったり、冷却水の水量密度をスプレーノズル3b毎に制御できるようになっている。
このような構成によって、冷却水噴射ノズル群3は各スプレーノズル3b単位で制御することが可能であり、これにより鋼板5の単位長さ当たりの温度降下幅を0K/m〜140K/mの範囲、冷却水噴射ノズル群全体での温度降下を0K〜70K(好ましくは0〜50Kの範囲)で段階的に制御できるようになっている。
従って、図3に示すように、例えば、冷却水噴射ノズル群3を構成するスプレーノズルのうち、鋼板の搬送方向一列目のスプレーノズルのみを作動させることで、鋼板の温度降下幅を最大12.5K(100K/m)にすることが可能になっている。同様に、一列目と二列目のスプレーノズルを作動させることで、鋼板の温度降下幅を最大25.0K(100K/m)にすることが可能になっている。また、一列目から三列目までのスプレーノズルを同時に作動させることで、温度降下幅を最大37.5K(100K/m)にすることが可能になっている。そして、一列目から四列目までの全てのスプレーノズルを同時に作動させることで温度降下幅を50K(100K/m)にすることが可能になっている。このように、本実施形態の冷却水噴射ノズル群3によれば、鋼板の温度降下幅を12.5K刻みで50Kまで制御することが可能になっている。
更に、水量密度等の作動条件を細かく制御することによって、数K/m刻みで温度降下幅を制御することも可能になっている。
以上の構成によって、冷却水噴射ノズル群3は全体として、鋼板の表面温度を温度降下幅0K〜50Kの範囲(水量の調整などに因っては0〜70Kの範囲)で自在に制御可能とされている。
なお、冷却水噴射ノズル群3のノズルボックス3aと、第1圧延スタンドF1との間の距離は、鋼板が搬送された際に2秒以上の搬送時間を確保できる程度に離間させておくことが望ましい。第1ノズルボックス3aからの水噴流によって冷却された鋼板に対して2秒以上の搬送時間を確保させることで、一旦冷やされた鋼板の表面温度が鋼板内部の熱によってある程度回復され、第1圧延スタンドF1による圧延の際に鋼板温度が下がりすぎず、圧延を効率よく行なうことが可能になる。特に、冷却によって鋼板温度がAr3点以下に低下した場合でも、2秒以上の搬送時間を確保することでAr3点以上の温度に回復させて圧延を行なわせることができ、鋼板組織中にフェライト相が析出するおそれがなく、鋼板の品質の低下が防止される。
以下、従来技術では解消されなかった問題点を指摘しつつ、冷却水噴射ノズル群3を上記のように設置した場合の効果を説明する。
仕上げ圧延工程における鋼板温度を例えば1000℃〜1050℃より低くにするには、第1圧延スタンドF1前において鋼板の温度降下幅を例えば0〜70K(好ましくは0〜50Kの範囲)に自在に調整することが可能な能力を備えた冷却設備が必要になる。しかし、従来の技術を適用しようとすると、このような性能を有する冷却設備は比較的広い設置スペースを必要とするため、第1圧延スタンドF1前に十分なスペースが確保できないような既存の熱間圧延設備への設置は不可能な状況であった。
しかし、本発明者らは、上述のように、第1、第2圧延スタンドF1の手前の限られたスペースに、鋼板5の単位長さ当たりの温度降下幅を0K/m〜140K/mの範囲、冷却水噴射ノズル群全体での温度降下を0K〜70K(好ましくは0K〜50Kの範囲)の冷却水噴射ノズル群を設置することで、仕上げ圧延スタンドにおける鋼板表面温度を1000℃〜1050℃程度にできることを見いだしたのである。
すなわち、第1圧延スタンドF1の手前は、極めて空きスペースが少ないため、設置面積が小さくしかも温度降下幅が比較的大きな冷却能力のある冷却水噴射ノズル群3を設置することで、仕上げ圧延スタンドにおける鋼板温度を例えば1000℃〜1050℃程度にすることが可能になる。第2圧延スタンドF2手前で鋼板温度を1000℃〜1050℃程度にできれば、第2圧延スタンドF2より後段の圧延スタンドにおいて鋼板温度が1000℃を越えることがなく、スケール痕の問題を回避できる。
また、冷却水噴射ノズル群3を第1圧延スタンドF1の手前に設置する他の利点は、第1圧延スタンドF1手前における鋼板の厚みが20mm〜80mm程度と比較的厚いため、大量の冷却水を鋼板に噴射させた場合でも鋼板が水の噴射圧力で変形するおそれがなく、通板性を確保できることにある。第1圧延スタンドF1よりも後段では、鋼板の圧下が進んで鋼板厚みが比較的薄くなり、大量の冷却水の噴射によって鋼板自体が変形して通板性が低下するおそれがあるが、冷却水噴射ノズル群3を第1圧延スタンドF1の手前に設置することでこの問題も回避できる。
これにより、例えば、20mpmから100mpmでのF1前の鋼板の通過速度において例えば、500mm程度の限られたスペースに設置された冷却水噴射ノズル群を用いて、幅方向に亘って、冷却水噴射ノズル群全体での温度降下幅を±5℃程度のバラツキで鋼板を冷却することが可能である。ただし、従来から鋼板の最エッジは50℃程度温度が低下することがある、この部分は冷却水が掛からない様にエッジマスクをする必要がある場合がある。
また、冷却水噴射ノズル群3を第1圧延スタンドF1の手前に設置する更なる利点は、第1圧延スタンドF1手前において鋼板の搬送速度が変化した場合でも、各スプレーノズル3bの冷却水の噴射状態を制御して鋼板の温度降下幅を制御できる点にある。
すなわち、鋼板の熱間圧延工程においては、最終的に鋼板の長さが50m〜2500m程度になるため、鋼板の最後部が仕上げ圧延装置の第1圧延スタンドF1に到達する前に、鋼板の最先部が仕上げ圧延装置の先の巻取装置に到達する場合がある。鋼板の最先部が巻取装置に到達すると、鋼板の搬送速度を一旦落として鋼板の最先部を確実に巻取装置に巻き取らせ、その後、搬送速度を上げて高速で巻き取らせている。このような速度制御を行なうと、第1圧延スタンドF1を通過する鋼板の搬送速度も当然に変化する。更に加えて、熱間圧延工程における鋼板温度は、最先部よりも最後部の温度が次第に低下する傾向にある。
以上のことから、鋼板の最先部に対する冷却条件と同じ条件で鋼板の最後部に対して冷却を行なうと、冷却能力が過剰になって鋼板温度が例えばAr3点以下になり、組織中にフェライト相が析出する等の問題が生じる。
そこで、冷却水噴射ノズル群3を設置して鋼板の鋼板5の単位長さ当たりの温度降下幅を最大140K/m程度の範囲で任意に制御可能とすることで、鋼板の搬送速度及び鋼板の温度に合わせて冷却制御を細かく設定することが可能になり、最終製品である熱間圧延鋼板の品質を高めることができる。
また、冷却水噴射ノズル群3を第1圧延スタンドF1の手前に設置する更なる利点は、仕上げ同期速度領域以後の、クロップシャー装置よりも搬送方向下流側に冷却水噴射ノズル群3を設置できる点である。すなわち、粗圧延装置によって圧延された粗圧延鋼板の表面にはスケールが発生しており、このスケールは粗圧延装置の後段に配置されたデスケーリング装置によって剥離されるが、この剥離の時点では鋼板の表面温度が高いために、スケール剥離の数秒後に二次スケールが発生するおそれがある。
このため、クロップシャー装置よりも搬送方向下流側に冷却水噴射ノズル群3を設置することで、デスケーリング装置から数秒以内に鋼板を冷却することが可能となり、二次スケールの発生を防止することが可能になる。
また、冷却水噴射ノズル群3を第1圧延スタンドF1の手前に設置することで、粗圧延装置の内部に冷却ノズルを分散して配置する場合と比べて、冷却水の送水設備の構成を簡素化することができる。
また、第1圧延スタンドF1手前においては、鋼板の搬送速度の変動が比較的小さいので、鋼板の搬送速度に対する冷却制御を比較的単純なものとすることができる。
一方、第1圧延スタンドF1手前のスペースの限られた位置に冷却水噴射ノズル群3を設置するためには、設置スペースがコンパクトで高性能な冷却ノズル群が必要となる。また、水の冷却能力は図4に示すように、鋼板の表面温度によって、膜沸騰域、遷移沸騰域、核沸騰域と異なっているが、本発明の冷却対象となる鋼板の温度は1000℃以上と膜沸騰域に相当するため、冷却能力を示す熱伝達率が低いという事情が有る。しかしこうした懸念は、以下に説明する構成の冷却水噴射ノズル群を採用することで解消することができる。
図5には、冷却水噴射ノズル群3を構成するスプレーノズル3bの配置例と、そのスプレーノズル3bから鋼板5に向けて噴射された水噴流による噴流衝突領域との関係を平面図で示す。ここで、噴流衝突領域とは、スプレーノズル3bから噴射された充錐体状の水噴流が鋼板5の上面5aまたは下面5bに直接衝突する領域を指す。なお、図5に示す例は、フルコーン型スプレーノズルを使用した例である。
図5に示すように、冷却水噴射ノズル群3を構成するスプレーノズル3bは、鋼板5の幅方向に沿って配列されるとともに鋼板5の幅方向に対する傾斜方向に沿って4列に配列されている。なお、配置列数は設置スペースに応じて変化するものである。図5における鋼板5の幅方向に対する傾斜方向とは、幅方向に対して60°を越えて75°以下の範囲まで傾斜された方向である。各スプレーノズル3bは、鋼板5の幅方向に沿って等間隔に配置されるとともに、幅方向に対する傾斜方向に沿って等間隔に配置されている。このように配列されたスプレーノズルの各中心点を線で結ぶと、図5に示すように略二等辺三角形となる。
上記のように配列されたスプレーノズル3bからの水噴流による噴流衝突領域Mは、図5の点線で示すように、鋼板の幅方向に沿って相互に重なるとともに、鋼板の幅方向に対する傾斜方向に沿って相互に接しているとともに、鋼板の移動方向に沿って相互に稠密に接している。このように噴流衝突領域Mが相互に接したり重なったりするのは、各スプレーノズル3bが所定の間隔をもって配置されるとともに、各スプレーノズル3bによって噴射される水噴流が一定の広がり角を持った充錐体形状であるために、図1に示すように、スプレーノズル3bから鋼板5に至るまでの間に、水噴流が各スプレーノズル3bの間の領域にまで広がるためである。
鋼板5の幅方向に沿う噴流衝突領域Mの重なり幅は、各噴流衝突領域Mの半径の0%を越えて100%以下の範囲とすることが好ましく、0%以上40%以下の範囲がより好ましい。また、噴流衝突領域Mの半径は、水噴流の最大広がり角度とノズル先端から鋼板までの距離で決まるが、60mm以上180mm以下の範囲が良く、80mm以上140mm以下の範囲がより良い。
鋼板5上において噴流衝突領域Mを図5に示すように設定するには、水噴流の最大広がり角度と、スプレーノズル先端から鋼板までの距離との関係を制御すれば良い。
水噴流の最大広がり角度は例えば、10°以上30°以下の範囲に設定することが好ましい。最大広がり角度を10°以上に設定することによって、スプレーノズル同士の間隔を極端に狭める必要がなくなる。また、最大広がり角度を10°以上にすることで、噴流衝突領域が狭くなりすぎず、噴流衝突領域同士を少なくとも接触させることができる。一方、最大広がり角度を30°以下に設定することによって、鋼板5の上面5aまたは下面5bに対する水噴流の垂直方向の速度成分を大きくすることができ、鋼板5に対して水を直接に衝突させる能力が向上し、水と鋼板5との間で効率よく熱交換が行なわれ、熱伝達率が向上させることができる。
また本実施形態においては、スプレーノズル3b先端から鋼板5までの距離を200mm以上700mm以下の範囲に設定することが好ましい。
距離を200mm以上にすることで、ノズル3bの直下に変形された鋼板が送られた場合でもノズル3bと鋼板とが干渉するおそれがない。更に距離を700mm以下に設定することで、ノズル3bが鋼板5の下面5b側に設置された場合であってもノズル3bと鋼板5との距離が離れすぎずに、水噴流を鋼板に確実に衝突させることができる。
また、各スプレーノズル3bによる水噴流の水量密度は2m/m/分以上の範囲で任意の値に設置することが好ましく、8m/m/分以上とすることがより好ましい。水量密度を2m/m/分以上に設定することによって、十分な量の水を鋼板5の一面5aまたは他面5bに供給することができ、水と鋼板5との間で効率よく冷却が行なわれて熱伝達率が向上する。
水量密度の制御は、各スプレーノズル3bに供給する水の供給圧力を制御すれば良い。供給圧力の最適範囲はスプレーノズルの性能によっても異なるが、例えば0.005MPa以上0.5MPaの範囲に設定すれば良い。
このスプレーノズルでの、水量密度の上限値であるが、たとえば水量密度を2倍の16m/m/分にすれば、鋼板5の単位長さ当たりの温度降下幅を140K/mにすることは可能である。
しかし、水量密度を増すと、水噴流が滞留水を貫通して届くだけの水圧などの条件が必要になる。また、幅方向の水の排出性が問題になる。また、水切りを設置しない場合、冷却帯の外に流出した鋼板上の水による不均一冷却が懸念される。これらのことを考慮すると水量密度の上限値は16〜20m/m/分程度である。
図5に示したスプレーノズル3bの配列を採用することで、鋼板5上における複数の噴流衝突領域が、鋼板の移動方向に沿って相互に稠密に接しており、これにより鋼板5に対して連続して水噴流を衝突させることが可能となり、一つの水噴流によって冷却された鋼板5を次の水噴流によって表面温度が上がる前に冷却できるので、熱伝達率を高めることができ、鋼板5に対する冷却能力をより向上させることができる。
また、最大広がり角度が10°以上30°以下の水噴流を噴射させることによって、水噴流における垂直成分を増加させ、これにより鋼板に対して水噴流を効率よく衝突させることが可能になり、冷却を効率よく行うことができる。
また、鋼板5上における水噴流による複数の噴流衝突領域を、鋼板5の幅方向に沿って相互に重ね合わせることによって、冷却後の鋼板5の幅方向の温度のバラツキを小さくすることができる。
高温の鋼板をスプレーノズルからの水噴流によって冷却する際においては、水が高温の鋼板に接したときに膜沸騰状態となり、鋼板を効率よく冷却できない場合がある。例えば、鋼板上面側においては、各スプレーノズルから大量の水噴流を衝突させると、噴流衝突領域では冷却されるが、衝突後に板上水となった冷却水は、この冷却水と鋼板間に発生する水蒸気の存在もあり、冷却に充分寄与しないで排出される懸念がある。また板上水が多い場合には、各スプレーノズルからの水噴流が鋼板表面に充分に到達できず、充分な冷却効率が得られないおそれもある。
上記の現象に対して本実施形態の冷却装置によれば、鋼板表面の一定の領域において水噴流を鋼板表面のほぼ全域に効率的に到達させることにより上記の現象を緩和して、十分な冷却能力を安定確保して冷却効率を高めることができる。すなわち、最大広がり角度が10°以上30°以下の水噴流を噴射させることによって、水噴流における垂直成分を増加させ、これにより鋼板に対して水噴流を効率よく衝突させることが可能になり、冷却を効率よく行うことができる。
また、鋼板に水噴流を噴射させて冷却を行なう場合において、冷却能力の指標となる熱伝達率は前述のように鋼板の表面温度が低いほど高くなる傾向がある。すなわち、鋼板の表面温度が低下した状態で更に水噴流を噴射させれば、冷却能力がより向上する。ところで、950℃かまたはそれ以上に加熱された鋼板は内部エネルギーが大きいため、一つのスプレーノズルで水を噴射させただけでは、表面温度が一時的には低下するものの、鋼板内部の熱によって復熱して膜沸騰領域温度まで上がってしまい、熱伝達率を高くできない場合がある。
このような現象に対して本実施形態の冷却装置によれば、鋼板上における複数の噴流衝突領域が、鋼板の幅方向並びに幅方向に対して、それぞれ相互に接触されているので、噴流衝突領域が鋼板の移動方向に沿って相互に稠密に接する状態になり、これにより鋼板に対して連続して水噴流を衝突させることが可能となり、一つの水噴流によって冷却された鋼板を次の水噴流によって表面温度が上がる前に冷却できるので、熱伝達率を高めることができ、鋼板の冷却能力をより向上させることができる。より具体的には、熱伝達率を6000(W/m・K)以上にすることができる。
噴流衝突領域が幅方向に重なると、冷媒衝突面の法線方向の噴射速度分布が均一化するので、幅方向に均一な冷却が出来る。しかし、同時にスプレー間に壁を作ることになり、冷却水が幅方向に上手く排出されない。その為に、圧延方向には、冷媒衝突面は接するだけにする。このことにより、その冷媒衝突面の接線を幅方向につなげた線を通って、冷却水が幅方向に排出されるので、幅方向に均一に、かつ、圧延方向には強冷却が出来ることになる。
もしも、圧延方向に、冷媒衝突面が重なったようなスプレー配置をとると、幅方向に冷却水を排出するパスが無くなり、板上水として、水が鋼板上に残るために幅方向に均一に冷却することが難しくなる。
これらのことにより、500mm程度の限られたスペースに設置された冷却水噴射ノズル群を用いて、幅方向に亘って、冷却水噴射ノズル群全体での温度降下幅を±5℃程度のバラツキで鋼板を冷却することが可能である。ただし、従来から鋼板の最エッジは50℃程度温度が低下することがある、この部分は冷却水が掛からない様にエッジマスクをする必要がある場合がある。
次に、本実施形態の熱間圧延設備による熱間圧延方法について説明する。
本実施形態の熱間圧延方法は、第1圧延スタンドF1の手前に配置させた冷却水噴射ノズル群3を用い、鋼板5を冷却する際に、鋼板5の単位長さ当たりの温度降下幅を0K/m〜140K/mの範囲、冷却水噴射ノズル群全体での温度降下を0K〜70Kの範囲(好ましくは0〜50Kの範囲)で自在に制御しながら冷却するというものである。
鋼板の温度降下幅を0K〜70Kの範囲で自在に制御するには、冷却水噴射ノズル群3を構成するスプレーノズル3bの作動条件を制御すれば良い。この制御方法には、次に説明する第1の制御方法と第2の制御方法の2通りがある。
「第1の制御方法」
まず第1ステップとして、熱間圧延設備の加熱抽出炉における加熱抽出温度等に基づいて、仕上げ圧延装置2手前における鋼板の温度を予測する。
すなわち、加熱抽出温度は、鋼の材質、鋼スラブのサイズ、鋼板の製品区分などの条件により定まっている。また、加熱抽出炉から仕上げ圧延装置2の手前までの距離は熱間圧延設備毎に一定である。更に、加熱抽出炉から取り出された鋼スラブ(粗圧延鋼板)が仕上げ圧延装置2の手前まで搬送されるまでに鋼板5が自然放冷されるが、その際の鋼板温度の自然降下幅は経験則からある程度予測可能である。よって本ステップでは、仕上げ圧延装置2の手前における鋼板の温度を、加熱抽出温度、鋼スラブの材質、サイズ、粗圧延工程の条件、鋼板の搬送速度、搬送時間等によって予測する。
次に、第2ステップとして、冷却を行なわない場合の第1、第2圧延スタンドF1、F2における鋼板の温度を時間推移で予測する。
すなわち、鋼板温度の時間推移は、鋼板5が搬送される間に自然放冷によって徐々に低下する一方、第1、第2圧延スタンドF1、F2の圧延時の加工発熱によって上昇するので、本ステップでは、自然放冷による温度降下幅と、加工発熱による温度上昇も経験則からある程度予測することが可能である。
また、第1、第2圧延スタンドF1、F2間を搬送される鋼板の表面温度は、鋼板の長手方向に渡って均一ではなく、鋼板の最先部の温度が鋼板の最後部の温度よりも高い傾向にあり、これを鋼板温度の時間推移を予測する際に考慮する必要が有る。鋼板の最先部の温度が鋼板の最後部の温度よりも高くなるのは、加熱抽出炉から取り出された鋼スラブ(鋼板)が、粗圧延工程を経ることによって搬送方向(圧延方向)の長さが数倍から数十倍の長さまで伸ばされ、鋼板の最先部が仕上げ圧延装置手前に到達してから鋼板の最後部が仕上げ圧延装置に到達するまでに時間差が発生し、この時間差によって鋼板の最後部がより長く自然放冷されて温度降下幅が大きくなるためである。よって、鋼板の最後部に対する冷却条件を、鋼板最先部に対する冷却条件よりも緩和して、鋼板の最後部を過冷却にしない配慮が必要となる。
以上により、本ステップでは、第1、第2圧延スタンドF1、F2における鋼板の温度の時間推移を、搬送速度、搬送時間、圧下率等の粗圧延条件、仕上げ圧延装置手前における鋼板の長手方向の温度分布等から予測する。
次に、第3ステップとして、第2ステップによる鋼板温度の時間推移の予測データから、冷却水噴射ノズル群3による冷却条件を決定する。冷却条件の決定にあたっては、第1ステップで予測した第2圧延スタンド前における鋼板の表面温度を例えば1000℃〜1050℃になるまで冷却すること、鋼板の最先部の温度が鋼板の最後部の温度よりも高くなるので鋼板の最後部に対する冷却条件を最先部に対する冷却条件よりも緩和すること、等を考慮する。
従って、冷却条件は常に一定に設定するのではなく、鋼板温度の時間推移の予測データに対応させて冷却条件を可変にすることが望ましい。すなわち、鋼板5の単位長さ当たりの温度降下幅を0K/m〜140K/mの範囲、冷却水噴射ノズル群全体での温度降下を0K〜70Kの範囲(好ましくは0〜50Kの範囲)で自在に制御しながら冷却するように冷却条件を設定することが望ましい。
冷却条件は例えば、冷却水の水量密度を経過時間によって制御したり、各スプレーノズル3bの作動を制御することにより調整できる。
より具体的に説明すると、スプレーノズルの水量密度を2m/m/分〜16m/m/分の範囲で変化させることにより、鋼板の温度降下幅を0K〜50Kの範囲で直線的に変化させることができるので、この関係を利用して、冷却水の水量密度を経過時間毎に調整して温度降下幅を制御すればよい。
また、各スプレーノズル3bの作動を制御して調整する場合には、鋼板の温度降下幅を12.5Kにするためには、100K/mの単位長さ当たりの温度降下幅を有する一列目のスプレーノズル3bのみを作動させればよく、鋼板の温度降下幅を25.0Kにするためには一列目と100K/mの単位長さ当たりの温度降下幅を有する二列目のスプレーノズル3bを作動させればよい。また、鋼板の温度降下幅を37.5Kにするためには一列目から100K/mの単位長さ当たりの温度降下幅を有する三列目のスプレーノズル3bを同時に作動させればよく、温度降下幅を50Kにするためには一列目から100K/mの単位長さ当たりの温度降下幅を有する4列目のスプレーノズル3bを同時に作動させればよい。
以上のようにして冷却条件を決定して鋼板を冷却することにより、第2圧延スタンドF2手前における鋼板の表面温度を例えば1000℃〜1050℃程度にすることができる。
「第2の制御方法」
まず第1ステップとして、仕上げ圧延装置手前における鋼板の温度を表面温度計で実測する。
次に第2ステップとして、第1の制御方法の第2ステップの場合と同様にして、第1、第2圧延スタンドF1、F2における鋼板の温度の時間推移を、搬送速度、搬送時間、圧下率等の粗圧延条件、仕上げ圧延装置手前における鋼板の長手方向の温度分布等によって予測する。
次に、第3ステップとして、第2ステップによる鋼板温度の時間推移の予測データから、冷却水噴射ノズル群3による冷却条件を決定する。冷却条件の決定にあたっては、第1ステップで測定した第2圧延スタンド前における鋼板の表面温度を例えば1000℃〜1050℃になるまで冷却すること、鋼板の最先部の温度が鋼板の最後部の温度よりも高くなるので鋼板の最後部に対する冷却条件を最先部に対する冷却条件よりも緩和すること、等を考慮する。
よって、冷却条件は常に一定ではなく、鋼板温度の時間推移の予測データに対応させて冷却条件を可変にすることが望ましい。すなわち、鋼板5の単位長さ当たりの温度降下幅を0K/m〜140K/mの範囲、冷却水噴射ノズル群全体での温度降下を0K〜70Kの範囲(好ましくは0〜50Kの範囲)で自在に制御しながら冷却するように冷却条件を設定することが望ましい。
具体的な冷却条件は、第1の制御方法の場合と同様に、冷却水の水量密度を経過時間によって制御したり、スプレーノズル3bの作動を個別に制御することにより調整できる。
以上のように、第2の制御方法においては、仕上げ圧延装置手前における鋼板の温度を表面温度計で実測すること以外は、第1の制御方法の場合と同様にして行なうことができる。
図6は、上記の制御方法を利用した熱間圧延方法の具体例を示す。
図6には、熱間圧延設備の要部の構成模式図を示すとともに、鋼板の表面温度の時間推移を熱間圧延設備の構成に対応させたグラフを示している。
図6中のグラフにおいて、実線は、冷却水噴射ノズル群3の全てのスプレーノズル3bから水を噴射させて冷却を行なった場合の鋼板の実際の表面温度の推移を示す線であり、点線は、冷却を行なわなかった場合の鋼板の表面温度の推移を示す線であって、先の第1または第2の制御方法の第2ステップにおいて予測された線である。鋼板の温度は、接触式温度計でポイント測定するとともに、伝熱計算を用いて温度推移を推定している。
図6のグラフの点線で示すように、冷却を行なわない場合の鋼板の表面温度は、粗圧延装置1から仕上げ圧延装置2の第1圧延スタンドF1に至るまでの間では、粗圧延工程にて鋼板が圧延されたことによる加工発熱の影響で、徐々に鋼板温度が上昇する。次に、第1圧延スタンドF1によって圧延加工されると、圧延ロールの接触によって一旦温度が低下するが、その後、圧延による加工発熱によって鋼板温度が上昇する。この温度上昇は、第1圧延スタンドF1から第2圧延スタンドF2の間でも引き続き起こる。次に、第2圧延スタンドF2によって圧延加工されると、圧延ロールの接触によって一旦温度が低下し、その後、加工発熱によって鋼板温度が再び上昇する。
これに対して図6のグラフの実線で示すように、ノズルボックス3a、3aから水を噴射させて冷却を行なうと、冷却を行なわなかった場合(点線)と比べて、第2圧延スタンドF2直前において鋼板の温度が50K程度降下される。
このように、ノズルボックス3a、3aに備えられた全てのスプレーノズル3bを作動させることによって、第2圧延スタンドF2前における鋼板の温度降下幅を50Kにすることが可能となる。
次に、図7には、ノズルボックス3a(冷却水噴射ノズル群)による冷却後の鋼板の温度変化を示している。図7に示すように、水噴流の衝突時間を過ぎて2秒を過ぎると、特に鋼板の表面温度と表面下1mmの温度が急速に回復するのが判る。これは、上述したように、鋼板内部の熱によって鋼板表面の温度が徐々に回復するためである。従って、ノズルボックス3aによる冷却後から少なくとも2秒の搬送時間を空けて第1圧延スタンドF1によって圧延加工を行なうことにより、鋼板の表面温度が比較的高い状態で圧延することができ、鋼板の品質の悪化を防止できることが裏付けられる。
この2秒の搬送に必要な距離は、F1前のバー速度の最高速度を100mpmとすると、2秒だと3.3m以上の距離である。
また、図8には、仕上げ圧延装置2(第1圧延スタンドF1)手前、第2圧延スタンドF2手前及び仕上げ圧延装置2(最終圧延スタンド)の出口における鋼板の長手方向の表面温度分布を示す。
図8Aの実線で示すように、第1圧延スタンドF1手前においては、鋼板の最先部ほど温度が高く、鋼板の最後部に向かうに従って表面温度が低下しており、最先部と最後部の間の温度差が大きくなっている。これは、上述したように、鋼スラブ(鋼板)が粗圧延工程を経ることによって、鋼板長さが数倍から数十倍まで伸ばされ、鋼板の最先部と最後部との間で仕上げ圧延装置手前に到達する時間に時間差が発生し、最後部になるほど自然放冷の影響を受けるためである。
このような状態の鋼板に対し、最先部から最後部に至るまでの間、同じ冷却条件で冷却を行なうと、図8Aの点線で示すように、最後部の表面温度が下がり過ぎてしまう。
このような問題を解消するためには、図8Bに示すように、鋼板の最先部から中央部に至る間において、例えば単位長さ当たりの温度降下幅が100K/mでありノズルボックス全体での温度降下が50Kになるようにノズルボックス3aに備えられた全てのスプレーノズル3b(スプレーノズルピッチが125mm)を作動させて冷却を行ない、その後、鋼板の中央部から最後部に至る間において、温度降下幅が段階的に37.5K、25K、12.5Kとなるように、各スプレーノズル3bの作動を順次停止させる。
これにより、図8Bの実線で示すように、鋼板の中央部から最後部に至る間において、温度減少の傾斜が緩やかになり、鋼板の最先部と最後部における温度差が小さくなる。
こうした制御を行なうことによって、仕上げ圧延装置の最終圧延スタンドの出口側においては、図8Cに示すように、鋼板の最先部と最後部との間の温度差がほとんど消失し、熱間圧延鋼板の搬送方向における温度分布が均一なものとすることができる。
なお同様の制御は、搬送速度が変化する場合でも適用することができる。すなわち、熱間圧延設備においては、熱間圧延設備の最後尾に備えられた巻取装置に鋼板の先端部が達した時点で、鋼板の最後部が仕上げ圧延装置2の手前に位置している場合がある。鋼板の先端部が巻取装置に巻き取られる間は鋼板の搬送速度を低下させ、先端部が確実に巻き取られた後に搬送速度を上げて高速で巻き取らせるといった制御を行なっている。こうした場合、当然に第1圧延スタンドF1における搬送速度も変化する。鋼板の搬送速度に関わらずに温度降下幅を一定に保つためには、搬送速度が高いときの冷却能力を大きくし、搬送速度が低いときの冷却能力を下げる必要が有る。
従って、本実施形態の熱間圧延方法においては、鋼板の搬送速度に対応させて鋼板5の単位長さ当たりの温度降下幅を0K/m〜140K/mの範囲、冷却水噴射ノズル群全体での温度降下を0K〜70Kの範囲(好ましくは0〜50Kの範囲)で制御することにより、搬送速度が変化する場合であっても鋼板の温度降下幅を一定にすることが可能になる。
なお、0K〜50Kの制御は水量制御と、ノズル列の冷却水のon/offを併用して行っても良い。
以上説明したように、本実施形態によれば、自然放冷のための待機時間をなくすことが可能になり、熱間圧延鋼板の生産性を大幅に高めることができる。具体的には、圧延能力を3%程度高めることができる。
また、本実施形態によれば、空きスペースが限られた既存の設備に対しても適用することができる。
更に、本実施形態によれば、鋼板の品種や圧延条件によって冷却による温度降下幅を細かく制御することができ、これにより例えば、鋼板の過冷却を防止してスケール痕の発生やフェライト相の析出を防止して、熱間圧延鋼板の品質を高めることができる。
また、冷却による温度降下幅を細かく制御することが可能となるので、加熱抽出温度の自由度が出ることになり、加熱スケジュールの調整を緩和することができる。
更に、本実施形態によれば、圧延の間隔が一定になるので、生産スケジュールの調整を行いやすくできる。
更にまた、本実施形態によれば、鋼板の搬送を停止させることがないので、テーブルロールの負荷を少なくすることができる。
図1に示した熱間圧延設備を用いて、鋼板の熱間圧延加工を行なった。本実施例で使用した熱間圧延設備の寸法関係について説明すると、加熱抽出炉から粗圧延装置の最終圧延スタンドまでの距離を134500mmとし、粗圧延装置の最終圧延スタンドから仕上げ圧延装置の第1圧延スタンドF1までの距離を116000mmとした。仕上げ圧延装置は、第1〜第7までの7基の圧延スタンドから構成された。次に、冷却水噴射ノズル群の作動条件について説明すると、
仕上げ圧延機前には、デスケーリング装置、エッジャー装置、等が既に設置されているので、限られた空きスペースとして、圧延方向に500mm以内のスペースを確保できた。今回の冷却水噴射ノズル群は板長手方向125mmピッチのスプレーノズルが4列並んでおり、480mmが冷却範囲となる。また、仕上げ圧延機の最初のロールから手前に3.5m位置が冷却水噴射ノズル群の尾端になるように、冷却水噴射ノズル群を設置した。
スプレーノズルは全てフルコーン型スプレーノズルとし、水量密度を9〜12m/分/mとし、冷却水噴射ノズル群の各スプレーノズル先端と鋼板との距離を0.29mとし、冷却水噴射ノズル群の各スプレーノズルにおける水噴流の最大噴射角度を30°とした。また、鋼板温度は最先部から最後部にかけて徐々に低下するので、鋼板の最先部から中央部が通過するまでは冷却水を水量密度9〜12m/分/mで噴射させ、中央部から最後部が通過するまでの間で水量密度を段階的に低下させた。
次に、冷却対象となる鋼板について説明すると、加熱抽出炉で加熱される鋼スラブは幅1050mm、長さ10000mm、厚み252mmの鋼板であり、加熱抽出炉によって1250℃まで加熱させた。
その後、粗圧延装置で40mmの厚みまで圧下した。
仕上げ圧延前の鋼板の搬送速度は50mpmとして、鋼板の表面温度と、経過時間との関係を調べた。結果を図9に示す。
今回の冷却設備の直前に仕上デスケーリング装置(FSB、高圧水噴射しデスケを除去する装置)があるので、図6に示す様に、ノズルボックス入り側の表面温度は復熱して上昇中であるところを冷却した。
したがって、本発明のノズルボックスは、仕上デスケーリング装置とサイドガイドの間の極限られた領域に設置して、その間で粗バーを0K〜50Kの温度範囲で自在に冷却した。尚、図9における0秒は鋼板が加熱炉から出た時点である。
図9の実線で示すように、加熱抽出炉によって1200℃まで加熱された実施例1の鋼板は、粗圧延装置を通過して仕上げ圧延装置の手前に達するまでの間に自然放冷やデスケーリング水の冷却により、鋼板の最先部の表面温度が1100℃まで降下した。そして、鋼板が冷却水噴射ノズル群を通過することによって、鋼板温度が1100℃から1050℃まで降下した。このときの冷却水噴射ノズル群による温度降下幅は50Kであった。そして、鋼板は更に、第1〜第7圧延スタンドにより圧延され、第7圧延スタンド出口での鋼板最先部の温度が850℃になった。鋼板の最先部が、粗圧延開始から仕上げ圧延装置の第7圧延スタンド(最終圧延スタンド)に至るまでの所要時間は、図9の実線に示すように、約240秒であった。
以上のように、実施例1では、鋼板を搬送させながら、冷却水噴射ノズル群によって鋼板温度を1050℃まで低下させることができ、仕上げ圧延装置の手前で鋼板を停止させて放冷させる必要がなく、熱間圧延設備の稼働率を高めることが可能であった。
[比較例1]
冷却水噴射ノズル群を作動させなかったこと以外は上記実施例1と同様にして、図1に示した熱間圧延設備を用いて、鋼板の熱間圧延加工を行なった。そして、鋼板の熱感圧延加工を行ない、鋼板の最先部の温度と、経過時間との関係を調べた。結果を図13に示す。
図9の点線で示すように、加熱抽出炉によって1200℃まで加熱された比較例1の鋼板は、粗圧延装置を通過して仕上げ圧延装置の手前に達するまでの間に自然放冷やデスケーリング水の冷却により、鋼板表面温度が1100℃まで降下した。しかし、このままの温度で仕上げ圧延工程を行なうと、鋼板温度が高すぎてスケール発生のおそれがあったので、鋼板の搬送を停止し、鋼板の表面温度が1050℃になるまで放冷させた。このときの放冷時間は100秒であった。そして、鋼板温度が1050℃まで低下したのを確認してから鋼板の搬送を再開させて仕上げ圧延加工を行なった。第7圧延スタンド出口での鋼板最先部の温度は実施例1と同様に850℃となった。鋼板の最先部が、粗圧延開始から仕上げ圧延装置の第7圧延スタンド(最終圧延スタンド)に至るまでの所要時間は、図9の点線に示すように、約290秒であった。
以上のように、比較例1では、鋼板の搬送を一旦停止させて、鋼板温度が1050℃まで低下するまで待機させる必要が生じ、これにより加熱抽出炉から仕上げ圧延装置の最終圧延スタンドに至るまでの所要時間が、実施例1と比べて50秒程度長くなり、熱間圧延設備の稼働率が実施例1の場合よりも低下した。
図1は本発明の実施形態である鋼板の熱間圧延設備の構成を示す側面模式図である。 図2は、本発明に係るスプレーノズルにおける水噴流の噴射状態を示す図であって、Aは水噴流が円錐形状となるフルコーンスプレーノズルの例を示す斜視図であり、Bは水噴流が楕円錐形状となる楕円型スプレーノズルの例を示す斜視図であり、Cは水噴流が長円錐形状となる長円型スプレーノズルの例を示す斜視図である。 図3は、冷却水噴射ノズル群の作動状態と、鋼板の温度降下幅との関係を示すグラフである。 図4は、水冷時の鋼板表面温度と熱伝達率の関係を示す模式図である。 図5は本発明に係る冷却水噴射ノズル群におけるスプレーノズルの配置及び噴流衝突領域の一例を示す平面模式図である。 図6は本発明の実施形態である鋼板の熱間圧延設備の構成を示すとともに、鋼板の表面温度の推移を説明するための図である。 図7は、冷却水噴射ノズル群による冷却後の鋼板の温度と経過時間との関係を示すグラフである。 図8は、鋼板の長手方向の表面温度の分布を説明するための図であって、図8Aは第1圧延スタンド手前における鋼板表面温度の分布を示すグラフであり、図8Bは第2圧延スタンド手前における鋼板表面温度の分布を示すグラフであり、図8Cは最終圧延スタンド出口における鋼板表面温度の分布を示すグラフである。 図9は、実施例1と比較例1の鋼板の表面温度と経過時間との関係を示すグラフである。
符号の説明
2…仕上げ圧延装置、3…冷却水噴射ノズル群、3b…フルコーン型スプレーノズル、5…鋼板、F1…第1圧延スタンド、F2…第2圧延スタンド

Claims (6)

  1. 鋼板の搬送方向に沿って複数の圧延スタンドが順次設置されてなる仕上げ圧延装置を少なくとも備えた鋼板の熱間圧延設備において、
    前記仕上げ圧延装置の第1圧延スタンドの手前に鋼板冷却用の冷却水噴射ノズル群が備えられ、前記冷却水噴射ノズル群による前記鋼板冷却時の単位長さ当たりの温度降下幅が鋼板の全幅に亘って均一に0K/m〜140K/mの範囲で自在に制御可能とされていることを特徴とする鋼板の熱間圧延設備。
  2. 冷却水噴射ノズル群が設置されているスペースの圧延方向の長さが2000mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の鋼板の熱間圧延設備。
  3. 前記冷却水噴射ノズル群が、前記鋼板の搬送方向及び前記鋼板の幅方向のそれぞれに沿って配列された複数のフルコーン型スプレーノズルからなり、前記スプレーノズルから各々略充錐体形状の水噴流を噴射させ、前記各水噴流の噴流衝突領域が鋼板の幅方向に沿って少なくとも相互に連続するとともに鋼板の幅方向に対する傾斜方向に沿って少なくとも相互に連続するように配列された複数のフルコーン型スプレーノズルからなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の鋼板の熱間圧延設備。
  4. 前記鋼板が、前記冷却水噴射ノズル群から前記第1圧延スタンドに搬送されるまでの間に、2秒以上の搬送時間が確保されるように、前記冷却水噴射ノズル群と前記第1圧延スタンドとが離間されていることを特徴とする請求項1または請求項2または請求項3に記載の鋼板の熱間圧延設備。
  5. 鋼板の搬送方向に沿って順次設置された複数の圧延スタンドからなる仕上げ圧延装置を少なくとも備えた熱間圧延設備による鋼板の熱間圧延方法であって、
    前記仕上げ圧延装置の第1圧延スタンドの手前に鋼板冷却用の冷却水噴射ノズル群を配置し、前記冷却水噴射ノズル群によって前記鋼板を冷却する際に、前記鋼板冷却時の単位長さ当たりの温度降下幅が鋼板の全幅に亘って均一に0K/m〜140K/mの範囲で自在に制御しながら冷却することを特徴とする鋼板の熱間圧延方法。
  6. 前記鋼板が、前記冷却水噴射ノズル群から前記第1圧延スタンドに搬送されるまでの間に、2秒以上の搬送時間を設けることを特徴とする請求項5に記載の鋼板の熱間圧延方法。

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