JP3722101B2 - 熱延鋼帯の冷却制御方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱延鋼帯の冷却制御方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の鋼帯搬送路での熱延鋼帯の冷却制御は、冷却装置入側の予測または実績温度と、冷却装置出側の目標温度とから、冷却装置の各冷却バンクのオン/オフおよびその注水量を鋼帯の搬送にあわせて制御するものである。
【0003】
特開平5−277535号には所望の材質を実現するために、鋼板の加速による鋼板速度の変化がある場合や、仕上出口温度に変化がある場合でも、必要な冷却速度および巻取温度を容易に鋼板全長に亘って確保する方法として、鋼板の仕上圧延機と巻取機との間に鋼板に対する冷却水の注水のオン/オフおよびその注水量を個別に調節できる水冷バンクを搬送方向に間隔を置いて多数設けて冷却帯を構成し、かつ仕上圧延機の出側に鋼板の仕上出口温度計を、冷却帯の出側に巻取温度計をそれぞれ設け、ある時間間隔で仕上出口温度計により検出したサンプリング点を、当該鋼板の速度およびその速度変化を取り込みながらトラッキングし、各サンプリング点が鋼板の速度変化に影響されることなく一定の冷却速度とするように各冷却バンクの注水量の制御を行うとともに、水冷終了後空冷過程を経て当該サンプリング点が目標巻取温度となるように冷却バンクをオン/オフして水冷する全バンク長を制御する方法が示されている。
【0004】
また、特開平6−238312号には所望の材質を実現するために、鋼板の加速による鋼板速度の変化がある場合でも、γ→α変態完了までの温度履歴および巻取温度を一定に制御して、材料の機械的特性の均一化を図る方法として、冷却帯を前半の温度履歴制御ゾーンと後半の巻取温度制御ゾーンに分ける。温度履歴制御ゾーンにおいては、予測材料速度を用い、予め設定された水冷および空冷時間を確保するように各水冷装置の開閉パターンを制御する。巻取温度制御ゾーンにおいては、目標巻取温度となるための水冷および空冷パターンを計算し、これに基づいて各水冷装置を制御する方法が示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した特開平5−277535号および特開平6−238312号の方法では、材料の微細粒化、均質化を図るために従来よりも鋼帯の冷却速度の大きい冷却を行う際、冷却の途中で冷却を止めたり、冷却能力の小さい冷却バンクを用いると鋼帯の長手方向に均質な材料とならないことが生じることがあった。
【0006】
したがって本発明の目的は、鋼帯の冷却速度を速めたときにも、鋼帯の長手方向に均質な材料となるような熱延鋼帯の冷却制御方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記した冷却を強めていくときに、鋼帯の長手方向に均質な材料にならない原因と、その対策について検討を行った。その結果、急速な冷却を行うと復熱現象が現れ、冷却速度が大きいほど復熱量(冷却終了後の鋼帯表面のピーク温度−冷却終了時の鋼帯表面温度)が大きくなり、復熱量が変化すると、すなわち鋼帯の温度履歴が変化し、材料組織の均質化を妨げる。したがって均質な鋼帯を製造するには、この復熱が鋼帯の長手方向各部で同じになるように冷却すればよいことを見出した。
【0008】
復熱現象とは、鋼帯の冷却中に表面温度が低く、内部になるほど温度が高い状態が形成され、冷却が停止あるいは冷却力が低下すると、鋼帯内部の熱が表面向かって拡散し、その結果、鋼帯表面では一旦下がった温度が再び上昇する現象をいう。この復熱量は、冷却中の鋼帯表面温度と内部温度との差と関係がある。
【0009】
図5は板厚3mmの鋼帯を熱伝達率が3000Kcal/m2hr℃で、850℃から約1秒間冷却した場合の、鋼帯表面と鋼帯板厚中心部の温度履歴の一例を計算したものである。この冷却条件は、冷却速度でいうと330℃/secと従来のランナウトで行われている冷却に比べて著しく、急速な冷却である。ここで、冷却が終了した段階で前述した復熱という現象が現われる。
【0010】
図6はこの復熱量(℃)と冷却終了後の鋼帯表面のピーク温度(℃)との関係の一例を示したものであるが、この復熱量が20℃を越えると材質的に差が生じてくる。したがって、熱伝達率が1000Kcal/m2hr℃、すなわち冷却速度に換算して170℃/sec以上で強冷却すると、冷却後の復熱量が大きくなることがわかる。均質な鋼板を製造するには、この復熱が鋼帯の長手方向各部で同じであることが必要であり、従来の冷却開始温度、冷却終了温度(停止温度)および冷却速度という冷却条件に加えて、同じ復熱量となるような冷却制御が必要となってくる。
【0011】
鋼帯長手方向において、同じ温度履歴を得るために、等しい復熱を生じさせる手段を以下に示す。
【0012】
まず、冷却ゾーン長を鋼帯の搬送速度や圧延直後の仕上温度に応じて冷却を制御するために冷却水吐出バンク数を増減する必要が生じる。たとえば、加速圧延によって鋼帯の搬送速度が速くなり、それに応じて冷却に必要な時間が長くなるので冷却水吐出バンク数を増やす。また逆に圧延速度を下げることによって鋼帯の搬送速度が遅くなれば、それに応じて冷却水吐出バンク数を減らす。
【0013】
そこで、冷却ゾーン長を鋼帯の搬送速度や圧延直後の鋼帯温度に応じて冷却を制御する際に、冷却水吐出バンクを増減する場合、
(1)冷却水吐出バンク数を増やすときは、既に吐出中のバンクに隣接した未吐出バンクを吐出状態にする。
(2)冷却水吐出バンク数を減らすときは、未吐出中のバンクに隣接した吐出中バンクを未吐出状態にする。
制御が必要となる。こうすると、冷却水バンクの中で吐出中のバンクが連なることで、冷却途中に復熱が生じない、あるいは、復熱が生じても冷却終了時に生じるだけで、鋼帯各部の復熱量が一定となり、鋼帯の先端から尾端まで同じ温度履歴となる冷却制御が可能となる。
【0014】
本発明はこのような知見に基づきなされたもので、その特徴は以下の通りである。
【0015】
(1)熱延鋼帯の製造設備における仕上圧延機の後方に設けられ、所定間隔を有して配置され熱延鋼帯を搬送する複数の搬送ロールからなる鋼帯搬送路と、 該鋼帯搬送路の上面側に配置され、熱延鋼帯上面に対して冷却水を噴射し冷却する上面冷却手段と、該上面冷却手段と対向して下面側に配置され、熱延鋼帯下面に対して冷却水を噴射し冷却する下面冷却手段と、前記上面冷却手段と前記下面冷却手段上下1対を冷却バンクとして、複数の冷却バンクから構成される熱延鋼帯の冷却装置を用いて、前記冷却装置下流に設置された鋼帯温度計測装置の計測結果が所定の範囲となるように、冷却水吐出バンク数を増やす際は、既に吐出中のバンクに隣接した未吐出バンクを吐出状態にし、また冷却水吐出バンク数を減らす際は、未吐出中のバンクに隣接した吐出中バンクを未吐出状態にすることを特徴とする、熱延鋼帯の冷却制御方法。
【0016】
(2)熱延鋼帯の製造設備における仕上圧延機の後方に設けられ、所定間隔を有して配置され熱延鋼帯を搬送する複数の搬送ロールからなる鋼帯搬送路と、 該鋼帯搬送路の上面側に配置され、熱延鋼帯上面に対して冷却水を噴射し冷却する上面冷却手段と、該上面冷却手段と対向して下面側に配置され、熱延鋼帯下面に対して冷却水を噴射し冷却する下面冷却手段と、前記上面冷却手段と前記下面冷却手段上下1対を冷却バンクとして、該複数の冷却バンクの冷却水が互いに干渉しないように配置した水切り手段とから構成される熱延鋼帯の冷却装置を用いて、前記冷却装置下流に設置された鋼帯温度計測装置の計測結果が所定の範囲となるように、冷却水吐出バンク数を増やす際は、既に吐出中のバンクに隣接した未吐出バンクを吐出状態にし、また冷却水吐出バンク数を減らす際は、未吐出中のバンクに隣接した吐出中バンクを未吐出状態にすることを特徴とする、熱延鋼帯の冷却制御方法。
【0017】
(3)熱延鋼帯の冷却装置の上流側に設置された冷却バンクから下流側の冷却バンクに向かって、冷却水吐出バンク数を増加させることを特徴とする、上記(1)または(2)に記載の熱延鋼帯の冷却制御方法。
【0018】
(4)熱延鋼帯の冷却装置の下流側に設置された冷却バンクから上流側の冷却バンクに向かって、冷却水吐出バンク数を増加させることを特徴とする、上記(1)または(2)に記載の熱延鋼帯の冷却制御方法。
【0019】
(5)熱延鋼帯と上面冷却手段の冷却水の吐出口との間隔および熱延鋼帯と下面冷却手段の冷却水の吐出口との間隔を近接して配置することを特徴とする上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の熱延鋼帯の冷却制御方法。
【0020】
(6)熱延鋼帯と上面冷却手段の冷却水の吐出口との間隔および熱延鋼帯と下面冷却手段の冷却水の吐出口との間隔を30〜100mmとすることを特徴とする上記(1)乃至(5)のいずれかに記載の熱延鋼帯の冷却制御方法。
【0021】
【発明の実施の形態】
図1および図2は、本発明の熱延鋼帯の冷却制御方法の一実施形態を示すもので、図1は本発明の実施に供される熱延鋼帯の冷却装置および本発明法の一実施形態を示す説明図、図2は本発明法における鋼帯搬送速度の増減と冷却水吐出バンクの増減との関係を示す説明図である。
【0022】
図1に示す熱延鋼帯の冷却装置2は、仕上圧延機の最終段(F7)1下流に設置され、所定間隔を有して配置され熱延鋼帯を搬送する複数の搬送ロール(図示せず)からなる鋼帯搬送路と、1対の上面および下面冷却手段からなる複数の冷却バンク5と、前記冷却装置の入側および出側にそれぞれ設置された板温計3および4と、冷却バンク5の冷却水が互いに干渉しないように配置した水切り手段である水切りロール(図示せず)とから構成されている。
【0023】
本実施形態の冷却装置2は、15個の冷却バンクから構成され、各冷却バンクは水切りロールで区切られている。各冷却バンク毎且つ各バンクの上面および下面冷却手段毎に冷却水のオン/オフが可能となっている。
【0024】
図2の横軸は1本の熱延鋼帯が冷却装置を通過する間の時間経過を示している。この時間経過の間に熱延鋼帯の搬送速度は一度上昇して、その後減少する。鋼帯搬送速度の増減に伴って冷却水吐出バンク5の数も増減する。
【0025】
上記設備を使用して本発明法を実施する場合には、図2に示すように鋼帯搬送速度の増減時、冷却装置の出側板温計4の計測結果を一定範囲内に制御するため、板温計4の計測結果が目標温度閾値を超えた場合に、冷却装置内で既に吐出中のバンクの下流側に隣接した未吐出バンクを吐出状態として吐出バンク数を増やし、目標温度閾値を下回った場合に、冷却装置内で未吐出中のバンクの上流側に隣接した吐出中バンクを未吐出状態として吐出バンク数を減らす。また、モデル計算と実際とを比較してモデルを補正しながら温度上昇、降下量を求め冷却水吐出バンク数を増減する。
【0026】
本実施形態は、圧延終了後ただちに冷却を開始し、一気に変態点を通過させることにより、鋼帯全長に亘って変態により組織が微細化して強化させる際に用いる。この方法によれば、鋼帯全長に亘って均一に組織を微細化し強化することができる。
【0027】
図3および図4は、本発明の熱延鋼帯の冷却制御方法の他の実施形態を示すもので、図3は本発明の実施に供される熱延鋼帯の冷却装置および本発明法の他の実施形態を示す説明図、図4は本発明法における鋼帯搬送速度の増減と冷却水吐出バンクの増減との関係を示す説明図である。
【0028】
図3に示す熱延鋼帯の冷却装置の構成は、図1に示す熱延鋼帯の冷却装置と同様である。
【0029】
上記設備を使用して本発明法を実施する場合には、図4に示すように鋼帯搬送速度の増減時、冷却装置の出側板温計4の計測結果を一定範囲内に制御するため、板温計4の計測結果が目標温度閾値を超えた場合に、冷却装置内で既に吐出中のバンクの上流側に隣接した未吐出バンクを吐出状態として吐出バンク数を増やし、目標温度閾値を下回った場合に、冷却装置内で未吐出中のバンクの下流側に隣接した吐出中バンクを未吐出状態として吐出バンク数を減らす。また、モデル計算と実際とを比較してモデルを補正しながら温度上昇、降下量を求め冷却水吐出バンク数を増減する。
【0030】
本実施形態は、冷却時の冷却ひずみを起因とした板形状の悪化による通板トラブルを回避させる際に用いる。特に薄物材においては、前段急冷却すると板形状が極端に悪化することが知られており、本実施形態により良好な通板状態を確保できる。
【0031】
図1〜図4に示した実施形態は、板厚が3mmの熱延鋼帯の冷却では冷却速度が200℃/sec以上となるような急速冷却をする場合の鋼帯の温度制御として有効である。また、このような強冷却を可能とするため、熱延鋼帯と上面冷却手段の冷却水の吐出口との間隔および熱延鋼帯と下面冷却手段の冷却水の吐出口との間隔は30〜100mmとすることが好ましい。これは100mmを超えると冷却水量の勢いが弱まり強冷却が不可能になり、逆に30mm未満では、ノズル出口が鋼板に近づき過ぎて冷却水の行き場がなくなり良好な水流が得られなくなるからである。
【0032】
上述したように冷却装置下流に設置された鋼帯温度計測装置の計測結果が所定の範囲となるように、冷却水吐出バンク数を増減させることを特徴とする熱延鋼帯の冷却装置の好ましい形態としては、以下があげられる。
▲1▼上面冷却手段および水切り手段は昇降自在である。
▲2▼水切り手段は水切りロールを備えていること。
▲3▼上記▲2▼の水切りロールを上記冷却手段の入側または出側または出入側に配置し、上記水切りロールと搬送する熱延鋼帯に対して対向する搬送ロールと1対で、上記熱延鋼帯をピンチすること。
▲4▼上記▲2▼の水切りロールを上記冷却手段の入側または出側または出入側に配置し、上記水切りロールと搬送する熱延鋼帯との間に隙間を有して配置すること。
【0033】
▲5▼上記▲4▼の際は水切りロールおよび搬送ロールの周速と熱延鋼帯の搬送速度とは同じかわずかな周速差を設ける。
【0034】
上面冷却手段および水切り手段は上下に昇降自在とするのが好ましい。熱延鋼帯先端が通過する際は、水切り手段を上方に退避して、先端の通過後降下させることにより、熱延鋼帯先端と上面冷却手段および水切り手段の衝突による熱延鋼帯の疵発生や通板トラブルを回避できる。
【0035】
また、水切り手段は水切りロールであることが好ましい。熱延鋼帯の通板性や疵発生を押さえるのに有効である。
【0036】
更に、水切りロールは搬送する熱延鋼帯に対して対向する搬送ロールと1対で、上記熱延鋼帯をピンチするピンチロールの機能を併せ持たせることが好ましい。熱延鋼帯の通板性と水切りの確実性を高めるために有効である。
【0037】
また、水切りロールと搬送する熱延鋼帯との間に隙間を有して配置することも好ましい。水切りロールと熱延鋼帯の間に隙間を設ける形式は、上述した水切りロールと搬送ロールで熱延鋼帯をピンチする形態に対して、水切り確実性は劣るものの、熱延鋼帯に対する負荷荷重の調整や水切りロールおよび搬送ロールの回転と熱延鋼帯の搬送速度を同期させる調整が不要となり、複雑な制御が不要な点でコストに有利である。
【0038】
水切りロールの周速が鋼帯の搬送速度とほぼ一致するように水切りロールを回転させ、さらに水切りを確実にするために、水切りロールについて冷却装置の反対側に少なくとも1つ以上の流体噴射ノズルを設け、水切りロールと鋼帯の隙間から流出する冷却水を鋼帯上から速やかに排出させる。
【0039】
水切りロールと熱延鋼帯との隙間は狭ければ狭いほど水切り効果が高いが、実際の設備では搬送に伴う鋼帯の振動があるので、その隙間は望ましくは1〜10mmを保持するように設定するのがよい。1mm未満では水切りロールと熱延鋼帯が接触し、熱延鋼帯に疵が発生するためであり、10mm超えでは十分な水切り効果が得られないからである。
【0040】
また、水切りロールと熱延鋼帯の間に隙間を設ける場合、水切りロールと搬送ロールおよび熱延鋼帯の搬送速度はほぼ同じ速度とするが、熱延鋼帯の先端が冷却装置を通過する際は、熱延鋼帯の先端の通板性を高めるために、水切りロールと搬送ロールの回転速度を熱延鋼帯の搬送速度よりも速くするのが好ましい。0〜20%の速度差を設けるのが好ましい。熱延鋼帯先端に張力をかけ、通板しやすくするためで、5〜20%の速度差を設けるのが、更に好ましい。
【0041】
以下に水切りロールについて、より具体的に説明する。
【0042】
水切りロールは、熱延鋼帯の通板性や冷却水の水切り性を優先させる場合には、熱延鋼帯を介して対向する搬送ロールで熱延鋼帯をピンチするのが好ましい。ところが、熱延鋼帯をピンチすると、ピンチロールのスリップにより熱延鋼帯に疵を付ける恐れがあるし、水切りロールおよび搬送ロールの回転と熱延鋼帯の搬送速度を同期させる制御上の複雑さもある。
【0043】
また、熱延鋼帯への疵付きと制御上の複雑さを回避することを優先させる場合は、水切りロールと熱延鋼帯との間に水切りの機能を損なわない程度に隙間を設けることが好ましい。この場合、水切りロールの隙間から漏れ出る冷却水を鋼帯上から系外へ吹き飛ばす流体噴射ノズルを水切りロールの後段側に配置するのが好ましい。
【0044】
更に、冷却手段が冷却バンクを複数台配置した冷却バンク群で構成される場合、冷却バンク群の入口側、出口側、または、中間位置の少なくとも一カ所に前記水切りロールの一部に代えてピンチロールを配置するのが好ましい。水切りロールと鋼帯との間に隙間を設けた場合、冷却バンク群の入口側にループが発生し、通板不安定となる場合があるが、入口側に設けたピンチロールで熱延鋼帯を冷却装置内に素速く送り込み、冷却装置外へ送り出すためである。ピンチロールは出口側や中間位置に設けても良いが、動作を早くするためには、入口側と同時に出口側や中間位置にもピンチロールを配置するのが好ましい。
【0045】
このように、水切りロールと鋼帯との間に隙間を設けた場合、水切り確実性は劣るものの、熱延鋼帯の疵付きが減少し、熱延鋼帯の搬送速度に水切りロールおよび搬送ロールの回転速度を同期させる厳密な調整が不要となり、複雑な制御が不要な点でコストに有利である。
【0046】
図13は、冷却装置と水切り手段の配置の一例を示したものである。
【0047】
図13では、熱延鋼帯10の上面側に、下面側に設けられている搬送ロール11にほぼ対向する位置に水切りロール13を備えている。この水切りロール13は、水切りの特性上、搬送ロール11にほぼ対向する位置の全てに設けられるのが好ましい。図中5aおよび5bは、それぞれ下面冷却手段および上面冷却手段を示している。また、図中12aおよび12bは、熱延鋼帯10の通板安定化の役割と、各冷却バンクや冷却水吐出口を熱延鋼帯の衝突から保護する役割を有する下面防護板および上面防護板を示している。
【0048】
更に、図中14は冷却バンク群の入口側に配置されたピンチロールを示している。
【0049】
【実施例】
圧延後の板厚3mm、仕上温度860℃の鋼帯を複数の冷却バンクを具備した冷却装置で鋼帯上下から冷却して、500℃まで冷却した場合の本発明の実施例と比較例を説明する。冷却装置の冷却バンク数は15個(#1〜#15)である。鋼帯搬送速度は加速圧延に伴って、鋼帯先端圧延開始時の600mpmから鋼帯長手中央部の900mpmまで増速している。このとき、実施例では冷却水吐出バンクを増やす際には、既に吐出中のバンクに隣接した未吐出バンクを吐出状態にする。これにより、冷却装置内の吐出バンクが連続的に連なる。これに対して、比較例では、予め決めた吐出バンク優先順に従って吐出バンクを増やした場合である。優先の順序は、#1、#2、#4、#5、#7、#8、#10、#11、#13、#14、#3、#6、#9,#12、#15バンクの順番とする。比較例の場合、15個のバンクが全吐出とならない限り、不連続な吐出となる。
【0050】
図7および図8は実施例で、図7は鋼帯搬送速度が600mpmで#1〜#10の10個の冷却バンクが連なって吐出状態にあるときの、鋼帯先端部の圧延終了後の温度履歴、図8は鋼帯搬送速度が900mpmで#1〜#15の15個の冷却バンクが連なって吐出状態にあるときの、鋼帯長手中央部の圧延終了後の温度履歴を示す。
【0051】
これに対して図9および図10は比較例で、図9は鋼帯搬送速度が600mpmで吐出バンク優先順に従った、#1、#2、#4、#5、#7、#8、#10、#11、#13、#14の10個の冷却バンクが不連続に吐出状態にあるときの、鋼帯先端部の圧延終了後の温度履歴、図10は鋼帯搬送速度が900mpmで、図9の状態から#3、#6、#9、#12、#15と吐出バンク優先順に従って順次吐出バンクを増加させさせ全15個のバンクが吐出状態にあるときの、鋼帯長手中央部の圧延終了後の温度履歴を示す。
【0052】
図7と図8を比較すると、鋼帯先端部の600mpmでの搬送時と鋼帯長手中央部の900mpmでの搬送時とで圧延終了後の温度履歴が一致しており、鋼帯の長手方向で同じ温度履歴が実現され、その結果鋼帯長手方向で均質な材質が得られている。一方、図9と図10を比較すると、圧延終了後の温度パターンおよび復熱が鋼帯先端部と鋼帯長手中央部で異なり、その結果鋼帯長手方向で均質な材質が得られない。
【0053】
図11に示す熱延鋼帯の冷却装置を用いて、板厚2mm、鋼帯搬送速度500mpm、冷却目標温度200℃、圧延終了から冷却開始までの時間が0.67秒の冷却条件で熱延鋼帯を冷却した。一気に変態点を通過させることにより、鋼帯全長に亘って変態により組織が微細化して強化されるように前段強(急)冷却を実施した。冷却装置の上流側に設置された冷却バンクから下流側の冷却バンクに向かって、冷却水吐出バンク数を増加させた。
【0054】
図12に1本の熱延鋼帯が冷却装置を通過する間の時間経過を示した。この時間経過の間に熱延鋼帯の搬送速度は一度上昇して、その後減少させた。鋼帯搬送速度の増減に伴って冷却水吐出バンクの数も増減させた。鋼帯搬送速度は最高で1050mpmまで増速し、冷却水吐出バンクの数は500〜550mpmは3個、600〜700mpmは4個、750〜850mpmは5個、900〜1000mpmは6個、1050mpmでは7個とした。吐出バンク数を増やすときは、既に吐出中のバンクに隣接した未吐出バンクを吐出状態とする。鋼帯搬送速度を1050mpmから500mpmまで減速するときも上記と全く同様の吐出バンク数とし、吐出バンク数を減らすときは、未吐出中のバンクに隣接した吐出中バンクを未吐出状態とする。
【0055】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、熱延鋼帯における復熱が鋼帯の長手方向各部で同じになるように冷却することにより、鋼帯長手方向で材料の微細粒化、均質化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施に供される熱延鋼帯の冷却装置および本発明法の一実施形態を示す説明図
【図2】本発明法における鋼帯搬送速度の増減と冷却水吐出バンクの増減との関係を示す説明図
【図3】本発明の実施に供される熱延鋼帯の冷却装置および本発明法の他の実施形態を示す説明図
【図4】本発明法における鋼帯搬送速度の増減と冷却水吐出バンクの増減との関係を示す説明図
【図5】板厚3mmの鋼帯を熱伝達率が3000Kcal/m2hr℃で、850℃から約1秒間冷却した場合の、鋼帯表面と鋼帯板厚中心部の温度履歴の一例を示すグラフ
【図6】復熱量(℃)と冷却終了後の鋼帯表面のピーク温度(℃)との関係の一例を示すグラフ
【図7】実施例で、鋼帯搬送速度が600mpmで#1〜#10の10個の冷却バンクが連なって吐出状態にあるときの、鋼帯先端部の圧延終了後の温度履歴を示すグラフ
【図8】実施例で、鋼帯搬送速度が900mpmで#1〜#15の15個の冷却バンクが連なって吐出状態にあるときの、鋼帯長手中央部の圧延終了後の温度履歴を示すグラフ
【図9】比較例で、鋼帯搬送速度が600mpmで吐出バンク優先順に従った10個の冷却バンクが不連続に吐出状態にあるときの、鋼帯先端部の圧延終了後の温度履歴を示すグラフ
【図10】比較例で、鋼帯搬送速度が900mpmで、図9の状態から吐出バンク優先順に従って順次吐出バンクを増加させ全15個のバンクが吐出状態にあるときの、鋼帯長手中央部の圧延終了後の温度履歴を示すグラフ
【図11】本発明の実施例に供される熱延鋼帯の冷却装置
【図12】本発明法の実施例における鋼帯搬送速度の増減と冷却水吐出バンクの増減との関係を示す説明図
【図13】冷却装置と水切り手段の配置の一例を示した説明図
【符号の説明】
1 仕上圧延機の最終段
2 熱延鋼帯の冷却装置
3 冷却装置の入側板温計
4 冷却装置の出側板温計
5 冷却バンク
5a 下面冷却手段
5b 上面冷却手段
10 熱延鋼帯
11 搬送ロール
12a 下面防護板
12b 上面防護板
13 水切りロール
14 ピンチロール
Claims (6)
- 熱延鋼帯の製造設備における仕上圧延機の後方に設けられ、所定間隔を有して配置され熱延鋼帯を搬送する複数の搬送ロールからなる鋼帯搬送路と、
該鋼帯搬送路の上面側に配置され、熱延鋼帯上面に対して冷却水を噴射し冷却する上面冷却手段と、
該上面冷却手段と対向して下面側に配置され、熱延鋼帯下面に対して冷却水を噴射し冷却する下面冷却手段と、
前記上面冷却手段と前記下面冷却手段上下1対を冷却バンクとして、複数の冷却バンクから構成される熱延鋼帯の冷却装置を用いて、
前記冷却装置下流に設置された鋼帯温度計測装置の計測結果が所定の範囲となるように、冷却水吐出バンク数を増やす際は、既に吐出中のバンクに隣接した未吐出バンクを吐出状態にし、また冷却水吐出バンク数を減らす際は、未吐出中のバンクに隣接した吐出中バンクを未吐出状態にすることを特徴とする、熱延鋼帯の冷却制御方法。 - 熱延鋼帯の製造設備における仕上圧延機の後方に設けられ、所定間隔を有して配置され熱延鋼帯を搬送する複数の搬送ロールからなる鋼帯搬送路と、
該鋼帯搬送路の上面側に配置され、熱延鋼帯上面に対して冷却水を噴射し冷却する上面冷却手段と、
該上面冷却手段と対向して下面側に配置され、熱延鋼帯下面に対して冷却水を噴射し冷却する下面冷却手段と、
前記上面冷却手段と前記下面冷却手段上下1対を冷却バンクとして、該複数の冷却バンクの冷却水が互いに干渉しないように配置した水切り手段とから構成される熱延鋼帯の冷却装置を用いて、
前記冷却装置下流に設置された鋼帯温度計測装置の計測結果が所定の範囲となるように、冷却水吐出バンク数を増やす際は、既に吐出中のバンクに隣接した未吐出バンクを吐出状態にし、また冷却水吐出バンク数を減らす際は、未吐出中のバンクに隣接した吐出中バンクを未吐出状態にすることを特徴とする、熱延鋼帯の冷却制御方法。 - 熱延鋼帯の冷却装置の上流側に設置された冷却バンクから下流側の冷却バンクに向かって、冷却水吐出バンク数を増加させることを特徴とする、請求項1または2に記載の熱延鋼帯の冷却制御方法。
- 熱延鋼帯の冷却装置の下流側に設置された冷却バンクから上流側の冷却バンクに向かって、冷却水吐出バンク数を増加させることを特徴とする、請求項1または2に記載の熱延鋼帯の冷却制御方法。
- 熱延鋼帯と上面冷却手段の冷却水の吐出口との間隔および熱延鋼帯と下面冷却手段の冷却水の吐出口との間隔を近接して配置することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の熱延鋼帯の冷却制御方法。
- 熱延鋼帯と上面冷却手段の冷却水の吐出口との間隔および熱延鋼帯と下面冷却手段の冷却水の吐出口との間隔を30〜100mmとすることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の熱延鋼帯の冷却制御方法。
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