JP4546897B2 - 鋼板の熱間圧延設備及び鋼板の熱間圧延方法 - Google Patents
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Description
しかし、自然放冷のために鋼板の搬送を停止させると、熱間圧延設備の稼働率が低下してしまい、生産能力の向上が図れないという問題が生じる。熱間圧延設備の稼働率向上のためには、仕上圧延前、および第1仕上圧延スタンドと第2仕上圧延スタンドの間において鋼板の温度を強制的に100℃程度降下させて、鋼板の停止時間を少なくする必要がある。
しかし、現実には、第1仕上圧延スタンドの手前には、デスケーリング装置、表面温度計、エッジャー装置、クロップシャー装置等の設備が既に配置されており、冷却装置を設置しようにも、鋼板の移動方向に沿った長さで例えば2000mm程度の空きスペースしか確保できないという事情が有る。同様に、仕上圧延装置の第1仕上圧延スタンドと第2仕上圧延スタンドとの間においては、例えば900〜1500mm程度の空きスペースしか確保できないという事情が有る。
しかし、特許文献1の記載によれば、60〜70℃程度の温度低下を達成させるためには、鋼板の上側から水量密度1500(m3/時)の冷却水を、また鋼板の下側から水量密度500(m3/時)の冷却水を大量供給する必要があるとされている。このため、仮に100℃程度の幅で温度降下を達成しようとすれば、最大で2000(m3/時)を超える膨大な量の冷却水が必要となり、冷却装置及びその付帯設備が大がかりなものになってしまう問題があった。
この特許文献2に記載された技術によれば、カーテンウォール型冷却手段を用いるために冷却能力は十分に確保できるが、上述したように仕上圧延装置における空きスペースの問題から、特に仕上圧延装置の手前にはカーテンウォール型冷却手段を設置できないという問題がある。また、カーテンウォール型冷却手段は一般に、長尺なスリット状のノズルから冷却水をカーテンの如く噴射させるものであるため、水量の細やかな制御が難しいという特性があり、冷却能力の調整ができず、鋼板を必要以上に冷却してしまう問題がある。すなわち、鋼板の種類によっては、仕上圧延装置の第1仕上圧延スタンドの出口側において、鋼板温度が比較的低くなっている場合があり、このような鋼板に対して冷却能力が調整が効かない冷却手段を用いた場合には、鋼板温度をAr3点以下の温度まで低下させてしまい、鋼板の組織中にフェライト組織を生じさせてしまう場合がある。
また、鋼板は圧延によってその長さが次第に長くなり、これにより鋼板の最先部と最後部の間で放冷時間の差によって温度差が生じる場合があり、こうした場合に鋼板全体に対して一律の冷却条件で冷却すると、鋼板最先部の冷却が不十分になったり、鋼板最後部の冷却が過剰になったりする問題があった。
要するに、特許文献2に記載の技術は、一律の冷却能力が要求される圧延設備には好適だが、一つの圧延設備で他品種の圧延鋼板を製造したり、温度分布のある鋼板を圧延しようとすると、冷却能力の調整が難しく、鋼板温度を適宜調整できないという問題があった。
例えば、特許文献4(特開2001−240915号公報)には、鋼板上に複数の冷却ノズルを配置し、各冷却ノズルから棒状の水噴流を噴射させて鋼板を冷却する技術が開示されている。この特許文献4に記載の技術によれば、鋼板上における棒状の水噴流の噴流衝突領域が相互に離間しており、鋼板に対する噴流衝突領域の面積率が数%程度と低くなっている。またこの特許文献4に記載の技術は、仕上圧延後という記載から、表面温度900℃以下の鋼板に適用されるものであり、仕上圧延前の1000℃程度の高温の鋼板に適用されるものではない。1000℃程度の鋼板に対し,本技術を適用して棒状の水噴流を噴射させると、鋼板上の水噴流の衝突領域では水が直接鋼板に当たって効率よく冷却が行なわれるものの、衝突領域の周辺では水流が鋼板表面に沿って流れるため、950℃以上の高温鋼板を冷却する際には水流と鋼板との境界で水の蒸発による蒸気膜が発生し、この蒸気膜の影響によって効率よく冷却が行なわれなくなる。このように、特許文献4に記載の技術を高温の鋼板に適用しても、冷却能力を高めることができない問題があった。
更に、仕上圧延後では板厚が3mm程度以下と、粗圧延後の鋼板(厚みが20mm〜80mm、通常は40mm程度)および、第1圧延スタンド直後の鋼板(10mm〜60mm、通常は20mm程度)に比べて格段に薄いために冷却しやすい。また、仕上圧延後の鋼板の温度は900℃以下と、粗圧延後で仕上圧延前および第1仕上圧延スタンドと第2仕上スタンドの間の鋼板の温度(1000℃程度以上)に比べて低い為に、大きい冷却速度も確保しやすい。
しかし、粗圧延後で仕上圧延前の鋼板や第1仕上圧延スタンドと第2仕上圧延スタンドの間の鋼板は、上記の様に厚みが大きく、温度も高い為に大きい冷却速度を確保することが困難だった。
したがって、従来の技術では、仕上圧延前で、表面温度が1000℃程度以上で、厚みが通常20mm〜40mmの鋼板を、単位長さ当たりの温度降下幅が全幅に亘って均一に0K〜100Kで自在に冷却を制御することは可能でなかった。
本発明の鋼板の熱間圧延設備は、鋼板の搬送方向に沿って順次設置された第1仕上圧延スタンド及び第2仕上圧延スタンドを含む複数の仕上圧延スタンドからなる仕上圧延装置を少なくとも備えた鋼板の熱間圧延設備において、前記第1仕上圧延スタンドの手前に鋼板冷却用の第1冷却水噴射ノズル群が備えられるとともに、前記第1仕上圧延スタンドと前記第2仕上圧延スタンドの間に鋼板冷却用の第2冷却水噴射ノズル群が備えられ、前記第1、第2冷却水噴射ノズル群による前記鋼板冷却時の温度降下幅が0K〜100Kの範囲で鋼板の全幅に亘って均一で、かつ自在に制御可能とされていることを特徴とする。
また、本発明の鋼板の熱間圧延設備においては、前記第2冷却水噴射ノズル群が、前記鋼板の搬送方向及び前記鋼板の幅方向のそれぞれに沿って配列された複数のフルコーン型スプレーノズルからなり、前記スプレーノズルから各々略充錐体形状の水噴流を噴射させ、前記各水噴流の噴流衝突領域が鋼板の幅方向に沿って少なくとも相互に連続するとともに鋼板の幅方向に対する傾斜方向に沿って少なくとも相互に連続するように配列された複数のフルコーン型スプレーノズルからなることが好ましい。
また、本発明の鋼板の熱間圧延設備においては、前記鋼板が、前記第2冷却水噴射ノズル群から前記第2仕上圧延スタンドに搬送されるまでの間に、1.6秒以上の搬送時間が確保されるように、前記第2冷却水噴射ノズル群と前記第2仕上圧延スタンドとが離間されていることが好ましい。
また、上記の熱間圧延設備によれば、第1仕上圧延スタンドの前後に、冷却用ノズルを第1、第2冷却水噴射ノズル群として分散して配置するので、空きスペースが限られた既存の熱間圧延設備に対しても冷却水噴射ノズルを後から付加させることができ、既存の設備にも好適に適用することが可能となる。
更に、第1、第2冷却水噴射ノズル群による鋼板冷却時の温度降下幅が0K〜100Kの範囲で自在に制御可能とされているので、鋼板温度や圧延条件等に合わせて鋼板の温度を制御することが可能になり、鋼板の品質の向上が図られる。
また、第1、第2冷却水噴射ノズル群を構成する複数のフルコーン型スプレーノズルの作動状態を個別に制御することによって、鋼板冷却時の温度降下幅を0K〜100Kの範囲で自在に制御することが可能になる。
更に、鋼板に1.6秒以上の搬送時間が確保されるように第2冷却水噴射ノズル群と第2仕上圧延スタンドとが離間されるので、第2仕上圧延スタンドによる圧延の前に、第2冷却水噴射ノズル群によって冷やされた鋼板の表面温度が、1.6秒以上の搬送時間の間に鋼板内部の熱によって回復され、これにより鋼板全体の温度が均一になった状態で第2仕上圧延スタンドで圧延されることになり、不具合の発生を防止できる。また、仮に鋼板の表面温度がAr3点以下に下がったとしても、1.6秒間の搬送時間を確保することによって鋼板表面の温度がAr3点以上に回復し、これにより鋼板内部におけるフェライト相の発生が防止され、鋼板の品質をより高めることができる。
また、本発明の鋼板の熱間圧延方法においては、前記鋼板が、前記第1仕上圧延スタンドの手前の冷却水噴射ノズル群から前記第1圧延スタンドに搬送されるまでの間に、2秒以上の搬送時間を設け、前記第2冷却水噴射ノズル群から前記第2仕上圧延スタンドに搬送されるまでの間に、1.6秒以上の搬送時間を設けることが好ましい。
また、上記の熱間圧延方法は、第1仕上圧延スタンドの前後に、冷却用ノズルを第1、第2冷却水噴射ノズル群として分散して配置することで実現できるので、空きスペースが限られた既存の熱間圧延設備に対しても好適に適用することが可能となる。
更に、第1、第2冷却水噴射ノズル群による鋼板冷却時の温度降下幅が0K〜100Kの範囲で自在に制御可能なので、鋼板温度や圧延条件等に合わせて鋼板の温度を制御することが可能になり、鋼板の品質の向上が図られる。
また、本発明によれば、空きスペースが限られた既存の設備に対しても適用することができる。
更に、本発明によれば、鋼板の品種や圧延条件によって冷却による温度降下幅を細かく制御することができ、鋼板の過冷却を防止して熱間圧延鋼板の品質を高めることができる。
更にまた、本発明によれば、第1、第2冷却水噴射ノズル群によって鋼板を冷却することで、仕上圧延工程の段階で鋼板温度を精密に調整することが可能となり、これにより、仕上圧延工程後の圧延鋼板の温度調整を精度良く行うことができる。即ち、本発明によれば、仕上圧延工程における鋼板温度ばかりでなく、仕上圧延工程後における鋼板温度をも精密に制御することが可能になる。
本発明は、圧延鋼板または厚みが20〜150mm程度の厚鋼板(以下、鋼板と総称する)を冷却対象とし、冷却水噴射ノズル群を熱間圧延設備に組み込み、鋼板の上面側と下面側に対して当該冷却水噴射ノズル群からの水(例えば、水、または水と空気の混合体などの冷却媒体で、本発明では「水」という)噴流によって冷却を行なう場合に適用されるものである。
第1冷却水噴射ノズル群は仕上圧延機の手前に設置されるが、その位置は、圧延前の鋼スラブの搬送速度がなるべく低下する場所に設置することが望ましい。搬送速度が遅ければ、同じ冷却時の熱伝達係数を用いても、単位時間当たりおよび単位長さ当たりの冷却量が大きくなる為である。この為には、仕上圧延機前に設置されているデスケーリング装置の近傍が最適であり、通板速度は40mpm〜80mpm(最大100mpm程度)になる。ちなみに、粗圧延直後の通板速度は250mpm〜300mpm程度である。
しかし、仕上圧延機前には、デスケーリング装置、エッジャー装置、クロップシャー装置、鋼板の表面温度計等が配置されているので、冷却装置のために割くことのスペース(圧延方向の長さ)は非常に限られている。このスペースは、本発明の実施の態様では高々500mm程度であり、他の仕上圧延前の装置の再配列をしても、高々2000mm程度であると推定される。
尚、図1では粗圧延と仕上圧延による板厚の変化は図示していない
更に、仕上圧延装置2の下流側には、熱間圧延鋼板を巻き取るための図示しない巻取装置が配置されている。
第1冷却水噴射ノズル群3は、厚さが20〜80mm程度であって表面温度が1000℃〜1250℃程度の鋼板の温度を、80〜20K程度の温度降下幅で降下させることが可能な能力を備えたものである。これらの温度降下幅は、板厚と通板速度に関係する。
また、第2冷却水噴射ノズル群4は、厚さが10〜60mm程度であって表面温度が1000℃〜1250℃程度の鋼板の温度を、100K〜20K程度の温度降下幅で降下させることが可能な能力を備えたものである。これらの温度降下幅は、板厚と通板速度に関係する。
また、各ノズルボックス3a、3aは、第1仕上圧延スタンドF1手前にある鋼板5のガイドローラ11a、11bの間に設置されている。このガイドローラ11a、11b間の間隔は1500mm程度とされている。各ノズルボックス3aに組み込まれたスプレーノズル3bは、各ノズルボックス3aをガイドローラ11a、11b間に収めるために、鋼板の搬送方向に沿って稠密に配置されている。
また、第2〜第4ノズルボックス4a〜4cは、第1、第2仕上圧延スタンドF1、F2の間に配置されている。第1、第2仕上圧延スタンドF1、F2の間には、図示しない鋼板5のガイドローラが複数設置されており、各ノズルボックス4a〜4cはこれらガイドローラの間に配置されている。なお、第1、第2仕上圧延スタンドF1、F2間におけるガイドローラ同士の間隔は、900mm〜1500mm程度とされており、従って各ノズルボックス4a〜4cに組み込まれたスプレーノズル4dは、各ノズルボックス4a〜4cを図示しないガイドローラ間に収めるために、鋼板の搬送方向に沿って稠密に配置されている。
このような構成によって、第1、第2冷却水噴射ノズル群3、4は各スプレーノズル3b、4d単位若しくはノズルボックス3a、4a〜4c単位で制御することが可能であり、これにより鋼板5の温度降下幅を段階的に制御できるようになっている。
また、各スプレーノズルのオンオフや、水量密度等の作動条件を細かく制御することによって、数K刻みで温度降下幅を制御することも可能になっている。
以上の構成によって、上記の第1、第2冷却水噴射ノズル群3、4は全体として、鋼板の表面温度を温度降下幅0K〜100Kの範囲で自在に制御可能とされている。尚、この温度降下幅は板厚と通板速度により調整可能である。
仕上圧延工程における鋼板温度を例えば1000℃〜1050℃より低くにするには、第1仕上圧延スタンドF1前において鋼板の温度降下幅を例えば100K以上にすることが可能な能力を備えた冷却設備が必要になる。しかし、このような冷却設備は比較的広い設置スペースを必要とするため、第1仕上圧延スタンドF1前に十分なスペースが確保できないような既存の熱間圧延設備への設置は不可能な状況であった。
しかし、鋼板温度は必ずしも第1仕上圧延スタンドF1手前で1000℃〜1050℃にする必要はなく、第2仕上圧延スタンドF2手前で1000℃から105℃になっていれば実用上問題ない。そこで本発明者らは、上述のように、第1、第2仕上圧延スタンドF1、F2の間に、温度降下幅が最大で60K程度の冷却水噴射ノズル群を設置すると共に、第1仕上圧延スタンドF1手前に温度降下幅が板厚と通板速度に因るが80K〜20K程度の冷却水噴射ノズル群を設置することで、従来の問題を解決できることを見いだしたのである。
すなわち、鋼板の熱間圧延工程においては、最終的に鋼板の長さが50m〜2500m程度になるため、鋼板の最後部が仕上圧延装置の第1仕上圧延スタンドF1に到達する前に、鋼板の最先部が仕上圧延装置の先の巻取装置に到達する場合がある。鋼板の最先部が巻取装置に到達すると、鋼板の搬送速度を一旦落として鋼板の最先部を確実に巻取装置に巻き取らせ、その後、搬送速度を上げて高速で巻き取らせている。このような速度制御を行なうと、第1、第2仕上圧延スタンドF1、F2間を通過する鋼板の搬送速度も当然に変化する。更に加えて、熱間圧延工程における鋼板温度は、最先部よりも最後部の温度が次第に低下する傾向にある。
以上のことから、鋼板の最先部に対する冷却条件と同じ条件で鋼板の最後部に対して冷却を行なうと、冷却能力が過剰になって鋼板温度が例えばAr3点以下になり、組織中にフェライト相が析出する等の問題が生じる。
そこで、第2冷却水噴射ノズル群4を第1冷却水噴射ノズル群3とともに設置して、鋼板の温度降下幅を例えば最大100Kの範囲で任意に制御可能とすることで、鋼板の搬送速度及び鋼板の温度に合わせて冷却制御を細かく設定することが可能になり、最終製品である熱間圧延鋼板の品質を高めることができる。
もしも、圧延方向に、冷媒衝突面が重なったようなスプレー配置をとると、幅方向に冷却水を排出するパスが無くなり、板上水として、水が鋼板上に残るために幅方向に均一に冷却することが難しくなる。
鋼板5上において噴流衝突領域Mを図5に示すように設定するには、水噴流の最大広がり角度と、スプレーノズル先端から鋼板までの距離との関係を制御すれば良い。
距離を200mm以上にすることで、ノズル3bの直下に変形された鋼板が送られた場合でもノズル3bと鋼板とが干渉するおそれがない。更に距離を700mm以下に設定することで、ノズル3bが鋼板5の下面5b側に設置された場合であってもノズル3bと鋼板5との距離が離れすぎずに、水噴流を鋼板に確実に衝突させることができる。
水量密度の制御は、各スプレーノズル3bに供給する水の供給圧力を制御すれば良い。供給圧力の最適範囲はスプレーノズルの性能によっても異なるが、例えば0.005MPa以上0.5MPaの範囲に設定すれば良い。
このスプレーノズルでの、水量密度の上限値であるが、たとえば水量密度を2倍の16m3/m2/分にすれば、鋼板5の単位長さ当たりの温度降下幅を140K/mにすることは可能である。これは噴流衝突領域の直径を125mmとした時に1スプレーノズル当たりの温度降下代は35Kであることを意味する。
しかし、水量密度を増すと、水噴流が滞留水を貫通して届くだけの水圧などの条件が必要になる。また、幅方向の水の排出性が問題になる。また、水切りを設置しない場合、冷却帯の外に流出した鋼板上の水による不均一冷却が懸念される。これらのことを考慮すると水量密度の上限値は16〜20m3/m2/分程度である。
また、最大広がり角度が10°以上30°以下の水噴流を噴射させることによって、水噴流における垂直成分を増加させ、これにより鋼板に対して水噴流を効率よく衝突させることが可能になり、冷却を効率よく行うことができる。
また、鋼板5上における水噴流による複数の噴流衝突領域を、鋼板5の幅方向に沿って相互に重ね合わせることによって、冷却後の鋼板5の幅方向の温度のバラツキを小さくすることができる。
本実施形態の熱間圧延方法は、第1仕上圧延スタンドF1の手前に配置させた第1冷却水噴射ノズル群3と、第1仕上圧延スタンドF1と第2仕上圧延スタンドF2の間に配置させた第2冷却水噴射ノズル群4を用い、鋼板5を冷却する際に、鋼板5の温度降下幅を0K〜100Kの範囲で自在に制御しながら冷却するというものである。
鋼板の温度降下幅を0K〜100Kの範囲で自在に制御するには、各冷却水噴射ノズル群3、4を構成するスプレーノズル3b、4dの作動条件を制御すれば良い。この制御方法には、次に説明する第1の制御方法と第2の制御方法の2通りがある。
まず第1ステップとして、熱間圧延設備の加熱抽出炉における加熱抽出温度等に基づいて、仕上圧延装置2手前における鋼板の温度を予測する。
すなわち、加熱抽出温度は、鋼の材質、鋼スラブのサイズ、鋼板の製品区分などの条件により定まっている。また、加熱抽出炉から仕上圧延装置2の手前までの距離は熱間圧延設備毎に一定である。更に、加熱抽出炉から取り出された鋼スラブ(粗圧延鋼板)が仕上圧延装置2の手前まで搬送されるまでに鋼板5が自然放冷されるが、その際の鋼板温度の自然降下幅は経験則からある程度予測可能である。よって本ステップでは、仕上圧延装置2の手前における鋼板の温度を、加熱抽出温度、鋼スラブの材質、サイズ、粗圧延工程の条件、鋼板の搬送速度、搬送時間等によって予測する。
すなわち、鋼板温度の時間推移は、鋼板5が搬送される間に自然放冷によって徐々に低下する一方、第1、第2仕上圧延スタンドF1、F2の圧延時の加工発熱によって上昇するので、本ステップでは、自然放冷による温度降下幅と、加工発熱による温度上昇も経験則からある程度予測することが可能である。
従って、冷却条件は常に一定に設定するのではなく、鋼板温度の時間推移の予測データに対応させて冷却条件を可変にすることが望ましい。すなわち、鋼板5の温度降下幅を0K〜100Kの範囲で自在に制御しながら冷却するように冷却条件を設定することが望ましい。
まず第1ステップとして、仕上圧延装置手前における鋼板の温度を表面温度計で実測する。
次に第2ステップとして、第1の制御方法の第2ステップの場合と同様にして、第1、第2仕上圧延スタンドF1、F2における鋼板の温度の時間推移を、搬送速度、搬送時間、圧下率等の粗圧延条件、仕上圧延装置手前における鋼板の長手方向の温度分布等によって予測する。
よって、冷却条件は常に一定ではなく、鋼板温度の時間推移の予測データに対応させて冷却条件を可変にすることが望ましい。すなわち、鋼板5の温度降下幅を0K〜100Kの範囲で自在に制御しながら冷却するように冷却条件を設定することが望ましい。
具体的な冷却条件は、第1の制御方法の場合と同様に、冷却水の水量密度を経過時間によって制御したり、第1〜第4ノズルボックス3a、4a〜4cの作動を制御することにより調整できる。
図6には、熱間圧延設備の要部の構成模式図を示すとともに、鋼板の表面温度の時間推移を熱間圧延設備の構成に対応させたグラフを示している。
図6中のグラフにおいて、実線は、第3ノズルボックス4bから水を噴射させて冷却を行なった場合の鋼板の実際の表面温度の推移を示す線であり、点線は、冷却を行なわなかった場合の鋼板の表面温度の推移を示す線であって、先の第1または第2の制御方法の第2ステップにおいて予測された線である。鋼板の表面温度は、鋼板の温度は、温度計でポイント測定するとともに、伝熱計算を用いて温度推移を推定している。
したがって、以降、第1、第2ノズルボックスによる表面温度の降下代とは、断面平均温度の降下代にほぼ同様の「復熱後の表面温度の降下代」を言うことにする。
このように、第3ノズルボックス4bのみを作動させることによって、第2仕上圧延スタンドF2前における鋼板の温度降下幅を20Kにすることが可能となる。
図7中のグラフにおいて、実線は、第1ノズルボックス3aから水を噴射させて冷却を行なった場合の実際の鋼板の表面温度の推移を示す線であり、点線は、冷却を行なわなかった場合に予測される鋼板の表面温度の推移を示す線である。
これに対して図7のグラフの実線で示すように、第1ノズルボックス3aから水を噴射させて冷却を行なうと、鋼板の表面温度が冷却を行なわなかった場合(点線)と比べて、第1仕上圧延スタンドF1直前において鋼板温度が40K程度降下され、この40Kの降下幅は第2仕上圧延スタンドF2に至るまで維持される。
このように、第1ノズルボックス3aのみを作動させることによって、第2仕上圧延スタンドF2前における鋼板の温度降下幅を40Kにすることが可能となる。
図8中のグラフにおいて、実線は、第1、第3ノズルボックス3a、4bの両方から水を噴射させて冷却を行なった場合の実際の鋼板の表面温度の推移を示す線であり、点線は、冷却を行なわなかった場合に予測される鋼板の表面温度の推移を示す線である。
これに対して図8のグラフの実線で示すように、第1ノズルボックス3aから水を噴射させて冷却を行なうことにより、鋼板の表面温度が冷却を行なわなかった場合(点線)と比べて表面温度が40K程度降下されている。また第3ノズルボックス4bから水を噴射させて冷却を行なうことにより、鋼板の表面温度が冷却を行なわなかった場合(点線)と比べて表面温度が20K程度降下されている。
従って、第2仕上圧延スタンドF2の直前においては、鋼板の表面温度が合計で60K程度降下されている。
このように、第1、第3ノズルボックス3a、4bを作動させることによって、第2仕上圧延スタンドF2前における鋼板の温度降下幅を60Kにすることが可能となる。
図9中のグラフにおいて、実線は、第1、第2、第4ノズルボックス3a、4a、4cから水を噴射させて冷却を行なった場合の鋼板の表面温度の推移を示す線であり、点線は、冷却を行なわなかった場合に予測される鋼板の表面温度の推移を示す線である。
これに対して図9のグラフの実線で示すように、第1ノズルボックス3aから水を噴射させて冷却を行なうことにより、鋼板の表面温度が冷却を行なわなかった場合(点線)と比べて表面温度が40K程度降下されている。また第2、第4ノズルボックス4a、4cからそれぞれ水を噴射させて冷却を行なうことにより、鋼板の表面温度が冷却を行なわなかった場合(点線)と比べて表面温度がそれぞれ20K程度降下されている。
従って、第2仕上圧延スタンドF2の直前においては、鋼板の表面温度が合計で80K程度降下されている。
このように、第1、第2、第4ノズルボックス3a、4a、4cを作動させることによって、第2仕上圧延スタンドF2前における鋼板の温度降下幅を80Kにすることが可能となる。
図10中のグラフにおいて、実線は、第1〜第4ノズルボックス3a、4a〜4cから水を噴射させて冷却を行なった場合の実際の鋼板の表面温度の推移を示す線であり、点線は、冷却を行なわなかった場合に予測される鋼板の表面温度の推移を示す線である。
これに対して図10のグラフの実線で示すように、第1ノズルボックス3aから水を噴射させて冷却を行なうことにより、鋼板の表面温度が冷却を行なわなかった場合(点線)と比べて表面温度が40K程度降下されている。また第2〜第4ノズルボックス4a〜4cからそれぞれ水を噴射させて冷却を行なうことにより、鋼板の表面温度が冷却を行なわなかった場合(点線)と比べて表面温度がそれぞれ20K程度降下されている。
従って、第2仕上圧延スタンドF2の直前においては、鋼板の表面温度が合計で100K程度降下されている。
このように、第1〜第4ノズルボックス3a、4a〜4cを作動させることによって、第2仕上圧延スタンドF2前における鋼板の温度降下幅を100Kにすることが可能となる。
従って、第1〜第4ノズルボックス間を通過する時間を考えると、例えば、通過速度が80mpmの時には1.6秒、160mpmの時には0.8秒になる。
このことから、復熱時間は高々1.6秒以上有れば良いことになる。
従って、第4ノズルボックス4cによる冷却後から少なくとも1.6秒の搬送時間を空けて第2仕上圧延スタンドF2によって圧延加工を行なうことにより、鋼板の表面温度が比較的高い状態で圧延することができ、鋼板の品質の悪化を防止できることが裏付けられる。
具体的には、第4ノズルボックス4c後から第2仕上圧延スタンドF2までの距離を2.2m以上確保すれば良い。
同様に、第1仕上圧延スタンドの手前の冷却水噴射ノズル群から第1圧延スタンドに搬送されるまでの間に、2秒以上の搬送時間を設けると鋼板の表面温度が比較的高い状態で圧延することができ、鋼板の品質の悪化を防止できることが裏付けられる。
図12Aの実線で示すように、第1仕上圧延スタンドF1手前においては、鋼板の最先部ほど温度が高く、鋼板の最後部に向かうに従って表面温度が低下しており、最先部と最後部の間の温度差が大きくなっている。これは、上述したように、鋼スラブ(鋼板)が粗圧延工程を経ることによって、鋼板長さが数倍から数十倍まで伸ばされ、鋼板の最先部と最後部との間で仕上圧延装置手前に到達する時間に時間差が発生し、最後部になるほど自然放冷の影響を受けるためである。
このような状態の鋼板に対し、最先部から最後部に至るまでの間、同じ冷却条件で冷却を行なうと、図12Aの点線で示すように、最後部の表面温度が下がり過ぎてしまう。
これにより、図12Bの実線で示すように、鋼板の中央部から最後部に至る間において、温度減少の傾斜が緩やかになり、鋼板の最先部と最後部における温度差が小さくなる。
従って、本実施形態の熱間圧延方法においては、鋼板の搬送速度に対応させて鋼板の温度降下幅を0〜100Kの範囲で制御することにより、搬送速度が変化する場合であっても鋼板の温度降下幅を一定にすることが可能になる。
なお、0K〜100Kの制御は水量制御と、ノズル列の冷却水のon/offを併用して行っても良い。
また、本実施形態によれば、空きスペースが限られた既存の設備に対しても適用することができる。
更に、本実施形態によれば、鋼板の品種や圧延条件によって冷却による温度降下幅を細かく制御することができ、これにより例えば、鋼板の過冷却を防止してスケール痕の発生やフェライト相の析出を防止して、熱間圧延鋼板の品質を高めることができる。
また、冷却による温度降下幅を細かく制御することが可能となるので、加熱抽出温度の自由度が出ることになり、加熱スケジュールの調整を緩和することができる。
また、本実施形態によれば、第1仕上圧延スタンド前の第1冷却水噴射ノズル群の冷却能力が、第2冷却水噴射ノズル群の能力に比べて低いので、第1仕上圧延スタンド手前における鋼板温度が比較的高いままとなり、これにより第1仕上圧延スタンドにおける鋼板の変形抵抗が小さくなるので、圧延のための電力を低減できる。
更に、本実施形態によれば、圧延の間隔が一定になるので、生産スケジュールの調整を行いやすくできる。
更にまた、本実施形態によれば、鋼板の搬送を停止させることがないので、テーブルロールの負荷を少なくすることができる。
さらに、第1仕上圧延スタンドで50%の圧下を行い、第1仕上圧延スタンドでの圧延後の鋼板の厚みは20mmとした。
第1冷却水噴射ノズル群を通過時の鋼板の通板速度は50mpmであり、第2冷却水噴射ノズル群通過時の光波の通板速度は100mpmであった。
以上の条件で鋼板の熱間圧延加工を行ない、鋼板の最先部の温度と、経過時間との関係を調べた。結果を図13に示す。
尚、図13における0秒は鋼板が加熱炉から出た時点である。
第1、第2冷却水噴射ノズル群を作動させなかったこと以外は上記実施例1と同様にして、図1に示した熱間圧延設備を用いて、鋼板の熱間圧延加工を行なった。そして、鋼板の熱感圧延加工を行ない、鋼板の最先部の温度と、経過時間との関係を調べた。結果を図13に示す。
例えば、上記の実施形態では、第2冷却水噴射ノズル群4が複数のスプレーノズルで構成された例について説明したが、本発明はこれに限らず、ラミナーフローノズルを用いても良い。この場合、ラミナーフローノズルを複数用意し、鋼板の搬送方向に沿って各ノズルを配列させ、各ノズルからの水流のオンオフを制御することによって第2冷却水噴射ノズル群の冷却能力を段階的に制御しても良い。
また、第2冷却水噴射ノズル群4を構成する複数のノズルを、柱状の水噴流を噴射させることが可能なノズルにしても良い。
Claims (6)
- 鋼板の搬送方向に沿って順次設置された第1仕上圧延スタンド及び第2仕上圧延スタンドを含む複数の仕上圧延スタンドからなる仕上圧延装置を少なくとも備えた鋼板の熱間圧延設備において、
前記第1仕上圧延スタンドの手前に鋼板冷却用の第1冷却水噴射ノズル群が備えられるとともに、前記第1仕上圧延スタンドと前記第2仕上圧延スタンドの間に鋼板冷却用の第2冷却水噴射ノズル群が備えられ、前記第1、第2冷却水噴射ノズル群による前記鋼板冷却時の温度降下幅が0K〜100Kの範囲で鋼板の全幅に亘って均一で、かつ自在に制御可能とされていることを特徴とする鋼板の熱間圧延設備。 - 前記第1冷却水噴射ノズル群が、前記鋼板の搬送方向及び前記鋼板の幅方向のそれぞれに沿って配列された複数のフルコーン型スプレーノズルからなり、前記スプレーノズルから各々略充錐体形状の水噴流を噴射させ、前記各水噴流の噴流衝突領域が鋼板の幅方向に沿って少なくとも相互に連続するとともに鋼板の幅方向に対する傾斜方向に沿って少なくとも相互に連続するように配列された複数のフルコーン型スプレーノズルからなることを特徴とする請求項1に記載の鋼板の熱間圧延設備。
- 前記第2冷却水噴射ノズル群が、前記鋼板の搬送方向及び前記鋼板の幅方向のそれぞれに沿って配列された複数のフルコーン型スプレーノズルからなり、前記スプレーノズルから各々略充錐体形状の水噴流を噴射させ、前記各水噴流の噴流衝突領域が鋼板の幅方向に沿って少なくとも相互に連続するとともに鋼板の幅方向に対する傾斜方向に沿って少なくとも相互に連続するように配列された複数のフルコーン型スプレーノズルからなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の鋼板の熱間圧延設備。
- 前記鋼板が、前記第2冷却水噴射ノズル群から前記第2仕上圧延スタンドに搬送されるまでの間に、1.6秒以上の搬送時間が確保されるように、前記第2冷却水噴射ノズル群と前記第2仕上圧延スタンドとが離間されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の鋼板の熱間圧延設備。
- 鋼板の搬送方向に沿って順次設置された第1仕上圧延スタンド及び第2仕上圧延スタンドを含む複数の仕上圧延スタンドからなる仕上圧延装置を少なくとも備えた熱間圧延設備による鋼板の熱間圧延方法であって、
前記第1仕上圧延スタンドの手前に鋼板冷却用の第1冷却水噴射ノズル群を配置するとともに、前記第1仕上圧延スタンドと前記第2仕上圧延スタンドの間に鋼板冷却用の第2冷却水噴射ノズル群を配置し、前記第1、第2冷却水噴射ノズル群によって前記鋼板を冷却する際に、前記鋼板の温度降下幅を0K〜100Kの範囲で鋼板の全幅に亘って均一で、かつ自在に制御しながら冷却することを特徴とする鋼板の熱間圧延方法。 - 前記鋼板が、前記第1仕上圧延スタンドの手前の冷却水噴射ノズル群から前記第1圧延スタンドに搬送されるまでの間に、2秒以上の搬送時間を設け、前記第2冷却水噴射ノズル群から前記第2仕上圧延スタンドに搬送されるまでの間に、1.6秒以上の搬送時間を設けることを特徴とする請求項5に記載の鋼板の熱間圧延方法。
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