JP2007048713A - 蛍光ランプの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 蛍光ランプは、ガラス管21a,21b,21c,21dの曲がりを矯正する矯正工程と、矯正されたガラス管の内面に蛍光体を含んだ懸濁液を塗布する塗布工程と、塗布された懸濁液を乾燥・焼成して蛍光体層を形成する形成工程と、ガラス管の端部を電極封着により封止する封止工程とを経てなされる。前記ガラス管は、紫外線を遮蔽する酸化チタンを含み、前記矯正工程中におけるガラス管21a,21b,21c,21dの温度が、酸化チタンの結晶核が生成する温度未満である。
【選択図】 図2
Description
蛍光ランプは、ガラス管と、当該ガラス管の内面に形成された蛍光体層と、ガラス管内に封入された水銀(発光物質である)と、ガラス管の両端部に封着された電極とを備える。
このため、このような蛍光ランプをバックライトユニット等に用いると、前記313nmの紫外線の影響により拡散板などが劣化・変色して、その透明性・透光性が低下してしまうという問題がある。
図6は、端部に青濁部が発生した蛍光ランプ51の概略図である。
この青濁部55,55は、図6に示すように、ガラス管53の端部近くに発生している。蛍光体層で変換された光は、前記青濁部を通り抜けられないが、この青濁部は、ガラス管(ランプ)の端部にあるため、ランプ全体の光束に対する影響は少なく、特に使用上問題はないが、外観上好ましくない。
本発明は、上記の課題に鑑み、ガラス管を構成するガラスに、紫外線を遮蔽できる金属酸化物を添加しても、ガラス管の端部に濁りが発生しない蛍光ランプの製造方法を提供することを目的とする。
発明者らの検討により、上記課題を解決するためには、本発明に係る蛍光ランプの製造方法は、ガラス管の曲がりを矯正する矯正工程と、矯正されたガラス管の内面に蛍光体を含んだ懸濁液を塗布する塗布工程と、塗布された懸濁液を乾燥・焼成して蛍光体層を形成する形成工程と、ガラス管の端部を封止する封止工程とを経てなされる方法であって、前記ガラス管は、紫外線を遮蔽する金属酸化物を含み、前記矯正工程及び前記形成工程のうち、少なくとも1つの工程中におけるガラス管の温度が、前記金属酸化物の結晶核が生成する温度未満であることを特徴とするのが有効である。
また、ガラス管の曲がりを矯正する矯正工程と、矯正されたガラス管の内面に蛍光体を含んだ懸濁液を塗布する塗布工程と、塗布された懸濁液を乾燥・焼成して蛍光体層を形成する形成工程と、ガラス管の端部を封止する封止工程とを経てなされる蛍光ランプの製造方法であって、前記ガラス管は、紫外線を遮蔽する金属酸化物を含み、前記封止工程におけるガラス管の温度が、前記金属酸化物の結晶核が成長する温度未満であることを特徴とするのも有効である。
また、工程中におけるガラス管の温度が、前記金属酸化物の結晶核が生成する温度未満である、前記少なくとも1つの工程は、矯正工程であることを特徴としている。
<実施の形態>
1.冷陰極型蛍光ランプの構成
図1は、冷陰極型蛍光ランプの概略構成を示す平面断面図である。
水銀は、発光物質として用いられ、輝線スペクトル254nm、313nmなどにピークを有する紫外線を放射する。
なお、一般的なホウケイ酸ガラスの組成の構成は、酸化ケイ素(SiO2)が75(wt%)、酸化アルミニウム(Al2O3)が3(wt%)、酸化ホウ素(B2O3)が15(wt%)、酸化ナトリウム(Na2O)が5(wt%)、酸化カルシウム(CaO)が2(wt%)、酸化アンチモン(Sb2O3)が0.05(wt%)であり、これをベースに酸化チタンを3.9(wt%)程度添加すると共に、目的にあわせて他の組成も添加している(これによってガラスの組成の構成は、上記一般的なホウケイ酸ガラスの組成の構成と当然異なる。)。
これは、酸化チタンの含有量が3wt%未満のときは、紫外線を遮蔽する効果が得られにくくなり、逆に、酸化チタンの含有量が10wt%を越えると、ガラス化せずに溶融直後に結晶化してしまうからである。
また、ガラス管3の内面には、蛍光体層11が形成されている。この蛍光体層11は、発光物質である水銀から放射された紫外線(主に254nm)を所定の可視光に変換するためのものであり、例えば、希土類の蛍光体から構成される。蛍光体としては、例えば、赤(Y2O3:Eu3+)、緑(LaPO4:Ce3+,Tb3+)及び青(BaMg2Al16O27:Eu2+)が用いられる。
上記構成の冷陰極型蛍光ランプ1は、以下の工程をその順で行うことで製造される。つまり、直管状のガラス管を準備する準備工程、準備したガラス管の曲がりを矯正する矯正工程、矯正されたガラス管の内面に蛍光体を含んだ懸濁液を塗布する塗布工程、塗布された懸濁液を乾燥する乾燥工程、乾燥した懸濁液を焼成する焼成工程、焼成後のガラス管の端部に電極を封着する封着工程等を経て製造される。
(1)矯正工程
図2は、ガラス管の橋正方法の槻略図を示す図である。
先ず、ガラス管21a,21b,21c,21dを矯正する矯正装置について簡単に説明する。
矯正筒24a,24b,24c,24dは、載置しているローラー22a,22b,22c,22d,22eの外周面に接触しており、ローラー22a,22b,22c,22d,22eの回転によりローラー22a,22b,22c,22d,22eの回転と反対方向に回転するようになっている。
(2)塗布工程及び乾燥工程
図3は、塗布工程及び乾燥工程を説明する図である。
上記矯正工程で矯正されたガラス管30と蛍光体を含んだ懸濁液32を用意する。懸濁液32としては、例えば、蛍光体の他、バインダ、結着剤及び有機溶剤が混合されたものが用いられる。なお、ここでは、バインダにはニトロセルロースが、結着材にはホウ酸バリウムカルシウム等に代表される低融点ガラス粉末が、有機溶剤には酢酸ブチルがそれぞれ用いられている。
つぎに、図3の(a)に示すように、懸濁液32がガラス管30の内部の所定位置まで吸引されると、その吸引を止めてガラス管30を引上げ、ガラス管30の下端開口を懸濁液32の液面から出す。
次に、ガラス管30の上端開口から乾燥用エア34を流入させると共に、ガラス管30の外周に温風を当てて、懸濁液の乾燥を促進させる。
焼成工程では、乾燥した懸濁液を焼成して、蛍光体層を形成する。具体的には、上記(1)の矯正工程で用いた矯正装置と同じ装置で、懸濁液が乾燥したガラス管30を筒(矯正筒)の内部に配し、ローラーを回転させることで、懸濁液の塗布されたガラス管30を回転させることにより行う。このときの加熱炉の温度は、ガラス管30の温度が約660(℃)となるように設定されている。
(4)封着工程
封着工程は、電極5,7をガラス管30の端部に封着するとともに、この封着によりガラス管の端部が封止される。従って、ここでの封着工程は、本発明の封止工程に相当する。
3.考察
(1)青濁部について
(1−1)発生原因
発明者らは、紫外線を遮蔽できる酸化チタンを含有するガラス管を用いて蛍光ランプを製造したところ、ガラス管の端部近くに青濁部が発生するのが分かった。発明者らは、この青濁部の発生原因について種々検討した。
その結果、青濁部は、酸化チタンが結晶化したものであることが判明し、その発生は、まず、ガラスの温度が600(℃)前後で、やがて青濁部になる酸化チタンである結晶の結晶核が生成(600(℃)前後で結晶核が生成されるピークがある。)し、この結晶核はガラスの温度が990(℃)前後で成長(990(℃)前後で結晶核が成長するピークがある。)して、それが青濁部になると考えられる。
以上のことから、蛍光ランプを従来の方法で製造した場合の青濁部の発生メカニズムは、以下であると考えられる。
(1−2)対策
発明者らは、以上の考察から、青濁部の発生を抑えるには、矯正工程及び焼成工程におけるガラス管の処理時の温度を酸化チタンの結晶核が生成される温度より低くし、さらに、封着工程におけるガラス管の端部(その周辺も含む)の処理時の温度を結晶核の成長する温度より低くして処理すれば、青濁部の発生を抑えられると考えた。
このようなことから、発明者らは、青濁部の抑制の確認試験を行うために、矯正工程におけるガラス管の加熱温度を下げて、蛍光ランプの製造を行った(この製造内容は、上記3)の製造方法と同じである。)結果、外観上問題となるような青濁部が発生するようなことはなかった。
(2)矯正工程の加熱条件について
発明者らは、上記青濁部発生の検討により、酸化チタンの結晶核が生成される温度より低い温度条件で矯正工程又は乾燥工程を行えば良いことを見出した。そこで、発明者らは、矯正工程の温度条件を最適化すべく、ガラス管の矯正度と加熱温度との関係を調査した。
図4は、ガラス管の矯正度の測定を説明する図である。
ガラス管30の矯正度の測定は、同図に示すように、ガラス管30が、自己の軸心を回転軸として回転可能な状態で、その両端で支持され、ガラス管30を回転させたときの、ガラス管30の中央部外周における変位(以下、この差を「曲がり」ともいう。)、つまり、図中の「X」を測定し、このXの数値の大小で判定している。
T−30 ≦ GT ≦ T+100
なお、この範囲(480(℃)〜610(℃))での、ガラス材料の粘度は、1011(dPa・sec)〜1014(dPa・sec)となる。。
ところが、長いランプを従来の方法で製造すると、ランプの輝度むらが大きくなる傾向にあった。この原因は、ランプを構成するガラス管の曲がりが大きく(矯正工程での処理は従来の方法で実施している。)、この曲がりに起因してガラス管の内面に形成される蛍光体層の厚みがばらついたためと考えられている。なお、発明者らの検討では、ガラス管の曲がりが、0.2(mm)以上になると、ガラス管の内面に形成される蛍光体層の厚みむらが大きくなることが分かっている。
つまり、ガラス管の温度を略560(℃)になるようにして矯正工程での処理を行うと、ランプの端部に青濁部ができるのを抑制できると共に、ガラス管の曲がりを効率良く矯正できることが分かった。
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明は上記した形態に限られないことは言うまでもなく、例えば、以下のような形態とすることも可能である。
1.蛍光ランプの種類
(1)ランプの種類
上記実施の形態で説明した本発明に係る蛍光ランプは、ガラス管内に冷陰極型の電極を備えた冷陰極型蛍光ランプであったが、勿論、冷陰極型の電極の代わりに熱陰極型の電極を用いた熱陰極型蛍光ランプでも良い。なお、熱陰極型蛍光ランプを用いたものとしては、一般用照明用のランプ、例えば、コンパクト型蛍光ランプ、電球形蛍光ランプ等がある。
図5は、外部電極型蛍光ランプの概略構成を示す平面断面図である。
外部電極型蛍光ランプ41は、図5に示すように、両端が封止されたガラス管43と、当該ガラス管43の両端外周に設けられた電極45,47とを備え、誘電体バリア放電を利用したものであり、例えば、バックライトユニットの光源として用いられる。
このガラス管43には、例えば、ホウケイ酸ガラスが用いられ、実施の形態と同様に、313nmの紫外線を遮蔽できる酸化チタンが、例えば、3(wt%)以上、10(wt%)以下の範囲、例えば、4wt%添加されている。なお、酸化チタンの含有量が、10wt%を越えると、ガラス化せずに溶融直後に結晶化してしまう問題もある。
外部電極型蛍光ランプ41は、以下の工程をその順で行うことで製造される。つまり、直管状のガラス管を準備する準備工程、準備したガラス管の曲がりを矯正する矯正工程、矯正されたガラス管の内面に蛍光体を含んだ懸濁液を塗布する塗布工程、塗布された懸濁液を乾燥する乾燥工程、乾燥した懸濁液を焼成する焼成工程、焼成後のガラス管の端部を封止する封止工程、封止されたガラス管の両端に電極を装着する装着工程等を経て製造される。
(2)ランプの形状
実施の形態における蛍光ランプは、直管形状をしていたが、本発明に係る蛍光ランプの形状は特に限定するものでなく、例えば、「U」形状、「V」形状、「W」形状をしていても良いし、さらには、「U」形状のガラス管を複数本(例えば、3本)連結した形状等をしていても良い。
2.ガラス管の材質
実施の形態のランプに用いたガラス管の材質は、ホウケイ酸ガラスであったが、他の材質、例えば、ソーダガラス、鉛フリーガラスでも良い。但し、これらにも、紫外線を遮蔽する金属酸化物を所定量含有させる必要がある。
上記実施の形態では、青濁部となる結晶核の生成を抑制するために、矯正工程でのガラス管の温度を560(℃)に設定して行ったが、上記(1−2)の対策の欄で説明したように、焼成工程でのガラス管の温度或いは封止工程でのガラス管の端部(周辺含む)の温度を低くすることでも同様の効果が得られると考えられる。当然、矯正工程及び焼成工程で両工程のガラス管の温度が結晶核の生成が行われるピーク温度より低くなるようにし、さらに、封止工程でガラス管の端部及びその周辺の温度が結晶核の成長が行われるピーク温度より低くなるようにして各処理を行っても良い。
また、封止工程での加熱条件を変更する場合には、封止方法を検討する必要が生じる。なお、封止工程を、例えば、セメント等を用いて封止すれば、加熱する必要がなく、青濁部を抑制することができると考えられる。
実施の形態では、紫外線を遮蔽する金属酸化物として酸化チタンを用いて説明したが、他の金属酸化物であっても良い。なお、313nmの紫外線を遮蔽する必要があり、このような金属酸化物としては、酸化セリウム(CeO2)、酸化モリブデン(MoO3)、酸化タングステン(WO3)等がある。但し、これらの金属酸化物における結晶核の生成、成長の促進する温度が、酸化チタンと異なるので、実験等を行うことで、矯正工程、焼成工程、封止工程等の加熱条件を決定する必要がある。
本発明に係る矯正工程、形成工程及び封止工程は、実施の形態で説明した方法に限定するものではなく、他の方法であっても良い。但し、他の方法を用いる場合であっても、矯正工程、形成工程における、少なくとも一方の工程でのガラス管の温度が、金属酸化物の結晶核を生成する温度より低くければ良く、また、封止工程でのガラス管の温度が、金属酸化物の結晶核が成長する温度より低くければ良い。
3 ランプ
5,7 電極
11 蛍光体層
20 矯正装置
32 懸濁液
41 外部電極型蛍光ランプ
43 ガラス管
45,47 電極
49 蛍光体層
Claims (7)
- ガラス管の曲がりを矯正する矯正工程と、矯正されたガラス管の内面に蛍光体を含んだ懸濁液を塗布する塗布工程と、塗布された懸濁液を乾燥・焼成して蛍光体層を形成する形成工程と、ガラス管の端部を封止する封止工程とを経てなされる蛍光ランプの製造方法であって、
前記ガラス管は、紫外線を遮蔽する金属酸化物を含み、
前記矯正工程及び前記形成工程のうち、少なくとも1つの工程中におけるガラス管の温度が、前記金属酸化物の結晶核が生成する温度未満である
ことを特徴とする蛍光ランプの製造方法。 - 前記金属酸化物は、酸化チタン、酸化セリウム、酸化モリブデン、酸化タングステンの内少なくとも1つを含み、前記ガラス管に3wt%以上含まれていることを特徴とする請求項1に記載の蛍光ランプの製造方法。
- 工程中におけるガラス管の温度が、前記金属酸化物の結晶核が生成する温度未満である、前記少なくとも1つの工程は、矯正工程であることを特徴とする請求項1又は2に記載の蛍光ランプの製造方法。
- 前記矯正工程中におけるガラス管の温度GT(℃)は、当該ガラス管のガラス転移点をT(℃)とすると、
T−30 ≦ GT ≦ T+100
を満たす
ことを特徴とする請求項3に記載の蛍光ランプの製造方法。 - ガラス管の曲がりを矯正する矯正工程と、矯正されたガラス管の内面に蛍光体を含んだ懸濁液を塗布する塗布工程と、塗布された懸濁液を乾燥・焼成して蛍光体層を形成する形成工程と、ガラス管の端部を封止する封止工程とを経てなされる蛍光ランプの製造方法であって、
前記ガラス管は、紫外線を遮蔽する金属酸化物を含み、
前記封止工程におけるガラス管の温度が、前記金属酸化物の結晶核が成長する温度未満である
ことを特徴とする蛍光ランプの製造方法。 - ガラス管の内面に蛍光体を含んだ懸濁液を塗布する塗布工程と、塗布された懸濁液を乾燥・焼成して蛍光体層を形成する形成工程と、ガラス管の端部を封止する封止工程とを経てなされる蛍光ランプの製造方法であって、
前記ガラス管は、紫外線を遮蔽する金属酸化物を含み、
前記形成工程中におけるガラス管の温度が、前記金属酸化物の結晶核が生成する温度未満である
ことを特徴とする蛍光ランプの製造方法。 - ガラス管の内面に蛍光体を含んだ懸濁液を塗布する塗布工程と、塗布された懸濁液を乾燥・焼成して蛍光体層を形成する形成工程と、ガラス管の端部を封止する封止工程とを経てなされる蛍光ランプの製造方法であって、
前記ガラス管は、紫外線を遮蔽する金属酸化物を含み、
前記封止工程におけるガラス管の温度が、前記金属酸化物の結晶核が成長する温度未満である
ことを特徴とする蛍光ランプの製造方法。
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