JP2007046954A - 電線・ケーブルの断線検出方法及びその装置 - Google Patents

電線・ケーブルの断線検出方法及びその装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 各電流センサの周波数特性や感度が異なっていても、検出誤差をなくして電線・ケーブル導体の素線断線を確実に検出できる電線・ケーブルの断線検出方法を提供する。
【解決手段】 測定対象の電線・ケーブル導体2a,2bに接続する注入線3a,3bを互いに切り替えて少なくとも2つの電線・ケーブル導体2a,2bに注入したパルス信号のパルス電流の経時変化を、その注入線3a,3bに設けた各電流センサ7a,7bでそれぞれ検出して、これら電流波形を基に測定対象の電線・ケーブル導体2a,2bの素線断線を検出する方法である。
【選択図】 図1

Description

本発明は、電線・ケーブル導体の素線部分断線を検出する電線・ケーブルの断線検出方法及びその装置に関する。
一般に電線・ケーブル導体は複数の素線を撚り合わせて構成される。素線に断線が生じると、電線・ケーブル導体の断面積が減少してインピーダンスが上昇するなどの不具合につながる。
電線・ケーブルの断線検出、とりわけ電線・ケーブル導体の素線の部分断線検出に用いられる方法として、電線・ケーブルの導体抵抗を測定する方法が一般的であり、以下の2つの方法が知られている。
1)電線・ケーブルの両端に直流電圧を印加し、このとき流れる電流を計測してその電流と印加電圧とから電線・ケーブル導体の直流抵抗を測定し、この抵抗値の変化(予め健全時に求めておいた抵抗値に対する変化)から素線断線を検出する方法。
2)上記直流電圧の代わりに交流電圧を印加することで、電線・ケーブル導体の交流抵抗を測定し、この抵抗値の変化から素線断線を検出する方法(例えば、特許文献1参照)。
また、電線・ケーブル導体にパルス信号を印加(注入)し、そのとき電線・ケーブル導体に流れる電流を計測し、その電流波形を参照用の電流波形と比較し、その波形差から電線・ケーブル導体の断線を検出する方法であって、
3)予め対象の電線・ケーブル導体に上記パルス信号を印加してそのときの電流波形を参照用の電流波形として記録しておき、経時後に当該電線・ケーブル導体で計測した電流波形を記録されている参照用の電流波形と比較することでそれぞれの電線・ケーブル導体の素線断線を検出する方法や、
4)同一構造を有する複数の電線・ケーブル導体にそれぞれ上記パルス信号を印加し、得られた複数の電流波形を相互に参照用の電流波形として比較し合うことでそれぞれの電線・ケーブル導体の素線断線を検出する方法
なども提案されている。
特公平7−69375号公報(特開平2−95273号公報)
しかしながら、上述した1)や2)の方法は、使用中の電線・ケーブルには適用できない。すなわち、電線・ケーブルは送電ケーブルや機器内の電力ケーブル、信号ケーブルとして配線されており、送電や機器の運転中、つまり電力または信号を通電しているときには、導体抵抗が測定できないので、実施できない。
このような電線・ケーブル導体の素線断線を検出するためには、送電や機器の運転を停止し、電線・ケーブルを接続されている機器から外し、電線・ケーブル単体としてから導体抵抗の測定を行う必要がある。
また、素線の部分断線では、断線部の導体抵抗変化が全抵抗に比して小さいため、あるいは電線・ケーブルを曲げることで断線部の導体が接触したり離れたりするため、一回の測定では導体抵抗と断線の関係が明確でなく、断線の検出が難しかった。
4)の方法は、使用中の電線・ケーブルにも使用できる方法である。しかし、測定対象の電線・ケーブル導体の素線に部分断線がない場合であっても、パルス信号のパルス電流を検出する各電流センサの周波数特性や感度が必ずしも同一でないため、各電流センサの検出誤差によって測定される電流波形が異なって観察され、その結果、素線の部分断線があると誤判定する場合がある。
そこで、本発明の目的は、各電流センサの周波数特性や感度が異なっていても、検出誤差をなくして電線・ケーブル導体の素線断線を確実に検出できる電線・ケーブルの断線検出方法及びその装置を提供することにある。
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、請求項1の発明は、測定対象の電線・ケーブル導体に、その導体にパルス信号を注入する注入線をそれぞれ接続し、これら注入線に電流センサを設け、注入したパルス信号のパルス電流の経時変化を電流センサで検出して、その電流波形から電線・ケーブル導体の素線断線を検出する方法において、測定対象の電線・ケーブル導体に接続する注入線を互いに切り替えて少なくとも2つの電線・ケーブル導体に注入したパルス信号のパルス電流の経時変化を、その注入線に設けた各電流センサでそれぞれ検出して、これら電流波形を基に測定対象の電線・ケーブル導体の素線断線を検出する電線・ケーブルの断線検出方法である。
請求項2の発明は、上記測定対象の電線・ケーブル導体は、同一構造を有する2つの電線・ケーブル導体からなる請求項1記載の電線・ケーブルの断線検出方法である。
請求項3の発明は、測定対象の電線・ケーブル導体に、その導体にパルス信号を注入する注入線をそれぞれ接続し、これら注入線に電流センサを設け、注入したパルス信号のパルス電流の経時変化を電流センサで検出して、その電流波形から電線・ケーブル導体の素線断線を検出する装置において、測定対象の電線・ケーブル導体に接続する注入線を互いに切り替える注入線切替器と、少なくとも2つの電線・ケーブル導体に注入したパルス信号のパルス電流の経時変化をそれぞれ検出する各電流センサと、これら電流波形を記録する波形記録器と、各電流センサと波形記録器間を接続する検出線を互いに切り替える検出線切替器と、記録した電流波形を基に測定対象の電線・ケーブル導体の素線断線を検出する制御演算部とを備えた電線・ケーブルの断線検出装置である。
請求項4の発明は、上記制御演算部は、上記注入線切替器と上記検出線切替器とを、その結線状態が常に同一であるように同期して周期的に切り替え、その周期の整数倍で時間平均して得られた複数の電流波形を比較し、その波形差から測定対象の電線・ケーブル導体の素線断線を検出する請求項3記載の電線・ケーブルの断線検出装置である。
請求項5の発明は、上記測定対象の電線・ケーブル導体は、同一構造を有する2つの電線・ケーブル導体からなり、上記注入線切替器と上記検出線切替器とは、それぞれストレート結線とクロス結線を切り替える2対2の線路切替器からなる請求項3または4記載の電線・ケーブルの断線検出装置である。
本発明によれば、各電流センサの周波数特性や感度が異なっていても、検出誤差をなくして電線・ケーブル導体の素線断線を確実に検出できるという優れた効果を発揮する。
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
図1は、本発明の好適な実施の形態を示す電線・ケーブルの断線検出装置のブロック図である。
図1に示すように、本実施の形態に係る電線・ケーブルの断線検出装置1では、測定対象の電線・ケーブル導体としてのケーブル導体2a,2bに、その導体2a,2bにパルス信号を注入する(印加する)注入線3a,3bがそれぞれ接続される。
この装置1は、高周波パルスを発生する高周波パルス発生器4と、この高周波パルスのパルス信号をケーブル導体2a,2bに注入するためのコンデンサ5a,5bと、各注入線3a,3bを互いに切り替える注入線切替器6と、各注入線3a,3bに流れるパルス信号のパルス電流の経時変化をそれぞれ検出する電流センサ7a,7bと、これら電流波形を記録測定する波形記録測定器8と、各電流センサ7a,7bと波形記録測定器8間をそれぞれ接続する各検出線9a,9bを互いに切り替える検出線切替器10と、記録した電流波形を基にケーブル導体2a,2bの素線部分断線を検出する制御演算部(図示せず)とを備える。
各ケーブル導体2a,2bは同一構造を有する。注入線3は、高周波パルス発生器4に接続され、途中で2本の注入線3a,3bに分岐される。各注入線3a,3bの一端側には電流センサ7a,7bがそれぞれ設けられ、他端側にはコンデンサ5a,5bがそれぞれ接続される。これら電流センサ7a,7bとコンデンサ5a,5b間の各注入線3a,3bには注入線切替器6が接続される。また、各電流センサ7a,7bと波形記録測定器8間の各検出線9a,9bには検出線切替器10が接続される。
注入線切替器6と検出線切替器10とは、それぞれストレート結線(図1中の実線)とクロス結線(図1中の点線)を切り替える2対2(2入力2出力型)の線路切替器である。各電流センサ7a,7bは、各注入線3a,3bに流れるパルス信号のパルス電流によってこれら注入線3a,3bの周囲に生じる誘導電流を検出する非接触式の電流センサ(例えば、高周波CT)である。
制御演算部は、図3および図4で後述するが、注入線切替器6と検出線切替器10とを、その結線状態が常に同一であるように同期して周期的に切り替え、その周期の整数倍で時間平均して得られた複数の電流波形を比較し、その波形差から各電線・ケーブル導体の素線断線を検出する機能も有する。この制御演算部は、波形記録測定器8に接続される別の機器に備えるようにしてもよいし、波形記録測定器8に備えるようにしてもよい。
図1の例では、測定対象のケーブル導体は、移動するロボット(例えば、溶接ロボット)などの機器11と、移動しない商用周波電源などの電源12との間をつないで機器11に電力を供給する移動用ケーブル2を構成する3本のケーブル導体2a〜2cである。機器11が移動することによって移動用ケーブル2は繰り返し屈曲を受けるので、各ケーブル導体2a〜2cは素線断線が生じやすい状況にある。図1には、これらのうち2本のケーブル導体2a,2bにパルス信号を印加する例を示した。
各ケーブル導体2a,2bには、両端、すなわち機器11の直前と電源12の直前とに高周波阻止用のインダクタ13,14が挿入されているとよい。
装置1では、測定対象のケーブル導体2a〜2cが電力または信号を通電中、つまり機器11が運転中にも実施できる。ただし、断線検出のためにケーブル導体2a〜2cに印加する電圧信号がCPUやマイコンなどを備えた機器11にダメージや誤動作を与えないようにする必要がある。また、ケーブル導体2a〜2cに本来流れている通信信号や商用周波数電流などが電流計測に影響を与えないようにする必要がある。これらの観点から、機器11に通常備わっているノイズカット機能で除去できる程度の信号、つまり機器11にとって平凡なノイズと同等の電圧信号として高周波の単発パルス(インパルス)を使用する。これがパルス信号である。
このような高周波の単発パルスであるパルス信号をケーブル導体2a,2bに注入しやすくするために、高周波インピーダンスが小さいコンデンサ5a,5bを使用する。一方、各電流センサ7a,7bとしては、商用周波数電流を除去でき、しかもケーブル導体2a,2bに対して非接触でパルス電流が計測できる高周波CTを使用するとよい。
さらに、装置1では、電源12にパルス信号によるパルス電流が流入しないように、高周波阻止用のインダクタ14を使用する。機器11のノイズカット機能が弱い場合は機器11のほうにもインダクタ13を使用する。これにより、機器11および電源12にはパルス信号によるパルス電流が流れにくくなる。この場合、それぞれのケーブル導体2a〜2cはインダクタ13,14間が断線検出対象区間となる。各注入線3a,3bは、断線検出対象区間内のケーブル導体2a,2bにそれぞれ接続される。
次に、電線・ケーブルの断線検出装置1の動作を説明する。以下の説明では、特に断らない限り、注入線切替器6と検出線切替器10とはストレート結線のままとする。
高周波パルス発生器4で発生したパルス信号は、電流センサ7a,7bの取り付け位置を通過し、コンデンサ5a,5bを介してケーブル導体2a,2bに注入される。このパルス信号はケーブル導体2a,2bを伝搬し、インピーダンスが変化しているインダクタ13で反射する。あるいはインダクタ13がない場合、パルス信号はケーブル導体2a,2bと機器11との接続部などのインピーダンスが変化する位置で反射する。反射してケーブル導体2a,2bを逆向きに伝搬するパルス信号は、電流センサ7a,7bの取り付け位置を上述とは逆方向に通過することになる。
高周波パルス発生器4でパルス信号を発生した瞬間から反射したパルス信号が電流センサ7a,7bの取り付け位置を通過するまでの間、電流センサ7a,7bで検出した電流信号を波形記録測定器8に記録する。
ここまでの動作を一定時間ごとに繰り返し行う。図示しない制御演算部では、過去に記録された電流波形を参照用の電流波形とし、今回、計測、記録された電流波形を参照用の電流波形と比較することにより、各ケーブル導体2a,2bの素線部分断線があるかどうかを判定する。具体的には、両電流波形の差をとり、その波形差が有意の大きさであれば断線有りと判定する。さらに、制御演算部では、波形差が生じている時間的位置(時点)から断線位置を特定する。
また、図1のように同一構造を有する複数のケーブル導体2a〜2cが一括してケーブルになっている場合、それぞれのケーブル導体2a〜2cにおけるインパルス応答電流波形はほぼ同じである。よって、それぞれのケーブル導体2a〜2cにパルス信号を注入し、得られた複数の電流波形を相互に参照用の電流波形として比較し合うことで、その波形差からそれぞれのケーブル導体2a〜2cの素線部分断線を検出することができる。例えば、図1のような機器11、移動用ケーブル2が以前から設置されて稼働している場合、すでに素線が部分的に断線している疑いがある。このとき、各ケーブル導体2a〜2cが全く同じ位置で断線している可能性は極めて小さいので、任意の2本のケーブル導体2a〜2cについて電流波形を比較すれば、その波形差からそれぞれのケーブル導体2a〜2cの素線部分断線を検出できる。
次に、ケーブルの断線検出方法をより詳細に説明する。
図2に電流波形の一例を示す。横軸は時間であり、高周波パルス発生器4でパルス信号を発生した時点を原点としている。縦軸は電流値(単位は規定しない任意目盛り)である。ケーブル導体2aを健全品とした時の電流波形21を実線で示し、ケーブル導体2bを部分断線品とした時の電流波形22を点線で示してある。
健全品の電流波形21では、約50nsの時点で電流値が急激に増加しすぐに減少している。これはパルス信号が電流センサ7aの取り付け位置を通過したことを示している。その後、150nsの少し前から後にかけて電流値が負側に増加し減少している。これはインダクタ13で反射してきたパルス信号が電流センサ7aの取り付け位置を通過したことを示している。つまり、この電流波形21において正の立ち上がりから負への立ち下がりまでの時間が、パルス信号が電流センサ7aからインダクタ13までを往復伝搬した時間(ケーブル往復伝搬時間)Tcということになる。
ここで、波形差に着目すると、この波形差が生じる原因が素線の部分断線にある。つまり、素線の部分断線位置においてインピーダンス変化があるため、その位置からパルス信号が一部反射する。この断線位置からの反射信号は、インダクタ13で反射したものより早く電流センサ7bに戻ってくる。したがって、この例では、100nsのやや後に電流センサ7bに到着している。断線位置で反射しなかった大部分のパルス信号は健全品の場合と同等に伝搬するので、部分断線品の電流波形22は波形差の部分を除いて健全品の電流波形21とほとんど同じになる。よって、時間Tc内で両電流波形21,22の差を取ると、波形差(素線断線部の信号差)dだけが残ることになる。この波形差dが有意の大きさであれば、ケーブル導体2bに素線の部分断線有りと判定することができる。
電流波形22の立ち上がりから波形差dまでの時間が、パルス信号が電流センサ7bから断線位置までを往復伝搬した時間(素線断線部往復伝搬時間)Txということになる。一方、電流センサ7a,7bから機器11側のインダクタ13までのケーブル導体2a,2bの距離は既知であるから、この距離と時間Tcとによりパルス信号の伝搬速度を得ることができる。よって、伝搬速度×時間Tx/2を計算すれば断線位置(電流センサ7bから測った距離)を求めることができる。
また、各ケーブル導体2a,2bの健全時を電流波形21とし、各ケーブル導体2a,2bの部分断線時を電流波形22とした場合も、図2の説明と同様にして各ケーブル導体2a,2bの素線部分断線をそれぞれ検出できる。
さて、各ケーブル導体2a,2bが同一構造を有し、各電流センサ7a,7bの周波数特性や感度が同一ではない場合の断線検出方法を説明する。
i)両方のケーブル導体2a,2bに素線部分断線がない場合
まず、測定周期の前半と後半において、各ケーブル導体2a,2bに接続する各注入線3a,3bを互いに切り替え、各ケーブル導体2a,2bに注入したパルス信号のパルス電流の経時変化を、各注入線3a,3bに設けた各電流センサ7a,7bでそれぞれ検出し、これら得られた電流波形を波形記録測定器8でそれぞれ記録する。
このとき、制御演算部は、注入線切替器6と検出線切替器10とを、その結線状態が常に同一であるように同期して周期的に切り替える。具体的には、時間平均する測定周期の前半と後半で、注入線切替器6と検出線切替器10とを、その結線状態が反対になるように同期して周期的に切り替える。例えば、時間平均する測定周期を切り替え周期の整数倍としての2秒間とし、注入線切替器6と検出線切替器10とを、測定周期の前半の1秒間は両方ともストレート結線とし、測定周期の後半の1秒間は両方ともクロス結線とする。
ここで、測定周期の前半にケーブル導体2a(線1)から電流センサ7aを介して得られた電流波形(パルス応答波形)を図3(a)に、測定周期の後半にケーブル導体2aから電流センサ7bを介して得られた電流波形を図3(b)に示す。また、測定周期の前半にケーブル導体2b(線2)から電流センサ7bを介して得られた電流波形を図3(d)に、測定周期の後半にケーブル導体2bから電流センサ7aを介して得られた電流波形を図3(e)に示す。
図3(d)に示すように、測定周期の前半ではケーブル導体2bの電流波形にオーバーシュート31c,31dが見られるが、測定周期の前半と後半でケーブル導体2a,2bのパルス電流を検出する電流センサ7a,7bが入れ替わるため、図3(b)に示すように、測定周期の後半ではケーブル導体2aの電流波形にオーバーシュート31a,31bが見られる。これは、電流センサ7bに検出誤差があることを示している。
その後、制御演算部により、測定周期の前半と後半に波形記録測定器8で記録した電流波形を2秒間について時間平均すると、ケーブル導体2aからは図3(a)と図3(b)の電流波形を時間平均した図3(c)に示す電流波形が得られ、ケーブル導体2bからは図3(d)と図3(e)の電流波形を時間平均した図3(f)に示す電流波形が得られる。
制御演算部は、図3(c)の電流波形と図3(f)の電流波形を比較し、図3(c)の電流波形と図3(f)の電流波形が同一であり、波形差がないので、両方のケーブル導体2a,2bに素線部分断線がないと判定する。
したがって、電流センサ7bの検出誤差により、図3(a)の電流波形と図3(d)の電流波形に波形差があってもケーブル導体2bに素線部分断線があると誤判定することがなく、図3(b)の電流波形と図3(e)の電流波形に波形差があってもケーブル導体2aに素線部分断線があると誤判定することがない。
さらに、制御演算部は、両方のケーブル導体2a,2bに素線部分断線がないと判定した後、図3(a)の電流波形と図3(e)の電流波形が同一であり、かつオーバーシュートがないことから、電流センサ7aが健全であり、電流センサ7bが健全でないと判定することもできる。
ii)ケーブル導体2aに素線部分断線がある場合
i)と同様の方法により、図4(a)〜図4(f)に示す各電流波形が得られる。図4(d)〜図4(f)の各電流波形は、図3(d)〜図3(f)の各電流波形と同じである。
ケーブル導体2aからは、測定周期の前半に得られた図4(a)の電流波形、測定周期の後半に得られた図4(b)の電流波形、図4(a)と図4(b)の電流波形を時間平均して得られた図4(c)の電流波形に、部分断線部からの信号41a,41b,41cがそれぞれ見られる。図4(b)の電流波形には、図3(a)のオーバーシュート31a,31bも見られる。
制御演算部は、図4(c)の電流波形と図4(f)の電流波形を比較し、図4(c)の電流波形と図4(f)の電流波形が同一でなく、信号41cによる波形差があるので、ケーブル導体2aに素線部分断線があると判定する。
このように、本実施の形態に係るケーブルの断線検出方法では、測定対象のケーブル導体2a,2bに接続する注入線3a,3bを互いに切り替えることで、ケーブル導体2a,2bのパルス電流を検出する電流センサ7a,7bを切り替えている。このため、得られた電流波形を基に、各電流センサ7a,7bの周波数特性や感度が異なっていても、各電流センサ7a,7bの検出誤差をなくして各ケーブル導体2a,2bの素線部分断線を確実に検出できる。
また、電線・ケーブルの断線検出装置1によれば、本実施の形態に係るケーブルの断線検出方法を容易に実施できる。
上記実施の形態では、測定対象の電線・ケーブル導体として、2つのケーブル導体2a,2bの例で説明した。複数のケーブル導体の場合も、図3や図4の方法と同様にして得られた任意の2つのケーブル導体について電流波形を比較すれば、その波形差から各電流センサの周波数特性や感度が異なっていても、全てのケーブル導体の素線部分断線をそれぞれ確実に検出できる。
上記の作用効果の他にも、本実施の形態に係るケーブルの断線検出方法では、測定対象のケーブル導体にパルス信号を注入し、そのときケーブル導体から注入線を介して流れる過渡的なパルス電流を計測するようにしたので、測定対象のケーブル導体が電力または信号を通電中、つまり機器の運転中であってもそれに影響を与えたり受けたりすることなく、電流計測が可能である。
また、機器の運転中でも実施できることから、パルス信号の注入から断線の検出までの過程を定期的に繰り返して行うことができる。このため、素線断線のように断線位置が接触したり離れたりする場合でも見逃すことなく確実に検出することができる。このことは、図1の移動用ケーブル2のように頻繁に屈曲しているケーブルを常時監視し、断線の発生をリアルタイムで検出したり、経時変化を長期的に監視できることを意味している。
さらに、パルス信号のパルス電流から得られる電流波形の差を用いて断線を検出しているので、抵抗変化から断線を検出する従来技術に比べ、精度良く断線を検出することができる。断線を検出する信号として使用する高周波パルスは、高周波の信号であるため、ケーブル導体を伝搬する場合には伝搬路のLCのインピーダンスの影響が大きくなる。このため、直流や商用周波信号による抵抗Rの測定と比較して断線時のLCの変化の検出感度が向上する。すなわち、高周波パルスは断線時のLRCのインピーダンス変化を検出し、直流や商用周波信号によるRの変化のみの検出と比較して検出感度が向上する。
しかも、ケーブルの屈曲による断線はケーブル導体の最外周部から起こり、高周波信号が表皮効果でケーブル導体外表面を流れることから、直流や商用周波信号より断線の検出感度が向上する。
位置情報が時間情報に変換されている電流波形を用いて断線を検出しているので、断線位置を特定することもできる。
これまでの説明では、測定対象のケーブル導体は、機器に接続されてケーブルとして使用されているものとしたが、機器を停止して外したケーブルのケーブル導体に対しても、あるいは未使用のケーブルのケーブル導体に対しても本発明は適用可能である。この場合、コンデンサ5a,5bやインダクタ13,14は特に使用する必要はない。
図1では、測定対象のケーブル導体2a〜2cで構成される移動用ケーブル2を用いた例で説明したが、測定対象のケーブル導体で構成されるケーブルとしては、例えば、自動車などの車両に搭載される車載ハーネス用ケーブルを用いてもよい。
測定対象の電線・ケーブル導体としては、ケーブル導体に限られるものではなく、電線を構成する電線導体であってもよい。
本発明の好適な実施の形態を示す電線・ケーブルの断線検出装置のブロック図である。 電流波形の一例を示す図である。 図3(a)〜図3(f)は、部分断線がない場合の電流波形の一例を示す図である。 図4(a)〜図4(f)は、部分断線がある場合の電流波形の一例を示す図である。
符号の説明
1 電線・ケーブルの断線検出装置
2a〜2c ケーブル導体
2 移動用ケーブル
3,3a,3b 注入線
6 注入線切替器
7a,7b 電流センサ
9a,9b 検出線
10 検出線切替器

Claims (5)

  1. 測定対象の電線・ケーブル導体に、その導体にパルス信号を注入する注入線をそれぞれ接続し、これら注入線に電流センサを設け、注入したパルス信号のパルス電流の経時変化を電流センサで検出して、その電流波形から電線・ケーブル導体の素線断線を検出する方法において、測定対象の電線・ケーブル導体に接続する注入線を互いに切り替えて少なくとも2つの電線・ケーブル導体に注入したパルス信号のパルス電流の経時変化を、その注入線に設けた各電流センサでそれぞれ検出して、これら電流波形を基に測定対象の電線・ケーブル導体の素線断線を検出することを特徴とする電線・ケーブルの断線検出方法。
  2. 上記測定対象の電線・ケーブル導体は、同一構造を有する2つの電線・ケーブル導体からなる請求項1記載の電線・ケーブルの断線検出方法。
  3. 測定対象の電線・ケーブル導体に、その導体にパルス信号を注入する注入線をそれぞれ接続し、これら注入線に電流センサを設け、注入したパルス信号のパルス電流の経時変化を電流センサで検出して、その電流波形から電線・ケーブル導体の素線断線を検出する装置において、測定対象の電線・ケーブル導体に接続する注入線を互いに切り替える注入線切替器と、少なくとも2つの電線・ケーブル導体に注入したパルス信号のパルス電流の経時変化をそれぞれ検出する各電流センサと、これら電流波形を記録する波形記録器と、各電流センサと波形記録器間を接続する検出線を互いに切り替える検出線切替器と、記録した電流波形を基に測定対象の電線・ケーブル導体の素線断線を検出する制御演算部とを備えたことを特徴とする電線・ケーブルの断線検出装置。
  4. 上記制御演算部は、上記注入線切替器と上記検出線切替器とを、その結線状態が常に同一であるように同期して周期的に切り替え、その周期の整数倍で時間平均して得られた複数の電流波形を比較し、その波形差から測定対象の電線・ケーブル導体の素線断線を検出する請求項3記載の電線・ケーブルの断線検出装置。
  5. 上記測定対象の電線・ケーブル導体は、同一構造を有する2つの電線・ケーブル導体からなり、上記注入線切替器と上記検出線切替器とは、それぞれストレート結線とクロス結線を切り替える2対2の線路切替器からなる請求項3または4記載の電線・ケーブルの断線検出装置。
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