JP2007039784A - 銅めっき被膜を表面に有する希土類系永久磁石 - Google Patents

銅めっき被膜を表面に有する希土類系永久磁石 Download PDF

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Abstract

【課題】 希土類系永久磁石の表面に密着性に優れた銅めっき被膜を形成することができる電気銅めっき処理用めっき液を使用した、銅めっき被膜を表面に有する希土類系永久磁石の製造方法を提供する。
【解決手段】 銅めっき被膜を表面に有する希土類系永久磁石の製造方法は、pHが9.0〜11.5に調整され、(1)Cu2+イオン、(2)Cu2+イオンとのキレート安定度定数が10.0以上のキレート剤、(3)Fe3+イオンとのキレート安定度定数が16.0以上のキレート剤の少なくとも3成分を含有するめっき液(前記のキレート安定度定数はpHが9.0〜11.5の時という条件付のものである)を使用して、電気銅めっき処理により、希土類系永久磁石の表面に銅めっき被膜を形成することを特徴とする。
【選択図】 なし

Description

本発明は、新規な電気銅めっき処理用めっき液を使用した、密着性に優れた銅めっき被膜を表面に有する希土類系永久磁石の製造方法に関する。
Nd−Fe−B系永久磁石に代表されるR−Fe−B系永久磁石やSm−Fe−N系永久磁石に代表されるR−Fe−N系永久磁石などの希土類系永久磁石は、資源的に豊富で安価な材料が用いられ、かつ、高い磁気特性を有していることから、特にR−Fe−B系永久磁石は今日様々な分野で使用されている。しかしながら、希土類系永久磁石は反応性の高い希土類金属:Rを含むため、大気中で酸化腐食されやすく、何の表面処理をも行わずに使用した場合には、わずかな酸やアルカリや水分などの存在によって表面から腐食が進行して錆が発生し、それに伴って、磁石特性の劣化やばらつきを招く。さらに、錆が発生した磁石を磁気回路などの装置に組み込んだ場合、錆が飛散して周辺部品を汚染する恐れがある。以上の点に鑑み、希土類系永久磁石の表面に優れた耐食性を有する被膜として銅めっき被膜を形成する方法が従来から採用されている。
一般に、銅めっき被膜を形成する方法は、電気銅めっき処理と無電解銅めっき処理に大別されるが、無電解銅めっき処理によって希土類系永久磁石の表面に銅めっき被膜を形成する場合には、磁石の構成金属である希土類金属や鉄がめっき液中に溶出してめっき液に含まれている還元剤と反応し、めっき液中に溶出した希土類金属や鉄の表面に銅めっき被膜の形成が進行するといった問題を防ぐためのめっき液の管理が重要である。しかしながら、これは必ずしも容易なことではない。また、無電解銅めっき処理用めっき液は一般に高価である。従って、希土類系永久磁石の表面に銅めっき被膜を形成する場合には、通常、簡易で低コストな電気銅めっき処理が採用される。
電気銅めっき処理により希土類系永久磁石の表面に銅めっき被膜を形成する場合、希土類系永久磁石の酸性条件下での強い腐食性に鑑みれば、使用するめっき液はアルカリ性であることが望ましいことから、これまでシアン化銅を含むめっき液(シアン化銅浴)が汎用されてきた。しかしながら、シアン化銅浴は形成される銅めっき被膜の特性に優れるとともに、めっき液の管理が容易であるといったことから利用価値が高いものの、毒性の強いシアンを含むので環境への影響を無視することができない。そこで、近年では、ピロリン酸銅を含むめっき液(ピロリン酸銅浴)がシアン化銅浴に替わって使用されることが多いが、ピロリン酸銅浴は浴中に遊離銅イオンを多く含むため、ピロリン酸銅浴を使用して希土類系永久磁石の表面に直接に銅めっき被膜を形成しようとすると、磁石の表面を構成する鉄などの電気的に卑な金属と、電気的に貴な金属である銅との間で置換めっき反応が起こることで、磁石の表面に銅が置換析出するといった要因などにより、密着性に優れた銅めっき被膜を形成することができないという問題がある。
上記の点に鑑み、本発明者は、特許文献1において、硫酸銅を0.03mol/L〜0.5mol/L、エチレンジアミン四酢酸を0.05mol/L〜0.7mol/L、硫酸ナトリウムを0.02mol/L〜1.0mol/L、酒石酸塩およびクエン酸塩から選ばれる少なくとも1種を0.1mol/L〜1.0mol/L含有し、pHが11.0〜13.0に調整されためっき液を使用して電気銅めっき処理により、希土類系永久磁石の表面に銅めっき被膜を形成する方法を提案した。この方法によれば、ピロリン酸銅浴を使用して電気銅めっき処理を行う場合に比較して格段に密着性に優れた銅めっき被膜を希土類系永久磁石の表面に形成することができる。しかしながら、この方法をもってしても、過酷環境において使用される希土類系永久磁石に必要とされる高耐食性を、十分に確保することができるだけの密着性に優れた銅めっき被膜を希土類系永久磁石の表面に形成することは困難であると言わざるを得ないのが実情である。
この場合、銅めっき被膜の密着性を補う方法としては、特許文献1にも記載したように、希土類系永久磁石の表面にストライクニッケルめっき被膜を形成した後、銅めっき被膜を形成する方法がある(希土類系永久磁石の表面にストライクニッケルめっき被膜を形成する方法は、例えば、特許文献2を参照のこと)。しかしながら、この方法は、希土類系永久磁石の表面に非常に密着性に優れた積層被膜を形成することができるものの、ニッケルめっき被膜は電気めっき処理中に水素を共析する性質があるので、希土類系永久磁石の表面にストライクニッケルめっき被膜を形成する際、共析した水素が磁石の脆化を招き、ひいては磁石の磁気特性の劣化を引き起こす恐れがある。従って、電気銅めっき処理によって希土類系永久磁石の表面に直接に密着性に優れた銅めっき被膜を形成することができる新規な方法の開発が待ち望まれている。
このような背景のもと、特許文献3では、電気銅めっき処理によって希土類系永久磁石の表面に密着性に優れた銅めっき被膜を形成するための方法として、「希土類を含む磁石の表面に、銅塩化合物、リン化合物、脂肪族ホスホン酸化合物、水酸化塩を少なくとも含む銅メッキ液を用いて電解メッキを行い、銅被膜から成る第1保護膜を成膜することを特徴とする磁石の表面処理方法。」が提案されている。しかしながら、特許文献3には、めっき液の構成成分である脂肪族ホスホン酸化合物について、ホスホン酸アルカリ金属化合物やホスホン酸遷移金属化合物が例示されると段落番号0039にて記載されているのみであり、具体的な化合物が例示されていないことから、残念ながらその実体を理解することができない。
特開2004−137533号公報 特開平6−13218号公報 特開2001−295091号公報
そこで本発明は、希土類系永久磁石の表面に密着性に優れた銅めっき被膜を形成することができる、新規な電気銅めっき処理用めっき液を使用した、銅めっき被膜を表面に有する希土類系永久磁石の製造方法を提供することを目的とする。
上記の点に鑑み、本発明者は、電気銅めっき処理によって希土類系永久磁石の表面に銅めっき被膜を形成するに当たり、磁石の表面を構成する鉄などの電気的に卑な金属と、電気的に貴な金属である銅との間で置換めっき反応が起こることで、磁石の表面に銅が置換析出することがないように、Cu2+イオンとのキレート安定度定数が高いキレート剤を使用するとともに、アルカリ性に調整しためっき液を使用することを基本方針とし、キレート剤として、エチレンジアミン四酢酸(以下「EDTA」と称する)、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸(以下「HEDP」と称する)、アミノトリメチレンホスホン酸(以下「ATMP」と称する)などのような、Cu2+イオンとのキレート安定度定数が高いキレート剤を使用することとした。このうち、HEDPは古くから知られているキレート剤であり、特開昭59−136491号公報には、Cu2+イオンとHEDPを含有するめっき液を使用して電気銅めっき処理を行う方法が記載されていることから(但し、被めっき物として希土類系永久磁石は記載されていない)、この方法によれば、希土類系永久磁石の表面に密着性に優れた銅めっき被膜を形成することができるものと考えられた。しかしながら、形成された銅めっき被膜は、予想に反してJIS K5400に準拠したクロスカット剥離試験を行うと、磁石の表面から容易に剥離するような密着性に劣るものであった。
そこで本発明者は、特開昭59−136491号公報に記載された方法で、希土類系永久磁石の表面に密着性に優れた銅めっき被膜を形成することができない原因を追求した結果、希土類系永久磁石の腐食を抑制するためにアルカリ性に調整しためっき液に磁石を浸漬すると、磁石の構成金属である鉄の水酸化物などからなる不働態被膜が磁石の表面に生成することで磁石の表面変質を引き起こし、銅めっき被膜は磁石の変質表面に形成されることから、結果として、磁石の表面に対する銅めっき被膜の密着性が低下することを突き止めた。そして、希土類系永久磁石の表面にこのような不働態被膜が生成することを抑制するために、めっき液にFe3+イオンとのキレート安定度定数が高いキレート剤を配合することで、希土類系永久磁石の表面に密着性に優れた銅めっき被膜を形成することができることを見出した。
上記の知見に基づいてなされた本発明の銅めっき被膜を表面に有する希土類系永久磁石は、請求項1記載の通り、pHが9.0〜11.5に調整され、(1)Cu2+イオン、(2)Cu2+イオンとのキレート安定度定数が10.0以上のキレート剤、(3)Fe3+イオンとのキレート安定度定数が16.0以上のキレート剤の少なくとも3成分を含有するめっき液(前記のキレート安定度定数はpHが9.0〜11.5の時という条件付のものである)を使用して、電気銅めっき処理により、希土類系永久磁石の表面に銅めっき被膜を形成してなることを特徴とする。
請求項2記載の希土類系永久磁石は、請求項1記載の希土類系永久磁石において、Cu2+イオンとのキレート安定度定数が10.0以上のキレート剤として1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、Fe3+イオンとのキレート安定度定数が16.0以上のキレート剤としてピロリン酸カリウムを含有するめっき液を使用して、電気銅めっき処理により、希土類系永久磁石の表面に銅めっき被膜を形成してなることを特徴とする。
本発明によれば、希土類系永久磁石の表面に密着性に優れた銅めっき被膜を形成することができる、新規な電気銅めっき処理用めっき液を使用した、銅めっき被膜を表面に有する希土類系永久磁石の製造方法を提供することができる。
本発明の銅めっき被膜を表面に有する希土類系永久磁石の製造方法は、pHが9.0〜11.5に調整され、(1)Cu2+イオン、(2)Cu2+イオンとのキレート安定度定数が10.0以上のキレート剤、(3)Fe3+イオンとのキレート安定度定数が16.0以上のキレート剤の少なくとも3成分を含有するめっき液(前記のキレート安定度定数はpHが9.0〜11.5の時という条件付のものである)を使用して、電気銅めっき処理により、希土類系永久磁石の表面に銅めっき被膜を形成することを特徴とするものである。
本発明において、電気銅めっき処理用めっき液を構成するCu2+イオンの供給源としては、特に限定されるものではなく、例えば、硫酸銅、塩化第二銅、ピロリン酸銅、水酸化第二銅、硝酸銅、炭酸銅などを使用することができる。
pHが9.0〜11.5の時のCu2+イオンとのキレート安定度定数が10.0以上のキレート剤としては、前出のEDTA、HEDP、ATMPの他、エチレンジアミン、ニトリロ三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、シクロヘキサンジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸などを使用することができる。キレート剤は、ナトリウム塩やカリウム塩などのような塩の形態のものを使用してもよい。汎用性の観点からは、EDTA、HEDPまたはその塩、ATMPまたはその塩の少なくとも1つを使用することが望ましい。キレート剤のpHが9.0〜11.5の時のCu2+イオンとのキレート安定度定数は、簡易的には、一般的に知られているキレート剤のキレート安定度定数に、キレート剤の酸解離定数とpH値を用いて計算した濃度分率を乗じることにより算出することができる。例えば、EDTAのpHが9.0〜11.5の時のCu2+イオンとのキレート安定度定数は16.4〜17.5であり、HEDPのそれは11.3〜11.9である。なお、ここに例示したキレート剤のpHが9.0〜11.5の時のFe3+イオンとのキレート安定度定数は、いずれも16.0未満である。
pHが9.0〜11.5の時のFe3+イオンとのキレート安定度定数が16.0以上のキレート剤としては、ピロリン酸、ポリリン酸、メタリン酸などを使用することができる。キレート剤は、ナトリウム塩やカリウム塩などのような塩の形態のものを使用してもよい。汎用性の観点からは、ピロリン酸またはその塩、具体的にはピロリン酸カリウムを使用することが望ましい。キレート剤のpHが9.0〜11.5の時のFe3+イオンとのキレート安定度定数は、簡易的には、一般的に知られているキレート剤のキレート安定度定数に、キレート剤の酸解離定数とpH値を用いて計算した濃度分率を乗じることにより算出することができる。例えば、ピロリン酸カリウムのpHが9.0〜11.5の時のFe3+イオンとのキレート安定度定数は16.2〜21.7である。なお、ここに例示したキレート剤のpHが9.0〜11.5の時のCu2+イオンとのキレート安定度定数は、いずれも10.0未満である。
電気銅めっき処理用めっき液のpHを9.0〜11.5と規定するのは、pHが9.0を下回ると、銅イオンと錯体を形成させるためにめっき液に配合したキレート剤のキレート力が低下することで、めっき液中に遊離の銅イオンが増加し、磁石の表面に銅が置換析出する恐れがある一方、pHが11.5を上回ると、電気銅めっき処理を行うに際に陽極の不働態化が起こりやすく、浴管理が困難になる恐れや、めっき液中に銅のヒドロキシル錯体などが生成することで、磁石の表面に形成される銅めっき被膜の膜質に悪影響を及ぼす恐れがあるからである。pHが9.0〜11.5の時のCu2+イオンとのキレート安定度定数が10.0以上のキレート剤と、pHが9.0〜11.5の時のFe3+イオンとのキレート安定度定数が16.0以上のキレート剤の好適な組み合わせとしては、HEDPとピロリン酸カリウムの組み合わせが挙げられる。この組み合わせを採用した場合、電析粒子が微細で非常に緻密な膜質の銅めっき被膜を優れた密着性のもとに磁石の表面に形成することができる。
好適な電気銅めっき処理用めっき液としては、pHが9.0〜11.5に調整され、(1)Cu2+イオンを0.03mol/L〜0.15mol/L、(2)Cu2+イオンとのキレート安定度定数が10.0以上のキレート剤を0.1mol/L〜0.5mol/L、(3)Fe3+イオンとのキレート安定度定数が16.0以上のキレート剤を0.01mol/L〜0.5mol/L少なくとも含有するめっき液(前記のキレート安定度定数はpHが9.0〜11.5の時という条件付のものである)が挙げられる。ここで、Cu2+イオンの含有量を0.03mol/L〜0.15mol/Lと規定するのは、0.03mol/Lを下回ると、限界電流密度が著しく低下する恐れがある一方、0.15mol/Lを上回ると、めっき液中に遊離の銅イオンが増加し、磁石の表面に銅が置換析出する恐れがあるからである。Cu2+イオンとのキレート安定度定数が10.0以上のキレート剤の含有量を0.1mol/L〜0.5mol/Lと規定するのは、0.1mol/Lを下回ると、めっき液中において銅イオンを十分にキレートすることができない恐れがある一方、0.5mol/Lを上回っても、効果の上昇は期待できず、コストの上昇を招来するだけであるからである。Fe3+イオンとのキレート安定度定数が16.0以上のキレート剤の含有量を0.01mol/L〜0.5mol/Lと規定するのは、0.01mol/Lを下回ると、磁石の構成金属である鉄の水酸化物などからなる不働態被膜が磁石の表面に生成することで引き起こされる磁石の表面変質を抑制することが困難になる恐れや、十分な電流効率を確保することができない恐れがある一方、0.5mol/Lを上回ると、磁石の表面からの磁石の構成金属である鉄などの溶出が激しく起こり、銅めっき被膜が形成されない恐れがあるからである。pHの調整は、必要に応じて水酸化ナトリウムなどを使用して行えばよい。
なお、電気銅めっき処理用めっき液には、陽極の復極剤や導電性剤などとして、アミノアルコール類、亜硫酸塩、カルボン酸塩、硫酸塩などの公知の成分を配合してもよい。
電気銅めっき処理は、基本的に、通常行われる電気銅めっき処理の条件に従って行えばよいが、めっき液の浴温は40℃〜70℃とすることが望ましい。40℃を下回ると、限界電流が著しく低下する恐れがある一方、70℃を上回ると、陽極との遊離銅の不均化反応が生じやすく、浴管理が困難になる恐れがあるからである。めっき様式は、ラックめっきでもバレルめっきでもいずれの様式であってもよい。陰極電流密度は0.05A/dm2〜4.0A/dm2とすることが望ましい。0.05A/dm2を下回ると、被膜の形成効率が悪く、場合によってはめっき析出電位に到達せずに被膜が形成されない恐れがある一方、4.0A/dm2を上回ると、水素発生が激しく起こり、形成された銅めっき被膜の表面にピットや焼けが発生する恐れがあるからである。
本発明によれば、希土類系永久磁石の表面に、例えば、JIS K5400に準拠したクロスカット剥離試験を行っても被膜剥離を起こすといったことがないほどの剥離強度を示す、密着性に優れた銅めっき被膜を形成することができる。また、本発明によって希土類系永久磁石の表面に形成された銅めっき被膜は、光沢性にも優れ、また、非常に緻密なものである。なお、希土類系永久磁石の表面に形成する銅めっき被膜の膜厚は、0.5μm〜30μmとすることが望ましい。0.5μmを下回ると、磁石に対して十分な耐食性を付与することができない恐れがある一方、30μmを上回ると、磁石の有効体積の確保が困難になる恐れや生産効率が低下する恐れがあるからである。
以下、本発明を実施例と比較例によってさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定して解釈されるものではない。なお、以下の実施例と比較例は、出発原料として、電解鉄、フェロボロン、RとしてのNdを所要の磁石組成に配合し、溶解鋳造後、機械的粉砕法にて粗粉砕してから微粉砕することで粒度が3μm〜10μmの微粉末を得、これを10kOeの磁界中で成形してからアルゴン雰囲気中で1100℃×1時間の焼結を行った後、得られた焼結体に対して600℃×2時間の時効処理を行うことによって製造した、15Nd−7B−78Fe組成(at%)の磁石体から切り出した、3mm×20mm×40mm寸法の試験片(以下「試験片A」と称する)と、1mm×1.5mm×2mm寸法の試験片(以下「試験片B」と称する)と、4mm×2.9mm×2.9mm寸法の試験片(以下「試験片C」と称する)を、0.1mol/Lの硝酸溶液にて表面活性化を行った後、水洗してから用いて行った。
実施例1:
(1)硫酸銅・5水和物を0.06mol/L、(2)HEDPを0.15mol/L、(3)ピロリン酸カリウムを0.2mol/L含有し、水酸化ナトリウムでpHを10.0に調整した電気銅めっき処理用めっき液を使用し、めっき液の浴温を60℃にして、陰極電流密度が1.0A/dm2で、試験片Aに対し、30分間バレル様式によって電気銅めっき処理を行い、試験片Aの表面に銅めっき被膜を形成した。試験片Aの表面に形成された銅めっき被膜の膜厚は5.0μmであった(n=10の平均値)。この銅めっき被膜は、JIS K5400に準拠したクロスカット剥離試験を行っても被膜剥離を起こすことがない、密着性に優れたものであった(n=10にて評価)。また、この銅めっき被膜は、光沢性に優れ、非常に緻密なものであった(表面SEM観察による)。
実施例2:
実施例1に記載の電気銅めっき処理用めっき液を使用し、めっき液の浴温を60℃にして、陰極電流密度が0.3A/dm2で、試験片Bに対し、80分間バレル様式によって電気銅めっき処理を行い、試験片Bの表面に銅めっき被膜を形成した。試験片Bの表面に形成された銅めっき被膜の膜厚は5.0μmであった(n=10の平均値)。この銅めっき被膜は、光沢性に優れ、非常に緻密なものであった(表面SEM観察による)。こうして得られた銅めっき被膜を表面に有する試験片Bの磁気特性を評価したところ、0.98iHc/Hkであり(n=10の平均値)、80℃で20時間加熱しても磁気特性の劣化は認められず、優れた特性を有していた。
比較例1:
(1)硫酸銅・5水和物を0.16mol/L、(2)ホスホノブタノトリカルボン酸(pHが9.0〜11.5の時のCu2+イオンとのキレート安定度定数が10.0未満のキレート剤)を0.07mol/L、(3)リン酸二水素ナトリウム・2水和物を0.1mol/L含有し、水酸化ナトリウムでpHを10.0に調整した電気銅めっき処理用めっき液を使用し、めっき液の浴温を60℃にして、陰極電流密度が1.0A/dm2で、試験片Aと試験片Bに対し、30分間バレル様式によって電気銅めっき処理を行ったが、めっき液中に水酸化銅の沈殿が生成してしまい、いずれの試験片に対しても、その表面に銅めっき被膜を形成することができなかった。
比較例2:
(1)硫酸銅・5水和物を0.30mol/L、(2)ホスホノブタノトリカルボン酸を0.07mol/L、(3)ピロリン酸カリウムを0.05mol/L含有し、水酸化ナトリウムでpHを10.0に調整した電気銅めっき処理用めっき液を使用し、めっき液の浴温を60℃にして、陰極電流密度が1.0A/dm2で、試験片Aと試験片Bに対し、30分間バレル様式によって電気銅めっき処理を行ったが、めっき液中に水酸化銅の沈殿が生成してしまい、いずれの試験片に対しても、その表面に銅めっき被膜を形成することができなかった。
実施例3:
(1)硫酸銅・5水和物を0.06mol/L、(2)HEDPを0.15mol/L、(3)ピロリン酸カリウムを0.05mol/L含有し、水酸化ナトリウムでpHを11.0に調整した電気銅めっき処理用めっき液を使用し、めっき液の浴温を50℃にして、陰極電流密度が0.3A/dm2で、試験片Cに対し、80分間バレル様式によって電気銅めっき処理を行い、試験片Cの表面に銅めっき被膜を形成した。試験片Cの表面に形成された銅めっき被膜の膜厚は4.6μmであった(n=10の平均値)。この銅めっき被膜は、光沢性に優れ、非常に緻密なものであった(表面SEM観察による)。次に、この表面に銅めっき被膜を有する試験片Cに対し、慣用的なワットニッケルめっき液を使用し、めっき液の浴温を50℃にして、陰極電流密度が0.2A/dm2で、70分間バレル様式によって電気ニッケルめっき処理を行い、銅めっき被膜の表面にニッケルめっき被膜を形成した。銅めっき被膜の表面に形成されたニッケルめっき被膜の膜厚は2.4μmであった(n=10の平均値)。こうして得られたニッケルめっき被膜と銅めっき被膜からなる積層被膜を表面に有する試験片Cを450℃で10分間加熱したところ、積層被膜の膨れ、割れ、剥れなどの現象は見られず、磁石体Cの表面に対する積層被膜の密着性は優れたものであることがわかった。また、ニッケルめっき被膜と銅めっき被膜からなる積層被膜を表面に有する試験片Cの磁気特性を評価したところ、0.95iHc/Hkであり(n=10の平均値)、80℃で20時間加熱しても磁気特性の劣化は認められず、優れた特性を有していた。
本発明は、希土類系永久磁石の表面に密着性に優れた銅めっき被膜を形成することができる、新規な電気銅めっき処理用めっき液を使用した、銅めっき被膜を表面に有する希土類系永久磁石の製造方法を提供することができる点において産業上の利用可能性を有する。

Claims (2)

  1. pHが9.0〜11.5に調整され、(1)Cu2+イオン、(2)Cu2+イオンとのキレート安定度定数が10.0以上のキレート剤、(3)Fe3+イオンとのキレート安定度定数が16.0以上のキレート剤の少なくとも3成分を含有するめっき液(前記のキレート安定度定数はpHが9.0〜11.5の時という条件付のものである)を使用して、電気銅めっき処理により、希土類系永久磁石の表面に銅めっき被膜を形成してなることを特徴とする銅めっき被膜を表面に有する希土類系永久磁石。
  2. Cu2+イオンとのキレート安定度定数が10.0以上のキレート剤として1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、Fe3+イオンとのキレート安定度定数が16.0以上のキレート剤としてピロリン酸カリウムを含有するめっき液を使用して、電気銅めっき処理により、希土類系永久磁石の表面に銅めっき被膜を形成してなることを特徴とする請求項1記載の希土類系永久磁石。
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