JP2007039279A - ランタンクロマイト質材料、インターコネクタ、固体酸化物形燃料電池及び電熱体 - Google Patents

ランタンクロマイト質材料、インターコネクタ、固体酸化物形燃料電池及び電熱体 Download PDF

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Abstract

【課題】 還元膨張が従来のランタンクロマイト質材料より低減され、導電率は従来のランタンクロマイト質材料と同等であり、且つ熱膨張係数がYSZ等の固体電解質材料と略一致した材料であり、特に固体酸化物形燃料電池や固体電解質型水蒸気電解装置などの電気化学セルのインターコネクタ材料として好適に用いられるランタンクロマイト質材料を提供することを目的とする。
【解決手段】 ランタンクロマイト質材料の組成を、(La(1−x)Sr)(Cr(1−y−z)CoZr)O(ただし、0.1≦x≦0.2、0.01≦y≦0.05、0.01≦z≦0.1)とする。
【選択図】 なし

Description

本発明は優れた熱安定性と適度な導電性を有するランタンクロマイト質材料に関し、特に、固体酸化物形燃料電池や固体電解質形水蒸気電解装置などの電気化学セルのインターコネクタ材料として有利に適用しうるランタンクロマイト質材料に関する。さらに本発明は、インターコネクタ固体酸化物形燃料電池、及び電熱体に関する。
例えば、固体酸化物形燃料電池(以下、SOFCと略称する)においては、単セルを複層化し電圧を上げて電力を得るため、接続用材料としてのインターコネクタが使用される。インターコネクタは電気的な接続をすると同時に高温において、酸化性ガス(空気)と還元性ガス(燃料:水素等)を分離する役目を併せもっている。従って、インターコネクタ材料として、金属としては耐酸化性の特性を有する高融点金属、酸化物としてはペロブスカイト型酸化物であるMg、Ca、Srなどをドーピングしたランタンクロマイト質材料やイットリウムクロマイト質材料が使用されている。
従来のインターコネクタ材料として用いられるランタンクロマイト質材料やイットリウムクロマイト質材料としては、例えば以下の組成のものが開示されている。
特許文献1:
(La(1−x)Sr)(Cr(1−y))O
ただし、M: Zr、Ti
0.1≦x≦0.2
0.05≦y≦0.2
特許文献2:
(Y(1−x)Ca)(Cr(1−y)Mg)O
ただし、0.1≦x≦0.4
0.05≦y≦0.2
特許文献3:
(La(1−x)Sr)(Cr(1−y)Si)O
ただし、0.1≦x≦0.2
0.05≦y≦0.2
特許文献4:
(Y(1−x)Ca)(Cr(1−y)Ti)O
ただし、0.2≦x≦0.3
0.1≦y≦0.15
特許文献5:
(1) (La(1−x)Sr)(Cr(1−y−z)TiCo)O
ただし、0.1≦x≦0.2
0.01≦y≦0.1
0.01≦z≦0.05
(2) (La(1−x’)Srx’)(Cr(1−y’−z’)Tiy’Niz’)O
ただし、0.1≦x’≦0.2
0.01≦y’≦0.05
0.01≦z’≦0.08
(3) (La(1−x”)Srx”)(Cr(1−y”−z”)Tiy”Fez”)O
ただし、0.1≦x”≦0.2
0.01≦y”≦0.05
0.01≦z”≦0.05
特開平8−55629号公報 特開平8−83620号公報 特開平8−190922号公報 特開平10−125340号公報 特開平11−3720号公報
しかしながら、高融点金属をインターコネクタとして用いた場合でも、SOFCの使用温度は800℃〜1000℃程度と高いため、長時間の使用においては酸化雰囲気で高融点金属が酸化物を形成する。このため、高融点金属の表面は絶縁体となり、電気の導通が悪くなるので、高融点金属はインターコネクタ材料として好ましくない。
また、酸化物であるランタンクロマイト系インターコネクタ材料については、下記(i)〜(iii)の課題を有している。
(i)導電率
酸化物であるランタンクロマイトは酸化雰囲気中では安定であるものの導電性が低く、還元雰囲気中では還元されて導電性などの特性が変化しやすいという問題点がある。そこで、導電性向上のため、Mg、Ca、Srなどのアルカリ土類金属をドーピングして使用している。導電性はSr>Ca>Mgの順にドーピングされたランタンクロマイトの導電率は高くなる。しかし、さらなる導電性向上が求められている。
(ii)熱膨張
SOFCは、固体電解質、酸素極、燃料極、及び、インターコネクタ等の複合体であるため、インターコネクタとベースとなる固体電解質(例えば、イットリア安定化ジルコニア(以下、「YSZ」という))の熱膨張率は一致している必要がある。
(iii)還元膨張
還元雰囲気での挙動においては、Srをドーピングしたランタンクロマイト系材料は還元による膨張が比較的大きく、インターコネクタの変形及び割れ、電極の剥離などの原因となる。このため、従来のインターコネクタ材料で形成したインターコネクタを燃料電池に用いる場合には、燃料電池の起動後の還元時等に水蒸気量を制御し、還元膨張が発生しないように雰囲気制御を行わなければならない。従って、このような雰囲気制御を簡略化もしくは不要とすることができるインターコネクタ材料が望まれている。また、燃料電池の信頼性向上の観点からも、より還元膨張を抑制した材料が望まれている。
一方、インターコネクタと同様、酸化雰囲気における熱安定性と、適度な導電性を有する材料が要求される他の部材として、セラミックス用焼成炉のヒータ線等の電熱体が挙げられる。トンネル炉は、入り口付近は低めの温度に設定されており、また、出口付近は徐冷の為、やはり低めの温度に設定されて、中央付近が高温になっている温度勾配を設けた炉である。
従って、セラミックス用焼成炉のヒータ線等の電熱体用材料も、酸化雰囲気におけるより高い熱安定性と、適度な導電性を有する材料が求められている。
本発明は、このような事情に鑑みて見出されたランタンクロマイト質材料であって、還元膨張が従来のランタンクロマイト質材料より低減され、導電率は従来のランタンクロマイト質材料と同等であり、且つ熱膨張係数がYSZ等の固体電解質材料と略一致した材料であり、特に固体酸化物形燃料電池や固体電解質形水蒸気電解装置などの電気化学セルのインターコネクタ材料として好適に用いられるランタンクロマイト質材料を提供することを目的とする。
さらに本発明は、上記課題を克服可能であるが故に酸化雰囲気におけるより高い熱安定性と、適度な導電性を有する材料であって、セラミックス用焼成炉のヒータ線等の電熱体用材料としても適用可能であり、広範な用途が見込まれる材料を提供することを目的とする。
また本発明は、還元膨張が従来のランタンクロマイト質材料より低減され、導電率は従来のランタンクロマイト質材料と同等であり、且つ熱膨張係数がYSZ等の固体電解質材料と略一致したインターコネクタを提供することを目的とする。
さらに本発明は、上記特性を有するインターコネクタを有することにより、優れた発電性能と作動時の安定性とを兼ね備えた固体酸化物形燃料電池を提供することを目的とする。
さらに本発明は、酸化雰囲気における高い熱安定性と、適度な導電性を有する電熱体を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明は、一般式(La(1−x)Sr)(Cr(1−y−z)CoZr)O(ただし、0.1≦x≦0.2、0.01≦y≦0.05、0.01≦z≦0.1)で表されるランタンクロマイト質材料を提供する。
前記一般式で表されるランタンクロマイト質材料は、LaCrOで表されるランタンクロマイトのLaの一部をSrで置換し、Crの一部をCo及びZrで置換した組成であり、0.1≦x≦0.2、0.01≦y≦0.05、0.01≦z≦0.1とすることにより、還元膨張率を低減すると共に、導電率を10S/cm以上としてインターコネクタの実用上問題ない範囲とし、熱膨張係数をYSZの熱膨張係数である10.2〜10.3×10-6/Kに近い値としている。
また本発明は、前記ランタンクロマイト質材料を含んでなるインターコネクタを提供する。
本発明のインターコネクタは、還元膨張が低減され、導電率は従来のランタンクロマイト質材料と同等であり、且つ熱膨張係数がYSZ等の固体電解質材料と略一致している。
また本発明は、前記インターコネクタを有する固体酸化物形燃料電池を提供する。
本発明の固体酸化物形燃料電池は、前述の特性を有するインターコネクタを備えているので、優れた発電性能と作動時の安定性とを兼ね備えている。
さらに本発明は、前記ランタンクロマイト質材料を含んでなる電熱体を提供する。
本発明の電熱体は、酸化雰囲気における高い熱安定性と、適度な導電性を有する。
本発明によれば、酸化雰囲気における熱安定性と、適度な導電性を有するランタンクロマイト質材料を提供できる。
また、本発明によれば、高温還元雰囲気下における膨張が抑制され、しかも熱膨張率がYSZに近い値に保持され、且つ導電率が高く保持された、インターコネクタ用材料として好適なランタンクロマイト質材料が提供できる。
また本発明によれば、高温還元雰囲気下における膨張が抑制されて曲がりや割れがなく、しかも熱膨張率がSOFCの固体電解質であるYSZに近い値に保持され、且つ導電率が高く保持された、インターコネクタが提供できる。
(実施例)
ランタンクロマイト質材料として、下記の一般式で表される組成の酸化物を試作した。
(La(1−x)Sr)(Cr(1−y−z)CoZr)O
ただし、0.1≦x≦0.2
0.01≦y≦0.05
0.01≦z≦0.1
原料粉末として、酸化ランタン、炭酸ストロンチウム、酸化クロム、酸化コバルト及び酸化ジルコニウムを所定割合に配合した後、ボールミルを用いて混合し、次に1300℃において10時間熱処理して、複合酸化物粉末を得た。次に、100kg/cm2 で一軸プレスして60mmφ×5mmt程度の円板を得た後、2000kg/cm2
で冷間静水圧加圧(CIP)処理して成形体を得た。次に、1500℃〜1700℃の焼結温度において焼結して焼結体を得た。次に、1650℃で焼結した円板焼結体から3×4×40mmのテストピースを加工し物性測定用サンプルとした。各物性測定は次のように実施した。
〔還元膨張率〕
テストピースを直径40mm、長さ500mmの管内に置き、安定な還元雰囲気を保つために管内に約100ml/分の流量で水素ガスを連続的に流通しながら1000℃で5時間保持した後、冷却し、長さ変化を測定し、以下の式により求めた。
還元膨張率(%)=(L’/L−1)×100
但し、L:還元前長さ(室温)
L’:還元後長さ(室温)
〔熱膨張係数〕
テストピースを10℃/minで昇温し、熱膨張を連続的に測定した。
〔導電率〕
テストピースに4本の白金リード線(間隔:約10mm)を巻きつけ、各温度において直流4端子法により測定した。
試料の組成(前記一般式におけるx、y及びzの値)ならびに試料の還元膨張率、熱膨張係数及び導電率の測定結果を表1に示す。
Figure 2007039279
図1は前記一般式のy値(Co量)と還元膨張率の関係を示すグラフである。横軸はy値を、縦軸は還元膨張率(%)を示す。前記一般式のx値(Sr量)をそれぞれ0.1、0.15及び0.2に固定した場合について測定を行った。前記一般式のz値(Zr量)は0.05に固定した。
なお、x値を上記の値に固定した理由は、次の通りである。導電性素子としてはx値が大きい方がよいが、x値が大きすぎると還元膨張率と熱膨張係数が大きくなりすぎるので、x値の上限は0.2とした。一方、x値が0.1未満では、熱膨張係数及び導電率が低くなりするので、x値の下限は0.1とした。以下の他の試験においても同様である。
図1のグラフから、y値の増加に伴い、還元膨張率は大きくなることがわかる。特に、y値が0.05を越えると、還元膨張率は急激に大きくなる。
図2は前記一般式のy値と熱膨張係数の関係を示すグラフである。横軸はy値、縦軸は熱膨張係数(×10-6/K)を示す。前記一般式のx値をそれぞれ0.1、0.15及び0.2に固定した場合について測定を行った。前記一般式のz値は0.05に固定した。
図2のグラフから、y値の増加に伴い、熱膨張係数は大きくなることがわかる。y値が0.05を越えると、いずれのx値の場合でも、試料の熱膨張係数は目標値であるYSZの熱膨張係数10.2×10−6/K〜10.3×10−6/Kを越えてしまう。一方、y値が0.01未満では、いずれのx値の場合でも、試料の熱膨張係数は前記目標値に満たない。
図3は前記一般式のy値と導電率の関係を示すグラフである。横軸はy値を、縦軸は1000℃における導電率(S/cm)を示す。前記一般式のx値をそれぞれ0.1、0.15及び0.2に固定した場合について測定を行った。前記一般式のz値は0.05に固定した。
図3のグラフから、y値の増加に伴い、導電率は小さくなっており、導電率の観点からはy値が小さいほど良いことがわかる。導電率は10S/cm以上が好ましいが、y値が0.05を越えると、x値によっては導電率が10S/cmを下回る場合がある。
以上の結果から、y値の増加、すなわちCrをCoで置換する量を多くすることにより還元膨張率と熱膨張係数は増大し、導電率は低下することが判明した。
図4は前記一般式のz値(Zr量)と還元膨張率の関係を示すグラフである。横軸はz値を、縦軸は還元膨張率(%)を示す。前記一般式のx値(Sr量)をそれぞれ0.1、0.15及び0.2に固定した場合について測定を行った。前記一般式のy値(Co量)は0に固定した。なお、y=0は本発明の範囲外であるが、これはz値単独での影響を評価するためである。(以下の試験においても同様である。)
図4のグラフから、z値の増加に伴い、還元膨張率は小さくなることがわかる。特に、z値が0から0.1の範囲で還元膨張率の減少勾配が急であり、Zrの少量添加でも還元膨張抑制効果が得られることがわかる。
図5は前記一般式のz値と熱膨張係数の関係を示すグラフである。横軸はz値、縦軸は熱膨張係数(×10-6/K)を示す。前記一般式のx値をそれぞれ0.1、0.15及び0.2に固定した場合について測定を行った。前記一般式のy値は0に固定した。
図5のグラフから、z値の増加に伴い、熱膨張係数は小さくなることがわかる。z値が0.1を越えると、いずれのx値の場合でも、試料の熱膨張係数は目標値であるYSZの熱膨張係数10.2×10−6/K〜10.3×10−6/Kに満たない。
図6は前記一般式のz値と導電率の関係を示すグラフである。横軸はz値を、縦軸は1000℃における導電率(S/cm)を示す。前記一般式のx値をそれぞれ0.1、0.15及び0.2に固定した場合について測定を行った。前記一般式のy値は0に固定した。
図6のグラフから、z値の増加に伴い、導電率は小さくなっており、導電率の観点からはCoと同様にZrも少ない方が良いことがわかる。
SOFCなどのインターコネクタ材料として適用する場合、インターコネクタ材料は固体電解質であるYSZと熱膨張係数がほぼ一致していると同時に導電率が高く、また還元膨張率が小さいことが必要であるが、以上の解析の結果、一般式(La(1−x)Sr)(Cr(1−y−z)CoZr)Oのx、y及びz値は、0.1≦x≦0.2、0.01≦y≦0.05、0.01≦z≦0.1が好ましいことがわかる。
なお、上記一般式で示したランタンクロマイト質材料は、酸化雰囲気における高い熱安定性と、適度な導電性を有しているので、セラミックス用焼成炉のヒータ線等の電熱体用材料としても好適に用いられる。
ランタンクロマイト質材料(La(1−x)Sr)(Cr(1−y−z)CoZr)Oの、y値(Co量)と還元膨張率の関係を示すグラフである。 ランタンクロマイト質材料(La(1−x)Sr)(Cr(1−y−z)CoZr)Oの、y値と熱膨張係数の関係を示すグラフである。 ランタンクロマイト質材料(La(1−x)Sr)(Cr(1−y−z)CoZr)Oの、y値と導電率の関係を示すグラフである。 ランタンクロマイト質材料(La(1−x)Sr)(Cr(1−y−z)CoZr)Oの、z値と還元膨張率の関係を示すグラフである。 ランタンクロマイト質材料(La(1−x)Sr)(Cr(1−y−z)CoZr)Oの、z値と熱膨張係数の関係を示すグラフである。 ランタンクロマイト質材料(La(1−x)Sr)(Cr(1−y−z)CoZr)Oの、z値と導電率の関係を示すグラフである。

Claims (4)

  1. 一般式(La(1−x)Sr)(Cr(1−y−z)CoZr)O
    (ただし、0.1≦x≦0.2、0.01≦y≦0.05、0.01≦z≦0.1)
    で表されるランタンクロマイト質材料。
  2. 請求項1記載のランタンクロマイト質材料を含んでなるインターコネクタ。
  3. 請求項2記載のインターコネクタを有する固体酸化物形燃料電池。
  4. 請求項1記載のランタンクロマイト質材料を含んでなる電熱体。
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