JP2007038250A - 鍛造用金型及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】Fe基合金からなる鍛造用金型における任意の部位の強度を向上させる一方、その他の部位の靱性を向上させる。
【解決手段】SKH51(Fe基合金)からなる予備成形体52のパンチ成形部34及び小径部32の端部の表面に、SKH51の硬度を向上させる元素を含む物質の粉末を塗布する一方、小径部32の胴部の表面に、SKH51に含まれ且つSKH51の硬度上昇に寄与しない元素を含む物質の粉末を塗布する。塗布後に予備成形体52を熱処理すれば、パンチ成形部34及び小径部32の端部では、表層部になるにつれて硬度が上昇する拡散層36aが形成され、小径部32の胴部では、表層部になるにつれて靱性が向上する濃度変化部37が形成される。
【選択図】図6

Description

本発明は、内部から表層部になるにつれて硬度が上昇する拡散層が存在する部位と、内部から表層部になるにつれて靱性が向上する濃度変化部が存在する部位とを同時に有する鍛造用金型及びその製造方法に関する。
鍛造加工は、所望の形状の成形体を得る際に広汎に採用される成形加工手法の1つである。鍛造加工では、パンチやダイ等の鍛造用金型を用い、この鍛造用金型によってワークを加圧する。加圧された該ワークの肉は、パンチ及びダイによって形成されるキャビティに沿って塑性流動を起こし、これに伴い、該ワークが所定の形状の成形体に成形される。
鍛造用金型には、上記のような鍛造加工を数千回〜数万回繰り返して実施するに十分な耐摩耗性、耐食性、強度等が希求される。このような諸特性が十分でないと、割れや欠けが容易に発生するので寿命が短い鍛造用金型となり、結局、鍛造用金型を頻繁に交換する必要が生じるので、設備投資が高騰するからである。
鍛造用金型は、一般に、高速度工具鋼(SKH)や合金工具鋼(SKD)、すなわち、Fe基合金の1種である鋼材から構成される。従って、上記した諸特性を向上させるには、その表面に、物理的気相成長(PVD)法や化学的気相成長(CVD)法、メッキ、陽極酸化等によって皮膜を設けることが有効であるようにも考えられる。しかしながら、この場合、皮膜の形成に長時間を要するとともに、皮膜形成コストが大きいという不具合がある。
皮膜を設けることなく鋼材の表面の諸特性を向上させる試みとして、浸炭、浸硫、窒化、炭窒化等の様々な表面処理を施すことが挙げられる(例えば、特許文献1、2参照)。また、特許文献3では、加工用刃具ではあるが、ショットピーニングやショットブラスト等の機械的処理を施して表面に10kgf/cm2(およそ0.1MPa)の圧縮応力を付与すれば、耐摩耗性及び耐欠損性を向上させることができると報告されている。
特開2003−129216号公報 特開2003−239039号公報 特開平5−171442号公報
しかしながら、特許文献1〜3に記載されたような従来技術で諸特性が向上するのは、金属材の表面に限られる。例えば、窒化や浸炭等では、元素が拡散するのは金属材の表面から僅かに数μm、最大でも200μm程度であり、それより内部の諸特性を向上させることは困難である。このため、耐摩耗性や耐欠損性が著しく向上するとは言い難い側面がある。
しかも、従来技術に係る処理方法では、形成された窒化層等と母材である金属材との間に界面が存在する。このため、界面に応力集中が起こるような条件下では、界面から脆性破壊が起こることが懸念される。
また、部材によっては、硬度が向上した部位と、靱性が向上した部位とを併せ持つものが希求されることもある。しかしながら、これまでに知られている表面処理方法では、部材全体の硬度を上昇させることは可能であるが、任意の部位のみ硬度を上昇させ、且つその他の部位の靱性を向上させることはできない。しかも、上記した従来技術等をはじめとする各種の表面処理方法は、主に硬度を向上させるための処理方法であり、靱性を向上させる簡便な処理方法は知られていない。
本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、表層部の硬度が上昇した部位と、表層部の靱性が向上した部位とを併せ持ち、且つ物性の変化がなだらかであるために応力集中が起こり難いので脆性破壊が生じ難い鍛造用金型及びその製造方法を提供することを目的とする。
前記の目的を達成するために、本発明は、Fe基合金からなる母材の内部に炭化物が拡散することにより形成されて前記母材に比して高硬度な拡散層が存在する部位を有する鍛造用金型であって、
前記母材における前記拡散層が存在しない部位に、前記母材の硬度を上昇させる性質を有する元素の量が該母材の表層部から内部になるに従って増加することに伴い硬度が上昇する濃度変化部を有することを特徴とする。
拡散層においては、母材であるFe基合金の内部深くまで炭化物が拡散しているので、内部まで優れた硬度及び強度を示す。一方、濃度変化部においては、Fe基合金の硬度上昇に寄与する元素の量が表層部側で少なく、内部になるにつれて漸次的に増加する。硬度上昇に寄与する元素の量が少ない部位は、概して靱性が大きくなる。このため、濃度変化部では、表層部の靱性が大きく、且つ内部の硬度が大きくなる。
すなわち、本発明に係る鍛造用金型は、表層部になるに従って硬度が上昇する部位(拡散層)と、表層部になるに従って硬度が低下する部位(濃度変化部)とを併せ持つ。このように、本発明によれば、高硬度を示す部位と高靱性を示す部位を同一の部材に形成することができる。従って、ある部位には高硬度であることが希求され、別の部位には高靱性であることが希求される等、部位によって希求される特性が異なる金型として好適に使用することができる。
しかも、この鍛造用金型には、拡散層又は濃度変化部と母材との間に界面が存在しない。このため、応力集中が起こり難いので脆性破壊が生じ難い。
なお、濃度変化部を設ける際には、該濃度変化部の外表面に、母材の硬度を上昇させる性質を有する元素が炭化物化した炭化物が排出され、その結果、皮膜が形成される。本発明に係る鍛造用金型は、この皮膜が除去されたものであってもよく、この皮膜が存在するものであってもよい。
金属の炭化物としては、Fe基合金の硬度を向上させる物質であれば特に限定されるものではないが、Cr、W、Mo、V、Ni、Mnの炭化物を好適な例として挙げることができる。
この場合、金属元素をMで表すとき、炭化物の組成式がM6C又はM236であることが好ましい。組成式がこのように表される炭化物は、Fe基合金の硬度を向上させる効果に特に優れるからである。
炭化物は、Cr、W、Mo、V、Ni、Mnの少なくともいずれか1種と、Feとの固溶体が炭化物化したものであってもよい。この場合、上記したような金属炭化物の相対量が低減するので、金属炭化物が過度に生成して脆性が上昇することを抑制することができる。
好ましい固溶体の炭化物は、金属元素をMで表すとき、その組成式が(Fe,M)6C又は(Fe,M)236で表されるものである。
また、本発明に係る鍛造用金型の製造方法は、Fe基合金の表面に硬度を上昇させる第1元素を含む物質の粉末を塗布する一方、前記第1元素以外の元素であり且つFe基合金に含まれる第2元素を含む物質の粉末を、前記第1元素が塗布された部位以外の部位に塗布するか、又は、前記第2元素を含む物質の粉末をFe基合金の表面に塗布する一方、前記第2元素が塗布された部位以外の部位に前記第1粉末を含む物質を塗布する工程と、
前記第1元素又は前記第2元素を含む物質の各粉末が塗布された前記Fe基合金に対して熱処理を施し、前記第1元素を含む物質の粉末が塗布された部位に前記母材に比して高硬度な拡散層を設ける一方、前記第2元素を含む物質の粉末が塗布された部位に前記母材の硬度を上昇させる性質を有する元素の量が該母材の表層部から内部になるに従って増加することに伴い硬度が上昇する濃度変化部を設ける工程と、
を有し、
前記拡散層を、前記第1元素を前記Fe基合金の内部に拡散させて該Fe基合金を構成する炭素と反応させることによって炭化物を拡散させて設け、
前記濃度変化部を、前記Fe基合金を構成する前記第1元素を該Fe基合金の内部から表層部側に拡散させ、該表層部に存在して該Fe基合金を構成する炭素と前記第1元素とを反応させて炭化物を含む皮膜として前記母材から排出することで設けることを特徴とする。
このような工程を経ることにより、厚みの大きい拡散層を形成することができるとともに、拡散層と母材との間に界面が存在しない鍛造用金型を製造することができる。得られた鍛造用金型における拡散層が存在する部位は、硬度及び強度に優れる。
その一方で、第2元素を含む物質の粉末を塗布した部位では、熱処理に伴って第1元素が第2元素に指向して拡散し始める。すなわち、Fe基合金の硬度を上昇させる第1元素が表面側に拡散し始める。この理由は、第2元素に第1元素を捕捉する作用があるためであると推察される。これにより第1元素が表層部の最上方まで拡散し、さらに、表層部の外表面に第1元素を含む皮膜が設けられる。
そして、このようにして表層部の外表面に第1元素が偏在する結果、第1元素の量は、皮膜の直下で最も少なくなり、表層部から内部に向かうにつれて漸次的に増加する。すなわち、得られた鍛造用金型の硬度は、皮膜の直下で最も低くなる。上記したように、硬度が小さい部位は概して靱性が大きいことから、皮膜が設けられた部位の靱性は、内部側に比して表層部側が大きくなる。換言すれば、表層部側が高靱性で且つ内部側が高硬度である部位を有する鍛造用金型を得ることができる。
すなわち、本発明によれば、粉末を塗布した後に熱処理を行うという簡便な操作を行うことによって、表層部の硬度が上昇した部位と、表層部の靱性が向上した部位とを併せ持つ鍛造用金型を容易に得ることができる。
なお、粉末には、第1元素を含む物質の粉末が配合されていてもよい。この場合、Fe基合金の種類や熱処理条件に応じて、第1元素を含む物質の粉末と第2元素を含む物質の粉末との配合比を適宜設定すればよい。
第1元素としては、Fe基合金の硬度を向上させることができるということから、Cr、W、Mo、V、Ni、Mnを使用することが好ましい。
一方の第2元素としては、Fe基合金に含まれて且つ該Fe基合金の硬度上昇に寄与しない元素を含む物質であれば特に限定されないが、C、Si、Cu、Ti、Al、Mgが好ましい。特に、CとSiは第1元素を拡散させる効果に優れ、一方、Cu、Ti、Al、Mgは酸素を遮断する効果に優れる。さらに、生成する金属間化合物を微細化することができるとともに耐熱性を向上させることができ、高温強度に優れるFe基合金とすることができる。
また、皮膜を、例えば、切削加工代等として除去するようにしてもよい。この場合、高硬度な部位が減少して高靱性な部位が残留するので、曲げ加工等を行うことが容易な鍛造用金型を得ることができる。
本発明によれば、同一の鍛造用金型に、硬度が向上した部位と靱性が向上した部位とが設けられる。すなわち、部位によって希求される特性が異なる部材を構成することができる。しかも、拡散層の厚みが大きいので、該拡散層が設けられた部位の硬度や強度を内部まで向上させることができる一方、表層部側の靱性が大きな部位を有する鍛造用金型を構成することができる。しかも、この鍛造用金型では、拡散層又は濃度変化部と母材との間に界面が存在しないので、脆性破壊が生じることを回避することもできる。
以下、本発明に係る鍛造用金型及びその製造方法につき好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
図1A〜図1Dは、本実施の形態に係る鍛造用金型を用いて製造されるスパイダ10(図1D参照)の製造工程である。このスパイダ10につき先ず説明すると、該スパイダ10は、軸方向に摺動可能なトリポート型等速ジョイント(図示せず)の構成部品として用いられるものであり、セレーションが形成された孔部12を有するリング体14と、前記リング体14の周方向に沿って等角度離間し半径外方向に向かって突出する3本のトラニオン16a〜16cとが一体的に形成される。前記スパイダ10は、図示しないドライブシャフトの一端部に固着され、前記トラニオン16a〜16cは、有底円筒状からなる外輪部材の内壁に形成された図示しないトラック溝に沿って摺動可能に設けられる。なお、各トラニオン16a〜16cは、リング体14に近接する根本部から該リング体14の半径外方向に向かって徐々に拡径するように形成される。
このスパイダ10は、以下の工程によって製造される。
はじめに、第1準備工程において、所定長の円柱体(ビレット)に切り出されたワーク18(図1A参照)に対して球状化焼鈍を施す。これによりワーク18が軟化し、以下の鍛造成形が容易となる。そして、第2準備工程において、ボンデライト処理により、例えば、リン酸亜鉛等からなる潤滑用化成皮膜をワーク18の表面に形成することによって該表面に潤滑性を付与する。具体的には、このようなリン酸亜鉛等が溶解された溶媒中にワーク18を所定時間浸漬することにより潤滑用化成皮膜を形成すればよい。
次いで、図2に示すように、本実施の形態に係る鍛造用金型20を使用して、潤滑用化成皮膜が形成されたワーク18に対する鍛造成形を行う。これにより、図1Bに示すように、円盤状部22の外周面に半径外方向に向かって3本のトラニオン16a〜16cが膨出形成された中間成形体24が形成される。
続いて、前記中間成形体24の円盤状部22の中心に対しピアス成形を施すことにより、図1Cに示すように、内バリが打ち抜かれて貫通した孔部12が形成され、さらに、図示しない切削加工装置を用いて面取り、孔部12のセレーション等のレース加工を施した後、浸炭焼き入れ及び焼き戻し等の熱処理工程を経て製造品としてのスパイダ10が完成する(図1D参照)。
次に、本実施の形態に係る鍛造用金型20につき説明する。
図2に示されるように、この鍛造用金型20は、図示しない第1押圧機構に連結されて上下方向に沿って変位自在に設けられた鍛造用上パンチ26aと、前記鍛造用上パンチ26aと同軸状に配置され、図示しない第2押圧機構に連結されて上下方向に沿って変位自在に設けられた鍛造用下パンチ26bとを含む。なお、前記鍛造用上パンチ26aと前記鍛造用下パンチ26bとは、互いに同一に構成される。
前記鍛造用上下パンチ26a、26bは、SKH51を原材料(母材)として製造されたものであり、図3に示されるように、一端側の大径部28と、前記大径部28に連接されてテーパ状に縮径した縮径部30と、前記縮径部30に連接された小径部32と、前記小径部32から他端側に向かって突出し断面略円弧状に湾曲して形成されたパンチ成形部34とを有する。
この場合、前記パンチ成形部34及び小径部32の端面を含む一部表面には、図4に示すように、母材であるSKH51中を金属の炭化物が拡散してなる拡散層36aが設けられる。このため、鍛造用上下パンチ26a、26bにおいて、パンチ成形部34及び小径部32の端面は、母材上に拡散層36aが形成された形態となっている。
一方、小径部32の胴部の一部表面には、図5に示すように、母材であるSKH51中の金属元素の濃度が変化する濃度変化部37が存在する。
この濃度変化部37において濃度が変化する金属元素は、SKH51の構成元素であり、且つSKH51の硬度上昇に寄与するもの、具体的には、Cr、W、Mo、V、Ni、Mn等である。
上記したような金属元素は、通常、合金又は炭化物の形態で存在する。炭化物としては、その組成式がCr6C、W6C、Mo6C等のようにM6Cで表されるもの、又はM236で表されるものであってもよいが、M6CやM236が過度に存在すると、鍛造用上下パンチ26a、26bが脆性を示すようになる。これを回避するべく、FeとMの固溶体の炭化物、すなわち、(Fe,M)6Cや(Fe,M)236等で表される炭化物として、M6CやM236の相対量を低減させることが好ましい。
金属元素の濃度は、濃度変化部37の最上方から内部側に向かうにつれて漸次的に増加する。すなわち、金属元素の濃度は濃度変化部37の最上方で最も低く、このため、濃度変化部37の硬度は、最上方で最も小さく、内部側に向かうにつれて大きくなる。
このように、小径部32の表層部には、SKH51の硬度を上昇させる元素が内部側に向かうにつれて漸次的に増加する濃度変化部37が形成されている。この濃度変化部37は、後述するように、SKH51に含まれた元素が内部から表層部に拡散して排出されることによって設けられる。この際に表層部に生成する拡散層は、機械加工によって切削除去される。
一般的に、硬度と靱性はトレードオフの関係にあり、硬度が低下すると靱性が向上する。上記したように、濃度変化部37の最上方においては、硬度上昇に寄与する元素の量が少なく、このため、小径部32の外表面では、内部側に比して靱性が大きくなる。すなわち、小径部32の表層部は、濃度変化部37が形成されていないSKH51に比して高靱性を示す。このため、小径部32自体も靱性が向上して脆性破壊が生じ難くなるので、該小径部32の胴部では、濃度変化部37が存在しないワーク押圧部位に比して割れ等が生じ難くなる。
また、上記した金属元素、換言すれば、合金や炭化物の濃度は、該小径部32の表面で最も低く、内部になるにつれて漸次的に増加する。このため、濃度変化部37と母材との間に明確な界面は存在しない。従って、応力集中が起こることを回避することができるので、濃度変化部37を設けることに伴って脆性が増すことを回避することができる。なお、図4においては、濃度変化部37が存在することを明確にするため、濃度変化部37と母材との間に便宜的に境界線を付している。
濃度変化部37には、SKH51に含まれ且つSKH51の硬度上昇には寄与しない元素、具体的には、C、Si、Cu、Ti、Al、Mg等が、例えば合金又は炭化物の形態で存在する。後述するように、このような元素が熱処理時に表面側に存在する場合、Cr、W、Mo、V、Ni、Mn等の金属元素が小径部32の外表面側に指向して拡散する。
さらに、前記鍛造用金型20は、図示しない昇降機構に連結された上ダイ38と、図示しない固定ダイに位置決め固定された下ダイ40とを有し、前記上ダイ38及び下ダイ40には、それぞれ、前記円盤状部22を成形するための第1部位41と、トラニオン16a〜16cを形成するための湾曲した凹部42が設けられる。この中、凹部42には、前記鍛造用上下パンチ26a、26bによって上下方向から加圧されて塑性流動する肉が流入する。
また、前記凹部42に近接する部位には、上ダイ38及び下ダイ40が相互に接近する方向に向かって断面円弧状に膨出した第1及び第2ダイ成形部44a、44bがそれぞれ形成される。図2から諒解されるように、第1ダイ成形部44aと第2ダイ成形部44bとの離間距離、換言すれば、塑性流動するワーク18の肉が通過する断面積は、円盤状部22を成形する前記第1部位41の断面積に比して小さい。
この場合、前記第1及び第2ダイ成形部44a、44bの表層部には、鍛造用上下パンチ26a、26bと同様に、母材であるSKH51中を金属の炭化物が拡散してなる拡散層36bが設けられる。すなわち、上ダイ38及び下ダイ40における第1及び第2ダイ成形部44a、44bは、鍛造用上下パンチ26a、26bと同様に、母材からなる下地層と拡散層36bを有し、下地層上に拡散層36bが形成された形態となっている。
そして、図2に示されるように、拡散層36bは、ワーク18の肉が通過する断面積が減少する部位に設けられている。
拡散層36a、36bにつき説明すると、上記したように、これら拡散層36a、36bは、母材であるSKH51中に金属の炭化物が拡散することによって形成されている。
炭化物を形成する金属元素としては、SKH51の硬度を向上させる元素、具体的には、Cr、W、Mo、V、Ni、Mnが選定される。このような金属元素の炭化物が拡散することによって形成された拡散層36a、36bは、高硬度及び高強度を示す。このため、鍛造用上下パンチ26a、26bにおけるパンチ成形部34及び小径部32の端面、及び上ダイ38、下ダイ40における第1ダイ成形部44a及び第2ダイ成形部44bでは、他の部位に比して硬度及び強度が高くなる。
炭化物は、金属元素をMで表すとき、Cr6C、W6C、Mo6C等のようにM6Cで表される炭化物や、M236で表される炭化物である。この種の炭化物は、硬度及び強度を向上させる効果に最も優れている。
なお、M6CやM236が過度に存在すると、鍛造用金型20が脆性を示すようになる。そこで、鋼材である鍛造用上下パンチ26a、26b、上ダイ38及び下ダイ40の構成元素であるFeと、上記金属元素の固溶体の炭化物を生成することが好ましい。すなわち、炭化物は、(Fe,M)6Cや、(Fe,M)236等で表されるものであってもよい。このような炭化物を生成させた場合、M6CやM236の相対量が低減するので、鍛造用上下パンチ26a、26b、上ダイ38及び下ダイ40が脆性を示すことを確実に回避することができるようになる。
ここで、拡散層36a、36bの厚み、換言すれば、炭化物の拡散距離は、鍛造用上下パンチ26a、26b、上ダイ38及び下ダイ40の深さが少なくとも0.5mm(500μm)に達しており、通常は3〜7mm(3000〜7000μm)、最大では15mm(15000μm)に達することがある。この値は、窒化や浸炭等における元素の拡散距離が数十μm、大きくても200μm程度であるのに対し、著しく大きい。すなわち、本実施の形態においては、炭化物を、従来技術に係る表面処理方法によって導入された元素に比して著しく深い部位にまで拡散させることができる。
このような拡散層36a、36bが設けられた部位では、炭化物が拡散した深さまで硬度が向上する。すなわち、鍛造用上下パンチ26a、26b、上ダイ38及び下ダイ40の内部深くまで硬度及び強度が上昇し、その結果、内部の耐摩耗性が向上するとともに、変形し難くなる。
なお、後述するように、拡散層36a、36bは、母材の表面から拡散された金属元素が炭化物を生成することによって形成される。このため、炭化物の濃度は、表面で最も高く、母材の内部に指向するにつれて漸次的に減少する。
また、炭化物の濃度がこのように漸次的に減少するため、拡散層36a、36bと母材との間に明確な界面は存在しない。このため、応力集中が起こることを回避することができるので、金属元素を拡散させることに伴って脆性が増すことを回避することができる。なお、図5においては、拡散層36aが存在することを明確にするため、拡散層36aと母材との間に便宜的に境界線を付している。
このように構成された鍛造用金型20が使用される際には、下ダイ40及び鍛造用下パンチ26bによって形成される位置決め用のキャビティ内に円柱状のワーク18が装填され、図示しない第1及び第2押圧機構を駆動させて鍛造用上下パンチ26a、26bを相互に接近させる方向に変位させることにより前記ワーク18が加圧される。そして、前記鍛造用上下パンチ26a、26bと略同時に図示しない昇降機構を付勢して上ダイ38を下降させることにより前記上ダイ38と前記下ダイ40とが当接し、前記上下ダイ38、40の凹部42、42によってトラニオン成形用のキャビティが形成される。
その際、鍛造用上下パンチ26a、26bによって加圧されたワーク18が塑性変形し、前記トラニオン成形用のキャビティに前記塑性変形した肉が流動しようとする肉流れが発生し、上ダイ38及び下ダイ40に設けられた第1及び第2ダイ成形部44a、44bによって好適に絞られた状態でトラニオン成形用のキャビティ内に流入するため、前記トラニオン成形用のキャビティの隅々まで塑性変形した肉が充填される。
上記したように、鍛造用上下パンチ26a、26bにおけるパンチ成形部34及び小径部32の端面、上ダイ38、下ダイ40の第1及び第2ダイ成形部44a、44bは、拡散層36a、36bが存在するために高硬度及び高強度であり、且つ靱性が確保されている。従って、これらの部位は、鍛造加工を繰り返し行っても摩耗し難く、しかも、欠損が生じ難い。
一方、ワーク18を押圧する鍛造用上下パンチ26a、26bにおいては、この押圧に伴い、小径部32の胴部に荷重が加わる。しかしながら、上記したように、該胴部は、その表層部の靱性が高いために高靱性である。このため、該胴部は、鍛造加工を繰り返し行っても割れが生じ難い。
すなわち、拡散層36a、36bを設けることによって鍛造用上下パンチ26a、26b、上ダイ38、下ダイ40の長寿命化を図ることができ、一方、SKH51の硬度上昇に寄与する元素を表層部に拡散・排出させて濃度変化部37を設けることにより、鍛造用上下パンチ26a、26bの寿命を長期化することができる。
拡散層36a及び濃度変化部37を有する鍛造用上パンチ26aは、以下のようにして製造することができる。
先ず、図6(a)に示すSKH51からなる円筒体形状のワークWに対して、図6(b)に示すように、バイト50による切削加工を施し、鍛造用上パンチ26aの形状に対応する形状の予備成形体52とする。
次に、この予備成形体52におけるパンチ成形部34及び小径部32の端部の一部表面に、図6(c)に示すように、拡散させる金属の粉末を塗布する。例えば、Wを拡散させるのであればW粉末が配合された粉末、Crを拡散させるのであればCr粉末が配合された粉末を塗布すればよい。なお、粉末の塗布分量は、例えば、W6CやCr6C等が生成する量とすればよい。
その一方で、SKH51に含まれる元素であって、且つSKH51の硬度を上昇させるものではないもの、すなわち、Cr、W、Mo、V、Ni、Mn等以外の元素を含む物質の粉末を、予備成形体52における小径部32の胴部となる部位の表面に塗布する。このような粉末の好適な例としては、C、Si、Cu、Ti、Al、Mgを挙げることができる。
いずれの場合においても、粉末の塗布は、該粉末を溶媒に分散させて調製した塗布剤54a、54bを塗布することによって行えばよい。溶媒としては、アセトンやアルコール等、容易に蒸発する有機溶媒を選定することが好ましい。前記ワーク押圧部位に塗布する塗布剤54aを調製する場合、溶媒にW、Cr等の粉末を分散させればよく、前記胴部に塗布する塗布剤54bを調整する場合、溶媒にCやSi等の粉末を分散させればよい。
ここで、母材であるSKH51の表面には、通常、自発的に形成された酸化物膜が存在する。この状態で上記した元素を拡散させるには、該元素が酸化物膜を通過できるように、多大な熱エネルギを供給しなければならない。これを回避するために、各塗布剤54a、54bに、酸化物膜を還元することが可能な還元剤を混合することが好ましい。
具体的には、酸化物膜に対して還元剤として作用し、且つSKH51とは反応しない物質を溶媒に分散ないし溶解させる。還元剤の好適な例としては、ニトロセルロース、ポリビニル、アクリル、メラミン、スチレン、エポキシの各樹脂を挙げることができるが、特にこれらに限定されるものではない。なお、還元剤の濃度は、5%程度とすればよい。
以上の物質が溶解ないし分散された塗布剤54a、54bは、それぞれ、図6(c)、(d)に示すように、刷毛56を使用する刷毛塗り法によって、ワーク押圧部位及び小径部32の胴部の各表面に塗布される。勿論、刷毛塗り法以外の公知の塗布技術を採用するようにしてもよい。また、塗布剤54a、54bの塗布順序を逆にしてもよいことはいうまでもない。
次いで、ワーク押圧部位の表面に塗布剤54aが塗布され、且つ小径部32の胴部の表面に塗布剤54bが塗布された予備成形体52に対して熱処理を施す。この熱処理は、図6(e)に示すように、バーナー火炎58を予備成形体52の一端面側から当てることによって施すことができる。勿論、熱処理炉内において不活性雰囲気中で熱処理するようにしてもよい。なお、図6(e)には、塗布剤54aと塗布剤54bとの境界を明確にするべく、便宜上、二点差線を付している。
この昇温の過程では、250℃程度で還元剤が分解し始め、炭素や水素が生成する。予備成形体52の酸化物膜は、この炭素や水素の作用下に還元されて消失する。このため、パンチ成形部34及び小径部32の端部ではWやCr等が、小径部32の胴部ではCやSi等が酸化物膜を通過する必要がなくなるので、拡散に要する時間を短縮することができるとともに、熱エネルギを低減することができる。
さらに昇温を続行すると、パンチ成形部34及び小径部32の端部では、母材であるSKH51の構成元素であるCや還元剤が分解することによって生成したCと、WやCr等とが反応して、W6CやCr6C、W236、Cr236等が生成する。Feがさらに関与した場合には、(Fe,W)6C、(Fe,Cr)6C、(Fe,W)236、(Fe,Cr)236等も生成する。
生成したW6CやCr6C、(Fe,W)6C、(Fe,Cr)6C等の炭化物の一部は即座に分解し、Fe、W、Crに戻る。このうち、W、Crは、次に、母材のより内部側に存在する該母材の構成元素であるC、Feや、該母材のより内部側に遊離状態で存在するCと結合して、新たにW6C、Cr6C、(Fe,W)6C、(Fe,Cr)6C等を生成する。このW6CやCr6C、(Fe,W)6C、(Fe,Cr)6Cも即座に分解してW、Crに戻った後、母材の一層内部側に存在する該母材の構成元素であるC、Feや、該母材の一層内部側に遊離状態で存在するCと結合して、再度W6C、Cr6C、(Fe,W)6C、(Fe,Cr)6C等を生成する。このようにして炭化物が分解、生成を繰り返すことにより、該炭化物が母材の内部深くまで拡散する。
このようして、母材の内部にW6CやCr6C、(Fe,W)6C、(Fe,Cr)6Cが拡散し、その結果、拡散層36aが形成される(図2参照)。なお、炭化物の濃度は漸次的に減少し、炭化物の拡散到達終端部と母材との間に明確な界面が生じることはない。従って、脆性破壊が生じることを回避することができるので、拡散層36aが形成されたワーク押圧部位の靱性を確保することもできる。拡散層36aの厚み、すなわち、炭化物の拡散距離は、最大で表面から15mm程度の深さまで及ぶ。
上記と同様にして、MoやV、Niの炭化物を母材の内部に拡散させて拡散層36aを形成することもできる。
その一方で、小径部32の胴部では、SKH51の構成元素であるWやCr等が、還元剤が分解することによって生成したCやSKH51に含まれる遊離C等と反応し、その結果、W6CやCr6C、W236、Cr236等が生成する。塗布粉末にFeが混合されている場合、Feとの固溶体の炭化物である(Fe,W)6C、(Fe,Cr)6C、(Fe,W)236、(Fe,Cr)236等がさらに生成する。ここで、Feの拡散速度はC、Si、Cu、Ti、Al、Mgに比して大きく、従って、塗布剤54bに含まれたFeの濃度は、濃度変化部37の内部側で大きくなる。
生成したW6CやCr6C、(Fe,W)6C、(Fe,Cr)6C等の炭化物は即座に分解し、Fe、W、Crに戻る。このうち、W、Crは、表面側に拡散移動する。この理由は、表面側に存在するCやSi等が、WやCr等を捕捉する作用があるためであると推察される。なお、塗布剤にCu、Ti、Al、Mgが含まれている場合、これらは酸素を遮断する作用をも営む。このため、SKH51が酸化することを回避することができる。
上記の拡散過程で、WやCrは、予備成形体52の表面側に存在するSKH51の構成元素であるC、Feや、該表面側に遊離状態で存在するCと結合して、新たにW6C、Cr6C、(Fe,W)6C、(Fe,Cr)6C等を生成する。このW6CやCr6C、(Fe,W)6C、(Fe,Cr)6Cも即座に分解してW、Crに戻った後、予備成形体52の一層表面側に存在するC、Feや、該表面側に遊離状態で存在するCと結合して、再度W6C、Cr6C、(Fe,W)6C、(Fe,Cr)6C等を生成する。このようにして炭化物が分解、生成を繰り返すことにより該炭化物が予備成形体52の外表面まで拡散し、その結果、該外表面に炭化物からなる皮膜が形成される。この炭化物は化学的に安定であり、従って、予備成形体52の表層部の外表面に皮膜が形成される。なお、皮膜の厚みは、およそ0.5mm程度である。
このようして、表層部側に存在するWやCrが、W6CやCr6C、(Fe,W)6C、(Fe,Cr)6C等として予備成形体52の外表面に拡散される。その結果として、WやCr等の濃度が、皮膜の直下の表層部で最も低くなるとともに内部側になるにつれて漸次的に増加するようになる。すなわち、濃度変化部37が形成される(図3参照)。なお、WやCr等の濃度は漸次的に増加するので、上記したように、濃度変化部37の終端部と母材との間に明確な界面が生じることはない。従って、濃度変化部37を設けることに伴って脆性破壊が生じることを回避することができる。
その一方で、塗布剤に含まれたC、Si、Cu、Ti、Al、Mg等が濃度変化部37に拡散し、該濃度変化部37に合金や炭化物として残留する。これらの元素はSKH51の硬度上昇に寄与しないものであることから、該元素が拡散することによって濃度変化部37の硬度が上昇することはない。
最後に、図6(f)に示すように、予備成形体52に対してバイト50や砥石で仕上げ加工を行い、鍛造用上パンチ26aとする。小径部32の胴部においては、この際に皮膜が切削除去される。上記したように、皮膜の厚みは0.5mm程度であるので、切削除去は比較的容易である。
皮膜が切削除去された結果、濃度変化部37が露呈する。上記したように、濃度変化部37では最上方が最も靱性が高く、従って、小径部32の胴部では、その表面において靱性が最も大きくなる。
このようにして得られた鍛造用上パンチ26aを長手方向に沿って切断し、パンチ成形部34及び小径部32に対応する部位の切断面における表面側から内部に指向して測定したCスケールのロックウェル硬度(HRC)を、通常のSKH51のHRCとともに図7に示す。図7から、この場合、表面から2.5mmの内部まで硬度が上昇していることが明らかである。
また、同様にして拡散層36aが形成されたJIS Z 2201 4号試験片のテストピースにおける強度は、拡散層36aが形成されていない同寸法のテストピースに比して強度が著しく向上する。具体的には、拡散層36aが形成されていないテストピースにおける引っ張り強度が約1800MPaであるのに対し、拡散層36aを有するテストピースにおける引っ張り強度は約2200MPaと、およそ1.2倍となる。
一方、小径部32の胴部に対応する部位の切断面において、表面側から内部に指向して測定したCスケールのロックウェル硬度(HRC)を図7に併せて示す。図7から、この場合、約2mmの深さまで表面から内部に指向してHRCが上昇していること、換言すれば、表層部における靱性が内部に比して大きいことが明らかである。
なお、上記した実施の形態においては、小径部32の胴部における外表面に形成された皮膜を切削除去するようにしているが、皮膜を除去することなく用いるようにしてもよい。
また、塗布剤54bに、Fe基合金の硬度を上昇させる性質を有する元素を含む物質の粉末を添加するようにしてもよい。この場合、該粉末と、C、Si、Cu、Ti、Al、Mgとの配合比は、Fe基合金の種類や熱処理条件に応じて適宜設定すればよい。塗布剤54bを塗布して上記と同様の作業を行うことによって、例えば、モリブデン鋼からMoを除去することもできる。
さらに、本発明は、スパイダ10を製造する鍛造用金型20に特に限定されるものではない。例えば、図示しないトリポート型等速ジョイントの外輪部材、図示しないバーフィールド型等速ジョイントの外輪部材、インナリング等を鍛造成形する鍛造用金型にも適用することができることは勿論である。
熱間金型用鋼であるDH31を用い、底面の直径が80mm、高さが80mmの円柱体を作製した。
その一方で、エポキシ樹脂10%のアセトン溶液に、周期表III族〜VIII族に属する物質の粉末(粒径10〜70μm)を図8に示す割合で添加して、2種の塗布剤A、Bを調製した。ここで、塗布剤Aには、DH31をはじめとする各種鋼材の硬度を向上させる物質が主に含まれ、また、塗布剤Bには、各種鋼材に含まれ且つ硬度上昇に寄与しない物質が主に含まれる。
その後、塗布剤A、Bのそれぞれを、同一円柱体の表面における異なる部位に塗布した。なお、塗布は刷毛塗りによって行い、塗布剤A、Bの厚みは1mmとした。
塗布剤A、Bのそれぞれを自然乾燥させた後、1000〜1180℃で2時間保持することによって焼入処理を行い、次に、500〜600℃で2時間保持して焼戻処理を行った。
次に、前記円柱体を高さ方向に切断して、塗布剤A又は塗布剤Bを塗布した部位それぞれにつき、底面の中心から高さ方向に沿って0.5mm毎にHRCを測定した。なお、塗布剤Bを塗布した部位では、皮膜をすべて切削除去した後に測定を行った。
各々の部位における表面からの距離とHRCとの関係を併せて図9に示す。未処理のDH31におけるHRCが概ね52〜54であるのに対し、塗布剤Aを塗布した場合には硬度が上昇していること、一方、塗布剤Bを塗布した場合には硬度が減少していることが明らかである。後者から、塗布剤Bを塗布することによって靱性を向上させることができることが諒解される。
また、このことから、同一部材に対して熱処理を施す場合であっても、塗布剤の種類を変更することによって、硬度が向上した部位と靱性が向上した部位を個別に作製することができることが分かる。
図1A〜図1Dは、本実施の形態に係る鍛造用金型を用いて製造されるスパイダの製造工程である。 本実施の形態に係る鍛造用金型によって中間成形体を成形している状態を示す概略縦断面説明図である。 図2の鍛造用金型を構成する鍛造用パンチの概略全体斜視図である。 図3の鍛造用パンチの要部拡大縦断面図である。 図3の鍛造加工用パンチにおける小径部の胴部の要部拡大縦断面図である。 図3の鍛造加工用パンチの製造過程を示すフロー説明図である。 得られた鍛造加工用パンチの成形部、小径部の胴部における切断面の表面から内部に指向して測定したHRCを示すグラフである。 塗布剤の組成と割合を示す図表である。 DH31製のテストピースにおける表面からの距離とHRCとの関係を示すグラフである。
符号の説明
10…スパイダ 14…リング体
16a〜16c…トラニオン 20…鍛造用金型
26a、26b…鍛造用パンチ 32…小径部
34…パンチ成形部 36a、36b…拡散層
37…濃度変化部 38、40…ダイ
41…第1部位 42…凹部
44a、44b…ダイ成形部 52…予備成形体
54…塗布剤 58…バーナー火炎

Claims (10)

  1. Fe基合金からなる母材の内部に炭化物が拡散することにより形成されて前記母材に比して高硬度な拡散層が存在する部位を有する鍛造用金型であって、
    前記母材における前記拡散層が存在しない部位に、前記母材の硬度を上昇させる性質を有する元素の量が該母材の表層部から内部になるに従って増加することに伴い硬度が上昇する濃度変化部を有することを特徴とする鍛造用金型。
  2. 請求項1記載の鍛造用金型において、前記濃度変化部の外表面に、前記母材の硬度を上昇させる性質を有する元素が炭化物化した炭化物を含む皮膜が形成されていることを特徴とする鍛造用金型。
  3. 請求項1又は2記載の鍛造用金型において、前記炭化物は、Cr、W、Mo、V、Ni、Mnの炭化物であることを特徴とする鍛造用金型。
  4. 請求項3記載の鍛造用金型において、金属元素をMで表すとき、前記炭化物の組成式は、M6C又はM236であることを特徴とする鍛造用金型。
  5. 請求項1又は2記載の鍛造用金型において、前記炭化物は、Cr、W、Mo、V、Ni、Mnの少なくともいずれか1種と、Feとの固溶体が炭化物化したものであることを特徴とする鍛造用金型。
  6. 請求項5記載の鍛造用金型において、金属元素をMで表すとき、前記炭化物の組成式は、(Fe,M)6C又は(Fe,M)236であることを特徴とする鍛造用金型。
  7. Fe基合金の表面に硬度を上昇させる第1元素を含む物質の粉末を塗布する一方、前記第1元素以外の元素であり且つFe基合金に含まれる第2元素を含む物質の粉末を、前記第1元素が塗布された部位以外の部位に塗布するか、又は、前記第2元素を含む物質の粉末をFe基合金の表面に塗布する一方、前記第2元素が塗布された部位以外の部位に前記第1粉末を含む物質を塗布する工程と、
    前記第1元素又は前記第2元素を含む物質の各粉末が塗布された前記Fe基合金に対して熱処理を施し、前記第1元素を含む物質の粉末が塗布された部位に前記母材に比して高硬度な拡散層を設ける一方、前記第2元素を含む物質の粉末が塗布された部位に前記母材の硬度を上昇させる性質を有する元素の量が該母材の表層部から内部になるに従って増加することに伴い硬度が上昇する濃度変化部を設ける工程と、
    を有し、
    前記拡散層を、前記第1元素を前記Fe基合金の内部に拡散させて該Fe基合金を構成する炭素と反応させることによって炭化物を拡散させて設け、
    前記濃度変化部を、前記Fe基合金を構成する前記第1元素を該Fe基合金の内部から表層部側に拡散させ、該表層部に存在して該Fe基合金を構成する炭素と前記第1元素とを反応させて炭化物を含む皮膜として前記母材から排出することで設けることを特徴とする鍛造用金型の製造方法。
  8. 請求項7記載の製造方法において、前記第1元素として、Cr、W、Mo、V、Ni、Mnを使用することを特徴とする鍛造用金型の製造方法。
  9. 請求項7又は8記載の製造方法において、前記第2元素として、C、Si、Cu、Ti、Al、Mgを使用することを特徴とする鍛造用金型の製造方法。
  10. 請求項7〜9のいずれか1項に記載の製造方法において、前記皮膜を除去する工程を有することを特徴とする鍛造用金型の製造方法。
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