JPH083629A - 浸炭焼入方法 - Google Patents

浸炭焼入方法

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JPH083629A
JPH083629A JP13317494A JP13317494A JPH083629A JP H083629 A JPH083629 A JP H083629A JP 13317494 A JP13317494 A JP 13317494A JP 13317494 A JP13317494 A JP 13317494A JP H083629 A JPH083629 A JP H083629A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】鋼の浸炭処理方法を提供する。 【構成】C:0.05〜1.2 %、Si:0.05〜2%、Mn: 0.3
〜3%、Cr: 0.1〜5%、Ni:0〜3%、Mo:0〜2%
を含む鋼を、1000℃以上共晶点未満の温度域で、浸炭層
表面部の炭素濃度分布の最大値の下限を0.8 %以上、か
つ母材の炭素量を超える量、同じく上限をセメンタイト
が析出する炭素量(Acm線)未満に増大させ、次いで10
℃/sec以上の冷却速度で少なくとも浸炭層を500 ℃以下
まで冷却後Ac1点以上に再加熱して焼入し、表面部に直
径1μm 以下のセメンタイト粒を体積比で10%以上析出
させる鋼の浸炭処理方法。 【効果】短時間の処理で表面に粒径が1μm 以下の微細
セメンタイトを均一分散して析出させることができる。
浸炭後の表面硬化層は靱性も良好である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は歯車、軸受け等表面硬化
が必要な鋼製部品の浸炭処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】歯車、軸受け等の機械構造部品に対する
軽量化、長寿命化の要請が強い。これらの部品では高い
面圧が負荷されることが特徴であることから、表面硬
化、なかでも浸炭処理が施される場合が多い。
【0003】昨今、上記要請に応えるために、より高い
表面硬度を得る目的で、表面を高炭素マルテンサイト化
する従来の浸炭処理法を改良し、セメンタイトを分散さ
せる新しい処理法が提案されている。従来の浸炭処理法
では、鋼のオーステナイト領域で雰囲気から炭素をオー
ステナイト中への固溶限(セメンタイトが析出する炭素
濃度)未満で浸透させるのに対し、新しい浸炭処理法で
は炭素を上記固溶限以上に浸透させる。
【0004】新しい浸炭処理法を適用すると、セメンタ
イトの分散により表面硬度が一層上昇し、耐摩耗性や転
動疲労寿命等の向上が達成できる。例えば、特開昭61−
104065号公報や特開平2−107755号公報などに開示され
ているのが、この思想に基づく発明である。
【0005】しかし、このセメンタイトを析出させる浸
炭法には次の二つの問題がある。
【0006】(1)セメンタイト析出浸炭では、炭素はセ
メンタイトを析出させつつ母材中心部に向かって拡散す
るわけであるが、拡散してきた炭素がセメンタイトの析
出に消費されるため、所定の浸炭深さを得るためには長
時間の処理が必要である。
【0007】(2)セメンタイトは凝集して粗大化しやす
く、加えてオーステナイト温度域での浸炭では粒界に析
出する傾向がある。このような粗大化したり、粒界に析
出したりしたセメンタイトは硬さの上昇には寄与する
が、硬化層の靱性に悪影響を及ぼす。
【0008】浸炭所要時間を短縮する方法の一つとし
て、例えば特開昭57−5861号公報に示されるような高温
で処理するものがある。この発明は 950〜1150℃で炭素
をオーステナイト固溶限以上に浸炭させた後冷却する方
法であり、セメンタイトを析出させることを特徴として
いる。しかし、このような高温域(オーステナイト+セ
メンタイト二相域)でセメンタイトを析出させた場合、
前述のとおり粗大な棒状の炭化物が生成し、粒径が1μ
m 以下のセメンタイトを得るのは困難である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこのような問
題を解決するためになされたものである。本発明の目的
は、セメンタイト析出浸炭における浸炭時間の短縮と微
細セメンタイトのオーステナイト基地への均一分散が可
能な鋼の浸炭処理方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は次の浸炭
処理方法にある。
【0011】重量%で、C:0.05〜1.2 %、Si:0.05〜
2%、Mn: 0.3〜3%、Cr: 0.1〜5%、Ni:0〜3%
およびMo:0〜2%を含む鋼を、1000℃以上、共晶点未
満の温度域で、浸炭層表面部の炭素濃度分布の最大値の
下限を0.8 %以上、かつ母材の炭素量を超える量、同じ
く上限をセメンタイトが析出する炭素量(Acm線)未満
に増大させ、次いで10℃/sec以上の冷却速度で少なくと
も浸炭層を 500℃以下まで冷却した後、Ac1点以上に再
加熱して焼入することにより、表面部に直径1μm 以下
のセメンタイト粒を体積比で10%以上析出させることを
特徴とする鋼の浸炭処理方法。
【0012】上記鋼において、NiおよびMoはいずれも無
添加でもよく、必要に応じて1種または2種を添加す
る。これらを積極的に添加する場合の下限は、Niで 0.5
%、Moで0.1 %とするのが望ましい。
【0013】基礎的事実として、鋼中の炭素の拡散に限
らず拡散速度は高温になるほど速くなる。また、鋼のオ
ーステナイト領域では高温になるほど炭素の固溶限が高
くなり、共晶温度で最大となる。本発明者はこれらの基
礎事実に鑑みさらに検討を進め、次のような新知見を得
た。
【0014】(1)高温での炭素固溶量の増大を利用し
て、高炭素のオーステナイト基地を生成させる。その
後、冷却時の初析セメンタイト析出を阻止しつつ冷却
し、過飽和組織(マルテンサイトまたはベイナイト、も
しくはそれらの混合組織)を生成させる。この組織を再
加熱した後焼入れすることにより、従来にない極めて微
細でかつ均一な分散セメンタイトを生成させることが可
能である。
【0015】セメンタイトの微細分散には初析セメンタ
イト析出の阻止も重要であるが、この他、オーステナイ
ト基地の固溶炭素量を増加させることも重要である。浸
炭処理後のこの固溶炭素量は、少なくとも重量%で0.8
%以上が必要となる。
【0016】(2)高温処理で、かつ浸炭中にセメンタイ
トを析出させないことを利用すると、従来のセメンタイ
ト析出浸炭よりは勿論のこと、通常の浸炭よりもさらに
高速で処理することが出来る。
【0017】(3)微細セメンタイトを表面層内に均一に
分散させることにより、表面硬度と同時に靱性も付与す
ることができる。
【0018】
【作用】まず、本発明方法の対象となる鋼(母材)の化
学組成と製品鋼の組織について前記のように限定した理
由を説明する。%は重量%を意味する。
【0019】(1)C:0.05〜1.2 % Cには母材の強度を向上する作用と母材の靱性を低下さ
せる作用がある。0.05%未満であると、機械部品として
の強度が不足するので下限は0.05%とした。一方、1.2
%を超えると母材の靱性が大幅に低下し、中心偏析の問
題から溶製が難しくなるので、上限を1.2 %とした。望
ましいのは0.10〜0.30%である。
【0020】(2)Si:0.05〜2% Siは鋼の溶製時に脱酸剤として使用されるので、少なく
とも0.05%は含有される。一方、2%を超えると母材の
被削性、加工性が劣化するので上限を2%とした。望ま
しいのは1%以下である。
【0021】(3)Mn: 0.3〜3% Mnには鋼の焼入性を向上させる作用がある。本発明では
再加熱焼入によって浸炭層と母材を硬化させることが必
要不可欠であるため、鋼の焼入性確保も同時に必要とな
る。この確保のためには最低0.3 %のMnが必要である。
一方、3%を超えると母材の被削性、加工性が劣化する
ので上限を3%とした。望ましいのは2%以下である。
【0022】(4)Cr: 0.1〜5% Crには鋼の焼入性を向上させる作用がある。また、再加
熱によってセメンタイトをより微細化する効果もある。
これらの効果を得るには最低0.1 %のCr含有量が必要で
ある。一方、5%を超えてもセメンタイトの微細化効果
は飛躍的に向上しないので上限を5%とした。望ましい
のは4%以下である。
【0023】(5)Ni、Mo:Niの上限は3%、Moの上限は
2% 本発明方法の対象鋼では、上記の各成分のほかにNiおよ
びMoの1種または2種を含有させてもよい。
【0024】これらには、母材と硬化層の基地の靱性向
上、焼入性向上の作用があるので目的に応じて添加す
る。積極的に添加する場合の下限は、Niで0.5 %、Moで
0.1 %とするのが望ましい。しかし、Niが3%、Moが2
%を超えると母材の被削性が劣化するので、上限をそれ
ぞれ3%、2%とした。望ましい上限はNiで2%、Moで
1%である。
【0025】(6)その他の元素:アルミキルド鋼とする
場合、脱酸剤としてのAl、被削性改善のためのS、Pb等
を必要により添加してもよい。その他、不可避的不純物
としてのP、N、O(酸素)などが含まれる。
【0026】(7)製品鋼表面部のセメンタイト粒の粒径
および量 表面の硬化層内に形成されるセメンタイトの粒径が1μ
m 以下の微細なものでないと、靱性の低下が著しくな
る。例えば、衝撃が負荷された場合、クラックが入った
りする。そして、このセメンタイトの量は、表面硬度の
上昇のほか、耐摩耗性、耐熱性等の向上等セメンタイト
析出浸炭鋼の特徴を左右する因子である。
【0027】体積率で10%以上となるように析出させ、
均一分散させなければ、上記特性を発揮させることがで
きないのでセメンタイト量の下限を体積率で10%とし
た。望ましい上限は同じく30%である。
【0028】次に、本発明の浸炭処理方法について詳述
する。
【0029】本発明方法は、前記組成の鋼を 1000℃以上、共晶点未満の温度域で、浸炭層表面部の
炭素濃度分布の最大値の下限を0.8 %以上、かつ母材の
炭素量を超える量、同じく上限をセメンタイトが析出す
る炭素量(Acm線)未満に増大させる。
【0030】次いで10℃/sec以上の冷却速度で少なく
とも浸炭層を500 ℃以下まで冷却する。
【0031】次いでAc1点以上に再加熱して焼入す
る。
【0032】という工程で処理し、表面部に直径1μm
以下のセメンタイト粒を体積比で10%以上析出させるも
のである。
【0033】(1)浸炭処理温度 本発明方法の目的の一つは浸炭処理時間の短縮を達成す
ることにある。このためには処理温度の上昇が有効であ
る。浸炭処理温度の下限は、従来(925〜950 ℃) の場合
と比較して50%以上の時間短縮が可能となる1000℃とし
た。
【0034】一方、処理温度は鋼の共晶点以上であって
はならない。この理由は次のとおりである。
【0035】一般に浸炭処理は浸炭期と拡散期に分けら
れ、浸炭期では表面部のC濃度を上昇させ、拡散期でそ
れを内部に拡散させ所定の浸炭深さを得る。
【0036】浸炭期では表面炭素濃度を高める目的か
ら、炭素濃度がオーステナイト基地の炭素固溶限に対し
過剰になる場合がある。
【0037】この場合、通常の処理温度であるとセメン
タイト析出が起こり、これは拡散によって消失させるこ
とが可能である。しかし、処理温度が高くなると炭素濃
度過剰部は液化し、母材に形状変化が発生する。このよ
うな液化は鋼の共晶点以上の温度域で発生する。
【0038】この共晶点はFe−Fe3C系では約1150℃であ
り、合金元素の添加により若干の変化がある。浸炭時間
短縮の観点から、浸炭処理は共晶点直下の温度で行うの
が理想であるが、量産時のばらつきを考慮すると、望ま
しい上限温度は共晶点−30℃程度である。
【0039】高温浸炭の利点は浸炭時間の短縮のほか、
表面部の炭素量を高くできることである。高温になるほ
どオーステナイト基地へのCの固溶度は上昇するので、
炭素濃度がより高いオーステナイトを表面部に得ること
ができ、再加熱後の焼入により多量のセメンタイトを生
成させることが可能となる。
【0040】(2)表面炭素濃度 表面の炭素には、浸炭後に実施する再加熱焼入で得られ
る表面硬度を上昇させる作用がある。加えて、再加熱焼
入後のセメンタイト析出を多量に細かく、均一分散する
作用もある。
【0041】浸炭鋼として十分な表面硬度と微細セメン
タイトの均一分散を得るために、浸炭後の表面のオース
テナイト基地の固溶炭素濃度は最低限0.8 %を確保する
ことが必要である。
【0042】本発明方法の対象母材では炭素含有量の上
限が1.2 %である。母材炭素含有量が0.8 %以上の場合
でも、本発明方法によれば表面硬化が十分可能である。
母材炭素量が0.8 %を超える場合は、少なくともその母
材炭素量を超えた表面炭素濃度に調整する。
【0043】一方、浸炭処理後では、表面固溶炭素濃度
はオーステナイトの固溶限以下としなければならない。
【0044】すなわち、固溶炭素濃度がオーステナイト
の固溶限を超えて過剰になると、セメンタイトが析出す
る。浸炭時にオーステナイトから析出するセメンタイト
は粗大である。比較的その微細化が可能な低温域浸炭で
も2〜3μm 程度の粗いセメンタイト粒が生成し、なお
かつオーステナイト粒界に生成する場合もあり、硬化層
の靱性を劣化させる。
【0045】本発明方法の特徴の一つは、浸炭時に生成
しやすい粗大セメンタイトを皆無にすることである。こ
のために、拡散期に炭化物を溶かすことにより、表面部
の固溶炭素濃度をオーステナイトの固溶限以下とする必
要がある。
【0046】固溶炭素濃度を上記のように制御すること
の作用効果としては、旧オーステナイト粒の微細化作用
もある。0.8 %以上の炭素を固溶させ、再加熱焼入によ
り1μm 以下の微細セメンタイトを得ることができる
が、同時にその時の表面部の旧オーステナイト粒は極め
て微細化する。鋼の合金元素、炭素量、再加熱の温度、
保持時間にもよるが10μm 以下の結晶粒にすることがで
きる。旧オーステナイト粒が微細化するとマルテンサイ
トも微細化され、破壊単位が細かくなって靱性が向上す
る。
【0047】浸炭処理に用いる浸炭炉として、現在工業
的にはガス浸炭炉が普及しているがこの炉の問題点は雰
囲気の酸素ポテンシャルが高いことである。酸素ポテン
シャルが高いと合金元素が優先酸化され、鋼の特に表面
での浸炭性が変化する。本発明方法では、浸炭処理時の
セメンタイトの析出を阻止するために雰囲気制御が必要
であることから、ガス浸炭炉における処理中の合金元素
の優先酸化やこれによる鋼表面の浸炭性の変化は、望ま
しい浸炭の制御を困難にする。
【0048】浸炭炉としては、雰囲気の酸素ポテンシャ
ルを極めて低くコントロールすることができるタイプの
炉、例えばプラズマ浸炭炉などが適する。
【0049】(3)冷却 浸炭処理時の雰囲気制御か、またはこの制御と拡散期で
のCの母材中心部への溶解により、浸炭終了時点では粗
大セメンタイトは存在しない。この状態を維持するため
に、冷却過程においてもオーステナイト域での初析セメ
ンタイトの析出を阻止しなければならない。冷却過程で
析出するセメンタイトもオーステナイト域での析出であ
れば粗大となり、浸炭中に析出するセメンタイトと同様
に硬化層の靱性を劣化させる。
【0050】よって、冷却時の初析セメンタイト生成阻
止のため、少なくとも浸炭層を冷却速度10℃/sec以上で
冷却する必要がある。望ましい上限は100 ℃/secであ
る。
【0051】本発明の目標の一つは微細セメンタイトの
均一析出である。微細セメンタイトは再加熱焼入れによ
り得ることができるが、そのためには、上記冷却時にお
いて過飽和組織を形成させておく必要がある。過飽和組
織とは具体的にはマルテンサイトまたはベイナイト、も
しくはそれらの混合組織である。これらの組織の形成の
ため、少なくとも浸炭層が500 ℃以下になるまで上記速
度条件で冷却しなければならないのである。
【0052】上記冷却条件は少なくとも浸炭層について
満たされればよく、製品鋼全体としては特に制約はな
い。ただし、熱処理歪みを考慮に入れて、母材部の冷却
速度はなるべく遅くする方が望ましい。
【0053】(4)再加熱 高温浸炭を行っているため、冷却後の組織は浸炭層、母
材ともに元の母材よりも粗粒化しており、靱性が低下し
ている。従って、このままの状態では機械部品として使
用することができない。
【0054】再加熱は粗粒化した浸炭層と母材の組織を
細粒化する作用がある。また、過飽和状態の組織から微
細なセメンタイトを析出させる作用もある。次行程の焼
入れにより基地を十分に硬化するために再加熱温度はA
c1点以上にする必要がある。
【0055】望ましい上限は900 ℃である。
【0056】加熱時間は特に限定しないが、前組織のフ
ェライト(マルテンサイト、ベイナイト)が残らない程
度に行うべきである。前組織が残ると硬度ばらつきの原
因となり、疲労寿命などに悪影響を及ぼす。
【0057】(5)焼入 浸炭層および母材の硬度を上昇させるために焼入れを施
す。焼入れ後の組織は十分な強度と靱性を得るため、硬
化層、母材ともにマルテンサイトを主体とし、硬化層中
に直径1μm 以下の微細なセメンタイトが均一に分散析
出し、この体積率を10%以上とした前記組織とする。焼
入れ方法については特に限定されない。
【0058】
【実施例】
(試験1)表1に供試鋼の化学組成を示す。A−1〜A
−3鋼では熱間鍛造素材を焼準し、A−1鋼、A−3鋼
については焼準ままで、A−2鋼についてはさらに球状
化焼鈍し、機械加工により直径φ20mm×長さ30mmの試験
片を製作した。これらの試験片に表2に示す条件で浸炭
−再加熱焼入を施し、組織観察、硬度測定、C濃度分析
およびセメンタイト量の測定を行った。結果を表2に併
せて示す。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】ただし、従来例のA−3鋼の浸炭処理で
は、まず120 分の浸炭で表面のC濃度を0.8 %程度に増
加させ、次にAr3点以下に冷却し、その後再び加熱して
120 分の浸炭を行った。
【0062】浸炭炉はいずれもプラズマ浸炭炉を用い、
雰囲気ガスにはプロパンと水素を用いた。
【0063】硬化層の評価には、硬化深さを用い、硬度
分布においてHv550を示す深さを基準とした。
【0064】表2から明らかなように、本発明例におい
ては40分の浸炭時間で従来の2時間浸炭よりも深い硬化
深さを得ることができる。析出するセメンタイトは、従
来例ではオーステナイト域での浸炭時に生成しているた
め、オーステナイト粒界に存在するもの、または粗大化
したものが多く観察されたが、本発明例では高温域浸炭
で完全固溶した高濃度の炭素を再加熱焼入により急激に
析出させたものであるため1μm 以下の微細なものとな
る。これらの組織例を図1および図2に示す。
【0065】図1は本発明例の場合の表面ミクロ組織の
一例を示す図である。これは、表2の鋼A-1のセメンタ
イト粒径が0.9 μm 、表面炭素濃度が1.7 %、セメンタ
イトの量が12vol.%のものである。図示するように、微
細セメンタイトが基地に均一に分散していることがわか
る。図2は従来例の場合の表面ミクロ組織の一例を示す
図である。これは、表2の従来例、鋼A-3のものであ
る。基地に均一に分散した微細セメンタイトは存在しな
いことがわかる。
【0066】(試験2)表1に示すA−4〜A−12鋼の
熱間鍛造素材を焼準し、A−5鋼、A−6鋼については
さらに球状化焼鈍して、その他については焼準ままで、
機械加工により直径φ20mm×長さ30mmの試験片を製作し
た。これらの試験片に浸炭−再加熱焼入を施し、試験1
と同じ調査を行った。表3に結果を示す。
【0067】
【表3】
【0068】このときの処理条件は、次のとおりとし
た。
【0069】浸炭処理−冷却条件: 浸炭炉:プラズマ浸炭炉 雰囲気:プロパン、水素 浸炭温度:1130℃、 保持時間:40分(浸炭:20分、拡散:20分) 冷却速度:50℃/sec 、50℃まで油冷 再加熱焼入処理条件: 加熱温度:950 ℃、保持時間:30分、その後50℃まで油
冷 表3に示すように、本発明で定める条件を全て満たして
処理された場合には、粒径1μm 以下の微細セメンタイ
トが分散した良好な表面硬化層を得ることができる。
【0070】
【発明の効果】本発明の浸炭処理方法によれば、短時間
の処理で表面に粒径が1μm 以下の微細セメンタイトを
均一分散状態で析出させることができ、浸炭後の表面硬
化層は靱性も良好である。本発明方法は、歯車、軸受な
どの機械構造用鋼製部品の表面硬化方法として好適であ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法で得られる表面ミクロ組織の例を示
す図である。
【図2】従来方法で得られる表面ミクロ組織の例を示す
図である。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%で、C:0.05〜1.2 %、Si:0.05〜
    2%、Mn: 0.3〜3%、Cr: 0.1〜5%、Ni:0〜3%
    およびMo:0〜2%を含む鋼を、1000℃以上、共晶点未
    満の温度域で、浸炭層表面部の炭素濃度分布の最大値の
    下限を0.8 %以上、かつ母材の炭素量を超える量、同じ
    く上限をセメンタイトが析出する炭素量(Acm線)未満
    に増大させ、次いで10℃/sec以上の冷却速度で少なくと
    も浸炭層を500 ℃以下まで冷却した後、Ac1点以上に再
    加熱して焼入することにより、表面部に直径1μm 以下
    のセメンタイト粒を体積比で10%以上析出させることを
    特徴とする鋼の浸炭処理方法。
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