JP2007021533A - 成形用アルミニウム合金板の製造方法および成形用アルミニウム合金の連続鋳造装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 双ロール式連続鋳造方法によって、板厚が30mm以下のアルミニウム合金板状鋳塊を得、この鋳塊を冷間圧延してアルミニウム合金板を製造する方法において、双ロールを連続鋳造ラインに対して2段以上配置し、注湯されたアルミニウム合金溶湯を、前段の双ロール10により、平均冷却速度を50℃/s以上として冷却して、板状鋳塊として凝固せしめ、次いで、中心部を含めて凝固が完了した状態にある板状鋳塊に対し、後段の双ロール11によって、鋳造完了後の板状鋳塊の板厚に対して合計で2% 以上の圧下率で圧延し、その後冷間圧延されたアルミニウム合金板の空隙率を抑制する。
【選択図】 図1
Description
先ず図1、2を用いて、本発明における、成形用アルミニウム合金板の連続鋳造装置を説明する。図1は縦型(垂直型)双ロール連続鋳造装置の実施態様を示し、図2は横型(水平型)双ロール連続鋳造装置の実施態様を示す。
このような装置構成を前提に、以下に、本発明製造方法の態様を、図1を用いながら説明する。
耐火物製のタンディッシュ13から堰14を介して、前段双ロール10へ注湯されたアルミニウム合金溶湯は、互いに対向する方向に回転する双ロール間で冷却され、凝固が促進されて、内部は液相を有するシェル(凝固殻)を形成した板状鋳塊1とされる。
この前段双ロール10での冷却の際、本発明では、鋳造する板厚が30mm以下のの比較的薄板の範囲であっても、前段の双ロール10による鋳造の冷却速度は50℃/s以上のできるだけ大きくすることが必要である。冷却速度は50℃/s未満では、アルミニウム合金の種類によらず、平均結晶粒が50μm を超えて粗大化する。このため、成形性が著しく低下する。また、板の均質性も低下する。特に、Al-Mg 系アルミニウム合金、それも8%を超える高MgのAl-Mg 系では、金属間化合物全般が粗大化するか、多量に晶出するため、強度伸びバランスが低下し、成形性が著しく低下する。
この冷却速度を確保するため、上記した通り、装置的には、前段の双ロール10として、熱伝達率の大きな銅製の水冷ロール鋳型などを用い、この冷却速度を確保する。
前段の双ロール10による鋳造の冷却速度が例え50℃/s以上であっても、前段の双ロール10を出る板状鋳塊の板厚が比較的厚い、あるいは鋳造速度が比較的速い、などの場合には、アルミニウム合金の種類によらず、板状鋳塊の凝固速度が遅くなり、シェル形成が遅れる可能性がある。このような場合には、鋳造速度を遅くすることなく、かつ後段の双ロール11による上記した圧下荷重を板状鋳塊に付加できなくなるのを防止するために、双ロール間に設置した前記強制冷却手段12を用いて、前段の双ロール10の冷却能を補う。これによって、鋳造速度のより高速化も図れる。図1 における板状鋳塊2 は、この強制冷却手段12によって、冷却、凝固が促進される。
後段の双ロール11は、前記した通り、圧下と更なる冷却を担い、前段の双ロール10によってシェルが生成し、上記内部(中心部)を含めて凝固が完了した状態の板状鋳塊3 に対して圧下を付加する。これによって、板状鋳塊の冷却を促進して、空隙の原因となる水素などのガスを鋳塊内に分散固溶させるとともに、既に内部に発生している空隙を潰す役割を担う。
双ロールにより連続鋳造する薄板の板厚は30mm以下、好ましくは1 〜13mmの範囲とする。そして、更に好ましくは、1mm 以上、5mm 未満の薄い板厚とする。板厚1mm 未満の連続鋳造は、双ロール間への注湯や、双ロール間のロールギャップ制御などの鋳造限界から、困難である。他方、板厚が30mmを超えて厚くなった場合、鋳造の冷却速度が著しく小さくなり、アルミニウム合金の種類によらず、上記圧下荷重をかけることが困難となる。
アルミニウム合金溶湯を双ロールに注湯する際の注湯温度は、鋳造速度を高速化させるためにも、アルミニウム合金の液相線温度+100 ℃以下とすることが好ましい。注湯温度が液相線温度+100 ℃を超えた場合には、鋳造速度を高速化させると、前段の双ロール10による鋳造の冷却速度が例え50℃/s以上であっても、アルミニウム合金の種類によらず、後段の双ロール11まででブレイクアウトし、板状鋳塊ができない可能性がある。
前段の双ロール10や後段の双ロール11の周速は鋳造速度となる。鋳造速度を高速化させるためにも、両者の双ロールの周速は1m /min 以上、好ましくは30m /min以上とする。双ロールの周速が遅くなると、鋳造速度自体が遅くなる。また、溶湯と鋳型 (双ロール) との接触時間が長くなり、鋳造薄板の表面品質が低下する可能性がある。更に、後段の双ロール11での凝固が進み過ぎて、上記圧下荷重をかけても空隙を抑制出来ない可能性がある。
本発明において、上記前記板状鋳塊または薄板を400 ℃以上の温度に加熱する際、あるいは上記200 ℃を超える高温から板状鋳塊または薄板を冷却する際、などは、特にAl-Mg 系アルミニウム合金、それも8%を超える高MgのAl-Mg 系では、成形性にとって有害なAl-Mg 系金属間化合物が発生する可能性が十分にある熱履歴工程を意味する。
双ロール式連続鋳造方法による板状鋳塊の鋳造直後から例えば室温まで冷却する際、板状鋳塊が200 ℃までの温度範囲において、冷却速度が小さいと、Al-Mg 系金属間化合物が発生する可能性が十分にある。このため、このような冷却工程を選択的に行なう際には、Al-Mg 系金属間化合物発生を抑制するために、板状鋳塊の鋳造直後から200 ℃までの温度範囲を平均冷却速度が5 ℃/s以上にて冷却することが好ましい。
双ロール式連続鋳造方法による板状鋳塊を、鋳塊均質化のために、冷間圧延前に400 ℃以上液相線温度以下で、選択的に、あるいは必要に応じて、均質化熱処理(均熱処理、荒焼鈍、荒鈍とも言う)しても良い。均質化熱処理するに際しては、鋳塊の昇温時と冷却時の両方の途中過程で、昇温速度と冷却速度が小さいと、Al-Mg 系金属間化合物が発生する可能性が十分にある。特にAl-Mg 系金属間化合物が発生する可能性が高い温度域は、昇温時は鋳塊中心部の温度が200 ℃から400 ℃までの範囲、冷却時は均質化熱処理温度から100 ℃までの範囲である。
本発明では、鋳造後に、オンラインでもオフラインでも熱間圧延をせずに、成形用の製品板の板厚0.5 〜3mm に圧延して、鋳造組織を加工組織化する。この加工組織化の程度は冷間圧延の圧下率にもより、鋳造組織が残留する場合もあるが、成形性や機械的な特性を阻害しない範囲で許容される。
冷間圧延後に板を400 ℃以上液相線温度以下で、選択的に最終焼鈍(溶体化処理とも言う)するに際しては、特にAl-Mg 系アルミニウム合金、それも8%を超える高MgのAl-Mg 系では、板の昇温時と冷却時の両方の途中過程で、昇温速度と冷却速度が小さいと、Al-Mg 系金属間化合物が発生する可能性が十分にある。特に、Al-Mg 系金属間化合物が発生する可能性が高い温度域は、最終焼鈍温度までの昇温時は板中心部の温度が200 ℃から400 ℃までの範囲、冷却時は最終焼鈍温度から100 ℃までの範囲である。
本発明では、双ロール式連続鋳造方法によって製造されたアルミニウム合金板の板組織における空隙率を、板の伸びなどの成形特性に影響の無い範囲まで抑制する。この板の成形特性に影響の無い範囲までとは、具体的には、50倍の光学顕微鏡の板表面観察による、組織中に占める空隙の平均面積率として0.5%以下とする。
上記空隙の面積率測定は、Al合金板から採取した試料 (試験片) を機械研磨し、板中央部の断面組織を50倍の光学顕微鏡を用いて観察して行なう。そして、顕微鏡視野内を画像処理して、空隙欠陥と通常の組織とを識別した上で、視野内の識別できる空隙の合計面積を求め、視野面積に占める空隙の合計面積の割合(%) を、空隙率として求める。
本発明において、双ロール式連続鋳造方法によって製造されたアルミニウム合金板断面の平均結晶粒径は100 μm 以下に微細化させることが、成形性を満たす条件としても、空隙を少なくするためにも好ましい。結晶粒径をこの範囲に細かく乃至小さくすることによって、成形性が確保乃至向上される。結晶粒径が100 μm を越えて粗大化した場合、成形性が著しく低下し、成形時の割れや肌荒れなどの不良が生じ易くなる。一方、平均結晶粒径があまり細か過ぎても、Al-Mg 系(5000 系)Al 合金板では、特有の、SS (ストレッチャーストレイン) マークがプレス成形時に発生する。したがって、Al-Mg 系Al合金板では、平均結晶粒径は20μm 以上とすることが好ましい。
次ぎに、本発明において、アルミニウム合金の種類は問わず、用途に応じて、周知のアルミニウム合金種が適宜選択される。また、各アルミニウム合金種の化学成分組成は、そのAA乃至JIS 規格に準じて決定される。
MgはAl合金板の強度、延性、そして強度延性バランスを高める重要合金元素である。Mgが8%以下の含有量では、強度、延性が不足して、高MgのAl-Mg 系Al合金の特徴の強度延性バランスが出ず、成形性が不足する可能性がある。一方、Mgを14% を越えて含有すると、連続鋳造の際の冷却速度を大きくしたり、焼鈍後の冷却速度を大きくするなどの、製造方法や条件の制御を行なっても、Al-Mg 系化合物の晶析出が多くなる。この結果、やはり成形性が著しく低下する可能性がある。また、加工硬化量が大きくなり、冷間圧延性も低下させる。したがって、好ましくはMgは8%を超え14% 以下の範囲とする。
FeとSiは、溶湯の溶解原料から必然的に含まれ、できるだけ少ない量に規制すべき不純物である。FeとSiは、Al-Mg-(Fe 、Si) などから成るAl-Mg 系化合物や、Al-Fe 、Al-Si 系などのAl-Mg 系以外の化合物となって多く生成する。Feの含有量が1.0%、Siの含有量が0.5%、を各々超えた場合には、これらの化合物が過大となって、破壊靱性や成形性を大きく阻害する可能性が高い。この結果、成形性が著しく低下する。したがって、Feは1.0%以下、好ましくは0.5%以下、Siは0.5%以下、好ましくは0.3%以下に各々規制することが好ましい。
Tiは、B とともに、鋳造板 (鋳塊) 組織の微細化効果があり、これによって、鋳造板の空隙発生を抑制する効果がある。したがって、鋳造板の空隙発生を抑制するために、0.005%以上含有させる。ただ、0.1%を越えて含有すると、却って、成形性を阻害する可能性がある。このため、Tiの含有量は0.005 〜0.1%の範囲とすることが好ましい。一方B は、Tiとともに、B:0.05% 以下まで含有させて良い。
この他、Mn、Cu、Cr、Zr、Zn、V などは、溶湯の溶解原料から含まれやすい不純物元素であり、含有量は少ない方が良い。しかし、Mn、Cr、Zr、V には圧延板組織の微細化効果もある。また、Cu、Znには、強度を向上させる効果もある。このため、これら効果を狙って、敢えて減らさずに、含有させる場合もあり、本発明板の特性である成形性を阻害しない範囲で、これら元素を一種または二種以上含有させることは許容される。これらの許容量は、各々質量% で、Mn:0.3% 以下、Cr:0.3% 以下、Zr:0.3% 以下、V:0.3%以下、Cu:1.0% 以下、Zn:1.0% 以下、である。
均質化熱処理時の200 〜400 ℃の平均昇温速度:10 ℃/s
均質化熱処理時の200 ℃までの平均冷却速度:10 ℃/s
最終焼鈍時の200 〜400 ℃の平均昇温速度: 5 〜20℃/s
最終焼鈍時の200 ℃までの平均冷却速度: 5 〜20℃/s
このように製造された各例の供試材アルミニウム合金板から試験片を採取し、前記した各測定方法で、板組織について、空隙の平均面積率を測定した。この結果を表3に示す。なお、各発明例試験片の平均結晶粒径を前記した測定方法で測定した結果、10μm 以下であった。
また、同じく採取した試験片 (各5 個) から、機械的性質と、強度延性バランス [引張強度(TS:MPa)×全伸び(EL:%)](MPa%) の平均値を求めた。引張試験はJIS Z 2201にしたがって行うとともに、試験片形状はJIS 5 号試験片で行い、試験片長手方向が圧延方向と一致するように作製した。また、クロスヘッド速度は5mm/分で、試験片が破断するまで一定の速度で行った。
採取した試験片 (一辺が200mm の正方形のブランク)5枚を、中央部に一辺が60mmで、高さが30mmの角筒状の張出部と、この張出部の四周囲に平坦なフランジ部を有するハット型のパネルに、メカプレスにより張出成形した。しわ押さえ力は49kN、潤滑油は一般防錆油、成形速度は20mm/ 分の同じ条件で行った。
曲げ加工性は、前記採取試験片を、パネルとして、プレス成形後にフラットヘム加工されることを模擬して、常温にて、試験片に10% のストレッチを行った後、曲げ試験を行い評価した。試験片条件は、前記採取試験片を、JIS Z 2204に規定される3 号試験片 (幅30mm×長さ200mm)を用い、試験片長手方向が圧延方向と一致するように作製した。曲げ試験は、JIS Z 2248に規定されるVブロック法により、フラットヘム加工を模擬して、先端半径0.3mm 、曲げ角度60度の押金具で60度に曲げた後、更に180 度に曲げた。
10:前段双ロール、11:後段双ロール、12:強制冷却手段、
13:タンディッシュ、14:堰、15:ピンチロール、16:ガイドロール、17:コイラー、18:注湯ノズル
Claims (8)
- 双ロール式連続鋳造方法によって、板厚が30mm以下のアルミニウム合金板状鋳塊を得、この鋳塊を冷間圧延してアルミニウム合金板を製造する方法において、双ロールを連続鋳造ラインに対して2段以上配置し、注湯されたアルミニウム合金溶湯を、前段の双ロールにより、平均冷却速度を50℃/s以上として冷却して、板状鋳塊として凝固せしめ、次いで、中心部を含めて凝固が完了した状態にある板状鋳塊に対し、後段の双ロールによって、鋳造完了後の板状鋳塊の板厚に対して合計で2% 以上の圧下率で圧延し、その後冷間圧延されたアルミニウム合金板の空隙率を、50倍の光学顕微鏡の板断面観察による組織中に占める空隙の平均面積率として、0.5%以下とすることを特徴とする成形用アルミニウム合金板の製造方法。
- 前記前段の双ロールから出た板状鋳塊を強制的に冷却する請求項1に記載の成形用アルミニウム合金板の製造方法。
- 前記アルミニウム合金板状鋳塊が、アルミニウム合金溶湯がAl-Mg 系アルミニウム合金である請求項1または2に記載の成形用アルミニウム合金板の製造方法。
- 前記Al-Mg 系アルミニウム合金が、質量% で、Mgを8%を超えて14% 以下含むものである請求項3に記載の成形用アルミニウム合金板の製造方法。
- 請求項1乃至4のいずれかの製造方法に用いる、アルミニウム合金の双ロール式連続鋳造装置であって、連続鋳造ラインに対して双ロールを2段以上直列に配置し、前段の双ロールにおける、注湯手段から注湯されたアルミニウム合金溶湯の冷却能を平均冷却速度で50℃/s以上とするとともに、後段の双ロールにおける、前段の双ロールから供給された板状鋳塊に対し、鋳造完了後の板状鋳塊の板厚に対して合計で2% 以上の圧下率で圧延する能力を付与したことを特徴とする成形用アルミニウム合金の連続鋳造装置。
- 前記前段と後段の双ロール間に、前段の双ロールを出た板状鋳塊の強制冷却手段を設けた、請求項5に記載の成形用アルミニウム合金の連続鋳造装置。
- 前記アルミニウム合金溶湯がAl-Mg 系アルミニウム合金である請求項5または6に記載の成形用アルミニウム合金の連続鋳造装置。
- 前記Al-Mg 系アルミニウム合金が、質量% で、Mgを8%を超えて14% 以下含むものである請求項7に記載の成形用アルミニウム合金の連続鋳造装置。
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