JP2007016020A - 経皮吸収製剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】セレギリン及び塩酸セレギリン以外の薬物を経皮吸収させるための経皮吸収製剤であって、貼付時の発汗による汗成分の存在下においても粘着剤層の凝集力の低下を生じることはなく剥離除去の際の凝集破壊による糊残りの生じない安定な経皮吸収製剤を提供すること。
【解決手段】セレギリン及び塩酸セレギリンを除く薬物、金属塩化物並びに粘着剤を含有し、架橋処理が施されてなる粘着剤層が、支持体の少なくとも片面に形成されてなる経皮吸収製剤。
【選択図】なし

Description

本発明はセレギリン及び塩酸セレギリンを除く薬物の経皮吸収製剤に関する。具体的には、皮膚面に貼付して、経皮吸収性薬物を皮膚から生体内へ連続的に投与するための経皮吸収製剤に関する。
経皮吸収製剤はその薬物の消化管への吸収性及び肝臓での初回通過効果の回避、薬物を飲むことが困難な人に対しての優位性、投与忘れの防止効果など利点を多く含む、優れた投与形態であることが近年クローズアップされ、様々な種類の経皮吸収製剤が開発されている。
また、最近では、経皮吸収製剤に病気の種類(心臓病等)が印刷されており、本人が意識不明になった場合においても、患者への治療行為に誤った投薬処置(忌避薬物の投与)がされにくいなど新しい機能を備えたものも存在し、今後のさらなる開発が期待されている製剤として期待されている。
しかし、どんな薬物でも経皮吸収用として利用できるかと問われた場合、現実には不向きな薬物が大半である。薬物には、塩酸塩等の酸性塩としてのものが多数存在するが、この酸性塩のままで経皮吸収製剤とした場合には、塩由来の親水性の特性が強く影響し、疎水性環境である角質層を透過することが難しく、必要な血中濃度を得られないケースが多い。このことに関しては、製剤内で酸性塩薬物を塩基性化合物を利用してフリー化(中和)する技術が盛んに検討されている。利用される塩基性化合物としては、有機アミンが一般的であるが、アミノ基を有する高分子化合物も利用されている。有機アミンは中和することに関しては有効ではあるが、このもの自身が比較的不安定であり、精製も困難であることから、純度が低く、着色やそれによる薬物の分解が起こり易いのが問題である。また、一方アミノ基を有する高分子化合物の場合では、薬物との中和に必要な量が、低分子化合物の有機アミンよりも多くなり、多量に添加しなければ中和できない。加えて、その高分子化合物が良好な粘着特性を有するものは無く、経皮吸収製剤として、薬物の透過性の次に大切な因子である粘着特性が低下してしまう場合がある。軽微な疾患に投与される経皮吸収製剤の粘着特性が低く、それによる剥がれ落ちが生じた場合には、症状がすぐさま悪化することは想像できないが、重篤な疾患に同様のことが起こった際には、重大な問題になることは想像できる。
疾患に対する薬物の投与であるが、投与期間については、短期間であることが望ましいが、現実的には、長期投与されることが多く、その長期投与期間中に経皮吸収製剤の適応を受けた場合は、ほぼ毎日の様に投与が繰り返されることになる。近年では、3日製剤や1週間製剤も開発されつつあるが、貼付される部位については、特に剥がれの問題から、体の稼動部を避けることが望ましく、貼付される部位にも制限があることが理解できる。経皮吸収製剤の種類については、リザーバータイプ、マトリックスタイプなど種々の形態があることが知られている。しかし、これらも、制限された部位への貼付といったことからは回避できないものであり、これら経皮吸収製剤については、貼付することと特に剥がすことに関する感覚が体に与える影響が大きいものである。
このようなことから、繰り返し貼付を想定し、経皮吸収製剤にはできるだけ皮膚に優しく、皮膚面に対しては角質損傷等による刺激の抑制すなわち低刺激性が要求される。これについては、粘着剤自体の組成を変更して皮膚接着力を適度に低下させたり、粘着剤層に液状成分を含有させてゲルとし、粘着剤層にソフト感を与える方法等が挙げられる。このゲルの作製については、これまで粘着剤に架橋剤を添加し凝集力を向上させ、その粘着剤層に相溶する液状成分を保持させる方法が知られている。
また、このゲルの作製については、特に塩基性薬物を用いた場合には多官能性イソシアネート等の化合物では、塩基性薬物が架橋剤自身と反応してしまい、架橋剤としての役割が充分に発揮できず、この場合には金属キレート等の架橋剤が優位に働き、その効果を発揮することが知られている。
しかし、近年、この塩基性薬物と金属キレートの組み合わせよりなるゲルを利用した経皮吸収製剤について、ヒトに貼付した場合に、汗腺より発汗される汗の成分である微量成分の乳酸により、粘着剤層中の架橋部位が破壊され、剥離時に凝集破壊を引き起こすことが知られている。
このことについては、同時に多価アルコールを添加し、金属キレート本来の効果をより発揮させる方法(特許文献1)、さらに、皮膚接着層には、乳酸の影響を受けない架橋剤を利用したプラセボ層を設計し、その上層に塩基性薬物を含み金属キレートで架橋された粘着剤層を積層させることにより回避する方法が知られている(特許文献2)。
しかし、上記(特許文献1)については、多価アルコールが親水性化合物であるため、疎水性環境にある粘着剤層にはある程度(約5%)しか均一には溶解せず、それ以上となると粘着剤層からブルーミングが起こることから、塩基性薬物の含有量が多い場合には、必要な量の多価アルコールを含有することが出来ないことが分かった。
また、上記(特許文献2)については、貼付面からの乳酸の浸入・拡散による剥離時の凝集破壊が抑制できるが、実際は、貼付時においては、経皮吸収製剤の側面も皮膚に触れることになることより、側面から乳酸が浸漬し、エッジ部において顕著に凝集破壊が起こってしまうことは回避出来ないことが分かった。
特開2003−62058号公報 特開2004−10525号公報
上記事情に鑑み、本発明の目的は、セレギリン及び塩酸セレギリンを除く薬物を経皮吸収させるための経皮吸収製剤であって、貼付時の発汗による汗成分の存在下においても粘着剤層の凝集力の低下を生じることがなく剥離除去の際の凝集破壊による糊残りの生じない安定な経皮吸収製剤を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、薬物を含有する粘着剤層に金属塩化物を添加することにより、汗中の乳酸が粘着剤層に取り込まれた場合の粘着剤層の凝集力低下を抑制できることを見出して本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)セレギリン及び塩酸セレギリンを除く薬物、金属塩化物並びに粘着剤を含有し、架橋処理が施されてなる粘着剤層が、支持体の少なくとも片面に形成されてなる経皮吸収製剤。
(2)架橋処理が金属キレート化合物によって施されてなる、(1)記載の経皮吸収製剤。
(3)薬物が塩基性薬物である、(1)または(2)記載の経皮吸収製剤。
(4)粘着剤がアクリル系重合体を含むアクリル系粘着剤である(1)〜(3)のいずれか1つに記載の経皮吸収製剤。
(5)金属塩化物が、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化アルミニウム、塩化第一スズ、および塩化第二鉄から選ばれる少なくとも1つの無機金属塩化物である、(1)〜(4)のいずれか1つに記載の経皮吸収製剤。
(6)金属塩化物が塩化ナトリウムである、(1)〜(4)のいずれか1つに記載の経皮吸収製剤。
(7)金属塩化物が薬物の塩酸塩を塩基性化合物で中和して生じさせた塩である、(1)〜(6)のいずれか1つに記載の経皮吸収製剤。
(8)粘着剤層が、液状可塑剤をさらに含有する(1)〜(7)のいずれか1つに記載の経皮吸収製剤。
(9)液状可塑剤が、炭素数12〜16の高級脂肪酸と炭素数1〜4の低級1価アルコールからなる脂肪酸エステルである、(8)記載の経皮吸収製剤。
本発明の経皮吸収製剤によれば、汗成分である乳酸の製剤への取り込みによる粘着剤層の凝集力低下を抑制できるので、粘着剤層中の薬物(すなわち、セレギリン及び塩酸セレギリンを除く薬物)の含有量を自由に設定でき、貼付時の発汗による汗成分の存在下においても粘着剤層の凝集力の低下を生じることなく剥離除去の際の凝集破壊による糊残りの生じない安定な経皮吸収製剤を提供することができる。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の経皮吸収製剤は、セレギリン及び塩酸セレギリンを除く薬物、金属塩化物並びに粘着剤を含み、架橋処理が施されてなる粘着剤層が、支持体の少なくとも片面に形成されてなる経皮吸収製剤である。
本発明で使用される支持体としては、特に限定はされないが、薬物や液状可塑剤等が支持体中を通って背面から失われて含有量が低下しないもの、即ちこれらの成分の不透過性を有する材料が好ましい。具体的には、ポリエステル、ナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、アイオノマー樹脂等からなるフィルム、金属箔やこれらのラミネートフィルム等が挙げられる。これらのうち、支持体として粘着剤層との接着性(投錨性)を向上させるために支持体を上記材料からなる無孔性フィルムと多孔性フィルムとのラミネートフィルムとし多孔性フィルム側に粘着剤層を形成することが好ましい。
多孔性フィルムとしては、粘着剤層の投錨性が良好であれば特に限定されないが、例えば紙、織布、不織布、機械的に穿孔処理したシート等が挙げられ、特に紙、織布、不織布が好ましい。多孔性フィルムの厚みは投錨力の向上および貼付剤の柔軟性を考慮して10〜500μm、プラスタータイプや粘着テープタイプのような薄手の貼付剤の場合は10〜200μm程度である。織布や不織布の場合は、これらの目付量を5〜30g/mとすることが投錨力の向上の点で好ましい。
本発明における粘着剤層は、支持体の少なくとも片面に形成される。本発明における粘着剤層に含有する粘着剤としては、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ビニルエステル系粘着剤等が挙げられる。なかでも、経皮吸収製剤としての粘着性の観点から、粘着性ポリマーとしてアクリル系重合体を含むアクリル系粘着剤が好ましい。
本発明におけるアクリル系重合体は、通常は(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含む重合体であり、好ましくは(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分として共重合した共重合体である。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基は、人の皮膚への粘着性の観点から、炭素数4以上が好ましく、直鎖でも、分岐鎖でもよい。具体的には、ブチル、ペンチル、へキシル、へプチル、オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル等が挙げられ、好ましくは2−エチルヘキシルである。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは1種または2種以上の組み合わせで使用される。
上記の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合しうるモノマーとしては、例えば(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸等のカルボキシル基を有するモノマー;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸、アクリルアミドメチルスルホン酸等のスルホン酸を有するモノマー;(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピルエステル等のヒドロキシル基を有するモノマー;(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等のアミド基を有する(メタ)アクリル酸誘導体;(メタ)アクリル酸アミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルエステル等の(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステル;(メタ)アクリル酸メトキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル等の(メタ)アクリル酸アルコキシエステル;(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸メトキシジエチレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコールエステル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキレングリコールエステル;(メタ)アクリロニトリル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルカプロラクタム、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン等のビニルを有する化合物等が挙げられ、これら単独または2種以上を組み合わせて使用される。これらモノマーの共重合は、得られる共重合体の重量平均分子量に応じて適宜設定される。
好ましいアクリル系共重合体としては、アクリル酸2−エチルへキシルエステルとN−ビニル−2−ピロリドンとアクリル酸との共重合体、アクリル酸2−エチルへキシルエステルとアクリル酸2−ヒドロキシエチルエステルと酢酸ビニルとの共重合体、アクリル酸2−エチルへキシルエステルとアクリル酸との共重合体等が挙げられ、より好ましくは、アクリル酸2−エチルへキシルエステルとN−ビニル−2−ピロリドンとアクリル酸との共重合体が挙げられる。
アクリル系共重合体のガラス転移温度は、共重合組成によっても異なるが、経皮吸収製剤としての粘着性の観点から、通常−60〜−10℃であることが好ましく、より好ましくは−43〜−27℃である。
本発明の経皮吸収製剤の粘着剤層には、金属塩化物を含有する。金属塩化物としては、安全性の観点から通常、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化アルミニウム、塩化第一スズ、塩化第二鉄等の金属塩化物が挙げられる。好ましくは、塩化ナトリウム、塩化カルシウムであり、より好ましくは塩化ナトリウムである。これらはいずれかを単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明における金属塩化物は、薬物の塩酸塩を塩基性化合物で中和して生じさせた塩であってもよい。具体的には、薬物として塩酸塩を使用する場合に、薬物(塩酸塩)を金属水酸化物等の塩基性化合物とともに溶媒中で混合攪拌して中和することによって生成する金属塩化物が該当する。これにより金属塩化物を添加しなくても金属塩化物を含む薬物含有液を調製することができる。また、薬物(塩酸塩)を金属水酸化物等の塩基性化合物とともに溶媒中で混合攪拌して無機金属塩化物を生成させた後、こうして得られた薬物含有液にさらに金属塩化物を添加してもよい。塩基性化合物としては金属水酸化物が好ましく、金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等が挙げられ、好ましくは水酸化ナトリウムが挙げられる。
これら金属塩化物の配合量としては、粘着剤を構成する粘着性ポリマー100重量部に対して、好ましくは0.1〜20重量部、より好ましくは1〜10重量部である。この配合量が0.1重量部未満の場合、汗中の乳酸による影響を抑制する効果が不充分となる場合があり、逆に20重量部を超える場合、抑制効果はあるものの該粘着性ポリマー中に均一に分散出来ず外観不良を引き起こす場合がある。
粘着剤層には液状可塑剤を含有させることができる。
液状可塑剤は、それ自体室温で液状であり、可塑化作用を示し、上記の粘着性ポリマーと相溶するものであれば特に限定されない。液状可塑剤は、薬物の経皮吸収性、保存安定性を向上させるものが好ましく、粘着剤中への薬物溶解性等をさらに高める目的でも配合することができる。薬物の経皮吸収性、保存安定性を向上させるという観点では、通常、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸エチル、パルミチン酸イソプロピル等の炭素数12〜16の高級脂肪酸と炭素数1〜4の低級1価アルコールからなる脂肪酸エステル;炭素数8〜10の脂肪酸;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のグリコール類;オリーブ油、ヒマシ油、スクアレン、ラノリン等の油脂類;酢酸エチル、エチルアルコール、ジメチルデシルスルホキシド、デシルメチルスルホキシド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルラウリルアミド、ドデシルピロリドン、イソソルビトール、オレイルアルコール、ラウリン酸等の有機溶剤;液状の界面活性剤;ジイソプロピルアジペート、フタル酸エステル、ジエチルセバケート等の従来より公知の可塑剤;流動パラフィン等の炭化水素類;その他、エトキシ化ステアリルアルコール、グリセリンエステル(室温で液状の物)、ミリスチン酸イソトリデシル、N−メチルピロリドン、オレイン酸エチル、オレイン酸、アジピン酸ジイソプロピル、パルミチン酸オクチル、1、3−プロパンジオール、グリセリン等が挙げられる。これらの中から常温で液状のものが使用される。また、これらの液状可塑剤は単独でまたは2種以上の組み合わせで使用される。
本発明における液状可塑剤は、先のアクリル系共重合体との相溶性の観点から、炭素数12〜16の高級脂肪酸と炭素数1〜4の低級1価アルコールからなる脂肪酸エステルが好ましい。
該脂肪酸エステルの炭素数12〜16の高級脂肪酸は飽和及び不飽和脂肪酸を包含するが、飽和脂肪酸が好ましく、また炭素数1〜4の低級1価アルコールは直鎖でも分岐鎖でもよい。炭素数12〜16の高級脂肪酸の好適な例としては、ラウリン酸(C12)、ミリスチン酸(C14)、パルミチン酸(C16)が挙げられ、炭素数1〜4の低級1価アルコールの好適な例としては、イソプロピルアルコール、エチルアルコール、メチルアルコール、プロピルアルコール等が挙げられる。これらのうち、好適な脂肪酸エステルとしては、ミリスチン酸イソプロピルが例示される。
さらに、薬物の経皮吸収性の向上を考慮して、上記の脂肪酸エステルに加えて、炭素数8〜10の脂肪酸および/またはグリセリンを併用してもよい。炭素数8〜10の脂肪酸としては、例えば、カプリル酸(オクタン酸、C8)、ペラルゴン酸(ノナン酸、C9)、カプリン酸(デカン酸、C10)等が挙げられる。
液状可塑剤の配合量は上記の粘着性ポリマー100重量部に対して、好ましくは10〜140重量部、より好ましくは40〜100重量部である。この配合量が10重量部未満の場合、粘着剤層の可塑化が不充分となって皮膚刺激性を低減することが出来ない場合があり、逆に140重量部を超える場合、粘着性ポリマーが有する凝集力によっても液状可塑剤を粘着剤中に保持させることが出来ない場合があり、粘着剤層表面にブルーミングして接着性が劣る場合がある。
粘着剤層に架橋処理を施すための架橋剤には、薬物(セレギリン及び塩酸セレギリンを除く)により架橋の形成が阻害されない架橋剤、例えば有機金属化合物(例えばジルコニウム、亜鉛、酢酸亜鉛等)、金属アルコラート(例えばテトラエチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、アルミニウムイソプロピレート、アルミニウムsec-ブチレート等)、または、金属キレート化合物(例えばジプロポキシビス(アセチルアセトナート)チタン、テトラオクチレングリコールチタン、アルミニウムイソプロピレート、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)等)が挙げられる。好ましく用いられる架橋剤は金属キレート化合物である。なかでもエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレートがより好ましい。架橋剤は1種または2種以上を組み合わせても用いることができる。
架橋剤の配合量は、架橋剤や粘着剤の種類によって異なるが、粘着剤100重量部に対して、通常0.1〜0.6重量部、好ましくは0.15〜0.4重量部の範囲である。
本発明の経皮吸収製剤のゲル分率は、粘着剤の凝集力維持および皮膚粘着力の獲得の観点から、45%〜95%であることが好ましい。特に好ましくは55%〜90%である。
本発明において、粘着剤層に含有させる薬物は、経皮吸収性薬物(セレギリン及び塩酸セレギリンを除く)であれば特に限定されない。経皮吸収性薬物とは、皮膚から浸透し体内に吸収され得る薬物を意味する。本発明の薬物は、使用する架橋剤との反応性の有無の観点から、塩基性薬物であることが好ましい。また、薬物は、薬物の薬理学的に許容される塩であってもよく、例えば、塩基性薬物の塩酸塩、硝酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、サリチル酸塩、硫酸塩、リン酸塩などの酸性塩であってもよい。
本発明における薬物は、例えば、催眠・鎮静剤(フルラゼパム、リルマザホン等やこれらの塩酸塩等)、解熱消炎鎮痛剤(酒石酸ブトルファノール、クエン酸ペリソキサール等)、興奮・覚醒剤(メタンフェタミン、メチルフェニデート等やこれらの塩酸塩等)、精神神経用剤(クロルプロマジン、イミプラミン等やこれらの塩酸塩等)、局所麻酔剤(リドカイン、プロカイン等やこれらの塩酸塩等)、泌尿器官用剤(オキシブチニン等やその塩酸塩等)、骨格筋弛緩剤(チザニジン、エペリゾン等やこれらの塩酸塩、メシル酸プリジノール等)、自律神経用剤(カルプロニウムとその塩酸塩、臭化ネオスチグミン等)、抗パーキンソン剤(トリヘキシフェニジル、アマンタジン等やこれらの塩酸塩等)、抗ヒスタミン剤(フマル酸クレマスチン、タンニン酸ジフェンヒドラミン等)、気管支拡張剤(ツロブテロール、プロカテロール等やこれらの塩酸塩等)、強心剤(イソプレナリン、ドパミン等やこれらの塩酸塩等)、冠血管拡張剤(ジルチアゼム、ベラパミル、ガロパミル等やこれらの塩酸塩等)、末梢血管拡張剤(クエン酸ニカメタート、トラゾリン、塩酸トラゾリン等)、循環器官用剤(フルナリジン、ニカルジピン等やこれらの塩酸塩等)、不整脈用剤(プロプラノロール、アルプレノロール等やこれらの塩酸塩等)、抗アレルギー剤(フマル酸ケトチフェン、アゼラスチン等)、鎮暈剤(メシル酸ベタヒスチン、ジフェニドール、塩酸ジフェニドール等)、セロトニン受容体拮抗制吐剤、麻薬系の鎮痛剤(硫酸モルヒネ、クエン酸フェンタニル等)が挙げられる。これらの薬物は単独でも2種以上を併用してもよい。
本発明の経皮吸収製剤における上記薬物の含有量は、薬物種や投与目的に応じて適宜設定することができるが、通常、粘着剤層の総重量の通常、0.1重量%〜60重量%含有させるのが好ましく、2重量%〜30重量%程度含有させるのがより好ましい。上記薬物の含有量が、粘着剤層の総重量の0.1重量%未満である場合、治療に有効な量の放出が期待できない虞があるため好ましくない。また、粘着剤層の総重量の60重量%を超えて薬物を含有させても、薬物の増量による治療効果の向上がみられず、経済的に無駄であるため好ましくない。
粘着剤層の厚さは、皮膚面への貼付や剥離性の点から、通常30〜300μm、好ましくは60〜150μmである。
粘着剤層には必要に応じて、抗酸化剤や各種顔料、各種充填剤、安定化剤、薬物溶解補助剤、薬物溶解抑制剤等の添加剤を配合することができる。
本発明の経皮吸収製剤の製造方法は特に限定されるものではないが、例えば、以下の製造方法により製造することができる。
薬物(セレギリン及び塩酸セレギリンを除く)を、エタノールなどの溶媒に分散した金属塩化物と混合攪拌して薬物含有液を調製する。ここで、薬物として塩酸塩を使用する場合は、薬物(塩酸塩)を金属水酸化物等の塩基性化合物とともに溶媒中で混合攪拌して中和することによって、金属塩化物を生成させることができる(すなわち、金属塩化物を含む薬物含有液を調製することができる)。なお、薬物(塩酸塩)を金属水酸化物等の塩基性化合物とともに溶媒中で混合攪拌して金属塩化物を生成させた後、こうして得られた薬物含有液にさらに金属塩化物を添加してもよい。上記の金属水酸化物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等が挙げられ、好ましくは水酸化ナトリウムである。
上記の薬物含有溶液を、例えば、粘着剤(例えばアクリル系共重合体粘着剤等)、架橋剤、並びに必要に応じて液状可塑剤やその他の添加剤等と共に、溶媒または分散媒に溶解または分散させる。粘着剤層の形成に用いる溶媒または分散媒は、特に限定されず、粘着剤の溶媒等として通常使用されるものを粘着剤の種類、薬物との反応性等を考慮して選択することができる。例えば、酢酸エチル、トルエン、ヘキサン、2−プロパノール、メタノール、エタノール等が挙げられる。
次に得られた溶液または分散液を支持体の片面もしくは剥離シートの剥離処理面に塗布し、乾燥して粘着剤層を形成し、その後、剥離シートもしくは支持体を貼り合わせる。剥離シートとしては、使用時に粘着剤層から容易に剥離されるものであれば特に限定されず、例えば粘着剤層との接触面にシリコーン処理が施された、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート等のフィルム、あるいは上質紙またはグラシン紙とポリオレフィンとのラミネートフィルム等が挙げられる。該剥離シートの厚みは、通常200μm以下、好ましくは25〜100μmである。かかる剥離シートを粘着剤層上に貼りあわせ、通常60〜90℃、好ましくは60〜70℃で24〜48時間、エージング処理などを施すことによって架橋反応を促進させて、本発明の経皮吸収製剤を調製する。
なお、薬物を、粘着剤(例えばアクリル系共重合体粘着剤等)、架橋剤、並びに必要に応じて液状可塑剤やその他の添加剤等と共に、溶媒または分散媒に溶解または分散して、薬物含有溶液を調製した後、得られた溶液に金属塩化物を混合攪拌し、支持体の片面もしくは剥離シートの剥離処理面に塗布し、乾燥して粘着剤層を形成し、その後、剥離シートもしくは支持体を貼り合わせてもよい。
本発明の経皮吸収製剤の形状は限定されず、例えば、テープ状、シート状等を含む。
本発明の経皮吸収製剤の投与量は、使用する薬物の種類、患者の年齢、体重、症状などにより異なるが、通常、成人に対して、薬物5〜100mgを含有した経皮吸収製剤を皮膚5〜100cmに、2日に1回〜1日に1回程度貼り付けるのが好ましい。
以下に実施例を挙げて本発明を詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下文中で部とあるのは全て重量部を意味する。
(アクリル系共重合体粘着剤Aの調製)
不活性ガス雰囲気下、アクリル酸2−エチルへキシル75部、N−ビニル−2−ピロリドン22部、アクリル酸3部およびアゾビスイソブチロニトリル0.2部を酢酸エチル中60℃にて溶液重合させてアクリル系共重合体粘着剤Aの溶液を調製した。
(アクリル系共重合体粘着剤Bの調製)
不活性ガス雰囲気下、アクリル酸2−エチルへキシル95部、アクリル酸5部および過酸化ベンゾイル0.2部を酢酸エチル中60℃にて溶液重合させてアクリル系共重合体粘着剤Bの溶液を調製した。
実施例1
アクリル系共重合体粘着剤A49部、ミリスチン酸イソプロピル40部、ガロパミル10部を容器中で均一になるように混合攪拌を行った。その後エタノールに分散した塩化ナトリウム1部を先のアクリル系共重合体粘着剤A溶液に添加、攪拌を行い、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート0.3部(粘着剤固形分に対して)を添加、酢酸エチルで粘度を調整し、ポリエステルフィルム(75μm厚)に乾燥後の厚みが80μmになるように調整を行い、乾燥してポリエステルフィルム(12μm厚)に貼りあわせた後、70℃で48時間エージング処理を行い、ガロパミルの経皮吸収製剤を得た。
実施例2
アクリル系共重合体粘着剤A47部、ミリスチン酸イソプロピル40部、ガロパミル10部を容器中で均一になるように混合攪拌を行った。その後エタノールに分散した塩化ナトリウム3部を先のアクリル系共重合体粘着剤A溶液に添加、攪拌を行い、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート0.3部(粘着剤固形分に対して)を添加、酢酸エチルで粘度を調整し、実施例1と同様の操作を行いガロパミルの経皮吸収製剤を得た。
実施例3
アクリル系共重合体粘着剤A45部、ミリスチン酸イソプロピル40部、ガロパミル10部を容器中で均一になるように混合攪拌を行った。その後エタノールに分散した塩化ナトリウム5部を先のアクリル系共重合体粘着剤A溶液に添加、攪拌を行い、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート0.3部(粘着剤固形分に対して)を添加、酢酸エチルで粘度を調整し、実施例1と同様の操作を行いガロパミルの経皮吸収製剤を得た。
実施例4
アクリル系共重合体粘着剤A48.42部、ミリスチン酸イソプロピル40部を容器中で均一になるように混合攪拌を行い、別な容器で、塩酸ガロパミル10.75部、エタノールに溶解した水酸化ナトリウム(10重量%)0.83部を混合攪拌し生成した塩化ナトリウムとガロパミルフリー体を先のアクリル系共重合体粘着剤A溶液に添加、攪拌を行い、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート0.3部(粘着剤固形分に対して)を添加、酢酸エチルで粘度を調整し、ポリエステルフィルム(75μm厚)に乾燥後の厚みが80μmになるように調整を行い、乾燥してポリエステルフィルム(12μm厚)に貼りあわせた後、70℃で48時間エージング処理を行い、ガロパミルの経皮吸収製剤を得た。
実施例5
アクリル系共重合体粘着剤A36.84部、ミリスチン酸イソプロピル40部を容器中で均一になるように混合攪拌を行い、別な容器で、塩酸ガロパミル21.5部、エタノールに溶解した水酸化ナトリウム(10重量%)1.66部を混合攪拌し生成した塩化ナトリウムとガロパミルフリー体を先のアクリル系共重合体粘着剤A溶液に添加、攪拌を行い、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート0.3部(粘着剤固形分に対して)を添加、酢酸エチルで粘度を調整し、ポリエステルフィルム(75μm厚)に乾燥後の厚みが80μmになるように調整を行い、乾燥してポリエステルフィルム(12μm厚)に貼りあわせた後、70℃で48時間エージング処理を行い、ガロパミルの経皮吸収製剤を得た。
実施例6
アクリル系共重合体粘着剤B47部、ミリスチン酸イソプロピル40部、ガロパミル10部を容器中で均一になるように混合攪拌を行った。その後エタノールに分散した塩化ナトリウム3部を先のアクリル系共重合体粘着剤B溶液に添加、攪拌を行い、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート0.3部(粘着剤固形分に対して)を添加、酢酸エチルで粘度を調整し、実施例1と同様の操作を行いガロパミルの経皮吸収製剤を得た。
実施例7
アクリル系共重合体粘着剤A48.16部、ミリスチン酸イソプロピル40部を容器中で均一になるように混合攪拌を行い、別な容器で、塩酸ジルチアゼム10.88部、エタノールに溶解した水酸化ナトリウム(10重量%)0.96部を混合攪拌し生成した塩化ナトリウムとジルチアゼムフリー体を先のアクリル系共重合体粘着剤A溶液に添加、攪拌を行い、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート0.3部(粘着剤固形分に対して)を添加、酢酸エチルで粘度を調整し、ポリエステルフィルム(75μm厚)に乾燥後の厚みが80μmになるように調整を行い、乾燥してポリエステルフィルム(12μm厚)に貼りあわせた後、70℃で48時間エージング処理を行い、ジルチアゼムの経皮吸収製剤を得た。
参考例
アクリル系共重合体粘着剤A51部、ミリスチン酸イソプロピル40部、ガロパミル4部、グリセリン5部を容器中で均一になるように混合攪拌を行い、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート0.3部(粘着剤固形分に対して)を添加、酢酸エチルで粘度を調整し、実施例1と同様の操作を行いガロパミルの経皮吸収製剤を得た。
比較例1
アクリル系共重合体粘着剤A50部、ミリスチン酸イソプロピル40部、ガロパミル10部を容器中で均一になるように混合攪拌を行い、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート0.3部(粘着剤固形分に対して)を添加、酢酸エチルで粘度を調整し、実施例1と同様の操作を行いガロパミルの経皮吸収製剤を得た。
比較例2
アクリル系共重合体粘着剤A45部、ミリスチン酸イソプロピル40部、ガロパミル10部、グリセリン5部を容器中で均一になるように混合攪拌を行い、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート0.3部(粘着剤固形分に対して)を添加、酢酸エチルで粘度を調整し、実施例1と同様の操作を行いガロパミルの経皮吸収製剤を得た。
比較例3
アクリル系共重合体粘着剤B50部、ミリスチン酸イソプロピル40部、ガロパミル10部を容器中で均一になるように混合攪拌を行い、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート0.3部(粘着剤固形分に対して)を添加、酢酸エチルで粘度を調整し、実施例1と同様の操作を行いガロパミルの経皮吸収製剤を得た。
比較例4
アクリル系共重合体粘着剤B45部、ミリスチン酸イソプロピル40部、ガロパミル10部、グリセリン5部を容器中で均一になるように混合攪拌を行い、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート0.3部(粘着剤固形分に対して)を添加、酢酸エチルで粘度を調整し、実施例1と同様の操作を行いガロパミルの経皮吸収製剤を得た。
比較例5
アクリル系共重合体粘着剤A43.5部、ミリスチン酸イソプロピル40部、グリセリン3部を容器中で均一になるように混合攪拌を行い、別な容器で、塩酸ガロパミル10.75部、ジイソプロパノールアミン2.75部(いずれも2−プロパノール溶液で10wt%に調整)を混合攪拌し、その後先のアクリル系共重合体粘着剤A溶液に添加、攪拌を行い、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート0.3部(粘着剤固形分に対して)を添加、酢酸エチルで粘度を調整し、実施例1と同様の操作を行いガロパミルの経皮吸収製剤を得た。
比較例6
アクリル系共重合体粘着剤A30部、ミリスチン酸イソプロピル40部、グリセリン3部を容器中で均一になるように混合攪拌を行い、別な容器で、塩酸ガロパミル21.5部、ジイソプロパノールアミン5.5部(いずれも2−プロパノール溶液で10wt%に調整)を混合攪拌し、その後先のアクリル系共重合体粘着剤A溶液に添加、攪拌を行い、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート0.3部(粘着剤固形分に対して)を添加、酢酸エチルで粘度を調整し、実施例1と同様の操作を行いガロパミルの経皮吸収製剤を得た。
比較例7
アクリル系共重合体粘着剤A42.99部、ミリスチン酸イソプロピル40部、グリセリン5部を容器中で均一になるように混合攪拌を行い、別な容器で、塩酸ガロパミル10.75部、モノエタノールアミン1.26部(いずれも2−プロパノール溶液で10wt%に調整)を混合攪拌し、その後先のアクリル系共重合体粘着剤A溶液に添加、攪拌を行い、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート0.3部(粘着剤固形分に対して)を添加、酢酸エチルで粘度を調整し、実施例1と同様の操作を行いガロパミルの経皮吸収製剤を得た。
比較例8
アクリル系共重合体粘着剤B42.99部、ミリスチン酸イソプロピル40部、グリセリン5部を容器中で均一になるように混合攪拌を行い、別な容器で、塩酸ガロパミル10.75部、モノエタノールアミン1.26部(いずれも2−プロパノール溶液で10wt%に調整)を混合攪拌し、その後先のアクリル系共重合体粘着剤B溶液に添加、攪拌を行い、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート0.3部(粘着剤固形分に対して)を添加、酢酸エチルで粘度を調整し、実施例1と同様の操作を行いガロパミルの経皮吸収製剤を得た。
比較例9
アクリル系共重合体粘着剤A45部、ミリスチン酸イソプロピル40部、ジルチアゼム10部、グリセリン5部を容器中で均一になるように混合攪拌を行い、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート0.3部(粘着剤固形分に対して)を添加、酢酸エチルで粘度を調整し、実施例1と同様の操作を行いジルチアゼムの経皮吸収製剤を得た。
実験例
上記各実施例および各比較例にて作製したガロパミル、ジルチアゼム経皮吸収製剤について、以下に示すゲル分率測定実験、及び浸漬試験を行った。
実験例1(ゲル分率測定試験)
製剤内に残存する酢酸エチルに不溶なゲル成分の割合を次の方法を用いて求めた。
得られた製剤を25cm(5cm×5cm)に打ち抜き、2枚を予め重量を測定した多孔性テトラフルオロエチレンフィルム(20cm×10cm)(基材)に貼付した。内容物がこぼれない様に折りたたみ、重量を測定した。これをビーカーに入れ、2種類の溶媒(タイプ1:酢酸エチル、タイプ2:0.4wt%乳酸入り酢酸エチル)にて、基材が完全に漬かるまで加えた。その翌日に中の溶液を捨て、前日と同じ組成の溶媒を添加し、1日ごとに交換し、3回交換後ビーカー中の溶液を捨て、乾燥後、重量を測定した。ゲル分率は以下の式にて算出する。
Figure 2007016020
実験例2(浸漬試験)
実際の皮膚に貼付された場合を想定し、粘着剤層の凝集力を次の方法で評価した。
得られた製剤を約10cm(3.16cm×3.16cm)に打ち抜いた。0.4wt%乳酸を含む生理食塩水をガラス製シャーレに5mL添加し、そこに打ち抜かれた製剤を、セパレーターを剥がし粘着面が下になるように浸漬した(浮かせた)。浸漬24時間後にその製剤を取り出し、表面を乾燥させた後、指で触ることにより評価した。
実験例1および2の結果を表1に示した。
Figure 2007016020
表1の結果より、タイプ1のゲル分率の結果では、見かけ上架橋構造は維持できているように考察できるが、実際の貼付状態を仮定した汗中に存在する乳酸を酢酸エチルに添加した場合のタイプ2の場合においては、実施例1〜7の場合はタイプ1に比べて低下傾向はあるものの50%を超える値を維持しており、浸漬前後試験結果からも解るように、このレベルを維持する限り粘着剤層の凝集破壊は起こらないことが確認された。また、製剤中の塩化ナトリウム濃度を上げた場合にはその値が向上することも分かった。
参考例の様に、塩基性薬物の濃度が比較的低い場合はグリセリンによる効果も確認されるが、これに対して、塩基性薬物の濃度が倍以上になると(比較例1〜4)、もはやグリセリンによる効果も利用できずに凝集破壊することが確認された。
グリセリンは添加されているが、塩化ナトリウムのない比較例2、4についてもその値が顕著に低下し、また凝集破壊を引き起こすことも解った。
水酸化ナトリウムではなく、塩基性化合物に有機アミンを添加した場合の比較例5〜8の値についても、先の比較例と同様に、タイプ2の場合のゲル分率の値が顕著に低下し、また凝集破壊を引き起こすことが確認された。
塩基性薬物の濃度が高い場合、実施例4、5の場合では濃度の増加と共に生成する塩化ナトリウムの量も増加し、さらに凝集力の高い粘着剤層が形成されることに反して、比較例6では薬物濃度の増加に伴い、タイプ2でのゲル分率も低下し、凝集破壊を抑制できないことが確認された。
実施例7および比較例9の結果から、塩酸塩を有する塩基性薬物には有効であることが確認された。

Claims (9)

  1. セレギリン及び塩酸セレギリンを除く薬物、金属塩化物並びに粘着剤を含有し、架橋処理が施されてなる粘着剤層が、支持体の少なくとも片面に形成されてなる経皮吸収製剤。
  2. 架橋処理が金属キレート化合物によって施されてなる、請求項1に記載の経皮吸収製剤。
  3. 薬物が塩基性薬物である、請求項1または2に記載の経皮吸収製剤。
  4. 粘着剤がアクリル系重合体を含むアクリル系粘着剤である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の経皮吸収製剤。
  5. 金属塩化物が、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化アルミニウム、塩化第一スズ、および塩化第二鉄から選ばれる少なくとも1つの金属塩化物である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の経皮吸収製剤。
  6. 金属塩化物が塩化ナトリウムである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の経皮吸収製剤。
  7. 金属塩化物が、薬物の塩酸塩を塩基性化合物で中和して生じさせた塩である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の経皮吸収製剤。
  8. 粘着剤層が、液状可塑剤をさらに含有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の経皮吸収製剤。
  9. 液状可塑剤が、炭素数12〜16の高級脂肪酸と炭素数1〜4の低級1価アルコールからなる脂肪酸エステルである、請求項8に記載の経皮吸収製剤。
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