JP2007008879A - 抗腫瘍剤及びこれを含有する食品 - Google Patents
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Abstract
【課題】 植物成分から単離された化合物を有効成分とする、抗腫瘍活性が高く、副作用が少ない抗腫瘍剤を提供すること。
【解決手段】 ナリゴシド、オレアンドリゲニン サルメントシド、オレアシドA、オレアンドリン、8β−ヒドロキシオドロシドA、ナルシクラシン、trans−ジヒドロナルシクラシン及びビスデオキシナルシクラシンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する抗腫瘍剤。
【選択図】 なし
【解決手段】 ナリゴシド、オレアンドリゲニン サルメントシド、オレアシドA、オレアンドリン、8β−ヒドロキシオドロシドA、ナルシクラシン、trans−ジヒドロナルシクラシン及びビスデオキシナルシクラシンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する抗腫瘍剤。
【選択図】 なし
Description
本発明は、抗腫瘍剤、特に、植物から単離された化合物を含有し、ヒトの大腸癌、胃癌及び肺癌に対して優れた効果を有する抗腫瘍剤、及び食品に関するものである。
(発明の背景)
医療技術が進歩し、高齢化が高進されている現在において、癌は依然として重大な病気として存在している。もちろん、癌の治療技術も大いに進歩し、合成医薬、漢方、天然物からの抽出物などをベースとする数多くの医薬が開発されている。合成医薬に対して、天然物からの抽出物は副作用の点で優れており、例えば、西洋イチイからタキソールが発見され、抗癌剤の有効成分として用いられている(特開昭63−30478号公報や特開平7−233064号公報など)が、その副作用は依然として大きいものである。
(発明の背景)
医療技術が進歩し、高齢化が高進されている現在において、癌は依然として重大な病気として存在している。もちろん、癌の治療技術も大いに進歩し、合成医薬、漢方、天然物からの抽出物などをベースとする数多くの医薬が開発されている。合成医薬に対して、天然物からの抽出物は副作用の点で優れており、例えば、西洋イチイからタキソールが発見され、抗癌剤の有効成分として用いられている(特開昭63−30478号公報や特開平7−233064号公報など)が、その副作用は依然として大きいものである。
本発明は、植物成分から単離された化合物を有効成分とする、抗腫瘍活性が高く、副作用が少ない抗腫瘍剤を提供することを目的とする。
本発明は、又、上記化合物を含有する食品を提供することを目的とする。
本発明は、又、上記化合物を含有する食品を提供することを目的とする。
本発明は、植物成分における抗癌物質を探索している過程で、種々の植物からの抽出物が、in vitro 及びin vivo で癌細胞を強く殺傷すること、特に、ヒトの大腸癌、胃癌及び肺癌細胞を殺傷し、かつこれらの植物の抽出物が高い希釈においても癌細胞を殺傷することを見出し、このうち、キョウチクトウ及びショウキズイセンの抽出物から単離した特定の化合物が、優れた腫瘍治療効果を有し、副作用が少ないとの知見に基づいてなされたのである。
すなわち、本発明は、ナリゴシド、オレアンドリゲニン サルメントシド、オレアシドA、オレアンドリン、8β−ヒドロキシオドロシドA、ナルシクラシン、trans−ジヒドロナルシクラシン及びビスデオキシナルシクラシンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする抗腫瘍剤を提供する。
本発明は、又、上記化合物を含有する食品を提供する。
すなわち、本発明は、ナリゴシド、オレアンドリゲニン サルメントシド、オレアシドA、オレアンドリン、8β−ヒドロキシオドロシドA、ナルシクラシン、trans−ジヒドロナルシクラシン及びビスデオキシナルシクラシンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする抗腫瘍剤を提供する。
本発明は、又、上記化合物を含有する食品を提供する。
本発明で用いるキョウチクトウ(Nerium oleander L.)は、キョウチクトウ科 (Apocynaceae)に属する植物である。又、ショウキズイセン(Lycoris traubii Hayward)は、ヒガンバナ科(Amaryllidaceae)に属する植物である。
本発明では、先ず、上記植物の葉、花、実、茎及び(球)根を、例えば、乾燥し、粉砕した後、又は未乾燥の生の状態で、水、例えば、蒸留水やイオン交換水で、又は親水性若しくは疎水性有機溶媒で抽出する。ここで用いる有機溶媒としては、酢酸エチル、四塩化炭素、クロロフォルム、ジクルロメタン、メタノール、エタノール、(イソ)プロピルアルコール、ブタノール、アセトン又はDMSOがあげられる。ここで親水性溶媒は、含水形態で用いることもできる。使用する水や溶媒の量は任意とすることができるが、5分の1〜5倍量で用いるのがよく、特に約等量で用いるのが好ましい。又、抽出は、60℃以下であるのがよく、さらに室温で行うのが好ましく、特に、ミキサーなどで攪拌しながら行うのがよい。
本発明ではこのようにして得た抽出物から、高速液体クロマトグラフィーなどを用いて、有効成分を単離し、単離した物質について抗腫瘍を確認し、効果の高いものを選び、NMRなどにより、その構造を確認して、上記8種の化合物を得た。これらの詳細は次の通りである。
ここで、ナリゴシド(Narigoside:化合物1)は、分子式がC32H48O9であり、CASRegistry Numberが508-22-5であり、下記の構造式を有するCard-20(22)-enolide, 16-(acetyloxy)-3-[2,6-dideoxy-3-O-methyl-beta-D-lyxo-hexopyranosyl)oxy]-14-hydroxy-(3.beta.,5.beta.,16.beta)-(9CI)である。
本発明では、先ず、上記植物の葉、花、実、茎及び(球)根を、例えば、乾燥し、粉砕した後、又は未乾燥の生の状態で、水、例えば、蒸留水やイオン交換水で、又は親水性若しくは疎水性有機溶媒で抽出する。ここで用いる有機溶媒としては、酢酸エチル、四塩化炭素、クロロフォルム、ジクルロメタン、メタノール、エタノール、(イソ)プロピルアルコール、ブタノール、アセトン又はDMSOがあげられる。ここで親水性溶媒は、含水形態で用いることもできる。使用する水や溶媒の量は任意とすることができるが、5分の1〜5倍量で用いるのがよく、特に約等量で用いるのが好ましい。又、抽出は、60℃以下であるのがよく、さらに室温で行うのが好ましく、特に、ミキサーなどで攪拌しながら行うのがよい。
本発明ではこのようにして得た抽出物から、高速液体クロマトグラフィーなどを用いて、有効成分を単離し、単離した物質について抗腫瘍を確認し、効果の高いものを選び、NMRなどにより、その構造を確認して、上記8種の化合物を得た。これらの詳細は次の通りである。
ここで、ナリゴシド(Narigoside:化合物1)は、分子式がC32H48O9であり、CASRegistry Numberが508-22-5であり、下記の構造式を有するCard-20(22)-enolide, 16-(acetyloxy)-3-[2,6-dideoxy-3-O-methyl-beta-D-lyxo-hexopyranosyl)oxy]-14-hydroxy-(3.beta.,5.beta.,16.beta)-(9CI)である。
化合物1
オレアンドリゲニン サルメントシド(Oleandrigenin sarmentoside:化合物2)は、分子式がC32H48O9であり、CASRegistry Numberが144300-17-4であり、下記の構造式を有するCard-20(22)-enolide, 16-(acetyloxy)-3-[2,6-dideoxy-3-O-methyl-beta-D-xylo-hexopyranosyl)oxy]-14-hydroxy-(3.beta.,5.beta.,16.beta)-(9CI)である。
オレアンドリゲニン サルメントシド(Oleandrigenin sarmentoside:化合物2)は、分子式がC32H48O9であり、CASRegistry Numberが144300-17-4であり、下記の構造式を有するCard-20(22)-enolide, 16-(acetyloxy)-3-[2,6-dideoxy-3-O-methyl-beta-D-xylo-hexopyranosyl)oxy]-14-hydroxy-(3.beta.,5.beta.,16.beta)-(9CI)である。
化合物2
オレアシドA(OleasideA:化合物3)は、分子式がC30H44O7であり、CASRegistry Numberが69686-84-6であり、下記の構造式を有する2(5H)-Furanone,4-[3S,4aR,6aR,9R,10R,12aR, 12bS)-3-[2,6-dideoxy-3-O-methyl-beta-D-lyxo-hexopyranosyl)oxy]tetradecahydro-10,12b-dimethyl-13-oxo-1H-6a,10-methanocycloocta[a]naphthalen-9-yl]-(9CI)である。
オレアシドA(OleasideA:化合物3)は、分子式がC30H44O7であり、CASRegistry Numberが69686-84-6であり、下記の構造式を有する2(5H)-Furanone,4-[3S,4aR,6aR,9R,10R,12aR, 12bS)-3-[2,6-dideoxy-3-O-methyl-beta-D-lyxo-hexopyranosyl)oxy]tetradecahydro-10,12b-dimethyl-13-oxo-1H-6a,10-methanocycloocta[a]naphthalen-9-yl]-(9CI)である。
化合物3
オレアンドリン(Oleandrin:化合物4)は、分子式がC32H48O9であり、CASRegistry Numberが465-16-7であり、下記の構造式を有するCard-20(22)-enolide, 16-(acetyloxy)-3-[2,6-dideoxy-3-O-methyl-alpha.L-arabino-hexopyranosyl)oxy]-14-hydroxy-(3.beta.,5.beta.,16.beta)-(9CI)である。
オレアンドリン(Oleandrin:化合物4)は、分子式がC32H48O9であり、CASRegistry Numberが465-16-7であり、下記の構造式を有するCard-20(22)-enolide, 16-(acetyloxy)-3-[2,6-dideoxy-3-O-methyl-alpha.L-arabino-hexopyranosyl)oxy]-14-hydroxy-(3.beta.,5.beta.,16.beta)-(9CI)である。
化合物4
8β−ヒドロキシオドロシドA(8β-HydroxyodorosideA:化合物5)は、分子式がC30H46O8であり、CASRegistry Numberが176519-75-8であり、下記の構造式を有するCard-20(22)-enolide, 3-[(2,6-dideoxy-3-O-methyl-beta.D-lyxo-hexopyranosyl)oxy]-8,14-dihydroxy-(3.beta.,5.beta.)-(9CI)である。
8β−ヒドロキシオドロシドA(8β-HydroxyodorosideA:化合物5)は、分子式がC30H46O8であり、CASRegistry Numberが176519-75-8であり、下記の構造式を有するCard-20(22)-enolide, 3-[(2,6-dideoxy-3-O-methyl-beta.D-lyxo-hexopyranosyl)oxy]-8,14-dihydroxy-(3.beta.,5.beta.)-(9CI)である。
化合物5
ナルシクラシン(Narciclasine:化合物6)は、分子式がC14H13NO7であり、下記の構造式を有する[2S-(2α,3β,4β, 4aβ)]-3,4,4a,5-tetrahydro-2,3,4,7-tetrahydroxy-[1,3]Dioxolo[4,5-j]phenanthridin-6(2H)-oneである。
ナルシクラシン(Narciclasine:化合物6)は、分子式がC14H13NO7であり、下記の構造式を有する[2S-(2α,3β,4β, 4aβ)]-3,4,4a,5-tetrahydro-2,3,4,7-tetrahydroxy-[1,3]Dioxolo[4,5-j]phenanthridin-6(2H)-oneである。
化合物6
trans−ジヒドロナルシクラシン(trans-Dihydronarciclasine:化合物7)は、分子式がC14H15NO7であり、下記の構造式を有する[2S-(2α,3β,4β, 4aβ,11bα)]-1,3,4,4a,5,11b-hexahydro-2,3,4,7-tetrahydroxy-[1,3]Dioxolo[4,5-j]phenanthridin-6(2H)-oneである。
trans−ジヒドロナルシクラシン(trans-Dihydronarciclasine:化合物7)は、分子式がC14H15NO7であり、下記の構造式を有する[2S-(2α,3β,4β, 4aβ,11bα)]-1,3,4,4a,5,11b-hexahydro-2,3,4,7-tetrahydroxy-[1,3]Dioxolo[4,5-j]phenanthridin-6(2H)-oneである。
化合物7
ビスデオキシナルシクラシン(Bisdeoxynarciclasine:化合物8)は、7-デオキシナルシクラシン(7-deoxynarciclasine)の2量体であり、分子式がC28H20N2O12であり、下記の構造式を有する。
ビスデオキシナルシクラシン(Bisdeoxynarciclasine:化合物8)は、7-デオキシナルシクラシン(7-deoxynarciclasine)の2量体であり、分子式がC28H20N2O12であり、下記の構造式を有する。
尚、上記単離した化合物を含有する抗腫瘍剤とする場合、上記単離した化合物自体を抗腫瘍剤とすることができるが、これらに加えて、医薬上許容される各種の製剤用物質、例えば、賦形剤、希釈剤、崩壊剤、結合剤、被覆剤、潤滑剤、滑走剤、滑沢剤、風味剤、甘味剤、可溶化剤等を補助剤として含むことができる。具体的には、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、ラクトース、マンニトール及びその他の糖類、タルク、ミルク蛋白、ゼラチン、澱粉、セルロース及びその誘導体、動物及び植物油、ポリエチレングリコール、グリセロールなどがあげられる。
本発明の抗腫瘍剤は、経口投与によるのが好ましいが、これに限定されるものではない。本発明の抗腫瘍剤は、体重1Kg当たり、0.25〜2g程度の量で用いるのがよい。
又、上記単離した化合物を含有する食品とする場合、健康食品や抗腫瘍活性を有する機能食品とすることができる。食品中の上記単離した化合物の量は特に限定されないが、0.0001〜0.1μg/ml程度含有させるのがよい。
又、上記単離した化合物を含有する食品とする場合、健康食品や抗腫瘍活性を有する機能食品とすることができる。食品中の上記単離した化合物の量は特に限定されないが、0.0001〜0.1μg/ml程度含有させるのがよい。
本発明によれば、キョウチクトウやショウキズイセンから単離された成分を有効成分として含有することにより、抗腫瘍活性が高く、副作用が少ない抗腫瘍剤が提供される。特に、ヒトの大腸癌、胃癌及び肺癌細胞に対してほぼ同等に高い癌細胞殺傷活性を示し、その有効成分は分子量の低い物質によって構成されていることが推定された。そして、癌細胞致死効果は、陽性対照に用いたマイトマイシンCよりも10倍以上高いことが示された。
このように本発明によれば、各種腫瘍、特に、大腸癌、胃癌および肺癌に対して優れた抗腫瘍剤が提供される。
次に本発明を実施例により詳細に説明する。
このように本発明によれば、各種腫瘍、特に、大腸癌、胃癌および肺癌に対して優れた抗腫瘍剤が提供される。
次に本発明を実施例により詳細に説明する。
実施例1
沖縄県北部地区に自生しているキョウチクトウ科のキョウチクトウの葉と茎を無乾燥の生の状態で秤量し、包丁でほぼ数ミリ程度の幅になるよう細切した。これに等重量の蒸留水を加えた上で市販の大型ミキサーを用いて毎分10,000回転で10分間処理した。この混合物を15〜50ml容量のプラスチック遠心管に分注し、ベックマンの遠心機(GS-15R)を用いて毎分5,000回転で60分間遠心した。これを上記植物成分の粗画総成分として、さらにザルトリウスのミニザルト(0.45μm)で濾過滅菌してキョウチクトウの水抽出液を得た。
この水抽出液550ml(エキス4.73g含む)を酢酸エチル/水で分配した。酢酸エチル層(0.53g)にヒト癌細胞に対する増殖抑制の効果が認められたので、これを逆相カラムクロマトグラフィー(担体;ODS、溶媒;水/メタノール混合溶媒、減圧・吸引)で5つに分画し、活性画分(Fr.2-5)を得た。この画分(Fr.2-5、155.0mg)について、高速液体クロマトグラフィー(カラム;ODS,溶媒;CH3CN/50mM KH2PO4,pH4.8=4.5/5.5、試料負荷量3mg/50μl、流速2.0ml/min、圧力52kgf/cm2、検出器UV203nm Range1.0、カラム10mm×25mm、5μm(RP18))で分離精製を進め、さらに溶媒条件を少し変えて(CH3CN/50mM KH2PO4,pH4.8=4/6)、5つの活性成分(1.5〜5.1mg)を単離した。
単離されたキョウチクトウ由来のそれぞれの物質の分画位置を図1に示したが、単離された各活性成分についてNMRで測定し(H, C, H-H COSY, DEPT90, DEPT135, HMQC, HMBC, DFNOE)、同時にMSスペクトル解析(APCI)も実施した。その結果、キョウチクトウより抽出した5つの活性成分はいずれもステロイド配糖体であり、アグリコンの構造は17位に不飽和5員環ラクトンをもつカルデノライド型(Cardenolide)で、3位に糖分子が結合していることが明らかとなった。
沖縄県北部地区に自生しているキョウチクトウ科のキョウチクトウの葉と茎を無乾燥の生の状態で秤量し、包丁でほぼ数ミリ程度の幅になるよう細切した。これに等重量の蒸留水を加えた上で市販の大型ミキサーを用いて毎分10,000回転で10分間処理した。この混合物を15〜50ml容量のプラスチック遠心管に分注し、ベックマンの遠心機(GS-15R)を用いて毎分5,000回転で60分間遠心した。これを上記植物成分の粗画総成分として、さらにザルトリウスのミニザルト(0.45μm)で濾過滅菌してキョウチクトウの水抽出液を得た。
この水抽出液550ml(エキス4.73g含む)を酢酸エチル/水で分配した。酢酸エチル層(0.53g)にヒト癌細胞に対する増殖抑制の効果が認められたので、これを逆相カラムクロマトグラフィー(担体;ODS、溶媒;水/メタノール混合溶媒、減圧・吸引)で5つに分画し、活性画分(Fr.2-5)を得た。この画分(Fr.2-5、155.0mg)について、高速液体クロマトグラフィー(カラム;ODS,溶媒;CH3CN/50mM KH2PO4,pH4.8=4.5/5.5、試料負荷量3mg/50μl、流速2.0ml/min、圧力52kgf/cm2、検出器UV203nm Range1.0、カラム10mm×25mm、5μm(RP18))で分離精製を進め、さらに溶媒条件を少し変えて(CH3CN/50mM KH2PO4,pH4.8=4/6)、5つの活性成分(1.5〜5.1mg)を単離した。
単離されたキョウチクトウ由来のそれぞれの物質の分画位置を図1に示したが、単離された各活性成分についてNMRで測定し(H, C, H-H COSY, DEPT90, DEPT135, HMQC, HMBC, DFNOE)、同時にMSスペクトル解析(APCI)も実施した。その結果、キョウチクトウより抽出した5つの活性成分はいずれもステロイド配糖体であり、アグリコンの構造は17位に不飽和5員環ラクトンをもつカルデノライド型(Cardenolide)で、3位に糖分子が結合していることが明らかとなった。
比較対照
すでに抗癌剤として広く使用されている市販のマイトマイシンC(協和発酵)を1ml当たり1mgになるよう−PBSに溶解させたものを、比較対照として検査に供した。
細胞と培養
ヒトの大腸癌細胞(HT-29)、胃癌細胞(MKN1)及び肺癌細胞(A549)は(財)癌研究会癌化学療法センター分子薬理部の矢守隆夫博士から分与を受け、それぞれの細胞を、5%ウシ胎児血清を含む市販のRPMI-1640(GIBCO)の培地を用い25cm2フラスコ(イワキ)中で継代維持した。
すでに抗癌剤として広く使用されている市販のマイトマイシンC(協和発酵)を1ml当たり1mgになるよう−PBSに溶解させたものを、比較対照として検査に供した。
細胞と培養
ヒトの大腸癌細胞(HT-29)、胃癌細胞(MKN1)及び肺癌細胞(A549)は(財)癌研究会癌化学療法センター分子薬理部の矢守隆夫博士から分与を受け、それぞれの細胞を、5%ウシ胎児血清を含む市販のRPMI-1640(GIBCO)の培地を用い25cm2フラスコ(イワキ)中で継代維持した。
評価用細胞の培養
直径100mmプラスチックシャーレ(イワキ)に上記HT-29、MKN1及びA549細胞を、5%ウシ胎児血清を含むRPMI-1640培地で培養し、2日後に細胞をマイナス燐酸緩衝食塩水(−PBS)で洗滌、これにトリプシン−EDTA(GIBCO)を加えて細胞を分散、次いで5%ウシ胎児血清を含むRPMI-1640に浮遊させ細胞数を算定した。上記3種の細胞濃度は105cells /mlと定め、96穴(ウェル)の細胞培養用プラスチックプレート(イワキ)の1ウェルにつき0.1mlずつ分注した。例えば、各プレートのA列とH列、番号プレート1列と2列には培地のみ、2番から11番、B列からG列までに各試験用細胞を分注して、37℃で24時間培養した。
直径100mmプラスチックシャーレ(イワキ)に上記HT-29、MKN1及びA549細胞を、5%ウシ胎児血清を含むRPMI-1640培地で培養し、2日後に細胞をマイナス燐酸緩衝食塩水(−PBS)で洗滌、これにトリプシン−EDTA(GIBCO)を加えて細胞を分散、次いで5%ウシ胎児血清を含むRPMI-1640に浮遊させ細胞数を算定した。上記3種の細胞濃度は105cells /mlと定め、96穴(ウェル)の細胞培養用プラスチックプレート(イワキ)の1ウェルにつき0.1mlずつ分注した。例えば、各プレートのA列とH列、番号プレート1列と2列には培地のみ、2番から11番、B列からG列までに各試験用細胞を分注して、37℃で24時間培養した。
評価方法
キョウチクトウから単離した物質それぞれを1ml当り1mgとなるように100%エチルアルコールと蒸留水を1:1の割合で加えて溶解したものと比較対照のマイトマイシンCを血清の入っていないGIBCOのMinimum Essential Medium(MEM)で10-2に希釈し、各ウェルに100μlずつ分注した。各検体につき2列のウェルを用意し、B、C列の11番から8番目に被検体の10-1、10-2、10-3、10-4希釈液を、さらに2番、3番、4番、5番ウェルに10-5、10-6、10-7、10-8希釈液を添加、6番と7番目のウェルには培地のみを分注してそれぞれの被検体の対照とした。同様な手順に沿って、DとE列、FとG列に被検体の希釈液シリーズを配した。被検体を分注して2日間培養後、各ウェルに50%のトリクロロ酢酸(TCA)を50μl加えて4℃で1時間静置した。次に水道水を200μl加えて5回洗滌してプレートを乾燥、それぞれのウェルにスルフォローダミン染色液を50μl加えて10分間静置、続いて1%酢酸を100μlずつ加えて5回洗滌してプレートを乾燥させた。最後に、各プレートに10mMのトリス(Tris[hydroxymethyl]aminomethane)液150μlを加えて毎分750回転で5分間振り、525nmの波長で吸光度を測定した。細胞の生存率は次のように算定した。
細胞の生存率 = 100×(各希釈点の被検体の平均吸光度−各希点に対応する培地対照の平均の吸光度)/(細胞対照の平均吸光度−各希釈点に対応する培地対照の平均の吸光度)
大腸癌(HT-29)、胃癌(MKN1)及び肺癌(A549)細胞に対する殺傷効果についての結果を化合物の分子式と共に表−1に示す。
表1から明らかなように、キョウチクトウから単離した物質であるステロイド配糖体(Nerigoside, Oleandrigenin sarmentoside, Oleaside A, Oleandrin, 8β-Hydroxyodoroside A)についてヒトがん細胞の増殖を抑制する効果が認められた。つまり、C32H48O9の分子式を有するNerigosideの大腸癌、胃癌に対する殺傷効果はそれぞれlog103.85、log103.84並びにlog104.28で陽性対照に用いた抗癌薬のマイトマイシンよりも有意義に高いことがわまる(表1)。同様に、C32H48O9の分子式を有するOleadrigenin sarmentoside、C30H44O7の分子式のOleaside A、C32H48O9の分子式のOleandrin並びにC30H46O8の分子式を有する8β-Hydroxyodoroside Auも3つの癌細胞に対して比較的高い癌細胞殺傷効果を示し、その範囲はlog103.10 からlog105.41の50%細胞殺傷率であった。
キョウチクトウから単離した物質それぞれを1ml当り1mgとなるように100%エチルアルコールと蒸留水を1:1の割合で加えて溶解したものと比較対照のマイトマイシンCを血清の入っていないGIBCOのMinimum Essential Medium(MEM)で10-2に希釈し、各ウェルに100μlずつ分注した。各検体につき2列のウェルを用意し、B、C列の11番から8番目に被検体の10-1、10-2、10-3、10-4希釈液を、さらに2番、3番、4番、5番ウェルに10-5、10-6、10-7、10-8希釈液を添加、6番と7番目のウェルには培地のみを分注してそれぞれの被検体の対照とした。同様な手順に沿って、DとE列、FとG列に被検体の希釈液シリーズを配した。被検体を分注して2日間培養後、各ウェルに50%のトリクロロ酢酸(TCA)を50μl加えて4℃で1時間静置した。次に水道水を200μl加えて5回洗滌してプレートを乾燥、それぞれのウェルにスルフォローダミン染色液を50μl加えて10分間静置、続いて1%酢酸を100μlずつ加えて5回洗滌してプレートを乾燥させた。最後に、各プレートに10mMのトリス(Tris[hydroxymethyl]aminomethane)液150μlを加えて毎分750回転で5分間振り、525nmの波長で吸光度を測定した。細胞の生存率は次のように算定した。
細胞の生存率 = 100×(各希釈点の被検体の平均吸光度−各希点に対応する培地対照の平均の吸光度)/(細胞対照の平均吸光度−各希釈点に対応する培地対照の平均の吸光度)
大腸癌(HT-29)、胃癌(MKN1)及び肺癌(A549)細胞に対する殺傷効果についての結果を化合物の分子式と共に表−1に示す。
表1から明らかなように、キョウチクトウから単離した物質であるステロイド配糖体(Nerigoside, Oleandrigenin sarmentoside, Oleaside A, Oleandrin, 8β-Hydroxyodoroside A)についてヒトがん細胞の増殖を抑制する効果が認められた。つまり、C32H48O9の分子式を有するNerigosideの大腸癌、胃癌に対する殺傷効果はそれぞれlog103.85、log103.84並びにlog104.28で陽性対照に用いた抗癌薬のマイトマイシンよりも有意義に高いことがわまる(表1)。同様に、C32H48O9の分子式を有するOleadrigenin sarmentoside、C30H44O7の分子式のOleaside A、C32H48O9の分子式のOleandrin並びにC30H46O8の分子式を有する8β-Hydroxyodoroside Auも3つの癌細胞に対して比較的高い癌細胞殺傷効果を示し、その範囲はlog103.10 からlog105.41の50%細胞殺傷率であった。
実施例2
実施例1と同様にして得たショウキズイセンの水抽出液2L(植物部位;球根および葉、約1kg生重)を減圧下、100mlまで濃縮した後、高速液体クロマトグラフィー(C18カラム)にかけて、24画分を得た。このうち6つの画分についてヒト癌細胞の増殖抑制効果が認められたので、さらに高速液体クロマトグラフィー(C18カラム)による分離精製を進め、3つの活性成分を単離した。
単離されたショウキズイセンの画分について、HPLCにおける分画パターンを図2に示したが、3種の物質はシャープなピークを形成しており、物質の純度の高さを示唆した。そこで、3つの活性部分についてNMRの全システム法で測定し、同時にMSスペクトル測定も実施した。その結果、ショウキズイセンから単離された活性成分は、ヒガンバナ科に特徴的なリコリン型アルカロイドの基本骨格を持っていることが明らかになった。このうちの2種の既知化合物(Narciclasine,trans-dihydronarciclasine)であったが、残る1つは新規化合物と推定された。この新規化合物は、すでに知られている7-deoxynariciclasineの2量体と推定されBisdeoxynarciclasineと命名した。それぞれの3種の化合物の分子式を表1に示した。
尚、新規化合物であるBisdeoxynarciclasineの13C−NMRデータ(DMSO-d6中、δ)を以下に示す。
C-1: 123.6; C-2: 69.18; C-3: 72.5; C-4: 69.15; C-4a: 52.7; C-6: 163.1; C-6a: 121.9; C-7: 106.1; C-8: 151.0; C-9: 147.7; C-10: 103.3; C-10a: 131.7; C-10b: 130.0; C-14: 101.8
実施例1と同様にして得たショウキズイセンの水抽出液2L(植物部位;球根および葉、約1kg生重)を減圧下、100mlまで濃縮した後、高速液体クロマトグラフィー(C18カラム)にかけて、24画分を得た。このうち6つの画分についてヒト癌細胞の増殖抑制効果が認められたので、さらに高速液体クロマトグラフィー(C18カラム)による分離精製を進め、3つの活性成分を単離した。
単離されたショウキズイセンの画分について、HPLCにおける分画パターンを図2に示したが、3種の物質はシャープなピークを形成しており、物質の純度の高さを示唆した。そこで、3つの活性部分についてNMRの全システム法で測定し、同時にMSスペクトル測定も実施した。その結果、ショウキズイセンから単離された活性成分は、ヒガンバナ科に特徴的なリコリン型アルカロイドの基本骨格を持っていることが明らかになった。このうちの2種の既知化合物(Narciclasine,trans-dihydronarciclasine)であったが、残る1つは新規化合物と推定された。この新規化合物は、すでに知られている7-deoxynariciclasineの2量体と推定されBisdeoxynarciclasineと命名した。それぞれの3種の化合物の分子式を表1に示した。
尚、新規化合物であるBisdeoxynarciclasineの13C−NMRデータ(DMSO-d6中、δ)を以下に示す。
C-1: 123.6; C-2: 69.18; C-3: 72.5; C-4: 69.15; C-4a: 52.7; C-6: 163.1; C-6a: 121.9; C-7: 106.1; C-8: 151.0; C-9: 147.7; C-10: 103.3; C-10a: 131.7; C-10b: 130.0; C-14: 101.8
ショウキズイセンからの単離物質それぞれを水又はDMSOで1ml当り1mgとなるように溶解したものを用いた以外は実施例1と同様にして、大腸癌(HT-29)、胃癌(MKN1)及び肺癌(A549)細胞に対する殺傷効果を調べた。結果を化合物の分子式と共に表−1に示す。
表1から明らかなように、ショウキズイセン由来の3つの抗癌物質の活性の面から見た特徴は全体的に高い癌細胞殺傷率を示し、明らかに抗癌薬のマイトマイシンよりも高かった。特に注目されるのは、Narciclasine で、大腸癌にlog107.71、胃癌にlog106.35、肺癌に対してはlog106.98の値を示し、マイトマイシンと比較したとき1000〜10,000倍も高い抗癌活性を示した。
表1から明らかなように、ショウキズイセン由来の3つの抗癌物質の活性の面から見た特徴は全体的に高い癌細胞殺傷率を示し、明らかに抗癌薬のマイトマイシンよりも高かった。特に注目されるのは、Narciclasine で、大腸癌にlog107.71、胃癌にlog106.35、肺癌に対してはlog106.98の値を示し、マイトマイシンと比較したとき1000〜10,000倍も高い抗癌活性を示した。
以上のことから、植物から単離された上記化合物(物質)を利用したさまざまな形態の健康食品、機能性食品、あるいは健康及び機能性飲料製品を開発することによって癌の予防と治療に利用できる。尚、具体的な食品としては、ジュースなどの各種ドリンク製品、お茶類、各種御菓子、錠剤型食品、粉末状食品、健康機能食品などがあげられる。
Claims (7)
- ナリゴシド、オレアンドリゲニン サルメントシド、オレアシドA、オレアンドリン、8β−ヒドロキシオドロシドA、ナルシクラシン、trans−ジヒドロナルシクラシン及びビスデオキシナルシクラシンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする抗腫瘍剤。
- ナリゴシド、オレアンドリゲニン サルメントシド、オレアシドA、オレアンドリン及び8β−ヒドロキシオドロシドAからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する請求項1記載の抗腫瘍剤。
- ナルシクラシン、trans−ジヒドロナルシクラシン及びビスデオキシナルシクラシンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する請求項1記載の抗腫瘍剤。
- 他の植物成分を含有しない請求項1〜3のいずれか1項記載の抗腫瘍剤。
- 大腸癌、胃癌又は肺癌を治療するための請求項1〜4のいずれか1項記載の抗腫瘍剤。
- 抗腫瘍剤を調製するための単離されたナリゴシド、オレアンドリゲニン サルメントシド、オレアシドA、オレアンドリン、8β−ヒドロキシオドロシドA、ナルシクラシン、trans−ジヒドロナルシクラシン及びビスデオキシナルシクラシンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物の使用。
- 請求項1〜4のいずれか1項記載の化合物を含有する食品。
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