本発明の製造方法では、4種類の光学異性体を2種類のラセミ体A及びラセミ体Bの混合物として含むジヒドロベンゾピラン化合物の粗体を精製して高純度化された前記ジヒドロベンゾピラン化合物を製造する。ここで目的物となるジヒドロベンゾピラン化合物は、分子内に2つの不斉炭素を有するジヒドロベンゾピラン化合物であれば特に限定されず、そのような化合物を例示すれば、3,4−ジヒドロ−8−(2−ヒドロキシ−3−イソプロピルアミノ)プロポキシ−3−ニトロキシ−2H−1−ベンゾピラン、3,4−ジヒドロ−7−(2−ヒドロキシ−3−イソプロピルアミノ)プロポキシ−3−ニトロキシ−2H−1−ベンゾピラン、3,4−ジヒドロ−6−(2−ヒドロキシ−3−イソプロピルアミノ)プロポキシ−3−ニトロキシ−2H−1−ベンゾピラン、3,4−ジヒドロ−5−(2−ヒドロキシ−3−イソプロピルアミノ)プロポキシ−3−ニトロキシ−2H−1−ベンゾピラン等を挙げることができる。しかしながら、医薬原体として有用性が特に高いという理由から、本発明の方法は、ニプラジロール、即ち、3,4−ジヒドロ−8−(2−ヒドロキシ−3−イソプロピルアミノ)プロポキシ−3−ニトロキシ−2H−1−ベンゾピランの製造方法として適用するのが特に好ましい。
本発明の製造方法では、先ず、4種類の光学異性体を2種類のラセミ体A及びラセミ体Bの混合物として含むジヒドロベンゾピラン化合物の粗体が、比誘電率が6〜35である有機溶媒有機溶媒に溶解している溶液を調製する。前記したように分子内に2つの不斉炭素を有するジヒドロベンゾピラン化合物には4種の光学異性体が存在するが、本発明の原料となる粗体には4種の光学異性体は2種のラセミ体として含まれている必要がある。このような粗体の製造方法は特に限定されるものではなく、たとえばジヒドロベンゾピラン化合物がニプラジロールである場合には、次のような方法により好適に製造することができる。
即ち、まず、3,4−ジヒドロ−8−ヒドロキシ−3−ニトロキシ−2H−1−ベンゾピラン(フェノール体)とエピハロヒドリンとを反応させて、3,4−ジヒドロ−8−(2,3−エポキシ)プロポキシ−3−ニトロキシ−2H−1−ベンゾピラン(エポキシ体)を得、次いで該エポキシ体とイソプロピルアミンとを反応させることによってニプラジロールの粗体を得ることができる。
エポキシ体を得る工程{工程(1)ともいう}において出発原料となるフェノール体としては、公知の方法、例えば特公平1−53245号公報に記載された方法によって得られるものが使用できる。また、エピハロヒドリンとしては、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン等を用いることが出来るが、生成物の純度の点から、エピクロロヒドリンを用いるのが好ましい。用いるエピハロヒドリンの使用量は、純度の点からフェノール体1モルに対して0.5〜10モル、特に0.8〜5モルとするのが好ましい。
工程(1)におけるフェノール体とエピハロヒドリンとの反応は、両者をアルカリまたは4級アンモニウム塩の存在下に混合することにより行うことができる。アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等のアルカリ金属からなるアルコキシド等のアルカリ性化合物を用いることが出来る。これらアルカリは、通常水に溶解して使用される。また、4級アンモニウム塩としては、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド等を用いることが出来る。アルカリまたは4級アンモニウム塩の使用量は、収率、純度の点から、アルカリに関してはフェノール体1モルに対して、0.5〜5モル、特に0.8〜3モル使用するのが好ましく、4級アンモニウム塩に関しては、フェノール体1モルに対して、0.01〜5モル、特に0.1〜3モル使用するのが好ましい。
反応は、通常、水;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルアセトアミド等のN−アルキル置換アミド系溶媒;ジメチルスルホキシド;メチルセルソルブ、ジメチルセルソルブ、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のグライム系溶媒;ジオキサン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル等のその他極性溶媒;またはこれらの混合溶媒からなる溶媒若しくは分散媒中で行なわれる。溶媒量は、適宜調整すれば良いが、通常フェノール体1質量部に対して、好ましくは0.5〜20質量部である。
反応は、通常0℃〜溶媒若しくは分散媒の沸点の温度範囲で1時間〜3日程度攪拌することにより行われる。また、反応は、大気圧下、減圧下、加圧下のいずれでおこなってもよい。
反応に使用する反応容器としては、たとえばコルベン、三口ガラス容器、四つ口ガラス容器、ステンレス反応器、グラスライニング反応器、樹脂ライニング反応器など、反応器から金属イオン、特に重金属イオンが混入しない反応器を用いるのが好ましい。また、反応器は、反応温度の制御を高精度で行うために、温度計、温度センサーが装着可能なものが好ましい。フェノール体、エポキシ体およびジヒドロベンゾピラン化合物は光による分解しやすいため、ガラス製の反応器を使用する場合には褐色ガラス製のものを使用するかアルミホイルなどを使用して遮光するのが好ましい。
さらに、反応は攪拌下で行うのが好ましく、攪拌方法としてはマグネティックスターラー、メカニカルスターラー又は振動攪拌が採用される。スターラーピースの形状や攪拌翼形状は反応器の種類や必要とする攪拌強度等に応じて適宜選択すればよい。好適に使用できる攪拌翼を例示すれば、ファウドラー翼、マックスブレンド翼、フルゾーン翼、ヘリカル翼、スクリュー翼、ディスクタービン翼等を挙げることができる。
このようにして反応を行うことにより、エポキシ体が生成するが、このとき得られるエポキシ体には一般に水溶性不純物として、未反応のエピハロヒドリンが、エポキシ体の0.02〜10倍量(ここでの含有比は、1H-NMRにおける各化合物の特性ピークの面積強度比。以下同じ。)含まれている。
ニプラジロール粗体を得るためには、工程(1)で得られたエポキシ体とイソプロピルアミンとを反応させる{工程(2)}。工程(2)の反応には、工程(1)で得られたエポキシ体を含む反応液から必要に応じて溶媒を留去し、得られたエポキシ体の粗体をそのまま用いても良いが、水溶性不純物、特に未反応のエピクロロヒドリンの残存量が多い場合には、工程(2)で得られるニプラジロール粗体の精製を容易とするため、エピクロロヒドリンを除去することが好ましい。工程(1)で得られたエポキシ体の粗体をそのまま用いてイソプロピルアミンとの反応を行った場合には、未反応のエピハロヒドリンとイソプロピルアミンとの反応により、不純物が生成し、ニプラジロールの精製に労力を要す場合がある。このため、工程(2)に供されるエポキシ体の粗体に含まれるエピハロヒドリンの含有比を0.2倍量以下、特に0.05倍量以下にするのが好適である。
エピハロヒドリンを含むエポキシ体の粗体からエピハロヒドリンを除去する方法としては、工程(1)の反応で得られた反応液を水と混合しエポキシ体粗体を析出させる方法、反応液を濃縮して得られた残渣を晶析あるいはカラムクロマトグラフィーにて処理する方法を用いることが出来る。操作が簡便であること及びエピハロヒドリンの除去効率の点から、反応液を水と混合しエポキシ粗体を析出される方法が好ましい。この場合、混合する水の量は特に制限ないが、析出して得られる粗体の性状の点から、反応液100質量部に対して水10〜1000質量部とするのが好ましい。水は反応液に添加しても良いし、逆に水に反応液を添加しても良い。いずれの場合においても、処理温度は0〜80℃とするのが好ましい。温度が高いと析出物の粘性が高くなる傾向があることから、特に0〜35℃とするのが好ましい。また、本処理においては、被添加液(反応液または水)を攪拌しながら添加液(各々、水または反応液)を加えることにより、より効率的にエピハロヒドリンを除去することが出来る。処理時間は、通常0.5〜20時間である。得られた析出物は、ろ過、さらに必要に応じて乾燥を行えばよい。乾燥方法としては、常圧または減圧下、加熱乾燥を用いることができる。このような方法によりエピハロヒドリンの含有比が0.2倍量以下、特に0.05倍量以下のエポキシ体を得ることができる。
工程(2)では上記工程(1)で得られたエポキシ体とイソプロピルアミンとを混合することにより反応させて、ニプラジロールの粗体を得る。上記反応で用いるイソプロピルアミンの量は、収率、純度の点からエポキシ体1モルに対して、0.5〜500モル、特に20〜100モルとするのが好ましい。用いるイソプロピルアミン量が多い方が、得られるニプラジロールの純度が高くなる傾向があるが、多すぎると反応バッチ当たりのニプラジロール収量が減る傾向がある。
反応は、通常、無溶媒;水;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルアセトアミド等のN−アルキル置換アミド系溶媒;ジメチルスルホキシド;メチルセルソルブ、ジメチルセルソルブ、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のグライム系溶媒;ジオキサン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル等のその他極性溶媒;またはこれらの混合溶媒からなる溶媒若しくは分散媒中で行なわれる。これらの溶媒の中で、取り扱いやすさの点からアルコール類が好ましい。アルコール類の中でも、メタノール、エタノール又はイソプロピルアルコールが好ましく、特にメタノール又はエタノールが好ましい。溶媒量は、通常、エポキシ体の粗体1質量部に対して、1〜500質量部、好ましくは10〜200質量部である。
反応は、通常0℃〜溶媒若しくは分散媒の沸点の温度範囲で1時間〜3日程度攪拌することにより行われる。
このような反応を行うことによりラセミ体A(a体とb体のラセミ体):ラセミ体B(c体とd体のラセミ体)=45:55〜55:45の範囲であるニプラジロールの粗体を得ることができる。該粗体には、通常、3〜20%、好ましくは3〜10%の非水溶性不純物が含まれる。該非水溶性不純物は、エポキシ体、エポキシ体とフェノール体との反応生成物などであると考えられ、その存在はHPLC分析、1H−NMR分析等により確認することができる。また、該不純物が非水溶性であることは水又は塩酸酸性の水溶液10gに、該不純物0.1gを添加攪拌した際に、溶解しないことにより確認することができる。
上記反応により得られたニプラジロール粗体は、単離してから次工程に供するのが好適である。ニプラジロール粗体の単離は、反応液からイソプロピルアミン及び溶媒を留去することにより好適に行うことができる。この場合、反応液中のニプラジロールの分解を抑制するため、溶媒留去は減圧条件下において、60℃以下、より好ましくは40℃以下で行うことが望ましい。また、イソプロピルアミン及び溶媒の留去により得られた残渣に含まれる残存イソプロピルアミンを留去するため、低沸点溶媒を添加し、再度溶媒留去を行うことが効果的である。ここで低沸点溶媒とは、沸点120℃以下の溶媒であり、例示すれば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類;ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の炭化水素類、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル等のエステル類;ジオキサン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル等のその他極性溶媒;を挙げることが出来る。反応液の溶媒留去後、あるいはさらに低沸点溶媒を添加し再度溶媒留去により得られたニプラジロール粗体は、通常、固体またはスラリー状態である。なお、このような単離操作を行ってもニプラジロールの粗体における前記非水溶性不純物の含有量及びラセミ体比はほとんど変化しない。
本発明の製造法では、このようにして得られたニプラジロール粗体のような、“4種類の光学異性体を2種類のラセミ体A及びラセミ体Bの混合物として含むジヒドロベンゾピラン化合物の粗体”を比誘電率が6〜35である有機溶媒に溶解させて原料溶液とし、該原料溶液に貧溶媒を添加して、高純度化されたジヒドロベンゾピラン化合物であって該化合物に含まれるラセミ体Aとラセミ体Bの存在比{ラセミ体A(mol)/ラセミ体B(mol)}が前記粗体に含まれるラセミ体Aとラセミ体Bの存在比の0.8〜1.2倍であるジヒドロベンゾピラン化合物の結晶を析出させる。原料溶液の溶媒として誘電率6〜35の有機溶媒以外の有機溶媒を用いた場合には得られる結晶のラセミ体の存在比が粗体のラセミ体の存在比と大きく変わってしまう。また、誘電率6〜35の有機溶媒を溶媒とすることで得られる結晶の結晶性が良くなり、粒径制御も容易となる。
このとき、前記したような方法により得られた粗体をそのまま本発明の製造方法における精製工程の原料として使用してもよいが、より高純度のものが得られるという観点から、本発明の製法における精製工程に供する前に、該粗体に含まれる不純物をできるだけ除去しておくのが好ましい。ただし、この段階における不純物の除去では、“不純物を選択的に抽出する方法”などの粗体のラセミ体比を大きく変えない方法を採用する必要がある。たとえば、粗体が前記したような方法により単離されたニプラジロールの粗体(単離ニプラジロール粗体ともいう)である場合には、次のような方法により好適に不純物除去を行うことができる。
即ち、単離ニプラジロール粗体と水及び非水溶性有機溶媒を酸の存在下に混合し、ニプラジロールを塩に転化させて水相に抽出した後に、当該水相を分離し、分離された水相のpHを7.1〜12に調整することにより当該水相に含まれるニプラジロールの塩をニプラジロールに転化させると共に、得られたニプラジロールを、有機溶媒を用いて抽出することによりラセミ体比をほとんど変えることなく非水溶性不純物を選択的に除去することができる。
前記抽出工程においてニプラジロールは、水及び酸と接触することにより水溶性の塩となり水相に移動するので、非水溶性有機溶媒に易溶な前記非水溶性不純物は非水溶性有機溶媒により抽出除去される。単離ニプラジロール粗体においては有機性の水溶性不純物は予め除去されているので、塩の形で水層に抽出されたニプラジロールは、水溶性不純物、非水溶性不純物の含有量がかなり少ないものとなっている。しかもニプラジロールは定量的に塩となってそのほとんど全てが水相に移行するので、引続く析出工程で得られるニプラジロールのラセミ体比はラセミ体A:ラセミ体B=45:55〜55:45の範囲となる。
前記抽出工程で使用する酸としては、水中でのpKaが−15〜14を示すものであれば公知の無機酸及び有機酸が特に制限なく使用できる。好適に使用できる酸を例示すれば、無機酸としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸等の強酸;リン酸、硼酸、亜硝酸、亜硫酸等の弱酸を挙げることができる。また、これら酸のうち多価酸については、その一部の酸基が塩を形成したものも酸として使用可能である。このような多価酸の金属塩としては、例えば、硫酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸一水素カリウム、硼酸二水素ナトリウム等を挙げることが出来る。また、有機酸としては、有機カルボン酸、有機スルホン酸、有機スルフィン酸、フェノール類、1,3−ジケトン類、イミド類、オキシム類、芳香族スルホンアミド、第1級および第2級のニトロ化合物を挙げることができる。また、これらの酸のうち多価酸については、その一部の酸基が塩を形成したものも酸として使用可能である。有機カルボン酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、アスコルビン酸、ヒドロキシ酢酸、安息香酸等の1価カルボン酸、酒石酸、乳酸、蓚酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸等の多価の有機カルボン酸を挙げることができる。また他の有機酸を例示すれば、有機スルホン酸としては、メタンスルホン酸、カンファースルホン酸、ベンゼンスルホン酸等;有機スルフィン酸としては、メタンスルフィン酸、カンファースルフィン酸、ベンゼンスルフィン酸等;フェノール類としては、フェノール、クレゾール、カテコール、ピロガロール等;1,3−ジケトンとしては、アセチルアセトン、シクロヘキサン−1,3−ジケトン、アセト酢酸エチルエステル等を挙げることが出来る。
これらの酸の中で、精製処理後得られるニプラジロールの純度の点から、pKaが−3〜11の酸であることが好ましく、特にpKaが4〜6の酸であることが好ましい。pKaが−3〜11である酸としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、硼酸、有機カルボン酸、有機スルホン酸、有機スルフィン酸、フェノール類、1,3−ジケトン類、イミド類、オキシム類、芳香族スルホンアミド、第1級および第2級のニトロ化合物、およびこれら酸に含まれる多価酸の一部の酸基が塩を形成している酸等を挙げることが出来る。また、pKaが4〜6である酸としては、有機カルボン酸を挙げることが出来る。これらの有機カルボン酸の中で、純度或いは回収率の点から、特に酢酸および水酸基を有する有機カルボン酸が好ましい。水酸基を有する有機カルボン酸としては、ヒドロキシ酢酸、酒石酸、乳酸、リンゴ酸、アスコルビン酸を挙げることが出来る。
また、ニプラジロールを含む水相から、有機相にニプラジロールを抽出する際に使用する非水溶性有機溶媒としては、水と完全混和しない有機溶剤であれば制限なく用いることが出来る。例えば、ブタノール等のアルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル等のエステル類;塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭素類;ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素類;およびこれらの混合溶剤からなる溶媒が挙げられる。これらの溶媒の中で、ニプラジロールに対する溶解性が高い点から、酢酸エチル等のエステル類、塩化メチレン等のハロゲン化炭素類が好ましく、さらに毒性が低い点から、特に酢酸エチル等のエステル類が好ましい。用いる有機溶剤の量は、ニプラジロールに対する溶解性を考慮し、適宜調整すればよい。1回の抽出処理に用いるエポキシ体の粗体1重量部に対して、例えば、塩化メチレンの場合には2〜50重量部、酢酸エチルの場合には、10〜200重量部用いれば、十分である。
抽出工程において使用する水、非水溶性有機溶媒、及び酸の量は、特に制限はないが、反応に用いたエポキシ体粗体1質量部に対して、水は1〜100質量部、特に5〜20質量部であるのが好適であり、非水溶性有機溶媒は1〜1000質量部、特に5〜100質量部であるのが好適である。また、酸の使用量は、使用する酸に含まれるプロトンのモル数が反応に用いたエポキシ体のモル数の0.01〜100倍、さらには0.5〜3倍となる量使用するのが好適である。抽出効率及び不純物除去の点から、酸の使用量は、水相のpHが0.1〜6.9、特に4〜6となるように適宜調整することが好ましい。
抽出工程において各成分を混合する場合の手順は特に限定されるものではないが、混合しやすいという理由から、ニプラジロール粗体に非水溶性有機溶媒を添加し、ニプラジロール粗体を溶解した後、予め酸を溶解した水溶液を添加するのが好ましい。塩に転化したニプラジロールを水相に抽出し、水相を分離するには、例えば、分液ロートを用いて混合液を振とうした後、或いは反応釜を用いて混合液を攪拌した後、静置して有機相と水相とに2層分離させ、水相のみを回収すればよい。非水溶性不純物の除去率の点から、このような抽出操作を2回以上、特に2〜6回繰り返すのが好ましい。
析出工程では、この様にして得られたニプラジロール塩を含む水相のpHを7.1〜12、好ましくはpHを7.5〜9.5の範囲に調整することにより塩をニプラジロール転化させると共に得られたニプラジロールを、有機溶媒を用いて抽出する。このとき水相のpH調整には、一般に用いられる塩基性物質を用いればよい。該塩基性物質としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸水素ナトリウム等の炭酸水素塩、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸塩、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等のアルカリ金属からなるアルコキシド等のアルカリ性化合物、或いはこれらの水溶液を使用することができる。
抽出操作は、前記抽出工程における抽出と同様に分液ロートや攪拌機付の反応釜を用いて行えばよい。抽出操作の回数は特に制限はないが、ニプラジロールの回収量の点から、1〜3回行うのが好ましい。
この様にして有機相に回収されたニプラジロールの粗体(以下、2次粗体ともいう)は、さらに活性炭処理するのが好ましい。活性炭処理を行なうことで、ニプラジロールの脱色が行われ医薬品原体としての純度が向上する。活性炭処理は2次粗体が溶解した有機層と活性炭とを接触させることにより行うことができる。このとき活性炭の使用量は、経済性およびラセミ体比の制御の観点から被処理溶液に含まれるニプラジロール2次粗体100質量部に対して0.001〜50質量部、特に0.01〜10質量部であるのが好適である。特に、50質量部を越えて活性炭を使用する場合、ラセミ体Bが活性炭に吸着されラセミ体比が大きくずれることがある。活性炭と該有機溶媒溶液との接触は攪拌による接触が好ましく、処理温度は−50〜150℃の範囲で適宜選択すればよい。
上記活性炭処理で使用する活性炭は、工業的に又は試薬として入手可能なものが制限無く使用できる。本発明で使用できる活性炭を示せば、日本ノーリット社のPK、PKDA MESY/MRX、ELORIT、AZ0、DARCO、HYDRODARCO 3000/4000、DARCO 12X20LI、DARCO12X20DC、PETRODARCO、DARCO MRX、GAC、GAC PLUS、DARCO VAPURE、GCN、C−GRANULAR等の破砕活性炭類、CA、CN、CG、DARCO KB/KBB、S−51、S−51−HF、S−51−FF、PREMIUM DARCO、DARCO GFP、HDC/HDR/HDH、GRO SAFE、FM−1、DARCO TRS、DARCO FGD、SX、SX ULTRA、SA、D−10、PN、ZN、SA−SW、W、GL、HB PLUS等の粉末活性炭類、ROW、RO、ROX、RB、R、R.EXTRA、SORBONORIT、GF 40/50、CNR、ROZ、RBAA、RBHG、RZN、RGM等の成型活性炭・添着活性炭類、PICA社の粒状活性炭類、球状活性炭類、粉末活性炭類、日本エンバイロケミカル社のモルシーボン、WHA、粒状白鷺(X2M、GM2X、GH2X、GHXUG、GS1X、GS3X、GTX、GTSX、G2X、GS2X、GAAX、MAC−W、GOC、GOX、GOHX、APRC、TAC、MAC、XRC、NCC、SRCX)等の機能性活性炭類、粒状白鷺(G2C、C2C、WH2C、W2C、WH5C、W5C、LGK−400、LGK−100、LH2C、KL、G2X、GH2X、WH2X、S2X、C2X、X7000H、X7100H、X700H−3、X7100H−3、LGK−700、DX7−3)、X−7000、X−7100、X−7000−3、X−7100−3、等の粒状活性炭類、白鷺(C、M、A、P、PHC、FAC−10)、カルボラフィン、強力白鷺、精製白鷺、精製白鷺2、特製白鷺、白鷺DO−2、白鷺DO−5、白鷺DO−11等の粉末活性炭類、ハニカムカーボ白鷺、モールドカーボン、カーボンペーパー、白鷺C−DC、カルボラフィンDC、粒状白鷺DC、アルデナイト、アルデナイトSP等の活性炭加工品類二村化学工業社のSG、SGP等の顆粒活性炭類、TA、TS、TG、TM等の造粒活性炭類、S、FC、SA1000、K、A、KA、AC、M、P、IC、IP、CB、GB、GLP、CLP、W等の粉末活性炭類、CG48B、CG48BR、CW130B、CW130A、CW130BR、CW130AR、CW480SZ、CW6100SZ、GL130A、GL240A、GM130A、GM240A、GMC等の破砕活性炭類を挙げることができる。これら活性炭の中から比表面積が前記条件を満足するものを適宜選択して使用すればよい。
これらの活性炭の中でも処理効果の観点から、CA、CN、CG、DARCO KB/KBB、S−51、S−51−HF、S−51−FF、PREMIUM DARCO、DARCO GFP、HDC/HDR/HDH、GRO SAFE、FM−1、DARCO TRS、DARCO FGD、SX、SX ULTRA、SA、D−10、PN、ZN、SA−SW、W、GL、HB PLUS、白鷺(C、M、A、P、PHC、FAC−10)、カルボラフィン、強力白鷺、精製白鷺、精製白鷺2、特製白鷺、白鷺DO−2、白鷺DO−5、白鷺DO−11、S、FC、SA1000、K、A、KA、AC、M、P、IC、IP、CB、GB、GLP、CLP、W等の粉末活性炭類、粒状白鷺(G2C、C2C、WH2C、W2C、WH5C、W5C、LGK−400、LGK−100、LH2C、KL、G2X、GH2X、WH2X、S2X、C2X、X7000H、X7100H、X700H−3、X7100H−3、LGK−700、DX7−3)、X−7000、X−7100、X−7000−3、X−7100−3等の粒状活性炭類が好ましく、中でも粉末活性炭類の精製白鷺および精製白鷺−2が特に好ましい。
活性炭処理後に活性炭を除去する方法としては、遠心分離ろ過、過圧ろ過、減圧濾過、デカンテーション、フィルタープレス等の分離方法が採用できるが、分離効率及び操作の簡便性から、ケイソウ土等のろ過助剤を使用した加圧ろ過、減圧濾過あるいはフィルタープレスにより分離するのが好適である。これら濾過方法は適宜組み合わせてもよい。ろ過助剤は水溶液中に添加してもよく、ろ過器に添加してもよく、両方組み合わせてもよい。さらに、ろ過後の有機溶媒溶液を0.1〜2.0μmのフィルターを用いた精密ろ過(メンブランフィルター、ポールフィルター)をすることがより好ましい。
このようにして活性炭を除去された、ニプラジロール粗体を含む処理液は、該処理液の溶媒が、比誘電率6〜35の有機溶媒である場合にはそのままこれを原料溶液として本発明の精製工程を行ってもよいが、原料溶液には一般に水が含まれているため、脱水操作を兼ねて、溶媒を一旦除去してニプラジロール粗体(活性炭処理後の粗体を3次粗体ともいう。該3次粗体は通常0.1〜1.5%の不純物を含む)乾固させ、得られた固体状の3次粗体を比誘電率6〜35の有機溶媒に溶解させて原料溶液とするのが好ましい。
比誘電率が6〜35の有機溶媒としては、アセトニトリル等のニトリル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸メチル、ギ酸メチル等のエステル類、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素類が挙げられる。中でも、不純物の除去という理由から、アセトニトリル等のニトリル類、アセトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸メチル、ギ酸メチル等のエステル類、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素類が好ましい。これら比誘電率が6〜35の有機溶媒の使用量は、ニプラジロール粗体100質量部に対して10〜10000質量部の範囲の中から適宜選択すればよい。
本発明の製造方法における精製工程では、このようにして調製された原料溶液に貧溶媒を添加して、高純度化されたジヒドロベンゾピラン化合物の結晶を析出させる。ここで貧溶媒とは、ニプラジロールのどの光学異性体に対する溶解度(ここでいう溶解度とは、20℃において溶媒100gに溶解しうるニプラジロールの質量(g)を意味する)も0.5(g/100g溶媒)以下であることを意味する。貧溶媒として好適に使用できる溶媒を例示すれば、ヘプタン、ヘキサン、ペンタンシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の鎖状または環状炭化水素を挙げることができる。これらの貧溶媒の添加量であるが、比誘電率6〜35の有機溶媒100質量部に対して10〜10000質量部の範囲の中から適宜選択すればよい。
貧溶媒の添加に際しては、得られる結晶の純度の観点から貧溶媒を添加後の貧溶媒共存下の溶液おいて、30分間以上溶液が均一溶液の状態を保つことが好ましい。そのためには、貧溶媒を添加時の温度を制御すればよい。貧溶媒の添加により直ちに結晶が析出した場合には、溶液を加熱して一旦析出した結晶を再溶解すればよい。
貧溶媒を加え均一溶液を確認した後、冷却し晶析操作を開始する。冷却方法は、放冷;水冷浴、氷冷浴、ドライアイス浴などの冷浴を用いた方法;ブラインを用いた方法など通常使用される冷却方法が特に制限無く採用できる。冷却速度は通常0.01〜50℃/hの範囲から適宜選択すればよい。最終的には収率、ラセミ体比の制御の観点から−78〜30℃の範囲で1時間以上攪拌し熟成すると良い。
このようにすることによってラセミ体Aとラセミ体Bの存在比{ラセミ体A(mol)/ラセミ体B(mol)}が原料液中に含まれる粗体のラセミ体Aとラセミ体Bの存在比の0.8〜1.2倍、好ましくは0.85〜1.15倍、最も好ましくは0.9〜1.1倍であるジヒドロベンゾピラン化合物の結晶が析出する。
このようにして得られたニプラジロールの結晶を含有する溶液は通常の固液分離操作によってウエット結晶を単離する。例示すると遠心分離ろ過、過圧ろ過、減圧濾過、デカンテーション、フィルタープレスがあげられる。さらに高純度のニプラジロールを得るためには、原料溶液の溶媒として使用した有機溶媒および貧溶媒を単独あるいは混合させ、リンス操作を行なうと良い。混合の比率は適宜選択すればよい。リンスの使用量は、一般的には取得するニプラジロールの体積(かさ比重)に準じて選択すればよい。
得られたニプラジロールのウエット結晶はニプラジロールの分解を防ぐために、減圧下、出来るだけ低温で有機溶剤を留去し乾燥することが好ましい。乾燥温度は、好ましくは60℃以下、さらには40℃以下である。乾燥時間は1〜100時間の範囲から適宜選択する。
このようにして単離されたニプラジロールの乾燥体は原料溶液に含まれる粗体に比べて高純度化されており、ラセミ体比は粗体と同様にラセミ体A:ラセミ体B=55:45〜45:55であるため、このままで医薬原体用途に用いることも可能である。粒径をそろえる場合は、メカニカルミキサー、ボールミル、乳鉢とうで粉砕後、ふるい等により分級しても良い。なお、得られたニプラジロールの純度及びラセミ体比は、文献(非特許文献1)記載の方法等により、分析することが出来る。
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、実施例および比較例に使用した有機溶媒の比誘電率は、以下のとおりである。エタノール(24.3)、メタノール(32.63)、イソプロピルアルコール(18.3)、ジクロロメタン(7.77)、酢酸エチル(6.02)、酢酸メチル(6.68)、ギ酸メチル(8.5)、酢酸n−ブチル(5.01)、アセトン(20.70)、トルエン(2.379)、ヘプタン(1.924)、ヘキサン(1.890)、ペンタン(1.844)。
また、ニプラジロールのHPLC純度、並びにニプラジロールのラセミ体比は、下記要領で確認を行った。
ニプラジロールのHPLC純度分析方法:
ニプラジロールの純度分析は、検出波長274nmにてHPLC分析を行った。カラムとしては、オクタデシルシリル化シリカゲル製カラムを用いて、カラム温度は約30℃、移動相としては、水/アセトニトリル/酢酸/テトラメチルアンモニウムヒドロキシド混液を混合比率が容積比で110:50:1:1となるように調整した溶液を用いた。流速1ml/minにて、分析時間2時間にて分析を行った。純度は、HPLC分析における相対面積強度(面積100%)にて、計算した。
ニプラジロールのラセミ体比:
4−ニトロ塩化ベンゾイル3gを100mlの無水ピリジンに溶解した溶液1mlを得られたニプラジロール約5mgに加えて室温で30分間放置した後、水0.1mlを加えて溶媒を減圧留去した。残留物にジクロロメタン5mlを加えて溶かし、炭酸水素ナトリウム試液5mlずつで2回、次に1mol/lの塩酸試液5mlで洗い、さらに水5mlで洗った後、ジクロロメタン溶液に無水硫酸ナトリウム2gを加えて振り混ぜ、試料溶液とした。試料溶液2μlにつき、次の条件でHPLC分析を行った。
ラセミ体分析は、検出波長264nmにてHPLC分析を行った。カラムとしては、シリカゲル製カラムを用いて、カラム温度は約30℃、移動相としては、ヘキサン/酢酸エチル混液を混合比率が7:5(vol./vol.)となるように調整した溶液を用いた。流速1.3ml/分にて、分析時間16分間にて分析を行った。保持時間10分付近に近接して現れた2個のピークのうち保持時間の大きい方のピークをラセミ体A、保持時間の短い方のピークをラセミ体Bとして、その面積強度の合計を100としたときの、各ラセミ体の面積強度比で示した。
参考例1
3,4−ジヒドロ−8−ヒドロキシ−3−ニトロキシ−2H−1−ベンゾピラン(フェノール体)320gにアセトン1200ml、4質量%の水酸化ナトリウム水溶液2260gを加え、室温で1時間攪拌した後、エピクロロヒドリン420gを加えさらに終夜攪拌を行った。該反応液を水2400gにあけた後、沈殿物をろ別した。得られた沈殿物減圧下、加熱乾燥し、324g(収率97%)にて、3,4−ジヒドロ−8−(2,3−エポキシ)プロポキシ−3−ニトロキシ−2H−1−ベンゾピラン(エポキシ体)を得た。
このようにして得られたエポキシ体36gにエタノール520mlを加え、さらにイソプロピルアミン250gを添加し、40℃にて5時間加熱攪拌を行った。反応終了後、反応液を減圧下留去し、得られた残渣に酢酸エチルを400ml加えて、再度、溶媒及びイソプロピルアミン留去を行なった。このようにして得られたニプラジロールの1次粗体は、50.3gであり、HPLC純度は、92.5%であった。色は桃色結晶であった。
得られた残渣(ニプラジロール粗体)50.3gを酢酸エチル1200mlに溶解し、水600mlにDL−酒石酸27g(エポキシ体の理論量に対して、2.6当量)を溶かした溶液を加え、振とうした後、水相を分離した。得られた水相のpHは2であった。得られた水相を、酢酸エチル600mlを用いて、振とうした後、水相を分離した。続いて同様な操作を、酢酸エチル600mlを用いて2回行い、精製されたニプラジロールの塩を含む水相を得た。
得られた水相に、無水炭酸ナトリウム40.0gを加え、水相のpHを9に調整した。この水相に、酢酸エチル600mlを加え、振とう後、ニプラジロールを含む有機相を分離した。さらに水相に、酢酸エチル600mlを加え、振とう後、有機相を分離した後、有機相を混合した。酢酸エチル相中に含まれるニプラジロールは38gであった。(フェノール体からの収率、88%)。この時のニプラジロール粗体(2次粗体)のHPLC純度は98.5%であり、ラセミ体比は、ラセミ体A:ラセミ体B=50:50であった。
実施例1
参考例1で得られたニプラジロール38gを含有する酢酸エチル相に精製白鷺−2(活性炭)0.38gを添加し、1時間25℃で攪拌後、0.2μmのメンブランフィルターを用いてろ過後、酢酸エチルを留去した。このようにしてニプラジロールの3次粗体37.8g(HPLC純度=99.0%、ラセミ体比=ラセミ体A:ラセミ体=51:49、ラセミ体A(mol)/ラセミ体B(mol)=1.04)を得た。
得られた3次粗体にイソプロピルアルコール(IPA)254mlを加え70℃で溶解して原料溶液を調製した後、得られた原料溶液にヘプタン690mlを添加し、均一溶液を維持しながら70℃で30分攪拌した。その後、放冷し3時間かけて25℃に冷却した後、氷冷により1時間かけて5℃にした後、さらに5℃で2時間熟成した。次に、減圧ろ過により固液分離を行い、IPA/ヘプタン=1/3(vol./vol.)43mlで洗浄した。さらに、60℃で12時間減圧乾燥を行い、ニプラジロール結晶33g(フェノール体からの収率76%)を得た。この時のニプラジロールのHPLC純度は99.5%、ラセミ体比は、ラセミ体A:ラセミ体=52:48(ラセミ体A(mol)/ラセミ体B(mol)=1.08)であった。色は白色結晶であった。
実施例2
実施例1において、活性炭として精製白鷺−2の代わりに精製白鷺を使用して活性炭処理を行うことによって、37.7gのニプラジロール3次粗体(HPLC純度=99.0%、ラセミ体比=ラセミ体A:ラセミ体=51:49、ラセミ体A(mol)/ラセミ体B(mol)=1.04)を得た。
得られた3次粗体を用い、ヘプタンの代わりにヘキサンを使用した以外は実施例1に従ってニプラジロールの結晶を得た。ニプラジロール結晶の取得量は32g、HPLC純度99.5%、ラセミ体比は、ラセミ体A:ラセミ体B=53:47{ラセミ体A(mol)/ラセミ体B(mol)=1.13}であった。また、色は白色結晶であった。
実施例3
実施例1において、IPAの代わりにエタノール、ヘプタンの代わりにペンタンを使用した以外は同様にして活性炭処理及び3次粗体の精製を行った。得られたニプラジロール結晶の取得量は32g、HPLC純度99.5%、ラセミ体比は、ラセミ体A:ラセミ体=53:47{ラセミ体A(mol)/ラセミ体B(mol)=1.13}であった。色は白色結晶であった。
実施例4〜8
実施例1において、IPAの代わりに表1に示す溶媒に変更した以外は同様にして活性炭処理及び3次粗体の精製を行った。そのときの結果を表1に示す。なお、得られたニプラジロール結晶はいずれも白色結晶であった。
比較例1
実施例1において、IPAの代わりに酢酸n−ブチルを使用した以外は同様にして活性炭処理及び3次粗体の精製を行った。ニプラジロール結晶の取得量は20g、HPLC純度99.2%、ラセミ体比は、ラセミ体A:ラセミ体=58:42{ラセミ体A(mol)/ラセミ体B(mol)=1.38}であった。色は白色結晶であった。
比較例2
実施例1において、ヘプタンを添加せずに原料溶液をそのまま冷却してニプラジロールの結晶を得た。ニプラジロールの取得量は10g、HPLC純度99.2%、ラセミ体比は、ラセミ体A:ラセミ体=80:20{ラセミ体A(mol)/ラセミ体B(mol)=4.00}であった。色は白色結晶であった。
比較例3
実施例1において、ヘプタンの代わりにトルエンを使用した以外は同様にして活性炭処理及び3次粗体の精製を行った。ニプラジロールの取得量は21g、HPLC純度99.2%、ラセミ体比は、ラセミ体A:ラセミ体=59:41{ラセミ体A(mol)/ラセミ体B(mol)=1.43}であった。色は白色結晶であった。