JP2007005004A - 燃料電池用ガス拡散電極並びにその製造方法及び燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 本発明の燃料電池用ガス拡散電極は、ファイバ状成分と粒子状成分とが融着した焼結体からなり、該焼結体に含まれるファイバ状成分及び/又は粒子状成分が導電性を有する。本発明の燃料電池用ガス拡散電極の製造方法は、ファイバ状成分と粒子状成分とこれらを結着するバインダとを含有し、ファイバ状成分及び/又は粒子状成分が導電性を有する混合物からシートを形成するシート形成工程と、前記シートを酸素非存在下にて焼結する焼結工程とを有する。本発明の燃料電池は、上述した燃料電池用ガス拡散電極を具備する。
【選択図】 なし
Description
そして、一方のセパレータ14aに、水素やアルコールなどの燃料を供給し、他方のセパレータ14bに、酸素や空気などの酸化剤を供給して、発電を行う。
また、ガス拡散電極においては、燃料又は酸化剤の供給を円滑にするとともに、酸化剤極側で生成する水の排出性を高めて発電サイクルの安定化を図るために、空隙率が高いことが求められる。
さらに、ガス拡散電極としては、等方性の高い構造を有して、燃料又は酸化剤の流入方向だけでなく、広角度でガスを拡散させること(ガス拡散性)が求められる。これは、セパレータからの燃料又は酸化剤の供給では、触媒層の全面にわたって均一に供給することが難しく、触媒層の一部のみで触媒反応が起こる傾向にあるが、ガス拡散電極にてガスを拡散させれば、触媒層の全体で触媒反応を起こすことができるためである。
本発明は、前記事情を鑑みてなされたものであり、導電性が高い上に、空隙率及びガス拡散性が高い燃料電池用ガス拡散電極並びにその製造方法を提供することを目的とする。また、発電性能に優れた燃料電池を提供することを目的とする。
本発明の燃料電池用ガス拡散電極の製造方法は、ファイバ状成分と粒子状成分とこれらを結着するバインダとを含有し、ファイバ状成分及び/又は粒子状成分が導電性を有する混合物からシートを形成するシート形成工程と、前記シートを酸素非存在下にて焼結する焼結工程とを有することを特徴とする。
本発明の燃料電池用ガス拡散電極の製造方法においては、ファイバ状成分が、炭素繊維、導電化樹脂繊維、金属繊維から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
また、本発明の燃料電池用ガス拡散電極の製造方法においては、ファイバ状成分が、セルロース繊維を含むことが好ましい。
ファイバ状成分がセルロース繊維を含む場合には、セルロース繊維が、直径0.005〜1μmの範囲の繊維を有することが好ましい。
ファイバ状成分が導電化繊維を含む場合には、導電化樹脂繊維が、フェノール系樹脂繊維を含むことが好ましい。
ファイバ状成分が金属繊維を含む場合には、金属繊維が、ステンレス繊維を含むことが好ましい。
本発明の燃料電池用ガス拡散電極の製造方法においては、粒子状成分が、炭素粒子及び/又は導電化樹脂粒子を含むことが好ましい。
粒子状成分が炭素粒子を含む場合には、炭素粒子がグラファイト粒子を含むことが好ましい。
粒子状成分がフェノール樹脂粒子を含む場合には、導電化樹脂粒子がフェノール樹脂粒子を含むことが好ましい。
本発明の燃料電池用ガス拡散電極の製造方法においては、バインダが、シート形成工程にて多孔質構造体を形成する樹脂であることが好ましい。
本発明の燃料電池用ガス拡散電極の製造方法におけるシート形成工程では、ファイバ状成分と粒子状成分とバインダとを含む液状の混合物を抄紙して又は支持体に塗工してシートを形成することが好ましい。
本発明の燃料電池は、上述した燃料電池用ガス拡散電極を具備することを特徴とする。
本発明の燃料電池用ガス拡散電極の製造方法によれば、導電性が高い上に、空隙率及びガス拡散性が高い燃料電池用ガス拡散電極を製造できる。
本発明の燃料電池は、発電性能に優れる。
本発明の燃料電池用ガス拡散電極(以下、ガス拡散電極と略す。)について説明する。
本発明のガス拡散電極は、ファイバ状成分と粒子状成分とが互いに融着した焼結体からなる。また、この焼結体に含まれるファイバ状成分及び/又は粒子状成分は、導電性を有している。
ガス拡散電極の焼結体に含まれるファイバ状成分としては、導電性がより高くなることから、炭素繊維、金属繊維が好ましく、粒子状成分としては、炭素粒子が好ましい。
本発明のガス拡散電極における焼結体には、導電性を有さないファイバ状成分が含まれていてもよく、また、導電性を有さない粒子状成分が含まれていても構わないが、ファイバ状成分の含有量は30質量%以下、粒子状成分の含有量は30質量%以下であることが好ましく、導電性を有さないファイバ状成分および粒子状成分を共に含まないことがより好ましい。
なお、ガス拡散電極の厚さは、マイクロメーター(打点式厚み計)を用いて測定した値である。
また、上述したガス拡散電極では、粒子状成分がスペーサとして機能し、ファイバ状成分同士の間に粒子状成分が入り込んだ構造を形成する。その結果、ファイバ状成分同士の間隔が広がっているため、空隙率が高い上に、等方性の高い多孔質構造を形成しており、ガス拡散性が高い。
本発明のガス拡散電極の製造方法について説明する。
本発明のガス拡散電極の製造方法は、シートを形成するシート形成工程と、前記シートを焼結する焼結工程とを有してガス拡散電極する方法である。
以下、各工程について説明する。
導電化樹脂繊維とは、炭素原子を多く含み、焼結により容易に炭素化されて炭素繊維を形成し、その結果、導電性が発現する繊維のことであり、例えば、フェノール系樹脂繊維、ポリアクリロニトリル繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維などが挙げられる。
導電化樹脂繊維としては、より確実に導電性を確保できることから、上記例示の中でも、フェノール系樹脂繊維を含むことが好ましい。
金属繊維としては、例えば、ステンレス繊維、金繊維、銀繊維などが挙げられるが、酸化雰囲気中で酸化しにくいものであればどのような材質でも構わない。
金属繊維としては、導電性が特に高い上に、燃料電池セル内の酸性雰囲気に耐えられることから、上記例示の中でも、ステンレス繊維を含むことが好ましい。
セルロース繊維としては、直径0.005〜1μmの範囲の繊維を有することが好ましい。セルロース繊維が、直径0.005〜1μmの繊維を有すれば、粒子状成分を均一に分散させることができ、均一な多孔質構造をガス拡散電極に容易に形成できる。
導電化樹脂粒子とは、炭素原子を多く含み、焼結により容易に炭素化されて炭素粒子を形成し、その結果、導電性を発現する粒子のことであり、例えば、フェノール樹脂粒子、ポリアクリロニトリル粒子、ポリスチレン粒子などが挙げられる。導電化樹脂粒子としては、より確実に導電性を確保できることから、上記例示の中でも、フェノール樹脂粒子を含むことが好ましい。
なお、混合物中には、導電性を有さないファイバ状成分、導電性を有さない粒子状成分が含まれても差し支えない。混合液中に導電性を有さないファイバ状成分や粒子状成分が含まれる場合でも、導電性を有さないファイバ状成分の含有量が30質量%以下であることが好ましく、導電性を有さない粒子状成分の含有量が30質量%以下であることが好ましい。さらには、ガス拡散電極の導電性をより高くするためには、導電性を有するファイバ状成分及び導電性を有する粒子状成分のみ含まれていることが好ましい。
また、バインダとしては、シート形成工程にて多孔質構造体を形成する樹脂であることが好ましい。焼結工程を行った後でも、シート形成工程にて形成されたシートの構造がほぼ維持されるため、シート形成工程にてバインダが多孔質構造体を形成した場合には、その多孔質構造もほぼ維持される。したがって、バインダが、シート形成工程にて多孔質構造体を形成する樹脂であれば、得られるガス拡散電極の空隙率がより高くなる。
シート形成工程にてバインダの多孔質構造体を形成する方法としては、例えば、混合物にバインダを溶解する良溶媒を添加した後、バインダを溶解しない貧溶媒を添加し、液状の混合物を乾燥してシートを形成する方法などが挙げられる。
このような抄紙法を採用した場合には、抄紙条件を適宜選択することにより、ファイバ状成分を抄紙方向に対して平行にあるいは斜めに配向させることができるために、ガス拡散電極の厚さ方向における流動抵抗を低減させることができる。また、本発明におけるシート形成工程で抄紙法を適用する場合には、既存の製紙技術をそのまま転用することができる。特に、ファイバ状成分がセルロース繊維の場合には既存の製紙技術を容易に転用できる。
このような塗工法を採用した場合には、均一な厚さのガス拡散電極を容易に製造できる。特に、数10μmの厚さでかつ厚さが均一なガス拡散電極を容易に製造できる。
塗工法を採用した場合には、バインダの良溶媒とともに、この良溶媒より沸点が高いバインダの貧溶媒を混合して調製した液状混合物を用いることが好ましい。液状の混合物にバインダの貧溶媒を混合した場合には、塗工後の乾燥条件を適宜選択することで、バインダを容易に多孔質化させることができる。その結果、得られるガス拡散電極の空隙率をより高くできる。
シートを非酸素存在下で焼結する方法としては、例えば、真空下で焼結する方法、水素等の還元雰囲気下、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で焼結する方法などが挙げられる。
焼結温度としては、200〜3000℃の範囲である。焼結温度が前記範囲にあれば、炭素繊維が互いに融着してシート状のガス拡散電極を容易に製造できる。
また、シート形成工程にて形成されたシートの構造は、燃焼工程後でもほぼ維持されるため、燃焼工程後には、空隙率が高く、かつ、等方性の高い多孔質構造を有するガス拡散電極を得ることができる。
上記製造方法により得られたガス拡散電極は、空隙率が高い上に、等方性の高い多孔質構造を有するため、燃料又は酸化剤供給の負荷が高くなってもガス拡散性が高い。したがって、触媒層の全体で触媒反応を起こすことができ、高価な触媒の利用効率を高くできる。
次に、本発明の燃料電池について説明する。
本発明の燃料電池は、上述した燃料電池用ガス拡散電極の製造方法により製造されたガス拡散電極を具備するものである。例えば、図1に示すような、イオン伝導性を有する電解質膜11と、電解質膜11の両面に形成された触媒層12a,12bと、各触媒層12a,12b上に形成されたガス拡散電極13a,13bと、各ガス拡散電極13a,13b上に形成されたセパレータ14a,14bとを有し、ガス拡散電極13a,13bが上述した燃料電池用ガス拡散電極の製造方法により製造されたものが挙げられる。
燃料電池に用いられる燃料としては、水素、メタノールやエタノール等のアルコールなどが挙げられる。酸化剤としては、酸素、空気などが挙げられる。
水素はガス拡散電極13aにて全体的に拡散された後、燃料極側の触媒層12aに導かれ、触媒層12aにて白金などの触媒成分によって水素イオンと電荷に分離される。その後、水素イオンは電解質膜11を通って酸化剤極側の触媒層12bに導かれる。また、電子は負荷15を有する回路16を通って酸化剤極側のガス拡散電極13bに導かれた後、触媒層12bに導入される。そして、触媒層12bにて、酸素、電子、水素イオンとから水を生成することにより、発電サイクルを完結する。
水を入れた容器中に、ファイバ状成分であるPAN系炭素繊維を100g、粒子状成分であるグラファイト粒子100gを添加し、超音波発生装置で超音波を発生させつつ攪拌機で攪拌、混合して均一に分散させて分散スラリーを調製した。次いで、この分散スラリーにPVA10質量%の水溶液100gを添加し、さらに攪拌して混合スラリー(液状の混合物)を得た。次いで、その混合スラリーから、JIS P8222:1988で規定される標準手抄き装置を用いて湿紙を作製した。その後、湿紙をプレス脱水し、130℃に設定したヤンキードライヤーを用いて乾燥してシートを得た。そして、このシートを窒素ガスで満たした焼結炉にて2000℃にて焼結してガス拡散電極を得た。
PAN系炭素繊維に代えて、フェノール系樹脂繊維を使用したほかは、実施例1と同様にしてガス拡散電極を得た。
実施例1において、PAN系炭素繊維の50質量%をフェノール系炭素繊維で置き換えたほかは、実施例1と同様にしてガス拡散電極を得た。
実施例1において、グラファイト粒子の代わりにフェノール系樹脂粒子を用いたほかは、実施例1と同様にしてガス拡散電極を得た。
実施例1において、グラファイト粒子の50質量%をフェノール樹脂粒子に置き換えたほかは、実施例1と同様にして実施例5のガス拡散電極を得た。
バインダとして、PVA水溶液の代わりに、メチルメタクリレートのジメチルアセトアミドによる10質量%溶液95gとエチレングリコール5gとを含む溶液を添加したほかは、実施例1と同様にして実施例6のガス拡散電極を得た。
実施例1において、PAN系炭素繊維の50質量%をステンレス繊維に置き換えたほかは、実施例1と同様にしてガス拡散電極を得た。
実施例1に、水で湿潤したセルロース繊維100g(繊維として10質量%を含有)をファイバ状成分として追加したほかは、実施例1と同様にしてガス拡散電極を得た。
実施例1にて得た混合スラリーを、PETフィルム上に流延した後、湿潤状態にて500μmの厚さに調整したものを、PETフィルムごと80℃に設定した乾燥機により乾燥した。その後、PETフィルムを剥離・除去して得たシートを、実施例1と同様に焼結してガス拡散電極を得た。
実施例1にて、グラファイト粒子を添加しなかったほかは、実施例1と同様にしてガス拡散電極を得た。
実施例1〜9及び比較例1のガス拡散電極の電気抵抗値、厚み、空隙率を測定した。その結果を表1に示す。
なお、電気抵抗値及び厚みは上述した方法により測定した値である。空隙率は、測定したガス拡散電極の質量及び単位体積と、ガス拡散電極を構成する各材料の密度とから算出した。
評価に用いた燃料電池は、以下のようにして作製したものである。
まず、25mm角のガス拡散電極を2枚用意し、それぞれを燃料極用、酸化剤極用とした。そして、燃料極用のガス拡散電極に、白金触媒及びルテニウム触媒を担持させたカーボンとカーボンナノチューブと有機溶媒とからなる触媒スラリーを、白金触媒及びルテニウム触媒を担持させたカーボンの量が0.3mg/cm2になるように塗工して燃料極用触媒層を形成した。また、酸化剤極用のガス拡散電極に、白金触媒を担持させたカーボンと有機溶媒とからなる触媒スラリーを、白金触媒の量が0.3mg/cm2となるように塗工して酸化剤極用触媒層を形成した。次いで、触媒層が形成された各ガス拡散電極でイオン交換膜(デュポン社製ナフィオン117)を挟み、熱圧プレス(120℃)により接合してガス拡散電極とイオン交換膜との接合体(MEA)を作製した。そして、MEAを単セルに組み込んで評価用の燃料電池セルを得た。
これに対し、粒子状成分を含まない比較例1のガス拡散電極は、空隙率が低く、ガス供給やガス拡散が不充分であり、燃料電池の発電性能が低いばかりでなく、フラッディングを発生しやすかった。
11 電解質膜
12a,12b 触媒層
13a,13b ガス拡散電極
14a,14b セパレータ
15 負荷
16 回路
Claims (13)
- ファイバ状成分と粒子状成分とが融着した焼結体からなり、該焼結体に含まれるファイバ状成分及び/又は粒子状成分が導電性を有することを特徴とする燃料電池用ガス拡散電極。
- ファイバ状成分と粒子状成分とこれらを結着するバインダとを含有し、ファイバ状成分及び/又は粒子状成分が導電性を有する混合物からシートを形成するシート形成工程と、
前記シートを酸素非存在下にて焼結する焼結工程とを有することを特徴とする燃料電池用ガス拡散電極の製造方法。 - ファイバ状成分が、炭素繊維、導電化樹脂繊維、金属繊維から選ばれる1種以上を含むことを特徴とする請求項2に記載の燃料電池用ガス拡散電極の製造方法。
- ファイバ状成分が、セルロース繊維を含むことを特徴とする請求項2又は3に記載の燃料電池用ガス拡散電極の製造方法。
- セルロース繊維が、直径0.005〜1μmの範囲の繊維を有することを特徴とする請求項4に記載の燃料電池用ガス拡散電極の製造方法。
- 導電化樹脂繊維が、フェノール系樹脂繊維を含むことを特徴とする請求項3に記載の燃料電池用ガス拡散電極の製造方法。
- 金属繊維が、ステンレス繊維を含むことを特徴とする請求項3に記載の燃料電池用ガス拡散電極の製造方法。
- 粒子状成分が、炭素粒子及び/又は導電化樹脂粒子を含むことを特徴とする請求項2〜7のいずれかに記載の燃料電池用ガス拡散電極の製造方法。
- 炭素粒子がグラファイト粒子を含むことを特徴とする請求項8に記載の燃料電池用ガス拡散電極の製造方法。
- 導電化樹脂粒子がフェノール樹脂粒子を含むことを特徴とする請求項8に記載の燃料電池用ガス拡散電極の製造方法。
- バインダが、シート形成工程にて多孔質構造体を形成する樹脂であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の燃料電池用ガス拡散電極の製造方法。
- シート形成工程では、ファイバ状成分と粒子状成分とバインダとを含む液状の混合物を抄紙して又は支持体に塗工してシートを形成することを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の燃料電池用ガス拡散電極の製造方法。
- 請求項1に記載の燃料電池用ガス拡散電極を具備することを特徴とする燃料電池。
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