JP2007001957A - ベンジルアミン誘導体、ベンジルアミン誘導体の光学分割方法、及び光学活性ベンジルアミン誘導体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
Journal of Medicinal Chemistry,1977,vol.20,No.7,978−981
請求項3に記載の発明のベンジルアミン誘導体の光学分割方法は、請求項1又は請求項2に記載のベンジルアミン誘導体の光学分割方法であって、光学分割剤として光学活性マンデル酸を用いることを要旨とする。
請求項5に記載の発明の光学活性ベンジルアミン誘導体の製造方法は、下記式(1)に示されるベンジルアミン誘導体から下記式(3)に示される光学活性(S)−ベンジルアミン誘導体を製造する光学活性ベンジルアミン誘導体の製造方法であって、前記ベンジルアミン誘導体と、光学分割剤としての(R)−マンデル酸とを含む溶液中にて、下記式(4)に示される光学活性(R)−ベンジルアミン誘導体の(R)−マンデル酸塩を析出させることにより、前記ベンジルアミン誘導体を光学分割する光学分割工程を含むことを要旨とする。
請求項6に記載の発明は、請求項4又は請求項5に記載の光学活性ベンジルアミン誘導体の製造方法において、前記光学分割工程における副生成物として産出された下記式(4)に示される光学活性(R)−ベンジルアミン誘導体を、ラセミ化することによりラセミ体を得るラセミ化工程を含み、該ラセミ化工程により得られたラセミ体を前記ベンジルアミン誘導体として供することを要旨とする。
請求項7に記載の発明は、請求項4から請求項6のいずれか一項に記載の光学活性ベンジルアミン誘導体の製造方法において、前記光学分割工程における前記溶液の溶媒としてケトン類を用いることを要旨とする。
特定の構造を有する光学活性ベンジルアミン誘導体の製造に極めて有用なベンジルアミン誘導体を提供することができる。
式(1)中のアリール基(以下、本明細書中でアリール基を示すArも同じ。)は、フェニル基、ナフチル基、及びビフェニル基を含む。このアリール基としては、製造が容易であるという観点からフェニル基が好ましい。アリール基が置換基を有する場合、その置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ニトロ基、ニトロソ基、シアノ基、アミノ基、ヒドロキシアミノ基、炭素数1〜12のアルキルアミノ基、炭素数1〜12のジアルキルアミノ基、アジド基、トリフルオロメチル基、カルボキシル基、炭素数1〜12のアシル基、炭素数7〜12のアロイル基、ヒドロキシル基、炭素数1〜12のアルキルオキシ基、炭素数7〜12のアラルキルオキシ基、炭素数6〜12のアリールオキシ基、炭素数1〜12のアシルオキシ基、炭素数7〜12のアロイルオキシ基、炭素数3〜12のシリルオキシ基、炭素数1〜12のスルホニルオキシ基、炭素数1〜12のアルキルチオ基等が挙げられる。これらの置換基の中でも、好ましくはヒドロキシル基、炭素数1〜12のアルキルオキシ基、炭素数7〜12のアラルキルオキシ基、炭素数1〜12のアシルオキシ基、炭素数7〜12のアロイルオキシ基、炭素数3〜12のシリルオキシ基、及び炭素数1〜12のスルホニルオキシ基から選ばれる少なくとも一種である。なお、アリール基が置換基を有する場合、その置換基の数は1〜3個である。
式(1)に示されるベンジルアミン誘導体は、光学不活性なラセミ体であり、例えば4−ヒドロキシプロピオフェノンを出発原料とする合成経路によって得られる。詳述すると、まず、4−ヒドロキシプロピオフェノンに対し、臭素原子を付加反応させることにより、2−ブロモ−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン−1−オンを得る。この付加反応は、例えば下記反応式(5)に示される。
この置換反応に用いられる塩基としては、特に限定されず、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等が挙げられる。また、置換反応に使用される溶媒としては、メタノール、エタノール、エーテル類等が用いられる。エーテル類としてはエチルエーテル、n−ブチルエーテル等の低級脂肪酸エーテルやテトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテルが挙げられる。これらの溶媒の中でも、好ましくはエーテル類、より好ましくは環状エーテル類が用いられる。
この光学分割方法では、式(3)に示される光学活性(S)−ベンジルアミン誘導体の光学活性マンデル酸塩と、式(4)に示される光学活性(R)−ベンジルアミン誘導体の光学活性マンデル酸塩とがジアステレオマーの関係になることを利用している。すなわち、前記光学活性(S)−ベンジルアミン誘導体の(S)−マンデル酸塩と、前記光学活性(R)−ベンジルアミン誘導体の(S)−マンデル酸塩とは、ジアステレオマーの関係になる。同じく、前記光学活性(S)−ベンジルアミン誘導体の(R)−マンデル酸塩と、前記光学活性(R)−ベンジルアミン誘導体の(R)−マンデル酸塩とは、ジアステレオマーの関係になる。詳述すると、こうしたジアステレオマーの関係にある一対の塩は、溶媒に対してそれぞれ異なる溶解度を有している。すなわち、式(1)に示されるベンジルアミン誘導体を溶解する溶媒に対して、前記光学活性(S)−ベンジルアミン誘導体の(S)−マンデル酸塩は不溶性である一方、前記光学活性(R)−ベンジルアミン誘導体の(S)−マンデル酸塩は可溶性である。また、前記光学活性(S)−ベンジルアミン誘導体の(R)−マンデル酸塩は可溶性である一方、前記光学活性(R)−ベンジルアミン誘導体の(R)−マンデル酸塩は不溶性である。こうした一対の塩における溶解度の差を利用することにより、ラセミ体であるベンジルアミン誘導体と、光学分割剤としての光学活性マンデル酸とを含む溶液中にて、前記光学活性(S)−ベンジルアミン誘導体及び前記光学活性(R)−ベンジルアミン誘導体を光学分割することができるようになる。
こうして得られる(1R,2S)−2−アミノ−1−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン−1−オールは、医薬中間体として有用な光学活性物質として広く利用される。
・ 式(1)に示されるベンジルアミン誘導体は、式(3)に示される光学活性(S)−ベンジルアミン誘導体の前駆体として極めて有用である。式(1)に示されるベンジルアミン誘導体の中でも、式(2)に示されるベンジルアミン誘導体は、製造が容易であるため、工業的に利用価値が高い。
・ 前記光学分割工程における(S)−マンデル酸を(R)−マンデル酸に変更することもできる。すなわち、ここでの光学分割工程では、式(1)に示されるベンジルアミン誘導体と、光学分割剤としての(R)−マンデル酸とを含む溶液中にて、式(4)に示される光学活性(R)−ベンジルアミン誘導体の(R)−マンデル酸塩を析出させる。このようにして、式(1)に示されるベンジルアミン誘導体を、式(3)に示される光学活性(S)−ベンジルアミン誘導体と式(4)に示される光学活性(R)−ベンジルアミン誘導体とに光学分割する。この光学分割工程の場合、式(3)に示される光学活性(S)−ベンジルアミン誘導体を、溶媒に溶解した状態で得ることができるようになる。このため、この光学活性(S)−ベンジルアミン誘導体を後工程にて更に反応させるに際し、この光学活性(S)−ベンジルアミン誘導体を溶液の状態で、その後工程に供することができるようになる。従って、そうした後工程において、光学活性(S)−ベンジルアミン誘導体を溶解する操作を省略することができるようになるため、後工程における利便性が高い状態で前記光学活性(S)−ベンジルアミン誘導体を得ることができる。
・ 式(1)に示されるベンジルアミン誘導体を出発原料として、そのベンジルアミン誘導体を光学分割することによって式(3)に示される光学活性(S)−ベンジルアミン誘導体を得た後、その光学活性(S)−ベンジルアミン誘導体を接触還元することを特徴とする(1R,2S)−2−アミノ−1−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン−1−オールの製造方法。この方法によれば、新規なベンジルアミン誘導体を出発原料とする新たな合成経路によって(1R,2S)−2−アミノ−1−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン−1−オールを容易に製造することができる。
4−ヒドロキシプロピオフェノン43.0g(286.3mmol)のジオキサン溶液(86mL)に、臭素50.2g(1.1当量)を30℃以下で加え、5分間撹拌した。この溶液を90℃まで加温し、溶液中の臭化水素を完全に追い出した後、その溶液を20℃以下に冷却した(反応式(5)に示される付加反応)。得られた溶液に対し、さらにベンジルアミン31.2g(1.0当量)、及び40%水酸化ナトリウム水溶液30mLを滴下し3時間撹拌した(反応式(6)に示す置換反応)。水層を除去した後、イソプロピルアルコール65mLを加え、結晶を濾過した。さらに、この結晶をイソプロピルアルコール65mLで洗浄し、式(2)に示す2−ベンジルアミノ−1−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン−1−オンを白色結晶として得た(40.2g、単離収率55%)。
1H-NMR(DMSO、400MHz/ppm)1.19(d,3H)、3.55(d,1H)、3.67(d,1H)、4.28(q,1H)、6.84(d,2H)、7.23(m,1H)、7.29(d,4H)、7.86(d,2H)、10.4(brs,1H)
<光学活性ベンジルアミン誘導体の製造>
(光学分割工程1)
上記「ベンジルアミン誘導体の製造」で得られた2−ベンジルアミノ−1−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン−1−オン230g(900.9mmol)の90%アセトン/10%水混液(750mL)に(S)−マンデル酸164.1g(1.2当量)を加え、還流させた状態で30分間撹拌した。その溶液を20℃まで冷却後、同温度で2時間撹拌することにより、結晶を析出させた。次いで、結晶が析出した溶液を濾過操作することにより、結晶を分離した。さらに90%アセトン/10%水混液(255mL)で結晶を洗浄し、(S)−2−ベンジルアミノ−1−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン−1−オンの(S)−マンデル酸塩を白色結晶として得た(174.7g、単離収率(ラセミ体基準)47.6%、光学純度99.5%ee)。以上の操作を繰り返すことにより、所定量の(S)−2−ベンジルアミノ−1−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン−1−オンの(S)−マンデル酸塩を得た。なお、濾過操作によって得られた濾液及び結晶を洗浄した洗液は、回収液として回収した。
なお、(S)−2−ベンジルアミノ−1−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン−1−オンの(S)−マンデル酸塩、及び式(9)に示される光学活性(S)−ベンジルアミン誘導体における光学純度(%ee)は、光学分割HPLCを用いた分析によって算出される値である。この光学分割HPLCによる分析に供する試料溶液は、サンプル10mgをメタノールに溶解するとともにメスフラスコで10mLとした溶液1mLを、さらに移動相を希釈溶媒としてメスフラスコで10mLまで希釈することによって調整した。光学分割HPLCの分析条件を以下に示す。以下、本実施例に記載の「光学純度」は、この光学分割HPLCにて算出された値を示す。
移動相:ヘキサン:IPA:ジエチルアミン=80:20:0.1
カラム温度:40℃
流量:0.5mL/min
検出波長:254nm
注入量:10μL
(ラセミ化工程)
光学分割工程の濾過操作及び結晶の洗浄において回収した回収液1150mLの溶媒を留去して、その回収液を乾固することにより、(R)−2−ベンジルアミノ−1−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン−1−オンの(S)−マンデル酸塩を白色結晶として得た(195.9g、ラセミ体基準の単離収率53.4%、光学純度69.4%ee)。
上記「ラセミ化工程」で得られた白色結晶(ラセミ体)を用いて、上記「光学分割工程1」と同様にして光学分割工程2を行った。その結果、式(9)に示される(S)−2−ベンジルアミノ−1−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン−1−オンが白色結晶として得られた(単離収率99.0%、光学純度99.5%ee)。なお、この白色結晶は、光学純度(%ee)及び1H−NMRの結果から同定された。この結果から、前記光学活性(R)−ベンジルアミン誘導体から得られたラセミ体を光学分割工程の原料として用いても、前記光学活性(S)−ベンジルアミン誘導体が高収率で得られることが確認された。従って、ラセミ化工程を含む製造方法では、前記光学活性(S)−ベンジルアミン誘導体の収率を高める優れた効果が得られることが立証され、その方法は工業的に極めて有利な方法であることがわかる。
Claims (8)
- 請求項1又は請求項2に記載のベンジルアミン誘導体の光学分割方法であって、光学分割剤として光学活性マンデル酸を用いることを特徴とするベンジルアミン誘導体の光学分割方法。
- 下記式(1)に示されるベンジルアミン誘導体から下記式(3)に示される光学活性(S)−ベンジルアミン誘導体を製造する光学活性ベンジルアミン誘導体の製造方法であって、
前記ベンジルアミン誘導体と、光学分割剤としての(S)−マンデル酸とを含む溶液中にて、前記光学活性(S)−ベンジルアミン誘導体の(S)−マンデル酸塩を析出させることにより、前記ベンジルアミン誘導体を光学分割する光学分割工程を含むことを特徴とする光学活性ベンジルアミン誘導体の製造方法。
- 下記式(1)に示されるベンジルアミン誘導体から下記式(3)に示される光学活性(S)−ベンジルアミン誘導体を製造する光学活性ベンジルアミン誘導体の製造方法であって、
前記ベンジルアミン誘導体と、光学分割剤としての(R)−マンデル酸とを含む溶液中にて、下記式(4)に示される光学活性(R)−ベンジルアミン誘導体の(R)−マンデル酸塩を析出させることにより、前記ベンジルアミン誘導体を光学分割する光学分割工程を含むことを特徴とする光学活性ベンジルアミン誘導体の製造方法。
- 前記光学分割工程における前記溶液の溶媒としてケトン類を用いることを特徴とする請求項4から請求項6のいずれか一項に記載の光学活性ベンジルアミン誘導体の製造方法。
- 前記ケトン類がアセトン又はメチルエチルケトンであることを特徴とする請求項7に記載の光学活性ベンジルアミン誘導体の製造方法。
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