JP2006510601A5 - - Google Patents

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抗原性が低下したポリマー結合体、その調製方法および使用方法
(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は、蛋白質生化学、薬学および医学の分野における発明である。特に、本発明は、水溶性のポリマー(例えば、ポリ(エチレングリコール)、およびその誘導体)と生物活性成分との結合体であって、標準的なポリマー性生物活性成分の結合体と比較して、抗原性および免疫原性が低下している結合体を製造するための方法を提供する。また、本発明は、該方法によって作製された結合体、該結合体を含む組成物、該結合体および組成物を含むキット、および、さまざまな医学的および獣医学的症状の予防、診断、および治療における該結合体および組成物の使用法も提供する。
(関連技術)
循環血における半減期が通常短いこと、ならびに抗原性および免疫原性を持つ可能性があるという2つの要素によって、組換え蛋白質を治療薬として開発することが妨げられてきた。本明細書において、また、通常、当技術分野において、「抗原性」という表現は、ある分子が既存の抗体に結合しうることを意味し、一方、「免疫原性」という表現は、インビボにおいて免疫応答を誘導できることを意味し、その応答は、抗体の形成を含むもの(「液性応答」)でも、細胞性免疫応答の促進であってもよい。組換え治療用蛋白質を投与するには、循環血での活性を最大にし、生体内利用率および分解に関する問題を最小に抑えるために静脈内(i.v.)投与がしばしば望ましい。しかし、i.v.投与後の小さな蛋白質の半減期は通常非常に短い(例えば、Mordenti,J.et al.(1991)Pharm Res 8:1351−1359;Kuwabara,T.et al.(1995)Pharm Res 12:1466−1469)を参照。健康な腎臓は、一般的に、ストークス半径およそ36Åで、分子量はおよそ66,000ダルトン(66kDa)である血清アルブミンの半径を上回る流体力学的半径を有する蛋白質を血流中に保持している。しかし、顆粒球コロニー刺激因子(「G−CSF」)やリボヌクレアーゼなど、より小さな蛋白質は、糸球体にろ過されて速やかに血流から除去される(Brenner,B.M.et al.(1978)Am J.Physiol.234:F455−F460;Venkatachalam,M.A.et al.(1978)Circ Res 43:337−347;Wilson,G.(1979)J Gen Physiol 74:495−509)。その結果、i.v.投与後に小さな組換え蛋白質を血流中において治療上有効な濃度で維持するには問題が多い。したがって、このような蛋白質はより高い濃度でより高い頻度で注射して投与しなければならない。用量率が高くなると治療費用がかさみ、患者の服薬遵守の可能性が低くなり、また、有害な副作用すなわち免疫応答が起こる可能性が高くなる。細胞性免疫応答も液性免疫応答も、注射された組換え蛋白質の循環濃度を下げて有効投与量となることを妨げるか、アナフィラキシーなどの治療を制約する結果に至ることがある(Pui,C.−H.et al.(2001)J Clin Oncol 19:697−704)。
皮下(s.c.)注射または筋内(i.m.)注射など別の投与経路であれば、より緩やかに組換え蛋白質を循環血に放出することによって、これらの問題のいくつかを克服できる。しかし、生体内利用率が極めて低くなる可能性があり、そのため薬剤の有効循環濃度を達成することが困難になる。s.c.またはi.m.によって投与された薬剤の生体内利用率が低いことに関連する更なる問題として、注射部位において、治療用蛋白質が分解される可能性が高くなることがある。
ポリ(エチレングリコール)(「PEG」)の誘導体が共有結合することによる組換え蛋白質の修飾が、上記の短所を解決するための手段として広範に研究されてきた(Sherman,M.R.et al.(1997)、Poly(ethylene glycol):Chemistry and Biological Applications,Harris,J.M.,et al,eds.,American Chemical Society,Washington D.C.,pp.155−169;Roberts,M.J.,et al.(2002)Adv Drug Deliv Res 54:459−476)。PEG誘導体の蛋白質への結合は、蛋白質を安定化させ、その生体内利用率を向上させ、および/または、インビボでの免疫原性を低下させることが分かっている。(PEG誘導体が蛋白質またはその他の基質に共有結合することを、本明細書では、当技術分野においても知られているように「PEG化」と呼ぶ。)また、PEG化は、蛋白質の流体力学的半径を顕著に増加させることができる。サイトカインやポリペプチドホルモンのような小さな蛋白質を一本鎖の長いPEG(例えば分子量約18kDa以上)に結合させると、得られる結合体は、血清アルブミンの流体力学的半径よりも大きな流体力学的半径をもち、腎糸球体によるクリアランスが大幅遅延される。PEG化の複合効果蛋白質分解を低下させ、免疫認識を低下させ、また、腎クリアランス率を低下させるは、PEG化蛋白質に治療薬剤としての実質的な長所を付与する。
1970年代以来、ポリマーの共有結合を用いて、医薬品に用いるさまざまな蛋白質の安全性と有効性を向上させようとする試みが行われてきた(例えば米国特許第4,179,337号を参照)。PEGまたはポリ(エチレンオキシド)(PEO)をアデノシンデアミナーセ(EC 3.5.4.4)に結合させて、重度の免疫不全症の治療に用いるなどの例がある(Davis,S.et al.(1981)Clin Exp Immunol 46:649−652;Hershfield,M.S.,et al.(1987)N Engl J Med 316:589−596)。別の例として、PEGをスーパーオキシド・ディスムターゼ(EC 1.15.1.1)に結合させて炎症症状を治療し(Saifer,M.et al.、米国特許第5,006,333号および第5,080,891号)、尿酸酸化酵素(EC 1.7.3.3)に結合させて、血液および尿から過剰な尿酸を除去する(Inaa,Y.,特許出願第55−099189号;Kelly,S.J.,et al.(2001)J Am Soc Nephrol 12:1001−1009;米国特許第6,576,235号に対応するWilliams,L.D.,et al.,PCT国際公開WO 00/07629A3;Sherman,M.R.,et al.,PCT国際公開WO 01/59078 A2)。
PEOおよびPEGは、共有結合したエチレンオキシド単位から構成されるポリマーである。これらのポリマーは、以下の一般構造をもつ。
−(OCHCH−R
ここで、Rは、ヒドロキシル基(またはその反応性誘導基)であり、Rは、「PEGジオール」における場合と同様に水素、モノメトキシPEG(「mPEG」)の場合と同様にメチル基、または、例えばイソ−プロポキシPEGまたはt−ブトキシPEGおけると同様に別の低級アルキル基であり得る。このPEGの一般構造式におけるパラメータnは、ポリマーにおけるエチレンオキシド単位の数を示し、本明細書および当技術分野において「重合度」と呼ばれている。PEOおよびPEGは、直鎖状、分枝状(Fuke,I.et al.(1994)J Control Release 30:27−34)または星状(Merrill,E.W.(1993)J Biomater Sci Polym Ed 5:1−11)でありうる。PEOおよびPEGは、両親媒性、すなわち水に可溶であり、かつ一定の有機溶媒にも可溶であって、エンベロープウイルス、および動物や細菌の細胞膜などの脂質含有物質に接着することができる。一定のランダム型またはブロック型または交互型のエチレンオキシド(OCHCH)とプロピレンのコポリマーであって、以下の構造:
Figure 2006510601
を有するものは、PEGに十分類似した性質を有するため、一定の応用場面においてPEGの代わりとして適していると考えられている(例えば米国特許第4,609,546号および第5,283,317号を参照)。ここで「ポリアルキレンオキシド」という語および「PAO」という略語は、PEGまたはPEOおよびポリ(オキシエチレン−オキシメチレン)のコポリマー(米国特許第5,476,653号)などのコポリマーを意味する。ここで、「ポリアルキレングリコール」という語および「PAG」という略語は、本発明に係る結合体、特にPEG、より具体的には、単一の反応基を含むPEG(「単官能活性PEG」)において使用するのに適したポリマーを包括的に意味する。
一般的に、例えば、約5kDaから約10kDaの分子量を有する1種類以上のmPEGなど、1種類以上のPAGの何本か(例えば5本から10本)の鎖を、アミノ基(リジン残基のプシロンアミノ基、およびN−末端アミノ酸のアルファアミノ基)を介して標的蛋白質に結合させる。最近になって、例えば12kDa、20kDa、または30kDaなど、より大きな分子量の一本鎖mPEGを含む結合体が合成されている。結合体の血漿中における半減期と、分子量の増加および/または結合されるPEGの鎖の数との間に直接的な相互関係があることが明らかになっている(Clark,R.,et al.(1996)J Biol Chem 271:21969−21977)。他方、PEGの鎖の数が増加するにつれて、(特に、生物活性成分が蛋白質の場合)生物活性成分の必須領域におけるアミノ基が修飾されて、その生物学的機能(例、酵素による触媒、またはサイトカインによるレセプター結合)を損なう可能性が高まる。多数のアミノ酸基を含む、より大きな蛋白質、および、低分子量の基質をもつ酵素にとって、作用持続時間の増加と特異的活性の低下との間のこのトレードオフは、PEG含有結合体の生物活性の正味量をインビボで増加させるため許容できるものである。しかし、ポリペプチドホルモンやサイトカインなどの小さな蛋白質にとっては、比較的高いレベルの置換を行う場合、機能活性の低下が、血流中での半減期の延長による利益を打ち消す程度に至る可能性が高い(Clark,R.,et al.,前掲)。
本願発明者の特定の者は、さまざまなPEG化法を開拓しており、それらをいくつかの蛋白質に適用して、インビボで好適な薬物動態学と高い有効性との望ましい組み合わせを得ている。これらの蛋白質には、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「GM−CSF」)(Saifer,M.G.P.,et al.(1997)Polym Preprins 38:576−577;Sherman,M.R.,et al.(1997)前掲)、および組換え哺乳動物ウリカーゼ(PCT国際公開WO 00/07629およびWO 01/59078;Kelly,S.J.,et al.,前掲;米国特許第6,576,235号を参照)などが含まれる。GM−CSFをサイトカインモデルとして用いて、本願発明者の特定の者が、インビボにおいて組換えマウスGM−CSFの有効性を劇的に促進させるには、高分子量(約36kDa)のmPEGの一本鎖または二本鎖を結合させれば十分であることを実証した(Saifer,M.G.P.,et al.(1997)前掲;Sherman,M.R.,et al.(1997)前掲)。
組換え哺乳動物尿酸酸化酵素(ウリカーゼ)を修飾して、難治性痛風の治療となる可能性について検討する実験が行われた(米国特許第6,576,235号に対応するPCT国際公開WO 00/07629、およびWO 01/59078を参照。これらは、その全体が参照として本明細書に組み込まれる)。PEG−ウリカーゼを用いて、深刻な尿酸腎症を示すウリカーゼ欠損マウス(uox −/−)を治療する場合、忍容性が良好で、効果的であり、また、実質的に非免疫原性であった。顕微磁気共鳴画像(microscopic magnetic resonance imaging)によって示されたように、治療されたマウスは、治療が続く期間中(10週間)腎機能の改善を示し、未治療のuox −/−マウスよりも尿酸関連の腎障害が実質的に少なかった(Kelly,S.J.,et al.,(2001)前掲)。
PAGまたはポリペプチド分子の鎖への共有結合については、Davis,F.F.,et al.に付与された米国特許第4,179,337号、およびAbuchowski,A.,et al.,(1981)in:Enzymes as Drugs,Holcenberg,J.S.,et al.,eds.,John Wiley and
Sons,New York,pp.367−383に開示されている。これらの参考文献は、mPEGによって修飾された酵素およびその他の蛋白質は、対応する非修飾蛋白質に比べ、免疫原性および抗原性が低く、血流中での半減期が短いことを開示する。これら化学修飾された結合体にもたらされる有益な特性は、さまざまな治療への応用おいて非常に有益である。
蛋白質へのPEGまたはポリアルキレンオキシドの共有結合を生じさせるためには、まず、ポリマーのヒドロキシル末端基の少なくとも一方を反応性官能基に変換しなければならない。この処理は、しばしば「活性化」と呼ばれ、その産物は「活性化PEG」または活性化ポリアルキレンと呼ばれる。一方の末端を非反応性で化学的に安定なメチルエーテル(「メトキシ基」)によって、他方を、蛋白質分子上のアミノ基に対して反応性の官能基によってキャップされたモノメトキシPEGが、このような方法でもっとも広く用いられている。いわゆる「分枝型」mPEGであって、活性化された単一の官能基から離れたところに2個以上のメトキシ基を含むものは、一般的には使用されない。一例としてはジ−mPEG−リジンがあるが、そこでは、N−ヒドロキシスクシンイミドによって、リジンのカルボキシル基がもっとも頻繁に活性化される(Harris,J.M.,et al.,米国特許第5,932,462号)。
活性化されたポリマーは、結合部位として使用される求核性官能基をもつ治療薬剤と反応させられる。結合部位として一般的に用いられる求核性官能基の一つは、リジンのプシロンアミノ基である。遊離のカルボン酸基、適切に活性化されたカルボニル基、酸化された糖質部分、およびチオール基も結合部位として使用される。
mPEGのヒドロキシル基を塩化シアヌルで活性化し、得られた化合物を蛋白質と共役させた(Abuchowski,A.,et al.(1977)J Biol.Chem 252:3582−3586;Abuchowski,A.,et al.(1981)前掲)。しかし、塩化シアヌルの毒性、および機能に必須な溶媒接触可能なシステインまたはチロシン残基のように、アミン以外の官能基をもつ蛋白質に対する非特異的反応性など、この方法の使用には不利な点もある。
これらの短所およびその他の短所を克服するために、mPEGのコハク酸スクシンイミジル誘導体(「SS−PEG」)など、別の活性化PEGが導入されている(Abuchowski,A.,et al.(1984)Cancer Biochem Biophys 7:175−186)。穏やかな条件下で、SS−PEGは、蛋白質と速やかに(30分以内)反応して、活性があって、さらに広範に修飾された結合体が得られる。
M.Saiferらは、米国特許第5,468,478号において、ポリアルキレン・グリコシル−モノ−N−スクシンイミジル・カルボン酸、およびそれから生成される結合体を開示している。S.Zalipskyは、米国特許第5,612,460号において、ポリ(エチレングリコール)−N−スクシンイミジル・カルボン酸の調製法を開示している。この型のポリマー(「SC−PEG」)は、蛋白質のアミノ基や、低分子量のペプチドおよび遊離アミノ基を含む他の物質のアミノ基と容易に反応してウレタン結合を形成する。
別のPEG−カルボン酸誘導体からできる、蛋白質のアミノ基とPEGとの間のウレタン(またはカルバミン酸)結合も、当技術分野において知られている(Beauchamp,C.,et al.(1983)Anal Biochem 131:25−33;Veronese,F.M.,et al.(1985)Appl Biochem Biotechnol 11:141−152)。反応性mPEGの中間体、および、特に、アミド結合、エステル結合、第2級アミン、およびチオエステル結合を介して結合されている生物活性成分のPEG結合体を合成するためにそれらを利用する方法も、当技術分野において知られている。
T.Suzukiら((1984)Biochim Biophys Acta 788:248−255)は、塩化シアヌルによって活性化されていたmPEGに免疫グロブリンG(「IgG」)を共有結合した。彼らは、抗原結合活性および分子構造、サイズ排除クロマトグラフィーにおける挙動、表面活性、界面凝集性、ならびにPEG−IgG結合体による補体の非特異的活性化を誘発する熱凝集性などの生物学的および物理化学的な性質を調べた。PEGをIgGに結合させると、IgGの構造的な変性は見られなかったが、ストークス半径が外見上大きくなり、IgG、および熱および/または界面への曝露に対して安定化されたIgGの表面活性を高めた。非特異的な凝集性が抑制されたのは、主に、PEG化されたIgG分子間の会合が立体構造的に阻害されるためである。これらの結果は、静脈注射用製剤としてのmPEG結合IgGの有用性を示しており、また、PEGが、修飾されたIgGを静脈で用いるために安定化させるための添加剤としても有用であることが示唆された。
K.A.Sharpら((1986)Anal Biochm 154:110−117)は、細胞表面抗原に基づいて、水二相ポリマー系(aqeous two−phase polymer system)において細胞を分離するための生物特異的なアフィニティーリガンドを生成できるかを調べた。ウサギ抗ヒト赤血球IgGを、分子量約0.2、1.9および5kDaの塩化シアヌル活性化mPEGと、PEG対蛋白質上のリジン基さまざまなモル比で反応させた。デキストランとPEGを含む二相系における蛋白質の分配係数は、修飾の程度が高まるとともに、また、mPEGの分子量が高いほ増加した。ヒト赤血球を凝集させる能力の喪失が同時に起きた。
R.H.Tullisは、米国特許第4,904,582号において、連結アームを介してオリゴヌクレオチドが、ポリオキシアルキレン基でも可能である疎水性部分に結合しているオリゴヌクレオチド結合体を開示している。生じた結合体は、膜輸送においてより効果的であるため、膜を通過して効果的に転写系を調節できると言われている。このようにして、これらの組成物は、細胞過程、哺乳動物宿主の病原体からの防御、遺伝子治療の促進などを研究するためにインビトロおよびインビボで使用することができる。
しかし、ポリマーの過剰な結合、および/または生物活性に関係する基が存在する治療効果部分の活性部位を含む結合は、活性の喪失、ひいては治療効果の喪失につながることがある。これは、生物活性に関係しない結合部位がほとんどない低分子量ペプチドにしばしば当てはまる。例えば、I.Benharら((1994)Bioconjg Chem 5:321−326)は、組換え一本鎖イムノトキシンのPEG化によって、イムノトキシンの特異的標的免疫反応性が喪失する結果になったことを観察した。このイムノトキシンの活性喪失は、イムノトキシンの抗原結合領域内にある2個のリジン残基にPEGが結合した結果であった。
PAGおよびPAO(例えばPEGやPEOなど)の治療用蛋白質への共有結合によって免疫反応性を除去することが意図されているが、PEG化された蛋白質は、僅かに免疫原性を保っている。この免疫原性は、少なくとも部分的に、PEGおよびPAOのポリマーそれら自体が幾分か抗原性および免疫原性をもつという事実によるものと考えられる。例えば、PEGが免疫原性担持体蛋白質に結合した結合体を注射して、ウサギをさまざまなPEGで免疫している(Richter,A.W.,et al.(1983)Int
Arch Allergy Appl Immunol 70:124−131)。さらに、β−グルクロニダーゼのmPEG結合体をマウスに注射し、抗PEG抗体を分泌するハイブリドーマクローンを選抜して、PEGのポリエーテル骨格と反応するモノクローナル抗体が開発されている(Cheng,T−L.,et al.(1999)Bioconjug Chem 10:520−528;Cheng,T.−L.,et al.(2000)Bioconjug Chem 11:258−266;Tsai,N.−M.,et al.(2001)Biotechniques 30:396−402;Roffler,S.,et al.,米国特許第6,596,849号および第6,617,118号。これらの開示内容はすべて、その全文が参照として本明細書に組み込まれる)。PEGのポリエーテル骨格と反応する別のモノクローナル抗体が、最近、Roberts,M.J.らによって、米国特許出願第2003/001704A1号において開示されている。
多くの研究者が、直鎖状または分枝状の「非抗原性」PEGポリマーおよびその誘導体または結合体の調製法を開示している(例えば米国特許第5,428,128号、第5,621,039号、第5,622,986号、第5,643,575号、第5,728,560号、第5,730,990号、第5,738,846号、第5,811,076号、第5,824,701号、第5,840,900号、第5,880,131号、第5,900,402号、第5,902,588号、第5,919,455号、第5,951,974号、第5,965,119号、第5,965,566号、第5,969,040号、第5,981,709号、第6,011,042号、第6,042,822号、第6,113,906号、第6,127,355号、第6,132,713号、第6,17,087号および第6,180,095号を参照。また、PCT国際公開WO 95/13090、および公開米国特許出願第2002/0052443号、第2002/0061307号および第2002/0098192号を参照)。上記特許および特許出願における実施例の大部分は、1本以上のmPEG鎖、例えばジ−mPEG−リジンなどを含むポリマーを用いている。しかしながら、今までのところ、このようなポリマーまたは結合体のPEGを非抗原性にするメカニズムは開示されていない。
したがって、PAO含有(例えばPEG−および/またはPEO−含有)結合体、特に、このような水溶性ポリマーと治療用蛋白質の結合体であって、抗原性が低下、実質的に低下、または全く検出されない結合体を作出する方法を確認する必要がある。このような結合体は、ポリマー成分によってもたらされるインビボにおける安定性および生体内利用率の増加という利点をもちつつ、治療目的または診断目的で結合体を導入した動物において、実質的に免疫応答を誘導しない。
(発明の簡単な要旨)
本発明は、上記で示したような必要性を解決しようとするものであり、水溶性ポリマー(例えば、ポリ(エチレングリコール)およびその誘導体)と、蛋白質などの生物活性成分、特に治療的生物活性成分との結合体の調製法を提供する。また、本発明は、該方法によって作出されたポリマーおよび結合体であって、例えばmPEGなどのアルコキシPEGによって調製された同じ生物活性成分とのアルコキシ含有ポリマーおよび結合体に比べて、低い抗原性および免疫原性を有するもポリマーおよび結合体を提供する。また、本発明は、該結合体を含む組成物、該結合体および組成物を含むキット、および、さまざまな治療用および診断用の投薬計画において該結合体および組成物を使用する方法も提供する。
一つの態様において、本発明は、1種類以上の直鎖状または分枝状の単官能性の活性化されたポリアルキレングリコールに共有結合した1種類以上の生物活性成分を含む結合体であって、単官能性の活性化されたポリアルキレングリコールが、メトキシル基、別のアルコキシル基またはアリールオキシ基を末端に含まない結合体を提供する。一定の前記実施態様において、結合体は、例えばmPEGのようなアルコキシポリ(エチレングリコール)またはジ−mPEG−リジンなどmPEGを含む分枝状ポリマーを用いて調製した結合体に比べて、低い、または実質的に低い抗原性を有する。
本発明に係る結合体を合成する際に使用するのに特に適しているポリアルキレングリコールには、ポリ(エチレングリコール)、および、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのコポリマーなどがあり、これらに限定されるものではないが、特に好適なものはPEGであり、より好適なものとしては、単官能性の活性化PEG(例えば、一方の末端が活性化されたPEGであって、ヒドロキシPEG−モノアルデヒド、ヒドロキシPEG−モノビニルスルホン、ヒドロキシPEG−モノカルボン酸の反応性エステル、およびヒドロキシPEG−モノフェニルカボネート誘導体などである)。反応性のポリマー誘導体の合成に利用することができる他の中間体には、この他のヒドロキシPEG−一酸類およびヒドロキシPEG−モノアセタールなどがある。
一定の前記実施態様において、ポリアルキレングリコール分子量約1,000ダルトンから約100kDa、好ましくは約2kDaから約60kDa、約2kDaから約30kDa、約5kDaから約20kDa、約10kDaから約30kDa、約10kDaから約20kDaであり;2本の分枝のそれぞれの分子量は、約2kDaから約30kDaであり、2本の分枝のそれぞれの分子量は、より好ましくは、約18kDaから約22kDaである。本発明のこの態様による結合体は、高分子量の酵素蛋白質の1サブユニット当たり一本以上のポリアルキレングリコール鎖を含むことができ、一定の実施態様において、好ましくは約1本から約10本の鎖、約1本から約5本の鎖、より好ましくは約1本から約3本の鎖、最も好ましくは約1本から約2本の鎖を含むことができ、別の実施態様において、好ましくは約5本から約100本の鎖、約10本から約50本の鎖、そしてより好ましくは6本から約20本の鎖を含むことができる。特に好適な前記実施態様において、結合体において使用されるポリアルキレングリコールは、分子量約18kDaから約22kDa、または約27kDaから約33kDaである、一本鎖以上の単官能性の活性化ポリ(エチレングリコール)(例えば、ヒドロキシPEG−一酸の反応性エステル、ヒドロキシPEG−モノアルデヒド、ヒドロキシPEG−モノビニルスルホン、またはヒドロキシPEG−モノフェニルカボネート誘導体)を含む。
本発明に係る結合体または組成物において使用するのに適した生物活性成分には、さまざまなペプチド、蛋白質、糖蛋白質、有機化合物、アミン含有化合物、カルボキシル基含有化合物、ヒドロキシル基含有化合物、およびチオール基含有化合物などがあるが、これらに限定されるものではない。
また、本発明は、生物活性化合物と単官能性の活性化ポリアルキレングリコールとの結合体を作製する方法であって、例えば、(a)1個以上のトリフェニルメチル基(「トリチル基」)など、その後に取り除かれる少なくとも1個の非反応性のブロッキング基を含む、直鎖状または分枝状のポリアルキレングリコールを取得または調製する工程、(b)ポリアルキレングリコールが、ブロッキング基を持たない末端において、1個の誘導体化基(1個のカルボキシル基など)によって誘導体化されるような条件下で、ポリアルキレングリコールを1種類以上の誘導体化化合物と反応させることによって、ポリアルキレングリコールの誘導体を作り出す工程、(c)一つ以上のステップで誘導体化基を除去することなくブロッキング基を除去して、単官能性の活性化ポリアルキレングリコールを作製する工程、および(d)生物活性成分が単官能性の活性化ポリアルキレングリコールに共有結合するのに有利な条件下で、単官能性の活性化ポリアルキレングリコールを1種類以上の生物活性成分と接触させる工程を含む方法を提供する。好ましくは、該方法で生成される結合体は、同様の大きさ、構造、および生物活性成分との結合を有するmPEGによって同一程度に誘導体化された結合体に比べると、低い、実質的に低い、または検出不可能な抗原性および免疫原性をもつものである。本発明はまた、このような方法によって生成される結合体を提供する。
また、本発明は、本発明に係る結合体、および薬学上または獣医学上の使用に許容されうる1種類以上の賦形剤または担体を含む薬学的または動物用の組成物を提供する。
さらなる実施態様において、本発明は、本発明に係る結合体または組成物を用いて、動物(ヒトを含む哺乳動物など)の身体疾患を防止、診断、または治療する方法も提供する。該方法の一つは、例えば、ある身体疾患(貧血、関節炎、癌、アルツハイマー病、酵素欠乏症、心疾患、高血圧、感染症、代謝疾患、神経疾患、好中球減少症、高尿酸血およびその徴候(例えば痛風)、遺伝的欠損症もしくは障害など)を患っているか、その傾向にある動物に、有効量の本発明に係る結合体または組成物を1種類以上、動物、特に哺乳動物、最も特別にはヒトに、経口、局所的、または非経口的に、例えば静脈内、筋内または皮下に投与することを含む。
さらなる実施態様において、本発明は、1種類以上の本発明に係る低抗原性結合体を含む組成物であって、1種類以上の緩衝用塩類、1種類以上の糖質賦形剤、1種類以上の担体蛋白質、1種類以上の酵素、1種類以上の界面活性剤、1種類以上の核酸分子、PEGなど1種類以上のポリマーなど、1種類以上のさらなる組成物または試薬をさらに含み得る組成物を提供する。本発明はまた、低抗原性の結合体および/または本発明の組成物を含むキットを提供する。
さらなる実施態様において、本発明は、単官能性の活性化mPEGではなく、メトキシ基またはその他のアルコキシル基をもたない単官能性の活性化ポリアルキレングリコールを用いて調製される低免疫原性のPEG−リポソームを提供する。本発明の他の好ましい実施態様は、本発明および請求項に関して次に示す図面や説明に照らして、当業者には明白である。
(発明の詳細な説明)
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての科学技術語は、本発明の分野に属する当業者によって一般的に理解されているものと同じ意味をもつ。本発明を実施または試験する際に、本明細書に記載されている方法および材料に類似または同等のいかなる方法および材料を使用することもできるが、好適な方法および材料を以下に説明する。
(定義)
約:本明細書において、いかなる数値に関するときも、「約」という語は、記載された数値の±10%の数値を意味する(例えば、「約50℃」は、45℃以上55℃以下の温度範囲を包含する。同様に、「約100mM」は、90mM以上110mM以下の濃度範囲を包含する)。
生物活性成分:本明細書において、「生物活性成分」という語は、細胞、組織、器官または生物に対しインビボ、インビトロ、またはエクスビボにおいて特定の生物学的活性をもち、1個以上のポリアルキレングリコールに結合して本発明に係る結合体を形成することができる化合物、分子、部分または複合体(complex)を意味する。好適な生物活性成分を以下で詳しく説明する。
結合した:本明細書において、「結合した」という語は、例えば化学的共役による共有結合的に、または、例えばイオン相互作用、疎水的相互作用、水素結合など非共有結合的に結合または連結していることを意味する。共有結合には、例えばエステル結合、エーテル結合、ホスホエステル結合、チオエステル結合、チオエーテル結合、ウレタン結合、アミド結合、ペプチド結合、イミド結合、炭素−硫黄結合、炭素−リン結合などありうる。「結合した」という表現は、「共役した」「連結した」および「接着した」などという表現よりも広義で、これらの表現を含む。
「共役した」:本明細書において、「共役した」という語は、共有結合または強い非共有結合的相互作用による接着を意味し、典型的および好適には、共有結合による接着を意味する。生物学的に活性のある物質を共役させるために当業者によって通常用いられる方法はすべて、本発明においても用いることができる。
病気、疾患、状態:本明細書において、「病気」または「疾患」という語は、腫瘍、癌、アレルギー、依存症、自己免疫、被毒、または最善の精神または身体の機能の欠陥など、ヒトまたは動物の悪い状態を意味する。本明細書において、「状態」は、病気と疾患を含むが、生理的状態も意味する。例えば、受胎能力があるということは生理的状態ではあるが、病気または疾患ではない。したがって、受胎能力を低下させて避妊するのに適した本発明に係る組成物は、状態(受胎可能な状態)の治療と説明されるだろうが、疾患または病気の治療とはいわない。その他の状態は、当業者に理解されている。
有効量:本明細書において、「有効量」という語は、一定の結合体または組成物が、所望の生物学的効果を実現するのに必要または十分な量を意味する。本発明に係る一定の結合体または組成物の有効量は、この選択された結果を達成する量であり、そのような量は、当業者によって通常の事項として決定しうるものである。例えば、免疫系不全を治療するための有効量は、免疫系を活性化させて、抗原に曝露したときに抗原特異的な免疫応答を生じさせるのに必要な量であり得る。また、この語は、「十分な量」と同義語である。特定の用途にとって有効量は、治療すべき病気や状態、投与すべき具体的な組成物、対象者の大きさ、および/または病気または状態の重度などの要素によって変動しうる。当業者は、過度の実験を要することなく、本発明に係る結合体または組成物の有効量を験的に決定することができる。
免疫応答:本明細書において、「免疫応答」という語は、液性免疫応答(すなわち抗体形成)、および/または、Bリンパ球および/またはTリンパ球および/または抗原提示細胞などの活性化または増殖をもたらす細胞性免疫応答を意味する。しかし、場合によっては、免疫応答は、低度のもので、本発明に従って1種類以上の物質を用いたときにだけ検出可能なものであってもよい。「免疫原性」は、生体の免疫系を刺激して、免疫系の一つ以上の機能を高めて、免疫原性物質に向かわせることができる作用物質を意味する。
一つ:本開示において、「一つ」、または「ある一つ」という語が使用されるとき、別段の記載がない限り、「少なくとも一つ」または「一つ以上」を意味する。
ポリペプチド:本明細書において、「ポリペプチド」という語は、アミド結合(ペプチド結合としても知られている)によって直鎖状に連結されたモノマー(アミノ酸)からなる分子を意味する。それは、アミノ酸の分子鎖を意味し、特定の長さの生成物を意味しない。したがって、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチド、不特定の長さのペプチド、および蛋白質も、ポリペプチドの定義に含まれる。また、この語は、例えばグリコシル化、アセチル化、リン酸化などのポリペプチドの発現後修飾による生成物も意味するものである。ポリペプチドは、組換え体でも、天然の生物源に由来するものでもよいが、必ずしも指定された核酸配列から翻訳されるものではない。化学合成によるなど、いかなる方法で生成されてもよい。
蛋白質および糖蛋白質:本明細書において、「蛋白質」という語は、通常、約5個以上、10個以上、20個以上、25個以上、50個以上、75個以上、100個以上、200個以上、500個以上、1,000個以上または2,000個以上のアミノ酸というサイズのものを意味する。蛋白質は、大抵は一定の三次元構造をもたないペプチドおよびポリペプチドとは対照的に、多数の異なった立体構造をとることができ、折り畳まれていないと呼ばれる状態ではなく、必ずしもその必要はないが、通常、一定の三次元構造をもち、折り畳まれていると言われる。しかし、ペプチドも、一定の三次元構造をもつことができる。本明細書において、糖蛋白質という語は、例えばセリンまたはアスパラギンなどの酸素含有または窒素含有アミノ酸側鎖を介して蛋白質に接着している一つ以上の糖部分を含む蛋白質を意味する。
精製された:本明細書において、分子に関して「精製された」という語が用いられる場合、精製されている分子の本来の環境中、またはそれが産生、発見、または合成された環境の中で一緒に存在した分子の濃度に比較して、精製されている分子の濃度が上昇していることを意味する。自然界で一緒に存在する分子には、蛋白質、核酸、脂質、および糖類などがあるが、一般的には、精製すべき分子の完全な状態を維持したり、その精製を容易にしたりするために加えられる水、バッファー、および試薬は含まない。例えば、粗抽出物中の所定の蛋白質を、カラムクロマトグラフィーの際に水性溶媒で希釈したとしても、対象となっている蛋白質分子から、天然には一緒に存在する核酸、所望でない蛋白質、およびその他の生物学的分子が分離された場合は、蛋白質分子はこのカラムクロマトグラフィーによって精製されていると見なされる。この定義によれば、物質は、その混入物に対して考えた場合に、5%以上、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、98%以上、99%以上または100%の純度がありうる。
残基:本明細書において、「残基」という語は、ポリペプチド骨格または側鎖中の特定のアミノ酸であって、通常、1個以上のペプチド結合含まれる結果として脱水されているものを意味する。
治療:本明細書において、「治療」、「治療する」「治療された」または「治療している」という語は、予防および/または治療を意味する。例えば、感染症について用いられる場合、この語は、対象者が感染した後に、例えば、感染症を軽減または排除したり、それが悪化するのを防止したりして、その感染症と格闘するための治療だけでなく、病原体による感染に対する対象者の抵抗性を高める予防的治療を意味することも可能で、言い換えれば、対象者が病原体に感染するか、感染が原因で生じる病気の兆候を示す可能性を低下させる予防的治療を意味することも可能である。
(概観)
数多くの以前の研究者たちが、直鎖状または分枝状の非抗原性PEGポリマーまたはその結合体の調製法を開示している(例えば米国特許第5,428,128号、第5,621,039号、第5,622,986号、第5,643,575号、第5,728,560号、第5,730,990号、第5,738,846号、第5,811,076号、第5,824,701号、第5,840,900号、第5,880,131号、第5,900,402号、第5,902,588号、第5,919,455号、第5,951,974号、第5,965,119号、第5,965,566号、第5,969,040号、第5,981,709号、第6,011,042号、第6,042,822号、第6,113,906号、第6,127,355号、第6,132,713号、第6,17,087号および第6,180,095号を参照。また、PCT国際公開WO 95/13090、および公開米国特許出願第2002/0052443号、第2002/0061307号および第2002/0098192号を参照。これらすべての開示内容は、その全文が参照として本明細書に組み込まれる)。しかし、これら以前の報告に記載されたPEGおよび結合体は、少なくとも僅かに免疫原性が残っているため、結合体を予防、診断または治療という目的で動物に導入したとき、結合体のPEG成分に対する抗体の発生という望ましくない結果をもたらす可能性がある。そのような抗体は、PEG含有生物活性結合体の速やかな除去をもたらして、その治療用組成物の生体内利用率を低下させる可能性があり(Cheng,T.−L.,et al.(1999)前掲)、また、免疫結合体による疾患を誘発する可能性もある。さらに、請求の対象となったPEGまたはその結合体に実質的な非抗原性または非免疫原性を付与するメカニズムの開示は存在していない。
本発明は、当技術分野におけるこれらの限界を克服したものである。一般的に、本発明は、さまざまな身体疾患を予防、診断および治療する上で有用な安定した組成物および方法を提供する。より具体的には、本発明は、抗原性が低下した反応性ポリマー、および蛋白質、特に治療用蛋白質の安定化されたポリマー結合体であって、抗原性が低下または実質的に低下しているか、または全く検出されない結合体を生成する方法を提供する。別の実施態様において、本発明は、本発明に係るこれらの方法によって生成された結合体、および、その結合体を含む組成物、特に薬学的組成物を提供する。更なる実施態様において、本発明は、さまざまな身体疾患の予防、診断および治療における該結合体および組成物の使用法を提供する。また、本発明は、本発明に係る結合体および/または組成物を1種類以上含むキットも提供する。
(抗原性が低下した結合体の調製)
一つの態様において、本発明は、水溶性ポリマーを、1種類以上の蛋白質および具体的には1種類以上の治療用蛋白質など、1種類以上の生物活性化合物または成分に共有結合させることによって、抗原性が低下した、抗原性が実質的に低下した、または抗原性が検出できない結合体の調製法を提供する。該結合体において、選ばれるポリマーは、蛋白質−ポリマー結合体を調製するために一般的に使用される標準的なポリマーに比べると、それ自体が低抗原性、実質的に低抗原性、または検出不能な抗原性のものである。本明細書において、「低抗原性」という語は、ポリマー(例えばPAOまたはPAG、特にPEG、および最も具体的には単官能性の活性化PEG)、または該ポリマーを含むか、それを用いて合成された結合体または組成物であって、該ポリマーが、より抗原性の高いポリマー(例えばmPEG)に対して形成された抗体と反応する能力がある程度低くなっているものを意味する。該抗原性は、より抗原性の高いポリマーに比べて、好ましくは約30%以上低下しており、より好ましくは約50%以上低下しており、最も好ましくは約75%以上低下している。次に、これを拡大すると、ポリマー(または、該ポリマーを含むか、それを用いて合成された結合体または組成物)が、対応する抗原性ポリマー(例えばmPEG)の抗原性の約20%以下、より好ましくは約15%以下、さらにより好ましくは約10%以下、そして最も好ましくは約1%以下の抗原性をもつ場合には、そのポリマー(または結合体もしくは組成物)は「実質的に低抗原性」のものと言われる。最後に、当技術分野において既知の方法(例えばELISA、またはその他の抗原性検出法であって、当技術分野において既知の方法および本明細書の実施例に記載されているものなど)で測定したときに、ポリマー(または、該ポリマーを含むか、それを用いて合成された結合体または組成物)が検出可能な抗原性をもたないとき、そのポリマー、結合体または組成物は「検出不能な抗原性」をもつと言われる。
(ポリマー)
本発明に係る結合体の調製に使用するのに特に適したポリアルキレングリコールには、ポリ(エチレングリコール)、およびエチレンオキシドとプロピレンオキシドのコポリマーがあるがこれらに限定されず、特に好適なものはPEGであり、より好適なのは、単官能性の活性化ヒドロキシPEGである(例えば、一方の末端が活性化されたヒドロキシPEGであって、ヒドロキシPEG−モノカルボン酸、ヒドロキシPEG−モノアルデヒド、ヒドロキシPEG−モノアミン、ヒドロキシPEG−モノヒドラジド、ヒドロキシPEG−モノカルバゼート、ヒドロキシPEG−モノヨードアセトアミド、ヒドロキシPEG−モノマレイミド、ヒドロキシPEG−モノオルトピリジルジスルフィド、ヒドロキシPEG−モノオキシム、ヒドロキシPEG−モノフェニルカーボネート、ヒドロキシPEG−モノフェニルグリオキサール、ヒドロキシPEG−モノチアゾリジン−2−チオン、ヒドロキシPEG−モノチオエステル、ヒドロキシPEG−モノチオール、ヒドロキシPEG−モノトリアジン、およびヒドロキシPEG−モノビニルスルホン等の反応性エステルを含む)。
本発明に係る結合体の調製に使用される特に好適なポリマーであって、低抗原性、実質的に低抗原性、または検出不能な抗原性をもつポリマーは、メトキシル基、その他のアルコキシル基も、アリールオキシル基含まない単官能性の活性化PEGである。該単官能性の活性化PEGを、本発明に係る結合体の合成において単官能性の活性化mPEGの代わりに用いると、得られた結合体に予想外に低い抗原性を付与し、すなわち同じ生物活性成分のmPEG結合体に対して生じる抗体と相互作用する能力を低下させることができる。得られる結合体は免疫原性も低い。すなわち免疫応答を誘発する能力も低い。
本発明の一態様において、単官能性の活性化PEGは、活性化基を可逆的にブロックした適当な誘導体をエチレンオキシドの重合開始剤として用いて合成できる(Akiyama,Y.,et al.(2000)Bioconjug Chem,11:947−950)。Akiyamaらは、3,3−ジエトキシプロパノレート・カリウム(potassium 3,3−diethoxypropanolate)をエチレンオキシドの重合開始剤として用いてPEGのモノヒドロキシル、モノアセタール誘導体を合成する条件を提示している。Akiyamaらは、この中間体の最も望ましい低抗原性または低免疫原性を認識していなかったため、塩化メタンスルホニルを付加して重合を終止させることによって末端のヒドロキシル基をチオール基に変換することによって、本発明のPEG誘導体ではなく、ヘテロ二官能性のPEGを生成した。この研究者グループが、ヒドロキシル基を末端にもつ単官能性の活性化PEGの有用性を認識していなかったことの更なる証拠として、彼らは、モノヒドロキシル基をもつ単官能性活性化されたPEGから、場合によっては、ヒドロキシPEGをメトキシル基で「末端キャップ」さえ行って、別のヘテロ二官能性PEGを合成する方法を発表して特許を得ていることが挙げられる。同様に、Bentley,M.D.らは、公開米国特許出願第2002/0072573A1号において、ヒドロキシル末端をもつ単官能性活性化されたポリマーの免疫学的有用性を認識していなかったことを反映するポリマー組成物と方法を開示しており、該ポリマーの末端ヒドロキシル基はメトキシル基に変換することが望ましいと述べている。
本発明の別の態様において、単官能性活性化PEGは、ビス−活性化PEGの量を許容できるほど低レベル、例えば5%未満、好ましくは2%未満、またはより好ましくは1%未満に制限するために、実施例5に示した方法に代わるものとして、両端にヒドロキシル基を含む直鎖状PEG(「PEGジオール」)の活性化の程度を調節することによって合成できる。特に好適な態様において、PEGを誘導体化した後、誘導体化基を除去することなしに非反応性ブロッキング基を取り除くことができる単官能性PEGから、単官能性活性化PEGを合成することができる。誘導体化PEGの一例はPEG−カルボン酸であり、誘導体化の後に除去することができる非反応性ブロッキング基の例は、アリールオキシル基(Bentley,M.D.,et al.,PCT国際公開WO 01/26692 A1)、トリチル基(Kocienski,P.J.(1994)Protecting Groups,GeorThieme Verlag,Stuttgart,pp.54−58)、およびt−ブトキシル基である。t−ブトキシルPEG−カルボン酸は、例えばN−ヒドロキシスクシンイミドで活性化することができる。最後に、t−ブトキシル基を無水酸分解によって除去して、ポリマーの遠位末端にメトキシ基ではなくヒドロキシル基をもつ活性化PEG−カルボン酸誘導体を生成することができる。より好適な実施態様において、t−ブトキシPEG−カルボン酸は、N−ヒドロキシスクシンイミドでカルボキシル基を活性化する前に、酸分解によってヒドロキシPEG−カルボン酸に変換することができる。本願発明の別の実施態様において、t−ブトキシPEGをハロアセタールと接触させてから、t−ブトキシル基を除去するために選択的に無水酸分解することにより、この産物をヒドロキシPEG−アセタールまたはヒドロキシPEG−アルデヒドに変換することによってt−ブトキシPEG−アセタールが合成される。このアセタールは、還元的アルキル化によってアミン含有化合物に共役させる準備としてアルデヒド(またはアルデヒド水和物)に変換することができる(Bentley,M.D.,et al.,米国特許第5,990,237号)。別の実施態様において、ポリマーの反応性末端から遠位にあるアリールオキシル保護基を触媒による水素添加分解によって除去して、本願発明に係るモノ活性化(monoactivated)ヒドロキシPAGを生成することができる。あるいは、単官能性活性化ヒドロキシPAGを合成する際に、実施例6に記載したように、末端ヒドロキシル基1個以外の基すべての可逆的ブロッキングを利用することができる。
本発明に係る結合体の調製において使用するPAGポリマーは、直鎖状ポリマーでもよいし、ポリマー分子の中の1箇所以上で分枝していてもよい。また、本発明に係る結合体を形成させるために使用するポリマーは、ポリ(エチレングリコール)のように、単一のモノマー型が複数単位連結してポリマーを形成しているホモポリマーでもよいし、ヘテロポリマーまたはコポリマー(エチレンオキシドとプロピレンオキシドのコポリマーのように、2種類以上の構造体のモノマー単位が連結してポリマーを形成している)でもよい。コポリマーはまた、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、あるいはその他のコポリマーであってもよい。
本発明にしたがって使用されるポリマーは、非反応性ポリマーでも反応性ポリマーでもよい。本明細書において、「非反応性ポリマー」とは、蛋白質に共有結合しないポリマーである。該「非反応性ポリマー」の例は、一方の末端にヒドロキシル基をもち他方の末端にメトキシル基をもつエチレンオキシドユニットの直鎖状ポリマーであるmPEG、および、両末端にヒドロキシル基をもつエチレンオキシドユニットの直鎖状ポリマーであるPEGジオールなどであるが、これらに限定されるものではない。本明細書において、「反応性ポリマー」とは、例えば生物活性成分(蛋白質など)のチオール基または、リジン残基のアルファアミノ基またはプシロンアミノ基であるがこれらに限定されないアミノ基などの溶媒接触可能な求核基と反応することができるポリマーである。「反応性ポリマー」の例は、ヒドロキシル末端基が、スクシンイミジルプロピオン酸(「SPA−PEG」のものなど)もしくはp−ニトロフェニルカーボネート(「NPC−PEG」のものなど)、またはPEG−アルデヒドにおけるようなアルデヒドなどの求電子基に変換されているか、求電子基によって置換されているPEGなどであるが、これらに限定されるものではない。ポリアルキレンオキシド以外に、適当なポリマーとしては、ポリビニルアルコール、ポリ(オキシエチレン−オキシメチレン)コポリマー、ポリアミド(例えばRose,K.,PCT国際公開WO 00/12587)、ポリカルボキシレート、ポリ(ビニールピロリドン)(von Specht,B.−U.,et al.(1973)Hoppe−Seyler’s Z Physiol Chem 354:1659−1660)、ポリD−アミノ酸および/またはポリL−アミノ酸、ポリアクリロイルモルフォリン(Rocca,M.,et al.(1996)Int J Artif Organs 19:730−734)、および デキストラン(Iakunitskaya,L.M.,et al.(1980).Prikl Biokhim Mikrobiol 16:232−237)などでもよい。標的生物活性成分上のさまざまな部位と多少なりとも選択的に反応するPEG、PEOおよびその他のPAOの誘導体は、当技術分野においてよく知られており、Fluka(Milwaukee,WI)、NOF Corporation(Tokyo,Japan);Shearwater Corporation(Huntsville,AL)、Nektar Therapeuticsの子会社(San Carlos,CA)、Sigma Chemical Company(St.Louis,MO)またはSunBio,Inc(Anyang City,South Korea)などの販売元から購入することができる。
本発明に係る方法および組成物において使用するのに適した活性型ポリマーには、当技術分野において知られている、ヒドロキシル基末端をもつ単官能性活性型ポリマーなどがありうる。例えば、(活性化基の質量を除いて)約1kDaから約100kDaの範囲の分子量など、さまざまなサイズの直鎖状または分枝状のPAOが適している。適当な分子量範囲は、約2kDaから約60kDa、約2kDaから約30kDa、約5kDaから約20kDa、約10kDaから約20kDa、および約18kDaから約60kDa、約20kDaから約30kDaであるが、これらに限定されるものではない。直鎖状PEGの場合、約20kDaから約30kDaの分子量範囲が、エチレンオキシドの450個から680個のモノマー単位の範囲内での重合度(n)に相当する。治療用蛋白質を、この後者の比較的高い分子量の範囲(すなわち20〜30kDaを超える)のポリマーに共役させることの有益さは、mPEGの免疫原性が認識されるよりもずっと前から認識されていたことに留意されたい(1989年2月9日に公開された、Saifer,M.,et al.,PCT国際公開WO 89/01033、これは、その全文が参照として本明細書に組み込まれている)。
必要に応じて、直鎖状ポリマーは、一方の末端または両端に反応性基をもち、それによって「反応性ポリマー」を創出することができる。本発明の一定の実施態様において、Harris,J.M.らは、その全文を参照として本明細書に組み込んでいる米国特許第5,672,662号において開示しているPEGのモノプロピオン酸誘導体のスクシンイミジルエステル、またはその他のスクシンイミド活性化PEG−カルボン酸を使用することが望ましいことがある。一定の別の実施態様において、Saifer,M.ら、米国特許第5,006,333号、第5,080,891号、第5,283,317号および第5,468,478号に記載されている、PEGのスクシンイミジルカーボネート誘導体(「SC−PEG」)、または、Kelly,S.J.ら(2001)前掲;PCT国際公開WO 00/07629 A2、前掲、およびこれに対応する米国特許第6,576,235号、およびPCT国際公開WO 01/59078 A2、前掲に記載されている、PEGのp−ニトロフェニルカーボネート誘導体のいずれかを使用することが望ましいことがある。さらに、別のタイプの反応性基を用いて、蛋白質のポリマー結合体を合成することができる。これらの誘導体は、PEGのアルデヒド誘導体(Royer,G.P.,米国特許第4,002,531号;Harris,J.M.,et al.,米国特許第5,252,714号)、PEGのアミン、ブロモフェニルーボネート、カルボニルイミダゾール、クロロフェニルカーボネート、フルオロフェニルカーボネート、ヒドラジド、カルバゼート、ヨードアセトアミド、マレイミド、オルトピリジルジスルフィド、オキシム、フェニルグリオキサール、チアゾリジン−2−チオン、チオエステル、チオール、トリアジン、およびビニルスルホンの各誘導体などであるが、これらに限定されるものではない。
本発明の一定の実施態様において、PEGのようなポリマーが生物活性成分に結合して本発明に係る結合体を産生する反応において分子内および分子間での架橋形成を最小限にすることが望ましい。これは、一方の末端だけが活性化されているポリマー(本明細書では「単官能性活性化PEG」または「単官能性活性化PAG」と呼ばれている)、または二官能性活性化ポリマー(直鎖状PEGの場合、「ビス−活性化PEGジオール」と呼ばれる)の割合が30%未満、または好ましくは10%未満または最も好ましくは2%未満(w/w)のポリマーを用いて達成することができる。主に単官能性である活性化ポリマーの使用によって、以下に示すものの形成を最小限に抑えることができる各蛋白質分子内における分子内架橋、ポリマーの一本鎖が2個の蛋白質分子を結合している「ダンベル」構造、およびより大きな凝集体またはゲル。アミノ基と反応する活性化ポリマーが使用されると、蛋白質の1分子に結合できるポリマー鎖の理論上の最大数は、アミノ基の総数と一致する。ポリマー共役の具体的な条件下で蛋白質の表面上にあって結合可能なアミノ基の実際数は、理論的な最大値よりも少ない可能性がある。
本発明に係る結合体は、1本以上のポリアルキレングリコール鎖、好ましくは約1本から約100本の鎖、治療用酵素のサブユニット当たり約1本から約20本の鎖、レセプター結合サイトカイン、成長因子、蛋白質ホルモンおよびコロニー刺激因子のサブユニット当たり約1本から約3本の鎖、より好ましくは約1本から約2本の鎖を含むことが可能である。特定の好適な実施態様において、結合体を調製する際に使用されるポリアルキレングリコールは、1本または2本のポリ(エチレングリコール)鎖(具体的には、カルボキシPEG、ヒドロキシPEG、ジヒドロキシPEG、またはPEGアセタール)である。一定の前記実施態様において、直鎖状または分枝状のポリアルキレングリコールは、直鎖状の場合、約1kDaから約100kDa、好ましくは約2kDaから約60kDa、約5kDaから約20kDa、約10kDaから約20kDa、約18kDaから約60kDa、そして最も好ましくは約18kDaから約22kDa、または約27kDaから約33kDaの分子量を有し、該ポリマーが、同じ質量の2本鎖分枝を持つ場合には、全部で約36kDaから約44kDaの分子量を有する。
(生物活性成分)
上記した通り、本発明に係る結合体は、1種類以上の生物活性成分に共有結合している1種類以上のPAGまたはPAOを含み、特に1種類以上のPEG鎖を含む。1種類以上のポリマー(またはその鎖)が結合している生物活性成分は、本明細書では、さまざまかつ同等のものとして「結合した生物活性成分」または「修飾された生物活性成分」などと呼ばれる。これらの語は、本明細書においては、共有結合している1種類以上のポリマーを持っていない生物活性成分をすべて意味する「非結合生物活性成分」、「初期生物活性成分」または「非修飾生物活性成分」と区別されるべき語である。別の態様において、本発明は、ポリマーを混合することによって、生物活性成分の溶液を安定化させる方法および組成物を提供する。しかし、当然ながら、「非結合」、「非修飾」または「初期」の生物活性成分は、野生型または天然型の分子と比べると、別の非ポリマー結合体または修飾を含んでいる場合があるが、それでも、本発明によれば、生物活性成分は、「非結合」、「非修飾」または「初期」であると見なされる。それは、生物活性成分が、ポリマーの結合に関して「非結合」、「非修飾」または「初期」の状態であるからである。
生物活性成分を「安定化させる」(または「安定化法」または「安定化した生物活性成分」)という語は、生物活性成分が、本発明に係る方法によって安定化されていること(すなわち、ポリマーが共有結合しているか、本発明に係る方法によって混合されている生物活性成分)を意味する。該安定化された生物活性成分は、安定化されていない生物活性成分(すなわち、ポリマーが共有結合または混合されていない生物活性成分)に比べて、一定の変化した生化学的および生物物理学的性質を示すはずである。特に酵素などの蛋白質に関する、このような改変された生化学的および生物物理学的パラメータには、自己分解の低下、および具体的には、一定の過酷な環境または実験条件下でインキュベートする際に酵素活性が維持されるということが含まれうる。本発明の一定の実施態様において、改変された生化学的および生物物理学的なパラメータは、例えばインビボにおける循環液中の半減期の延長、生体内利用率の増加などであろう。
本発明において、生物学的(すなわち生理学的、生化学的または薬学的)活性を有する成分(一般的には分子または高分子の結合体)を初期成分として適宜使用することができる。該生物活性成分は、蛋白質、ポリペプチド、ペプチド、治療用ウイルス、有機化合物などであるが、これらに限定されるものではない。また、生物活性成分は、該蛋白質、ポリペプチド、ペプチド、治療用ウイルス、有機化合物などの断片、変異体、および誘導体を含み、特に生物学的(すなわち生理学的、生化学的または薬学的)活性を有する断片、変異体、および誘導体も含む。
本発明において生物活性成分として有用な有機化合物で適当なものは、タキサンなどの部分、アントラサイクリン、ダウノルビシンを含む化合物、ドキソルビシン、p−アミノアニリンマスタード(mustard)、メルファラン、シトシンアラビノシド(「Ara−C」)、およびその他、例えばゲムシタビンなどの代謝拮抗化合物などがあるが、これらに限定されるものではない。あるいは、生物活性成分は、心血管作動薬、抗腫瘍薬、抗感染薬、ナイスタチンおよびアンフォテリシンなどの抗菌薬、抗不安薬、胃腸薬、中枢神経系で活性をもつ薬剤、鎮痛剤、不妊治療剤、避妊剤、抗炎症剤、ステロイド剤、抗尿酸血症剤、血管拡張剤、血管収縮剤などである。
本発明において生物活性成分として有用なペプチド、ポリペプチド、酵素、および糖蛋白質など、その他の蛋白質は、利用可能なアミノ基、チオール基、または、その他ポリマーが結合できる基を一つ以上有するペプチド、ポリペプチド、酵素、およびその他の蛋白質などである。該成分は、有機溶媒中で反応を触媒できるという活性だけでなく、生理学的または薬理学的な活性を有する物質などを含む。対象となるペプチド、ポリペプチドおよび蛋白質は、ヘモグロビン、例えば第VII因子、第VIII因子、および第IX因子などの血液凝固因子のような血清蛋白質、免疫グロブリン、インシュリン、例えばIL−1からIL−18までのインターロイキンなどのサイトカイン、インターフェロン(例えばIFN−アルファ、IFN−ベータ、IFN−ガンマ、およびコンセンサスIFN)、GM−CSF、G−CSFなどのコロニー刺激因子、マクロファージコロニー刺激因子、血小板増加因子、巨核球成長発育因子、エリスロポエチン、血小板由来増殖因子、ホスホリパーゼ活性化蛋白質(「PLAP」)、白血病抑制因子(当技術分野において「スチール因子(Steel Factor)」としても知られる「LIF」)、神経栄養因子、および幹細胞因子、ならびにそれらのペプチド模倣剤などであるが、これらに限定されるものではない。生物活性成分のレセプター結合アンタゴニストは、それ自体が、本発明の生物活性成分として使用するのに適している。一般的な生物学的または治療学的に興味のあるその他の蛋白質は、インシュリン、レクチンやリシンなどの植物蛋白質、腫瘍壊死因子およびその関連蛋白質、例えばTGF−アルファまたはTGF−ベータなどのトランスフォーミング増殖因子、線維芽細胞増殖因子、上皮細胞増殖因子、肝細胞増殖因子、ホルモン、ソマトメジン、エリスロポエチン、色素ホルモン、視床下部放出因子、抗利尿ホルモン、プロアクチン、絨毛性ゴナドトロピン、卵胞刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、プロラクチン、組織プラスミノゲン活性化因子、これらのレセプター結合蛋白質アンタゴニストなどである。これらの蛋白質の多くは、グリコシル化型および非グリコシル化型で存在する。非グリコシル化型は、原核生物において組換え技術を使用してそれらを産生させることができる。該非グリコシル化型産物は、本発明の適当な生物活性成分であるペプチドおよび蛋白質に含まれる。
対象となる酵素は、糖質特異的酵素、蛋白質分解酵素、酸化還元酵素、転移酵素、加水分解酵素、リアーゼ、イソメラーゼ、およびリガーゼなどである。特定の酵素に限定されることなく、対象となる酵素の例は、アスパラギナーゼ、アルギナーゼ、アルギニン・デイミナーゼ、アデノシンデアミナーゼ、スーパーオキシド・ディスムターゼ、エンドトキシナーゼ、カタラーゼ、キモトリプシン、リパーゼ、ウリカーゼ、アデノシン・ジホスファターゼ、チロシナーゼ、およびビリルビン・オキシダーゼなどである。対象となる糖特異的酵素は、グルコース・オキシダーゼ、グルコシダーゼ、ガラクトシダーゼ、グルコセレブロシダーゼ、グルクロニダーゼなどである。
また、本発明に係る結合体における生物活性成分として使用するのに適しているのは、インビボで生物活性を示す化合物である。該化合物は、アミノ酸配列、核酸(DNA、RNA)、ペプチド核酸(「PNA」)、抗体断片、一本鎖結合蛋白質(例えばLadner,R.C.,et al.,米国特許第4,946,778号を参照。この開示内容は、参照として本明細書に組み込まれる)、可溶性レセプターを含む結合分子、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、触媒性抗体、および抗体またはその断片の融合産物などであるが、これらに限定されるものではない。
蛋白質またはその一部は、化学合成、細胞、組織または器官の培養、動物源からの抽出など当業者に既知の技術を用いて、または組換えDNA法によって調製または単離することができる。アミノ酸配列、ポリペプチド、および蛋白質など組換え遺伝子源も考慮されている。前記材料は、例えばマウス、ウサギ、ブタ、ヤギおよびウシなどの遺伝子組換え動物から得ることができるが、蛋白質は、ミルク、血液または組織で蛋白質が発現され、または、遺伝子組換え鳥類の卵で発現される。遺伝子組換え昆虫、真菌類、またはバキュロウイルスの発現系も材料源として考えられる。さらに、蛋白質の変異型も本発明の範囲に含まれる。
対象となる他の蛋白質は、ブタクサ、抗原E、ミツバチ毒、ダニアレルギー源などのアレルギー性蛋白質である。上記したものは、本発明に適した蛋白質を例示したものである。当然ながら、本明細書に具体的に記載されていないが、本発明に係る1種類以上のポリマーと結合するのに適した1種類以上の利用可能なアミノ基またはチオール基をもつ他のペプチド、ポリペプチドもしくは蛋白質またはその断片も意図されており、本発明の範囲内に含まれる。
本発明の好適な態様において、ポリマー結合できる化合物は、例えばヒトを含む哺乳動物などの動物の、治療が望ましい状態に対する治療において医薬品または診断に用いるのに適した生物活性型化合物である。上記リストは例示的なものであって、修飾しうる化合物を限定するためのものではない。当業者は、過度な実験を行うことなく、他の同様の化合物を同様に修飾できることを理解している。当然のことながら、具体的に記載されていないが、本発明に係る1種類以上のポリマーと結合するために接触可能なアミノ基またはチオール基など、1種類以上の利用可能な求核基をもつ生物活性物質も目的とされており、本発明の範囲内に含まれる。
本発明に係る結合体に取り込まれるのに適した生物活性成分は、結合体になっている間、または結合体から加水分解によって遊離した直後にはそれ自体の活性がなくても、さらに化学的プロセシングまたは反応を受けた後活性型になる物質または化合物でもよいことが知られている。例えば、本発明の結合体の形で血流に運搬される抗癌剤は、癌細胞または腫瘍細胞に入り込んで、例えばその細胞にユニークなまたは特別に有効な酵素反応によって癌細胞または腫瘍細胞の中で起こる化学的プロセスによって活性化されるまでは不活性のままである。
本発明に係る結合体および組成物において生物活性化合物として使用されるのに適した他の化合物は、カンプトシンおよびそれに関連するトポイソメラーゼIのインヒビターのような、ヒドロキシル基含有化合物などである。カンプトシンは、中国原産の木カンレンボク(Camptotheca accuminata)、およびインド原産の木クサミズキ(Nothapodytes foetida)から産生される水に対して不溶性の細胞毒性アルカロイドである。カンプトシンおよびそれに関連する化合物、ならびにそのアナログも抗癌剤または抗腫瘍剤の可能性があることが知られており、これらの活性をインビトロおよびインビボで示すことが明らかになっている(例えば米国特許第4,943,579号および第5,004,758号、および再発行第32,518号を参照。これらの内容は、参照として本明細書に組み込まれる)。該化合物およびそれらの誘導体は、過度な実験を行うことなく、既知の合成法を用いて生成することができる。ここで使用しうる好適なカンプトシン誘導体は、本発明に係る単官能性の活性化PEGなどの活性化型ポリマーと直接反応することができる20−OH基または別のヒドロキシル基を含む。
本発明の結合体において生物活性化合物として使用されるのに適したさらに別のヒドロキシル基含有部分には、タキサンおよびパクリタキセル誘導体などがある。本発明の目的にとって、「タキサン」という語は、テルペン類のタキサンファミリーに含まれるすべての化合物を包含する。したがって、タキソール(パクリタキセル)、3’−置換型t−ブトキシカルボニル−アミン誘導体(タキソテール)など、および、通常の有機技術を用いて容易に合成でき、Sigma(St.Louis,MO)などの販売元から調達可能なその他のアナログが本発明の範囲に含まれる。これらの化合物およびそれらの誘導体は、有効な抗癌剤であることが分かっている。数多くの研究が、これらの薬剤にはさまざまな悪性腫瘍およびその他の癌に対する活性があることを指摘している。
当業者には理解できるように、当技術分野において既知であり容易に利用できる生物活性成分は、本発明にしたがって、低抗原性、実質的に低抗原性、または検出不能な抗原性を有する単官能性ポリマーと複合するのに適している。本発明の一定の態様によれば、これらの初期生物活性成分を用いて、1個以上のPAGまたはPAOが生物活性分子に共有結合している結合体を産生する。ポリマーが結合しうる初期生物活性成分の分子上の部位は、有利にもペプチド分子上にリジン残基を含み、この残基はそれぞれ2個のアミノ基を有する。これらのアミノ基の一方(アルファアミノ基)は、(リジンが蛋白質のアミノ末端残基でないときは)ペプチド結合形成に関与するが、残りの残基(プシロンアミノ基)はポリメラーゼ結合に利用可能なままである。ポリマーが有利に結合できる、蛋白質またはペプチド分子上のこの他の部位は、とりわけ、ポリペプチドのアミノ末端残基にあるアルファアミノ基、蛋白質またはペプチド上にあるシステイン残基のスルフヒドリル基(Braxton,S.M.,米国特許第5,766,897号)であって、これには、ビニルスルホン、マレイミド、ヨードアセトアミド、ブロモアセトアミド、または、当技術分野において知られているチオール反応性基の中ではとりわけオルトピリジルジスルフィドによって活性化されたポリマーが結合できるスルフヒドリル基、フェニルグリオキサールによって活性化されたポリマーが結合できる、蛋白質またはペプチド上のアルギニン残基のグアニド基(Sano,A.,et al.,米国特許第5,093,531号)、C−末端残基のアルファカルボキシル基、蛋白質またはペプチド上のアスパラギン酸残基のベータ・カルボキシル基、および蛋白質またはペプチド上のグルタミン酸残基のガンマ・カルボキシル基(Sakane,T.,et al.,(1997)Pharm Res 14:1085−1091)であって、ポリマーのアミノ誘導体またはヒドラジン誘導体が結合できるカルボキシル基などである。もちろん、1種類以上のポリアルキレンオキシドが有利に結合できる、蛋白質またはペプチド分子上にある別の適当な部位も、特に、ペプチドの一次構造および三次構造ならびに本明細書の開示内容を考慮すれば、当業者には容易に明らかであろう。
標的生物活性成分(例えば蛋白質)にポリマーを結合させる前に、不純物を取り除くために成分を精製するのが有利なことがあり、そうでない場合、本来の成分の修飾程度を解析しても、成分の断片と別の不純物がポリマー結合体を形成することによって複雑な状態になる可能性がある。生物活性成分の精製は、複合すべき蛋白質が、天然のものから得られたか、組換え法によって生成されたかに関係なく有益である。なぜなら、どちらに由来するものであっても、調製物には不純物が存在すると考えられるからである。一定の生物活性成分の精製には、電気泳動、透析、塩抽出法(硫酸アンモニウム沈殿法)、クロマトグラフィー(アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(「HPLC」)、中高圧液体クロマトグラフィー(「FPLC」など)、またはこれらを併用したもの等があるが、これらに限定されない、当業者によく知られた、当技術分野において公知の方法によって行うことができる。しかし、当然のことながら、粗調製物中の生物活性成分(特には蛋白質)も、本発明に係る方法によって、有利にポリマーと結合させることができるため、一定の生物活性成分の精製は、本発明に係るポリマー−生物活性成分結合体の調製にとって必須ではない。
(ポリマーの生物活性成分への結合)
上記したように、好ましくは、共役基との反応によって活性化されている、本発明を実施するときに使用されるPAGは、生物活性成分分子上に存在しうるいくつかの基、例えば、ペプチド結合に関与しないカルボキシル基またはアミノ基、チオール基、およびフェノールヒドロキシル(phenolic hydroxyl)基のいずれかに結合することができる。一定のペプチドまたは蛋白質にとって、活性化されたPAGが、N−末端アルファアミノ基に、および/またはリジン残基のアミノ基に、および/またはシステイン残基のスルフヒドリル基に結合するのが好適である。
精製または精製済みの生物活性成分(例えば蛋白質)は、アルカリ性による蛋白質の不活性化を逆転させることができるpH約11または最高のpHから、酸性による蛋白質の不活性化を逆転させることができるpH5または最低のpHまでの範囲内のpHをもつバッファーの中で、活性化されたポリマーとインキュベートすることができる(Arakawa,T.,et al.(1990)Biopolymers 29:1065−1068)。当技術分野において知られているように、また、当業者であれば容易に認識できるように、ポリマーを蛋白質に結合させるのに低いpHを用いることは、一定の蛋白質または結合化学法にとっては望ましいことがある。しかし、高いpHの利用は、蛋白質の可溶性および安定性に対するpHの効果、および、当技術分野において公知の方法によってポリマーが標的蛋白質に結合する速度に対する活性化ポリマーの(自然に、または蛋白質自身による触媒による)不活性化速度によっては、一定の別の蛋白質または一定の結合化学法にとって有利なことがある。
PAGと生物活性成分の間の反応は、通常、溶液中、好ましくは、約5から約11の範囲内のpHを提供できる水性バッファー溶液中で行われる。PAGを蛋白質性の生物活性成分(例えばポリペプチド、ペプチド、蛋白質、またはそれらの断片)に結合させるのに特に好適なのは、約7から約9のpH値であり、最も好ましくは約7から約8である。別の実施態様において、約4.5から約6.5のpH値が好適である。25℃でこれらの範囲のpH値を提供できるバッファー溶液の例には以下のものがあるが、これらに限定されるものではない。
50mLの0.1モル濃度のリン酸二水素カリウム+5.6から46.1mLの0.1モル濃度NaOHを100mLに希釈したもの。
50mLの0.025モル濃度ホウ酸+2.0から20.5mLの0.1モル濃度HClを100mLに希釈したもの。
50mLの0.025モル濃度ホウ酸+0.9から18.3mLの0.1モル濃度NaOHを100mLに希釈したもの。
50mLの0.05モル濃度重炭酸ナトリウム+5.0から10.7mLの0.1モル濃度NaOHを100mLに希釈したもの。
50mLの0.05モル濃度酢酸+5.0から30mLの0.1モル濃度NaOHを100mLに希釈したもの。
50mLの0.05モル濃度Tris HCl+10から50mLの0.1モル濃度トリス塩基を100mLに希釈したもの。
特定の所望のpHを提供するのに使用すべき酸または塩基の量の正確な調整は、当業者によって容易に決定しうることである。
もし、所定の場合に、生物学的バッファーの使用が必要になったら、以下のもののうちの一つを使用することができる。
ヒドロキシエチルピペリジン−エタンスルホン酸(「HEPES」)
3−(N−モルフォリノ)プロパンスルホン酸(「MOPS」)
3−(N−モルフォリノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(「MOPSO」)
ピペルジン−N,N’−ビス(2−ヒドロキシプロパンスルホン酸)(「POPSO」)
PAGと生物活性成分の間の反応は、通常、不活性化または変性を生じさせることのない条件下で、例えば、生物活性成分が実質的な生物活性を維持する温度で、また、反応物の適切な混合を確実に行うのに必要な程度以上の攪拌は行わないで行われる。PAGと生物活性成分の間の反応は、好ましくは約4℃から約40℃の範囲内の温度で行われる。より好ましくは、約4℃から約8℃、または室温、すなわち約20℃から約25℃で行われる。PAGと、例えばペプチドおよび生物活性有機化学物質などの非蛋白質性生物活性成分との間の反応は、PAGに結合される特定の生物活性有機化学物質の安定性に適合する場合より高いまたはより低い温度で行うことができる。
生物活性成分の量に対する使用ポリマーの量が、生物活性成分に対するポリマー結合の所望の程度に依存することは、当業者には容易に理解できよう。例えば、PAGを、特定の割合の溶媒接触可能なリジン残基(生物活性成分がポリペプチドの場合)と反応させることが望ましい場合には、結合すべきリジンのモル濃度以上のPAGのモル濃度が必要であろう。生物活性成分の分子上の溶媒接触可能部位のすべてよりは少ない部位を誘導体化する場合には、明らかにそれに応じて、より少ないPAGが必要となる。しかし、一般的には、過剰なモル濃度のPAGを使用する場合には、本発明者らは、2から10までの次数でモル濃度が過剰であることが好適であると判断している。
反応に必要な時間は、反応温度、反応物の濃度、および所望の誘導体化の程度など、いくつかのファクターによって変わる。サイズ排除クロマトグラフィーまたはゲル電気泳動によって時間を置いて試料を分析するなど、常法によって反応の経過を監視することができる。過剰なアミン反応性PAGを取り除くため、反応性基を有する低分子化合物、例えばグリシンを加えることによって、またはクロマトグラフィーによる分画によって、所望であれば、反応を適宜終わらせることができる。室温では、PAGを生物活性成分のほとんどの結合基(例えば、ポリペプチド鎖のリジン基)と反応させるには約15分間から24時間という反応時間が一般的には必要とされよう。温度が低くなると、より長い反応時間が必要となる場合がある。当業者は、PAGの量とタイプだけでなく、結合させる時間も、使用される生物活性成分を不活性化させるようなものであってはならない。すなわち、生物活性成分の生物学的活性を実質的に喪失させてはならない。「生物活性成分の生物学的活性を実質的に喪失させない」とは、PAG複合生物活性成分が、PAGと複合していない同じ生物活性成分によってインビトロまたはインビボで示される生物活性(例えば酵素活性、レセプター結合能力、抗腫瘍活性など)のレベルの約10%以上、好ましくは約20%、35%、50%、75%、90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれよりも高いレベルの生物活性を示すことを意味する。
ポリマー結合生物活性成分の精製は、当業者が広く用いる手段、例えば、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、限外濾過、透析などによって行うことができる。反応生成物の溶液は、必要に応じて、ロータリー・エバポレータを用いて濃縮することができ、生成物を凍結乾燥によって乾燥状態にして得ることもできる。
使用される特定の生物活性成分、およびそれがPAGと反応させられる程度によっては、生じる付加体は、反応させていない生物活性成分と比べて、生物学的活性の有効レベルを維持しつつ、低い抗原性および免疫原性、高い循環寿命、および高い安定性を示して、診断上または治療上有効であると期待される。
求核試薬および活性化ポリマーのpH要求に応じて緩衝することができる水性反応媒体の中で、生物活性成分を、上記した単官能性の活性化分枝状ポリ(エチレングリコール)ポリマー(特に1種類以上の単官能性に活性化された分枝状ヒドロキシPEG、例えばジヒドロキシPEG)と反応させることができる。反応のための最適なpHは、通常、ほとんどのポリペプチドの可溶性と安定性を維持するための約6.5から約8.5であり、好ましくは約7.4である。活性化PAG、例えばNPC−PEGを哺乳動物ウリカーゼに結合させるのに最適なpHは、およそpH 10であり、一方、一定の活性化PAGを、蛋白質またはペプチドのN−末端アルファアミノ基に選択的に結合させるのに最適なpHは、約4から約7の範囲にある。生物活性成分の安定性、反応効率などを維持するのに必要な最適な反応条件は、当業者が決めうることである。好適な温度範囲は、約4℃から約40℃である。反応温度は、求核試薬が変性または分解する温度を超えてはならない。求核試薬は、過剰量の活性化分枝状ポリマーと反応させることが好適である。反応後、結合体は、ダイアフィルトレーション、カラムクロマトグラフィー、それらを併用したものなどにより回収・精製される。
分子モデリングを使用することによって、蛋白質へのポリマーの結合を最適化する方法が容易になる。例えば、X線結晶データを用いて、蛋白質の接触可能な表面のコンピュータ画像を生成することができる(Sayle,R.A.,et al.(1995)Trends Biochem Sci 20:374−376)。また、核磁気共鳴測定法に基づく構造解析もこの点で有益である。特定の活性化ポリマーが反応しうる接触可能部位の分画、およびさまざまな部位の間でのポリマー鎖の分布は、適当な活性化基、蛋白質に対するポリマーのモル比、および結合反応の適当な条件(例えばpH、温度、反応物の濃度、インキュベート時間)を選択することによって調節することができる。一定の環境において、生物活性への悪影響を最小限に抑えるのに十分な程度酵素の活性部位から離れた残基にポリマーを結合させる方が有利なこともある。例えば、プロテイナーゼKの表面は、さまざまな化学法により活性化されたポリマーが結合できる部位を多く含んでいる。しかし、プロテイナーゼKの溶媒接触が可能なリジン残基のほとんどが、触媒部位から比較的遠く離れた酵素領域に専ら位置しているという本発明者らの数名による以前の発見によって、この具体的な酵素については、アミン反応性ポリマーの使用が特に望ましいものとなる(2002年6月28日に出願された共同所有の同時係属米国特許出願第10/183,607号を参照。これは、その全文が参照として本明細書に組み込まれる)。
一定の実施態様において(例えば、触媒部位が、活性化ポリマーが反応できるアミノ基(上記したものなど)を含む酵素の場合)、活性部位を活性化ポリマーが接触しないよう保護するのが望ましい場合がある。その場合、活性部位の中またはその近傍にある反応性残基に活性化ポリマーが接触することを立体構造的に妨害できるほどに大きな基質アナログまたは競合的インヒビターをしっかりと、しかし可逆的に結合させることができる(例えばNahri,L.O.,et al.(1991)J Protein Chem 10:385−389)。あるいは、そのようなアナログまたはインヒビターを、後で蛋白質を吸着できる固体基質に結合させることもできる。その結果できる「アフィニティーマトリックス」に結合している間に、蛋白質は、活性化ポリマーと反応することができる。この方法は、反応性ポリマーが、触媒を阻害するような部位に結合するのを最小限に抑えることができる。そして、選択的に修飾された蛋白質は、その後当業者に既知の方法によって、アフィニティーマトリックスから遊離させることができる(Wilchek,M.et al.(1984)Methods Enzymol 104:3−55を参照)。出来上がった結合体は、該蛋白質の生物活性を損なわない部位にポリマーが選択的に結合している蛋白質分子を含むことができる。
結合反応の後、さまざまな程度に誘導体化された結合体を、Sherman,M.R et al.(1997)前掲に記載されているように、サイズ排除クロマトグラフィーおよび/またはイオン交換クロマトグラフィーを用いて、互いに分離することができる。例えば、登録商標名Superdex 75のHR 10/30カラムまたは登録商標名Superdex 200のHR 10/30カラム(Amersham Pharmacia Biotech,Piscataway,NJ)によって、残留している遊離のPEGおよび共役反応の副生成物からの分離だけでなく、さまざまな程度にPEG化された蛋白質分子を分離することが可能である(共同所有の同時係属米国特許出願第10/183,607号、前掲を参照)。
(組成物)
本発明は、本発明の方法によって生成される低抗原性のPEG化された生物活性成分の安定化された結合体を提供する。関連する態様において、本発明は、該結合体を1種類以上含む組成物も提供する。本発明のこの態様に係る組成物は、上記した本発明の結合体を1種類以上(例えば、1、2、3、4、5、10種類など)含む。一定の前記態様において、組成物は、1種類以上の緩衝塩、1種類以上のカオトロピック剤、1種類以上の界面活性剤、1種類以上の蛋白質(例えば1種類以上の酵素)、1種類以上のポリマーなど、1種類以上の補助成分を含むことも可能である。本発明のこの態様の組成物は、固体(例えば乾燥粉末)または溶液(特に、1種類以上の本発明の結合体を含む、生理学的に適合する緩衝塩溶液)など、どのような形態であってもよい。
(薬学的組成物)
本発明の一定の組成物は、具体的には、予防、診断または治療という用途に使用するための薬学的組成物として用いるために製剤される。該組成物は、典型的には、1種類以上の本発明に係る結合体および1種類以上の薬学的に許容される担体または賦形剤を含む。本明細書において「薬学的に許容される担体または賦形剤」という語は、あらゆるタイプの非毒性の固体、半固体または液体の増量剤、希釈剤、カプセル用素材、または製剤用の補助剤など、それを添加することによって生じる副作用なしに、該薬学的組成物を取り込むヒト、その他の哺乳動物などのレシピエント動物によって忍容され得るものを意味する。
本発明の薬学的組成物は、経口的、経直腸的、非経口的、全身内、経膣的、腹腔内、局所的(粉剤、軟膏、点滴剤、または経皮貼付などによって)、口腔粘膜内、口腔内もしくは鼻腔内スプレー、または吸入によるなど、あらゆる適切な投与形態によって、レシピエントに投与することができる。本明細書において「非経口的」という語は、静脈内、筋肉内、腹腔内、槽内、皮下、および関節内への注射および注入を含む投与形態を意味する。
本発明によって提供される非経口の注射用薬学的組成物は、薬学的に許容される滅菌された水性または非水性の溶液、分散液、懸濁液、または乳液、および、使用直前に注射液または分散液に再構成される滅菌された粉末を含むことが可能である。適当な水性または非水性の担体、希釈剤、溶媒または媒体の例は、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリ(エチレングリコール)など)、カルボキシメチルセルロース、およびこれらの適当な混合物、植物油(オリーブオイルなど)、ならびにオレイン酸エチルなどの有機エステル類などである。例えば、レシチンなどのコート剤を使用して、分散液の場合には、必要な粒子サイズを維持することによって、および界面活性剤を使用して、適切な流動性を維持することができる。
また、前記本発明の薬学的組成物は、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、および分散剤などのアジュバントを含むことも可能である。例えばパラベン、ベンジルアルコール、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸など、さまざまな抗細菌剤および抗菌剤を含ませることによって、さまざまな微生物の作用を確実に防止することができる。また、糖類、塩化ナトリウムなどの浸透物質を含むことが望ましいこともある。モノステアリン酸アルミニウム、ヒドロゲル、およびゼラチンなどの吸収を遅らせる薬剤を包含することにより、注射用薬剤形を長時間にわたって吸収させることが可能になる。
場合によっては、薬剤の効果を長期化させるために、皮下または筋内に注射してゆっくりと吸収させることが望ましい。これは、可溶性の低い結晶物質またはアモルファス物質の懸濁液を水性の体液内で使用することで達成できる。そして、薬剤の吸収速度は、その溶解速度によって決まり、それは、その物理的形状に依存することがある。あるいは、非経口投与される剤形の遅延吸収は、薬剤を油性媒体に溶解または懸濁して達成される。
注射用の持続性剤形は、ポリラクチド−ポリグリコリドなどの生物分解性ポリマーの中でマイクロカプセルに入った薬剤のマトリックスを形成させて作製することができる。担体ポリマーに対する薬剤の割合、および使用する具体的な担体ポリマーの性質に応じて、薬剤放出速度を調節できる。別の生物分解性ポリマーの例は、生物適合性ポリ(オルトエステル)およびポリ(酸無水物)などである。持続性の注射用製剤も、生体組織と適合するリポソームまたはマイクロエマルジョンに薬剤をトラップさせて調製することができる。
注射用製剤は、例えば、細菌保持濾紙による濾過によって、または使用前に滅菌水またはその他の滅菌注射媒体に溶解または分散させることができる滅菌された固体組成物の形をした滅菌剤を取り込むことによって滅菌することができる。
経口投与用の固体剤形には、カプセル、タブレット、ピル、粉末、および顆粒などがある。該固体剤形では、活性化合物は、クエン酸ナトリウムまたは第二リン酸カルシウムなど、薬学的に許容される賦形剤または担体、および/またはa)スターチ、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトールおよびケイ酸などの充てん剤または増量剤、b)例えばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、およびアラビアゴムなどの結合剤、c)グリセロールなどの保湿剤、d)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカのデンプン、アルギン酸、一定のケイ酸、および炭酸ナトリウムなどの崩壊剤、e)パラフィンなどの溶液制動剤(solution retarding agents)、f)第4アンモニウム化合物などの吸収促進剤、g)例えばセチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロールなどの湿潤剤、h)カオリンおよびベントナイトクレイなどの吸着剤、およびi)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリ(エチレングリコール)、ラウリル硫酸ナトリウム、およびこれらの混合物などの潤滑剤と混合される。カプセル、タブレットおよびピルの場合、剤形は、緩衝剤を含むことも可能である。
ラクトース(乳糖)および高分子量PEGなどを賦形剤として用いたソフトゼラチンカプセルまたはハードゼラチンカプセルの充てん剤として、同様のタイプの固体組成物を用いることも可能である。
タブレット、糖衣錠、カプセル、ピルおよび顆粒の固体剤形は、腸溶コーティングまたは時間調節コーティング(chronomodulating coating)、および医薬製剤分野において公知の他のコーティングまたは外衣を用いて調製することができる。それらは、混濁剤を選択的に含むことができ、また、胃腸管の一定の部分のみで、またはそこで選択的に、有効成分を、選択的には遅延するように放出するような組成物にすることも可能である。使用することができる包埋用組成物の例は、ポリマー物質または蝋などである。活性化合物は、適当であれば、上記賦形剤の1種類以上によるマイクロカプセルの形であってもよい。
経口投与用の液体剤形は、薬学的に許容される乳液、溶液、懸濁液、シロップ、およびエリキシル液などである。活性化合物以外に、液体剤形は、例えば水、その他の溶剤など、当技術分野において一般的に使用されている不活性希釈剤、安定化剤、およびエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油類(特に綿実油、ラッカセイ油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ひまし油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、PEGならびにソルビタンの脂肪酸エステル、およびこれらの混合物などの乳化剤を含むことができる。
経口用組成物は、不活性希釈剤以外に、湿潤剤、乳化ならびに懸濁剤、甘味剤、風味剤、および香料を含むことができる。
懸濁剤は、活性化合物以外に、例えばエトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールならびにソルビタンエステル、微結晶セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天、およびトラガカント、およびこれらの混合物などの懸濁剤を含むことができる。
局所投与は、肺や眼の表面など、皮膚または粘膜への投与を含む。吸入用組成物などの局所投与用組成物は、加圧されたまたは無加圧の乾燥粉末として調製することができる。無加圧粉末組成物では、細かく分割された形状の有効成分を、例えば直径100マイクロメータまでの大きさをもつ粒子を含む、より大きな薬学的に許容される不活性担体と混合して用いることができる。適当な不活性担体は、ラクトースおよびスクロースなどの糖類などである。望ましくは、有効成分粒子の少なくとも重量の95%以上が、0.01から10マイクロメータの範囲の有効粒子サイズを有する。
あるいは、薬学的組成物は加圧することが可能で、窒素または液化ガス推進剤などの圧縮ガスを含むことが可能である。液化ガス推進剤媒体、および実際には全組成物を、好ましくは、有効成分がその中では実質的な程度にまで溶解しないようにすることができる。加圧組成物には界面活性剤を含むこともできる。界面活性剤は、液体または固体の非イオン性界面活性剤でもよいし、固体の陰イオン性界面活性剤でもよい。ナトリウム塩状になった固体の陰イオン性界面活性剤を使用するのが好適である。
局所投与の別の形態は眼への投与である。この投薬の方式では、本発明の結合体または組成物は、薬学的に許容される眼科用媒体に入れて、活性化合物が、結膜または角膜および眼の内部領域、例えば前眼房、後眼房、硝子体、房水、硝子体液、角膜、虹彩/睫毛、レンズ体、脈絡膜/網膜および強膜を通過するのに十分な時間眼の表面と接触し続けるように運搬される。薬学的に許容される眼科用媒体は、例えば軟膏、植物油またはカプセル入りの物質であろう。
直腸または膣に投与するための組成物は、好ましくは、本発明の結合体または組成物を、ココアバター、PEGまたは坐薬用ワックスなど、室温では固体であるが、体温で液体になり腸や膣の中で溶けて薬剤を放出する適当な非刺激性の賦形剤または担体と混合して調製できる坐剤である。
本発明の治療法で使用される薬学的組成物は、リポソームの形で投与することも可能である。当技術分野において知られているように、リポソームは、一般的に、リン脂質またはその他の脂質物質から得られる。リポソームは、水性媒体中に分散している一層または多層の水和脂質によって形成される。非毒性で生理学的に許容され代謝可能な脂質であって、リポソームを形成できるものが使用されうる。1種類以上の本発明の結合体または組成物以外に、リポソームの形になった本発明の薬学的組成物は、1種類以上の安定化剤、防腐剤、賦形剤などを含むことができる。好適な脂質は、リン脂質およびホスファチジルコリン(レシチン)で、天然のものでも合成されたものでもよい。リポソームを形成する方法は当技術分野において知られている(例えば、Zalipsky,S.,et al.米国特許第5,395,619号を参照)。PEGと結合したリン脂質、もっとも一般的にはmPEGに結合したホスファチジル・エタノアミンを含むリポソームは、哺乳動物の循環血液中での半減期が長いことなど、有利な特性をもつ(Fisher,D.,米国特許第6,132,763号)。より有利なことには、本発明のヒドロキシPEGは、このようなPEG−リポソームにおいてmPEGの代わりとされ得る。一番有利なことは、PEG−リポソームの中に取り込まれるPEG−ジアシルグリセロールを合成する場合に、活性化mPEGの代わりに本発明に係る単官能性活性化ヒドロキシPEGを使用できることである。
(用法)
本発明の結合体または組成物は、インビトロ、エクスビボ、またはインビボで細胞に投与して、活性化合物に対する免疫応答を促進することができる。当業者は、所定の活性化合物、結合体または組成物の有効用量を経験的に決定できること、および精製された形で、または、薬学的に許容される製剤またはプロドラッグという形でも、もしそのような形態が存在するのであれば使用できることを理解できよう。本発明の化合物、結合体または組成物は、獣医学的または薬学的な組成物として、1種類以上の薬学的に許容される賦形剤と組み合わせて、それを必要としている動物またはヒト患者に投与することが可能である。当然のことながら、ヒト患者に投与するときには、本発明の結合体または組成物の一日、一週または一月当たりの総使用量を、健全な医学的判断の範囲内で主治医が決定することになる。各患者にとって治療上有効な用量レベルは、目的とする細胞応答のタイプと程度、使用する具体的な化合物、結合体または組成物の実体および/または活性;患者の年齢、体重、体表面積、総合的な健康状態、性別、食事内容、および活動量;投与時間、投与経路、および活性化合物の排出率;具体的な化合物、結合体または組成物と併用または同時に使用される他の薬剤;ならびに薬学および医学分野において当業者に公知のその他の要素など、さまざまな要素によって異なる。例えば、所定の本発明の化合物、結合体または組成物の用量を、所望の治療効果を達成する場合に必要なレベルよりも低いレベルから開始して、徐々に所望の効果が達成されるレベルまで増やして行くことも、当業者が適宜行いうることである。
また、例えばサイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーまたは逆相HPLCなど当技術分野において許容され、日常的になっている技術によって決定された、所定の活性化合物の所定の血中濃度を提供できるように、患者に特異的な方法で用法を設定することも可能である。このようにして、医学、薬学および/または薬理学の各分野において当業者に日常的かつ周知の方法に従って、HPLCによって測定しながら、比較的一定の血中濃度が達成されるように、患者の投薬計画を調整することも可能である。
(診断および治療用途)
本発明の結合体の診断への使用は、本発明のポリマー結合抗体であって、該結合体の蛋白質成分またはポリマー成分のいずれを標識して、例えば、以下で論じるような光学的検出法、放射分析検出法、蛍光検出法または共鳴検出法による検出を可能にする結合体を投与して、動物、特にヒトの体内にある、例えば癌などの抗原性部分の位置を決めるために行われる場合がある。
本発明に係るPAG生物活性化合物結合体(好ましくは、この結合体を含む組成物として投与される)は、非常に長い循環半減期を有し、インビボで低い抗原性および免疫原性を有すると予測されている。これらの特性は、多くの治療用化合物(特に、本発明の結合体において成分として使用されているような生物活性化合物)を治療目的で、動物、特にヒトまたは他の哺乳動物に取り込ませたときに見られる血液循環からの速やかなクリアランスを緩和または軽減させる。また、本発明に係る結合体および組成物の使用は、これら以外のものでは患者の免疫応答を誘発する可能性があるという、特定の生物活性化合物または成分を繰り返し投与することに関する生物活性化合物の循環血からのクリアランス速度を高める(それによって、診断または治療の有効性が低下する)こと、および患者に対して副作用を引き起こすことなどである。
したがって、本発明の別の態様において、例えば、さまざまな身体疾患の診断、治療または予防を、そのような疾患に罹りやすいか、疾患に罹っている動物、特に、ヒトなどの哺乳動物において行うときに、本発明に係る結合体および組成物を診断法または治療法に使用することができる。該方法において、治療目標は、疾患の発症を遅延または予防し、および/または疾患の治癒または鎮静を誘発し、および/または他の治療法の副作用を低下または最小限に抑えることである。したがって、本発明に係るPAG−生物活性成分の結合体および組成物は、感染症または病気などの身体疾患の防御、抑制または治療に用いることができる。本明細書において、身体疾患からの「防御」という語は、「阻止」、「抑制」および「治療」を包含する。「阻止」とは、疾患や身体的異常が誘発される前に、本発明に係る結合体または組成物を投与することを意味し、一方「抑制」とは、疾患が臨床的に確認される前に、本発明に係る結合体または組成物を投与することを意味する。したがって、身体疾患の「阻止」および「抑制」は、典型的には、該疾患に対して素因か感受性を有しているが、まだ罹患していない動物において行われる。しかし、身体疾患の「治療」は、病気が現れた後、治療用の結合体または組成物を投与することを意味する。当然のことながら、ヒトでの医学または獣医学において、身体疾患を「阻止」しているのか、「抑制」しているのかを区別することは必ずしも可能でない。多くの場合において、最終的にもたらされる結果は不明であるか表面に出ないため、患者も医師も、それが起きたずっと後になるまでもたらされる結果に気づかない場合がある。したがって、「治療」とは異なり、ここで定義した「阻止」および「抑制」の両方を含む「予防」という用語を使用するのが一般的である。したがって、本発明の方法によって使用される「防御」という語は、「予防」を含む意味である。
本発明の本態様による方法は、臨床家が上記の治療目標を達成できるように一つ以上のステップを含むことが可能である。前記本発明の方法の一つは、例えば、以下のステップを含む。
(a)身体疾患に罹患したか、その素因をもつ動物(好ましくは、ヒトなどの哺乳動物)を同定するステップ;および
(b)有効量の1種類以上の、本明細書に記載したような本発明に係る化合物または組成物、特に1種類以上の生物活性成分のPAG結合体(または該結合体を含む1種類以上の薬学的組成物)を該動物に投与して、該化合物または組成物の投与によって、動物における身体疾患の発生を阻止、遅延、または診断し、またはそれを治癒または寛解を誘発するステップ。
本明細書において、身体疾患に対して「素因をもつ」動物とは、その疾患のはっきりした身体的症状を複数示すわけではないが、遺伝的、生理学的、あるいはそうでない場合、その疾患を発症するリスクをもつ動物と定義される。本方法において、一定の身体疾患に対して素因のある、リスクをもつ、またはそれに罹患している動物(ヒトなどの哺乳動物)の同定は、例えば、放射線アッセイ法、生化学的アッセイ法(例えば、動物から得た試料中の特定のペプチド、蛋白質、電解質などの相対的レベルのアッセイ法など)、外科的方法、遺伝子スクリーニング、家族歴、身体の触診、病理学または組織学的な検査(例えば、組織試料もしくは体液試料または塗抹標本の顕微鏡による評価、免疫学的アッセイ法など)、体液検査(例えば血液、血清、血漿、脳脊髄液、尿、唾液、精液など)、画像化(例えば放射線、蛍光、光学、共鳴(例えば、核磁気共鳴(NMR)または電子スピン共鳴(ESR)など)など、臨床家に公知の常法にしたがって行うことができる。1種類以上の上記の方法によって動物が同定されたら、該動物を挑戦的および/または積極的に治療して、身体疾患を阻止、抑制、遅延または治癒することができる。
本発明に係る結合体、組成物および方法で予防、診断、または治療できる身体疾患は、結合体の生物活性成分を予防、診断、または治療に使用できる身体疾患をすべて含む。該疾患は、さまざまな癌(例:乳癌、子宮癌、卵巣癌、前立腺癌、睾丸癌、白血病、リンパ腫、肺癌、神経系の癌、皮膚癌、頭部および頸部の癌、骨癌、結腸およびその他の消化管の癌、膵臓癌、膀胱癌、腎臓癌およびその他の腫瘍、肉腫、腺腫、および骨髄腫);感染症(例:細菌病、真菌病、ウイルス病(肝炎およびHIV/AIDSなど)、寄生生物病など);遺伝的疾患(例:嚢胞性線維症、筋委縮性側索硬化症、筋ジストロフィー、ゴーシェ病、ポンペ病、重症複合型免疫不全症など);貧血、好中球減少症、血友病、およびその他の血液病;神経系疾患(例:多発性硬化症およびアルツハイマー病);酵素疾患(例:痛風、高尿酸血症、高コレステロール症など);病因不明の疾患(例:循環器疾患、高血圧など)、およびその他、当業者に公知であって医学的に重要な疾患などであるが、これらに限定されるものではない。また、本発明に係る組成物および方法を、前癌病変から癌病変に進行する過程を化学的に予防するなど、病気の進行を阻止する場合に使用することも可能である。
このように、本発明に係る治療法は、1種類以上の本発明に係る結合体、または1種類以上の本発明に係る組成物であって、それを必要とする動物に、経口的、経直腸的、非経口的(静脈内、筋肉内、腹腔内、槽内、皮下、および関節内への注射および注入)、全身内、経膣的、腹腔内、局所的(粉剤、軟膏、点滴剤、または経皮貼付などによる)、口腔粘膜内、口腔内もしくは鼻腔内スプレー、または吸入によるなどして、さまざまな経路によって投与することができるものを使用する。本発明によって、有効量の結合体または組成物を、インビトロ、エクスビボ、またはインビボで細胞に投与することが可能で、また、特定の疾患に罹患しているか、それに対する素因をもつ動物に投与して、該動物における疾患を予防、遅延、診断または治療することができる。本明細書において、「有効量の結合体(組成物)」とは、結合体が、該結合体の生物活性成分の生物活性を実行することによって、本発明の結合体が投与されている動物の身体疾患を予防、遅延、診断、治療または治癒することを意味する。当業者は、薬学および医学分野における当業者にとって公知の常法にしたがって、本発明に係る結合体または組成物の有効量を実験的に決定することができる。例えばBeers,M.H.,et al.,eds.(1999)Merck Manual of Diagnosis & Therapy,17th edition,Merck and Co.,Rahway,NJ;Hardman,J.G.,et al.,eds.(2001)Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,10th edition,McGraw−Hill Professional Publishing,Elmsford,NY;Speight,T.M.,et al.,eds.(1997)Avery’s Drug Treatment:Principles and Practice of Clinical Pharmacology and Therapeutics,4th edition,Blackwell Science,Inc.,Boston;Katzung,B.G.(2000)Basic and Clinical Pharmacology,8th edition,Appleton and Lange,Norwalk,CTを参照。これらの文献およびそこに引用されている文献は、その全体が参照として本明細書に組み込まれる。
当然のことながら、ヒト患者に投与するときには、本発明の結合体または組成物の一日、一週または一月当たりの総用量を、健全な医学的判断の範囲内で主治医が決定することになる。例えば、本発明の結合体または組成物の一定のものを、使用する具体的な生物活性化合物に応じた適当な投薬量を投与することによって満足のゆく結果が得られるが、これらの投薬量は、当業者に容易に分かるか、日常的な実験を用いて容易に実験的に決定することができる。本発明のこの態様によれば、結合体または組成物は、一度に、または、例えば一日、一週または一月に2回というように、分割量にして投与することも可能である。さまざまな投与形態(例:非経口、皮下、筋肉内、眼内、鼻腔内など)にとって適当な投薬計画は、生物活性成分の実体に応じて、日常的な実験を用いて容易に実験的に決定することができるか、または当業者には容易に分かる。
さらなる応用において、本発明の結合体または組成物を用いて、該結合体の生物活性成分に対するレセプターを発現するか、それに結合するか、それを取り込みまたは吸収する細胞、組織、器官または生物に対して、診断または治療用薬剤の特異的な標的とすることができる。本発明のこの態様による方法は、例えば、細胞、組織、器官または生物を1種類以上の本発明に係る結合体であって、さらに1種類以上の診断または治療用の薬剤(好ましくは、結合体のPAOまたはPEG成分に共有結合している)を含む結合体と接触させて、何らかのメカニズム(例:レセプターによるエンドサイトーシス、ピノサイトーシス、ファゴサイトーシス、拡散など)によって、該結合体が細胞、組織、器官または生物に吸収されて、診断または治療用の薬剤が細胞、組織、器官または生物に運搬されるようにすることを含むことができる。本発明のこの態様に従って使用される診断または治療用の薬剤は、核酸、有機化合物、蛋白質、抗体、酵素、糖蛋白質、リポ蛋白質、元素、脂質、糖類、同位元素、糖質、造影剤、検出可能プローブ、またはこれらを組み合わせたものなどであるが、これらに限定されるものではなく、本明細書に記載されているように、これらを検出できるよう標識することも可能である。本発明のこの態様において使用される診断または治療用の薬剤は、標的細胞(または組織、器官または生物)に対して以下から選択される治療効果をもつが、治療効果は、これらに限定されるものではない欠陥遺伝子または蛋白質の修正、薬物効果、毒性効果、増殖刺激効果、増殖阻害効果、代謝効果、触媒効果、同化効果、抗ウイルス効果、抗菌効果、抗細菌効果、ホルモン効果、神経液性効果、細胞分化促進効果、細胞分化阻害効果、神経修飾効果、抗新生物効果、抗腫瘍効果、インシュリン刺激または阻害効果、骨髄刺激効果、多能性幹細胞刺激効果、免疫系刺激効果、およびその他既知の治療効果であって、本発明の本態様による運搬システムによって細胞(または組織、器官または生物)に運搬された治療用薬剤によって提供されうる効果。
このさらなる治療薬剤であって、本発明に係る生物活性結合体または組成物をさらに含む薬剤は、以下から選択されるが、これらに限定されるものではない。抗生物質、ステロイド、細胞毒性因子、血管作用薬、抗体、およびその他の治療剤などの既知および新規の化合物および組成物。該薬剤の非限定的な例は、ゲンタマイシン、トブラマイシン、ナフシリン、非経口性セファロスポリンなど、細菌性ショックの治療に用いられる抗生物質およびその他の薬剤;エンドトキシンによって生じる細胞傷害を軽減するデキサメタゾンなどの副腎皮質コルチコステロイドおよびそのアナログ;アルファ−アドレナリン作動性受容体遮断薬(例:フェノキシベンザミン)、ベータ−アドレナリン作動性受容体遮断薬(例:イソプロテレノール)、およびドーパミンなどの血管作用薬などの薬剤である。
また、本発明に係る結合体および組成物は、病気の診断のため、また、治療反応を観察するためにも使用することができる。該方法の一定のものにおいて、検出用に標識された本発明の結合体は、1種類以上の検出可能な標識(本明細書の別項に記載されたものなど)を含むことができる。該方法の具体的なものにおいて、このように検出用に標識された本発明の結合体を用いて、該結合体の生物活性成分に対するレセプターを発現しているか、そうでなければそれを吸収する細胞、組織、器官または生物を検出することができる。該方法の一例において、細胞、組織、器官または生物を、(例えば、結合体を細胞表面レセプターに結合させて、または結合体の細胞内へのピノサイトーシスもしくは拡散によって)細胞、組織または生物が結合体を吸収するのに有利な条件下で1種類以上の検出可能な標識をもつ本発明の結合体に接触させて、その後、使用した標識に特異的な検出手段(例えば、蛍光標識された結合体には蛍光検出法、磁気標識された結合体には磁気共鳴画像、放射性標識された結合体には放射線造影など)を用いて、結合体が結合したか、あるいはたはそれを取り込んだ細胞を検出する。該検出用に標識された結合体のこの他の用途は、例えば、本発明の1種類以上の結合体を標識したものを有効量投与し、細胞、組織、器官もしくは生物(または動物)に結合した検出可能な放射線を測定して、細胞、組織、器官もしくは生物、または動物(ヒトなど)の内部構造画像化することである。さまざまなタイプの標識を検出する方法と、診断および治療用造影におけるそれらの用途については、当業者が知るところであり、本明細書の別項で説明されている。
別の態様において、本発明の結合体および組成物は、結合体の生物活性成分に対する特異的なレセプターの濃度または活性を、該レセプターを発現する細胞の表面上で調節するための方法において使用することができる。所定のレセプターの活性を「調節する」とは、レセプターに結合すると、結合体が、そのレセプターを介してもたらされる生理学的活性(例えば、細胞内シグナル伝達カスケード)を活性化するか阻害することを意味する。本発明に係る結合体の調節活性に関する特定の仕組みの説明のみに制約されるものではないが、該結合体は、結合体の生物活性成分を介してレセプターに結合して、細胞レセプターの生理学的活性に拮抗し、それによって、レセプターそのものの生理学的活性を実質的に活性化することなく、本来のアゴニスト(例えば、結合体になっていない生物活性成分)の結合を遮断して、本来のアゴニストによるレセプターの活性化を阻害することができる。本発明の本態様による方法は、例えば、結合体(すなわち、結合体の生物活性成分部位)が、細胞表面上にある、生物活性成分に対するレセプターに結合するが、実質的にはレセプターを活性化しない条件下で、細胞を1種類以上の本発明の結合体と接触させる(これはインビトロでもインビボでも可能)1つ以上のステップを含むことができる。該方法は、当業者も容易に理解できるように、さまざまな診断、および治療への応用において有用であろう。
(キット)
本発明は、本発明に係る結合体および/または組成物を含むキットも提供する。該キットは、その中にバイアル、チューブ、アンプル、瓶などの容器であって、第一の容器は、典型的には、本発明に係る結合体および/または組成物を1種類以上含む容器を1個以上密封している、箱、カートン、チューブなどの運搬装置を含む。本発明の本態様に含まれる、このキットは、さらに、具体的な病気または身体疾患を診断、治療または予防するための1種類以上の成分(1種類以上の補助的な治療用化合物または組成物、1種類以上の診断用試薬、1種類以上の担体または賦形剤など)、1種類以上の本発明に係る結合体および組成物など、本発明に係る結合体および組成物の具体的な1種類以上の用途を実施するのに必要な1種類以上の補助的成分(例えば、試薬および化合物)を含むことが可能である。
関連技術分野における当業者は、本発明またはその実施態様の範囲内で、本明細書に記載した方法および用途に対して別の適当な変更または改変を行うことができることを容易に理解できよう。以上に本発明を詳しく説明したが、以下の実施例を参照することによって、さらに明確に本発明を理解できるはずである。以下の実施例は、ただ例示的な目的のために本明細書に含まれるのであり、本発明を制限するものではない。
(実施例1:モノメトキシPEGに対する抗体の調製および試験)
PEGが免疫原性担持体蛋白質に結合している結合体で動物を免疫することによって、さまざまなPEGに対してウサギに免疫性を与えることが以前報告されている(Richter,A.W.,et al.(1983)Int Arch Allergy Appl Immunol 70:124−131)。マウスにβ−グルクロニダーゼのmPEG結合体を注射し、PEGに対する抗体を産生するハイブリドーマクローンを選択して、PEGのポリエーテル骨格と反応するモノクローナル抗体が開発されている(Cheng,T.−L.,et al.(1999)、前掲;Cheng,T.−L.,et al.(2000)前掲;Tsai,N.−M.et al.(2001)前掲;Roffler,S.et al.,公開米国特許出願第2001/0028881 A1号ならびに米国特許第6,596,849号および第6,617,118号;これらすべての開示内容は、それらの全文が参照として本明細書に組み込まれる)。PEGのポリエーテル骨格と反応する別のモノクローナル抗体が最近Robert,M.J.らによって、米国特許出願第2003/001704 A1号で開示されている。
PEG−蛋白質結合体のPEGを検出するための感度の高い方法を開発するために、PEGに対するポリクローナル抗体を下記のとおりに調製した。当技術分野において記載されている治療用蛋白質のPEG結合体のほとんどすべてがmPEGを用いて合成されているため、本発明者らは、mPEGを含む結合体の免疫反応性におけるメトキシル基の役割を調べた。10−kDaのmPEGのp−ニトロフェニル・カーボネート誘導体は、Nektar Therapeutics(San Carlos,CA)の子会社であるShearwater Corporation(Huntsville,AL)によって合成された。生理学的pHで蛋白質を可溶化させるのに必要な、この10−kDa mPEGの最低限の鎖数(35−kDAのウリカーゼサブユニット当たりおよそ2本のPEG鎖またはmPEG鎖)を含んだ、組換え哺乳動物ウリカーゼのウレタン結合mPEG結合体を調製した。このPEG量は、ウリカーゼの異常に高い免疫原性を抑制するのに十分ではなかった(Sherman,M.R.,et al,PCT国際公開WO 01/59078 A2、およびKelly,S.J.,et al.(2001)前掲を参照。この開示内容は、その全文が参照として本明細書に組み込まれる)。このPEG−ウリカーゼ調製物を、フロイントのアジュバントに入れて3匹のウサギに繰り返し注射した。そして、ウリカーゼ、PEG−ウリカーゼ結合体、およびPEGに対するポリクローナル抗体を含む血清を調製するためにウサギから採血した。
フロイント完全アジュバントで一度、1〜4週間の間隔をおきながら、PEG−ウリカーゼ調製物をフロイント不完全アジュバントで5回、各ウサギに注射した。最後から3回の注射の約2週間後にそれぞれのウサギから血液を採取した。9個の血液試料のそれぞれから血清を調製し、構造的にウリカーゼとは無関係な蛋白質のmPEG結合体でコートされた96−ウェルプレートを用いて酵素免疫測定法(「ELISA」)により、PEGに対する抗体について少量の血清を検査した。
各試験血液は、ELISA分析では、PEGと反応する抗血清を産生した。競合的ELISA法で測定したところ、この3匹のウサギはそれぞれ、量的に同じような反応速度で、また、mPEGのトキシル末端基に対して同じように特異的で、PEGによる免疫に応答した。まず、ウサギの血清中の抗PEG抗体の感度を測定するためにドットブロット解析を行った。さまざまなサイズおよび構造のPEGの溶液と、ウサギに免疫性を与えるために用いられたPEG−ウリカーゼ溶液を、ポリビニリデン・ジフルオライドのブロッティング膜(Invitrogen,Carlsbad,CA;catalog #LS2002)上にスポッティングした。この膜を2%(w/v)脱脂粉乳でブロックした後、上記の方法で調製した、PEG−ウリカーゼに対するウサギ抗血清の希釈液とインキュベートした。そして、ヤギで産生され、アルカリホスファターゼ(Calbiochem,San Diego,CA;catalog #401371)に結合した抗ウサギIgG抗体の希釈液を二次抗体として適用した。5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルリン酸とニトロブルーテトラゾリウム(Sigma,catalog #B−1911)を合わせたものを用いて、既述したように(Blake,M.S.,et al.(1984)Anal Biochem 136:175−190、この開示内容は、その全文が参照として本明細書に組み込まれる)、ブロット上のアルカリホスファターゼ活性を検出した。ウサギ抗PEG抗体は、高い感度と特異性をもって、調べたPEG溶液およびmPEG−蛋白質結合体を検出した。
(実施例2:mPEGの抗原性におけるメトキシル基の役割の実証)
予想に反して、本発明者らは、実施例1に記載したように調製した抗PEG抗体が、主に、抗原のmPEG成分のメトキシル基に対するものであったことを確認した。図1は、96−ウェルプレートを構造的にウリカーゼとは無関係な蛋白質のmPEG結合体でコートした競合ELISAアッセイ法から得られた結果を示している。プレートを2%ヤギ血清でブロックした後、4.8−kDa mPEG(Polymer Laboratories,catalog #6570−5010)、10−kDa mPEG(Union Carbide,catalog MPEG−10,000)、または10−kDa t−ブトキシPEG(Polymer Laboratories,catalog #29999997)を、濃度を上げながら加え、mPEG−ウリカーゼ結合体に対して形成されたウサギ抗血清の1:1,000希釈液とインキュベートした。溶液を取り除いた後、ペルオキシダーゼ結合二次抗体(ヤギ抗ウサギIgG、Calbiochem(登録商標),San Diego,catalog #401393)を用い、その後ペルオキシダーゼの基質であるo−フェニレンジアミン・ジヒドロクロライド(Sigma,St.Louis,MO;catalog #P−9781)を加えて、プレート上でmPEG−蛋白質結合体に対する抗PEG抗体の結合程度を分光光度法で測定した。各試料について、競合物質が存在しないときに観察された初期反応速度(1分当たりのミリ吸着ユニット数)を100%とした。mPEGの2つの溶液の曲線が重なるのは、PEG骨格の長さが抗原性の主要な決定因子でないことを示唆している。t−ブトキシPEGに関する曲線は、右方向に約2対数(log)単位ずれており、t−ブトキシPEGが、mPEG−蛋白質結合体に対して生成した抗体に対し、mPEGよりも約100倍低い親和性をもつことを示している。しかし、本発明者らの一部による以前の未発表の実験では、t−ブトキシPEGは、免疫原性蛋白質と結合体になると、顕著な免疫原性を示すことが分かっている。したがって、図1は、mPEGに対する抗体とは非常に低い交差反応性を示すが、PEG化治療用蛋白質の産生において、mPEGの代わりにt−ブトキシPEGを使用しても、PEG成分の免疫原性の問題を解決できないことになる。
図1に示した結果は、mPEG上のメトキシル基が、ポリマー分子上の主要な抗原基であることを示唆している。この推論を確認するために、実施例1に記載したように生成した抗体に対して、1つまたは2つのメトキシル基を含む様々なサイズおよび構造のPEGを用いて、図1に示す方法により競合的ELISA解析を行った。図2aは、各試料について、メトキシル基のモル濃度の関数としてグラフに表された、抗体結合に関する結果を示している。5変数シグモイド曲線に関する等式とSigmaPlot(登録商標)プログラム(SPSS Science,Chicago,IL)を用いて、50%結合阻害する結果をもたらす競合物質濃度(「IC50」)を計算した。
図2aに示されているように、以下のPEGはすべて、モル換算すると同じような抗原性をもっていた。mPEG−NPC(PEG−Shop)の加水分解によって生成された、メトキシル基をもつ直鎖状PEG(「10−kDa mPEG」)、および20kDa NPC−PEG(Shearwater,catalog #M−NPC−20,000)にリジンを結合させて合成した「モノ−20−kDa mPEG−リジン」;2個のメトキシル基をもつ直鎖状PEG(「ビス−(2−kDa)mPEG」(Sigma−Aldrich,catalog #81314)、および2個のメトキシル基をもつ大きい方の「分枝状」PEG(「ジ−(20−kDa)mPEG−リジン」(Shearwater,catalog #PEG2−NHS−40K))。これに対し、2個のメトキシル基をもつ小さい方の「分枝状」PEG(「ジ−(5−kDa)mPEG−リジン」(Shearwater,catalog #2Z3X0L01))は、他の試料についての結果の平均より0.5から0.6対数単位左にシフトし、この「分枝状」mPEGが、本実験で調べた他の試料より3倍から4倍抗原性が高いことを示した。図2bは、図2aのデータをメトキシル基のモル濃度ではなく、PEGの重量濃度(マイクログラム/mL)の関数としてグラフにしたものを示しており、mPEGが抗mPEG抗体と相互作用するのに重要なのはメトキシル基であるとの結論を裏付けている。
図3は、図1、2aおよび2bの一部のデータを、PEG1分子当たりのメトキシル基の個数に対する抗原性の直接的な依存性を示す形式にして示している。これらの試料は、10−kDa PEGであって、メトキシル基をもたないもの(「10−kDa t−ブトキシPEG」)、1個のメトキシル基をもつもの(「10−kDa mPEG」)、2個のトキシル基をもつもの(「ジ−(5−kDa)mPEG−リジン」)を表している。その結果、所定のポリマーの抗原性、したがってこのポリマーから生成される本発明に係る結合体の抗原性は、PEGポリマー分子上に含まれているメトキシル基の数に直接依存することが示された。メトキシル基の数が多くなるほど、mPEG−蛋白質結合体に対してできた抗体に対するポリマーのアフィニティーは高くなる。
まとめると、これらの結果は、PEG溶液、特にmPEG溶液と競合させることによって、ウサギ抗体のmPEG結合体に対する結合が完全に阻害されることを示している。さらに、mPEG溶液が、無関係な蛋白質のmPEG結合体へのウサギ抗PEG抗体の結合を阻害できる能力は、それらの成分のメトキシル基の数に正比例している。重量濃度を基準にすると、図2bに示すように、低分子量のmPEGの方が、高分子量のmPEGよりもより強力な競合物質となった。この結論は、ポリマーの全質量に対するメトキシル基の質量比が、ポリマーの分子量が大きくなるにつれて減少するという事実と整合する。試験したPEGの中で、(モル濃度基準で)もっとも強力な抗原は、時に、傘または「U−PEG」と呼ばれる(Martinez,A.,et al.、米国特許第5,643,575号)、または「Y−PEG」と呼ばれる(Greenwald,R.B.et al.、米国特許出願第2002/0052443号)2個のトキシル基を含む「分枝状」PEGであった。
(実施例3:メトキシル基をもたないPEGを用いた抗PEG抗体試験)
本明細書において、「PharmaPEG」という語は、活性化されるまたは活性化されうる末端から遠位にある末端に抗原基をもたない直鎖状または分枝状のPEGを意味する。以前の実施例から、ポリマーの抗原性、したがって生物活性物質のポリマー結合体の抗原性は、ポリマー中のメトキシル基の含有量の関数であると推論できた。この推論をさらに調べるために、図1について記載したようにして、競合的ELISAアッセイを行って、抗mPEG抗体による結合について、mPEG(「4.8−kDa mPEG」)、ならびに直鎖状ポリマーの末端にメトキシル基または他のアルコキシル基をもたない、12−kDa、20−kDa、および35−kDaのPharmaPEGの能力を比較した。結果を図4に示す。図4に示された3本のPharmaPEGの曲線が、mPEGの曲線からずれているのは、抗mPEG抗体で測定した場合、PharmaPEGの抗原性が、mPEGの抗原性よりも約100倍低いことを示している。したがって、メトキシル基をもたないポリマー(例えばPharmaPEG)は、従前医薬の生物学的結合に使用されているポリマー、例えばmPEGに比べて抗原性が低下または実質的に低下している。
上記したとおり、重量を基準にすると、mPEGの競合能力は、その分子量に反比例している。しかし、メトキシル基をもたないPEGは、分子量に関係なく、mPEGの競合能力の僅か約1%であった。これらの結果は、メトキシル基をもたない単官能性反応性ポリマーは、mPEG、特に、ジ−mPEG−リジンのような「分枝状」mPEGを用いて生成される結合体に比べて、抗原性が低下、実質的に低下、または全く検出されない、生物活性物質のポリマー結合体の調製において使用するのに特によく適しているとの結論を裏付けている。
(実施例4:抗mPEG抗体を用いたウエスタンブロットによるPEG化蛋白質結合体の検出)
抗mPEG抗体が、ドデシル硫酸ナトリウム(「SDS−PAGE」)存在下でポリアクリルアミドゲル電気泳動をした後のPEG化蛋白質結合体を検出できるかという試験において、炭酸脱水酵素(EC 4.2.1.1;「CAII」)のモノメトキシPEG結合体をモデルとして用いた。ゲルをポリビニリデン・ジフルオライド膜にエレクトロ・ブロットし、そのブロットをウサギ抗mPEG抗体(希釈率1:200)とインキュベートし、その後、アルカリホスファターゼに結合し、発色沈殿物を形成する基質に曝露した二次抗体(ヤギ抗ウサギIgG)とインキュベートした。電気泳動ゲルから膜に移された蛋白質またはポリマー−蛋白質を免疫学的に検出するこの方法は、通常「ウエスタンブロット」と呼ばれる(Tsang,V.C.W.,et al.,(1984)Anal Biochem 143:304−307)。検出手順と試薬は、実施例1のブロットについて記載したところと同じであった。結果を図5aに示す。レーン1および2は、SYPRO(登録商標)のRuby染(Molecular Probes,Eugene,OR,catalog #S−12000)を用いて蛋白質を染色し、暗所にて302nmの照明下で橙赤色可視光フィルター((Molecular Probes,catalog #S−6655)を用いて、Kodakデジタルカメラで撮影したゲルを示す。レーン3および4は、同一の試料をウエスタンブロットしたものである。抗mPEG抗体が、PEG化した分子種のすべてで見られるが(レーン3)、非修飾の炭酸脱水酵素では見られない(レーン4)。
図5bは、Kodakの1D画像解析ソフトウエア(Kodak,Rochester,NY)によって得られた図5aに示したゲルおよびウエスタンブロットにおけるバンド強度の定量結果を示している。横軸は、染色最前部に対する相対的な移動距離を表し、縦軸は、蛋白質染色または抗mPEG染色の相対的強度を表す。一番下のトレース線は、SeeBlue Plus2(商標)で染色済みの蛋白質標準液(Invitrogen Corporation,Carlsbad,CA;catalog #LC5625)のバンドで、1から8まで番号を付けられたピークは、外見上の分子量が以下の分子量(kDa)の蛋白質を同定したものである。それぞれ、204、111、68.8、51.5、40.2、28.9、20.7および14.9kDa。下から2番目のトレース線は、PEG化炭酸脱水酵素を抗mPEG抗体染色したものである。下から3番目のトレース線は、炭酸脱水酵素を蛋白質染色したバンドを表し、一番上のトレース線は、炭酸脱水酵素のmPEG結合体を蛋白質染色したバンドを表している。図5bの各ピークの上の数字は、そのピークで結合体中の炭酸脱水酵素に結合したmPEG鎖の数を示している。PEGは、PEGが結合していない炭酸脱水酵素の位置を示している。
まとめると、これらの結果は、抗mPEG抗体が、反応性型のmPEGを用いて調製されたPEG化蛋白質と容易に結合体を形成し、それらを高感度かつ選択的に検出できることを示している。このような結合体を、診断、予防または治療目的で動物に導入すれば、抗mPEG抗体を誘発することによって、該薬剤の血流からのクリアランス速度を加速して、それらの結合体の有効性を制限し、場合によっては免疫結合体の形成によって副作用をもたらす可能性がある。
(実施例5:PharmaPEG−モノニトロフェニルカーボネートの合成)
PEGジオールから単官能性活性化PharmaPEGを調製するための条件は以下のとおりである。合成のある段階で、PEGの一つの末端基が、その末端基を異なった数含むPEGを分離できるような性質を持っていなければならない。そのような基は、PEGまたは活性化PEGのどちらよりも疎水性が高い可能性があるので、逆相クロマトグラフィー(「RPクロマトグラフィー」)によって分離することが可能である。あるいは、そのような基は、荷電している可能性もあり、イオン交換クロマトグラフィーによって分離することが可能である。そのような基は、固相の一部である可能性もあり、非結合PEGが可溶な液体から分離することが可能である。本実施例5に記載したNPC−PEGの場合にように、活性化基を分離ベースとして使用できれば、活性化基の結合だけが合成反応に必要となる。除去可能なブロッキング基、例えばt−ブチル基またはトリフェニルメチル(「トリチル」)基が、分離の基準を提供する場合には、実施例6に記載したように、活性化されたか活性化可能な基の結合前か後にブロッキング基を加えることができる。理論上は、所望の数のブロッキング基を含むPEGを単離するために用いられる精製工程は、ブロッキング基が結合した後であれば何時でも行うことができるが、実際には、ポリマー骨格とブロッキング基の間の結合、およびポリマー骨格と活性化(または活性化可能な)基との間の結合の相対的な反応活性度によって、最適な工程の流れが指示され得る
ジヒドロキシPEGからの単官能性活性化NPC−PEG合成法を以下の概略図にまとめたが、ここで、Phはフェニル基を表し、nは、ポリマー中のエチレンオキシドユニットの数を表し、10−kDa PEGでは約227である。
Figure 2006510601
いくつかの供給業者からのPEGジオールは、すべて10kDaの分子量になるよう標識されていたが、それらを純度と均質性についてテストした。約10kDaの分子量をもつPEGを90%以上含んでいるものはなかった。したがって、Amberchrom MD−P CG−300SDカラム(7.5mm×15cm,TosoHaas,Montgomeryville,PA)上で逆相クロマトグラフィーを行って、低分子量の混雑物から10−kDa PEGジオール(Fluka Chemical Corp.,Milwaukee,WI,catalog # 81280)を分画した。PEGを水中5%(v/v)アセトニトリル溶液にしてカラムにのせ、水中5%から35%の直線的なアセトニトリル勾配により溶出を行った。画分は、150mM NaCl、pH4.6を含む20mM酢酸ナトリウム中、Superdex(登録商標)200のHR10/30カラム(Amersham Pharmacia Biotech,Piscataway,NJ)によるサイズ排除クロマトグラフィーで解析した。PEGによる屈折率(「RI」)シグナルの98%よりも高い部分が、約10−kDaのPEGに相当するピークに存在した、Amberchromカラムからの画分を集めて凍結乾燥した。
精製して乾燥したPEGジオール(530mg)を61.4mgのp−ニトロフェニルクロロ蟻酸(Aldrich,Milwaukee,WI,catalog #16,021−0)と混合し、13×100mmのねじ蓋式ガラス管に入れた4mLのアセトニトリルに溶かして、最終濃度が、PEGジオールで約12.5mM、p−ニトロフェニルクロロ蟻酸で約75mMになるようにした。ピリジン(0.25g)を加えてから、反応混合液を36℃で一晩インキュベートした。この混合液を、33mLの氷冷した0.1M塩酸に加えてから撹拌して反応を急いで停止させた。溶液を濾過してp−ニトロフェノールの微量の沈殿を取り除き、1−Lの冷水を4回換えたものに対して透析を1日行った。透析溶液にアセトニトリルを加え、濃度を5%(v/v)にした。工程1で生成された混合液の半分(24mL)で、約265mgの精製10−kDa PEGジオールを含んでいたが、これを、Amberchromカラムに流して、結合PEG分子種を、水中5%から65%のアセトニトリル勾配により溶出を行った。画分は、上記のとおり、サイズ排除クロマトグラフィーで解析し、屈折率と、280nmでの吸光を観察した。280nmでの吸光を示さないジヒドロキシPEGをまず溶出してから、1個のp−ニトロフェニル基(「モノ−NPC PEG」)、次にジ−NPC PEGによってPEGを誘導体化したが、これに対する、屈折率に対する280nmでの吸光度の割合は、モノ−NPC−PEGについてのこの割合の2倍であった。モノ−NPC−PEG溶出範囲の中央にある2つの画分を合わせて、約110mgのモノ−NPC−PEGとしたが、これは、約42%の収率である。工程2の生成物は、保存のために乾燥装置および/または冷蔵庫で乾燥するか、または、アミン含有生物活性化合物に結合させるか、または分枝状のPEG、例えばジ−PEG−リジンであってアルコキシル基を含まないものを調製するために2個以上のアミノ基を含むリンカーに結合させるために直接使用することもできる。
(実施例6:PEGジオールからのPharmaPEG−モノアルデヒドの合成)
PharmaPEGからのモノプロピオンアルデヒド誘導体の合成法を、以下の概略図にまとめたが、ここで、KOtBuはカリウムt−ブトキシドを表し、DEPは3,3−ジエトキシプロピル基を表す。
Figure 2006510601
好ましくは、工程1の出発物質として使用されるジヒドロキシPEGは、その外見上の分子量の10%以内の分子量をもち、多分散度が1.05よりも小さい。多分散度は、数量平均分子量(「M」)に対する重量平均分子量(「M」)の割合と定義されている。MおよびMというこれらの変数はどちらも、分子量が正確に知られているPEGを基準とし、また、EZChrom Eliteクライアント/サーバー用ソフトウェア、バージョン2.8.3(Scientific Software,Inc.,Pleasanton,CA)などのゲル透過クロマトグラフィー用ソフトウェアサイズ排除クロマトグラフィーによって測定することができる。あるいは、PEGの多分散度は、Voyager Software (Applied Biosystems,Foster City,CA)などのソフトウェアを用いて、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化(「MALDI−TOF」)質量分析法(Marie,A.,et al.,(2000)Anal Chem 72:5106−5114)によって測定することができる。共有結合したPEGを含む薬学的産物を調製するには、PEG出発物質は、MALDI−TOF質量分析法で測定する場合には、好ましくは1.02よりも小さく、より好ましくは1.01よりも小さい多分散度をもつ。この出発物質は、当業者に知られた他の供給業者の中でもとりわけ、Aldrich ChemcaCo.、Fluka Chemicals(Buchs,Switzerland)、Shearwater CorporationまたはSigma ChemicaCo.から購入可能である。出発物質が十分に均質でない場合には、実施例5に記載した方法を適合させて分画することができる。
Harris,J.M.ら((1984)J Polym Sci 22:341−352)に記載されているようにして(工程1参照)、3−クロロプロピオンアルデヒド・ジエチルアセタール(Aldrich catalog #C6,900−4)を用いて、PEGジオールのモノプロピオンアルデヒドとジプロピオンアルデヒドのジエチルアセタール誘導体の混合物を合成することができる。同様の方法が、Bentley,M.D.ら((1998)J Pharm Sci 87:1446−1449)にも記載されており、その後Bentley,M.D.らに特許付与されている(米国特許第5,990,237号)。
ピリジンに溶かした十分量の塩化トリフェニルメチル(クロロトリフェニルメタンまたは塩化トリチルPhCCl、例えばAldrich catalog #T8,380−1)を、工程1で生成した混合液に加えて、反応条件下で、PhCClが、プロピオンアルデヒド・ジエチルアセタールに結合していないPEG出発物質のヒドロキシル基のすべてと反応させる(Kocienski,P.J.、前掲)。工程2を完了させるために、PEGに対する貧溶媒(例えばエーテル)を加えるか、または、溶媒を蒸発させるか、または、当技術分野において既知の他の方法によって、この混合物を回収する。
5%(v/v)アセトニトリルを加える前か後に、工程2で回収された混合物を水に溶かし、当技術分野において既知の原則から、PEGのトリチル化誘導体に結合できると予想される逆相カラムに流す。このカラムは、シリカまたはポリマー基質のアルキル誘導体またはアリール誘導体を含むか、または、実施例5のように、スチレンポリマー(例えばAmberchrom MD−P CG−300)でもよい。PEGジオールおよびトリチル誘導体は、実施例5のように、有機溶媒の漸増勾配をもつ逆相モードで、または、所望の分子種の少なくとも一部が溶出されるまでカラムを泳動し続けることによる試料置換モードで(Agner,E.,et al.,PCT国際公開WO 00/23798 A1)、または、置換モードで(Cramer,S.M.,米国特許第6,239,262号)、または、これらのモードを組み合わせたもので溶出することができる。一般的には、トリチル基をもたないPEG誘導体がまず溶出し、モノトリチル誘導体が次に溶出し、その次にジトリチル誘導体が次に溶出する。これら3種類の分子種の割合が1:2:1のときに、所望の生成物の最適な収率が得られる。所望のモノトリチルPEG生成物の收率および/または精製度を向上させるためには、クロマトグラフィー分野においてよく知られているように、カラム溶出液の一部を再度クロマトグラフィーにかけることが望ましいことがある。工程3を完了させるために、当技術分野において既知の方法によって、モノトリチル誘導体の少なくとも一部を含む溶出液部分を分離、濃縮および乾燥させる。
穏やかな酸性条件および低温下で、PEGの遠位末端のトリチル結合のほとんどを保存しつつ、アセタールをアルデヒドに変換することができる。本実施例の応用例によっては、トリチル基を除去する前に、モノトリチルPEGモノアルデヒドを標的部分と反応させることが有利なことがある。このような実施態様も本発明によって想定され、本発明に包含される。
(実施例7:メトキシPEGを用いる場合に比べて、ヒドロキシPEGを用いて調製される結合体の免疫原性が低下することの証明)
実施例1のように、ウリカーゼのmPEG結合体による免疫について記載されているような手順で、ブタウリカーゼの同一調製物のmPEG結合体またはヒドロキシPEG結合体であって、それぞれ、ウリカーゼ1単位当たり平均約2本の10−kDa PEG鎖を含む結合体によって、3匹のウサギからなるグループを免疫した。結合体の各調製物に結合したポリマーの平均鎖数を、サイズ排除HPLC解析と、ゲルを、蛋白質については実施例4におけるように、PEGについては、2002年6月28日に出願された共同所有の同時係属米国特許出願第10/183,607号であって、その全文が参照として本明細書に組み込まれる文献に記載されている方法を用いてSDS−PAGEによって確認した。それぞれのウサギに、フロイント完全アジュバントで一度、1〜4週間の間隔をおきながら、フロイント不完全アジュバントで5回、PEG−ウリカーゼ調製物の一つを注射した。フロイント不完全アジュバントで4回目と5回目に注射してから2週間後に血液を採取した。実施例2のように、これらのウサギの血清の4倍連続希釈液をELISA解析法で試験したところ、ヒドロキシPEGを用いて調製した結合体によって誘発された抗PEG抗体の濃度は、mPEGを用いて調製した結合体によって誘発された抗PEG抗体の濃度の5%よりも低かった(図6aおよび6b参照)。これに対し、この2つのタイプのPEGから調製された結合体による抗ウリカーゼ抗体の誘発量は、2つのウサギグループで同様だった。これらのウサギの免疫前の血清は、検出可能な抗PEG抗体を含んでいなかった。
(考察および結論)
メトキシル基を末端にもつPEG(mPEG)とヒドロキシル基を末端にもつPEG(ビス−ヒドロキシPEGまたはPEGジオール)は、バイオコンジュゲーションにおける用途については同等であり、あるいは、しばしば、mPEGおよびその他の低級アルコキシルPEGの方がPEGジオールよりも優れていると報告されてきた。さらに、ビス−活性化ジオールは、架橋因子として作用して、可溶性で長期間作用して、低抗原性かつ低免疫原性の生体分子結合体(bioconjugate)を生成するのに望ましくない可能性がある。驚いたことに、本研究の結果は、mPEGが顕著に抗原性が高く、mPEGのメトキシル基に対して誘発された抗体が、mPEGを用いて調製されたPEG化蛋白質結合体に結合することを示している。このため、予想外かつ以前の報告に反して、mPEGはヒドロキシPEGと同等ではなく、高い生体内利用率、循環血中での安定性、および最小限の免疫原性をもつよう意図された、生物活性成分(蛋白質など)のポリマー結合体を調製するのに、mPEGは好適ではない。
今回の結果に基づくと、メトキシル基または別のアルコキシル基を含まない単官能性活性化PEGを蛋白質結合体の合成に使用すれば、低い免疫活性が得られることが明らかである。得られた結合体は、低い抗原性、すなわち、同じ蛋白質のmPEG結合体に対して生じた抗体と相互作用する能力が低く、また、低い免疫原性、すなわち、PEG成分に対する免疫応答を誘発する能力が低いことが実証された。当然の結果、2個以上のメトキシル基を含む分枝状のPEGを用いて調製された結合体は、アルコキシル基をもたない分枝状PEGから調製された結合体よりも免疫原性が高いと考えらる。
最後に、今回の発見によれば、単官能性活性化mPEGではなく、メトキシル基または別のアルコキシル基を含まない単官能性活性化PEGをPEG−リポソームの合成に用いれば、得られるPEG−リポソームに、血液中において補体の活性化を誘発する傾向の低下、および急性呼吸器病、アナフィラキシー様反応、および仮性アレルギー反応を誘発する傾向の低下など、低い免疫原性をもたらすことが期待される。
本発明は、一定の実施態様に関して説明されている。本発明に係る方法は、別のタイプの蛋白質、別の生物活性物質、および別の複合用試薬に対しても同じように適用可能である。したがって、本発明の範囲は、記載されている実施態様に制約されるものではないが、請求の範囲および/またはそれと同等のものによってのみ制約される。当業者は、本発明の範囲内で他の態様も実施しうることを容易に理解できる。そのような変更も本発明の一部である。
本明細書に記載されている刊行物、特許および特許出願はすべて、本発明の属する当業者の技術レベルを示すものであって、各刊行物、特許、および特許出願が、具体的かつ個別に参照として組み込まれると記載されているのと全く同等に、本明細書において参照として組み込まれる。
図1は、競合的酵素免疫測定(「ELIA」)解析法による結果を示している。本アッセイ法では、ある蛋白質のmPEG結合体を96−ウェルのアッセイプレートに結合させて、mPEGまたはt−ブトキシPEGによる、別の蛋白質のmPEG結合体へのウサギ抗体の結合阻害を測定した。 図2aは、1個または2個のメトキシル基を含む、さまざまなサイズおよび構造のPEGを用いて、図1の説明にしたがって行われた競合的ELISAの結果を示している。抗体結合に関する結果を、各試料についてメトキシル基のモル濃度の関数としてグラフに示す。 図2bは、メトキシル基のモル濃度ではなく、PEGの重量濃度(マイクログラム/mL)の関数としてグラフにした、図2aと同じデータを示す。 図3は、図1、2aおよび2bからのいくつかのデータを、PEG1分子当たりのメトキシル基の個数に対する抗原性の直接的な依存性を示す形式にしたものを示している。これらの試料は、10−kDaのPEGであって、そのうちの一つにはメトキシル基がなく(t−ブトキシPEG)、一つはメトキシル基を含み(mPEG)、一つは、2個のメトキシル基を含む(ジ−(5−KDa)mPEG−リジン)。 図4は、図1に記載された競合的ELISAを図示したもので、4.8−kDaのmPEGを、直鎖状ポリマーの末端にメトキシル基を持たない3種類の本発明に係るPEG(「PharmaPEG」と標示)と比較したものである。曲線間の横軸方向への変化は、抗mPEG抗体のアッセイにおいて、本発明の3つのPEGの抗原性がすべて、mPEGより100倍低いことを示している。 図5aは、炭酸脱水酵素(「CA II」)の異性体、および3〜4本の5−kDa mPEG鎖に結合した同じ炭酸脱水酵素の試料を、ドデシル硫酸ナトリウム(「SDS−PAGE」)存在下ポリアクリルアミドゲル電気泳動で解析した実験結果を示している。ゲルのレーン1および2は、登録商標SYPROブランドのRuby染色を用いて蛋白質を染色し、暗所にて302nmの照明下で撮影して得られた結果を示す。レーン3および4は、それぞれ、mPEG結合体および非PEG化酵素の、ウサギ抗mPEGポリクローナル抗体を一次抗体に用いたウエスタンブロットの結果を示している。レーン5は、染色済みの蛋白質標準の位置を示す。 図5bは、Kodakカメラとデジタル画像ソフトウエアによって得られた、図5aに示したゲルおよびウエスタンブロットにおけるバンドの強度の定量結果を示している。横軸は、染色最前部に対する相対的な移動距離を表し、縦軸は、蛋白質染色または抗mPEG染色の相対的強度を表す。一番下のトレース線は、染色済みの蛋白質標準液のバンドで、外見上の分子量が、左から右へそれぞれ、203.8、110.9、68.8、51.5、40.2、28.9、20.7および14.9kDaのバンドを示す。下から2番目のトレース線は、PEG化炭酸脱水酵素を抗mPEG抗体染色したものである。下から3番目のトレース線は、炭酸脱水酵素を蛋白質染色したバンドを表し、一番上のトレース線は、炭酸脱水酵素のmPEG結合体を蛋白質染色したバンドを表している。 図6aおよび6bは、ウリカーゼサブユニット当たり平均約2本のmPEG鎖またはヒドロキシPEG鎖(「PharmaPEG」)のいずれかを含むブタウリカーゼの結合体で免疫した3匹のウサギからなるグループから採取した血清をELISA分析した結果を示す。ブタウリカーゼをコートしたアッセイプレートを用いて、ウリカーゼに対する抗体を測定した。mPEGに結合した無関係の蛋白質の結合体をコートしたプレートを用いて、PEGに対する抗体を測定した。図6aは、フロイント不完全アジュバントに入れたPEG−ウリカーゼを4回注射したウサギの2回目の採血から得られたデータを示す。図6bは、同じウサギに、フロイント不完全アジュバントに入れたPEG−ウリカーゼを5回注射した後、3回目の採血から得られたデータを示す。 図6aおよび6bは、ウリカーゼサブユニット当たり平均約2本のmPEG鎖またはヒドロキシPEG鎖(「PharmaPEG」)のいずれかを含むブタウリカーゼの結合体で免疫した3匹のウサギからなるグループから採取した血清をELISA分析した結果を示す。ブタウリカーゼをコートしたアッセイプレートを用いて、ウリカーゼに対する抗体を測定した。mPEGに結合した無関係の蛋白質の結合体をコートしたプレートを用いて、PEGに対する抗体を測定した。図6aは、フロイント不完全アジュバントに入れたPEG−ウリカーゼを4回注射したウサギの2回目の採血から得られたデータを示す。図6bは、同じウサギに、フロイント不完全アジュバントに入れたPEG−ウリカーゼを5回注射した後、3回目の採血から得られたデータを示す。

Claims (102)

  1. 1種類以上の直鎖状または分枝状のポリアルキレングリコールに共有結合した1種類以上の生物活性成分を含む結合体であって、該ポリアルキレングリコールが、いずれの末端にもアルコキシル基を含まず、また該ポリアルキレングリコールが、該ポリアルキレングリコール上の単一の部位において単一の生物活性成分に結合している結合体。
  2. 生物活性成分の同一部位上で、同一のサイズであり、かつ1個以上の末端アルコキシル基を含む直鎖構造または分枝構造を有する同数のポリアルキレングリコールに結合している同一の生物活性成分を含む結合体に比べて、抗原性が低下または実質的に低下している、請求項1記載の結合体。
  3. 直鎖構造または分枝構造を有するポリアルキレングリコールが、ポリ(エチレングリコール)、およびエチレンオキシドとプロピレンオキシドのコポリマーからなるグループより選択される、請求項1記載の結合体。
  4. 直鎖構造または分枝構造を有するポリアルキレングリコールが、ポリ(エチレングリコール)(「PEG」)である、請求項3記載の結合体。
  5. 生物活性成分へのポリアルキレングリコールの結合が、直鎖状のジヒドロキシPEG(「PEGジオール」)、ヒドロキシPEG−モノアセタール、およびヒドロキシPEG−一酸物からなるグループより選択される少なくとも一つのポリアルキレングリコールの反応性誘導体を用いて行われる、請求項1記載の結合体。
  6. 生物活性成分へのポリアルキレングリコールの結合が、モノアルデヒド、一酸のモノエステル、モノアミン、モノチオール、モノジスルフィド、モノブロモフェニルカーボネート、モノクロロフェニルカーボネート、モノフルオロフェニルカーボネート、モノニトロフェニルカーボネート、モノカルボニルイミダゾール、モノヒドラジド、モノカルバゼート、モノヨードアセトアミド、モノマレイミド、モノオルトピリジルジスルフィド、モノオキシム、モノフェニルグリオキサール、モノチアゾリジン−2−チオン、モノチオエステル、モノトリアジン、およびモノビニルスルホンからなるグループより選択されるヒドロキシPEGの反応性誘導体を用いて行われる、請求項1記載の結合体。
  7. ポリアルキレングリコールの分子量が約1,000ダルトン(1kDa)から約100,000ダルトン(100kDa)である、請求項1記載の結合体。
  8. ポリアルキレングリコールの分子量が約2kDaから約60kDaである、請求項7記載の結合体。
  9. ポリアルキレングリコールが、それぞれの分子量が約2kDaから約30kDaである、2本の分枝をもつ、請求項8記載の結合体。
  10. ポリアルキレングリコールが、それぞれの分子量が約5kDaから約20kDaである2本の分枝をもつ、請求項9記載の結合体。
  11. ポリアルキレングリコールの分子量が約10kDaから約20kDaである、請求項8記載の結合体。
  12. ポリアルキレングリコールの分子量が約12kDaである、請求項11記載の結合体。
  13. ポリアルキレングリコールの分子量が約18kDaから約60kDaである、請求項8記載の結合体。
  14. ポリアルキレングリコールの分子量が約18kDaから約22kDaである、請求項13記載の結合体。
  15. ポリアルキレングリコールの分子量が約20kDaである、請求項14記載の結合体。
  16. ポリアルキレングリコールの分子量が約27kDaから約33kDaである、請求項13記載の結合体。
  17. 約1本から約100本のポリアルキレングリコール鎖を含む、請求項1記載の結合体。
  18. 約1本から約5本のポリアルキレングリコール鎖を含む、請求項17記載の結合体。
  19. 約1本から約2本のポリアルキレングリコール鎖を含む、請求項18記載の結合体。
  20. 約5本から約100本のポリアルキレングリコール鎖を含む、請求項17記載の結合体。
  21. ポリアルキレングリコールが、モノヒドロキシPEG−酸、およびジヒドロキシPEG−リジンなどのジヒドロキシPEG−酸からなるグループから選択される、請求項1記載の結合体。
  22. ポリアルキレングリコールが、直鎖状の場合には、生物活性成分が結合していない方の末端(「遠位末端」)にヒドロキシル基を有し、または、分枝状の場合には、すべての遠位末端にヒドロキシル基を有する、請求項1記載の結合体。
  23. ポリアルキレングリコールが、直鎖状ジヒドロキシPEGの反応性誘導体である、請求項5記載の結合体。
  24. ポリアルキレングリコールが、ヒドロキシPEG−モノカルボン酸の反応性誘導体である、請求項5記載の結合体。
  25. 生物活性成分が、ペプチド、蛋白質、糖蛋白質、有機化合物、アミン含有化合物、カルボキシル含有化合物、ヒドロキシル含有化合物、およびチオール含有化合物からなるグループから選択される、請求項1記載の結合体。
  26. 生物活性成分が、ペプチド、蛋白質、および糖蛋白質からなるグループから選択される、請求項25記載の結合体。
  27. ペプチドまたは蛋白質または糖蛋白質が、酵素、血清蛋白質、血清糖蛋白質、血液細胞の蛋白質、色素蛋白質、ヘモグロビン、ウイルス蛋白質、ペプチドホルモン、蛋白質ホルモン、糖蛋白質ホルモン、視床下部放出因子、サイトカイン、増殖因子、ならびに上記グループのいずれかのアンタゴニストとして模倣または機能するペプチド、蛋白質および糖蛋白質からなるグループより選択される、請求項26記載の結合体。
  28. 清蛋白質が、アルブミン、免疫グロブリン、血液凝固因子、ならびに上記血清蛋白質のいずれかのアンタゴニストとして模倣または機能するペプチド、蛋白質および糖蛋白質からなるグループより選択される、請求項27記載の結合体。
  29. ペプチドホルモン、蛋白質ホルモン、または糖蛋白質ホルモンが、抗利尿ホルモン、絨毛性ゴナドトロピン、黄体形成ホルモン、卵胞刺激ホルモン、インシュリン、プロラクチン、ソマトメジン、成長ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、胎盤性ラクトゲン、ならびに上記ホルモンのいずれかのアンタゴニストとして模倣または機能するペプチド、蛋白質および糖蛋白質からなるグループより選択される、請求項27記載の結合体。
  30. 増殖因子が、コロニー刺激因子、上皮細胞増殖因子、線維芽細胞増殖因子、インシュリン様増殖因子、トランスフォーミング増殖因子、血小板由来増殖因子、神経成長因子、肝細胞増殖因子、神経栄養因子、毛様体神経栄養因子、脳由来神経栄養因子、グリア由来神経栄養因子、または骨形成ペプチド、ならびに上記増殖因子のいずれかのアンタゴニストとして模倣または機能するペプチド、蛋白質および糖蛋白質からなるグループより選択される、請求項27記載の結合体。
  31. サイトカインが、エリスロポエチン、リンフォカイン、インターロイキン、インターフェロン、腫瘍壊死因子、白血病抑制因子、およびトロンボポエチン、ならびに上記サイトカインのいずれかのアンタゴニストとして模倣または機能するペプチド、蛋白質および糖蛋白質からなるグループより選択される、請求項27記載の結合体。
  32. 酵素が、糖質特異的酵素、蛋白質分解酵素、酸化還元酵素、転移酵素、加水分解酵素、リアーゼ、イソメラーゼ、およびリガーゼからなるグループより選択される、請求項27記載の結合体。
  33. 酸化還元酵素がウリカーゼである、請求項32記載の結合体。
  34. 蛋白質分解酵素がプラスミノゲン活性化因子である、請求項32記載の結合体。
  35. ペプチド、蛋白質、または糖蛋白質がアレルゲンである、請求項26記載の結合体。
  36. 生物活性化合物がタキサンまたはその誘導体である、請求項1記載の結合体。
  37. 生物活性化合物が抗生物質またはその誘導体である、請求項1記載の結合体。
  38. 請求項1記載の結合体および薬学的に許容される賦形剤または担体を含む薬学的組成物。
  39. 動物における身体疾患を予防、診断、または治療するための組成物であって、有効量の請求項1記載の結合体または請求項38記載の組成物を含む組成物。
  40. 動物が哺乳動物である、請求項39記載の組成物。
  41. 哺乳動物がヒトである、請求項40記載の組成物。
  42. 身体疾患が、癌、関節炎、感染症、遺伝的疾患、神経疾患、代謝疾患、酵素疾患、心疾患および高血圧からなるグループより選択される、請求項39記載の組成物。
  43. 癌が、乳癌、子宮癌、卵巣癌、前立腺癌、睾丸癌、肺癌、白血病、リンパ腫、結腸癌、消化管癌、膵臓癌、膀胱癌、腎臓癌、骨癌、神経系の癌、頭部および頸部の癌、皮膚癌、ならびにその他の癌腫、肉腫、腺腫および骨髄腫からなるグループより選択される、請求項42記載の組成物。
  44. 感染症が、細菌病、真菌病、ウイルス病、および寄生生物病からなるグループより選択される、請求項42記載の組成物。
  45. イルス病が、HIV/AIDSおよび肝炎を含むグループより選択される、請求項44記載の組成物。
  46. 遺伝的疾患が、筋縮性側索硬化症、嚢胞性線維症、血友病ならびにその他の遺伝的血液疾患、ゴーシェ病、ポンペ病、重症複合型免疫不全症(「SCID」)からなるグループより選択される、請求項42記載の組成物。
  47. 神経疾患が、アルツハイマー病および多発性硬化症を含むグループより選択される、請求項42記載の組成物。
  48. 前記組成物が非経口投与のために処方されている、請求項39記載の組成物。
  49. 非経口投与が、静脈内である、請求項48記載の組成物。
  50. 前記組成物が経口投与のために処方されている、請求項39記載の組成物。
  51. 前記組成物が局所投与のために処方されている、請求項39記載の組成物。
  52. 前記組成物が吸入投与のために処方されている、請求項39記載の組成物。
  53. 前記組成物が直腸投与のために処方されている、請求項39記載の組成物。
  54. 生物活性化合物と、一つの末端だけを活性化されたポリアルキレングリコール(「モノ活性化ポリアルキレングリコール」)との間で結合体を生成する方法であって、
    (a)安定して結合しているアルコキシル基である末端基を含まないポリアルキレングリコールを得る工程、
    (b)必要に応じて、工程(a)のポリアルキレングリコールを単官能性の活性化ポリアルキレングリコールに変換する前に、t−ブトキシル基、アリールオキシル基、またはトリフェニルメチル基(「トリチル基」)など、除去可能なブロッキング基を1個以上付加することによって、一つの末端を除くすべてを保護する工程、
    (c)該ポリアルキレングリコールが、該除去可能ブロッキング基を含まない末端において、1個の誘導体化基で誘導体化されるような条件下で、該ポリアルキレングリコールを誘導体化化合物と反応させて、該ポリアルキレングリコールの単官能性活性化誘導体を生成する工程、
    (d)上記工程(b)に記載されたように、末端基を保護するためにブロッキング基を加えた場合には、一つ以上の工程で、上記工程(c)に記載されたように結合された活性化基を除去することなく該ブロッキング基を除去して、遠位末端がヒドロキシル基である単官能性の活性化ポリアルキレングリコールを生成する工程、ならびに
    (e)該単官能性の活性化ポリアルキレングリコールを、少なくとも一つの生物活性成分に、該単官能性の活性化ポリアルキレングリコールが該生物活性成分に共有結合するのに有利な条件下で接触させる工程、または、
    (f)または、工程(d)を行う前に工程(e)を行う工程
    を含む方法。
  55. 誘導体基が、アルデヒドおよびカルボキシル基からなるグループより選択される、請求項54記載の方法。
  56. ブロッキング基が、トリチル基、アリールオキシル基、およびt−ブトキシル基からなるグループより選択される、請求項54記載の方法。
  57. 直鎖状のモノヒドロキシPEG−モノアルデヒドを対応するPEG−ジアルデヒドから分離する方法であって、
    (a)PEG−アルデヒド上のヒドロキシル基をすべてトリチル誘導体に変換する工程、(b)逆相クロマトグラフィーによって、モノトリチルPEG−モノアルデヒドを、PEG−ジアルデヒドおよび任意のジトリチルPEGから分離する工程、および
    (c)酸性媒体の中でトリチル基を加水分解によって除去して、モノトリチルPEG−モノアルデヒドをモノヒドロキシPEG−モノアルデヒドに変換する工程
    を含む方法。
  58. アルデヒドまたはジアルデヒドが、アセタール誘導体の形である、請求項57記載の方法。
  59. 請求項54記載の方法によって生成される結合体。
  60. 結合体が、同一の生物活性成分上の同一部位で、ポリアルキレングリコールが直鎖状の場合には、遠位末端にアルコキシル基を含み、ポリアルキレングリコールが分枝状の場合には遠位末端に2個以上のアルコキシル基を含む、同一サイズおよび同一の直鎖または分枝構造の同数のポリアルキレングリコール分子に結合している同一の生物活性成分を含む結合体に比べて抗原性が低下または実質的に低下している、請求項59記載の結合体。
  61. ポリアルキレングリコールが、ポリ(エチレングリコール)およびエチレンオキシドとプロピレンオキシドのコポリマーからなるグループより選択される、請求項59記載の結合体。
  62. ポリアルキレングリコール成分が、直鎖状ポリ(エチレングリコール)および分枝状ポリ(エチレングリコール)からなるグループより選択される、請求項59記載の結合体。
  63. ポリアルキレングリコールの分子量が約1kDaから約100kDaである、請求項59記載の結合体。
  64. ポリアルキレングリコールの分子量が約2kDaから約60kDaである、請求項63記載の結合体。
  65. ポリアルキレングリコールが、それぞれの分子量が約2kDaから約30kDaである、2本の分枝をもつ、請求項64記載の結合体。
  66. ポリアルキレングリコールが、それぞれの分子量が約5kDaから約20kDaである2本の分枝をもつ、請求項65記載の結合体。
  67. ポリアルキレングリコールの分子量が約10kDaから約20kDaである、請求項64記載の結合体。
  68. ポリアルキレングリコールの分子量が約12kDaである、請求項67記載の結合体。
  69. ポリアルキレングリコールの分子量が約18kDaから約60kDaである、請求項64記載の結合体。
  70. ポリアルキレングリコールの分子量が約18kDaから約22kDaである、請求項69記載の結合体。
  71. ポリアルキレングリコールの分子量が約20kDaである、請求項70記載の結合体。
  72. ポリアルキレングリコールの分子量が約27kDaから約33kDaである、請求項69記載の結合体。
  73. 約1本から約100本のポリアルキレングリコール鎖を含む、請求項59記載の結合体。
  74. 約1本から約5本のポリアルキレングリコール鎖を含む、請求項73記載の結合体。
  75. 約1本から約2本のポリアルキレングリコール鎖を含む、請求項74記載の結合体。
  76. 約5本から約100本のポリアルキレングリコール鎖を含む、請求項73記載の結合体。
  77. 結合体の合成に使用された単官能性活性化ポリアルキレングリコールが、ヒドロキシPEG−モノアルデヒド、およびヒドロキシPEG−一酸の反応性エステルからなるグループより選択される、請求項59記載の結合体。
  78. 結合体の合成に使用された単官能性活性化ポリアルキレングリコールが、直鎖状の場合には、遠位末端にヒドロキシル基を含み、分枝状の場合には遠位末端のすべてにヒドロキシル基を有する、請求項59記載の結合体。
  79. 結合体の合成に使用された単官能性活性化ポリアルキレングリコールが、直鎖状ジヒドロキシPEGに由来する、請求項59記載の結合体。
  80. 生物活性成分が、ペプチド、蛋白質、糖蛋白質、有機化合物、アミン含有化合物、カルボキシル基含有化合物、ヒドロキシル基含有化合物、およびチオール基含有化合物からなるグループより選択される、請求項59記載の結合体。
  81. 生物活性成分が、ペプチド、蛋白質、および糖蛋白質からなるグループより選択される、請求項80記載の結合体。
  82. ペプチドまたは蛋白質または糖蛋白質が、酵素、血清蛋白質、血清糖蛋白質、血液細胞の蛋白質、色素蛋白質、ヘモグロビン、ウイルス蛋白質、ペプチドホルモン、蛋白質ホルモン、糖蛋白質ホルモン、視床下部放出因子、サイトカイン、増殖因子、ならびに上記グループのいずれかのアンタゴニストとして模倣または機能するペプチド、蛋白質および糖蛋白質からなるグループより選択される、請求項81記載の結合体。
  83. 清蛋白質が、アルブミン、免疫グロブリン、血液凝固因子、ならびに上記血清蛋白質のいずれかのアンタゴニストとして模倣または機能するペプチド、蛋白質および糖蛋白質からなるグループより選択される、請求項82記載の結合体。
  84. ペプチドホルモン、蛋白質ホルモン、または糖蛋白質ホルモンが、抗利尿ホルモン、絨毛性ゴナドトロピン、黄体形成ホルモン、卵胞刺激ホルモン、インシュリン、プロラクチン、ソマトメジン、成長ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、胎盤性ラクトゲン、ならびに上記ホルモンのいずれかのアンタゴニストとして模倣または機能するペプチド、蛋白質および糖蛋白質からなるグループより選択される、請求項82記載の結合体。
  85. 増殖因子が、コロニー刺激因子、上皮細胞増殖因子、線維芽細胞増殖因子、インシュリン様増殖因子、トランスフォーミング増殖因子、血小板由来増殖因子、神経成長因子、肝細胞増殖因子、神経栄養因子、毛様体神経栄養因子、脳由来神経栄養因子、グリア由来神経栄養因子、または骨形成ペプチド、ならびに上記増殖因子のいずれかのアンタゴニストとして模倣または機能するペプチド、蛋白質および糖蛋白質からなるグループより選択される、請求項82記載の結合体。
  86. サイトカインが、エリスロポエチン、リンフォカイン、インターロイキン、インターフェロン、腫瘍壊死因子、白血病抑制因子、およびトロンボポエチン、ならびに上記サイトカインのいずれかのアンタゴニストとして模倣または機能するペプチド、蛋白質および糖蛋白質からなるグループより選択される、請求項82記載の結合体。
  87. 酵素が、糖質特異的酵素、蛋白質分解酵素、酸化還元酵素、転移酵素、加水分解酵素、リアーゼ、イソメラーゼ、およびリガーゼからなるグループより選択される、請求項82記載の結合体。
  88. 酸化還元酵素がウリカーゼである、請求項87記載の結合体。
  89. 蛋白質分解酵素がプラスミノゲン活性化因子である、請求項87記載の結合体。
  90. ペプチド、蛋白質、または糖蛋白質がアレルゲンである、請求項81記載の結合体。
  91. 生物活性化合物がタキサンまたはその誘導体である、請求項59記載の結合体。
  92. 生物活性化合物が抗生物質またはその誘導体である、請求項59記載の結合体。
  93. 請求項59記載の結合体および薬学的に許容される賦形剤または担体を含む薬学的組成物。
  94. 請求項1記載の結合体を含むキット。
  95. 請求項38記載の薬学的組成物を含むキット。
  96. 請求項59記載の結合体を含むキット。
  97. PEG成分が、いずれの末端にもアルコキシル基を含まず、PEGの各分子が、脂質分子上および該PEG分子上の単一の部位で1個の脂質分子に結合している、PEG−リポソーム組成物。
  98. 結合部位がホスファチジルエタノールアミンのアミノ基である、請求項97記載の組成物。
  99. 結合部位がジアシルグリセロールのヒドロキシル基である、請求項97記載の組成物。
  100. 組成物が、少なくとも一つのアルコキシPEGまたは1個より多くの部位で脂質に結合しているかもしくは1個より多くの脂質分子に結合しているPEGを含むPEG−リポソーム組成物に比べると、免疫反応性が低下しているか、実質的に低下している、請求項97記載の組成物。
  101. サイトカインが顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)ならびにその断片、変異体および誘導体からなる群より選択される、請求項27記載の結合体。
  102. サイトカインが顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)ならびにその断片、変異体および誘導体からなる群より選択される、請求項82記載の結合体。
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