JP2006351640A - Iii族窒化物半導体基板 - Google Patents

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Abstract

【課題】基板表面のAlGa1−bN(0<b≦1)層におけるクラックの発生を低減させることができるIII族窒化物半導体基板を提供する。
【解決手段】III族窒化物半導体基板1は、AlGa1−aN(0≦a<1)により構成され、組成aが一定である第一層11と、この第一層11上に形成される第二層12と、第二層12上に形成され、組成bが一定のAlGa1−bN(0<b≦1)により構成される第三層13とを備える。第二層12は、AlGa1−xN(0<x<1)により構成され、組成xが層厚方向に変化し、第三層13に接する表面の組成xが、第一層11に接する表面の組成xよりも高くなった組成分布を有している。組成a、b、xはa<x<bなる関係が成立している。
【選択図】 図1

Description

本発明は、III族窒化物半導体基板に関する。
近年、III族窒化物半導体基板は、青色LED、短波長LD、紫外光LED、白色LED等に使用されており、その市場は拡大傾向にある。
III族窒化物半導体基板としては、従来から、GaN基板が使用されている。しかしながら、このGaN基板上にAlGaN層を含む素子構造を形成した場合には、GaN基板の格子定数と、AlGaN層の格子定数との差により、AlGaN層に歪みが生じることがある。たとえば、GaN基板上にレーザ構造体を形成する場合、クラッド層としてAlの組成の高いAlGaN層を使用することがある。Alの組成の高いAlGaN層をクラッド層とすることで、光閉じこめ効果を向上させることができるからである。
この場合には、AlGaN層と、GaN基板との格子定数の差が大きくなり、AlGaN層に大きな歪みが生じる可能性が高い。
そのため、従来のGaN基板にかえて、Alを含んだAlGaN基板を使用することが望まれている。
ここで、従来の典型的なAlGaN基板の製造方法について、図7を使って説明する。有機金属気相成長法(以下MOCVD)や分子線エピタキシー法(MBE)によって、サファイア基板20上に1μm程度のGaNバッファ層21を成長させ、その上に0.1〜2μm程度のAlGaN層22を直接、成長させる(特許文献1参照)。AlGaN層22のAlN組成は、0.3〜0.5の範囲であり、AlGaN層22におけるAlN組成は、一定である。
特開2003−192496号公報
しかしながら、本発明者らが、従来の方法により、AlGaN基板を作成した結果、以下の課題があることが明らかとなった。
AlGaN基板のAlGaN層は2μm以上の厚さになると表面にアレイ状のクラックが高密度に発生することがわかった。また、AlN組成が0.1を超えた場合にも、アレイ状のクラックが発生しやすいことがわかった。このようなクラックの多いAlGaN層を有する基板上に、レーザ構造体等を形成した場合には、良好なデバイス特性は得られないと考えられる。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、基板表面のAlGa1−bN(0<b≦1)層におけるクラックの発生を低減させることができるIII族窒化物半導体基板を提供することにある。
本発明者は、鋭意検討した結果、従来のAlGaN基板のAlGaN層におけるアレイ状のクラックの発生には、GaNバッファ層とAlGaN層との熱膨張係数の違い、格子定数の違いが大きく影響していると推測した。
GaNバッファ層と、AlGaN層との熱膨張係数の違いによって、引っ張り応力が生じる。この引っ張り応力が、AlGaN層でのアレイ状のクラックの発生に大きく影響していると考えられる。
また、GaNバッファ層と、AlGaN層との格子定数の違いにより、AlGaN層に大きな歪みが生じると考えられ、この歪みがアレイ状のクラックの発生に大きく影響していると考えられる。
本発明は、このような知見推測に基づくものである。
本発明によれば、AlGa1−aN(0≦a<1)により構成され、組成aが一定である第一層と、この第一層上に形成される第二層と、前記第二層上に形成され、組成bが一定のAlGa1−bN(0<b≦1)により構成される第三層と、を備え、前記第二層は、AlGa1−xN(0<x<1)層により構成され、組成xが層厚方向に変化し、第三層に接する表面の組成xが、第一層に接する表面の組成xよりも高くなった組成分布を有し、前記組成a、b、xにおいてa<x<bとなる関係が成立していることを特徴とするIII族窒化物半導体基板が提供される。
ここで、本発明の第二層では、第三層に接する表面の組成xが、第一層に接する表面の組成xよりも高くなっていればよい。すなわち、本発明の第二層では、組成xの値が第一層側から、第三層側に向かって単純増加する組成分布であってもよく、また、組成xが第一層側から、第三層側に向かって増加した後、一旦減少し、再度増加するといった組成分布になっていてもよい。
さらに、本発明では、AlGa1−aN(0≦a<1)により構成される第一層は、低温成長したバッファ層であってもよく、III族窒化物半導体基板の下地基板であってもよい。
また、本発明では、第一層の組成aは一定であるとしているが、ここでいう一定とは、組成aに対し、±10%の変動を含む概念でり、±10%の範囲内の変動があっても、一定であるとみなされる。同様に第三層において、組成bが一定であるとは、組成bに対し、±10%の変動を含む概念である。
本発明では、第一層と、第三層との間に、第二層を設けている。この第二層は、組成xが層厚方向に変化するAlGa1−xN(0<x<1)により、構成されるため、第一層と、第三層との間の熱膨張係数の差を緩和することができる。これにより、第三層に加わる引っ張り応力を低減させることができ、第三層でのアレイ状のクラックの発生を低減させることができる。
これに加え、第二層は、組成xが層厚方向に変化するAlGa1−xN(0<x<1)により構成されるため、第一層と、第三層との間の格子定数の差も緩和することができる。格子定数の差に基づく歪みが第三層で発生しにくくなるため、第三層でのアレイ状のクラックの発生を確実に低減させることができる。
本発明によれば、基板表面のAlGa1−bN(0<b≦1)層におけるアレイ状のクラックの発生を低減させることができるIII族窒化物半導体基板が提供される。
本発明では、第二層は、組成xが第一層から第三層に向かって増加する組成分布を有してもよい。
なかでも、第二層は、組成xが2段階以上にわたって階段状に増加する組成分布を有することが好ましい。
本発明では、第二層により第一層および第三層間の熱膨張係数の差、格子定数の差を緩和するとともに、さらに、第二層中で発生する欠陥により、第三層でのクラックの発生を低減させることができる。
すなわち、第二層内では、AlGa1−xN(0<x<1)の組成xが層厚方向に変化しているため、ミスフィット転位によりある程度の欠陥が生じる可能性がある。特に、組成xが階段状に増加する組成分布とすれば、第二層において、組成xが急激に変化する組成不連続面を形成することができ、組成不連続面において、欠陥を生じさせることが可能となる。
第一層〜第三層の熱膨張係数の違い、格子定数の違いにより、ストレスが第二層に加わると、第二層の前記欠陥により、組成不連続面に多数のクラックが発生する。この第二層のクラックの存在により、第三層に加わる引っ張り応力が低減されることとなり、第三層表面でのアレイ状のクラックの発生をさらに、低減させることが可能となる。
また、本発明では、前記第一層はGaNにより構成されていてもよく、また、第三層はAlGa1−bN(0.1≦b≦1)により構成されていてもよい。
さらに、本発明では、前記第二層の前記第三層と接する表面における組成xは、前記第三層の組成bの30%以上の値であることが好ましい。
このように、前記第二層の前記第三層と接する表面における組成xを、前記第三層の組成bの30%以上の値とすることで、第二層と、第三層との間に生じる格子定数の差および熱膨張係数の差を小さくすることができる。
本発明では、第二層は、3μm以上であることが好ましい。
第二層の層厚を3μm以上とすることで、第三層表面でのアレイ状のクラックを確実に減少させることができる。
また、前記第三層の層厚は、3μmを超えることが好ましい。
第三層の層厚を、3μmを超えるものとすることで、第二層のクラックが、第三層表面にまで伝播してしまうことを防止できる。さらに、第三層と、第二層との界面でミスフィット転位が生じてしまったとしても、第三層の層厚を3μmを超えるものとしておけば、第三層表面まで達するミスフィット転位に起因する欠陥を低減することができる。
さらに、本発明では、前記第二層には、クラックが形成されていることが好ましい。
前述したように、第二層のクラックの存在により、第三層に加わる引っ張り応力を低減させることができ、第三層表面でのアレイ状のクラックの発生をさらに、低減させることが可能となる。
さらに、本発明のIII族窒化物半導体基板は、第一層が形成される下地基板を有するものであってもよい。下地基板は、サファイア、SiC、Si、GaAs、GaPのいずれかにより構成されることが好ましい。
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
図1には、本実施形態のIII族窒化物半導体基板1の断面図が示されている。
III族窒化物半導体基板1は、AlGa1−aN(0≦a<1)により構成され、組成aが一定である第一層11と、この第一層11上に形成される第二層12と、第二層12上に形成され、組成bが一定のAlGa1−bN(0<b≦1)により構成される第三層13とを備える。
第二層12は、AlGa1−xN(0<x<1)により構成され、組成xが層厚方向に変化し、第三層13に接する表面の組成xが、第一層11に接する表面の組成xよりも高くなった組成分布を有している。組成a、b、xはa<x<bなる関係が成立している。
以下に、III族窒化物半導体基板1の構成について、より詳細に説明する。
第一層11は、下地基板10上にGaNバッファ層Bを介して形成されたものである。
下地基板10としては、単結晶基板が好ましく、例えば、サファイア基板、炭化珪素(SiC)基板、シリコン(Si)基板、ガリウムヒ素(GaAs)基板、ガリウムリン(GaP)基板である。
なかでも、下地基板10としてサファイア基板を使用することが好ましい。サファイア基板は、安価で、品質がよいからである。また、サファイア基板上には、良質の窒化物エピタキシャル層(第一層11〜第三層13)を形成することができるという点からもサファイア基板を使用することが好ましい。このようなサファイア基板上に、第一層11等を形成する際には、サファイア基板の(0001)c面、(11−20)a面、或いは(10−10)m面で、オフアングルが0〜10°である面が選択される。なかでも、(0001)c面で、オフアングルが0.1〜1°である面が、より好ましい。
また、下地基板10としては、GaN基板を使用してもよい。
第一層11は、AlGa1−aN(0≦a<1)により構成されており、組成aは、一定である。この第一層11は、エピタキシャル成長により形成される。
ここで、第一層11としては、a=0のGaNにより構成される層であることが好ましい。GaN層は、その初期成長が安定であるからである。また、一般に下地基板10として、表面に0.01〜10μmのGaN層を成長させた基板が使用されることが多いため、第一層11をGaNにより構成される層とすることが好ましい。
この第一層11の層厚は0.01〜100μmである。なかでも、1μm以上であることが好ましい。エピタキシャル成長では、1μm以上成長させると、結晶性が向上するからである。また、第一層11は、20μm以下であることが好ましい。第一層11を20μmを超えるものとすると、コストかかるうえ、第一層11に割れが発生する可能性があるからである。
第二層12は、エピタキシャル成長した層であり、AlGa1−xN(0<x<1)により構成される。この第二層12では、アレイ状のクラックが発生している。
第二層12は、組成xが層厚方向に変化し、第三層13に接する表面の組成xが、第一層11に接する表面の組成xよりも高くなった組成分布を有する。
本実施形態では、第二層12の組成xは、第一層11から第三層13に向かい5段階にわたって階段状に増加している。すなわち、本実施形態では、第二層12は、5層構成(層121〜125)となっている。例えば、各層121〜125の組成xが第一層11側から第三層13側に向かい、0.1ずつ増加するような構成を採用することができる。第一層11側の層121をAl0.2Ga0.8N、層122をAl0.3Ga0.7N、層123をAl0.4Ga0.6N、層124をAl0.5Ga0.5N、層125をAl0.6Ga0.4Nとすることができる。
なお、第三層13に接する層125の組成xは、第三層13のAlGa1−bN(0<b≦1)の組成bの30%以上の値であることが好ましい。
ここで、組成xを階段状に増加させるためには、第二層12を形成する際に、Al原料ガス供給量とGa原料ガス供給量との比を変化させればよい。
また、第二層12の組成xを階段状に増加させる場合には、第二層12が多層構成となるが、第二層12は、2層以上、30層以下であることが好ましい。結晶の品質、コストを考慮すると、2層以上、15層以下であることがより好ましい。
また、第二層12を構成する各層の厚みは0.2〜50μmであることが好ましい。
さらに、第二層12全体の層厚は、2〜100μmであることが好ましいが、3〜50μmであることがより好ましく、なかでも、3〜25μmであることが特に好ましい。
第二層12の層厚を3μm以上とすることで、第三層13表面でのアレイ状のクラックを確実に減少させることができる。
第三層13は、エピタキシャル成長した層であり、組成bが一定のAlGa1−bN(0<b≦1)により構成される。
第三層13のAlGa1−bNの組成bは、0.1≦b≦1であることが好ましい。従って、第三層13は、AlNであってもよい。
さらに、0.3≦b≦1であることがより好ましく、さらには、0.5≦b≦1であることが特に好ましい。
この第三層13の層厚は、3μmを超えることが好ましい。第三層13と、第二層12との界面でミスフィット転位が生じてしまったとしても、第三層13の層厚を3μmを超えるものとしておけば、第三層13表面まで達するミスフィット転位に起因する欠陥を低減することができる。
さらに、第三層13の層厚を3μmを超えるものとすることで、第二層12のクラックが、第三層13表面にまで伝播してしまうことを防止できる。
なお、第二層12のクラックが、第三層13表面にまで伝播してしまうことをより確実に防止し、さらに、第三層13表面まで達するミスフィット転位に起因する欠陥を確実に低減するためには、第三層13の層厚を5μm以上とすることが好ましい。第三層13の成長の安定性およびコスト等を考慮すると、第三層13の層厚は、5〜300μm、さらに好ましくは5〜50μmである。
以上のようなIII族窒化物半導体基板1は、発光ダイオード、半導体レーザの基板として使用することができる。例えば、III族窒化物半導体基板1上に、n型クラッド層、活性層、p型クラッド層、電極等のレーザ構造体を形成し、半導体レーザを構成することができる。
このようなIII族窒化物半導体基板1は、HVPE(Hydride Vapor Phase Epitaxy)法、MOCVD法等により製造することができる。
例えば、下地基板10上にMOCVD法により、GaNバッファ層Bを形成し、さらに、HVPE法により、第一層11から第三層13を形成することができる。
また、MOCVD法を用いずに、HVPE法により、GaNバッファ層B、第一層11〜第三層13を形成することもできる。例えば、HVPE法により、400〜700℃(より好ましくは450〜600℃)で下地基板10上にGaNバッファ層Bを形成し、その後、HVPE法により、850〜1300℃で、第一層11〜第三層13の各層を形成することができる。HVPE法を使用すれば、各層11〜13の層厚を厚くすることが可能である。
なお、良質なGaNバッファ層Bを形成するために、GaNバッファ層Bを形成する前段で、900〜1200℃で下地基板10表面を清浄化してもよい。清浄化する際の温度は、900〜1200℃であればよいが、1000℃以上であれば、確実に清浄化を図ることができる。
以下に、III族窒化物半導体基板1の作用効果について説明する。
本実施形態では、第一層11と第三層13との間に、第二層12を設けている。第二層12は、組成xが層厚方向に変化し、第三層13に接する表面の組成xが、第一層11に接する表面の組成xよりも高くなった組成分布のAlGa1−xN(0<x<1)により構成される層である。この第二層12により、第一層11と、第三層13との間の熱膨張係数の差を緩和することができる。そのため、第三層13に加わる引っ張り応力を低減させることができ、第三層13でのアレイ状のクラックの発生を低減することができる。
これに加え、第二層12を設けることで、第一層11と、第三層13との間の格子定数の差を緩和することができる。格子定数の差に基づく歪みが第三層13で発生しにくくなるため、第三層13でのアレイ状のクラックの発生を確実に低減することができる。
本実施形態のIII族窒化物半導体基板1は、第二層12により第一層11および第三層13間の熱膨張係数の差、格子定数の差を緩和するとともに、さらに、第二層12中で発生する欠陥により、第三層13でのクラックの発生を低減したものである。
すなわち、第二層12内では、AlGa1−xN(0<x<1)の組成xが層厚方向に変化しているため、ミスフィット転位によりある程度の欠陥が生じる可能性がある。特に、本実施形態では、組成xが階段状に増加する組成分布としているので、第二層12において、組成xが急激に変化する組成不連続面を形成することができ、組成不連続面において、欠陥を生じさせることが可能となる。
第一層11〜第三層13の熱膨張係数の違い、格子定数の違いにより、ストレスが第二層12に加わると、第二層12の前記欠陥により、組成不連続面に多数のクラックが発生する。この第二層12のクラックの存在により、第三層13に加わる引っ張り応力が低減されることとなり、第三層13表面でのアレイ状のクラックの発生をさらに、抑制することが可能となる。
また、第二層12の組成不連続面には、欠陥やクラックが生じるため、第一層11および第二層12間でミスフィット転位が生じたとしても、第二層12の組成不連続面の欠陥やクラックによりミスフィット転位の伝播が阻害されることとなる。これにより、第三層13表面でのアレイ状のクラックの発生を確実に低減させることができる。
第三層13のAlGa1−bNの組成bを0.1以上とした場合、従来のように、第三層13を第一層11上に直接、形成すると、第三層13にアレイ状のクラックが発生してしまうが、本実施形態では、第二層12を設けているので、第三層13の組成bを0.1以上としても、第三層13でアレイ状のクラックがほとんど発生することがない。
さらに、本実施形態では、第二層12の第三層13に接する層125の組成xの値を第三層13の組成bの30%以上としているので、第二層12と、第三層13との間に生じる格子定数の差および熱膨張係数の差を小さくすることができる。
これにより、第二層12と、第三層13との格子定数の差による、第三層13でのアレイ状のクラックの発生を低減することができる。また、第二層12と、第三層13との熱膨張係数の差により生じる引っ張り応力を小さくすることができ、第三層13におけるアレイ状のクラックの発生を低減することができる。
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
たとえば、前記実施形態では、下地基板10と、第一層11との間に、GaNバッファ層Bを形成したが、これに限らず、例えば、AlNのバッファ層を形成してもよい。
また、GaNバッファ層Bを形成せずに、下地基板10上に第一層11を直接形成してもよい。さらには、第一層を低温成長させて、バッファ層としてもよい。
また、前記実施形態では、下地基板10上に第一層11〜第三層13を形成したが、第一層11としてGaN基板を使用し、このGaN基板上に第二層、第三層を形成してもよい。
前記実施形態では、第二層12は、多層構成であり、AlGa1−xN(0<x<1)の組成xは、第一層11から第三層13に向かい2段階以上にわたって階段状に増加するとしたが、これに限られるものではない。
例えば、図2(A)、(B)に示すように、第二層12を単層構成とし、第一層11から第三層13に向かい、なだらかに組成xが増加するものとしてもよい。
さらに、第一層11から第三層13に向かい直線的に組成xが増加するものとしてもよい。
また、図3に示すように、組成xが第一層側から、第三層側に向かって増加した後、一旦減少し、再度増加するといった繰り返しの組成分布になっていてもよい。
さらに、前記実施形態では、III族窒化物半導体基板1は、下地基板10を備えるものとしたが、これに限らず、下地基板10を有しない構成としてもよい。例えば、下地基板上に第一層〜第三層を形成し、第一層と下地基板との界面からエッチング等により、下地基板を分離してもよい。
(実施例)
本実施例では、図1に示した構造のIII族窒化物半導体基板をHVPE法により、製造した。
まず、高純度ガリウム(Ga)をHVPE装置の石英製のGaソースボートの中に充填し、高純度アルミニウム(Al)をアルミナ製のAlソースボートの中に充填した。そして、Gaソースボート、Alソースボートを、水平型石英製のリアクタ内の所定位置にそれぞれ配置した。
下地基板としては、サファイア基板を使用した。サファイア基板は、直径2インチの円形で、(0001)c面で(10−10)方向に0.25°に偏位した面を有するものを用いた。サファイア基板には、有機金属気相成長法により、厚さ2μmのGaN層があらかじめ形成されている。このサファイア基板をHVPE装置のホルダー上に配置して回転させた。
以下の説明において、ガスの供給量の単位としては、標準状態に換算した単位であるSCCMを使用する。
窒素(N)ガスを前記リアクタ内に供給して、リアクタ内の空気を置換した後、Nガスの供給を止め、水素(H)ガスに切り替え、Hガスを10000SCCMで供給した。そして、ヒータによってリアクタ内を加熱した。ここでの加熱方法は、リアクタの外壁をヒータにより加熱する所謂ホットウオール法である。
次に、サファイア基板上に良質のGaNバッファ層を形成するために、アンモニア(NH)ガスを3000SCCMで導入し、1050℃で、30分間、サファイア基板の表面をクリーニングした。
その後、サファイア基板を冷却した。
次に、Alソースボート、Gaソースボート、サファイア基板の温度が、それぞれ500℃、800℃、550℃に保持されていることを確認し、GaNバッファ層の気相成長を開始した。サファイア基板上に1500SCCMでNHガスを供給し、GaソースボートにHClガスを50SCCMで供給して、GaClを50SCCMで生成させ、サファイア基板上に供給した。気相成長開始から5分後に、サファイア基板上にエピタキシャル成長したGaNバッファ層が形成された。
次に、Hガスの供給を止め、Nガスを前記リアクタ内に供給して、リアクタ内のHガスをNガスで置換した。このとき、Nガスを10000SCCMで導入した。その後、再びリアクタ内を昇温した。NHガスを3000SCCMで導入して、GaNバッファ層の表面のGaNの解離を防いだ。Alソースボート、Gaソースボート、サファイア基板の温度が、それぞれ500℃、800℃、1050℃に保持されていることを確認した後、第一層の気相成長を開始した。
はじめにサファイア基板上に1500SCCMでNHガスを供給した。次にNHガスの流量を変えることなく、GaソースボートにHClガスを50SCCMで供給して、GaClを50SCCMで生成させた。このGaClをGaNバッファ層が形成されたサファイア基板上に供給した。10分間、GaClの供給を行った。これにより、GaN層である第一層が形成された。この第一層は、エピタキシャル成長した層である。
次に、NHガスと、GaClガスの供給量を変えることなく、AlソースボートにHClガスを供給してAlClを生成し、このAlClを第一層が形成されたサファイア基板上に供給した。AlClの供給量を階段状に増加させて、第二層を成長させた。
具体的には、HClガスの供給量を30SCCM(AlCl供給量10SCCM)として、2分間供給した。
次に、HClガスの供給量を60SCCM(AlCl供給量20SCCM)とし、2分間供給した。
さらに、HClガスの供給量を90SCCM(AlCl供給量30SCCM)として、2分間供給した。
次に、HClガスの供給量を120SCCM(AlCl供給量40SCCM)とし、2分間供給した。
さらに、HClガスの供給量を150SCCM(AlCl供給量50SCCM)とし、2分間供給した。
以上より、5層からなる第二層が形成された。
次に、NHガスの供給量とGaClガスの供給量を変えることなく、Alソースボートに供給するHClガスの供給量を180SCCM(AlCl供給量60SCCM)とし、30分間供給して、第三層を形成した。
このようにして形成された第一層、第二層、第三層の層厚は、それぞれ16μm、9μm、26μmであった。
フィリップス社のX線回折装置Xpert-MRDの2θ−ω測定により各層の回折ピーク角度を求め、格子定数から、第一層〜第三層の組成を求めた。
一般に、組成cをもつAlGa1−cNの格子定数d(c)は、AlNの格子定数0.4981nmとGaNの格子定数0.5185nmとの差に基づいて求めることができる。格子定数d(c)と、AlNの格子定数と、GaNの格子定数とでは、以下の関係が成立する。
d(c)=0.4981+(0.5185−0.4981)×(1−c)…(式1)
この式1に基づいて、第三層の組成bを求めたところ、b=0.72であった。
また、式1に基づいて、第二層の各層の組成を求めたところ、第一層側から順に、Al0.06Ga0.94N、Al0.15Ga0.85N、Al0.23Ga0.77N、Al0.29Ga0.71N、Al0.38Ga0.62Nとなっていた。
光学顕微鏡で、製造したIII族窒化物半導体基板の第三層の表面を観察したところ、図4に示すように、アレイ状のクラックの発生がないことが確認された。
III族窒化物半導体基板の下地基板は、無色透明なサファイア基板であるので、III族窒化物半導体基板の裏側のサファイア基板側から光学顕微鏡で観察したところ、図5に示すように、第一層および第二層にアレイ状のクラックが発生しているのが、確認された。
アレイ状のクラックは第一層および第二層で生じているが、第三層表面にまでは及んでいないことが確認された。
(比較例)
表面にGaN層が形成されたサファイア基板(実施例で使用したサファイア基板と同じもの)上に、GaNバッファ層、第一層、第三層を形成した。
GaNバッファ層、第一層、第三層の形成方法は、実施例と同じである。比較例は、第一層と第三層との間に第二層を形成しない点において、実施例と異なっている。
比較例において、第一層の層厚は、18μm、第三層の層厚は、28μmであった。
フィリップス社のX線回折装置Xpert-MRDの2θ−ω測定で各層の回折ピーク角度を求め、格子定数から実施例と同様に組成を計算したところ、第三層の組成bは0.7であった。
光学顕微鏡で、第三層の表面を観察したところ、図6に示すように、アレイ状のクラックが発生していることが確認できた。このクラックは第三層の表面に高密度で発生していた。
本発明の実施形態にかかるIII族窒化物半導体基板の断面およびIII族窒化物半導体基板のAl組成の割合を示す図である。 (A)は、本発明の変形例にかかるIII族窒化物半導体基板の断面およびIII族窒化物半導体基板のAl組成の割合を示す図である。 (B)は、本発明の他の変形例にかかるIII族窒化物半導体基板の断面およびIII族窒化物半導体基板のAl組成の割合を示す図である。 本発明の変形例にかかるIII族窒化物半導体基板の断面およびIII族窒化物半導体基板のAl組成の割合を示す図である。 実施例における第三層表面の顕微鏡写真(観察倍率200倍)を示す図である。 実施例におけるクラックが発生した第一層および第二層の顕微鏡写真(観察倍率200倍)を示す図である。 比較例の第三層の表面の顕微鏡写真(観察倍率200倍)を示す図である。 従来のAlGaN基板の断面を示す図である。
符号の説明
1 III族窒化物半導体基板
10 下地基板
11 第一層
12 第二層
13 第三層
20 サファイア基板
21 バッファ層
22 AlGaN層
121〜125 層
B バッファ層

Claims (8)

  1. AlGa1−aN(0≦a<1)により構成され、組成aが一定である第一層と、
    この第一層上に形成される第二層と、
    前記第二層上に形成され、組成bが一定のAlGa1−bN(0<b≦1)により構成される第三層と、
    を備え、
    前記第二層は、AlGa1−xN(0<x<1)層により構成され、組成xが層厚方向に変化し、第三層に接する表面の組成xが、第一層に接する表面の組成xよりも高くなった組成分布を有し、
    前記組成a、b、xにおいてa<x<bとなる関係が成立していることを特徴とするIII族窒化物半導体基板。
  2. 請求項1に記載のIII族窒化物半導体基板において、
    前記第二層は、組成xが第一層から第三層に向かって増加する組成分布を有することを特徴とするIII族窒化物半導体基板。
  3. 請求項2に記載のIII族窒化物半導体基板において、
    前記第二層は、組成xが2段階以上にわたって階段状に増加する組成分布を有することを特徴とするIII族窒化物半導体基板。
  4. 請求項1乃至3のいずれかに記載のIII族窒化物半導体基板において、
    前記第一層はGaNにより構成されることを特徴とするIII族窒化物半導体基板。
  5. 請求項1乃至4のいずれかに記載のIII族窒化物半導体基板において、
    前記第三層はAlGa1−bN(0.1≦b≦1)により構成されることを特徴とするIII族窒化物半導体基板。
  6. 請求項1乃至5のいずれかに記載のIII族窒化物半導体基板において、
    前記第二層の前記第三層と接する表面における組成xは、前記第三層の組成bの30%以上の値であることを特徴とするIII族窒化物半導体基板。
  7. 請求項1乃至6のいずれかに記載のIII族窒化物半導体基板において、
    前記第二層には、クラックが形成されていることを特徴とするIII族窒化物半導体基板。
  8. 請求項1乃至7のいずれかに記載のIII族窒化物半導体基板において、
    下地基板上に、前記第一層が形成されており、
    前記下地基板は、サファイア、SiC、Si、GaAs、GaPのいずれかにより構成されることを特徴とするIII族窒化物半導体基板。
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