JP2006351563A - 薄膜磁気センサ - Google Patents

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Abstract

【課題】 GMR膜を用いた薄膜磁気センサにおいて、アニール処理に伴うGMR膜の電気抵抗Rの変化率のGMR単独膜との差、及び、センサ間の差をなくし、薄膜磁気センサのS/N比の低下を抑制すること。
【解決手段】 下地膜12と、下地膜12上に形成された薄膜ヨーク14、16と、ギャップg内又はその近傍に形成されたGMR膜18と、薄膜ヨーク14、16及びGMR膜18の表面を保護する保護膜20と、下地膜12とGMR膜18の界面及び/又は保護膜20とGMR膜18の界面に形成されたバリア層22、24とを備え、GMR膜18は、金属−絶縁体系ナノグラニュラー材料からなり、バリア層22、24は、フッ化物を含む材料からなる薄膜磁気センサ10
【選択図】 図1

Description

本発明は、薄膜磁気センサに関し、さらに詳しくは、自動車の車軸、ロータリーエンコーダ、産業用歯車等の回転情報の検出、油圧式シリンダ/空気式シリンダのストロークポジション、工作機械のスライド等の位置・速度情報の検出、工業用溶接ロボットのアーク電流等の電流情報の検出、地磁気方位コンパスなどに好適な薄膜磁気センサに関する。
磁気センサは、電磁気力(例えば、電流、電圧、電力、磁界、磁束など。)、力学量(例えば、位置、速度、加速度、変位、距離、張力、圧力、トルク、温度、湿度など。)、生化学量等の被検出量を、磁界を介して電圧に変換する電子デバイスである。磁気センサは、磁界の検出方法に応じて、ホールセンサ、異方的磁気抵抗(AMR: Anisotropic Magneto-Resistiity)センサ、巨大磁気抵抗(GMR: Gaiant MR)センサ等に分類される。
これらの中でもGMRセンサは、
(1)ホールセンサやAMRセンサに比べて電気比抵抗の変化率の最大値(すなわち、MR比=△ρ/ρ(△ρ=ρ−ρ:ρは、外部磁界Hにおける電気比抵抗、ρは、外部磁界ゼロにおける電気比抵抗))が極めて大きい、
(2)ホールセンサに比べて抵抗値の温度変化が小さい、
(3)巨大磁気抵抗効果を有する材料が薄膜材料であるために、マイクロ化に適している、
等の利点がある。そのため、GMRセンサは、コンピュータ、電力、自動車、家電、携帯機器等に用いられる高感度マイクロ磁気センサとしての応用が期待されているものである。
GMR効果を示す材料としては、
(1)強磁性層(例えば、パーマロイ等)と非磁性層(例えば、Cu、Ag、Au等)の多層膜、あるいは、反強磁性層、強磁性層(固定層)、非磁性層及び強磁性層(自由層)の4層構造を備えた多層膜(いわゆる、「スピンバルブ」)からなる金属人工格子、
(2)強磁性金属(例えば、パーマロイ等)からなるnmサイズの微粒子と、非磁性金属(例えば、Cu、Ag、Au等)からなる粒界相とを備えた金属−金属系ナノグラニュラー材料、
(3)スピン依存トンネル効果によってMR(Magneto-Resistivity)効果が生ずるトンネル接合膜、
(4)nmサイズの強磁性金属合金微粒子と、非磁性・絶縁性材料からなる粒界相とを備えた金属−絶縁体系ナノグラニュラー材料、
等が知られている。
これらの内、スピンバルブに代表される多層膜は、一般に、低磁界における感度が高いという特徴がある。しかしながら、多層膜は、種々の材料からなる薄膜を高精度で積層する必要があるために、安定性や歩留まりが悪く、製作コストを抑えるには限界がある。そのため、この種の多層膜は、専ら付加価値の大きなデバイス(例えば、ハードディスク用の磁気ヘッド)にのみ用いられ、単価の安いAMRセンサやホールセンサとの価格競争を強いられる磁気センサに応用するのは困難であると考えられている。また、多層膜間の拡散が生じやすく、GMR効果が消失しやすいため、耐熱性が悪いという大きな欠点がある。
一方、ナノグラニュラー材料は、一般に、作製が容易で、再現性も良い。そのため、これを磁気センサに応用すれば、磁気センサを低コスト化することができる。特に、金属−絶縁体系ナノグラニュラー材料のうち、特に金属−フッ化物系ナノグラニュラー材料では、
(1)その組成を最適化すれば、室温において10%を越える高いMR比を示す、
(2)電気比抵抗が桁違いに高いので、磁気センサの超小型化と低消費電力化が同時に実現可能である、
(3)耐熱性の悪い反強磁性膜を含むスピンバルブ膜と異なり、高温環境下でも使用可能である、
等の利点がある。しかしながら、金属−絶縁体系ナノグラニュラー材料は、低磁界における磁界感度が非常に小さいという問題がある。
そこでこの問題を解決するために、特許文献1には、巨大磁気抵抗薄膜の両端に軟磁性薄膜を配置し、巨大磁気抵抗薄膜の磁界感度を上げる点が記載されている。また、同文献には、基板上に膜厚2μmのパーマロイ薄膜(軟磁性膜)を形成し、パーマロイ薄膜にイオンビームエッチング装置を用いて幅約9μmの隙間を作製し、隙間の部分にCo38.641.047.4組成を有するナノグラニュラーGMR膜を積層する薄膜磁気センサの製造方法が記載されている。
また、特許文献2には、巨大磁気抵抗薄膜の両端に軟磁性薄膜を配置した薄膜磁気抵抗素子において、磁界感度をさらに向上させるために、巨大磁気抵抗薄膜の膜厚を軟磁性薄膜の膜厚以下とする点が記載されている。
特開平11−087804号公報の請求項1及び段落番号「0019」 特開平11−274599号公報の請求項1
薄膜磁気センサは、フォトリソグラフィ技術を用いて、薄膜の積層及びエッチングを複数回繰り返すことにより作製される。各薄膜は、一般に、結晶構造が異なっているので、成膜直後の薄膜磁気センサには、相対的大きな残留応力が発生している。また、金属−絶縁体系ナノグラニュラー材料からなるGMR膜の場合、成膜直後は、金属ナノ粒子が部分的に短絡しているために、その電気抵抗Rは相対的に小さい。そのため、薄膜磁気センサは、通常、成膜後に各積層膜の残留応力を除去し、電磁気特性を調製したり、あるいは、電気抵抗Rを調整するために、アニール処理が行われている。
一方、GMR膜の電気抵抗Rは、温度によって変化する。GMR膜の電気抵抗Rが外部磁界以外の要因で変動すると、測定誤差の原因となる。そのため、薄膜磁気センサは、温度による基準電位の変動を防ぐために、通常、2個のセンサを直列に接続(ハーフブリッジ)し、中点電位を計測することによって外部磁界の検出を行うようになっている。また、出力を倍にしたり、外乱ノイズを低下するために、4個のセンサを用いてブリッジ回路(フルブリッジ)を構成する場合もある。
しかしながら、センサ内に作り込まれたGMR膜と、他の適当な安定な基板上に形成された単独のGMR膜とでは、その組成が同一であっても、アニール処理に伴う電気抵抗Rの変化率が異なったり、磁気抵抗変化率のアニール挙動に差の生じる場合がある。しかも、GMR膜のアニール処理に伴う電気抵抗Rの変化率や磁気抵抗変化率のアニール変化は、同一基板上に隣接して作り込まれたセンサであっても大きく異なる場合がある。そのため、このようなセンサを用いてハーフブリッジ又はフルブリッジを構成しても、中点電位が温度によって変動し、S/N比を低下させるという問題がある。
本発明が解決しようとする課題は、GMR膜を用いた薄膜磁気センサにおいて、アニール処理に伴うGMR膜の電気抵抗Rの変化率を、安定基板上に作られたGMR膜単独の理想の場合の変化率に近づけることにある。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、アニール処理に伴うGMR膜の電気抵抗Rの変化率がセンサ毎に異なることに起因する薄膜磁気センサのS/N比の低下を抑制することにある。
上記課題を解決するために本発明に係る薄膜磁気センサは、非磁性絶縁材料からなる基板と、前記基板上に形成された、軟磁性材料からなりかつギャップを介して対向させた一対の薄膜ヨークと、前記ギャップ内又はその近傍において、前記一対の薄膜ヨークと電気的に接続されるように形成された、前記軟磁性材料より高い電気比抵抗を有し、かつ、巨大磁気抵抗効果を有するGMR膜と、前記薄膜ヨーク及び前記GMR膜の表面を保護する保護膜と、前記基板と前記GMR膜との界面に形成された、非磁性絶縁材料からなる第1のバリア層とを備え、前記GMR膜は、金属−フッ化物系ナノグラニュラー材料からなり、前記第1のバリア層は、フッ化物を含む材料からなることを要旨とする。
また、本発明に係る薄膜磁気センサの2番目は、非磁性絶縁材料からなる下地膜と、前記下地膜上に形成された、軟磁性材料からなりかつギャップを介して対向させた一対の薄膜ヨークと、前記ギャップ内又はその近傍において、前記一対の薄膜ヨークと電気的に接続されるように形成された、前記軟磁性材料より高い電気比抵抗を有し、かつ、巨大磁気抵抗効果を有するGMR膜と、前記薄膜ヨーク及び前記GMR膜の表面を保護する保護膜と、前記下地膜と前記GMR膜との界面に形成された、非磁性絶縁材料からなる第1のバリア層とを備え、前記GMR膜は、金属−フッ化物系ナノグラニュラー材料からなり、前記第1のバリア層は、フッ化物を含む材料からなることを要旨とする。
この場合、その表面に前記下地膜が形成された、非磁性材料又は非磁性絶縁材料基板をさらに備えていても良い。また、前記GMR膜と前記保護膜との界面に形成された、非磁性絶縁材料からなる第2のバリア層をさらに備え、該第2のバリア層は、フッ化物を含む材料からなるものが好ましい。
金属−フッ化物系ナノグラニュラー材料からなるGMR膜と下地膜(若しくは基板)及び/又は保護膜との界面に、フッ化物を含む材料からなるバリア層を形成すると、アニール処理後のGMR膜の電気抵抗Rの変化率、及び、磁気抵抗変化率のアニールによる変化が、GMR膜単独の場合とほぼ同等になる。また、これと同時に、同一基板上に作り込まれた各センサのアニール処理後の電気抵抗Rの変化率、及び、磁気抵抗変化率のアニールによる変化は、ほぼ等しくなる。これは、
(1)下地膜(若しくは基板)及び/又は保護膜からGMR膜へのある種の元素の拡散がGMR膜の電気抵抗Rをばらつかせる原因であること、並びに、
(2)GMR膜と下地膜(若しくは基板)及び/又は保護膜との界面にバリア層を設けることによって、GMR膜の電気抵抗Rをばらつかせる原因となる元素の拡散が抑制されること、によると考えられる。
以下に、本発明の一実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。図1(a)、図1(b)及び図1(c)に、本発明の第1の実施の形態に係る薄膜磁気センサの平面図、そのA−A’線断面図及びギャップ近傍の拡大断面図を示す。
図1(a)〜図1(c)において、薄膜磁気センサ10は、下地膜12と、一対の薄膜ヨーク14、16と、GMR膜18と、保護膜20と、バリア層22、24とを備えている。
下地膜12は、基板(図示せず)上に形成される。下地膜12は、
(1)基板が半導体である場合に、絶縁性を付与するため(例えば、熱酸化SiO)、及び、
(2)基板が多結晶体である場合や粒状混合物系の場合(例えば、電気伝導度、硬さ、剛性、熱伝導性等が異なる異種材料(例えば、AlとTiO)を混合して固めたもの)に、基板表面に平滑性を付与するため(例えば、スパッタAl)、に形成される。
従って、基板そのものが絶縁性及び平滑性を有している場合は、下地膜12を省略し、基板の上に直接、各薄膜を形成しても良い。
また、下地膜12を形成する場合、薄膜磁気センサ10は、基板上に各種の薄膜が積層された状態で使用しても良く、あるいは、基板を取り除いた状態で使用しても良い。
下地膜12には、非磁性絶縁材料が用いられる。また、下地膜12は、一般に、その表面を平滑にするために成膜後に精密研磨が行われるので、緻密性、平滑性、研磨容易性を備えた材料を用いるのが好ましい。このような条件を備えた下地膜12の材質としては、具体的には、SiO(シリカ)、アルミナ(Al)、ジルコニア(ZrO)、マグネシア(MgO)などがある。
下地膜12の厚さは、特に限定されるものではなく、基板表面に絶縁性・平滑性を付与できる程度の厚さ、あるいは、基板を取り除いた後に自立できる程度の厚さがあれば良い。
基板には、非磁性材料又は非磁性絶縁材料が用いられる。また、下地膜12を省略する場合には、基板には、非磁性絶縁材料が用いられる。さらに、基板は、製造工程中で破損しない程度の剛性、製造工程中に発生する熱を効率よく逃がすことができる程度の熱伝導性、及び、小チップ切断を高精度でできる程度の脆性を有しているものが好ましい。このような基板としては、具体的には、(1)ガラス、(2)Si、(3)アルミナ、アルミナ・チタンカーバイド等のセラミックス、などがある。また、基板表面に下地膜12を形成する場合には、基板として、アルミニウム、Cuなどの非磁性材料を用いることもできる。
一対の薄膜ヨーク14、16は、下地膜12上に形成され、ギャップgを介して対向している。各薄膜ヨーク14、16の外側の端部には、それぞれ、電極26、28が形成されている。
薄膜ヨーク14、16は、GMR膜18の磁界感度を高めるためのものであり、軟磁性材料からなる。弱磁界に対する高い磁界感度を得るためには、薄膜ヨーク14、16には、透磁率μ及び/又は飽和磁化Msの高い材料を用いるのが好ましい。具体的には、その透磁率μは、100以上が好ましく、さらに好ましくは、1000以上である。また、その飽和磁化Msは、5(kGauss)以上が好ましく、さらに好ましくは、10(kGauss)以上である。
薄膜ヨーク14、16の材質としては、具体的には、パーマロイ(40〜90%Ni−Fe合金)、センダスト(Fe74SiAl17)、ハードパーム(Fe12Ni82Nb)、Co88NbZrアモルファス合金、(Co94Fe)70Si1515アモルファス合金、ファインメット(Fe75.6Si13.28.5Nb1.9Cu0.8)、ナノマックス(Fe83HF11)、Fe85Zr10合金、Fe93Si合金、Fe711118合金、Fe71.3Nd9.619.1ナノグラニュラー合金、Co70Al1020ナノグラニュラー合金、Co65FeAl1020合金等が好適である。
薄膜ヨーク14、16は、外部磁界を増幅させ、GMR膜18の磁界感度を高める作用があるが、この増幅作用は、薄膜ヨーク14、16の材質だけでなく、形状を最適化することによっても高めることができる。GMR膜18の磁界感度をさらに高めるためには、薄膜ヨーク14、16の形状は、以下のような条件を満たしていることが好ましい。
第1に、薄膜ヨーク14、16は、ギャップg側の断面積が外部磁界の流入・流出端(外側の端部)の断面積より小さくなっていることが望ましい。ギャップg側の断面積を小さくすると、ギャップg先端における磁束密度が大きくなり、GMR膜18に強い磁界を作用させることができる。
第2に、薄膜ヨーク14、16は、外側端部の横幅Wに対するそのギャップ長方向の長さLの比(L/W)が、適度に大きいことが望ましい。薄膜ヨーク14、16のギャップ長方向の長さが相対的に長くなるほど、ギャップ長方向に発生する反磁界が小さくなるので、外側の端面を外部磁界の流入・流出端として有効に機能させることができる。
第3に、各薄膜ヨーク14、16の形状は、ギャップgを挟んで左右対称になっていることが望ましい。各薄膜ヨーク14、16の形状が左右非対称であると、磁気特性の悪い薄膜ヨークによって薄膜磁気センサ10の特性が支配されるので好ましくない。
第4に、ギャップgを介して対向する各薄膜ヨーク14、16と、GMR膜18とが接触している最短距離(すなわち、「ギャップ長」)は、短いことが望ましい。ギャップ長が短くなるほど、薄膜ヨーク14、16の先端から漏れた磁束の空間への分散が抑制され、GMR膜18に強い磁界を作用させることができる。ギャップ長の長さは、GMR膜18に作用する磁界の大きさ、電気抵抗Rの仕様等に応じて、最適な長さとするのが好ましい。
なお、薄膜ヨーク14、16の厚さは、特に限定されるものではなく、薄膜ヨーク14、16の材質、薄膜磁気センサ10に要求される特性等に応じて、最適な厚さを選択すればよい。
また、図1(a)に示す例において、薄膜ヨーク14、16の先端側(ギャップg側)に平行部が設けられているが、この平行部は、なくても良い。但し、薄膜ヨーク14、16先端に平行部を設けると、薄膜ヨーク14、16先端における磁束の周囲への分散が抑制されるので、GMR膜18により強い磁界を作用させることができ、さらに、性能がより安定化して歩留まりが向上するという利点がある。
GMR膜18は、ギャップg内又はその近傍において、一対の薄膜ヨーク14、16と電気的に接続されるように形成される。
ここで、「ギャップg近傍」とは、薄膜ヨーク14、16先端に発生する増幅された大きな磁界の影響を受ける領域であって、ギャップg中磁界の最小値に対して、1/2以上の大きさの磁界を持つ領域をいう。薄膜ヨーク14、16間に発生する磁界は、ギャップg内が最も大きくなるので、GMR膜18は、ギャップg内に形成するのが最も好ましいが、GMR膜18に作用する磁界が実用上十分な大きさであるときは、その全部又は一部がギャップg外(例えば、薄膜ヨーク14、16の上面側又は下面側)にあっても良いことを意味する。
本実施の形態においては、図1(c)に示すように、GMR膜18は、薄膜ヨーク14、16の下面側に形成されている。
GMR膜18は、外部磁界の変化を電気抵抗Rの変化として感じ、結果的に電圧の変化として検出するためのものであり、巨大磁気抵抗(GMR)効果を有する材料からなる。外部磁界の変化を高い感度で検出するためには、GMR膜18自身のMR比の絶対値は、外部磁界Hが10(kOe)以下で、5%以上が好ましく、さらに好ましくは、10%以上である。
本発明において、GMR膜18は、薄膜ヨーク14、16と直接、電気的に接続されるので、薄膜ヨーク14、16より高い電気比抵抗ρを有するものが用いられる。一般に、電気比抵抗ρが小さすぎる材料の場合には、薄膜ヨーク14、16間が電気的に短絡するので好ましくない。一方、電気比抵抗ρが高すぎる材料の場合には、ノイズが増加し、外部磁界の変化を電圧変化として検出するのが困難となる。GMR膜18の電気比抵抗ρは、10μΩcm以上1012μΩcm以下が好ましく、さらに好ましくは、10μΩcm以上1011μΩcm以下である。
GMR膜18の形状及び寸法は、特に限定されるものではなく、GMR膜18の電気抵抗値が目的とする値となるように定める。
本発明において、GMR膜18には、金属−絶縁体系ナノグラニュラー材料の中でも、特にMR比の高い金属−フッ化物系ナノグラニュラー材料が用いられる。金属−フッ化物系ナノグラニュラー材料は、高いMR比と、高い電気比抵抗ρを有するだけでなく、僅かな組成変動によってMR比が大きく変動することがないので、安定した磁気特性を有する薄膜を、再現性良く、かつ低コストで作製することができるという利点がある。
GMR膜18として用いられる金属−フッ化物系ナノグラニュラー材料としては、具体的には、Fe−MgF、FeCo−MgF、Fe−CaFなどがある。
保護膜20は、薄膜ヨーク14、16及びGMR膜18を大気環境から遮断し、これらを保護するためのものである。
保護膜20は、絶縁性・非磁性材料からなる。保護膜20、30の材質としては、具体的には、Al、SiO、Si、200℃以上でハードベークしたフォトレジスト等が好適である。
バリア層(第1のバリア層)22、及び、バリア層(第2のバリア層)24は、GMR膜18の周囲であって、薄膜ヨーク14、16との電気的接触部界面以外の部分の形成される。図1(c)に示す例において、第1のバリア層22は、下地膜12とGMR膜18との界面に形成され、第2のバリア層24は、GMR膜18と保護膜20との界面に形成されている。
バリア層22、24は、以下の条件を満たすものからなる。
第1に、バリア層22、24は、非磁性絶縁材料からなる。バリア層22、24として導電性材料を用いると、薄膜ヨーク14、16間が電気的に短絡するので好ましくない。また、バリア層22、24として磁性材料を用いると、磁束がバリア層22、24を通過し、GMR膜18内を通る磁束が減少するので好ましくない。
第2に、バリア層22、24は、アニール処理の際に生ずる下地膜12(若しくは、図示しない基板)及び/又は保護膜20からGMR膜18への元素の拡散に起因するGMR膜18の性能劣化を抑制する機能を有する材料からなる。成膜直後のGMR膜18は、一般に、磁性ナノ粒子が部分的に短絡したり、非磁性絶縁被膜であるフッ化物の結晶性が悪く、かつ、相互に一部混合しているため、電気抵抗Rは、相対的に低い。これをアニール処理すると、磁性ナノ粒子が分離し、フッ化物の結晶性が上がり、かつ、金属・合金磁性ナノ粒子と非磁性絶縁体のフッ化物被膜が相分離するため、電気抵抗Rが増大しつつ、MR特性も改善する。しかしながら、安定で適当な基板表面に形成されたGMR単独膜と、薄膜磁気センサ10内のGMR膜18とでは、アニール処理の際に生ずる電気抵抗Rの変化やMR比のアニール変化が異なる場合がある。また、基板上に隣接して作り込まれたセンサであっても、GMR膜18の電気抵抗Rの変化率やMR比のアニール変化は、センサ毎に異なる場合がある。バリア層22、24は、このようなGMR膜18の電気抵抗Rのばらつきを抑制するためのものである。
バリア層22、24の材質は、GMR膜18が金属−フッ化物ナノグラニュラー材料である場合、フッ化物を含む材料が最適である。
フッ化物を含む材料は、下地膜12(若しくは基板)及び保護膜20の材質によらず、GMR膜18のアニールによる電気伝導度変化を安定化させたり、MR効果のアニール変化を安定化させる作用が大きいので、バリア層22、24の材料として好適である。この場合、バリア層22、24に含まれるフッ化物は、GMR膜18を構成するフッ化物と同一であっても良く、あるいは、異なるものでも良い。バリア層22、24を構成するフッ化物としては、具体的には、MgF、CaF、SrF、AgF、AlF、BaF、CrF、MnF、MoF、NbF、PbF、TiF、又は、これらの混合物などがある。
バリア層22、24の厚さは、特に限定されるものではなく、GMR膜18の電気抵抗Rのばらつきを抑制できる程度の厚さ以上であればよい。また、バリア層22、24の厚さを必要以上に厚くすることは、実益がない。
なお、GMR膜18の電気抵抗Rのばらつきを抑制するためには、GMR膜18の両面にバリア層22、24を設けるのが最も好ましいが、GMR膜18と下地膜12(又は、基板)の界面にのみ、バリア層22を形成するだけでも、相対的に大きな効果が得られる。これは、一般に、GMR膜18と下地膜12(又は、基板)との界面の面積の方が、GMR膜18と保護膜20との界面の面積より大きく、元素の拡散による影響が大きいためである。
電極26、28は、出力を取り出すためのものであり、導電性材料が用いられる。具体的には、Cu、Ag、Au等が好適である。また、電極26、28と薄膜ヨーク14、16の界面には、密着性向上と拡散防止のための膜(例えば、Cr、Ti、Ni等からなる薄膜)を介在させるのが好ましい。電極26、28の形状は、特に限定されるものではなく、薄膜磁気センサ10の大きさ、薄膜ヨーク14、16の形状等に応じて、最適な形状を選択すればよい。
図1(a)〜図1(c)に示す構成を備えた薄膜磁気センサ10は、単独で使用することもできるが、複数個の薄膜磁気センサ10を電気的に接続して使用しても良い。
例えば、2個の薄膜磁気センサ10を直列に接続し、かつ、2個の薄膜センサ10の感磁軸が互いに直交するように配置しても良い。このような構成を取ると、中点電位を計測することによって、温度による基準電位の変動の影響を受けることなく、外部磁界を検出することができる。
また、例えば、4個の薄膜磁気センサ10を用いて、ブリッジ回路を構成しても良い。ブリッジ回路を構成すると、中点電位の差分を取ることによって、その出力を、2個の薄膜磁気センサ10を用いた場合の2倍にしたり、外乱ノイズを低下させることができる。
さらに、複数個の薄膜磁気センサ10を用いてハーフブリッジ又はフルブリッジを構成する場合、各薄膜磁気センサ10は、同一基板上に隣接して作り込まれたものでも良く、あるいは、別個の基板上に作られた個々の薄膜磁気センサ10をリード線で接続したものでも良い。
次に、本発明の第2の実施の形態に係る薄膜磁気センサについて説明する。図1(d)に、本実施の形態に係る薄膜磁気センサ10’のギャップg近傍の拡大断面図を示す。
図1(d)において、薄膜磁気センサ10’は、下地膜12と、一対の薄膜ヨーク14、16と、GMR膜18’と、保護膜20と、バリア層(第1のバリア層)22、バリア層(第2のバリア層)24とを備えている。
本実施の形態において、GMR膜18’は、ギャップg内に形成されており、ギャップgの磁界方向長さ(ギャップ長)がGMR膜18’の膜厚に等しくなっている。この点が、第1の実施の形態とは異なる。
GMR膜18’は、「L字型」を呈している。バリア層22は、下地膜12とGMR膜18’の底面との界面に形成され、バリア層24は、GMR膜18’の上面と保護膜20との界面に形成されている。
なお、下地膜12、GMR膜18’、保護膜20、バリア層22、24に関するその他の点、基板の材質によっては下地膜12を省略しても良い点、相対的に大きな効果を得るためには、少なくとも第1のバリア層22を形成するのが好ましい点等については、第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
次に、本発明に係る薄膜磁気センサ10、10’の製造方法について説明する。
本発明に係る薄膜磁気センサ10、10’は、フォトリソグラフィ技術を用いて各薄膜を所定の順序で積層することにより得られる。
例えば、図1(a)〜(c)に示す薄膜磁気センサ10は、以下の手順により作製することができる。
(1)基板上に下地膜12を形成する。
(2)下地膜12表面であって、GMR膜18が形成される位置に、バリア層22を形成する。
(3)バリア層22の上に、GMR膜18を形成する。
(4)GMR膜18の上に、バリア層24を形成する。
(5)GMR膜18の両側に、薄膜ヨーク14、16を形成する。
(6)薄膜ヨーク14、16の両端に電極26、28を形成する。
(7)薄膜ヨーク14、16の表面に、保護膜20を形成する。
この場合、所定の形状を有する薄膜は、具体的には、
(1)基板表面全面に、所定の組成を有する薄膜を形成し、所定の形状パターンに従って、薄膜の不要部分をエッチング(例えば、Arイオンビームエッチング、薬品によるウエットエッチング、あるいは反応性エッチングなど)により除去する方法(以下、これを「エッチング法」という)、あるいは、
(2)基板表面にフォトレジスト等を用いて、所定の形状パターンを有するマスクを形成し、マスクの表面全体に所定の組成を有する薄膜を形成し、マスクを除去する方法(以下、これを「マスク法」という)、
により作製することができる。
なお、各薄膜の積層順序は、薄膜の形状等が許す場合には、多少前後しても良い。例えば、GMR膜18、バリア層24及び薄膜ヨーク14、16をこの順序で積層することに代えて、GMR膜18、薄膜ヨーク14、16及びバリア層24の順で積層しても良い。
また、各薄膜の形成方法としては、スパッタリング、真空蒸着、PCD、CVD、熱酸化等の公知の方法を用いることができる。具体的な薄膜の形成方法は、薄膜の組成に応じて最適なものを選択する。
また、例えば、図1(d)に示す断面構造を有する薄膜磁気センサ10’は、以下の手順により作製することができる。
(1)基板上に下地膜12を形成する。
(2)下地膜12表面に、一方の薄膜ヨーク14を形成する。
(3)下地膜12表面であって、GMR膜18が形成される位置に、バリア層22を形成する。
(4)薄膜ヨーク14の先端面にGMR膜18’を形成する。
(5)GMR膜18’の表面に、他方の薄膜ヨーク16を形成する。
(6)GMR膜18’の上端面に、バリア層24を形成する。
(7)薄膜ヨーク14、16の両端に電極26、28を形成する。
(8)薄膜ヨーク14、16の表面に、保護膜20を形成する。
この場合、薄膜形成法として、エッチング法又はマスク法を用いることができる点、薄膜の形状等が許す場合には、各薄膜の積層順序を多少前後させても良い点は、第1の実施の形態と同様である。
同一又は別個の基板上に1個又は複数個の薄膜磁気センサ10、10’を作り込んだ後、アニール処理を行う。アニール処理は、積層された薄膜内部の残留応力を取り除くため、薄膜ヨーク14、16の磁気特性の異方性を解消するため、及び、GMR膜18の電気抵抗Rを適度な値にするために行われる。アニール処理条件は、特に限定されるものではなく、目的とする特性が得られるように、各薄膜の材質に応じて最適な条件を選択する。通常は、真空中又は不活性ガス中において、160℃〜260℃で0.1時間〜5時間程度のアニール処理を行う。
さらに、必要に応じて、ハンダ付け、樹脂による封止等を行うと、本発明に係る薄膜磁気センサ10、10’が得られる。
次に、本発明に係る薄膜磁気センサの作用について説明する。
薄膜磁気センサは、一般に結晶構造の異なる複数の薄膜が積層された構造を取るため、成膜直後の薄膜磁気センサ内部には、相対的に大きな残留応力が発生している。また、成膜直後の薄膜ヨーク14、16は、磁気特性に異方性がある場合がある。さらに、金属−絶縁体系ナノグラニュラー材料は、非磁性絶縁材料からなるマトリックス中に磁性金属ナノ粒子が分散したものであるが、成膜直後は、磁性金属ナノ粒子の一部が接触しており、電気抵抗Rは、相対的に低い。また、成膜直後の薄膜ヨーク14、16は、ヒステリシスを持つ場合がある。
そのため、ギャップ内又はその近傍に、巨大磁気抵抗効果を示すナノグラニュラー材料が形成された薄膜磁気センサ(ナノグラニュラー・イン・ギャップセンサ。以下、これを「GIGs」という。)においては、MR特性を向上させるために、アニール処理が行われる。成膜直後のGIGsに対してアニール処理を行うと、MR波形がスムースになり、軟磁性薄膜ヨークの異方性が低下し、あるいは、電気抵抗Rが適度な値に調整される。
しかしながら、従来のGIGsにおいては、アニールによるGIGsの電気抵抗Rの上昇率は、GMR単独膜(安定な適当な基板表面に形成された同一組成を有するGMR膜のみからなる膜)のそれとは大きく異なる挙動を示す場合がある。すなわち、大きなバラツキを生じる。
また、同一基板上に隣接してGIGsを作り込んだ場合において、隣接するセンサ間の距離が極めて短い場合(例えば、1mm程度)であっても、アニールによる電気抵抗Rの上昇率は、センサ間で異なる挙動を示す場合がある。複数個のセンサを用いてハーフブリッジ又はフルブリッジ回路を構成した場合において、アニール処理後の電気抵抗Rの上昇率がセンサ毎に異なると、中点電位が外部環境の温度によって変化し、S/N比を低下させる原因となる。
さらに、従来のGIGsのMR比は、GMR膜本来のMR比より低い値にとどまる場合があった。
これに対し、金属−フッ化物系ナノグラニュラー材料よりなるGMR膜18の周囲であって、薄膜ヨーク14、16との電気的接触部界面以外の部分に、フッ化物を含む材料からなるバリア層22、24を形成すると、アニールによる薄膜磁気センサ10の電気抵抗Rの上昇率は、GMR単独膜にほぼ一致する。また、同一基板上に隣接して複数個のセンサを作り込んだ場合において、アニールによる各センサの電気抵抗Rの上昇率は、互いにほぼ一致する。さらに、センサ内のGMR膜18のMR比は、GMR単独膜のMR比とほぼ同等になる。
バリア層22、24を設けることによってこのような効果が得られる理由の詳細は不明であるが、おそらく、
(1)下地膜12(若しくは基板)及び/又は保護膜20からGMR膜18、18’へのある種の元素の拡散がGMR膜18、18’の電気抵抗Rをばらつかせる原因であること、並びに、
(2)GMR膜18、18’と下地膜12(若しくは基板)及び/又は保護膜20の界面にバリア層22、24を設けることによって、GMR膜18、18’の電気抵抗Rをばらつかせる原因となる元素の拡散が抑制されること、
によると考えられる。
例えば、SiO膜やAl膜は、電気絶縁性及び平滑性に優れており、下地膜12又は保護膜20の材料として好適である。しかしながら、これらの膜は、非平衡的な薄膜作製技術で作られるため、製膜条件によっては、Si:Oの比率が1:2からずれやすく、あるいは、Al:Oの比率が2:3からずれ易く、かつ、多くの欠陥を含みやすいという性質を持つ。金属−フッ化物系ナノグラニュラー材料は、微少な空隙を多く含むので、このような材料からなるGMR膜10に不定比化合物を含む下地膜12(若しくは基板)及び/又は保護膜20を接触させて加熱すると、下地膜12等から陽イオン又は陰イオンがGMR膜18に容易に拡散する。金属−フッ化物系ナノグラニュラー材料にある種の陽イオン又は陰イオンが拡散すると、絶縁体の結晶構造や組成が変わり、伝導電子の散乱状態が変化する。その結果、GMR膜18の電気抵抗Rがばらついたり、MR効果に変化を生じると考えられる。
これに対し、フッ化物は、潮解性があるという欠点はあるが、当該GMR膜の構成要素と同一又は類似の化合物であるため、仮に拡散してもGMR膜が類似の構造のまま維持され、また、イオン結合性が強く、不定比化合物を生成しにくい。そのため、下地膜12等として不定比化合物を含む材料を用いた場合であっても、GMR膜の構成要素と同一又は類似の化合物からなるバリア層22、24が下地膜12等からの元素の拡散を抑制し、熱処理に伴うGMR膜18の電気抵抗Rの変化を抑制することができる。また、製造コスト、薄膜磁気センサ10、10’の用途や使用環境等によって、下地膜12等の材料選択が制約される場合であっても、電気抵抗Rのばらつきの少ない薄膜磁気センサ10、10’が得られる。
(実施例1〜5)
図2(a)に示すように、直列に接続され、かつ、その感磁軸が互いに直交している2個のセンサA、Bを備えた薄膜磁気センサ30(GIGs1(実施例1)〜GIGs5(実施例5))を作製した。
なお、各センサA、Bは、図1(c)に示す断面構造を有するものである。また、各部の材料には、以下のものを用いた。
基板: Al・TiO基板
下地膜12: SiO膜A又はSiO膜B(両者は、製造条件が異なる。)
GMR膜18: CoFe−MgF系ナノグラニュラー材料
薄膜ヨーク14、16: CoFeSiBアモルファス膜。
バリア層22、24: MgF、CaF又はSrF
保護膜20: SiO膜A又はSiO膜B
電極26、28: Au/Cu/Cr積層膜。
(比較例1〜3)
GMR膜18の上面及び下面にバリア層22、24を形成しなかった以外は、実施例1〜5と同様の構造を有する薄膜磁気センサ30(GIGs6(比較例1)〜GIGs8(比較例3))を作製した。
なお、GIGs6〜GIGs8は、構造は同一であるが、下地膜12及び保護膜20の種類が異なっているものである。
実施例1〜5及び比較例1〜3で得られたGIGs1〜8について、210℃で1時間のアニール処理を行った。アニール処理後、薄膜磁気センサ30の一端をアースし、他端に5(V)の電圧を印加し、無磁界におけるAB間中点電位差を測定した。
なお、「AB間中点電位」とは、2.5Vを基準電位(0V)とした時の基準電位からのずれの量をいう。また、「AB間中点電位差」とは、図2(b)に示すように、外部温度が60℃であるときのAB間中点電位から外部温度が−30℃であるときのAB間中点電位を差し引いた値をいう。表1に、その結果を示す。なお、表1には、各薄膜磁気センサ30の構成材料も併せて示した。また、AB間中点電位差は、各センサとも、5サンプルの平均値である。
Figure 2006351563
GIGs6〜8は、いずれも、AB間中点電位差の絶対値が20mVを超えていた。これに対し、GMR膜18の上面又は下面のいずれか一方にバリア層を設けたGIGs4、5の場合、AB間中点電位差の絶対値は、10mV以下となった。さらに、GMR膜18の上面及び下面にバリア層を設けたGIGs1〜3の場合、AB間中点電位差の絶対値は、1mV以下であった。表1より、アニール処理に伴うAB間中点電位の変動を抑制するには、GMR膜の上面及び/又は下面にバリア層を形成することが有効であることがわかる。
次に、実施例1〜3で得られたGIGs1〜3及び比較例1〜3で得られたGIGs6〜8について、種々の温度でアニール処理し、アニールに伴う無磁界電気抵抗値の変化率を測定した。
なお、「無磁界電気抵抗値」とは、ゼロ磁界のときのセンサA又はB両端の電気抵抗値をいう。また、「無磁界電気抵抗値の変化率」とは、アニール前のセンサA又はBの電気抵抗値(R)に対するアニール処理後のセンサA又はBの電気抵抗値(R)の比(R/R)をいう。
図3〜5に、アニールに伴う無磁界電気抵抗値の変化率を示す。なお、図3〜5には、GMR単独膜(無アルカリガラス基板上にMgF膜を形成し、その上にGMR膜のみを形成したもの)の結果も併せて示した。
GIGs6(比較例1)の場合、図4(b)に示すように、アニール温度180℃までは、その無磁界電気抵抗値変化率は、GMR単独膜とほぼ同等であり、センサA−センサB間の差もほとんどなかった。しかしながら、アニール温度が180℃を超えると、無磁界電気抵抗値変化率のGMR単独膜との差、及び、センサ間の差は、拡大した。
また、GIGs7(比較例2)の場合、図5(a)に示すように、アニール温度180℃の時点で、すでにセンサA及びセンサBの無磁界電気抵抗値変化率は、GMR単独膜より小さくなった。また、センサAの無磁界電気抵抗値変化率は、センサBとは異なる値を示した。さらに、アニール温度が高くなるほど、無磁界電気抵抗値変化率のGMR単独膜との差、及び、センサ間の差は、拡大した。
さらに、GIGs8(比較例3)の場合、図5(b)に示すように、アニール温度180℃の時点で既に、無磁界電気抵抗値変化率のGMR単独膜との差、及びセンサ間の差は、GIGs6、7より拡大した。また、その格差は、アニール温度が高くなるほど、さらに拡大した。
これに対し、GIGs1〜3(実施例1〜3)の場合、図3及び図4(a)に示すように、アニール処理温度が240℃であっても、センサAとセンサBの無磁界電気抵抗値変化率は、GMR単独膜とほぼ同等であった。また、アニール温度が240℃であっても、センサA−B間の無磁界電気抵抗値変化率の差は、ほとんどなかった。
以上の結果から、アニール処理に伴う無磁界電気抵抗値変化率のGMR単独膜との差及びセンサA−B間の差をなくすためには、GMR膜の上下面にバリア層を形成するのが有効であることがわかった。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は、上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
本発明に係る薄膜磁気センサは、自動車の車軸、ロータリーエンコーダ、産業用歯車等の回転情報の検出、油圧式シリンダ/空気式シリンダのストロークポジション、工作機械のスライド等の位置・速度情報の検出、工業用溶接ロボットのアーク電流等の電流情報の検出、地磁気方位コンパスなどに用いることができる。
また、GMR膜とその両端に配置された薄膜ヨークを備えた磁気抵抗素子は、磁気センサとして特に好適であるが、磁気抵抗素子の用途は、これに限定されるものではなく、磁気メモリ、磁気ヘッド等としても用いることができる。
図1(a)、図1(b)及び図1(c)は、それぞれ、本発明の第1の実施の形態に係る薄膜磁気センサの平面図、そのA−A’線断面図及びギャップ近傍の拡大断面図である。また、図1(d)は、本発明の第2の実施の形態に係る薄膜磁気センサのギャップ近傍の拡大断面図である。 実施例で作製した薄膜磁気センサの概略構成図である。 図3(a)及び図3(b)は、それぞれ、GIGs1(実施例1)及びGIGs2(実施例2)で得られた薄膜磁気センサのアニール温度と、アニール前の値で規格化された無磁界電気抵抗値変化率との関係を示す図である。 図4(a)及び図4(b)は、それぞれ、GIGs3(実施例3)及びGIGs6(比較例1)のアニール温度と、アニール前の値で規格化された無磁界電気抵抗値変化率との関係を示す図である。 図5(a)及び図5(b)は、それぞれ、GIGs7(比較例2)及びGIGs8(比較例3)で得られた薄膜磁気センサのアニール温度と、アニール前の値で規格化された無磁界電気抵抗値変化率との関係を示す図である。
符号の説明
10、10’ 薄膜磁気センサ
12 下地膜
14、16 薄膜ヨーク
18、18’ GMR膜
20 保護膜
22、24 バリア層

Claims (4)

  1. 非磁性絶縁材料からなる基板と、
    前記基板上に形成された、軟磁性材料からなりかつギャップを介して対向させた一対の薄膜ヨークと、
    前記ギャップ内又はその近傍において、前記一対の薄膜ヨークと電気的に接続されるように形成された、前記軟磁性材料より高い電気比抵抗を有し、かつ、巨大磁気抵抗効果を有するGMR膜と、
    前記薄膜ヨーク及び前記GMR膜の表面を保護する保護膜と、
    前記基板と前記GMR膜との界面に形成された、非磁性絶縁材料からなる第1のバリア層とを備え、
    前記GMR膜は、金属−フッ化物系ナノグラニュラー材料からなり、
    前記第1のバリア層は、フッ化物を含む材料からなる薄膜磁気センサ。
  2. 非磁性絶縁材料からなる下地膜と、
    前記下地膜上に形成された、軟磁性材料からなりかつギャップを介して対向させた一対の薄膜ヨークと、
    前記ギャップ内又はその近傍において、前記一対の薄膜ヨークと電気的に接続されるように形成された、前記軟磁性材料より高い電気比抵抗を有し、かつ、巨大磁気抵抗効果を有するGMR膜と、
    前記薄膜ヨーク及び前記GMR膜の表面を保護する保護膜と、
    前記下地膜と前記GMR膜との界面に形成された、非磁性絶縁材料からなる第1のバリア層とを備え、
    前記GMR膜は、金属−フッ化物系ナノグラニュラー材料からなり、
    前記第1のバリア層は、フッ化物を含む材料からなる薄膜磁気センサ。
  3. その表面に前記下地膜が形成された、非磁性材料又は非磁性絶縁材料からなる基板をさらに備えた請求項2に記載の薄膜磁気センサ。
  4. 前記GMR膜と前記保護膜との界面に形成された、非磁性絶縁材料からなる第2のバリア層をさらに備え、
    該第2のバリア層は、フッ化物を含む材料からなる請求項1から3までのいずれかに記載の薄膜磁気センサ。
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