しかしながら、上記従来のハーネス整形装置81にあっては、ワイヤハーネス92の品番(種類)毎に布線板86に複数の受け治具83を手作業で異なる位置に配置固定して、品番毎の受け治具83を備えた布線板86を専用に用意しなければならず、さらに、各受け治具83に沿って作業者が手作業で電線88を布線(整形)しなければならならないために、ワイヤハーネス92の整形作業に多くの工数を必要とし、ワイヤハーネス92のコストを上げる一要因となっていた。
本発明は、上記した点に鑑み、ワイヤハーネスの品番毎に受け治具をセットしたり、品番毎に専用の布線板を用意する必要がなく、作業性良く簡単に効率良くワイヤハーネスの整形を行わせることのできるハーネス整形装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係るハーネス整形装置は、フレームに並列に配置され、X方向レールに沿って移動自在な複数のY方向レールと、各Y方向レールにスライド自在に係合したハーネス受け治具と、各ハーネス受け治具に対するY方向駆動手段とを備えることを特徴とする。
上記構成により、各Y方向レールをX方向レールの一方に寄せ、且つ各ハーネス受け治具を各Y方向レールの例えば一方に寄せた状態で、各ハーネス受け治具にサブワイヤハーネスのコネクタをセットし、各Y方向レールをX方向レールの他方に向けて所定距離で移動させ、且つ各ハーネス受け具を各Y方向レールの他方に向けてY方向駆動手段で所定距離で移動させることで、各サブワイヤハーネスが所定のワイヤハーネス形状に展開される(整形される)。あるいは、各ハーネス受け治具を各Y方向レールの中央に寄せた状態で、ハーネス受け治具にサブワイヤハーネスの電線部分をセットし、各Y方向レールをX方向レールの他方に向けて所定距離で移動させ、且つ各ハーネス受け具を各Y方向レールの一方及び他方に向けてY方向駆動手段で所定距離で移動させることで、各サブワイヤハーネスが所定のワイヤハーネス形状に展開される(整形される)。各Y方向レールのX方向への移動はモータとワイヤ等のX方向駆動手段を用いて一括して行ってもよく、あるいは作業者が手で移動させてもよい。手で移動させる場合、例えば各Y方向レールを所定の間隔でワイヤで連結しておき一括して移動させることが好ましい。
請求項2に係るハーネス整形装置は、請求項1記載のハーネス整形装置において、前記複数のY方向レールに対するX方向駆動手段を備えることを特徴とする。
上記構成により、各Y方向レールがX方向駆動手段で一括して展開方向に移動され、あるいは一括して引戻し(収束)方向に移動される。X方向駆動手段としては、例えば各Y方向レールを所定間隔で連結するワイヤ、あるいは各Y方向レール毎に連結されたワイヤと、ワイヤを駆動するモータとを用いたり、あるいはX方向に移動する無端ベルトと、ベルトに配設され、各Y方向レールに係合する進退自在なプランジャを有するソレノイド等を用いることができる。モータに代えてワイヤを引っ張る錘を用いることも可能である。
請求項3に係るハーネス整形装置は、請求項1又は2記載のハーネス整形装置において、前記複数のY方向レールが傾斜状に配置されたことを特徴とする。
上記構成により、Y方向レールの投影面積が低減され、装置の設置スペースが省スペース化されると共に、斜め上向きに傾斜したY方向レールの受け治具に作業者がサブワイヤハーネスを容易にセット可能となる。また、ハーネス受け治具の自重を利用した受け治具の初期位置への復帰が可能となり、受け治具の上昇のためのみのY方向駆動手段を設ければ良く、Y方向駆動手段が簡素化される。
請求項4に係るハーネス整形装置は、請求項1又は2記載のハーネス整形装置において、前記複数のY方向レールが垂直に配置されたことを特徴とする。
上記構成により、Y方向レールの投影面積が一層低減され、装置の配置スペースが一層省スペース化されると共に、ハーネス受け治具の自重を利用した復帰が一層確実に行われる。
請求項5に係るハーネス整形装置は、請求項1〜4の何れか記載のハーネス整形装置において、前記Y方向駆動手段が、前記ハーネス受け治具に連結されたワイヤと、該ワイヤを駆動するモータとで構成されたことを特徴とする。
上記構成により、ワイヤがモータの回転でプーリ等に巻き取られ、ハーネス受け治具がワイヤで引っ張られてY方向レールに沿ってスライド移動する。モータは各Y方向レールの両端側に各一対設けることで、受け治具を進退方向に駆動させることができる。一対のモータを停止させることで受け治具が所要の位置に固定される。Y方向レールを斜めないし垂直に配置した場合は、上側の上昇用モータのみを用い、受け治具の下降は自重で行わせてもよい。ハーネス受け治具をモータによる制動以外にY方向レールの所定の位置にストッパやカム形状等のロック手段で固定させることも可能である。モータはY方向レールに一体的に設けてもよく、あるいはワイヤを下向きに延長させてY方向レールの下側に配置してもよい。モータとしてはサーボモータを使用してもよい。
請求項6に係るハーネス整形装置は、請求項1〜4の何れか記載のハーネス整形装置において、前記Y方向駆動手段が、前記ハーネス受け治具の雌ねじ部に螺合したねじ軸と、該ねじ軸を回動させるモータとで構成されたことを特徴とする。
上記構成により、モータでねじ軸が回転駆動され、ねじ軸に螺合したハーネス受け治具がねじ軸に沿ってY方向レール内を進退移動する。モータの正転でハーネス受け治具が一方向に移動し、モータの逆転でハーネス受け治具が他方向に移動する。モータを停止することで受け治具が所要の位置に固定される。モータとしてはサーボモータを使用してもよい。
請求項7に係るハーネス整形装置は、請求項1〜4の何れか記載のハーネス整形装置において、前記Y方向駆動手段が、前記ハーネス受け治具に連結されたワイヤと、該ワイヤを引っ張る錘であることを特徴とする。
上記構成により、Y方向レール毎に錘を垂下させてワイヤを引っ張ることでハーネス受け治具が同方向に移動する。ワイヤはプーリ等で支持される。受け治具の復帰は錘による付勢を解除することで、受け治具の自重で行われる。錘はY方向レールと一体的にX方向移動する。受け治具をY方向レールの所定の位置にストッパやカム形状等のロック手段で固定することも可能である。
請求項8に係るハーネス整形装置は、請求項2〜7の何れか記載のハーネス整形装置において、前記X方向駆動手段が、前記Y方向レールに連結されたワイヤと、該ワイヤを駆動するモータとで構成されたことを特徴とする。
上記構成により、Y方向レールがモータの駆動でワイヤに引っ張られてX方向(展開方向)に移動する。ワイヤは例えば移動端のY方向レールに連結し、各Y方向レールは所定の長さ(展開する長さ)のワイヤで相互に連結され、移動端のY方向レールがワイヤを介して残りの各Y方向レールを駆動する。あるいは、モータとワイヤをY方向レール毎に配設し、各Y方向レールを独立してX方向に移動させる。モータはフレームの左右両側に配設し、各Y方向レールの展開と引戻し(収束)を左右別々のモータで行わせることが好ましい。
請求項9に係るハーネス整形装置を用いたハーネス整形方法は、請求項1〜8の何れか記載のハーネス整形装置を用いてワイヤハーネスを整形するハーネス整形方法であって、前記各Y方向レールを前記X方向レールの一方に寄せ、且つ前記各ハーネス受け治具を各Y方向レールの一方に寄せた状態で、各ハーネス受け治具にサブワイヤハーネスのコネクタをセットし、各Y方向レールを該X方向レールの他方に向けて所定距離で移動させ、且つ各ハーネス受け具を各Y方向レールの他方に向けて所定距離で移動させることで、各サブワイヤハーネスを所定のワイヤハーネス形状に展開することを特徴とする。
上記構成により、各Y方向レールのハーネス受け治具にセットした各サブハーネスが一括して同時にX方向やY方向に展開されてワイヤハーネスの整形が自動式に行われる。
以上の如く、請求項1記載の発明によれば、各Y方向レールをX方向に移動させ、且つ各Y方向レールに沿ってハーネス受け治具を移動させることで、ワイヤハーネスの整形を短時間で効率良く行わせることができる。そして、従来のようにワイヤハーネスの品番毎に受け治具をセットしたり、品番毎に専用の布線板を用意する必要がなく、作業性良く簡単に効率良くワイヤハーネスの整形を行わせることができるから、ワイヤハーネスの製造コストが低減される。
請求項2記載の発明によれば、各Y方向レールをX方向駆動手段で同時に展開方向に移動させることで、ワイヤハーネスの整形を一層効率的に行わせることができる。
請求項3記載の発明によれば、装置の設置スペースの低減と布線作業の容易化が図られ、且つY方向レール間の隙間や裏側の空間を利用してワイヤハーネスへの部品等の装着を容易に行えると共に、ハーネス受け治具を自重で復帰させることで、Y方向駆動手段が簡素化される。
請求項4記載の発明によれば、装置の設置スペースの低減と布線作業の容易化が一層図られ、且つY方向レール間の隙間や裏側の空間を利用してワイヤハーネスへの部品等の装着を容易に行えると共に、ハーネス受け治具の自重を利用した復帰を一層確実に行わせることができる。
請求項5記載の発明によれば、各ハーネス受け治具を各モータの駆動で各Y方向レールに沿って同時に確実に移動させることができ、ハーネス整形作業が効率化される。
請求項6記載の発明によれば、ハーネス受け治具をモータの駆動でねじ軸に沿って確実に且つ正確に進退させることができ、ハーネス受け治具を所要の位置に正確に停止させることができて、ハーネス整形の精度が向上する。
請求項7記載の発明によれば、Y方向駆動手段に錘を用いることで、電気等の動力が不要で、電気配線のできない場所でも使用可能となり、且つ構造が簡素化・低コスト化される。
請求項8記載の発明によれば、各Y方向レールをワイヤによってX方向に省スペースで確実に駆動することができ、装置の簡素化と小型化が図られる。
請求項9記載の発明によれば、各Y方向レールのハーネス受け治具にセットした各サブハーネスを一括してX方向やY方向に展開することで、従来のようにワイヤハーネスの品番毎に受け治具をセットしたり、品番毎に専用の布線板を用意する必要がなく、作業性良く簡単に効率良くワイヤハーネスの整形を行わせることができる。
図1〜図6は、本発明に係るハーネス整形装置の第一の実施形態を示すものである。
図1の如く、このハーネス整形装置1は、枠状のフレーム2と、上部の傾斜フレーム2aにX方向(横方向)移動自在に配設された複数の傾斜状の縦レール(Y方向レール)3と、縦レール3にY方向(斜め縦方向)移動自在に配設されたハーネス受け治具4とを備えるものである。
フレーム2は脚部2bのキャスタ5で床上を水平に移動自在である。上部の傾斜フレーム2aは前後二本の横長の杆部6,7と左右二本の傾斜状の杆部8,9とで構成されている。左右の杆部8,9の上下二箇所に水平なガイドバー状の横レール(X方向レール)10が設けられ、各横レール10に各縦レール3のスライダ11(図2)がスライド自在に係合している。図2,図3の如く本例の横レール10は断面円形に形成され、スライダ11は円筒状に形成されて、縦レール3の底壁に固定されている。横レール10やスライダ11の形状は円形に限らず矩形等、必要に応じて適宜設定される。
図3の如く、各縦レール3はワイヤとモータで成る駆動手段(X方向駆動手段)16で横方向に駆動される。駆動手段の一例として、横レール10の近傍で各縦レール3の底壁に共通の展開用ワイヤ12が弛みなく固定され(図3で固定部を符号43で示す)、展開用ワイヤ12の先端は図1で左端の傾斜杆部8に固定され、展開用ワイヤ12の基端は、右端の傾斜杆部9にブラケット(図示せず)を介して固定された展開用モータ14のプーリ17(図3)に固定され、図1の縦レール3の展開状態で展開用ワイヤ12はプーリ17に巻き取られている。
展開用モータ14は図1で右端の縦レール31をモータ14の方向に引っ張り、右端の縦レール31が展開用ワイヤ12を介して右端から二番目の縦レール32を引っ張り、二番目の縦レール32が展開用ワイヤ12を介して三番目の縦レール33を引っ張り、以下同様にして各縦レール3が展開用ワイヤ12を介して所定の間隔で展開される。各縦レール3の間隔は固定部43における展開用ワイヤ12の固定位置を変えることで所望の長さに設定される。
図1,図3で上下二本の展開用ワイヤ12の内側に上下二本の共通の引戻し(収束)用ワイヤ13が配置され、引戻し用ワイヤ13の先端は右端の縦レール31に固定され、引戻し用ワイヤ13の基端は、左端の傾斜杆部8にブラケット(図示せず)を介して固定された引戻し用モータ15のプーリ17に固定されている。
図1の縦レール3の展開状態から展開用モータ14の制動等によるロックを解除して回動自在にし、引戻し用モータ15を回転駆動することで、右端の縦レール31が他の縦レール3を押し戻して各縦レール3が展開用モータ15に向けて引き戻され、それと同時に展開用ワイヤ12が展開用モータ14から引き出される。縦レール3の引戻し状態で各縦レール間の引戻し用ワイヤ13と展開用ワイヤ12は下向きに弛む。各モータ14,15の電線19(図3)はフレーム2側の制御装置20に接続されている。
図1の例では各縦レール3を共通のワイヤ12で連結して、一つのワイヤハーネス形態を得るべく横方向に展開したが、ワイヤハーネス形態に応じて各縦レール3に対するワイヤ12,13の固定位置を変更する作業が必要である。その作業をなくすためには、例えば図3に鎖線12で示す如く、縦レール毎にワイヤ12を独立して固定し(一本の縦レール3に一本のワイヤ12を固定し)、ワイヤ12の一端を左端のモータ15のプーリ17に固定し、ワイヤ12の他端を右端のモータ14のプーリ17に固定し、縦レール3の数だけモータ14,15を左右の傾斜杆部8,9に固定して、各縦レール3を独立して駆動(移動)させるようにする。
右端のモータ14を駆動して各縦レール3を展開する場合は、左端のモータ15の制動等によるロックを解除し、左端のモータ15を駆動して各縦レール3を引き戻す場合は、右端のモータ14の制動等によるロックを解除する。各モータ14,15の電線19は制御装置20に接続され、各モータ14,15の駆動制御は制御装置20で行われる。この例の場合はモータ14,15やワイヤ12の数が多くなり、前例よりもコストがかかるが、予め入力されたプログラムに従って全自動で各縦レール3の位置設定(段取り)を行わせることができる。
各縦レール3は左右のモータ14,15の制動等のロックで所定の位置に固定される。各縦レール3を例えば横レール10に係合したスライダ11(図3)においてカム式等のロック部材(図示せず)で所定位置に固定させることも可能である。これは図1の例においても同様である。
図3の鎖線12のワイヤをエンドレスのループ状とし、左右何れか一方のモータ14(15)のみを用い、他方にはプーリ(図示せず)を回動自在に配置し、モータ14(15)の正逆転で縦レール3を左右両方に横移動させるようにすることも可能である。
図2の如く、各縦レール3は断面略凹字状に形成され、上壁21の幅方向中央のスリット状の開口22と、開口22に対向する底壁23(図3)と左右の側壁24とを有し、各壁部21〜24で囲まれた内側の空間内にハーネス受け治具4の矩形状の基台25をスライド自在に係合させている。
受け治具4の基台25に縦レール内の昇降用ワイヤ26の長手方向中間部が固定され、昇降用ワイヤ26の上端は、縦レール3の上端にブラケットを介して固定された上昇用モータ27のプーリ28に固定され、昇降用ワイヤ26の下端は、縦レール3の下端にブラケットを介して固定された下降用モータ29のプーリ28に固定されている。図1の如く昇降用モータ27は各縦レール毎に配設されている。各昇降用のモータ27,29と各ワイヤ26とで受け治具4に対する駆動手段(Y方向駆動手段)30が構成されている。
この駆動手段30は一例であり、駆動手段の他例については後述する。昇降用のモータ27,29は電線31を介してフレーム側の制御装置20に接続され、各モータ27,29の駆動は制御装置20で制御される。モータ27,29の電線31は縦レール3と共に横移動するように余長をもって配索する。
図1,図2で示すハーネス受け治具4はいわゆるUフォークであり、支柱32の先端にU字状の電線受け部33を有したものである。受け治具4としてはこれ以外にW状の電線受け部や複数本の電線受け部を放射状に配置したもの等、必要に応じて適宜形状のものが用いられる。
受け治具4は上下のモータ27,29の制動等のロックで縦レール3の所定位置に固定される。受け治具4に例えばカム式等のロック部材(図示せず)を設けて縦レール3の所定位置で固定させることも可能である。これらは図4のハーネス受け治具34においても同様である。
図4,図5で示す受け治具34はサブワイヤハーネス35の端末のコネクタ36をセットするためのものであり、支柱38の先端に基板39が設けられ、基板39に略L字状のコネクタ受け部40がヒンジ41で傾斜角度調整自在に設けられ、コネクタ受け部40に対向して一対の電線受け部42が設けられている。支柱38の下端に矩形状の基台25(図5)が設けられ、基台25に昇降用のワイヤ26が挿通固定され、基台25は縦レール3の内側空間にボールプランジャ51やボールベアリング等を介してスライド自在に係合している。ここでサブワイヤハーネス35とは複数本の電線37の両端末にコネクタ36を配設した状態のものを言う。
コネクタ用の受け治具34は図4,図5の形態に限るものではなく、例えばW字状等の電線受け部を有する受け治具(コネクタ受け部40のないもの)を用いてもよい。支柱38や基台39等の形状等も必要に応じて適宜設定可能である。
図1の例では縦レール3の上下に昇降用のモータ27,29を設けたが、例えば縦レール3の上部にのみ上昇用モータ27を設け、受け治具4,34の下降動作は受け治具4の自重で行わせるようにすることも可能である。また、上下の何れか一方にのみモータ27(29)を設け、他方にはプーリ(図示せず)を回動自在に設け、一方のモータ27(29)のプーリ28と他方のプーリとにワイヤ26をエンドレスでループ状に配索し、モータ27(29)を正逆転させることで、受け治具4,34を昇降させることも可能である。
また、受け治具4,34をフレーム2の下側の横杆52等に係止手段(図示せず)で初期的に(サブハーネス35を各受け治具4,34にセットするまでの間)係止させておくようにすることも可能である。係止手段としては、受け治具4,34と横杆52とに設けた一対の係止爪を相互に係合させ、係止の解除は一方の係止爪をばね付勢に抗して離脱させるようにすることが好ましい。
図6は、受け治具の駆動手段の第二の形態を示すものであり、縦レール3の内部空間にねじ軸53を挿通させ、ねじ軸53に受け治具4の基台25の雌ねじ孔54を螺合させ、ねじ軸53の基端を昇降用モータ55の回転軸56に連結させている。昇降用モータ55は正逆回転するものであり、各縦レール3の上端又は下端に配設固定される。モータ55の回転でねじ軸53が回転し、ねじ軸53に沿って基台25が受け治具4と一体に移動する。モータ55とねじ軸53とで駆動手段59が構成される。
図7は、受け治具の駆動手段の第三の形態を示すものであり、図1と同様のフレーム2側の横レール10(図1)に沿って横移動自在に設けた各縦レール3内の受け治具4に上昇用ワイヤ56を連結し、上昇用ワイヤ56をフレーム2の上端の横杆7側の回動自在なプーリ57に沿って垂下させ、フレーム2の下部に配置した各モータ27のプーリ28に上昇用ワイヤ56を固定し、モータ27を例えば横方向のガイドレール(図示せず)にスライド自在に係合させて、縦レール3(図1)と一体的に横方向に移動自在としている。モータ27とワイヤ56で駆動手段60が構成される。
モータ27の位置はフレーム2の下部に限らず高さ方向中間部や上部であってもよい。何れの場合も各モータ27を展開時に右端側から、引戻し(収束)時に左端側からそれぞれ順に移動自在とする。モータ27でワイヤ56を所要の長さに巻き取ることで、縦レール内の受け治具4,34の位置が規定される。各モータ27をフレーム2に固定し、ワイヤ56をプーリ57と縦レール3と共に横方向に移動させるようにしてもよい。
図8は、受け治具の駆動手段の第四の形態を示すものであり、図1と同様のフレーム2側の横レール10に沿って移動自在に設けた各縦レール3内の受け治具4,34に上昇用ワイヤ56を連結し、上昇用ワイヤ56の先端に錘58を固定して、錘58の重さで受け治具4,34を縦レール3に沿って上昇させるようにしている。錘58による付勢を解除することで、受け治具4,34は縦レール3に沿って原位置(縦レール3の下端部)に復帰する。付勢の解除は例えば錘58をフレーム上部の受け台(図示せず)に載せる等により行われる。錘58とワイヤ56で駆動手段61が構成される。
フレーム2の上端の横杆7に各プーリ57が回動自在に設けられ、各プーリ57で各上昇用ワイヤ56が支持されている。錘58は縦レール3と一体的に横方向に移動自在であり、移動時の錘58の揺れを抑えるために、例えば錘58を下向きに弱くコイルばね等の付勢手段で弾性的に引っ張り、付勢手段は錘58と一体的に横方向に移動自在とすることが好ましい。錘58はモータとは異なり、受け治具4,34を任意の位置に上昇させることはできないので、例えば縦レール3に受け治具4,34の位置を規定するストッパ等を設けておき、受け治具4,34の設定位置に応じてストッパ等の位置を変えることで、それ以上の受け治具4,34の上昇を阻止して所要の位置に停止させることができる。
図9〜図10は、上記第一の実施形態のハーネス整形装置を用いたハーネス整形方法を示すものである。受け治具としてはコネクタ用の受け治具34を用い、縦横方向の駆動手段は図示を省略している。駆動手段としては、図1〜図8に示す各形態を適用可能である。モータ等の駆動手段を用いずに(設置することなく)作業者が手で各縦レール3を横レール10に沿って横移動させることも可能である。この場合は図1の例のように各縦レール3を所定長さのワイヤ12で連結して、右端の縦レール31を移動させることで各縦レール3を所定の間隔で展開させることができる。
図9はフレーム2上の各縦レール3を初期位置に配置した状態で、各サブワイヤハーネス35のコネクタ36を各縦レール上の受け治具34にセットした状態を示している。各受け治具34は各縦レール3の下端の初期位置にある。サブハーネス35の電線部分37はフレーム2の上側の横杆6から下側の横杆52までの間で垂れ下がる。各縦レール3を近接させて後述の図11の例のようにフレーム2の左端側に収束させた状態で受け治具34にコネクタ36をセットしてもよい。
どの受け治具34にどのコネクタ36をセットするかは作業者が指示書等を見て判断する。各サブハーネス35のセット状態の絵を描いた図板(図示せず)を縦レール3の下側でフレーム2の上部に配置することも可能である。各受け治具34に各コネクタ36を自動機でセットすることも可能である。
フレーム2の上部が大きく開口されているから、例えば導通検査具や分岐長さ測定具等といった検査具やジョイント機等といった加工機等を開口63内において縦レール3に干渉しない範囲で自由に設置することができる。また、各縦レール間の隙間と下側の空間を利用してワイヤハーネスへの保護チューブや係止クリップ等の部品の装着やテープ巻き等の作業を簡単に効率良く行うことができる。
図9の如く各受け治具34に各サブハーネス35のコネクタ34をセットした後、図10の如く、各縦レール3を横レール10に沿って所定位置まで横移動させ、次いで各受け治具34を縦レール3に沿って所定位置まで上昇させる。あるいは、各受け治具34を縦レール3に沿って所定位置まで上昇させ、次いで各縦レール3を横レール10に沿って所定位置まで上昇させる。あるいは、各縦レール3の横移動と各受け治具34の上昇とを同時に行わせる。
これにより、各サブワイヤハーネス35が所要の形状に展開されて、ワイヤハーネス62の整形が行われる。各縦レール3の下端側でワイヤハーネス62の幹線部62aが水平に位置し、各縦レール3の上面に沿って分岐線部62bが所要の長さで延ばされる。幹線部62aは複数本の電線で構成され、分岐線部62bは一本ないし数本の電線で構成される。
この状態で幹線部62aを部分的にテープ巻きで結束したり、幹線部62aや分岐線部62bに保護チューブや係止クリップ等の部品(図示せず)を装着したりしてワイヤハーネス62が完成する。あるいは、ワイヤハーネス62をハーネス整形装置1から外して次工程で他のワイヤハーネス(図示せず)と合体させて大型のワイヤハーネスを形成する。
なお、図9においては各受け治具34を初期状態で各縦レール3の下端側に並列に配置したが、例えば各受け治具34を各縦レール3の長手方向中央に配置し、その状態で各コネクタ36をセットし、各受け治具34を上下に所定距離で昇降させて、中央の幹線部62aから上下に延びる分岐線部62bを有するワイヤハーネスを整形させることも可能である。
また、図9の例では各受け治具34に各サブワイヤハーネス35のコネクタ36をセットしたが、図1に示すUフォーク状等の受け治具4を用いて、例えば各縦レール3の中央位置で各受け治具4を並列に初期配置し、各受け治具4に各サブワイヤハーネス35の電線部分37を引っ掛けてセットし、各受け治具4を上下に所定距離で昇降させて、中央の幹線部62aから上下に延びる分岐線部62bを有するワイヤハーネスを整形することも可能である。この場合、コネクタ用の受け治具34を混在させることで、コネクタ36の位置も正確に規定される。
また、図10の例では各縦レール3に沿って分岐線部62bを平行に配置したが、例えば後述の図12の例で示すように、一つの縦レール3から隣の縦レール3やその隣の縦レール等に交差して分岐線部62bを布線することも可能である。この場合、幹線部62aから複数の分岐線部62bを布線したり、一本の一次分岐線の途中から他の二次分岐線を分岐させて、各分岐線の端末のコネクタ36を各縦レール3の受け治具34にセットし、その状態で各受け治具34及び各縦レール3を展開方向に移動する。
図11〜図12は、本発明に係るハーネス整形装置の第二の実施形態を示すものである。上記第一の実施形態と同様の構成作用部分には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
このハーネス整形装置71は、複数の縦レール(Y方向レール)3を垂直に立てた状態で横レール(X方向レール)10に沿って水平方向に展開しつつ各縦レール内の受け治具4,34を所定位置まで昇降させることを特徴としている。縦レール3の長さは第一の実施形態よりも長く設定することが可能である(長く設定しても場所をとることがない)。
各縦レール3は矩形状の垂直な上部フレーム64に配置され、上部フレーム64は下部両側の支柱フレーム65に回動自在に軸支されて傾斜角度を自由に設定可能であり、支柱フレーム65は下部フレーム66に固定され、下部フレーム66はキャスタ5で床上を移動自在である。上部フレーム64と支柱フレーム65と下部フレーム66とでフレーム67が構成されている。
上部フレーム64には上下二本の横レール10が設けられ、各縦レール3はスライダ(図3の符号11参照)を介して横レール10にスライド自在に係合している。上部フレーム64の右端の縦杆9の上下に展開用モータ14が設けられ、左端の縦杆8の上下に引戻し(収束)用モータ15が設けられている。
展開用モータ14のプーリ17に展開用ワイヤ12の先端が固定され、展開用ワイヤ12は右端の縦レール31に固定され、且つ各縦レール3に所要長さで固定され(図11の引戻し状態で展開用ワイヤ12は各縦レール3の間で弛んでいる)、展開用ワイヤ12の基端は左端の縦杆8に固定されている。引戻し用モータ15のプーリ17に引戻し用ワイヤ13が巻き取られ、引戻し用ワイヤ13の先端が右端の縦レール31に固定されている。この駆動手段(X方向駆動手段)16の構成は第一の実施形態と同様である。
上記駆動手段16に代えて、第一の実施形態(図3の鎖線部分参照)と同様に、各縦レール3毎に上部フレーム64に左右の各モータ14,15とワイヤ12を設けて、各縦レール3を独立して横移動させることも可能である。この場合、各モータ14,15は上部フレーム64の縦杆8,9に沿って並列に配置され、各ワイヤ12は上下に並列に配置され、各縦レール3とワイヤ12の固定位置はワイヤ12の位置に合わせて上下方向にずれている。各縦レール3の裏面に直交して長さの異なる支柱(図示せず)を水平に突設し、各支柱に各ワイヤ12の先端を固定すれば、各ワイヤ12やそれを駆動する各モータ14,15の位置は上下ではなく前後にずれて配置される。
縦レール3の横方向駆動手段(X方向駆動手段)としては、ワイヤ12,13とモータ14,15に代えて、例えば横移動式のベルト(図示せず)に複数のソレノイド(図示せず)を並列に配設し、ベルトを移動させながら、各ソレノイドのプランジャを順次突出させて各縦レール3の凹部に係合させることで、縦レール3を横方向に展開させることが可能である。この駆動手段は図1の第一の実施形態においても適用可能である。
図11,図12において、各縦レール3は第一の実施形態の図2の形態のものを使用し、縦レール内の受け治具34は図4の形態の受け治具の受け部40を上方向に回動させて基板39と直角に配置したものを使用しており、受け治具34の基台25が縦レール3内にスライド自在に係合し、基台25は昇降用ワイヤ26に連結され、昇降用ワイヤ26は、各縦レール3の上端にブラケットを介して固定されたモータ27のプーリ28に固定されている。ワイヤ26(図4)とモータ27で縦方向駆動手段(Y方向駆動手段)30が構成される。受け治具34の下降操作はモータ27をオフないし逆転させて受け治具34を自重で下降させる形態としている。第一の実施形態の図1の例のように各縦レール3の上端に上昇用モータ27、下端に下降用モータ29を設けて、昇降用のワイヤ26で受け治具34を垂直に昇降させることも可能である。
また、第一の実施形態の図6の例のように各縦レール3の内側にねじ軸53を回動自在に設け、ねじ軸53に受け治具34の基台25(図5)の雌ねじ孔(図6の符号54参照)を螺合させ、各縦レール3の上端又は下端に設けたモータ55(図6)でねじ軸53を正転・逆転させて受け治具34を昇降させることも可能である。また、第一の実施形態の図7のモータ60を用いた駆動手段60や、図8の錘58を用いた駆動手段61を適用することも可能である。
受け治具としては、図4の受け治具34の他に図1に示すU字やW字状等の受け部を有する受け治具4を用いることが可能である。図11では受け治具34でコネクタ36のみを受けているが、サブワイヤハーネス35の電線部分37をU字フォーク等の受け治具4に沿って布線することも可能である。各受け治具4,34は縦レール内でカム式等のロック部材(図示せず)で所定位置に固定することも可能である。このロック手段は縦レール3の横移動位置を規定する場合にも適用可能である。縦レール3の固定や縦レール内の受け治具4,34の固定は、モータ14,15,27,29を減速ギアの抵抗でロックさせることでも行うことができる。縦レール3の横移動をモータ等の駆動手段を用いずに引戻し用ワイヤ13(図1)を延ばしつつあるいは弛ませつつ作業者が手で行うようにすることも可能である。縦レール3の横移動位置や受け治具3,34の昇降位置等は予めプログラムされた制御装置20に基づいて規定される。
また、受け治具3,34を例えば上部フレーム64の下端の横杆6に係止手段(図示せず)で初期的に(サブハーネス35を各受け治具34にセットするまでの間)係止させておくことも可能である。係止手段としては、受け治具3,34と横杆6とに設けた係止爪を相互に係合させ、係止の解除は一方の係止爪をばね付勢に抗して離脱させるようにする。これらの構成は第一の実施形態におけると同様である。
以下に図11,図12の第二の実施形態のハーネス整形装置71を用いたハーネス整形方法を説明する。
図11の如く各縦レール3をフレーム67の左端側に寄せて収束させ、その状態で各縦レール3の受け治具34に各サブワイヤハーネス35のコネクタ36をセットする。各サブワイヤハーネス35の電線部分37は下部フレーム66までの間で垂れ下がる。どの受け治具34にどのサブハーネス35のどのコネクタ36をセットするかは、指示書等による。各サブハーネス35のセット状態の絵を描いた図板を縦レール3の裏側(後側)に配置しておくことも可能である。各受け治具4に各コネクタ36を自動機(図示せず)でセットさせることも可能である。
各縦レール3が垂直に配置されているから、縦レール3の裏側に大きな空間があり、且つ図12の展開状態で各縦レール3の間に大きな隙間67を生じるから、例えば導通検査具や分岐長さ測定具等といった検査具やジョイント機等といった加工機等を縦レール3の裏側の空間において縦レール3に干渉しない範囲で自由に設置することができる。また、隙間67と裏側の空間を利用してワイヤハーネスへの保護チューブや係止クリップ等の部品の装着やテープ巻き等の作業を容易に効率良く行うことができる。
図11の如く各受け治具34に各サブワイヤハーネス35のコネクタ36をセットした後、図12の如く、各縦レール3を横レール10に沿って所定位置まで横移動させ、次いで各受け治具34を縦レール3に沿って所定位置まで上昇させる。あるいは、各受け治具34を縦レール3に沿って所定位置まで上昇させ、次いで各縦レール3を横レール10に沿って所定位置まで上昇させる。あるいは、各縦レール3の横移動と各受け治具34の上昇とを同時に行わせる。縦レール3の横移動はモータ14とワイヤ12あるいはベルトとソレノイド等を用いた上記駆動手段あるいは手作業で行うことができる。
各縦レール3の横移動で各サブワイヤハーネス35が所要の形状に展開されて、ワイヤハーネス68の整形が行われる。各縦レール3の下端側でワイヤハーネス68の幹線部68aが水平に位置し、各縦レール3の表面に沿って分岐線部68bが所要の長さで延ばされる。幹線部68aは複数本の電線で構成され、分岐線部68bは一本ないし数本の電線で構成される。
この状態で幹線部68aを部分的にテープ巻きで結束したり、各部に保護チューブや係止クリップ等の部品を装着したりしてワイヤハーネス68が完成する。あるいは、ワイヤハーネス68をハーネス整形装置71から外して次工程で他のワイヤハーネスと合体させて大型のワイヤハーネスを形成する。
なお、図11においては各受け治具34を初期状態で各縦レール3の下端側に並列に配置したが、例えば各受け治具34を各縦レール3の長手方向中央に配置し、その状態で各コネクタ36をセットし、各受け治具34を上下に所定距離で昇降させて、中央の幹線部68aから上下に延びる分岐線部68bを有するワイヤハーネスを整形させることも可能である。
また、図11の例では各受け治具34に各サブワイヤハーネス35のコネクタ36をセットしたが、図1に示すUフォーク状等の受け治具4を用いて、例えば各縦レール3の中央位置で各受け治具4を並列に初期配置し、各受け治具4に各サブワイヤハーネス35の電線部分37を引っ掛けてセットし、各受け治具4を上下に所定距離で昇降させて、中央の幹線部から上下に延びる分岐線部を有するワイヤハーネスを整形することも可能である。この場合、コネクタ用の受け治具34を混在させることで、コネクタ36の位置も正確に規定される。
上記第一と第二の各実施形態においては、各縦レール3をフレーム2,67の左端側に収束させ、フレーム2,67の右端側に向けて展開する構造としたが、これとは逆に、各縦レール3をフレーム2,67の右端側に収束させ、フレーム2,67の左端側に向けて展開する構造とすることも可能である。この場合、例えば図11において引戻し用モータ15と展開用モータ14の配置は左右逆転する。
また、上記各実施形態においては、縦レール3を図1の例では斜めに配置し、図11の例では垂直に配置したが、例えばサブワイヤハーネス35の分岐長さが短く、縦レール3が短くてよい場合は、縦レール3をフレームの上部に水平に配置し(図11の例では上部フレーム64を水平に回動させる。この場合は縦レールとは呼ばずY方向レール等と呼称する)、Y方向レール内の受け治具4,34を自重ではなく前後の昇降用モータ27,28又はねじ軸53を連結したモータ55で駆動するようにする。
また、上記各実施形態においては、縦レール3を横方向にモータ14,15で駆動したが、モータ14,15に代えて図8の例に示すような錘を用いることも可能である。この場合、錘はフレーム2,67の左右両端側にプーリを介して設けてもよく、あるいは展開側であるフレーム2,67の右端側にのみ設けてもよい。また、縦レール3を横方向に引っ張るワイヤ12,13の位置は上下に限らず、縦レール3が短い場合は中央に一本としてもよい。