JP2006342904A - ピニオンシャフト及びプラネタリギヤ装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 研磨取りしろを少なくすることができるとともに、表面のC,Nの含有率のばらつきを小さくする。
【解決手段】 ピニオンシャフト4eは、0.5〜1.2重量%のCを含有する鋼で形成され、N含有率:0.05〜0.4重量%、高周波焼入れによるビッカース硬さ:Hv650以上及び残留オーステナイト量:15〜40体積%とした表面層が設けられ、シャフト長さL(mm)、シャフト径Da(mm)、軸方向油穴の径b(mm)、軸方向油穴の長さl(mm)とした場合に、20mm≦Da−bのとき、l≧3L/5の関係を満足し、5mm≦Da−b<20mmのとき、l≧(−Da+b+65mm)L/75の関係を満足し、Da−b<5mmのとき、l≧4L/5の関係を満足する。
【選択図】 図3
【解決手段】 ピニオンシャフト4eは、0.5〜1.2重量%のCを含有する鋼で形成され、N含有率:0.05〜0.4重量%、高周波焼入れによるビッカース硬さ:Hv650以上及び残留オーステナイト量:15〜40体積%とした表面層が設けられ、シャフト長さL(mm)、シャフト径Da(mm)、軸方向油穴の径b(mm)、軸方向油穴の長さl(mm)とした場合に、20mm≦Da−bのとき、l≧3L/5の関係を満足し、5mm≦Da−b<20mmのとき、l≧(−Da+b+65mm)L/75の関係を満足し、Da−b<5mmのとき、l≧4L/5の関係を満足する。
【選択図】 図3
Description
本発明は、例えば、自動車、工作機械等の減速機や変速機に好適に用いることができるピニオンシャフト及びプラネタリギヤ装置に関する。
例えば、自動車の自動変速機に用いられる従来のプラネタリギヤ装置は、図4に示すように、サンギヤ4b、リングギヤ4a及びキャリヤ4dを備えており、これらの回転要素は出力軸の周りに同心に配設されている。また、サンギヤ4b及びリングギヤ4aに噛み合うピニオン4cが、キャリヤ4dに固定されたピニオンシャフト4eに、2列のころ(転動体)11を介して回転自在に支持されている。
ピニオンシャフト4eには、軸方向の略中央部の外周面から径方向内方に延びる径方向油穴4gと、軸方向の端面から軸方向に沿って延びて、前記径方向油穴4gに連通する軸方向油穴4fとが設けられている。潤滑油はピニオンシャフト4eの軸方向端面の軸方向油穴4fの開口から該シャフト4e内を通って、径方向油穴4gから2列のころ11間(軸受部)に供給されるようになっている。また、2列のころ11間には、スペーサ12が介装され、ピニオン4cの両端部には、ころ押え13が設けられている。
ところで、プラネタリギヤ装置の構造は、ピニオン4cが自転しながら公転するという複雑なものであるので、十分な潤滑油を2列のころ11間(軸受部)に供給することが難しく、また、各回転要素の中ではピニオン4cの回転速度が最も高いので、ピニオン4cを支持するピニオンシャフト4eには、ピニオン4cに作用する遠心力を支えるために大きな荷重が負荷される傾向にある。
したがって、従来のプラネタリギヤ装置においては、ピニオンシャフト4eをJIS鋼種SK5等で形成し、ころ11が転走する部分に高周波焼入れを施して、転動部材として必要な硬さ(Hv650以上)を付与している。また、潤滑不良等による剥離寿命が問題となる場合には、ピニオンシャフト4eをJIS鋼種SUJ2等で形成し、浸炭窒化処理等を施して必要な寿命を確保している。
しかし、近年、自動車の低燃費化の要求がますます強まっており、低燃費化を目的として自動変速機の小型化や高効率化が行われピニオン4cの回転速度が高まっている。そのため、ピニオンシャフト4eに負荷される荷重が増大し、温度が上昇し、さらに潤滑油量が減少する傾向となっている。その結果、前述のような従来のピニオンシャフト4eでは、変形や早期剥離(滑りの増大に伴って摩耗が生じ、この摩耗による面荒れから早期剥離に至る)が発生しやすく、寿命が不十分となるという問題が生じている。
そこで、ピニオンシャフト4eを0.5〜1.2重量%の炭素を含有する鋼で形成するとともに、窒素を0.05〜0.4重量%含有し、高周波焼入れによりビッカース硬さをHv650以上とし、且つ残留オーステナイトが15〜40体積%とした表面層を設け、さらに芯部の残留オーステナイトを0vol%とすることにより、早期剥離の防止対策を行うようにした技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、2列のころ11間に介装されたスペーサ12の内周部に切欠きを施すことにより、2列のころ11間に供給される潤滑油量を増大させるようにした技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特開2002−4003号公報
特開2005−16710号公報
ところで、潤滑油供給のためには、ピニオンシャフト4e内の軸方向油穴4f及び径方向油穴4gは必要不可欠のものであるが、2列のころ11への油供給は、各ころ11に均一に、且つ十分に行う必要があるため、径方向油穴4gはピニオンシャフト4eの軸方向の略中央部に設けられている。したがって、軸方向油穴4fの軸方向長さは、ピニオンシャフト4eの長さの略1/2となっている。
しかしながら、このように軸方向油穴4fがピニオンシャフト4eの全長に設けられてなく、ピニオンシャフト4eの肉厚が軸方向で異なっている場合、ピニオンシャフト4eの外径面に上記特許文献1のような高周波焼入れを行うと、ピニオンシャフト4eに曲がりが生じて、熱処理後の研磨の取りしろが大きくなるという問題が生じ、また、ピニオンシャフト4eの曲がり量を少なくするために軸方向油穴4fの長さを長くすると、コストアップになるという問題が生じる。
更に、研磨の取りしろが大きくなると、コストアップの要因となるばかりでなく、浸炭窒化したものにおいては、表面のC,Nの含有率が大きく異なるという問題も生じる。
本発明はこのような不都合を解消するためになされたものであり、研磨取りしろを少なくすることができるとともに、表面のC,Nの含有率のばらつきを小さくすることができ、これにより、高温下において高速回転で使用しても長寿命なピニオンシャフト及びプラネタリギヤ装置を提供することを目的とする。
本発明はこのような不都合を解消するためになされたものであり、研磨取りしろを少なくすることができるとともに、表面のC,Nの含有率のばらつきを小さくすることができ、これにより、高温下において高速回転で使用しても長寿命なピニオンシャフト及びプラネタリギヤ装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、プラネタリギヤ装置のサンギヤ及びリングギヤに噛み合うピニオンを回転自在に支持するとともに、外周面から径方向内方に延びる径方向油穴と、軸方向の端面から軸方向に沿って延びて、前記径方向油穴に連通する軸方向油穴とを備えたピニオンシャフトであって、
0.5〜1.2重量%の炭素(C)を含有する鋼で形成するとともに、窒素(N)含有率:0.05〜0.4重量%、高周波焼入れによるビッカース硬さ:Hv650以上及び残留オーステナイト量:15〜40体積%とした表面層を設け、
シャフト長さL(mm)、シャフト径Da(mm)、軸方向油穴の径b(mm)、軸方向油穴の長さl(mm)とした場合に、20mm≦Da−bのとき、l≧3L/5の関係を満足し、5mm≦Da−b<20mmのとき、l≧(−Da+b+65mm)L/75の関係を満足し、Da−b<5mmのとき、l≧4L/5の関係を満足することを特徴とする。
0.5〜1.2重量%の炭素(C)を含有する鋼で形成するとともに、窒素(N)含有率:0.05〜0.4重量%、高周波焼入れによるビッカース硬さ:Hv650以上及び残留オーステナイト量:15〜40体積%とした表面層を設け、
シャフト長さL(mm)、シャフト径Da(mm)、軸方向油穴の径b(mm)、軸方向油穴の長さl(mm)とした場合に、20mm≦Da−bのとき、l≧3L/5の関係を満足し、5mm≦Da−b<20mmのとき、l≧(−Da+b+65mm)L/75の関係を満足し、Da−b<5mmのとき、l≧4L/5の関係を満足することを特徴とする。
請求項2に係る発明は、サンギヤ及びリングギヤに噛み合うピニオンと、キャリヤに取り付けられて、前記ピニオンを複数の転動体を介して回転可能に支持するピニオンシャフトとを備えたプラネタリギヤ装置であって、
前記ピニオンシャフトとして、請求項1に記載したピニオンシャフトを用いたことを特徴とする。
ここで、本発明における表面層とは、表面から2%Da(転動体径)までの部分及び表面から絶対値深さで0.1mmまでの部分のうち、深い方を意味する。
前記ピニオンシャフトとして、請求項1に記載したピニオンシャフトを用いたことを特徴とする。
ここで、本発明における表面層とは、表面から2%Da(転動体径)までの部分及び表面から絶対値深さで0.1mmまでの部分のうち、深い方を意味する。
本発明によれば、ピニオンシャフトの高周波焼入れによる曲がり量を少なくすることができるため、仕上げ研磨取りしろが少なくなり、低コスト化を図ることができる。また、研磨取りしろが少なくなるために、表面窒素濃度、残留オーステナイト量、硬さのばらつきが小さくなり、安定した耐久性を得ることが可能となる。
以下、本発明の実施の形態の一例を図を参照して説明する。図1は本発明の実施の形態の一例であるピニオンシャフトを備えた車両の自動変速機を示す断面図、図2は本発明の実施の形態の一例であるピニオンシャフトを備えたプラネタリギヤ装置の分解斜視図、図3は本発明の実施の形態の一例であるピニオンシャフトをプラネタリギヤ装置に組み込んだ状態を示す断面図である。
まず、図1を参照して、本発明の実施の形態の一例であるピニオンシャフトを備えた車両の自動変速機から説明すると、この自動変速機1は、エンジンのクランクシャフト2から出力されるトルクが、トルクコンバータ3を介して伝達され、更に複数列組み合わされたプラネタリギヤ装置4,5,6等を介して複数段に減速され、その後、デファレンシャルギヤ7及びドライブシャフト8を介して、車輪(図示せず)出力されるようになっている。
プラネタリギヤ装置4,5,6は、いずれも略同一構造であるため、プラネタリギヤ装置4について説明すると、プラネタリギヤ装置4は、図2及び図3に示すように、内歯を有するリングギヤ4aと、外歯を有するサンギヤ4bと、リングギヤ4a及びサンギヤ4bに噛合するピニオン4cと、キャリヤ4dに取り付けられて、ピニオン4cを複数のころ11を介して回転可能に支持するピニオンシャフト4eとを備えている。
ピニオンシャフト4e内には、ピニオンシャフト4eには、軸方向の略中央部の外周面から径方向内方に延びる径方向油穴4gと、軸方向の端面から軸方向に沿って延びて、前記径方向油穴4gに連通する軸方向油穴4fとが設けられている。潤滑油はピニオンシャフト4eの軸方向端面の軸方向油穴4fの開口から該シャフト4e内を通って、径方向油穴4gから2列のころ11間(軸受部)に供給されるようになっている。また、2列のころ11間には、スペーサ112が介装され、該スペーサ112の内周部には、切欠き112aが形成されている。
ここで、この実施の形態では、ピニオンシャフト4eを、0.5〜1.2重量%の炭素(C)を含有する鋼で形成するとともに、軌道面を構成する外周面に、窒素(N)含有率:0.05〜0.4重量%、高周波焼入れによるビッカース硬さ:Hv650以上及び残留オーステナイト量:15〜40体積%とした表面層を設け、これにより、優れた耐転がり疲労特性を付与している。
また、ピニオンシャフト4eのシャフト長さL(mm)、シャフト径Da(mm)、軸方向油穴4fの径b(mm)、軸方向油穴4fの長さl(mm)とした場合に、20mm≦Da−bのとき、l≧3L/5の関係を満足し、5mm≦Da−b<20mmのとき、l≧(−Da+b+65mm)L/75の関係を満足し、Da−b<5mmのとき、l≧4L/5の関係を満足している。
これにより、ピニオンシャフト4eの外周面に高周波焼入れを施した際に、ピニオンシャフト4eの熱処理変形を100μm以下とすることができるため、研磨取りしろの削減が可能となり、コストダウンとなるだけでなく、ピニオンシャフト4eの外周面に、窒素(N)含有率:0.05〜0.4重量%、高周波焼入れによるビッカース硬さ:Hv650以上及び残留オーステナイト量:15〜40体積%とした表面層を、各数値がばらつくことなく、確実、且つ容易に設けることが可能となる。
次に、上記の各数値の臨界的意義について説明する。
(ピニオンシャフトの鋼のC(炭素)含有率:0.5〜1.2重量%)
炭素濃度が0.5重量%未満であると、高周波焼入れにより前記表面層及び高周波焼入れ部の硬さを安定してHv650(HRC58)以上とすることが難しくなる。ピニオンシャフトの寸法がどのようなものであっても好ましい硬さであるHv650(HRC58)以上とするためには、下限を0.5重量%とする必要がある。なお、浸炭窒化法により浸炭する場合においては、前記表面層に微細な(0.5〜1.0μm)炭窒化物を形成するためにも、炭素は0.5重量%以上必要である。また、炭素含有率が1.2重量%を超えると、鋼中に巨大な炭化物が生成しやすくなり、転がり寿命を低下させる。
(ピニオンシャフトの鋼のC(炭素)含有率:0.5〜1.2重量%)
炭素濃度が0.5重量%未満であると、高周波焼入れにより前記表面層及び高周波焼入れ部の硬さを安定してHv650(HRC58)以上とすることが難しくなる。ピニオンシャフトの寸法がどのようなものであっても好ましい硬さであるHv650(HRC58)以上とするためには、下限を0.5重量%とする必要がある。なお、浸炭窒化法により浸炭する場合においては、前記表面層に微細な(0.5〜1.0μm)炭窒化物を形成するためにも、炭素は0.5重量%以上必要である。また、炭素含有率が1.2重量%を超えると、鋼中に巨大な炭化物が生成しやすくなり、転がり寿命を低下させる。
(表面層の窒素濃度:0.05〜0.4重量%)
窒素を炭素とともに焼入れ後の組織に固溶すると、マトリックスを強化する効果がある。このことにより、表面硬さが向上し、焼戻し抵抗性も向上することから、広い温度範囲にわたって耐摩耗性を得ることができ、これにより、ピニオンシャフトの寿命を向上することができる。窒素濃度が0.05重量%未満では、耐摩耗性が不十分となり、表面層の残留オーステナイト量を15体積%以上とすることが困難となる。また、窒素濃度が0.4重量%を越えると、熱処理後の加工(研磨,研削等)に時間を要し、後加工コストが増大する。耐摩耗性と後加工コストとを最適なものとするには、0.1〜0.3重量%とすることがより好ましい。
窒素を炭素とともに焼入れ後の組織に固溶すると、マトリックスを強化する効果がある。このことにより、表面硬さが向上し、焼戻し抵抗性も向上することから、広い温度範囲にわたって耐摩耗性を得ることができ、これにより、ピニオンシャフトの寿命を向上することができる。窒素濃度が0.05重量%未満では、耐摩耗性が不十分となり、表面層の残留オーステナイト量を15体積%以上とすることが困難となる。また、窒素濃度が0.4重量%を越えると、熱処理後の加工(研磨,研削等)に時間を要し、後加工コストが増大する。耐摩耗性と後加工コストとを最適なものとするには、0.1〜0.3重量%とすることがより好ましい。
(表面層の硬さ:ビッカース硬さHv650(HRC58)以上)
表面層の硬さがHv650未満であると、表面層の硬さが不十分であるため表面疲労(転動疲労)が早期に発生し、ピニオンシャフトの寿命が低下する。
(表面層の残留オーステナイト量:15〜40体積%)
例えば、自動車のトランスミッションやエンジン駆動系で使用される場合には、潤滑油に摩耗粉などの異物が混入したり、潤滑油の供給不足から表面疲労が生じやすくなる。
表面層の硬さがHv650未満であると、表面層の硬さが不十分であるため表面疲労(転動疲労)が早期に発生し、ピニオンシャフトの寿命が低下する。
(表面層の残留オーステナイト量:15〜40体積%)
例えば、自動車のトランスミッションやエンジン駆動系で使用される場合には、潤滑油に摩耗粉などの異物が混入したり、潤滑油の供給不足から表面疲労が生じやすくなる。
本発明においては、表面を硬くすることや表面に炭窒化物を存在させることのほかに、残留オーステナイトによる一種のダンパー効果によって表面疲労を減ずることができることを見いだした。残留オーステナイト量が15体積%未満では、表面疲労を緩和するダンパー効果が少なく、ピニオンシャフトの疲労寿命が低下する。また、残留オーステナイト量が40体積%を越えると、表面硬さを減じてしまうので、耐摩耗性や耐表面疲労性がかえって損なわれる。
残留オーステナイト量を20〜35体積%とすれば、優れた疲労寿命が安定して得られるので、さらに好ましい。
残留オーステナイト量を20〜35体積%とすれば、優れた疲労寿命が安定して得られるので、さらに好ましい。
(軸方向油穴の長さ)
軸方向油穴4fの長さl(mm)が、20mm≦Da−bのとき、l≧3L/5の関係を満足し、5mm≦Da−b<20mmのとき、l≧(−Da+b+65mm)L/75の関係を満足し、Da−b<5mmのとき、l≧4L/5の関係を満足することにより、高周波焼入時にピニオンシャフトの曲がりを100μm以下にすることができるため、研磨取りしろを削減することができ、表面の窒素濃度、表面硬さ、残留オーステナイト量を上述した範囲にすることが容易になる。
なお、本発明のサンギヤ、リングギヤ、ピニオン、径方向油穴、軸方向油穴、ピニオンシャフト、キャリヤ、転動体等の構成は、上記実施の形態に例示したものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
軸方向油穴4fの長さl(mm)が、20mm≦Da−bのとき、l≧3L/5の関係を満足し、5mm≦Da−b<20mmのとき、l≧(−Da+b+65mm)L/75の関係を満足し、Da−b<5mmのとき、l≧4L/5の関係を満足することにより、高周波焼入時にピニオンシャフトの曲がりを100μm以下にすることができるため、研磨取りしろを削減することができ、表面の窒素濃度、表面硬さ、残留オーステナイト量を上述した範囲にすることが容易になる。
なお、本発明のサンギヤ、リングギヤ、ピニオン、径方向油穴、軸方向油穴、ピニオンシャフト、キャリヤ、転動体等の構成は、上記実施の形態に例示したものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
次に、本発明におけるピニオンシャフトについて、熱処理実験を行った結果を説明する。ピニオンシャフトを形成する鋼としては、表1に示すような組成を有するSUJ2、S55Cを用いた。
熱処理は、次の条件で行った。
浸炭窒化:RXガス+エンリッチガス+アンモニアガス雰囲気で2〜5時間
調質:850°Cで焼き入れ、400°Cで焼き戻し
高周波焼入れ:周波数30kHz、電圧10kV、電流10A、転動軸の送り速度2〜 8m/sec、冷却水35L/min
焼戻し:160〜180°Cで1.5〜2時間
異なるシャフト径を持つピニオンシャフトについて熱処理を行い、熱処理後のピニオンシャフトの曲がり量について測定を行った。得られた結果を表2に示す。なお、表2には熱処理後に得られた表面層の窒素濃度、残留オーステナイト量、硬さ(Hv)についても示した。
浸炭窒化:RXガス+エンリッチガス+アンモニアガス雰囲気で2〜5時間
調質:850°Cで焼き入れ、400°Cで焼き戻し
高周波焼入れ:周波数30kHz、電圧10kV、電流10A、転動軸の送り速度2〜 8m/sec、冷却水35L/min
焼戻し:160〜180°Cで1.5〜2時間
異なるシャフト径を持つピニオンシャフトについて熱処理を行い、熱処理後のピニオンシャフトの曲がり量について測定を行った。得られた結果を表2に示す。なお、表2には熱処理後に得られた表面層の窒素濃度、残留オーステナイト量、硬さ(Hv)についても示した。
また、表2中の必要な条件式は、シャフト長さL(mm)、シャフト径Da(mm)、軸方向油穴4fの径b(mm)、軸方向油穴4fの長さl(mm)とした場合に、次の条件式(1)〜(3)とする。
条件式(1)
20mm≦Da−bのとき、l≧3L/5
条件式(2)
5mm≦Da−b<20mmのとき、l≧(−Da+b+65mm)/75
条件式(3)
Da−b<5mmのとき、l≧4L/5
条件式(1)
20mm≦Da−bのとき、l≧3L/5
条件式(2)
5mm≦Da−b<20mmのとき、l≧(−Da+b+65mm)/75
条件式(3)
Da−b<5mmのとき、l≧4L/5
表2に示すように、実施例1〜8のピニオンシャフトはSUJ2を用いており、軸方向油穴の長さlは本発明を満足するものである。ピニオンシャフトの曲がり量は5〜13μmと小さくなっており、熱処理後の研磨取りしろを小さくすることができる。研磨取りしろを小さくすることの効果として、表面窒素濃度、残留オーステナイト量、硬さのばらつきを小さくすることができ、ピニオンシャフトの耐久性を向上させることが可能となる。また、実施例9〜11はS55Cを用いているが、軸方向油穴の長さlは本発明を満足するものであり、SUJ2の実施例1〜8と同様の結果が得られている。
これに対し、比較例1〜4は、SUJ2を用いているものの、軸方向油穴の長さlが本発明を満たすものではなく、高周波焼入れ後のピニオンシャフトの曲がり量が50〜80μmと大きくなっており、熱処理後の仕上げ研磨代が多くなってしまっている。そのため、表面窒素濃度、残留オーステナイト量、硬さのばらつきが大きく、耐久性が低下する可能性がある。比較例5,6はS55Cを用いているが、軸方向油穴の長さlが本発明を満たすものではなく、SUJ2の比較例1〜4と同様の結果であった。
4 プラネタリギヤ装置
4a リングギヤ
4b サンギヤ
4c ピニオン
4d キャリヤ
4e ピニオンシャフト
4f 軸方向油穴
4g 径方向油穴
11 ころ(転動体)
4a リングギヤ
4b サンギヤ
4c ピニオン
4d キャリヤ
4e ピニオンシャフト
4f 軸方向油穴
4g 径方向油穴
11 ころ(転動体)
Claims (2)
- プラネタリギヤ装置のサンギヤ及びリングギヤに噛み合うピニオンを回転自在に支持するとともに、外周面から径方向内方に延びる径方向油穴と、軸方向の端面から軸方向に沿って延びて、前記径方向油穴に連通する軸方向油穴とを備えたピニオンシャフトであって、
0.5〜1.2重量%の炭素(C)を含有する鋼で形成するとともに、窒素(N)含有率:0.05〜0.4重量%、高周波焼入れによるビッカース硬さ:Hv650以上及び残留オーステナイト量:15〜40体積%とした表面層を設け、
シャフト長さL(mm)、シャフト径Da(mm)、軸方向油穴の径b(mm)、軸方向油穴の長さl(mm)とした場合に、
20mm≦Da−bのとき、l≧3L/5の関係を満足し、5mm≦Da−b<20mmのとき、l≧(−Da+b+65mm)L/75の関係を満足し、Da−b<5mmのとき、l≧4L/5の関係を満足することを特徴とするピニオンシャフト。 - サンギヤ及びリングギヤに噛み合うピニオンと、キャリヤに取り付けられて、前記ピニオンを複数の転動体を介して回転可能に支持するピニオンシャフトとを備えたプラネタリギヤ装置であって、
前記ピニオンシャフトとして、請求項1に記載したピニオンシャフトを用いたことを特徴とするプラネタリギヤ装置。
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---|---|---|---|---|
JP2010014184A (ja) * | 2008-07-03 | 2010-01-21 | Nsk Ltd | 遊星歯車用支持軸及びその製造方法 |
WO2018056332A1 (ja) * | 2016-09-20 | 2018-03-29 | 新日鐵住金株式会社 | シャフト部品 |
JPWO2018056333A1 (ja) * | 2016-09-20 | 2019-06-24 | 日本製鉄株式会社 | 浸炭シャフト部品 |
-
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- 2005-06-09 JP JP2005169753A patent/JP2006342904A/ja not_active Withdrawn
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