JP2010014184A - 遊星歯車用支持軸及びその製造方法 - Google Patents

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康宏 荒木
Hiromichi Takemura
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Abstract

【課題】小径で中間部外周面に十分な硬さを有する焼き入れ硬化層18を備え、しかも十分な靱性を有する遊星歯車用支持軸及びその製造方法を実現する。
【解決手段】軸方向長さを20〜80mm、外径を10mm以下、軸方向孔15及び径方向孔16の内径を1mm以上、外周面とこの軸方向孔15の内周面との径方向距離を3mm以下、上記焼き入れ硬化層18の径方向厚さを0.4〜2.0mm、この焼き入れ硬化層18よりも径方向内側部分である芯部の残留オーステナイト量を0〜3容量%、この焼き入れ硬化層18の残留オーステナイト量を15〜50容量%とする。上記軸方向孔15は、上記焼き入れ硬化層18を形成してから形成する。熱容量の差をなくして、この焼き入れ硬化層18の厚さを均一にできて、上記課題を解決できる。
【選択図】図1

Description

本発明は、例えば自動車用自動変速機やトランスアスクルを構成する遊星歯車装置に組み込まれる遊星歯車をキャリアに対して回転自在に支持する為の、遊星歯車用支持軸及びその製造方法の改良に関する。
自動車用自動変速機を構成する遊星歯車装置が従来から、例えば特許文献1〜6等、多くの刊行物に記載されて広く知られると共に、広く実施されている。この従来から知られた遊星歯車装置は、例えば図2〜4に示す様に、外周面に歯1aを形成した太陽歯車1と、この太陽歯車1と同心に配置され、内周面に歯2aを形成したリング歯車2との間に、複数個(一般的には3〜4個)の遊星歯車3、3を、円周方向に関して等間隔に配置している。そして、これら複数個の遊星歯車3、3の外周面に形成した歯3aを、上記両歯1a、2aに噛合させている。
上記複数個の遊星歯車3、3は、それぞれ支持軸4の周囲に、それぞれ複数本ずつのニードル5、5を介して回転自在に支持している。これら各支持軸4の基端部(図3〜4の右端部)は、上記太陽歯車1を中心として回転自在なキャリア6の基板7に支持固定している。図示の例では、上記各支持軸4の基端部をこの基板7に形成した通孔8aに締まり嵌めで内嵌すると共に、これら各支持軸4と基板7との間に係止ピン9を掛け渡して、これら各支持軸4が上記通孔8aから脱落するのを防止している。
又、図示の例では、上記太陽歯車1を円筒状に形成し、上記基板7を、断面L字形で全体を円輪状に形成している。そして、図3に示す様に、この基板7の内周縁部に形成した円筒部10を、回転軸11の外周面にスプライン係合させている。上記太陽歯車1は、この回転軸11の周囲に、この回転軸11に対する相対回転を自在に支持している。又、上記リング歯車2は上記各部材1、6、11の周囲に、これら各部材1、6、11に対する相対回転を自在に支持している。
又、上記各支持軸4の先端部(図3〜4の左端部)は、上記基板7と共に上記キャリア6を構成する、円輪状に形成された連結板12に形成した通孔8bに内嵌固定し、上記各支持軸4の先端部同士を連結している。これら複数の支持軸4の中間部外周面で、上記キャリア6と上記連結板12との間部分は、円筒面状の内輪軌道13としている。一方、上記遊星歯車3の内周面は、円筒面状の外輪軌道14としている。そして、これら内輪軌道13と外輪軌道14との間部分に前記各ニードル5、5を設けて、上記遊星歯車3を、上記支持軸4の中間部周囲で連結板12とキャリア6との間部分に、回転自在に支持している。尚、上記各支持軸4の内部には、図4に示す様に、通油孔として機能する軸方向孔15及び径方向孔16を設け、上記各ニードル5、5の設置部分に潤滑油を送り込み自在としている。即ち、上記各支持軸4の中心部に設けた、上記軸方向孔15の上流端を、上記キャリア6の基板7内に設けた潤滑油供給路17に通じさせると共に、上記径方向孔16の両端部を、上記軸方向孔15の内周面と外周面とに開口させている。そして、遊星歯車式変速機の運転時に、上記各ニードル5、5の設置部分に潤滑油を送り込み自在としている。
上述の様な遊星歯車3及び支持軸4等を含んで構成する遊星歯車装置は、例えば、前記回転軸11を駆動軸又は従動軸とし、上記太陽歯車1又は上記リング歯車2の中心を従動軸又は駆動軸に結合する。そして、何れの歯車1、2、3を回転自在とし、何れの歯車1、2、3を回転不能とするかを切り換える事により、上記駆動軸と従動軸との間の変速並びに回転方向の変換を行う。この様な遊星歯車装置自体の構成及び作用は、従来から周知であり、本発明の要旨とも関係しないから、全体構造の図示並びに詳しい説明は省略する。
ところで、上述の様な遊星歯車装置の運転時に上記支持軸4の外周面(ラジアルニードル軸受の内輪軌道13)乃至表面層部分には、上記各ニードル5、5の転動面との転がり接触に基づいて大きな面圧(高面圧)が加わり、この表面層部分に、数GPa程度にも達する、大きな接触応力が発生する。この為に従来から、上記支持軸4を構成する金属材料として、硬くて大きな負荷に耐えられ、転がり疲労寿命が長く、且つ、滑りに対する耐摩耗性の良好なものを選択使用している。具体的には、SCM420(JIS G 4105)等の肌焼き鋼、SK5(JIS G 4401)等の炭素工具鋼、SUJ2〜4(JIS G 4805)等の高炭素クロム軸受鋼、S70C(JIS G 4802)等のばね用冷間圧延鋼が使用されている。
又、上記支持軸4の外周面乃至は表面層部分は、上記各ニードル5、5の公転運動に基づき、高面圧下で繰り返し剪断応力を受ける為、転がり疲れ寿命確保の面から、厳しい使用条件となる。この為、上述の様な金属材料により造られる上記支持軸4の表面層部分には、浸炭処理や浸炭窒化処理等の表面熱処理を施して、上記繰り返し加わる剪断応力に拘らず(この剪断応力に耐えて)、上記表面層部分の転がり疲れ寿命を確保できる様にしている。更にこの表面層部分には、上記表面熱処理に加えて(この表面熱処理に引き続いて)高周波焼き入れ等により焼き入れ処理を施して焼き入れ硬化層を形成する事により、表面硬度を確保して、転がり疲れ寿命の一層の向上を図っている。
例えば、特許文献5には、支持軸をSUJ2〜4等の高炭素クロム軸受鋼により造り、この支持軸の表面層部分に浸炭処理や浸炭窒化処理等の表面熱処理を施した後、この支持軸に高周波焼き入れ処理を施す事が記載されている。そして、硬度がHv700〜Hv900で残留オーステナイト量γR が15〜40容量%である焼き入れ硬化層を形成すると共に、芯部の硬度をHv200〜Hv500とする事が記載されている。又、特許文献6には、高周波焼き入れ処理により表面層部分に、硬度がHv550以上である有効硬化層深さが、軸方向孔の内周面から外周面迄の距離の0. 75倍以下である、焼き入れ硬化層を形成する事が記載されている。
この様な特許文献5、6に記載された遊星歯車用支持軸の場合、外径が十分にあり、外周面と軸方向孔15の内周面との径方向距離(軸方向孔15を形成した部分の径方向厚さ)を十分に確保できる場合には良いが、外径が小さくなると、耐衝撃性の確保が難しくなる。例えば、支持軸の外径が10mm以下であり、軸方向孔の内径が1mm以上であり、外周面とこの軸方向孔の内周面との径方向距離が3mm以下の場合に、耐衝撃性の確保が難しくなる。この理由に就いて、図5を参照しつつ説明する。
小型の遊星歯車式変速機を構成する為、上記支持軸の外径を10mm以下とするにも拘らず、潤滑性確保の為に上記軸方向孔の内径を1mm以上確保すると、上記支持軸の外周面とこの軸方向孔の内周面との径方向距離を3mmを越えて確保する事が難しくなる場合がある。特に、上記軸方向孔の内径が4mm以上になると、上記径方向距離を3mmを越えて確保する事は不可能になる。言い換えれば、上記支持軸のうちで上記軸方向孔を形成した部分の、径方向に関する厚さ寸法が小さくなる。そして、この部分の熱容量が小さくなる。これに対して、上記支持軸のうちで上記軸方向孔から軸方向に外れた部分の熱容量は比較的大きくなる。
この様に、熱容量が軸方向に関して不均一な支持軸に、高周波焼き入れにより焼き入れ硬化層を形成すると、この焼き入れ硬化層の径方向厚さが不均一になる。具体的には、図5に示す様に、支持軸4の軸方向の一部で、軸方向孔15から軸方向に外れた、熱容量が大きな部分では、温度上昇が遅れる分、焼き入れ硬化層18aの厚さhが小さくなる。これに対して、上記軸方向孔15の周囲に位置する、熱容量が小さな部分では、温度上昇が早くなる分、焼き入れ硬化層18bの厚さHが大きくなる。そして、上記軸方向孔15から軸方向に外れた部分の焼き入れ硬化層18aの厚さhを確保しようとした場合、この軸方向孔15の周囲に位置する焼き入れ硬化層18bがこの軸方向孔15にまで達し、この部分に未硬化の金属層が存在しなくなってしまう。言い換えれば、断面全体が焼き入れ硬化された状態となる。特に、支持軸4の外周面と上記軸方向孔15の内周面との径方向距離が3mm以下しかない場合には、この様な状態が出現し易くなる。そして、軸方向の一部にしても、断面全体が焼き入れ硬化された場合には、当該部分の靱性が低下し、上記支持軸4の耐衝撃性が損なわれる。
この為従来は、小径でしかも或る程度の長さを有する遊星歯車用支持軸で靱性を確保する為には、図6に示す様に、軸方向孔15及び径方向孔16(例えば図5参照)を持たない支持軸4aを使用せざるを得なかった。但し、この様な支持軸4aは、この支持軸4aの外周面と遊星歯車3の内周面との間の円筒状空間内に設けるラジアルニードル軸受(図3〜4参照)を潤滑する為の潤滑油を、この円筒状空間の軸方向端部から送り込む必要がある。この為、必要とする潤滑油量を確保する事が難しく、高荷重、高速回転等、運転条件が厳しくなると、十分な耐久性を確保する事が難しくなる。尚、特許文献7には、外周面をラジアルニードル軸受用の内輪軌道とした軸の熱処理方法に就いて記載されているが、上述の様な課題を解決する事を示唆する記述は存在しない。
特開平7−317885号公報 特開平11−270661号公報 特開2002−235841号公報 実開昭63−125254号公報 特開2006−292025号公報 特開2006−292026号公報 特開2002−4003号公報
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、小径で中間部外周面に十分な硬さを有する焼き入れ硬化層を備え、しかも十分な靱性を有する遊星歯車用支持軸及びその製造方法を実現すべく発明したものである。
本発明の対象となる遊星歯車用支持軸は、前述した従来から知られている遊星歯車用支持軸と同様に、軸方向孔と、径方向孔と、焼き入れ硬化層とを有する。
このうちの軸方向孔は、遊星歯車用支持軸の中心軸部に形成されたもので、軸方向一端面に開口すると共に、軸方向中間部に迄達する。
又、上記径方向孔は、上記軸方向孔の奥部と外周面とを連通させるもので、上記遊星歯車用支持軸の軸方向中間部に、この遊星歯車用支持軸の径方向に形成されている。
又、上記焼き入れ硬化層は、上記遊星歯車用支持軸の軸方向中間部を高周波焼き入れする事により、この軸方向中間部の外周寄り部分に設けられている。
そして、両端部を遊星歯車式変速機を構成するキャリアに支持固定し、この焼き入れ硬化層を設けた部分の周囲に遊星歯車を回転自在に支持する。
特に、請求項1に記載した遊星歯車用支持軸に於いては、次の(A) 〜(G) の要件を総て満たす。
(A) 軸方向長さが20〜80mm
(B) 外径が10mm以下
(C) 上記軸方向孔及び上記径方向孔の内径が1mm以上
(D) 外周面とこの軸方向孔の内周面との径方向距離が3mm以下
(E) 上記焼き入れ硬化層(硬さがHv550以上の部分)の径方向厚さが0.4〜2.0mm
(F) この焼き入れ硬化層よりも径方向内側部分である芯部の残留オーステナイト量が0〜3容量%
(G) 上記焼き入れ硬化層の残留オーステナイト量が15〜50容量%
又、請求項2に記載した遊星歯車用支持軸の製造方法は、上記焼き入れ硬化層を形成してから上記軸方向孔を形成する。
尚、上記焼き入れ硬化層は、高周波焼き入れにより形成するが、この高周波焼き入れは、単に高周波焼き入れの後低温焼き戻しする方法を含め、次の(a)(b)の工程を経て行う方法等、前述の特許文献7に記載された方法を適宜使用できる。要は、必要とする硬さ及び厚さを有する焼き入れ硬化層を得られる熱処理方法を選択使用する。
(a) 高周波焼き入れ→低温焼き戻し
(b) 浸炭窒化処理→高温焼き戻し→高周波焼き入れ→低温焼き戻し
尚、このうちの(a) の方法を採用すれば、芯部の残留オーステナイト量を0〜3容量%とし、表面(焼き入れ硬化層)の残留オーステナイト量を50容量%以下にできる。又、上記(b) の方法を採用すれば、芯部の残留オーステナイト量を0〜3容量%とし、表面(焼き入れ硬化層)の残留オーステナイト量を15〜50容量%にできる。又、高周波焼き入れや浸炭窒化処理に先立って切削加工を施す事もできるし、この切削加工と高周波焼き入れとの間に高温焼き戻しを施す事もできる。
上述の様に構成する本発明によれば、小径で中間部外周面に十分な硬さを有する焼き入れ硬化層を備える事で、ラジアルニードル軸受の内輪軌道として機能する遊星歯車用支持軸の外周面部分の転がり疲れ寿命を確保し、しかも十分な靱性を有する遊星歯車用支持軸を実現できる。
先ず、焼き入れ硬化層の径方向厚さを0.4〜2.0mmの範囲に規制しているので、外径が10mm以下の小径の遊星歯車用支持軸で、潤滑油の供給量を確保すべく、軸方向孔及び径方向孔の内径を1mm以上確保する結果、外周面とこの軸方向孔の内周面との径方向距離が3mm以下になっても、上記遊星歯車用支持軸の靱性を確保できる。即ち、上記焼き入れ硬化層の径方向厚さを2.0mm以下に抑えているので、この焼き入れ硬化層と上記軸方向孔との間に、焼き入れ硬化せずに(生のままで)靱性の高い金属材料を存在させて、上記小径の遊星歯車用支持軸に欠損等の損傷が発生しにくくできる。これに対して、上記焼き入れ硬化層の径方向厚さを0.4mm以上確保しているので、上記遊星歯車用支持軸の中間部外周面及びその表層部分の剛性を十分に高くして、この外周面部分の転がり疲れ寿命を確保できる。尚、上記靱性確保の面から好ましくは、上記焼き入れ硬化せずに生のままである(硬さがHv550未満である)部分の径方向の厚さを、上記外周面とこの軸方向孔の内周面との径方向距離の30%以上確保する。
尚、外径が10mmを越え、外周面と上記軸方向孔の内周面との径方向距離を3mmよりも大きくできる遊星歯車用支持軸であれば、本発明の様に、上記焼き入れ硬化層の径方向厚さを2.0mm以下に抑えなくても、上記転がり疲れ寿命の確保と、必要とする靱性の確保との両立を図れる。軸方向孔の内径が1mm未満の場合も同様である。但し、上記外径が4mm未満の場合には、軸方向孔の内径を1mmに、硬化層の厚さを0.4mmに、軸方向長さを20mmに、それぞれ抑えても、必要とする靱性の確保が難しくなる。従って、実際に遊星歯車用支持軸を設計する場合には、上記外径は4mm以上必要になる。好ましくは、この外径を5mm以上確保する。又、上記軸方向孔の内径を、4mmを越える大きさにする事は、本発明の対象となる、小型の遊星歯車式変速機の潤滑性確保の面から無駄であるだけでなく、上記外径を10mm確保しても、靱性確保の面から不利になる。又、上記径方向孔の内径を上記軸方向孔の内径よりも大きくする事も、潤滑性確保の面から無駄である。従って、これら径方向孔及び軸方向孔の内径は、最大でも(外径が10mmの場合でも)、4mm以下に抑える。
一方、軸方向長さが20mm未満の短い遊星歯車用支持軸の場合には、使用時に加わる曲げ応力が小さく、本発明により靱性の向上を図らなくても、破損防止を十分に図れる。これに対して、軸方向長さが80mmを越える様な長い遊星歯車用支持軸の場合には、使用時に加わる曲げ応力が大きくなり、本発明によって靱性の向上を図っても、十分な破損防止を図る事は難しくなる。
又、芯部の残留オーステナイト量を0〜3容量%としている為、残留オーステナイトの分解に伴う上記遊星歯車用支持軸の変形や寸法変化を抑えられて、長期間に亙る使用によっても、この遊星歯車用支持軸による遊星歯車の支持精度を十分に良好なままに維持できる。
これに対して、上記焼き入れ硬化層部分に関しては、残留オーステナイト量を15〜50容量%としている為、ピーリングの発生を抑え、転がり疲れ寿命を確保できる。即ち、比較的軟らかい金属組織であり、緩衝作用を有する残留オーステナイトを適正量含有させる事で、摩耗粉等の硬い異物が混入した潤滑油での潤滑を行う等、厳しい使用条件下でもピーリングの発生を抑え、転がり疲れ寿命を確保できる。但し、上記焼き入れ硬化層部分の残留オーステナイト量が15容量%未満の場合には、上記作用・効果を十分に得られない。これに対して、50容量%を越えると、残留オーステナイトの分解に伴う上記遊星歯車用支持軸の変形や寸法変化を抑えにくくなる。
更に、本発明の製造方法によれば、上述の様な優れた特性を有する遊星歯車用支持軸を安定して造る事ができる。即ち、本発明の製造方法の場合には、この遊星歯車用支持軸に焼き入れ硬化層を形成してから軸方向孔を形成する。この焼き入れ硬化層を形成する為の高周波焼き入れ時(加熱時)にはこの軸方向孔が存在しない為、上記遊星歯車用支持軸の熱容量が、軸方向に関して不均一にならないか、仮になっても不均一の程度を抑えられる(ほぼ均一にできる)。この為、上記焼き入れ硬化層を形成すべき部分の軸方向全長に亙ってこの焼き入れ硬化層を、ほぼ均一の厚さに形成できる。上記軸方向孔は、この焼き入れ硬化層を形成した後に、この焼き入れ硬化層よりも径方向内側の、焼き入れ硬化されていない部分に形成するので、上記軸方向孔を形成する作業は容易に行える。又、この軸方向孔と上記焼き入れ硬化層との間に、焼き入れ硬化されていない(生の)部分を確実に残せる。この結果、上記優れた特性を有する遊星歯車用支持軸を安定して造れる。
図1は、本発明の実施の形態の1例として、予め所定の寸法・形状に加工した、(A)に示す中間素材19に、孔あけ加工及び焼き入れの為の熱処理を施して、(D)に示す遊星歯車用支持軸20とする工程を示している。
先ず、アンコイラから引き出した、外径が10mm以下である長尺な素材(断面円形の線材)を所定長さ(完成後の長さである20〜80mmに、軸方向両端面の形状を整える為に必要とする削り代を加えた長さ)に切断する。尚、上記素材の材質としては、前述した様な、SCM420、SK5、SUJ2〜4、S70C等が使用可能である。又、何れの材質を使用する場合でも、金属材料自体の(焼き入れせずに生のままの状態での)硬さが、Hv200〜500程度のものを使用する。この硬さがHv200未満の場合には、完成後の遊星歯車用支持軸20の曲げ剛性を確保する事が難しくなる。これに対して、上記硬さがHv500を越えると、軸方向両端部をキャリアにかしめ固定すべく、この軸方向両端部を拡径(直径を広げる方向に塑性変形)しにくくなる。又、完成後の遊星歯車用支持軸20の靱性確保も難しくなる。
何れの材質を使用するにしても、所定長さに切断した素材は、その後、鍛造等の塑性加工、或は旋削等の切削加工を施す事により、(A)に示す様な、軸方向両端面に円すい台状の円形凹部21a、21bを形成した、上記中間素材19とする。この中間素材19は、未だ何れの部分にも焼き入れ硬化層を形成しておらず、全体が生のままである。
この様な中間素材19には、続く工程で、軸方向中間部の1乃至複数個所に径方向孔16を、ほぼこの中間素材19の中心部まで形成して、(B)に示す様な第二中間素材22とする。上記径方向孔16を穿設する作業は、ボール盤等を使用した切削加工により行うが、上記中間素材19は、焼き入れ硬化せずに全体が生のままである為、この切削加工は容易に行える。又、上記径方向孔16の内径R16は、1mm以上(例えば1〜4mm程度)とする。
上記径方向孔16を形成した上記第二中間素材22には、次の工程で高周波焼き入れ処理を施す。そして、(C)に示す様な第三中間素材23とする。この第三中間素材23は、軸方向中間部に焼き入れ硬化層18を形成すると共に、軸方向両端部で上記両円形凹部21a、21bの周囲部分は、焼き入れ硬化せずに生のままとしている。上記焼き入れ硬化層18の、径方向に関する厚さ(Hv550以上の部分の径方向に関する厚さ)Tは、0.4〜2.0mmとする。この焼き入れ硬化層18を形成する為の高周波焼き入れ時(加熱時)には、未だ軸方向孔15{図1の(D)}が存在しない。この為、上記第二中間素材22の熱容量を、焼き入れ硬化層18を形成しない軸方向両端部を除き、軸方向に関してほぼ均一にできる。この為、上記焼き入れ硬化層18を形成すべき部分の軸方向全長に亙ってこの焼き入れ硬化層18を、ほぼ均一の厚さに形成できる。上記径方向孔16の存在に基づく熱容量の差は、この焼き入れ硬化層18の厚さ寸法を不均一にする要因とはなりにくい。この焼き入れ硬化層18の表面硬さ(上記第三中間素材23の外周面部分の硬さ)は、Hv650〜900程度にする。この硬さがHv650未満の場合には、ラジアルニードル軸受の内輪軌道としての機能を有する外周面部分の転がり疲れ寿命を、十分に確保できない。これに対して、上記硬さがHv900を越えると、焼き入れ処理に伴って割れ等の損傷が発生し易くなる。又、上記焼き入れ硬化層18の厚さを2.0mm以下に抑える事も難しくなる。
この様にして、上記焼き入れ硬化層18を形成した上記第三中間素材23には、次の工程で上記軸方向孔15を形成して、(D)に示した遊星歯車用支持軸20とする。即ち、ボール盤等を使用した切削加工により、上記第三中間素材23の軸方向端面に形成した円形凹部21aの底面中心部から上記径方向孔16を少しだけ過ぎた部分にまで、上記軸方向孔15を形成する。この軸方向孔15の内径は1mm以上(例えば1〜4mm)としている。又、この軸方向孔15の内周面と上記遊星歯車用支持軸20の外周面との径方向距離を3mm以下とする。この軸方向孔15を形成する、上記第三中間素材23の径方向中心部は、上記焼き入れ硬化層18よりも径方向内側の、焼き入れ硬化されていない生の(比較的軟らかい)部分であるから、上記軸方向孔15を形成する作業は容易に行える。又、この軸方向孔15と上記焼き入れ硬化層18との間に、焼き入れ硬化されていない(生の)部分を確実に残せる。
即ち、上述の様な本例の製造方法によれば、上記焼き入れ硬化層18の径方向厚さを、実質的全長に亙り、0.4〜2.0mmの範囲に規制できる。そして、外径が10mm以下の小径の遊星歯車用支持軸20で、潤滑油の供給量を確保すべく、上記軸方向孔15及び上記径方向孔16の内径を1mm以上確保して、外周面とこの軸方向孔15の内周面との径方向距離が3mm以下になっても、全長が80mm以下であれば、必要とされる靱性を十分に確保できる。
本発明の実施の形態の1例である遊星歯車用支持軸の製造方法を工程順に示す断面図。 遊星歯車装置の1例を、軸方向から見た状態で示す正面図。 図2のX−X断面図。 図3のY部拡大断面図。 小径の遊星歯車用支持軸の外周面部分に高周波焼き入れ処理を施す事により生じる不都合を説明する為の、遊星歯車用支持軸の断面図。 この不都合を解消する為に、従来から実施されていた遊星歯車用支持軸の断面図。
符号の説明
1 太陽歯車
1a 歯
2 リング歯車
2a 歯
3 遊星歯車
3a 歯
4、4a 支持軸
5 ニードル
6 キャリア
7 基板
8a、8b 通孔
9 係止ピン
10 円筒部
11 回転軸
12 連結板
13 内輪軌道
14 外輪軌道
15 軸方向孔
16 径方向孔
17 潤滑油供給路
18、18a、18b 焼き入れ硬化層
19 中間素材
20 遊星歯車用支持軸
21a、21b 円形凹部
22 第二中間素材
23 第三中間素材

Claims (2)

  1. 軸方向一端面に開口すると共に、軸方向中間部に迄達する軸方向孔を中心部に、この軸方向孔の奥部と外周面とを連通させる径方向孔を軸方向中間部に、軸方向中間部の外周寄り部分に焼き入れ硬化層を、それぞれ有し、両端部を遊星歯車式変速機を構成するキャリアに支持固定し、この焼き入れ硬化層を設けた部分の周囲に遊星歯車を回転自在に支持する遊星歯車用支持軸に於いて、軸方向長さが20〜80mmであり、外径が10mm以下であり、上記軸方向孔及び上記径方向孔の内径が1mm以上であり、外周面とこの軸方向孔の内周面との径方向距離が3mm以下であり、上記焼き入れ硬化層の径方向厚さが0.4〜2.0mmであり、この焼き入れ硬化層よりも径方向内側部分である芯部の残留オーステナイト量が0〜3容量%であり、この焼き入れ硬化層の残留オーステナイト量が15〜50容量%である事を特徴とする遊星歯車用支持軸。
  2. 軸方向一端面に開口すると共に、軸方向中間部に迄達する軸方向孔を中心部に、この軸方向孔の奥部と外周面とを連通させる径方向孔を軸方向中間部に、軸方向中間部の外周寄り部分に焼き入れ硬化層を、それぞれ有し、両端部を遊星歯車式変速機を構成するキャリアに支持固定し、この焼き入れ硬化層を設けた部分の周囲に遊星歯車を回転自在に支持する遊星歯車用支持軸を造る為に、上記焼き入れ硬化層を形成してから上記軸方向孔を形成する事を特徴とする遊星歯車用支持軸の製造方法。
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