JP2006334618A - 微細凹部加工装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】被加工物の円周面に対して精度良好に微細凹部を形成することができる微細凹部加工装置を提供する。
【解決手段】凸部を有するフォームローラ16と、ローラ支持部材14と、ローラ支持部材14を保持する工具ホルダ10と、ローラ圧接手段である圧縮コイルばね13と、円周面に沿ってフォームローラ16を転動させる主軸3と、フォームローラ16のローラ軸回りの回転位相を検出するロータリエンコーダ23を備え、予め測定したフォームローラ16の各凸部の先端部面積とフォームローラ16のローラ軸15回りの回転位相に基づいて、フォームローラ16の圧接荷重を増減させる制御を行うことにより、各凸部の先端部面積にばらつきがある場合でも微細凹部の深さを均一にする。
【選択図】 図1
【解決手段】凸部を有するフォームローラ16と、ローラ支持部材14と、ローラ支持部材14を保持する工具ホルダ10と、ローラ圧接手段である圧縮コイルばね13と、円周面に沿ってフォームローラ16を転動させる主軸3と、フォームローラ16のローラ軸回りの回転位相を検出するロータリエンコーダ23を備え、予め測定したフォームローラ16の各凸部の先端部面積とフォームローラ16のローラ軸15回りの回転位相に基づいて、フォームローラ16の圧接荷重を増減させる制御を行うことにより、各凸部の先端部面積にばらつきがある場合でも微細凹部の深さを均一にする。
【選択図】 図1
Description
本発明は、例えば、自動車用エンジンにおけるシリンダブロックのシリンダボアの内周面や、カムシャフトのジャーナル部の外周面などのように摺動接触を伴う被加工物の円周面に、低フリクション化を実現するための微細凹部(油だまり)を形成するのに用いられる微細凹部加工装置に関するものである。
従来、被加工物の円周面に微細凹部を形成する場合には、ショットブラストが多く採用されていた。このショットブラストでは、円周面に所定形状の透孔を有するマスキングシートを貼り付けた後、セラミックス等の小径粒子を円周面に向けて圧縮空気とともに投射することで、円周面の透孔を通して露出している部分に微細凹部を形成するようにしている。
そして、微細凹部を形成した後は、マスキングシートを取り外して洗浄するのに続いて、再びホーニングを行うことにより、上記ショットブラスト加工で微細凹部の周囲に生じた盛上り部分を除去するようにしている。
特開2002−307310
しかしながら、上記したようなショットブラストによる微細凹部の形成にあっては、微細凹部を規則的に配置することが困難であり、加えて、円周面に対するマスキングシートの貼り付け工程及び取り外し工程、並びに洗浄工程が不可欠であって、このような作業が多い分だけ加工コストが嵩むという問題があり、これらの問題を解決することが従来の課題となっていた。
本発明は、上記従来の課題に着目して成されたものであって、被加工物の円周面に対して精度良好に微細凹部を形成することができると共に、加工コストの低減を実現することが可能である微細凹部加工装置を提供することを目的としている。
本発明の微細凹部加工装置は、被加工物の円周面に微細凹部を形成する装置である。この微細凹部加工装置は、外周部に凹部形成用の凸部を有するフォームローラと、フォームローラを回転可能に支持するローラ支持部材と、円周面の中心線とフォームローラのローラ軸とが平行になる状態にローラ支持部材を保持する工具ホルダと、工具ホルダに設けられ且つフォームローラを円周面に圧接させるローラ圧接手段と、円周面の中心線回りに被加工物と工具ホルダを相対的に回転させることにより円周面に沿ってフォームローラを転動させる回転駆動手段と、フォームローラのローラ軸回りの回転位相を検出する回転位相検出手段を備えている。
そして、微細凹部加工装置は、予め測定したフォームローラの各凸部の先端部面積とフォームローラのローラ軸回りの回転位相に基づいて、ローラ圧接手段によるフォームローラの圧接荷重を増減させる制御を行うことを特徴としている。
より具体的には、微細凹部加工装置では、フォームローラの直径や凸部の数が一定であるから、フォームローラのローラ軸回りの回転位相を検出すると、円周面に圧接する凸部を特定することができる。そこで、円周面に圧接する凸部の先端部面積の大きさに応じてフォームローラの圧接荷重を増減させるようにし、先端部面積が大きい場合にはフォームローラの圧接荷重を増大させると共に、先端部面積が小さい場合にはフォームローラの圧接荷重を減少させる制御を行うこととなる。
本発明の微細凹部加工方法は、上記の微細凹部加工装置を用いて、被加工物の円周面に微差凹部を形成するに際し、フォームローラの各凸部の先端部面積を測定した後、被加工物の円周面にフォームローラを圧接させた状態にして、円周面の中心線回りに被加工物と工具ホルダを相対的に回転させることにより、円周面に沿ってフォームローラを転動させて同円周面に微細凹部を形成する。
そして、上記の如く微細凹部を形成する間に、フォームローラのローラ軸回りの回転位相を検出して円周面に圧接する凸部を特定すると共に、その凸部の先端部面積の大きさに応じてフォームローラの圧接荷重を増減させる制御、具体的には、先端部面積が大きい場合にはフォームローラの圧接荷重を増大させると共に、先端部面積が小さい場合にはフォームローラの圧接荷重を減少させる制御を行うことを特徴としている。
本発明の微細凹部加工装置によれば、従来のような使い捨てのマスキングシートを用いずにフォームローラによる機械加工を行うことから、被加工物の円周面に高精度の微細凹部を高効率で形成することができると共に、生産性の向上や製造コストの低減を実現することができる。
また、本発明の微細凹部加工装置によれば、予め測定したフォームローラの各凸部の先端部面積とフォームローラのローラ軸回りの回転位相に基づいて、ローラ圧接手段によるフォームローラの圧接荷重を増減させる制御を行うことから、各凸部の先端部面積にばらつきがある場合でも、圧接荷重の増減によって面圧が一定になるようにし、これにより微細凹部の深さを均一にすることができる。
本発明の微細凹部加工方法によれば、従来のような使い捨てのマスキングシートを用いずにフォームローラによる機械加工を行うことから、被加工物の円周面に高精度の微細凹部を高効率で形成することができると共に、生産性の向上や製造コストの低減を図ることができ、また、各凸部の先端部面積にばらつきがある場合でも、圧接荷重の増減によって面圧を一定にして、微細凹部の深さを均一にすることができる。
図1〜図6は、本発明の微細凹部加工装置の一実施例を説明する図である。
図2に示す微細凹部加工装置1は、自動車用エンジンのシリンダブロック(CB)を被加工物とし、被加工物の円周面すなわち円形穴であるシリンダボア(B)の内周面(Ba)に微細凹部を形成するNC工作機械であって、鉛直方向に移動可能な主軸ヘッド2と、主軸ヘッド2に下向きに突出した状態で支持される主軸3と、主軸ヘッド2の下側において水平面内で互いに直交する二軸方向に移動可能な被加工物載置用のテーブル4と、主軸3に同軸に装着されて一体で回転する工具ホルダ10を備えており、図示しない自動工具交換装置により、主軸3に対して工具ホルダ10の着脱を行うようになっている。
工具ホルダ10は、図1に示すように、主軸3に装着する部位であるシャンク部10Aと、その下側に連続するボディ部10Bを有すると共に、ボディ部10Bの下側に、アダプタ10Cを介してハウジング10Dを備え、このハウジング10Dに、スプラインナット11及びスプラインシャフト12と、圧縮コイルばね13を介してローラ支持部材14が設けてあると共に、ローラ支持部材14に、ローラ軸15を介してフォームローラ16が回転可能に設けてある。
アダプタ10Cは、例えば図示しないステッピングモータを駆動源とした移動機構を内蔵しており、この移動機構の作動により、シリンダブロックCBのシリンダボアBの内周面Baに対してハウジング10D、ローラ支持部材14及びフォームローラ16を一体的に近接離間させる。
ハウジング10Dは、中空のブロック状を成すものであって、下端側には、軸線方向を水平にしたスプラインナット11を備え、このスプラインナット11と、ローラ支持部材14に連結したスプラインシャフト12とを互いにスプライン結合して、ローラ支持部材14を主軸3と直交する方向に移動自在に保持している。
スプラインシャフト12には、ローラ支持部材14と反対側の端部に、スプラインシャフト12よりも大径の止め具17が固定してある。止め具17は、圧縮コイルばね13の伸びを抑えると共に、圧縮コイルばね13が伸びきった際の衝撃を緩和し、また、ハウジング10Dからローラ支持部材14が脱落するのを阻止する。
圧縮コイルばね13は、工具ホルダ10側であるハウジング10Dからローラ支持部材14に荷重を付与してフォームローラ16をシリンダボアBの内周面Baに圧接させるローラ圧接手段であり、ハウジング10Dに固定したキャップ18と圧縮コイルばね13との間には、内周面Baに対するフォームローラ16の圧接荷重を検出する荷重検出手段としての圧電型のロードセル19が設けてある。
また、圧縮コイルばね13とロードセル19の間には、圧縮コイルばね13に予圧を与える調整駒20が設けてあり、この調整駒20の長さ(圧縮コイルばねの伸縮方向の長さ)を選択することで、予圧力を調整することができる。なお、ロードセル19は、調整駒209との接触部を球面状の突部としており、これにより、圧縮コイルばね13の伸縮方向に対する倒れを吸収することができる。
このように、この実施例では、ハウジング10Dに、ローラ圧接手段である圧縮コイルばね13、及び荷重検出手段であるロードセル19がコンパクトに内蔵してあり、当該装置の構造の簡素化や小型化に貢献し得るものとなっている。
フォームローラ16は、図5にも示すように、外周部に凹部形成用の凸部16Aが一定間隔で設けてあり、シリンダボアBの直径よりも小さい直径を有する。フォームローラ16は、材料がとくに限定されるものではないが、例えば、超硬、超硬以外の硬質金属やアルミナ、窒化珪素等のセラミックスなどから成るものであって、高い強度と靭性を有しており、被加工物が焼入れ鋼などの高硬度材料であっても微細凹部を形成することができる。凸部16Aの高さは例えば100μm程度であり、被加工物に数μm若しくは数十μm程度の微細凹部を形成する。
フォームローラ16のローラ軸15は、ローラ支持部材14に、組合せアンギュラ玉軸受21及び止めねじ22を介装して回転自在に設けてあると共に、ローラ支持部材14との間に、フォームローラ16のローラ軸15回りの回転位相を検出する回転位相検出手段として、ロータリエンコーダ23が設けてある。
ここで、微細凹部加工装置1は、微細凹部の加工対象となる円周面が、シリンダブロックCBにおけるシリンダボアBの内周面Baであるから、その内周面Baの中心線L1と主軸3及び工具ホルダ10の回転中心線L2とが一致するように、シリンダボアBに対して工具ホルダ10を配置すると共に、この状態で、アダプタ10C、ハウジング10D、ローラ支持部材14及びフォームローラ16がシリンダボアBの内側に対して挿脱可能である。
また、微細凹部加工装置1は、内周面Baの中心線L1とフォームローラ16のローラ軸15とが平行であると共に、工具ホルダ10の回転中心線L2に対してローラ軸15がオフセットされた位置にある。
この実施例では、主軸3が、回転駆動手段すなわち被加工物であるシリンダブロックCBと工具ホルダ10をシリンダボアBの内周面Baの中心線L1回りに相対的に回転させることにより内周面Baに圧接させたフォームローラ16を同内周面Baに沿って転動させる手段に相当し、ここでは工具ホルダ10を回転駆動する。
また、この実施例では、主軸ヘッド2が、軸方向移動手段すなわち被加工物であるシリンダブロックCBと工具ホルダ10をシリンダボアBの内周面Baの中心線L1に沿う方向に相対的に移動させる手段に相当し、ここでは工具ホルダ10を昇降駆動する。
さらに、この実施例では、アダプタ10Cが、ローラ圧接手段に含まれる径方向移動手段すなわち被加工物であるシリンダブロックCBと工具ホルダ10をシリンダボアBの内周面Baに対してフォームローラ16が近接離間する方向に相対的に移動させる手段に相当し、ここではフォームローラ16を径方向に駆動する。
そして、微細凹部加工装置1は、後述する微細凹部の形成の際に、予め測定したフォームローラ16の各凸部16Aの先端部面積と、フォームローラ16のローラ軸15回りの回転位相に基づいて、圧縮コイルばね(ローラ圧接手段)13によるフォームローラ16の圧接荷重を増減させる制御を行うものとしている。
上記のような制御を行う理由は、フォームローラ16の各凸部16Aには、とくに円周方向の寸法(長さL)にばらつきが生じることがあり、これにより先端部面積にばらつきが生じると、以下に説明するように微細凹部の深さが不均一になるからである。
図3は、微細凹部を形成する試験装置を説明する図である。この試験装置は、ロックウェル式硬度測定器を用いて、超硬圧子101をアルミニウム合金製の板材102に圧接させることにより、板材102の表面に微細凹部を形成するものであり、この超硬圧子101の先端部の大きさ(長さL×幅)は一例として0.32mm×0.08mmである。
また、図4は、上記の装置を用いて微細凹部を形成した際に、超硬圧子101の先端部に生じる面圧と微細凹部の深さとの関係を示すグラフであって、当然のことながら面圧の増大に伴って微細凹部の深さも増大する。
さらに、長さの相違により先端部面積が異なる超硬圧子101をいくつか用意し、板材102に対する超硬圧子101の圧接荷重(押付け荷重)を一定にして微細凹部を形成し、夫々の形成時の面圧と微細凹部の深さを測定した。その結果を表1に示す。
表1から明らかなように、板材102に対する超硬圧子101の圧接荷重(押付け荷重)が一定である場合、超硬圧子101の先端部の面積(長さL)が増大すると、面圧が低下して微細凹部の深さが減少することがわかる。
したがって、フォームローラ16の各凸部16Aの先端部面積にばらつきがあると、圧接荷重を一定とした場合、先端部面積が大きい凸部16では、面圧が小さくなって微細凹部の深さが小さくなり、先端部面積が小さい凸部16では、面圧が大きくなって微細凹部の深さが大きくなる。
なお、フォームローラ16の圧接荷重を一定としたうえで、微細凹部の深さの均一化を図るためには、各凸部16Aの先端部面積(長さL)が等しくなるようにフォームローラ16を製造し、これにより面圧を一定にすることも当然考えられるが、この場合にはフォームローラ16の製造管理が非常に厳しいものとなる。また、フォームローラ16の凸部16Aには、加工によって摩耗や欠損が生じることがあるので、先端部面積のばらつきを避けることが難しい。
そこで、微細凹部加工装置1及び加工方法では、各凸部16Aの先端部面積のばらつきによって生じる微細凹部の深さの誤差を装置側で吸収し得るものとしており、以下に説明する微細凹部の形成に先立って、フォームローラ16の各凸部16Aの先端部の面積と、任意の凸部を原位置とする各凸部の位置(角度)を求めるようにしている。
その後、微細凹部加工装置1及び加工方法では、シリンダボアBの中心線L1と工具ホルダ10の中心線L2とを一致させた状態にし、主軸ヘッド2を下降させてシリンダボアB内にフォームローラ16を進入させた後、アダプタ10C内の移動機構を作動させて、シリンダボアBの内周面Baに対してフォームローラ16を接触させ、ロードセル19により検出した荷重が予め設定した値になるまでアダプタ10C内の移動機構の作動を継続させる。
つまり、シリンダボアBの内周面Baにフォームローラ16が接触した後、アダプタ10C内の移動機構の作動を継続させると、ローラ支持部材14とハウジング10Dとの間で圧縮コイルばね13が圧縮され、その反発力が荷重としてフォームローラ16に付与されると共に、ロードセル19によりこの荷重が検出されることから、このロードセル19の検出荷重が設定値になるまでアダプタ10C内の移動機構の作動を継続させれば、フォームローラ16がシリンダボアBの内周面Baに所定荷重で圧接することとなり、これにより微細凹部の深さも決まる。
こののち、微細凹部加工装置1は、主軸3により工具ホルダ10を回転駆動すると、シリンダボアBの内周面Baに圧接しているフォームローラ16が転動して同内周面Baにディンプル状の微細凹部を形成することとなり、これと同時に主軸ヘッド2を下降させることで、シリンダボアBの内周面Baに対して螺旋状の軌跡に沿って微細凹部を連続的に形成する。
このとき、微細凹部加工装置1及び加工方法では、ロードセル19の検出結果を用いてアダプタ10Cをフィードバック制御することで、圧縮コイルばね13によるフォームローラ6の圧接荷重を一定にすることができるが、各凸部16Aの先端部面積にばらつきがあると、先述したように面圧が変化して微細凹部の深さが不均一になる。
そこで、予め測定したフォームローラ16の各凸部16Aの先端部面積と、フォームローラ16のローラ軸15回りの回転位相に基づいて、圧縮コイルばね(ローラ圧接手段)13によるフォームローラ16の圧接荷重を増減させる制御を併用する。
微細凹部加工装置1及び加工方法では、予め各凸部16Aの先端部面積と夫々の位置が求めてあり、ロータリエンコーダ23によってフォームローラ16のローラ軸15回りの回転位相を検出しているので、シリンダボアBの内周面Baに圧接する凸部16Aを特定することができ、その凸部16Aの先端部面積を判断し得る。
そして、内周面Baに圧接する凸部16Aの先端部面積が大きい場合には、アダプタ10Cによりフォームローラ16を前進させて圧接荷重を増大させ、これにより面圧を増大させて微細凹部の深さが大きくなるようにし、逆に、同凸部16Aの先端部面積が小さい場合には、アダプタ10Cによりフォームローラ16を後退させて圧接荷重を減少させ、これにより面圧を減少させて微細凹部の深さが小さくなるようにする。
すなわち、全体としては、図6に示すように、フォームローラ16の回転位相における各凸部16Aの先端部面積(長さL)の変化、すなわち先端部面積のばらつきに対して、フォームローラ16の圧接荷重(押付け荷重)がほぼ一致するように制御する。これにより、各凸部16Aの先端部面積の大小に係わらず面圧がほぼ一定になり、結果として微細凹部の深さが均一になる。
このように、微細凹部加工装置1及び加工方法では、フォームローラ16を用いた機械加工を行うことから、シリンダボアBの内周面Baに高精度な微細凹部を高効率で形成することができ、使い捨てのマスキングシートを用いてショットブラスト行う従来の微細凹部加工に比べて、生産性の向上や製造コストの低減を実現することができる。
また、微細凹部加工装置1及び加工方法では、予め測定したフォームローラ16の各凸部16Aの先端部面積とフォームローラ16のローラ軸15回りの回転位相に基づいて、圧縮コイルばね13によるフォームローラ16の圧接荷重を増減させる制御を行うことから、各凸部16Aの先端部面積(長さL)にばらつきがある場合でも、微細凹部の深さを均一にすることができる。
さらに、微細凹部加工装置1は、ローラ圧接手段として圧縮コイルばね13を採用しているので、装置構造を簡略化することができると共に、簡単な構造でありながらフォームローラ16に充分な荷重を付与することができ、また、荷重検出手段としてロードセル19を採用したことにより、簡単な構造で圧接荷重を正確に検出することができる。
さらに、上記の微細凹部加工装置1及び加工方法では、加工中において、内周面Baに対するフォームローラ16の圧接荷重をロードセル17によって常時検出し得るので、上記したように、フォームローラ16の圧接荷重を均一にする基本制御を行いつつ各凸部16Aの先端部面積の大きさに応じて圧接荷重を変化させるだけでなく、フォームローラ16の圧接荷重を任意に変化させて微細凹部の深さを部分的に異ならせることもでき、この場合には、各凸部16Aの先端部面積のばらつきに左右されることなく、各部位に所定の深さの微細凹部を形成し得ることとなる。
上記の微細凹部加工装置1を用いて微細凹部の加工が施されたシリンダブロックCBは、シリンダボアBの内周面Baに、深さが均一な高精度の微細凹部が規則的に形成され、ピストンとの摺動接触においてこれらの微細凹部が油だまりとして有効に機能し、エンジンの性能向上に貢献し得るものとなる。
図7は、本発明の微細凹部加工装置の他の実施例を説明する図である。なお、先の実施例と同一の構成部位は、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
図示の微細凹部加工装置は、ローラ支持部材34が、フォームローラ16を回転駆動するモータを内蔵していると共に、このモータの回転を検出することでフォームローラ16のローラ軸15回りの回転位相を検出するロータリエンコーダ(回転位相検出手段)23を備えている。
また、微細凹部加工装置は、加工待機位置の工具ホルダ10に対して、フォームローラ16の凸部の先端部面積を測定する面積測定手段を備えている。この面積測定手段は、フォームローラ16の凸部の先端部を撮像するCCDカメラ41と、CCDカメラ41からの画像に基づいてフォームローラ16の凸部の先端部面積を演算する演算処理装置42を備えている。
上記の微細凹部加工装置は、微細凹部を形成する際に、工具ホルダ10の回転によりフォームローラ16を転動させると同時に、工具ホルダ10の回転方向と逆方向にフォームローラ16を回転駆動することで、被加工物とフォームローラ16との間に滑りを生じさせることなく微細凹部を形成することができる。
そして、上記の如く微細凹部を形成する間に、演算処理装置42から出力された先端部面積のデータに基づいて、アダプタ10Cを駆動することによって圧縮コイルばね13によるフォームローラ16の圧接荷重を増減する制御を行うこととなり、これにより、先の実施例と同様に、フォームローラ16の各凸部の先端部面積にばらつきがある場合でも、夫々の面圧をほぼ一定にして微細凹部の深さを均一にすることができる。
また、上記の微細凹部加工装置は、次の被加工物に加工を行う際に、面積測定手段によってフォームローラ16の凸部の先端部を再度撮像し、必要に応じて、各凸部の先端部面積のデータを更新する。
つまり、微細凹部加工装置では、フォームローラ6の凸部に、加工による摩耗や欠損が生じ、これにより各凸部の先端部面積にばらつきが生じることがあるので、新な加工を行う度に各凸部の先端部面積のデータを求めることで、摩耗や欠損による先端部面積のばらつきに左右されることなく、常に各凸部の面圧をほぼ一定にして微細凹部の深さを均一にすることができる。
図8は、本発明の微細凹部加工装置の他の実施例を説明する図である。なお、先の実施例と同一の構成部位は、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
図示の微細凹部加工装置51は、概略棒状を成す被加工物Wの円周面すなわち円柱部Aの外周面に微細凹部を形成する装置であって、テーブル52上に、チャッキング装置53を有する主軸台54と、スライド55により主軸台54に対して進退可能な心押し台56を相対向する配置で備えており、主軸台54のチャッキング装置53で被加工物Wの一端部を把持すると共に、心押し台56で被加工物Wの他端部を回転自在に保持する。これにより、被加工物Wは、中心線を水平方向(X方向)にした状態で保持され、主軸台54を駆動することで中心線回りの回転が与えられる。
また、微細凹部加工装置51は、主軸台54や心押し台56の上位側に、垂直方向(Z方向)及び水平方向(X方向)に移動可能な工具ヘッド57を備えており、この工具ヘッド57に工具ホルダ60が取り付けてある。
工具ホルダ60は、円筒形状を成すと共に、中心線を垂直方向にした状態で工具ヘッド57に取り付けてあり、上端部に閉塞部材61が嵌合固定してあると共に、下端側の内側に円筒形状のスライダ62が固定してある。
スライダ62の内側には、ローラ支持部材63を構成するロッド63Aが垂直方向に摺動自在に挿設してあり、このロッド63Aの下端部には、同じくローラ支持部材63を構成するリテーナ63Bが連結してあり、このリテーナ63Bにローラ軸15を介してフォームローラ16が回転自在に設けてある。この際、ローラ軸15とその下位側で保持された被加工物Wの中心線は互いに平行となる。
工具ホルダ60において、ロッド63Aの上端部には、当該ロッド63Aの下降位置を規制するストッパを兼ねるばね座64が固定してあり、このばね座64と閉塞部材61の間に圧縮コイルばね65が設けてある。また、圧縮コイルばね65の上部には、受圧部材66が設けてあり、この受圧部材66と閉塞部材61との間には、圧縮コイルばね65による発生荷重を検出する圧電型のロードセル19が設けてある。
この実施例では、圧縮コイルばね65が、工具ホルダ40に設けられ且つフォームローラ16を円柱部Aの外周面に圧接させるローラ圧接手段に相当し、ロードセル19が、圧縮コイルばね(ローラ圧接手段)65によるフォームローラ16の圧接荷重を検出する荷重検出手段に相当する。
さらに、この実施例では、主軸台54及び心押し台56が、円柱部Aの外周面の中心線回りに被加工物Wと工具ホルダ60を相対的に回転させることにより同外周面に沿ってフォームローラ16を転動させる回転駆動手段に相当し、ここでは被加工物Wを回転駆動する。
さらに、この実施例では、工具ヘッド57が、被加工物Wと工具ホルダ60を外周面の中心線に沿う方向に相対的に移動させる軸方向移動手段に相当し、ここでは工具ホルダ60を移動させる。
さらに、この実施例では、工具ヘッド57が、円柱部Aの半径方向に被加工物Wと工具ホルダ60を相対的に移動させる径方向移動手段に相当し、ここでは工具ホルダ60を移動させる。この径方向移動手段はローラ圧接手段に含まれるもので、径方向移動手段を採用することにより、直径の異なる円柱部Aにも容易に対処し得るものとなる。
さらに、微細凹部加工装置51は、フォームローラ16のローラ軸15回りの回転位相を検出する回転位相検出手段として、主軸台54に、ロータリエンコーダ23を備えている。すなわち、この実施例では、一加工において、フォームローラ16や円柱部Aの直径は一定であるから、主軸台34の主軸の回転をロータリエンコーダ19で検出することにより、フォームローラ16のローラ軸15回りの回転位相を間接的に検出する。
上記構成を備えた微細凹部加工装置51は、予めフォームローラ16の各凸部の先端部面積と夫々の位置(角度)を測定し、主軸台54及び心押し台56により被加工物Wを保持した後、工具ヘッド57によりフォームローラ16を円柱部Aに向けて前進(下降)させ、フォームローラ16が円柱部Aに当接した後には、圧縮コイルばね65を圧縮し、その反発力を円柱部Aの外周面に対するフォームローラ16の圧接荷重として付与する。
また、ロードセル19で検出した荷重が所定値になったところで、工具ヘッド57によるフォームローラ16の前進を停止し、その後、主軸台54により被加工物Wを中心線回りに定速回転させることにより、フォームローラ16を転動させると共に、工具ヘッド57で工具ホルダ60を被加工物Wの中心線に沿う方向(X方向)に移動させることにより、円柱部Aの外周面に対して螺旋状の軌跡で微細凹部を連続的に形成する。
そして、微細凹部加工装置51は、上記の如く微細凹部を形成する間に、先の実施例と同様に、フォームローラ16のローラ軸15回りの回転位相を検出して円柱部Aの外周面に圧接する凸部を特定すると共に、その凸部の先端部面積の大きさに応じてフォームローラ16の圧接荷重を増減させる制御を行うこととなり、これにより、フォームローラ16の各凸部の先端部面積にばらつきがある場合でも、夫々の面圧をほぼ一定にして微細凹部の深さを均一にすることができる。
なお、本発明に係わる微細凹部加工装置は、その構成が上記各実施例に限定されるものではなく、構成の細部を適宜変更することができる。
また、凸部16Aの先端部面積に関して所定範囲のしきい値を設定し、そのしきい値から外れている凸部16Aのみに対してフォームローラ16の圧接荷重の制御を行うこともできるが、上記各実施例のように各凸部16Aの先端部面積の大きさに応じて圧接荷重の制御を行えば、微細凹部の深さのさらなる均一化を実現し得る。
さらに、径方向駆動手段を含むローラ圧接手段としては、例えば、油圧等によってフォームローラ16の径方向に変形する弾性変形部を備えたものや、伸縮駆動されるアクチュエータ類を用いることができ、例えばアクチュエータ類を用いれば、フォームローラ16の圧接荷重をより自在に変化させることができる。
さらに、被加工物としては、自動車用エンジンのクランクシャフト、カムシャフト及びバランサシャフト(サイレントシャフト)などが挙げられる。
被加工物がクランクシャフトである場合には、クランクジャーナルの外周面やクランクピンの外周面に微細凹部を形成し、被加工物がカムシャフトである場合には、カムジャーナルの外周面やカムロブの外周面に微細凹部を形成し、また、被加工物がバランサシャフトである場合には、同じくジャーナルの外周面に微細凹部を形成することとなり、いずれの場合においても、円周面の直径の大小にかかわらずほぼ同一のパターンで微細凹部が形成されることとなり、微細凹部が油だまりとして機能して各部品の回転性能や摺動性能を高めることができ、ひいてはエンジンの性能向上に貢献し得るものとなる。
A 円柱部
B シリンダボア(円形穴)
Ba シリンダボアの内周面(円周面)
CB シリンダブロック(被加工物)
W 被加工物
1 51 微細凹部加工装置
2 主軸ヘッド(軸方向移動手段)
3 主軸(回転駆動手段)
10 60 工具ホルダ
10C アダプタ(径方向移動手段)
13 圧縮コイルばね(ローラ圧接手段)
14 34 ローラ支持部材
15 ローラ軸
16 フォームローラ
16A 凸部
19 ロードセル(荷重検出手段)
23 ロータリエンコーダ(回転位相検出手段)
41 CCDカメラ(面積測定手段)
42 演算処理装置(面積測定手段)
54 主軸台(回転駆動手段)
56 心押し台(回転駆動手段)
57 工具ヘッド(径方向移動手段:軸方向移動手段)
B シリンダボア(円形穴)
Ba シリンダボアの内周面(円周面)
CB シリンダブロック(被加工物)
W 被加工物
1 51 微細凹部加工装置
2 主軸ヘッド(軸方向移動手段)
3 主軸(回転駆動手段)
10 60 工具ホルダ
10C アダプタ(径方向移動手段)
13 圧縮コイルばね(ローラ圧接手段)
14 34 ローラ支持部材
15 ローラ軸
16 フォームローラ
16A 凸部
19 ロードセル(荷重検出手段)
23 ロータリエンコーダ(回転位相検出手段)
41 CCDカメラ(面積測定手段)
42 演算処理装置(面積測定手段)
54 主軸台(回転駆動手段)
56 心押し台(回転駆動手段)
57 工具ヘッド(径方向移動手段:軸方向移動手段)
Claims (17)
- 被加工物の円周面に微細凹部を形成する微細凹部加工装置であって、外周部に凹部形成用の凸部を有するフォームローラと、フォームローラを回転可能に支持するローラ支持部材と、円周面の中心線とフォームローラのローラ軸とが平行になる状態にローラ支持部材を保持する工具ホルダと、工具ホルダに設けられ且つフォームローラを円周面に圧接させるローラ圧接手段と、円周面の中心線回りに被加工物と工具ホルダを相対的に回転させることにより円周面に沿ってフォームローラを転動させる回転駆動手段と、フォームローラのローラ軸回りの回転位相を検出する回転位相検出手段を備え、予め測定したフォームローラの各凸部の先端部面積とフォームローラのローラ軸回りの回転位相に基づいて、ローラ圧接手段によるフォームローラの圧接荷重を増減させる制御を行うことを特徴とする微細凹部加工装置。
- 回転位相検出手段が、ローラ軸に設けたロータリエンコーダであることを特徴とする請求項1に記載の微細凹部加工装置。
- 円周面の中心線に沿う方向に被加工物と工具ホルダを相対的に移動させる軸方向移動手段を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の微細凹部加工装置。
- ローラ圧接手段が、被加工物の円周面に対してフォームローラを近接離間する方向に移動させる径方向移動手段を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の微細凹部加工装置。
- ローラ圧接手段が、ばねであることを特徴とする請求項1〜4に記載の微細凹部加工装置。
- ローラ圧接手段が、伸縮駆動するアクチュエータであることを特徴とする請求項8に記載の微細凹部加工装置。
- ローラ圧接手段によるフォームローラの圧接荷重を検出する荷重検出手段を備えたことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の微細凹部加工装置。
- 荷重検出手段が、ロードセルであることを特徴とする請求項7に記載の微細凹部加工装置。
- フォームローラの凸部の先端部面積を測定する面積測定手段を備えたことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の微細凹部加工装置。
- 面積測定手段が、フォームローラの凸部の先端部を撮像するCCDカメラと、CCDカメラからの画像に基づいてフォームローラの凸部の先端部面積を演算する演算処理装置を備えていることを特徴とする請求項9に記載の微細凹部加工装置。
- 請求項1〜10のいずれかに記載の微細凹部加工装置を用いて、被加工物の円周面に微差凹部を形成するに際し、フォームローラの各凸部の先端部面積を測定した後、被加工物の円周面にフォームローラを圧接させた状態にして、円周面の中心線回りに被加工物と工具ホルダを相対的に回転させることにより、円周面に沿ってフォームローラを転動させて同円周面に微細凹部を形成し、この間、フォームローラのローラ軸回りの回転位相を検出して円周面に圧接する凸部を特定すると共に、その凸部の先端部面積の大きさに応じてフォームローラの圧接荷重を増減させる制御を行うことを特徴とする微細凹部加工方法。
- 円周面の中心線に沿う方向に被加工物と工具ホルダを相対的に移動させることを特徴とする請求項11に記載の微細凹部加工装置。
- 請求項1〜10のいずれかに記載の微細凹部加工装置を用いて、シリンダボアの内周面に微細凹部を形成したことを特徴とするエンジンのシリンダブロック。
- 請求項1〜10のいずれかに記載の微細凹部加工装置を用いて、クランクジャーナルの外周面に微細凹部を形成したことを特徴とするエンジンのクランクシャフト。
- 請求項1〜10のいずれかに記載の微細凹部加工装置を用いて、クランクピンの外周面に微細凹部を形成したことを特徴とするエンジンのクランクシャフト。
- 請求項1〜10のいずれかに記載の微細凹部加工装置を用いて、カムジャーナルの外周面に微細凹部を形成したことを特徴とするエンジンのカムシャフト。
- 請求項1〜10のいずれかに記載の微細凹部加工装置を用いて、カムロブの外周面に微細凹部を形成したことを特徴とするエンジンのカムシャフト。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2005160836A JP2006334618A (ja) | 2005-06-01 | 2005-06-01 | 微細凹部加工装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2005160836A JP2006334618A (ja) | 2005-06-01 | 2005-06-01 | 微細凹部加工装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2006334618A true JP2006334618A (ja) | 2006-12-14 |
Family
ID=37555600
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2005160836A Pending JP2006334618A (ja) | 2005-06-01 | 2005-06-01 | 微細凹部加工装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2006334618A (ja) |
-
2005
- 2005-06-01 JP JP2005160836A patent/JP2006334618A/ja active Pending
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