JP4737710B2 - 微細凹部加工装置及び微細凹部加工方法 - Google Patents

微細凹部加工装置及び微細凹部加工方法 Download PDF

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Description

本発明は、例えば、自動車用エンジンのシリンダブロックにおけるシリンダボア(円形孔)の内周面や、クランクジャーナル,クランクピン,カムジャーナルなどの部材の外周面に、低フリクション化を実現するための微細な凹部(油だまり)を形成するのに用いられる微細凹部加工装置及び微細凹部加工方法に関するものである。
従来、上記したようなシリンダブロックのシリンダボアの内周面に微細凹部を形成する場合には、ショットブラストが多く採用されている。このショットブラストでは、シリンダボアの内周面に所定形状の透孔を有するマスキングシートを貼り付けた後、セラミックス等の小径粒子をシリンダボアの内周面に向けて圧縮空気とともに投射することで、内周面の透孔を通して露出している部分に凹部を形成するようにしている。
そして、凹部を形成した後は、マスキングシートを取り外して洗浄するのに続いて、再びホーニングを行うことにより、上記ショットブラスト加工で凹部の周囲に生じた盛上り部分を除去するようにしている。
特開2002−307310
しかしながら、上記したようなショットブラストを用いた微細凹部の形成にあっては、微細な凹部を規則的に配置することが困難であり、加えて、円形孔の内周面に対するマスキングシートの貼り付け工程及び取り外し工程、並びに、洗浄工程が不可欠であって、このような作業が多い分だけ、加工コストが高くついてしまうという問題があり、これらの問題を解決することが従来の課題となっていた。
本発明は、上記した従来の課題に着目してなされたものであり、ワークの内周面又は外周面に対して精度良好に微細凹部を形成することができるのは勿論のこと、加工コストの低減を実現することが可能であり、加えて、微細凹部を形成する部位の塑性流動やスプリングバックを低減することができると共に、加工ローラに対する応力を緩和して加工ローラの長寿命化をも実現することが可能である微細凹部加工装置及び微細凹部加工方法を提供することを目的としている。
本発明の微細凹部加工装置は、ワークの内周面又は外周面に微細凹部を形成する微細凹部加工装置であって、外周面に微細な凹凸を具備してローラ軸周りに回転する加工ローラと、この加工ローラを上記ローラ軸と平行を成す中心軸に支持されるワークに接近離間させて加工ローラの外周面を上記ワークの内周面又は外周面に押し付け可能とした押圧機構と、微細凹部を形成すべき上記ワークの被加工部位を局所的に軟化させる軟化手段と、ワークの微細凹部が形成された位置及び軟化手段により軟化させた位置をそれぞれ測定する位置測定手段とを備えている。
また、本発明の微細凹部加工装置は、ワークの内周面又は外周面に微細凹部を形成する微細凹部加工装置であって、外周面に微細な凹凸を具備してローラ軸周りに回転する加工ローラと、この加工ローラを上記ローラ軸と平行を成す中心軸に支持されるワークに接近離間させて加工ローラの外周面を上記ワークの内周面又は外周面に押し付け可能とした押圧機構と、微細凹部を形成すべき上記ワークの被加工部位を局所的に軟化させる軟化手段と、ワークの微細凹部が不要な加工不要部位を急速冷却する冷却手段とを備えている。
上記の構成において、加工ローラはワークの円形孔内に挿入されて、その外周面の微細な凹凸を上記円形孔の内周面に押し付けつつワークの中心軸周りに旋回して加工を行うようにしてもよい。
さらに、加工ローラは中心軸周りに回転するワークの外周面に接近して、その外周面の微細な凹凸をワークの外周面に押し付けて加工を行うようにしてもよい。
さらにまた、軟化手段は指向性を有し、360°にわたって指向可能とした構成にしてもよく、軟化手段をレーザ照射器としてもよい。
本発明の微細凹部加工方法は、上記した微細凹部加工装置を用いてワークに微細凹部を形成するに際して、軟化手段により微細凹部を形成すべき上記ワークの被加工部位を局所的に軟化させつつ、押圧機構によって加工ローラの外周面を上記ワークの被加工部位に押し付けて微細凹部を形成している。
また、微細凹部を形成すべき上記ワークの被加工部位を予測し、軟化手段により上記ワークの被加工部位を局所的に軟化させた後、押圧機構によって加工ローラの外周面を上記ワークの軟化した被加工部位に押し付けて微細凹部を形成してもよい。
さらに、軟化手段によりワークの被加工部位を局所的に軟化させる場合に、軟化させる度合を場所毎に変化させ、形成すべき微細凹部の中央の溝底面部分を局所的に軟化させ、若しくは形成すべき微細凹部の両側の溝壁部分を局所的に軟化させるようにしてもよい。
本発明の微細凹部加工装置及び微細凹部加工方法では、押圧機構により加工ローラの外周面をワークの被加工部位に押し付けつつ(又は押し付ける前に)、レーザや超音波などの軟化手段を用いて微細凹部を形成すべきワークの被加工部位のみを局所的に軟化させるようになすと、加工ローラの外周面の微細な凹凸の転写性が向上することとなり、ワークの内周面又は外周面に対して精度良好に微細凹部を形成し得ることとなる。
また、微細凹部を形成する部位が軟化するので、塑性流動やスプリングバックが低減され、加えて、加工ローラに対する応力が緩和されるので、加工ローラの長寿命化が図られることとなる。
そして、押圧機構により加工ローラの外周面をワークの被加工部位に押し付けつつ、軟化手段を用いて微細凹部を形成すべきワークの被加工部位のみを局所的に軟化させる場合には、微細凹部を形成する加工位置と軟化させる位置とを高精度に合致させる得ることとなり、一方、押圧機構により加工ローラの外周面をワークの被加工部位に押し付ける前に、軟化手段を用いて微細凹部を形成すべきワークの被加工部位のみを局所的に軟化させる場合には、軟化させる部位の範囲を高精度に制御し得ることとなる。
本発明によれば、微細凹部を形成すべきワークの被加工部位の硬度を局所的に軟化させて加工することができるので、加工ローラの長寿命化及び加工コストの低減を実現したうえで、ワークの内周面又は外周面に対して精度良好に微細凹部を形成することが可能であり、加えて、微細凹部を形成する部位の塑性流動やスプリングバックを低減することができるという非常に優れた効果がもたらされる。
また、微細凹部が形成された位置と軟化手段により軟化させた位置との間にずれが生じた際に、迅速に修正し得ることとなる。
さらに、ワークの微細凹部が不要な加工不要部位を急速冷却する冷却手段を設けたときには、ワークの加工不要部位を急速冷却して高硬度化し得ることとなり、微細凹部を広範囲に形成する加工に適したものとなる。
本発明の微細凹部加工装置において、軟化手段は指向性を有し、360°にわたって指向可能とした構成とすることが可能であり、この場合には、微細凹部を形成すべきワークの被加工部位を的確に軟化させ得ることとなる。
また、本発明の微細凹部加工装置において、ワークの微細凹部が形成された位置及び軟化手段により軟化させた位置をそれぞれ測定するCCDやカメラなどの位置測定手段を備えている構成を採用することができ、この構成を採用すると、微細凹部が形成された位置と軟化手段により軟化させた位置との間にずれが生じた際に、迅速に修正し得ることとなる。
さらに、本発明の微細凹部加工装置において、ワークの微細凹部が不要な加工不要部位を急速冷却する冷却手段を備えている構成とすることができ、この場合には、ワークの内周面又は外周面の全面を軟化手段により一旦軟化させた後、ワークの加工不要部位を急速冷却して高硬度化し得ることとなり、微細凹部を広範囲に形成する加工に適したものとなる。
さらにまた、本発明の微細凹部加工装置において、軟化手段をレーザ照射器とした構成を採用することができ、この構成を採用すると、ワークに接触することなく被加工部位を局所的に軟化させ得ることとなる、すなわち、ワークにダメージを与えることなく被加工部位を局所的に軟化させ得ることとなる。
一方、本発明の微細凹部加工方法において、軟化手段によりワークの被加工部位を局所的に軟化させる場合に、軟化させる度合を場所毎に変化させる構成とすることができ、この構成を採用すると、図5に示すように、軟化させる度合を左から順に変化させて軟化度小(高硬度)の軟化被加工部位SL,軟化度中(中硬度)の軟化被加工部位SM及び軟化度大(低硬度)の軟化被加工部位SHとすることで、加工ローラ11に荷重Fを付与した場合において、隣接する微細凹部の深さd1,d2,d3をデジタル的に変えることができる、すなわち、微細凹部の深さの制御を高精度に行い得ることとなる。
また、本発明の微細凹部加工方法において、軟化手段によりワークの被加工部位を局所的に軟化させる場合に、図6に示すように、形成すべき微細凹部Tの中央の溝底面部分Tbを局所的に軟化させたり、図7に示すように、形成すべき微細凹部Tの両側の溝壁部分Twを局所的に軟化させたりする構成を採用することができ、微細凹部Tの中央の溝底面部分Tbを局所的に軟化させる場合には、この溝底面部分Tbを高精度に加工し得ることとなり、一方、微細凹部Tの両側の溝壁部分Twを局所的に軟化させる場合には、この溝壁部分Twを高精度に加工し得ることとなる。
そして、上記した微細凹部加工装置を用いて加工された微細凹部を円形孔の内周面に有するワーク、例えば、微細凹部をシリンダボアの内周面に有するエンジンのシリンダブロックは、ピストンが摺動するシリンダボアの内周面の摩擦が低いものとなり、その結果、燃費の向上に寄与し得ることとなる。
図11及び図12は、いずれも微細凹部をシリンダボアの内周面に有するエンジンのシリンダブロックSBを示しており、図11の拡大部分に示すように、シリンダボアBの内周面Baにおけるピストンの上死点Bu及び下死点Blの近傍に形成された微細凹部Tの深さdを両死点Bu,Bl間の工程中央部分Bmに形成された微細凹部の深さdよりも深くしたり、図12の拡大部分に示すように、シリンダボアBの内周面Baにおけるピストンのスカート部当接部位Bsに形成された微細凹部Tの深さdを上記スカート部当接部位Bs以外の部位に形成された微細凹部Tの深さdよりも深くしたりすることができ、いずれの場合も、摺動面であるシリンダボアBの内周面Baの摩擦が低いものとなり、その結果、燃費の向上に寄与し得ることとなる。
また、図13も微細凹部をシリンダボアの内周面に有するエンジンのシリンダブロックSBを示しており、図13の拡大部分に示すように、シリンダボアBの内周面Baに形成された微細凹部Tの深さdは、シリンダヘッドを固定するのに用いるボルト孔DからシリンダボアBの内周面Baまでの距離Xに比例して設定されている構成のシリンダブロックSBとすることができ、この場合にも、摺動面であるシリンダボアBの内周面Baの摩擦が低いものとなり、その結果、燃費の向上に寄与し得ることとなる。
一方、上記した微細凹部加工装置を用いて加工された微細凹部を外周面に有するワーク、例えば、クランクジャーナルやクランクピンやカムジャーナルやカムロブなどのエンジン用部材は、摺動面である外周面の摩擦が低いものとなり、その結果、燃費の向上に寄与し得ることとなる。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
図2に示すように、この微細凹部加工装置1は、自動車用エンジンのシリンダブロックの円形孔であるシリンダボアの内周面に微細凹部を形成するNC工作機械であって、鉛直方向に移動可能な主軸ヘッド2に下向きに突出した状態で支持される主軸3と、主軸ヘッド2の下方において水平面内で互いに直交する二軸方向に移動可能としたワーク載置用のテーブル4と、主軸3に同軸に装着されて一体で回転するホルダ10を備えており、ホルダ10の主軸3に対する着脱は、図示しない自動工具交換装置によりなされるようになっている。
上記ホルダ10は、図1に示すように、外周部に微細な凹凸を具備した加工ローラ11と、ローラ軸12を介してこの加工ローラ11を回転可能に支持するローラ支持部13と、このローラ支持部13を主軸3と直交する方向に移動可能に保持するハウジング14と、中心軸をホルダ10の回転軸Lに合致させたシリンダボアBの内周面Baに加工ローラ11を接近離間させてその外周面の微細な凹凸を押し付け可能とした押圧機構20と、微細凹部を形成すべきシリンダボアBの内周面Baの被加工部位を局所的に軟化させる軟化手段としてのレーザ照射器15を備えており、このレーザ照射器15は、ハウジング14の下端部にユニバーサルジョイント16を介して360°にわたって指向可能に取り付けてある。
上記押圧機構20は、ローラ支持部13とハウジング14との間に位置させた圧縮コイルばね21と、ハウジング14の上端に内蔵した図示しないステッピングモータを具備しており、この押圧機構20のステッピングモータの作動により、ハウジング14の全体をシリンダボアBの内周面Baに対して接近させて、圧縮コイルばね21により加工ローラ11に対して主軸3と直交する方向の荷重を付与することで、シリンダボアBの内周面Baに加工ローラ11の微細な凹凸を押し付けるようにしている。なお、ハウジング14と圧縮コイルばね21との間には、図示しない圧電型のロードセルが設けてある。
この場合、ハウジング14の上端部には、微細凹部が形成された位置及びレーザ照射器15により軟化させた位置をそれぞれ測定する位置測定手段としてのカメラ17がユニバーサルジョイント18を介して取り付けてある。
上記した微細凹部加工装置1において、シリンダボアBの内周面Baに微細凹部を形成するに際しては、まず、主軸1とシリンダボアBの中心軸とをほぼ一致させるように位置決めをして、主軸1とともにホルダ10を下降させ、シリンダボアBに対して加工ローラ11を挿入する。
次に、図2に実線で示すように、押圧機構20を作動させて、シリンダボアBの内周面Baに対して加工ローラ11を接触させ、ロードセルにより検出した荷重が予め設定した値になるまで押圧機構20の作動を継続させる。
つまり、シリンダボアBの内周面Baに加工ローラ11が接触した後、押圧機構20の作動を継続させると、ローラ支持部13とハウジング14との間で圧縮コイルばね21が圧縮され、その反発力が荷重として加工ローラ11に付与されると共に、図示しないロードセルによりこの荷重が検出されることから、このロードセルの検出荷重が設定値になるまで押圧機構20の作動を継続させれば、シリンダボアBの内周面Baを所定の荷重で加圧し得ることとなる。
そして、上記のように、荷重の設定値を検出した段階において、押圧機構20の作動を停止するのに続いて、加工ローラ11の作用点に向けてセットしたレーザ照射器15からレーザを照射して、微細凹部を形成すべきシリンダボアBの内周面Baの被加工部位を局所的に軟化させつつ、主軸1とともにホルダ10を回転させると、シリンダボアBの内周面Baに押し付けられている加工ローラ11が回転軸L周りに旋回することとなり、図3に実線で示すように、この状態で主軸1の回転と下降速度とを同期させると、シリンダボアBの内周面Baの広い領域に微細な凹部が形成されることとなる。
そして、微細凹部加工が終了すると、押圧機構20を作動させて、シリンダボアBの内周面Baから加工ローラ11を離間させるのに続いて、回転を停止した主軸1とともにホルダ10を上昇させて、シリンダボアBから加工ローラ11を離脱させる。
上記加工中において、微細凹部が形成された位置及びレーザ照射により軟化させた位置の双方をカメラ17が撮影しており、これらの位置にずれが生じた際には、レーザ照射器15の照準を変えて軟化させる位置を修正する。
上記したように、この実施例による微細凹部加工装置1を用いた微細凹部加工方法では、微細凹部を形成すべきシリンダボアBの内周面Baの被加工部位にレーザを照射して局所的に軟化させつつ、加工ローラ11による加工を行うようにしているので、加工ローラ11の外周面の微細な凹凸の転写性が向上することとなり、シリンダボアBの内周面Baに対して精度良好に微細凹部を形成し得ることとなる。
また、微細凹部を形成する部位が軟化するので、塑性流動やスプリングバックが低減され、加えて、加工ローラ11に対する応力が緩和されるので、加工ローラ11の長寿命化が図られることとなる。
さらに、この実施例による微細凹部加工装置1を用いた微細凹部加工方法では、指向性を有するレーザ照射器15を軟化手段とし、このレーザ照射器15をハウジング14の下端部にユニバーサルジョイント16を介して360°にわたって指向可能に取り付けているので、シリンダボアBの内周面Baの微細凹部を形成すべき被加工部位を的確に、そして、ダメージを与えることなく軟化させ得ることとなる。
さらにまた、この実施例による微細凹部加工装置1を用いた微細凹部加工方法では、加工中において、微細凹部が形成された位置及びレーザ照射により軟化させた位置の双方をカメラ17で撮影するようにしているので、微細凹部が形成された位置と軟化させた位置との間にずれが生じた際に、迅速に対応し得ることとなる。
なお、この実施例では、加工ローラ11の作用点に向けてレーザ照射器15からレーザを照射するようにしたが、微細凹部を形成すべき被加工部位を予測し、図4の展開図に示すように、レーザ照射器15により上記被加工部位を局所的に軟化させた後、押圧機構20によって加工ローラ11の外周面を上記軟化した被加工部位Sに押し付けて微細凹部Tを形成するようにしてもよい。
ここで、上記した微細凹部加工装置1を用いた微細凹部加工方法において、レーザ照射器15によってシリンダボアBの内周面Baの被加工部位を局所的に軟化させる場合に、軟化させる度合を場所毎に変化させるようにしてもよく、この場合には、図5に示すように、軟化させる度合を左から順に変化させて軟化度小(高硬度)の軟化被加工部位SL,軟化度中(中硬度)の軟化被加工部位SM及び軟化度大(低硬度)の軟化被加工部位SHとすることで、加工ローラ11に荷重Fを付与した際に、隣接する微細凹部の深さd1,d2,d3をデジタル的に変えるなどといった、精度の高い制御を行い得ることとなる。
また、上記した微細凹部加工装置1を用いた微細凹部加工方法において、レーザ照射器15によってシリンダボアBの内周面Baの被加工部位を局所的に軟化させる場合に、図6に示すように、形成すべき微細凹部Tの中央の溝底面部分Tbを軟化被加工部位Sbとしたり、図7に示すように、形成すべき微細凹部Tの両側の溝壁部分Twを軟化被加工部位Swとしたりしてもよく、微細凹部Tの中央の溝底面部分Tbを局所的に軟化させる場合には、溝底面部分Tbの盛り上がりを少なく抑え得ることとなり、一方、微細凹部Tの両側の溝壁部分Twを局所的に軟化させる場合には、シリンダボアBの内周面Baに対する溝壁部分Twの角度を90°に近付け得ることとなる。
上記した微細凹部加工装置1を用いて加工された微細凹部をシリンダボアBの内周面Baに有するエンジンのシリンダブロックは、ピストンが摺動するシリンダボアBの内周面Baの摩擦が低いものとなり、その結果、燃費の向上に寄与し得ることとなる。
図8は、本発明の微細凹部加工装置の他の実施例を示しており、図8に示すように、この実施例における微細凹部加工装置31が、先の実施例における微細凹部加工装置1と相違するところは、レーザ照射器15をハウジング14に固定すると共に、シリンダボアBの内周面Baの微細凹部が不要な加工不要部位を急速冷却する冷却手段としてのガス噴射機32をハウジング14の下端部に固定した点にあり、他の構成は先の実施例における微細凹部加工装置1と同じである(図8ではカメラ17を省略してある)。
この微細凹部加工装置31において、シリンダボアBの内周面Baに微細凹部を形成するに際しては、まず、主軸1とシリンダボアBの中心軸とをほぼ一致させるように位置決めをして、主軸1とともにホルダ10を下降させ、シリンダボアBに対して加工ローラ11を挿入するのに続いて、レーザ照射器15からレーザを照射させながら主軸1とともにホルダ10を回転させて、シリンダボアBの内周面Baの全面を一旦軟化させる。
次いで、押圧機構20を作動させて、シリンダボアBの内周面Baに対して加工ローラ11を接触させ、ロードセルにより検出した荷重が予め設定した値になるまで押圧機構20の作動を継続させ、荷重の設定値を検出した段階において、押圧機構20の作動を停止するのに続いて、主軸1とともにホルダ10を回転させると、シリンダボアBの内周面Baに押し付けられている加工ローラ11が回転軸L周りに旋回することとなり、この状態で主軸1の回転と下降速度とを同期させると、シリンダボアBの内周面Baの広い領域に微細な凹部が形成されることとなる。
次に、ガス噴射機32を作動させて、図9の展開図に示すように、シリンダボアBの内周面Baの微細凹部Tが形成されている軟化被加工部位S以外の部位、すなわち、微細凹部が不要な加工不要部位Cを急速冷却して高硬度化させる。
上記したように、この実施例による微細凹部加工装置31を用いた微細凹部加工方法では、レーザを照射してシリンダボアBの内周面Baの全面を軟化させたうえで加工ローラ11による加工を行うようにしているので、加工ローラ11の外周面の微細な凹凸の転写性が向上することとなり、シリンダボアBの内周面Baに対して精度良好に微細凹部を形成し得ることとなる。
また、ガス噴射機32から噴出させたガスによって、微細凹部が不要な加工不要部位を急速冷却して高硬度化し得ることから、微細凹部を広範囲に形成する加工に適したものとなる。
上記した実施例では、いずれも自動車用エンジンのシリンダブロックの円形孔であるシリンダボアBの内周面Baに微細凹部を形成する場合を示したが、これに限定されるものではなく、図10に示すように、微細凹部加工装置41を用いて、すなわち、中心軸周りに回転するワーク、例えば、クランクジャーナルやクランクピンやカムジャーナルやカムロブなどのエンジン用部材Wの外周面Waにローラ支持部53に支持された加工ローラ51を接近させて、この加工ローラ51の外周面の微細な凹凸をエンジン用部材Wの外周面Waに押し付けて加工を行うことで、微細凹部を形成するようにしてもよく、この微細凹部加工装置41を用いて加工された微細凹部を外周面Wに有する上記エンジン用部材Wでは、摺動面である外周面Waの摩擦が低いものとなり、その結果、燃費の向上に寄与し得ることとなる。
また、本発明の微細凹部加工装置の詳細な構成は、上記した実施例に限定されるものではなく、他の構成として、例えば、加工ローラ11に微細な凹凸を複数列設けるような構成としたり、あるいは、加工ローラ11に付与する荷重を変えるために、圧縮コイルばね21を交換可能にしたりしてもよい。
さらに、上記した実施例では、押圧機構20が圧縮コイルばね21を備えている場合を例に挙げたが、一定の荷重を付与するような手段であればその他のものも適用可能であり、押圧機構20として空気圧又は油圧のアクチュエータを用いることも可能である。
さらにまた、上記した実施例では、レーザ照射器15を軟化手段としているが、これに限定されるものではなく、他の構成として、例えば、軟化手段として超音波を用いることも可能である。
さらにまた、上記した実施例では、カメラ17を位置測定手段としているが、これに限定されるものではなく、他の構成として、例えば、位置測定手段としてCCDを用いることも可能である。
さらにまた、上記した実施例では、ガス噴射機32を冷却手段としているが、これに限定されるものではなく、他の構成として、例えば、冷却手段として微粒液体噴射機を用いることも可能である。
本発明の微細凹部加工装置の一実施例を示す工具ホルダの断面説明図である。(実施例1) 図1に示した工具ホルダを具備した微細凹部加工装置の全体斜視説明図である。 図1に示した工具ホルダをシリンダボア内で軸方向に移動させている状態の断面説明図である。 シリンダボアの内周面における軟化部位と微細凹部との位置関係を示す内周面の展開図である。 本発明の微細凹部加工方法において軟化度合の大小と微細凹部の深さとの関係を示すシリンダボアの内周面の拡大断面説明図である。 本発明の微細凹部加工方法において形成すべき微細凹部の中央の溝底面部分を局所的に軟化させた状態を示すシリンダボアの内周面の拡大断面説明図である。 本発明の微細凹部加工方法において形成すべき微細凹部の両側の溝壁部分を局所的に軟化させた状態を示すシリンダボアの内周面の拡大断面説明図である。 本発明の微細凹部加工装置の他の実施例を示す工具ホルダの断面説明図である。(実施例2)。 シリンダボアの内周面における軟化部位と微細凹部と加工不要部位との位置関係を示す内周面の展開図である。 本発明の微細凹部加工装置のさらに他の実施例を示す要部拡大説明図である。(実施例3) 本発明の微細凹部加工装置及び微細凹部加工方法により形成された微細凹部をシリンダボアの内周面に有するシリンダブロックの断面説明図である。 本発明の微細凹部加工装置及び微細凹部加工方法により形成された微細凹部をシリンダボアの内周面に有する他のシリンダブロックの平面説明図である。 本発明の微細凹部加工装置及び微細凹部加工方法により形成された微細凹部をシリンダボアの内周面に有するさらに他のシリンダブロックの平面説明図である。
符号の説明
1,31,41 微細凹部加工装置
11,51 加工ローラ
12 ローラ軸
15 レーザ照射器(軟化手段)
17 カメラ(位置測定手段)
20 押圧機構
21 圧縮コイルばね(押圧機構)
32 ガス噴射機(冷却手段)
B シリンダボア
Ba シリンダボアの内周面
Bl ピストンの下死点
Bm 工程中央部分
Bs ピストンのスカート部当接部位
Bu ピストンの上死点
C 加工不要部位
D ボルト孔
SB シリンダブロック
T 微細凹部
Tb 微細凹部の溝底面部分
Tw 微細凹部の溝壁部分
W エンジン用部材(ワーク)
Wa エンジン用部材の外周面
X ボルト孔からシリンダボアの内周面までの距離
d 微細凹部の深さ

Claims (21)

  1. ワークの内周面又は外周面に微細凹部を形成する微細凹部加工装置であって、外周面に微細な凹凸を具備してローラ軸周りに回転する加工ローラと、この加工ローラを上記ローラ軸と平行を成す中心軸に支持されるワークに接近離間させて加工ローラの外周面を上記ワークの内周面又は外周面に押し付け可能とした押圧機構と、微細凹部を形成すべき上記ワークの被加工部位を局所的に軟化させる軟化手段と、
    ワークの微細凹部が形成された位置及び軟化手段により軟化させた位置をそれぞれ測定する位置測定手段とを備えていることを特徴とする微細凹部加工装置。
  2. ワークの内周面又は外周面に微細凹部を形成する微細凹部加工装置であって、
    外周面に微細な凹凸を具備してローラ軸周りに回転する加工ローラと、
    この加工ローラを上記ローラ軸と平行を成す中心軸に支持されるワークに接近離間させて加工ローラの外周面を上記ワークの内周面又は外周面に押し付け可能とした押圧機構と、
    微細凹部を形成すべき上記ワークの被加工部位を局所的に軟化させる軟化手段と、
    ワークの微細凹部が不要な加工不要部位を急速冷却する冷却手段とを備えていることを特徴とする微細凹部加工装置。
  3. 加工ローラはワークの円形孔内に挿入されて、その外周面の微細な凹凸を上記円形孔の内周面に押し付けつつワークの中心軸周りに旋回して加工を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の微細凹部加工装置。
  4. 加工ローラは中心軸周りに回転するワークの外周面に接近して、その外周面の微細な凹凸をワークの外周面に押し付けて加工を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の微細凹部加工装置。
  5. 軟化手段は指向性を有し、360°にわたって指向可能としたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の微細凹部加工装置。
  6. 軟化手段をレーザ照射器としたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の微細凹部加工装置。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の微細凹部加工装置を用いてワークに微細凹部を形成するに際して、軟化手段により微細凹部を形成すべき上記ワークの被加工部位を局所的に軟化させつつ、押圧機構によって加工ローラの外周面を上記ワークの被加工部位に押し付けて微細凹部を形成することを特徴とする微細凹部加工方法。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の微細凹部加工装置を用いてワークに微細凹部を形成するに際して、微細凹部を形成すべき上記ワークの被加工部位を予測し、軟化手段により上記ワークの被加工部位を局所的に軟化させた後、押圧機構によって加工ローラの外周面を上記ワークの軟化した被加工部位に押し付けて微細凹部を形成することを特徴とする微細凹部加工方法。
  9. 軟化手段によりワークの被加工部位を局所的に軟化させる場合に、軟化させる度合を場所毎に変化させることを特徴とする請求項7又は8に記載の微細凹部加工方法。
  10. 軟化手段によりワークの被加工部位を局所的に軟化させる場合に、形成すべき微細凹部の中央の溝底面部分を局所的に軟化させることを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の微細凹部加工方法。
  11. 軟化手段によりワークの被加工部位を局所的に軟化させる場合に、形成すべき微細凹部の両側の溝壁部分を局所的に軟化させることを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項に記載の微細凹部加工方法。
  12. 請求項1,2,4〜7のいずれか1項に記載の微細凹部加工装置を用いて加工された微細凹部を円形孔の内周面に有することを特徴とするワーク。
  13. 請求項1,2,4〜7のいずれか1項に記載の微細凹部加工装置を用いて加工された微細凹部をシリンダボアの内周面に有することを特徴とするシリンダブロック。
  14. シリンダボアの内周面におけるピストンの上死点及び下死点の近傍に形成された微細凹部の深さを両死点間の工程中央部分に形成された微細凹部の深さよりも深くしてあることを特徴とする請求項13に記載のシリンダブロック。
  15. シリンダボアの内周面におけるピストンのスカート部当接部位に形成された微細凹部の深さを上記スカート部当接部位以外の部位に形成された微細凹部の深さよりも深くしてあることを特徴とする請求項13に記載のシリンダブロック。
  16. シリンダボアの内周面に形成された微細凹部の深さは、シリンダヘッドを固定するのに用いるボルト孔からシリンダボアの内周面までの距離に比例して設定されていることを特徴とする請求項13に記載のシリンダブロック。
  17. 請求項1,3〜7のいずれか1項に記載の微細凹部加工装置を用いて加工された微細凹部を外周面に有することを特徴とするワーク。
  18. 請求項1,3〜7のいずれか1項に記載の微細凹部加工装置を用いて加工された微細凹部を外周面に有することを特徴とするクランクジャーナル。
  19. 請求項1,3〜7のいずれか1項に記載の微細凹部加工装置を用いて加工された微細凹部を外周面に有することを特徴とするクランクピン。
  20. 請求項1,3〜7のいずれか1項に記載の微細凹部加工装置を用いて加工された微細凹部を外周面に有することを特徴とするカムジャーナル。
  21. 請求項1,3〜7のいずれか1項に記載の微細凹部加工装置を用いて加工された微細凹部を外周面に有することを特徴とするカムロブ。
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