JP2006297467A - 微細凹部加工装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】被加工物の円周面に対して精度良好に微細凹部を形成することができると共に、加工コストの低減を実現する微細凹部加工装置を提供する。
【解決手段】フォームローラ13と、ローラ支持部材12と、ローラ支持部材12を保持する工具ホルダ10と、フォームローラ13をシリンダボアBの内周面Baに圧接させるアダプタ10C及び圧縮コイルばね16と、工具ホルダ10を回転させる主軸3と、工具ホルダ10に対するフォームローラ13の変位を検出する変位検出手段18を備え、変位検出手段18による検出結果に基づいてアダプタ10C及び主軸3を制御することで、微細凹部を高精度に形成すると共に、内周面Baに対して低荷重で複数回加工を行って微細凹部を形成することで、フォームローラ13の工具寿命の長期化を実現した。
【選択図】 図1
【解決手段】フォームローラ13と、ローラ支持部材12と、ローラ支持部材12を保持する工具ホルダ10と、フォームローラ13をシリンダボアBの内周面Baに圧接させるアダプタ10C及び圧縮コイルばね16と、工具ホルダ10を回転させる主軸3と、工具ホルダ10に対するフォームローラ13の変位を検出する変位検出手段18を備え、変位検出手段18による検出結果に基づいてアダプタ10C及び主軸3を制御することで、微細凹部を高精度に形成すると共に、内周面Baに対して低荷重で複数回加工を行って微細凹部を形成することで、フォームローラ13の工具寿命の長期化を実現した。
【選択図】 図1
Description
本発明は、例えば、自動車用エンジンにおけるシリンダブロックのシリンダボアの内周面や、カムシャフトのジャーナル部の外周面などのように摺動接触を伴う被加工物の円周面に、低フリクション化を実現するための微細凹部(油だまり)を形成するのに用いられる微細凹部加工装置に関するものである。
従来、被加工物の円周面に微細凹部を形成する場合には、ショットブラストが多く採用されていた。このショットブラストでは、円周面に所定形状の透孔を有するマスキングシートを貼り付けた後、セラミックス等の小径粒子を円周面に向けて圧縮空気とともに投射することで、円周面の透孔を通して露出している部分に微細凹部を形成するようにしている。
そして、微細凹部を形成した後は、マスキングシートを取り外して洗浄するのに続いて、再びホーニングを行うことにより、上記ショットブラスト加工で微細凹部の周囲に生じた盛上り部分を除去するようにしている。
特開2002−307310
しかしながら、上記したようなショットブラストによる微細凹部の形成にあっては、微細凹部を規則的に配置することが困難であり、加えて、円周面に対するマスキングシートの貼り付け工程及び取り外し工程、並びに洗浄工程が不可欠であって、このような作業が多い分だけ加工コストが嵩むという問題があり、これらの問題を解決することが従来の課題となっていた。
本発明は、上記従来の課題に着目して成されたものであって、被加工物の円周面に対して精度良好に微細凹部を形成することができると共に、加工コストの低減を実現することが可能である微細凹部加工装置を提供することを目的としている。
本発明の微細凹部加工装置は、被加工物の円周面に微細凹部を形成するものであって、外周部に凹部形成用の凸部を有するフォームローラと、フォームローラを回転可能に支持するローラ支持部材と、円周面の中心線とフォームローラのローラ軸とが平行になる状態にローラ支持部材を保持する工具ホルダと、工具ホルダに設けられ且つフォームローラを円周面に圧接させるローラ圧接手段と、被加工物と工具ホルダを円周面の中心線回りに相対的に回転させることにより円周面に添ってフォームローラを転動させる回転駆動手段と、工具ホルダに対するフォームローラの変位を検出する変位検出手段を備えている。
ここで、被加工物の円周面としては、被加工物における円形穴の内周面や、被加工物における円柱部の外周面があり、とくに、円形穴の内周面に微細凹部を形成する場合には、工具ホルダにより、内周面(円周面)の中心線とフォームローラのローラ軸とが平行になる状態にローラ支持部材を保持したとき、内周面の中心線と工具ホルダの中心線を一致させると共に、フォームローラのローラ軸を工具ホルダの中心線に対してオフセットした位置にする。
そして、微細凹部加工装置は、変位検出手段による検出結果に基づいてローラ圧接手段及び回転駆動手段を制御し、より具体的には、工具ホルダに対するフォームローラの変位量や円周面に対するフォームローラの圧接荷重が変化するようにローラ圧接手段を制御すると共に、先に形成した微細凹部をより深く再加工するように回転駆動手段を逆方向に回転制御する。
本発明の微細凹部加工方法は、被加工物の円周面に微細凹部を形成するに際し、微細凹部の深さとこれに対応するフォームローラの変位量との関係に基づいて、フォームローラの変位量を設定する。ここで、当該微細凹部加工方法では、円周面にフォームローラを圧接させて微細凹部を形成するので、加工時には、工具ホルダに対するフォームローラの変位と、円周面に対するフォームローラの圧接荷重を伴うこととなる。したがって、フォームローラの変位量の設定は、円周面に対するフォームローラの圧接荷重を間接的に設定することでもある。
そして、微細凹部加工方法では、形成しようとする微細凹部の目標深さよりも小さい深さに対応するフォームローラの変位量を設定して同フォームローラを被加工物の円周面に圧接させ、被加工物と工具ホルダを円周面の中心線回りに相対的に回転させて円周面に添ってフォームローラを転動させる。これにより、円周面に目標深さよりも小さい深さの微細凹部を形成する。
その後、微細凹部加工方法では、フォームローラの変位量を増大させて、例えばフォームローラを逆方向に転動させることにより、円周面の同一箇所に少なくとも一回の再加工を行うこととし、これにより最終的に目標深さを有する微細凹部を形成する。
なお、再加工では、フォームローラの変位量を増大させて、微細凹部がさらに深くなるように加工を行うのであるが、この際には、微細凹部が第一回目の加工によって所定の深さ(目標深さよりも小さい深さ)に形成されているので、フォームローラの変位量を増大させても、微細凹部に対するフォームローラの圧接荷重が必ずしも増大することはなく、圧接荷重が一定となるように、あるいは減少又は増大するようにフォームローラの変位量を増大させることができる。
本発明の微細凹部加工装置は、従来のような使い捨てのマスキングシートを用いずにフォームローラによる機械加工を行うことから、被加工物の円周面に高精度の微細凹部を高効率で形成することができると共に、生産性の向上や製造コストの低減を実現することができる。
そして、微細凹部加工装置は、変位検出手段による検出結果に基づいてローラ圧接手段を制御することにより、加工中において、微細凹部の深さが常に均一になるようにしたり、微細凹部の深さを任意に変更したりすることができ、また、ローラ圧接手段及び回転駆動手段を制御することにより、微細凹部の深さが徐々に増大するように複数回の加工を行って所望の深さの微細凹部を形成し得るので、微細凹部を低荷重で且つ高精度に形成することができると共に、フォームローラへの応力を緩和して工具寿命の長期化を図ることができる。
本発明の微細凹部加工方法は、被加工物の円周面に高精度の微細凹部を高効率で形成することができると共に、生産性の向上や製造コストの低減を図ることができるほか、微細凹部の深さが徐々に増大するように複数回の加工を行って所望の深さの微細凹部を形成することから、微細凹部を低荷重で且つ高精度に形成することができると共に、フォームローラへの応力を緩和して工具寿命の長期化を図ることができる。
図1〜図5は、本発明の微細凹部加工装置の一実施例を説明する図である。
図2に示す微細凹部加工装置1は、図11に示す自動車用エンジンのシリンダブロックCBを被加工物とし、被加工物の円周面すなわち円形穴であるシリンダボアBの内周面Baに微細凹部を形成するNC工作機械であって、鉛直方向に移動可能な主軸ヘッド2と、主軸ヘッド2に下向きに突出した状態で支持される主軸3と、主軸ヘッド2の下側において水平面内で互いに直交する二軸方向に移動可能な被加工物載置用のテーブル4と、主軸3に同軸に装着されて一体で回転する工具ホルダ10を備えており、図示しない自動工具交換装置により、主軸3に対して工具ホルダ10の着脱を行うようになっている。
工具ホルダ10は、図1に示すように、主軸3に装着する部位であるシャンク部10Aと、その下側に連続するボディ部10Bを有すると共に、ボディ部10Bの下側に、アダプタ10Cを介してハウジング10Dを備え、このハウジング10Dに、スプラインナット14及びスプラインシャフト15と、圧縮コイルばね16を介してローラ支持部材12が設けてあると共に、ローラ支持部材12に、ローラ軸19を介してフォームローラ13が回転可能に設けてある。
アダプタ10Cは、例えば図示しないステッピングモータを具備した移動機構を内蔵しており、この移動機構の作動により、シリンダブロックCBのシリンダボアBの内周面Baに対してハウジング10D、ローラ支持部材12及びフォームローラ13を一体的に近接離間させる。
ハウジング10Dは、軸線方向を水平にしたスプラインナット14を備え、このスプラインナット14と、ローラ支持部材12に連結したスプラインシャフト15とを互いにスプライン結合して、ローラ支持部材12を主軸3と直交する方向に移動自在に保持している。
圧縮コイルばね16は、工具ホルダ10側であるハウジング10Dからローラ支持部材12に荷重を付与してフォームローラ13をシリンダボアBの内周面Baに圧接させる荷重付与手段であり、ハウジング10Dと圧縮コイルばね16との間には、内周面Baに対するフォームローラ13の圧接荷重を検出する荷重検出手段としての圧電型のロードセル17が設けてある。
また、ハウジング10Dとローラ支持部材12との間には、ハウジング10D側の検出器18Aとローラ支持部材12側の被検出部18Bとから成る非接触式の変位検出手段13が設けてあり、この変位検出手段13でハウジング10Dからローラ支持部材12までの距離を測定することにより、工具ホルダ10に対するフォームローラ13の変位量を間接的に検出する。
このように、この実施例では、ハウジング10Dに、荷重付与手段である圧縮コイルばね16、荷重検出手段であるロードセル17及び変位検出手段18がコンパクトに内蔵してあり、当該装置の構造の簡素化や小型化に貢献し得るものとなっている。
ローラ支持部材12は、フォームローラ13の近傍に、シリンダボアBの内周面Baに形成した微細凹部の深さを検出する深さ検出手段20を備えている。この深さ検出手段20は、接触式又は非接触式の周知の測定機器を用いることが可能であって、この実施例では、測定精度の向上や形成した微細凹部の保護などを図るために、非接触式のものを採用している。
フォームローラ13は、外周部に凹部形成用の凸部が一定間隔で設けてあり、シリンダボアBの直径よりも小さい直径を有する。フォームローラ13は、材料がとくに限定されるものではないが、例えば、超硬、超硬以外の硬質金属やアルミナ、窒化珪素等のセラミックスなどから成るものであって、高い強度と靭性を有しており、被加工物が焼入れ鋼などの高硬度材料であっても微細凹部を形成することができる。凸部の高さは例えば100μm程度であり、被加工物に数μm又は数十μm程度の微細凹部を形成する。
ここで、微細凹部加工装置1は、微細凹部の加工対象となる円周面が、シリンダブロックCBにおけるシリンダボアBの内周面Baであるから、その内周面Baの中心線L1と主軸3及び工具ホルダ10の回転中心L2とが一致するように、シリンダボアBに対して工具ホルダ10を配置すると共に、この状態で、アダプタ10C、ハウジング10D、ローラ支持部材12及びフォームローラ13がシリンダボアBの内側に対して挿脱可能である。そして、微細凹部加工装置1は、内周面Baの中心線L1とフォームローラ13のローラ軸19とが平行であると共に、工具ホルダ10の回転中心L2に対してローラ軸19がオフセットされた位置にある。
この実施例では、主軸3が、回転駆動手段すなわち被加工物であるシリンダブロックCBと工具ホルダ10をシリンダボアBの内周面Baの中心線L1回りに相対的に回転させることにより内周面Baに圧接させたフォームローラ13を同内周面Baに添って転動させる手段に相当し、ここでは工具ホルダ10を回転駆動する。
また、この実施例では、主軸ヘッド2が、軸方向駆動手段すなわち被加工物であるシリンダブロックCBと工具ホルダ10をシリンダボアBの内周面Baの中心線L1に沿う方向に相対的に移動させる手段に相当し、ここでは工具ホルダ10を昇降駆動する。
さらに、この実施例では、アダプタ10Cが、径方向駆動手段すなわち被加工物であるシリンダブロックCBと工具ホルダ10をシリンダボアBの内周面Baに対してフォームローラ13が近接離間する方向に相対的に移動させる手段に相当し、ここではフォームローラ13を径方向に駆動する。
そして、この実施例では、上記の径方向駆動手段(アダプタ10C)及び荷重付与手段(圧縮コイルばね16)が、ローラ圧接手段すなわち工具ホルダ10に設けられ且つフォームローラ13を内周面(円周面)Baに圧接させる手段に相当し、変位検出手段18による検出結果に基づいてローラ圧接手段(荷重付与手段:圧縮コイルばね16,径方向駆動手段:アダプタ10C)及び回転駆動手段(主軸3)を制御する。
なお、微細凹部加工装置1は、図示を省略したが、上記の如くローラ圧接手段からの検出結果に基づいて荷重付与手段及び回転駆動手段を制御する制御装置を備えており、この制御装置において、主軸ヘッド2やテーブル4などの動作制御も行う。
次に、上記の微細凹部加工装置の動作説明と共に、図3に示すフローチャートに基づいて本発明の微細凹部加工方法の一例を説明する。
微細凹部加工装置1を用いて、シリンダボアBの内周面Baに微細凹部を形成するに際しては、まず、シリンダボアBの中心線L1と工具ホルダ10の回転中心L2とが一致するように位置決めをした後、主軸3とともに工具ホルダ10を下降させ、シリンダボアB内にフォームローラ13を進入させる。
次に、アダプタ10C内の移動機構を作動させて、シリンダボアBの内周面Baに対してフォームローラ13を接触させ、ロードセル17により検出した荷重が予め設定した値になるまでアダプタ10C内の移動機構の作動を継続させる。
つまり、シリンダボアBの内周面Baにフォームローラ13が接触した後、アダプタ10C内の移動機構の作動を継続させると、ローラ支持部材12とハウジング10Dとの間で圧縮コイルばね16が圧縮され、その反発力が荷重としてフォームローラ13に付与されると共に、ロードセル17によりこの荷重が検出されることから、このロードセル17の検出荷重が設定値になるまでアダプタ10C内の移動機構の作動を継続させれば、フォームローラ13がシリンダボアBの内周面Baに所定荷重で圧接することとなり、これにより微細凹部の深さも決まる。
ここで、本発明の微細凹部加工装置及び加工方法では、上記の如く内周面Baにフォームローラ13を圧接させる際に、ロードセル17による検出荷重に基づいてアダプタ10Cを制御するだけでなく、変位検出手段18による検出変位量をも用いてアダプタ10Cを制御するようにし、微細凹部の深さとこれに対応するフォームローラ13の変位量との関係に基づいて、形成しようとする微細凹部の目標深さよりも小さい深さに対応するフォームローラ13の変位量を設定して同フォームローラ13を内周面Baに圧接させる。
すなわち、微細凹部の深さ(目標深さDmax)と、工具ホルダ10に対するフォームローラ13の変位量(最大変位量Hmax)と、シリンダボアCBの内周面Baに対するフォームローラ13の圧接荷重(最大荷重Fmax)は、互いに関連しているので、まず図3のステップS1において、目標深さDmaxに相当する最大荷重Fmaxと、目標深さDmaxよりも小さい一次深さD1を得るための一次荷重F1を設定し、ステップS2において、目標深さDmaxに相当する最大変位量Hmaxと、一次深さD1に相当する一次変位量H1を設定する。
こののち、ステップS3において、先述の要領でフォームローラ13をシリンダボアCBの内周面Baに圧接させ、ステップS4において、ロードセル17で検出した荷重が一次荷重F1になったか否かを判定し、又は変位検出手段18で検出した変位量が一次変位量H1になったか否かを判定する。このとき、検出荷重が一次荷重F1に達していない場合(No)、又は検出変位量が一次変位量H1に達していない場合(No)には、ステップS3に戻ってアダプタ10Cによるフォームローラ13の前進を継続する。
そして、検出荷重が一次荷重F1に達した場合(Yes)、又は検出変位量が一次変位量H1に達した場合(Yes)には、アダプタ10Cによるフォームローラ13の前進を停止し、ステップS5において、微細凹部の加工を開始する。つまり、主軸(回転駆動手段)3で工具ホルダ10を回転させることにより、シリンダボアCBの内周面Baに圧接させたフォームローラ13を転動させて同内周面Baにディンプル状の微細凹部を所定間隔で形成すると共に、主軸ヘッド(軸方向駆動手段)2を下降させることで、図4に示すように、内周面Baの全体にわたって螺旋状の軌跡で微細凹部を連続的に形成する。これにより、図5(a)(b)に示すように、一次深さD1の微細凹部Qが形成される。
次に、当該微細凹部加工方法では、ステップS6において、加工後におけるフォームローラ13の変位量が最大変位量Hmaxになったか否かを判定し、この時点では、フォームローラ13の変位量は一次変位量H1であるから、変位量が最大変位量Hmaxに達していない(No)と判定してステップS1に戻る。
ステップS1では、圧接荷重を二次荷重F2に設定し直し、ステップS2では、変位量を二次変位量H2に設定し直し、ステップS3において、アダプタ10Cによりフォームローラ13を前進させる。なお、ステップS1には、複数次の荷重及び変位量を予め設定することができ、これらは、当然のことながら最大荷重Fmax及び最大変位量Hmaxよりも小さい値である。
ステップS4では、ステップS1,S2で更新した荷重及び変位量について比較判定を行うこととなり、初回と同様の要領でロードセル17及び変位検出手段18の検出結果が二次荷重F2及び二次変位量H2になったか否かを判定した後、ステップS5において加工(再加工)を開始する。
なお、再加工では、一次深さD1の微細凹部を形成した後であるから、ステップS3でフォームローラ13の変位量を増大させても、圧縮コイルばね16による圧接荷重が必ずしも増大することはなく、一次荷重F1と二次荷重F2を等しくしたり、一次荷重F1に対して二次荷重F2を減少又は増大させたりすることができる。一方、フォームローラ13の変位量は、工具ホルダ10に対する変位量であるから、最大変位量Hmaxに達するまで増大する。
そして、ステップS5における再加工では、主軸(回転駆動手段)3を初回と同じ速度で逆回転させると共に、主軸ヘッド(軸方向駆動手段)2を初回の下降と同じ速度で上昇させることで、図4に示すように、初回の螺旋状軌跡に添ってフォームローラ13を逆方向に転動させるようにし、同一箇所に加工を行う。これにより、図5(c)(d)に示すように、微細凹部Qの深さは二次深さH2となる。
このようにして、当該微細凹部加工装置及び加工方法では、シリンダボアCBの内周面Baの同一箇所に少なくとも一回の再加工を行い、最終的にステップS6において、フォームローラ13の変位量が最大変位量Hmaxになった(Yes)と判定したところで、加工終了(ステップS7)となる。これにより、目標深さDmaxを有する微細凹部が形成される。
図6及び図7は、上記の如く複数回の加工により微細凹部を形成する場合において、微細凹部の深さとフォームローラの圧接荷重を示す説明図である。すなわち、形成しようとする微細凹部の目標深さDmaxよりも小さい一次深さD1に対応するフォームローラ13の一次変位量H1を設定して1回目の加工を行い、それ以降は、微細凹部の深さが徐々に増大するようにフォームローラ13の変位量を設定して再加工を行う。
このとき、図6及び図7に示すように、1回目から3回目の加工では、フォームローラ13の変位量は段階的に増大するが、フォームローラ13の圧接荷重を一定にして加工を行うことができる。
その後は、図6に示すように、4回目の加工において、フォームローラ13の圧接荷重を低下させると共に、同フォームローラ13の変位量が最大変位量Hmaxとなるように設定して、目標深さDmaxの微細凹部を形成したり、図7に示すように、4及び5回目の加工において、フォームローラ13の圧接荷重を段階的に減少させると共に、同フォームローラ13の変位量が段階的に最大変位量Hmaxとなるように設定して、最終的に目標深さDmaxの微細凹部を形成したりすることができる。
以上のように、微細凹部加工装置1及び加工方法では、フォームローラ13を用いた機械加工を行うことから、シリンダボアBの内周面Baに高精度な微細凹部を高効率で形成することができ、使い捨てのマスキングシートを用いてショットブラスト行う従来の微細凹部加工に比べて、生産性の向上や製造コストの低減を実現することができる。
そして、微細凹部加工装置1及び加工方法では、変位検出手段18による検出結果に基づいてローラ圧接手段(荷重付与手段:圧縮コイルばね16,径方向駆動手段:アダプタ10C)及び回転駆動手段(主軸3)を制御するようにし、微細凹部の深さが徐々に増大するように複数回の加工を行って所望の深さ(目標深さ)の微細凹部を形成し得るので、微細凹部を低荷重で且つ高精度に形成することができ、フォームローラ13への応力を緩和して工具寿命の長期化を図ることができる。
また、微細凹部加工装置1及び加工方法では、被加工物の材質や微細凹部の深さなどの条件によっては、一回の加工で目標深さの微細凹部を形成することも勿論可能であるが、複数回の加工を行うようにすれば、上記の如く工具寿命の長期化を実現できるうえに、低荷重でより深い微細凹部を形成することができる。
さらに、微細凹部加工装置1及び加工方法では、ロードセル17及び変位検出手段18の検出結果に基づいてアダプタ10Cをフィードバック制御することで、微細凹部の深さが常に均一になるようにしたり、微細凹部の深さが部分的に異なるようにしたりすることが容易であると共に、これらの制御を一回の加工毎、又は一回の加工中に実施することができる。
さらに、微細凹部加工装置1は、深さ検出手段20を備えているので、この深さ検出手段20で形成後の微細凹部の深さを直接測定し、その検出結果に基づいてアダプタ10Cをフィードバック制御するものとすれば、材料のスプリングバックによる影響を解消して微細凹部の深さをより高精度に管理することができる。
さらに、微細凹部加工装置1は、荷重付与手段として圧縮コイルばね16を採用しているので、装置構造を簡略化することができると共に、簡単な構造でありながらフォームローラ13に充分な荷重を付与することができ、また、荷重検出手段としてロードセル17を採用したことにより、簡単な構造で圧接荷重を正確に検出することができる。
上記の微細凹部加工装置1を用いて微細凹部の加工が施されたシリンダブロックCBは、図11に示すように、シリンダボアBの内周面Baに高精度の微細凹部Qが規則的に形成されたものとなり、図11中に仮想線で示すピストンPとの摺動接触において微細凹部Qが油だまりとして有効に機能し、エンジンの性能向上に貢献し得るものとなる。
また、上記の微細凹部加工装置1及び加工方法では、フォームローラ13の変位量及び圧接荷重を変化させることができるので、被加工物がシリンダブロックCBである場合、シリンダボアBの内周面Baにおいて、ピストンPの動作条件が異なる部位にその条件に適した深さの微細凹部を形成することができる。
すなわち、シリンダブロックCBでは、シリンダボアBの内周面Baにおいて、ピストンPの上死点側である上側部位A1、中間部位A2及びピストンPの下死点側である下側部位A3のうちの少なくとも一つの部位に形成した微細凹部Qの深さが、他の部位に形成した微細凹部Qの深さと異なるようにし、より具体的には、図12に示すように、ピストンPの摺動と一時的な停止に対応する範囲である上側部位A1及び下側部位A3の微細凹部Qの深さを大きくし、ピストンPの摺動のみに対応する範囲である中間部位の微細凹部Qの深さを小さくする。
これにより、シリンダボアBの内周面Baは、全体として、微細凹部Qの深さがピストンPの動作条件により一層好適なものとなり、微細凹部Qが油だまりとしてより効果的に機能してエンジンの性能向上に貢献し得るものとなる。
図8は本発明の微細凹部加工装置の他の実施例を説明する図である。なお、先の実施例と同一の構成部位は、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
図示の微細凹部加工装置は、先の実施例ではローラ圧接手段に含まれる荷重付与手段が圧縮コイルばねであったのに対して、荷重付与手段として伸縮駆動するアクチュエータ30を備えたものとなっており、変位検出手段18による検出結果に基づいて、ローラ圧接手段すなわちアダプタ10C及びアクチュエータ30と、回転駆動手段である主軸3を制御する。
上記の微細凹部加工装置にあっても、先の実施例と同様の作用及び効果を得ることができるうえに、アクチュエータ30の採用により、フォームローラ13の変位量及び圧接荷重をより高精度に且つ連続的に調整することができ、また、アクチュエータ30の伸縮ストロークが充分なものであれば、ローラ圧接手段に含まれる径方向駆動手段であるアダプタ10Cを廃止して、装置構造のさらなる簡略化を図ることも可能である。
図9及び図10は本発明の微細凹部加工装置のさらに他の実施例を説明する図である。なお、先の実施例と同一の構成部位は、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
図9に示す微細凹部加工装置は、先の実施例では、ローラ支持部材にフォームローラを回転自在に設けていたのに対して、ローラ支持部材12に、フォームローラ13を回転駆動するローラ回転駆動手段35と、フォームローラ13を所定の回転位置で一時的に拘束するローラ位置決め手段36を備えている。
ローラ回転駆動手段35は、駆動源であるモータや減速機構を含み、フォームローラ35を回転駆動すると共に、図示しない制御装置により動作制御することができる。また、ローラ位置決め手段36は、ローラ支持部材12に固定したケース37と、ケース37に収容したスプリング38と、スプリング38により付勢され且つ下向きに突没可能な係合子39と、フォームローラ13に形成され且つ係合子39が係脱可能な係合凹部40で構成してある。
なお、係合子39と係合凹部40との係合力は、フォームローラ13に回転力が加わらない状態で同フォームローラ13を保持すると共に、フォームローラ13に回転力が加わると簡単に離脱する程度の力であって、微細凹部の加工中においてもフォームローラ13の回転を何ら妨げるものではない。したがって、実際の係合凹部は、例えば図示例よりも浅いものとなる。
上記の微細凹部加工装置は、微細凹部の形成時において、工具ホルダ10を回転駆動してフォームローラ13をシリンダボアBの内周面Baに添って転動させるのと同時に、ローラ駆動手段35により、工具ホルダ10の中心線回りとは逆方向にフォームローラ13を回転駆動する。これにより、フォームローラ13とシリンダボアBの内周面Baとの間における滑りを防止し、精度良く微細凹部を形成することができる。
また、1回目の加工が終了した時点で、ローラ位置決め手段36の係合子39と係合凹部40が係合するようにし、あるいはフォームローラ13を内周面Baから離間させ、ローラ駆動手段35によりフォームローラ13を回転させて係合子39と係合凹部40が係合するようにし、1回目に形成した微細凹部とフォームローラ13のいずれかの形成用凸部とが一致する状態にして、先の実施例と同様に再加工を開始する。
このとき、係合子39と係合凹部40との係合状態を判断するには、ローラ駆動手段35に回転検出器を設け、これにより検出したフォームローラ13の回転位置から双方の係合状態を判断したり、ローラ位置決め手段36に設けたセンサ類で双方の係合状態を直接判断したりすることができる。
このようにして、上記の微細凹部加工装置は、複数回の加工を行っても、形成した微細凹部とフォームローラ13の形成用凸部とが常に一致することとなり、これに上記した滑り防止機能も加わって微細凹部を高精度に形成する。
なお、本発明に係わる微細凹部加工装置は、その構成が上記各実施例に限定されるものではなく、構成の細部を適宜変更することができる。例えば、上記各実施例では、回転駆動手段として主軸3を、軸方向駆動手段として主軸ヘッド2を、径方向駆動手段としてアダプタ10Cを例示したが、被加工物を回転及び移動させる手段も含まれる。また、溝状の微細凹部を形成するための鍔状の形成用凸部を備えたフォームローラや、凹部形成用の凸部を複列に備えたフォームローラなどを用いることも可能である。
また、被加工物としては、円形穴を有するもののほか、外周面に微細凹部が形成される円柱部を有するものであっても良く、具体的には、エンジン用のクランクシャフト、カムシャフト及びバランサシャフト(サイレントシャフト)などが挙げられる。
被加工物がクランクシャフトである場合には、クランクジャーナルの外周面やクランクピンの外周面に微細凹部を形成し、被加工物がカムシャフトである場合には、カムジャーナルの外周面やカムロブの外周面に微細凹部を形成し、また、被加工物がバランサシャフトである場合には、同じくジャーナルの外周面に微細凹部を形成することとなり、いずれの場合においても、微細凹部が油だまりとして機能して各部品の回転性能や摺動性能を高めることができ、ひいてはエンジンの性能向上に貢献し得るものとなる。
B シリンダボア(円形穴)
Ba シリンダボアの内周面(円周面)
CB シリンダブロック(被加工物)
1 微細凹部加工装置
2 主軸ヘッド(軸方向駆動手段)
3 主軸(回転駆動手段)
10 工具ホルダ
10C アダプタ(径方向駆動手段:ローラ圧接手段)
12 ローラ支持部材
13 フォームローラ
16 圧縮コイルばね(荷重付与手段:ローラ圧接手段)
17 ロードセル(荷重検出手段)
18 変位検出手段
19 ローラ軸
20深さ検出手段
30 アクチュエータ(荷重付与手段:ローラ圧接手段)
35 ローラ駆動手段
36 ローラ位置決め手段
Ba シリンダボアの内周面(円周面)
CB シリンダブロック(被加工物)
1 微細凹部加工装置
2 主軸ヘッド(軸方向駆動手段)
3 主軸(回転駆動手段)
10 工具ホルダ
10C アダプタ(径方向駆動手段:ローラ圧接手段)
12 ローラ支持部材
13 フォームローラ
16 圧縮コイルばね(荷重付与手段:ローラ圧接手段)
17 ロードセル(荷重検出手段)
18 変位検出手段
19 ローラ軸
20深さ検出手段
30 アクチュエータ(荷重付与手段:ローラ圧接手段)
35 ローラ駆動手段
36 ローラ位置決め手段
Claims (17)
- 被加工物の円周面に微細凹部を形成する微細凹部加工装置であって、外周部に凹部形成用の凸部を有するフォームローラと、フォームローラを回転可能に支持するローラ支持部材と、円周面の中心線とフォームローラのローラ軸とが平行になる状態にローラ支持部材を保持する工具ホルダと、工具ホルダに設けられ且つフォームローラを円周面に圧接させるローラ圧接手段と、被加工物と工具ホルダを円周面の中心線回りに相対的に回転させることにより円周面に添ってフォームローラを転動させる回転駆動手段と、工具ホルダに対するフォームローラの変位を検出する変位検出手段を備え、変位検出手段による検出結果に基づいてローラ圧接手段及び回転駆動手段を制御することを特徴とする微細凹部加工装置。
- 被加工物と工具ホルダを円周面の中心線に沿う方向に相対的に移動させる軸方向駆動手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の微細凹部加工装置。
- ローラ圧接手段が、工具ホルダ側からローラ支持部材に荷重を付与する荷重付与手段を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の微細凹部加工装置。
- 荷重付与手段が、ばねであることを特徴とする請求項3に記載の微細凹部加工装置。
- 荷重付与手段が、伸縮駆動するアクチュエータであることを特徴とする請求項3に記載の微細凹部加工装置。
- 荷重付与手段によるフォームローラの圧接荷重を検出する荷重検出手段を備えたことを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の微細凹部加工装置。
- ローラ圧接手段が、円周面に対してフォームローラを近接離間する方向に駆動する径方向駆動手段を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の微細凹部加工装置。
- 円周面に形成した微細凹部の深さを検出する深さ検出手段を備えたことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の微細凹部加工装置。
- フォームローラを回転駆動するローラ回転駆動手段と、フォームローラを所定の回転位置で一時的に拘束するローラ位置決め手段を備えたことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の微細凹部加工装置。
- 請求項1〜9のいずれかに記載の微細凹部加工装置を用いて、被加工物の円周面に微細凹部を形成するに際し、微細凹部の深さとこれに対応するフォームローラの変位量との関係に基づいて、形成しようとする微細凹部の目標深さよりも小さい深さに対応するフォームローラの変位量を設定して同フォームローラを被加工物の円周面に圧接させ、被加工物と工具ホルダを円周面の中心線回りに相対的に回転させて円周面に添ってフォームローラを転動させることにより、円周面に目標深さよりも小さい深さの微細凹部を形成し、その後、フォームローラの変位量を増大させて円周面の同一箇所に少なくとも一回の再加工を行うことにより、最終的に目標深さを有する微細凹部を形成することを特徴とする微細凹部加工方法。
- 加工中にフォームローラの変位量を変化させることを特徴とする請求項10に記載の微細凹部加工方法。
- 請求項1〜9のいずれかに記載の微細凹部加工装置を用いて、クランクジャーナルの外周面に微細凹部を形成したことを特徴とするエンジンのクランクシャフト。
- 請求項1〜9のいずれかに記載の微細凹部加工装置を用いて、クランクピンの外周面に微細凹部を形成したことを特徴とするエンジンのクランクシャフト。
- 請求項1〜9のいずれかに記載の微細凹部加工装置を用いて、カムジャーナルの外周面に微細凹部を形成したことを特徴とするエンジンのカムシャフト。
- 請求項1〜9のいずれかに記載の微細凹部加工装置を用いて、カムロブの外周面に微細凹部を形成したことを特徴とするエンジンのカムシャフト。
- 請求項1〜9のいずれかに記載の微細凹部加工装置を用いて、シリンダボアの内周面に微細凹部を形成したことを特徴とするエンジンのシリンダブロック。
- シリンダボアの内周面において、ピストンの上死点側である上側部位、中間部位及びピストンの下死点側である下側部位のうちの少なくとも一つの部位に形成した微細凹部の深さが、他の部位に形成した微細凹部の深さと異なることを特徴とする請求項17に記載のエンジンのシリンダブロック。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2005125678A JP2006297467A (ja) | 2005-04-22 | 2005-04-22 | 微細凹部加工装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2005125678A JP2006297467A (ja) | 2005-04-22 | 2005-04-22 | 微細凹部加工装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2006297467A true JP2006297467A (ja) | 2006-11-02 |
Family
ID=37466172
Family Applications (1)
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JP2005125678A Pending JP2006297467A (ja) | 2005-04-22 | 2005-04-22 | 微細凹部加工装置 |
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JP (1) | JP2006297467A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008127662A (ja) * | 2006-11-24 | 2008-06-05 | Mazda Motor Corp | 金属製摺動部材の製造方法 |
-
2005
- 2005-04-22 JP JP2005125678A patent/JP2006297467A/ja active Pending
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