JP2006321850A - フッ素樹脂製摺動部材 - Google Patents

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Abstract

【課題】 熱溶融成形法によって成形でき、すぐれた耐磨耗特性と機械特性を有するフッ素樹脂製シールリングなどの摺動部材を提供すること。
【解決手段】 熱溶融性フッ素樹脂と層状化合物の粉末混合物から得られる熱溶融性フッ素樹脂組成物を成形してなるフッ素樹脂製シールリングなどの摺動部材。
熱溶融性フッ素樹脂組成物が、熱溶融性フッ素樹脂75〜95重量%と層状化合物25〜5重量%からなる組成物である、前記したフッ素樹脂製摺動部材は好ましい態様である。
【選択図】 なし

Description

本発明は、加工性にすぐれており、かつ機械特性及び摩擦特性にすぐれたフッ素樹脂製摺動部材に関するものである。さらに詳しくは、熱溶融性フッ素樹脂と層状化合物の粉末混合物から得られる組成物を成形してなるフッ素樹脂製摺動部材に関するものである。
自動車等の車両に用いられる自動変速装置の油圧回路には、相対回転する部分にシールが必要とされており、相対回転する部材間には、両部材の一方に形成された環状溝にシールリングが取り付けられている。
このようなシールリングは、従来の鋳鉄製から、相手部材により密着しやすく、シール性に優れる合成樹脂製のものに代りつつあるが、合成樹脂製シールリングにおいては、相手部材により密着しやすいが、摺動性に欠けるために相手部材との摺接面の摩擦トルクが大きくなるという問題があった。
そのために、種々の摩擦トルク低減手法が採られている。例えば、合成樹脂製シールリング母材に低摩擦トルク性に優れるポリテトラフロオロエチレン(以下、「PTFE」ともいう)を用いることが知られている。ポリテトラフロオロエチレンは、特に高温時の耐荷重性に劣ることから、その耐荷重性を改善するため、ガラス繊維やカーボン繊維の繊維系充填材、又はブロンズ等の金属系充填材を添加することが提案されている(例えば、下記特許文献1及び2参照)。
しかしながら、ポリテトラフルオロエチレンは耐薬品性、耐熱性、低摩擦性、離型性などに優れているが、PTFEは溶融粘度が高いため、射出成形などの溶融加工によって加工することは困難であり、予備成形、焼成および旋盤およびフライス盤などの機械による加工といった多くの工程を経なければ製品を製造することができない。
そのため、PTFEをシールリング の材料として用いるばあい、工程が多いために量産が容易ではなく、また、機械による加工のために材料のロスが多くコスト高につながるという問題もある。さらに、機械による加工であるために、えられる製品の形状が比較的単純なものに限られ、U字状断面などの複雑な形状の製品は作製しにくい。
断面形状U字状などの複雑な形状のシールリング を得るために、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体樹脂またはテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂などの溶融性フッ素樹脂を、射出成形などの溶融加工して、柔軟性を有するシールリングを得る試みがなされている(例えば下記特許文献3)。同公報には、発明の効果を損なわない範囲で充填剤などを配合してもよいと記載されているが、提案された柔軟性を付与したシールリングでは、なお機械強度及び摩擦係数が十分ではなく、樹脂製シールリングに求められる性能を満足させることはできない。
特開平11−21408号公報 特開2000−1589号公報 特開平11−108193号公報
成形が容易ですぐれた耐磨耗特性と機械特性を有するフッ素樹脂製のシールリングなどの摺動部材の開発が望まれているので、本発明者らは、このような摺動部材の開発に鋭意取り組んだ結果本発明に到達した。
本発明は、熱溶融成形法によって成形でき、すぐれた耐磨耗特性と機械特性を有するフッ素樹脂製シールリングなどの摺動部材を提供することにある。
本発明は、熱溶融性フッ素樹脂と層状化合物の粉末混合物から得られる熱溶融性フッ素樹脂組成物を成形してなるフッ素樹脂製摺動部材を提供する。
前記熱溶融性フッ素樹脂組成物が、熱溶融性フッ素樹脂75〜95重量%と、層状化合物25〜5重量%からなる組成物である、前記したフッ素樹脂製摺動部材は本発明の好ましい態様である。
前記熱溶融性フッ素樹脂組成物が、熱溶融性フッ素樹脂と層状化合物との粉末混合物を得る工程(I)と、該粉末混合物を溶融混合する工程(II)を経て得られる熱溶融性フッ素樹脂組成物である前記したフッ素樹脂製摺動部材は本発明の好ましい態様である。
前記粉末混合物を得る工程(I)が、熱溶融性フッ素樹脂粉末と層状化合物とを混合して粉末混合物を得る工程(I)である前記したフッ素樹脂製摺動部材は本発明の好ましい態様である。
前記溶融混合が、溶融混合押出機を用い、剪断応力をかけて行われる前記したフッ素樹脂製摺動部材は本発明の好ましい態様である。
前記熱溶融性フッ素樹脂粉末が、熱溶融性フッ素樹脂のコロイド状微粒子が凝集した平均粒径10μm以下の凝集粉末である、前記したフッ素樹脂製摺動部材は本発明の好ましい態様である。
前記粉末混合物が、熱溶融性フッ素樹脂と層状化合物を、ブレード或いはカッターナイフの周速度35m/秒以上の高速回転混合機で混合することによって行われるものである、前記したフッ素樹脂製摺動部材は本発明の好ましい態様である。
前記層状化合物が、グラファイトである、前記したフッ素樹脂製摺動部材は本発明の好ましい態様である。
前記グラファイトが、平均粒径10μm以下の動部材である、前記したフッ素樹脂製摺動部材は本発明の好ましい態様である。
前記した摺動部材がシールリングである態様は本発明の摺動部材の好ましい態様である。
本発明により、熱溶融成形法によって成形できる、すぐれた耐磨耗特性を有するフッ素樹脂製シールリングなどの摺動部材が提供される。
本発明によって、すぐれた耐磨耗特性と加えて、すぐれた機械特性を有するフッ素樹脂製シールリングなどの摺動部材が提供される。
本発明は、本発明は、熱溶融性フッ素樹脂粉末と層状化合物から得られる熱溶融性フッ素樹脂組成物を成形してなるフッ素樹脂製摺動部材を提供する。
本発明の熱溶融性フッ素樹脂としては、テトラフルオロエチレン・パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(以下、PFAという)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(以下、FEPという)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン・パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(以下、EPEという)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(以下、ETFEという)、ポリビニリデンフルオライド(以下、PVDFという)、ポリクロロトリフルオロエチレン(以下、PCTFEという)、クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体(以下、ECTFEという)などを挙げることができる。好ましくは、テトラフルオロエチレン・パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体のパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)のアルキル基が炭素数1〜5、より好ましくは1〜3のものである。
これらの熱溶融性フッ素樹脂は、溶融粘度或いは分子量についての制限は特にはないが、射出成形を目的とする場合は、熱溶融性フッ素樹脂の溶融粘度がメルトインデックス(ASTM D 1238:372℃、5kg荷重)で10g/10分〜40g/10分であることが好ましい。
熱溶融性フッ素樹脂としては、粉末状、顆粒状または造粒した粒状のものを使用することができる。本発明においては、熱溶融性フッ素樹脂は、後述する粉砕方法を含めて所望の方法によって粉体とし、層状化合物との粉末混合物が調製できるものであればよい。
熱溶融性フッ素樹脂と、層状化合物との粉末混合物から熱溶融性フッ素樹脂組成物を任意の方法で形成させることができる。中でも該粉末混合物を、溶融混合する工程を経て得られる熱溶融性フッ素樹脂組成物は、熱溶融性フッ素樹脂組成物の好ましい態様である。
すなわち、熱溶融性フッ素樹脂と層状化合物との粉末混合物を得る工程(I)と、該粉末混合物を、溶融混合する工程(II)を経て得られる熱溶融性フッ素樹脂組成物は、本発明の好ましい熱溶融性フッ素樹脂組成物の態様として挙げることができる。
熱溶融性フッ素樹脂粉末と層状化合物とを混合して熱溶融性フッ素樹脂粉末混合物を得る工程(I)と、得られた該粉末混合物を、溶融混合する工程(II)を経て得られる熱溶融性フッ素樹脂組成物は、本発明のより好ましい熱溶融性フッ素樹脂組成物の態様として挙げることができる。
このような熱溶融性フッ素樹脂組成物は、本出願人が、WO 2004/074371において、熱伝導度及びガス・薬液バリヤー性・貯蔵弾性率等の力学物性に優れた熱溶融性フッ素樹脂組成物として提案したが、本発明は、ここに提案された組成物が、選択的にシールリングなどの摺動部材に適していることを見出だしたことに基づくものである。
このような熱溶融性フッ素樹脂組成物に使用される熱溶融性フッ素樹脂粉末としては、平均粒径が0.2μm程度のコロイド状粒子が凝集した平均粒径が10μm以下、好ましくは7μm以下、更に好ましくは5μm以下の凝集粉末を使用するのがよい。このような凝集粉末は、例えば、平均粒径約0.1〜0.3μm程度の熱溶融性フッ素樹脂のコロイド状微粒子を水中に約1〜75重量%含む乳化重合により得られる熱溶融性フッ素樹脂水性分散液に、電解性物質を加え、機械的撹拌下に熱溶融性フッ素樹脂のコロイド状微粒子を凝集させた後、水性媒体と分離し、必要に応じ水洗し乾燥させることにより得ることができる。
熱溶融性フッ素樹脂水性分散液中の熱溶融性フッ素樹脂のコロイド状微粒子を凝集させる目的で使用される電解性物質としては、例えばHCl、H2SO4、HNO3、H3PO4、Na2SO4、MgCl2、CaCl2、ギ酸ナトリウム、酢酸カリウム、炭酸アンモニウムなどのような水溶性の無機又は有機の化合物などを例示することができる。好ましくは、熱溶融性フッ素樹脂微粒子を凝集させた後、水性媒体と分離し乾燥させる乾燥工程で揮発可能な化合物、例えばHCl、HNO3などである。
これらの電解性物質は、熱溶融性フッ素樹脂の重量に対し1〜15重量%、特に1.5〜10重量%であることが好ましく、水溶液の形で熱溶融性フッ素樹脂水性分散液に添加するのが好ましい。電解性物質の重量が1重量%未満の場合には、熱溶融性フッ素樹脂のコロイド状微粒子を凝集させるのに長時間を要するため生産性が低下する。電解性物質の重量が15重量%を越えても、熱溶融性フッ素樹脂のコロイド状微粒子を凝集させるのに影響はないが、経済的でなく、洗浄工程に時間を要するようになる。
熱溶融性フッ素樹脂のコロイド状微粒子を凝集させる装置は、特に限定されるものではないが、周速度で約4m/秒以上を維持できる撹拌手段、例えばプロペラ翼、タービン翼、パドル翼、かい型翼、馬蹄形型翼、螺旋翼などと、排水手段を備えた装置であることが好ましい。
このような装置中に熱溶融性フッ素樹脂水性分散液と電解質を所定量加え撹拌することにより、熱溶融性フッ素樹脂のコロイド状微粒子が凝集して凝集粒子となり、水性媒体から分離して浮上、浮揚する。この際、撹拌速度を約4m/秒以上に維持することが好ましい。撹拌速度が4m/秒未満の場合には、熱溶融性フッ素樹脂のコロイド状微粒子を凝集させるのに長時間を要するのに加え、熱溶融性フッ素樹脂の凝集粒子から水性媒体が排出され難くなる傾向となる。撹拌は凝集粒子が水性媒体から分離するまで行われる。
このようにして得られた熱溶融性フッ素樹脂凝集粒子は、必要に応じて水洗された後、熱溶融性フッ素樹脂の融点以下の温度で乾燥され、熱溶融性フッ素樹脂微粉となる。該フッ素樹脂微粉は内部の粒子間凝集力が小さいため、回転混合機の高速で回転するブレードにより、1次粒子にまで解砕(破砕)するのに適している。
本発明で使用される層状化合物としては、単位結晶層が互いに積み重なった層状構造を有するものであって、その粒径が10μm以下のグラファイトであることが好ましい。グラファイトは、天然のものであっても合成されたものであっても良い。グラファイトは、鱗片状グラファイトであることが好ましい。
上記層状化合物の混合比率は、熱溶融性フッ素樹脂組成物の重量あたり、2〜30重量%であることが好ましい。より好ましくは5〜25重量%、さらに好ましくは7〜20重量%である。熱溶融性フッ素樹脂粉末の混合比率は、層状化合物の上記混合比率に対応して、熱溶融性フッ素樹脂組成物の重量あたり、好ましくは70〜98重量%、より好ましくは75〜95重量%、さらに好ましくは80〜93重量%である。
本発明においては、本発明のフッ素樹脂製シールリングの特性を損なわない範囲で、熱溶融性フッ素樹脂組成物中に、グラファイトと共に他の充填材を含有しても良い。含有される充填材は、無機物質または有機物質であって、その平均粒径が200μm以下、好ましくは2〜50μmの粒状、および/または平均繊維長が500μm以下の繊維状のものである。
含有される充填剤の好ましい例としては、炭素繊維、ガラス繊維等の繊維系充填材、ブロンズ粉、銅粉、酸化亜鉛粉末等の金属系充填材、コークス粉、タルク、二硫化モリブデン、ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリフェニレンサルファイドからなる群から選ばれる少なくとも1種の物質を挙げることができる。前記した平均粒径および/または平均繊維長を持つ充填剤であれば、市販品をそのまま使用することができる。
本発明においてはまた、本発明のフッ素樹脂製シールリングの特性を損なわない範囲で、熱溶融性フッ素樹脂組成物中に、酸化安定剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、難燃剤、顔料等の安定剤あるいは添加剤を配合することができる。
本発明においては、平均粒径10μm以下の熱溶融性フッ素樹脂粉末と平均粒径10μm以下の層状化合物とを予め解砕・混合し、層状化合物を熱溶融性フッ素樹脂粉末中に予め均一に分散させた熱溶融性フッ素樹脂粉末混合物を得た後、得られた該粉末混合物を、溶融混合押出機を用いて溶融混合することにより、せん断応力で層状化合物を熱溶融性フッ素樹脂中に更に均一に分散・層剥離させた熱溶融性フッ素樹脂組成物とすることが好ましい。
平均粒径10μm以下の熱溶融性フッ素樹脂粉末と平均粒径10μm以下の層状化合物とを予め解砕・混合し、層状化合物を熱溶融性フッ素樹脂粉末中に予め均一に分散させるための方法は、例えば、先に本出願人が出願した特開2002−284883及び特開2003−82187号の各公報に提案されている。これらの方法に従い、回転数1500rpm以上或いは周速度35m/秒以上、好ましくは回転数3000〜20000rpm或いは周速度70〜115m/秒の高速で回転するブレード或いはカッターナイフを有する高速回転混合機によって、平均粒径10μm以下の熱溶融性フッ素樹脂粉末と平均粒径10μm以下の層状化合物とを解砕・混合することにより、層状化合物を熱溶融性フッ素樹脂粉末中に予め均一に分散させることができる。
このような高速回転混合機としては、例えば日本アイリッヒ社製「アイリッヒ・インテンシブ・ミキサー」などが挙げられる。一方、フッ素樹脂ペレットと充填材などを混合する際に通常用いられるドライ・ブレンダー、或いは粉末を混合する際に通常用いられるヘンシェルミキサーは、その混合能力が劣り、層状化合物を均一に分散させることが難しい。上記の高速回転混合機での混合に際し、静電気による熱溶融性フッ素樹脂粉末の高速回転混合機内壁への付着を防止するため、帯電防止剤、例えばカーボンブラックなどを添加することができる。また、目的に応じて任意に他の添加剤を配合することもできる。
熱溶融性フッ素樹脂粉末と層状化合物からなる熱溶融性フッ素樹脂粉末混合物は溶融混合して熱溶融性フッ素樹脂組成物とすることが好ましい。このような溶融混合を、溶融混合押出機を用い、剪断応力をかけて行うことは、溶融混合の好ましい態様である。この場合、溶融混合押出機のホッパーでの食い込みをよくするため、コンパクターで固めたのちに溶融混合押出機で溶融混合されてもよい。
溶融混合工程に用いられる溶融混合押出機としては、使用する熱溶融性フッ素樹脂の種類や溶融粘度にもよるが、より効果的に層状化合物を熱溶融性フッ素樹脂中に分散させるために、2軸押出機を用いることが、せん断応力の面から好ましい。
平均粒径10μm以下の熱溶融性フッ素樹脂粉末と平均粒径10μm以下の層状化合物とを予め高速回転混合機で解砕・混合した後、溶融混合押出機で溶融混合する方法では、予め高速回転混合機で熱溶融性フッ素樹脂粉末と層状化合物粉体を均一に解砕・混合するため、溶融混合押出機での全体の溶融混合時間を短くすることができる。溶融混合押出機では、主に層剥離が行なわれる。従って、熱溶融性フッ素樹脂のような溶融成型温度が高い樹脂を用いた場合には全体の溶融混合時間を短くすることで、層状化合物の分解を防ぐことができる。
熱溶融性フッ素樹脂粉末と層状化合物とを混合して熱溶融性フッ素樹脂粉末混合物を得る工程(I)と、得られた該粉末混合物を、溶融混合押出機を用い、剪断応力をかけて溶融混合する工程(II)を経て得られる熱溶融性フッ素樹脂組成物を成形して得られる成形品は、耐磨耗特性と機械特性にすぐれた成形品である。
本発明によれば、耐磨耗特性と機械特性にすぐれた成形品が提供されるので、摺動性を要求される摺動部材は本発明の好適な成形品である。
本発明の熱溶融性フッ素樹脂組成物を成形して得られるフッ素樹脂製摺動部材としては、シールリングが本発明の特徴を最もよく表す。
以下に実施例によって、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら制限されるものではない。
本発明において、物性の測定は下記の方法によって行った。
(1)耐磨耗試験
JIS K7218に準じて松原式で測定した。
外径25.5φ(内径20.0φ)で高さが約20mmの筒形状の試験サンプルを用い、荷重が6kg/cmで、速度が0.5cm/secの条件で、相手材をSS−41とし、時間を50として、松原式摩擦磨耗試験機(東洋測器社製)を用いて測定した。
(2)圧縮クリープ測定
ASTM D621に準じて測定した。
両辺が12.7mmで高さが25.4mmの四角柱を試験サンプルとし、クリープ条件を荷重140kg/cm、温度23℃として測定した。
(実施例1)
粉末混合物の調製
PFAとして三井・デユポンフロロケミカル株式会社製PFA350−Jの造粒品(平均粒径400μm、MFR1〜3g/10分)を160℃で20時間乾燥させたものを用い、グラファイトとしてグラファイトAT−No.10E(平均粒径13〜25μm、オリエンタル産業株式会社製)を用いて、両者を95重量%と5重量%の割合で高速回転混合機に投入し、回転数3600rpmで10分間混合した。その後、高速回転混合機内の壁に付着した粉末を掻き落とした後、再度同条件で10分間混合して粉末混合物を得た。
得られた粉末混合物を、コンパクター(新東工業株式会社製、BSCIV)を使用して、スクリューフィーダー回転数120〜128rpm、ロール回転速度2,4〜2,8rpmで圧縮固化させた後、粉砕して粒径が100〜1000μmの粒体を得た。
得られた粒体を280℃〜300℃で20時間焼成して低揮発分を除去した。
試験片の成形
金型にフッ素樹脂組成物を入れ、350℃で2.5時間保持して樹脂を溶融させた。圧力4.5MPaで1時間圧縮を保持した後室温中で冷却して50φの円柱ブロックを得た。得られた円柱ブロックを切削加工して所定の試験サンプルとした。
得られた試験サンプルについて、耐磨耗試験、圧縮クリープ測定および圧縮強度測定を行った。結果を表1に示す。
(実施例2)
実施例1において、PFAを三井・デユポンフロロケミカル株式会社製PFA340−Jの造粒品(平均粒径400μm、MFR10−18g/10分)を160℃で20時間乾燥させたものに代え、これとグラファイトの割合を90重量%と10重量%に変更するほかは同様にして、耐磨耗試験、圧縮クリープの測定を行った。結果を表1に示す。
(実施例3)
実施例2において、PFAとグラファイトの割合を80重量%と20重量%に変更するほかは同様にして、耐磨耗試験、圧縮クリープの測定を行った。結果を表1に示す。
(比較例1)
実施例1において、グラファイトの使用を省略するほかは同様にして、耐磨耗試験、圧縮クリープの測定を行った。結果を表1に示す。
(比較例2)
実施例1において、PFAをPTFE(三井・デユポンフロロケミカル株式会社製、 )に代え、これとグラファイトの割合を85重量%と15重量%に変更するほかは同様にして、耐磨耗試験、圧縮クリープの測定を行った。結果を表1に示す。
Figure 2006321850
(実施例4)
フッ素樹脂粉末の調整
乳化重合により得られた30重量%PFA水性分散液(融点307℃、MFR=1.9g/10分)60kgを、ダウンフロータイプのプロペラ型6枚羽根付き撹拌シャフトと排水手段を有する撹拌槽(100L)に入れ、300rpmで撹拌しながら60%硝酸500gを加えた。さらに300rpmで10分間撹拌し、水性分散液が凝集した後、450rpmで20分間撹拌することによりPFA凝集粒子を水性重合媒体上に浮上、浮揚させ、水性重合媒体と分離した。その後水性重合媒体を撹拌槽から排出し、次いで撹拌槽に水を入れてPFA凝集粒子を水洗した後、PFA凝集粒子を160℃で24時間乾燥させ、PFA粉末を得た。得られたPFA粉末の平均粒径は3μmであった。
粉末混合物の調整
得られたPFA粉末85重量%と、層状化合物として人工グラファイト(TIMCAL社製、TIMREX KS4、平均粒径2.4μm)15重量%とを高速回転混合機に投入し、3600rpmで20分間混合して粉末混合物を得た。
試験片の成形
得られた粉末混合物を用いて、実施例1と同様にして所定の試験サンプルを作製した。
得られた試験サンプルについて、耐磨耗試験、圧縮クリープの測定を行った。結果を表2に示す。
(実施例5)
実施例4において、PFA粉末と人工グラファイトの割合を、80重量%及び20重量%に変更するほかは、実施例4と同様にして熱溶融性フッ素樹脂組成物を得た。得られた組成物を用いて、実施例1と同様にして所定の試験サンプルを作製した。
得られた試験サンプルについて、耐磨耗試験、圧縮クリープの測定を行った。結果を表2に示す。
(実施例6〜8)
実施例4において、層状化合物として人工グラファイトに代えて、高純度天然グラファイト(株式会社 エスイーシー製、SNO−3、平均粒径3μm)を用い、PFA粉末とグラファイトの割合を、90重量%と10重量%(実施例6)、85重量%と15重量%(実施例7)および80重量%と20重量%(実施例8)とするほかは実施例4と同様にして熱溶融性フッ素樹脂組成物を得た。得られた組成物を用いて、実施例1と同様にして所定の試験サンプルを作製した。
得られた試験サンプルについて、耐磨耗試験、圧縮クリープの測定を行った。結果を表2に示す。
Figure 2006321850
本発明により提供されるフッ素樹脂製摺動部材は、すぐれた耐磨耗特性と機械特性を有するので、各種の摺動部材に適用できる。
本発明により提供されるフッ素樹脂製摺動部材は、熱溶融成形法によって成形できるので、複雑な形状に成形し得るフッ素樹脂製摺動部材である。
本発明により摺動部材として、熱溶融成形法によって成形でき、すぐれた耐磨耗特性と機械特性を有するフッ素樹脂製シールリングが提供される。

Claims (10)

  1. 熱溶融性フッ素樹脂と層状化合物の粉末混合物から得られる熱溶融性フッ素樹脂組成物を成形してなるフッ素樹脂製摺動部材。
  2. 前記熱溶融性フッ素樹脂組成物が、熱溶融性フッ素樹脂75〜95重量%と、層状化合物25〜5重量%からなる組成物であることを特徴とする請求項1に記載のフッ素樹脂製摺動部材。
  3. 熱溶融性フッ素樹脂と層状化合物との粉末混合物を得る工程(I)と、該粉末混合物を溶融混合する工程(II)を経て得られる熱溶融性フッ素樹脂組成物であることを特徴とする請求項1または2に記載のフッ素樹脂製摺動部材。
  4. 前記粉末混合物を得る工程(I)が、熱溶融性フッ素樹脂粉末と層状化合物とを混合して粉末混合物を得る工程(I)であることを特徴とする請求項3に記載のフッ素樹脂製摺動部材。
  5. 前記溶融混合が、溶融混合押出機を用い、剪断応力をかけて行われることを特徴とする請求項3または4に記載のフッ素樹脂製摺動部材。
  6. 熱溶融性フッ素樹脂粉末が、熱溶融性フッ素樹脂のコロイド状微粒子が凝集した平均粒径10μm以下の凝集粉末である請求項4または5に記載のフッ素樹脂製摺動部材。
  7. 前記粉末混合物が、熱溶融性フッ素樹脂と層状化合物を、ブレード或いはカッターナイフの周速度35m/秒以上の高速回転混合機で混合することによって行われることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のフッ素樹脂製摺動部材。
  8. 前記層状化合物が、グラファイトである、請求項1〜7のいずれかに記載のフッ素樹脂製摺動部材。
  9. 前記グラファイトが、平均粒径10μm以下のグラファイトである、請求項8に記載のフッ素樹脂製摺動部材。
  10. 前記摺動部材がシールリングである請求項1〜9のいずれかに記載のフッ素樹脂製摺動部材。
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