JP2006321772A - 抗肥満剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】 高い抗肥満効果を発揮することができる抗肥満剤を提供する。
【解決手段】 抗肥満剤は、柑橘類の果実由来の親水性成分を有効成分とする。前記有効成分はポリフェノールを含む。この抗肥満剤は、好ましくは、柑橘類の果実又はその構成成分の極性溶媒抽出物を含有する。前記極性溶媒抽出物は、前記柑橘類の果実又はその構成成分を、水、低級アルコール、グリセリン及び氷酢酸から選ばれる少なくとも1種の極性溶媒で抽出した抽出物からなる。図1は、肥満マウスに、高炭水化物食を与えて飼育した第1対照群、高脂肪食を与えて飼育した第2対照群、及び高脂肪食+抗肥満剤(レモン由来の親水性成分)を与えて飼育した試験群について、それぞれの体重増加の様子をプロットしたグラフである。
【選択図】 図1

Description

本発明は、抗肥満作用を有する抗肥満剤に関する。
従来、柑橘類由来のポリフェノールは、抗酸化作用、フレーバー劣化防止作用、紫外線吸収作用などを有していることが報告されている(例えば特許文献1〜3参照)。
特開平9−48969号公報 特開2001−61461号公報 特開2001−200238号公報
本発明は、本発明者らの鋭意研究の結果、柑橘類から得られるポリフェノールを含む親水性成分が従来報告されている作用以外にも有用な作用を有していることを見出したことによりなされたものである。その目的とするところは、高い抗肥満効果を発揮することができる抗肥満剤を提供することにある。
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の抗肥満剤は、柑橘類の果実由来の親水性成分を有効成分とする抗肥満剤であって、前記有効成分はポリフェノールを含むことを要旨とする。この抗肥満剤は、ポリフェノールを含む親水性成分を有効成分としているため、該親水性成分に起因して高い抗肥満効果が発揮される。
請求項2に記載の抗肥満剤は、請求項1に記載の発明において、前記柑橘類の果実又はその構成成分の極性溶媒抽出物を含有することを要旨とする。
この抗肥満剤は、親水性成分を高含有する極性溶媒抽出物を含有しているため、高い抗肥満効果を発揮することができる。さらに、極性溶媒抽出物の製造は、極めて容易であるため、抗肥満剤の製造が容易となる。
請求項3に記載の抗肥満剤は、請求項2に記載の発明において、前記極性溶媒抽出物は、前記柑橘類の果実又はその構成成分を、水、低級アルコール、グリセリン及び氷酢酸から選ばれる少なくとも1種の極性溶媒で抽出した抽出物からなることを要旨とする。
この抗肥満剤では、柑橘類の果実又はその構成成分から、親水性成分を高含有する極性溶媒抽出物を得るために、特に相応しい極性溶媒が用いられている。このため、高い抗肥満効果を発揮することが可能な抗肥満剤が極めて容易に提供される。
請求項4に記載の抗肥満剤は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の発明において、体重の増加抑制作用を有することを要旨とする。
この抗肥満剤は、投与された個体に対して体重増加を抑える作用を有しているため、高い抗肥満効果を発揮する。
請求項5に記載の抗肥満剤は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の発明において、体脂肪率の増加抑制作用を有することを要旨とする。
この抗肥満剤は、投与された個体に対して体脂肪率の増加を抑える作用を有しているため、高い抗肥満効果を発揮する。
請求項6に記載の抗肥満剤は、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の発明において、脂肪酸合成系及びコレステロール合成系の脂質代謝酵素遺伝子の発現を低下させるとともに、脂肪酸燃焼系の脂質代謝酵素遺伝子の発現を増加させる作用を有することを要旨とする。
この抗肥満剤は、投与された個体に対して、脂肪酸合成系及びコレステロール合成系の脂質代謝酵素遺伝子の発現を低下させる作用を有しているため、脂肪酸及びコレステロールの生合成を抑制し、結果的に高い抗肥満効果を発揮する。さらに、この抗肥満剤は、投与された個体に対して、脂肪酸燃焼系の脂質代謝酵素遺伝子の発現を増加させる作用を有しているため、脂肪酸の分解を亢進し、結果的に高い抗肥満効果を発揮する。
本発明の抗肥満剤によれば、高い抗肥満効果を発揮することができる。
以下、本発明を抗肥満剤に具体化した一実施形態について説明する。
本実施形態の抗肥満剤(体重上昇抑制剤)は、柑橘類の果実由来の親水性成分を有効成分として含有する。この抗肥満剤は、前記有効成分の作用により、該抗肥満剤が投与された個体に対して、体重の増加抑制作用(体重の減少作用)や体脂肪率の増加抑制作用(体脂肪率の低下作用)などを介して抗肥満効果を発揮する。
さらに、この抗肥満剤は、投与された個体に対して、脂肪酸合成系及びコレステロール合成系の脂質代謝酵素遺伝子の発現を低下させる作用を介して、脂肪酸及びコレステロールの生合成を抑制する。加えて、この抗肥満剤は、投与された個体に対して、脂肪酸燃焼系の脂質代謝酵素遺伝子の発現を増加させる作用を介して、脂肪酸の分解を亢進させる。脂肪酸合成系の脂質代謝酵素遺伝子としては、ATPクエン酸リアーゼ(ATP citrate lyase)遺伝子、アセチルCoAカルボキシラーゼ(Acetyl CoA carboxylase)遺伝子、脂肪酸合成酵素(Fatty acid synthase)遺伝子などが挙げられる。コレステロール合成系の脂質代謝酵素遺伝子としては、HMG−CoAレダクターゼ(Hydroxymethylglutaryl-CoA reductase)遺伝子などが挙げられる。脂肪酸燃焼系の脂質代謝酵素遺伝子としては、脂肪酸CoAリガーゼ(Fatty acid CoA ligase)遺伝子及びアシルCoAオキシダーゼ(Acyl CoA oxidase;ACO)遺伝子などが挙げられる。
また、この抗肥満剤は、該抗肥満剤が投与された個体に対して血中中性脂肪(トリグリセリド;TG)濃度の低下や血中コレステロール濃度の低下を引き起こすこともできる。なお、前記血中コレステロール濃度の低下においては、高密度リポタンパク質(HDL)コレステロール濃度の上昇をもたらしつつ、低密度リポタンパク質(LDL)コレステロール濃度の大幅な低下をもたらすことにより、結果的に血中の総コレステロール量の低減をもたらす。このため、本実施形態の抗肥満剤は、高脂血症、動脈硬化症、心疾患などの予防や治療にも有用である。
前記親水性成分はポリフェノールを含み、好ましくはポリフェノールを主成分とする。前記ポリフェノールを主成分とするとは、前記親水性成分中の固形分のうち、ポリフェノールの含有量が他のどの成分よりも高いことを指し、ポリフェノールを好ましくは30重量%以上、より好ましくは50重量%以上含有していることを指す。また、レモン、ライム及びスダチ由来の親水性成分には、エリオシトリンも同時に高含有されている。
前記親水性成分は、柑橘類の果実又はその構成成分からなる原料を極性溶媒抽出することにより得られる極性溶媒抽出物中に高含有されている。前記極性溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどの低級アルコール、水、グリセリン、氷酢酸などが使用可能であり、親水性成分を飲食品に含有させる場合には水又はエタノールが好適に使用され、安価であることから水が特に好適に使用される。これら列挙された極性溶媒は、単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、前記極性溶媒抽出物中には、前記親水性成分以外にもペクチンなどの夾雑物が同時に含有されている。このため、極性溶媒抽出物としては、必要に応じてペクチンなどの夾雑物を除去したものが用いられる。
極性溶媒抽出物は、柑橘類の果実又はその構成成分を原料とし、該原料を極性溶媒に浸漬しながら撹拌又は放置する抽出工程を実施することにより得られる。柑橘類としては、レモン、ライム、グレープフルーツ、スダチ、ユズ、ネーブルオレンジ、バレンシアオレンジ、サワーオレンジ、はっさく、温州みかん、イヨカン、ダイダイ、カボス、ポンカンなどが挙げられる。これらの柑橘類は、単独で原料として用いてもよいし、二種以上を組み合わせて原料として用いてもよい。また、これら列挙された複数種の柑橘類の交配種を原料として用いても構わない。抽出工程で用いられる原料としては、得られる極性溶媒抽出物中のポリフェノール含量が容易に高められるため、好ましくはレモン、ライム、スダチ、ユズ、ダイダイ、カボスなどの香酸柑橘類が用いられ、より好ましくはレモン、ライム及びスダチが用いられ、特に好ましくはレモンが用いられる。
これらの柑橘類において、果実の構成成分としては、果皮、果汁、じょうのう膜、さのう及び種子が挙げられる。これらの構成成分のうち、得られる極性溶媒抽出物中のポリフェノール含量が容易に高められるため、好ましくは果汁及び果皮が用いられ、より好ましくは果皮が用いられる。また、抽出工程で用いられる原料としては、果実をそのまま用いても構わないが、製造に要する手間を省くとともに果実の有効利用を図るため、果実から果汁を搾汁した後の搾汁残渣を用いることが最も好ましい。この搾汁残渣には、果皮と、じょうのう膜と、さのうの一部と、種子と、搾汁しきれなかった極少量の果汁とが含まれている。
抽出工程では、前記原料中に含まれる親水性成分を極性溶媒中へと移行させた後、原料と極性溶媒とを分離する固液分離が行われる。この固液分離によって、親水性成分が極性溶媒中に溶解されてなる液状の極性溶媒抽出物が得られる。前記固液分離には、遠心分離や膜分離などの公知の分離方法を採用することができる。固液分離後、液状の極性溶媒抽出物を濃縮及び乾燥することにより、粉末状の極性溶媒抽出物が得られる。極性溶媒抽出物の濃縮及び乾燥には、公知の減圧濃縮及び真空乾燥が採用される。なお、抽出工程における抽出時間は2時間以上であるのが好ましい。
固液分離後の極性溶媒抽出物は、夾雑物を除去して親水性成分の含有量を高めるための精製工程に供されることが好ましい。この精製工程では、液状の極性溶媒抽出物を吸着樹脂にアプライして親水性成分を該樹脂に吸着させる吸着処理を行った後、吸着樹脂を洗浄する洗浄処理を行い、引き続き吸着樹脂から親水性成分を溶出させる溶出処理が行われる。前記吸着樹脂としては、親水性成分を吸着可能な樹脂が用いられる。吸着樹脂の材質としては、スチレン系合成樹脂やアクリル系合成樹脂などが挙げられる。具体的には、デュオライトS−861(ローム アンド ハース社製)などが使用可能である。
吸着処理は、カラム内に充填された吸着樹脂に対して極性溶媒抽出物をアプライする処理であり、極性溶媒抽出物中の親水性成分を吸着樹脂に吸着させるために行われる。
洗浄処理は、吸着処理後のカラムに洗浄用溶媒を流すことにより、吸着樹脂を洗浄する処理であり、吸着樹脂から親水性成分以外の夾雑物の多くを取除くために行われる。前記洗浄用溶媒としては、吸着樹脂に対する親水性成分の吸着状態を維持可能な溶媒が用いられるが、好ましくは上記極性溶媒が用いられ、より好ましくは水が用いられる。この洗浄処理では、洗浄用溶媒に対する親水性成分の溶出速度が夾雑物の溶出速度よりも遅いことを利用している。この洗浄用溶媒は、加熱していない状態でカラムに流してもよいが、親水性成分以外の夾雑物を効率的に取除くために、40〜100℃に加熱した状態でカラムに流すことが好ましい。
溶出処理は、洗浄処理後のカラムに溶出用溶媒を流すことにより、吸着樹脂に吸着されている親水性成分を溶出させる処理であり、親水性成分をカラム内から回収するために行われる。この溶出処理によって、親水性成分が溶出用溶媒に溶解されてなる溶出液が得られる。溶出用溶媒としては、エタノールなどのアルコール、アセトン、ヘキサン、クロロホルム、グリセリン、氷酢酸などの有機溶媒や水が使用可能であり、親水性成分を飲食品に含有させる場合にはエタノール水溶液が好適に使用される。これら列挙された溶出用溶媒は、単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。精製工程(溶出処理)によって得られた溶出液は、公知の方法で濃縮及び乾燥することにより、粉末状にすることが可能である。
本実施形態の抗肥満剤は、医薬品や医薬部外品などに添加して用いることが可能である。この場合、抗肥満効果、血中TG低減効果及び血中コレステロール低減効果を発揮するとともに、高脂血症、動脈硬化症、心疾患などの治療効果や予防効果を発揮することができる。これら医薬品及び医薬部外品において、十分な効能・効果を発揮させるために、親水性成分の含有量は、0.15〜30重量%であることが好ましい。また、医薬品及び医薬部外品において、親水性成分の摂取量は、症状、年齢、体重などによって異なるが、成人1日当たり0.5〜100gであることが好ましい。また、小人の場合には、前記成人の場合の半量が目安となる。
また、本実施形態の抗肥満剤は、飲食品に添加して用いることも可能である。飲食品としては、ドリンク剤などの飲料品やクッキーなどの食料品に加え、健康食品などの食品製剤も含まれる。この場合、抗肥満効果、血中TG低減効果及び血中コレステロール低減効果を発揮するとともに、高脂血症、動脈硬化症、心疾患などの予防効果を発揮することができる。
飲食品中の親水性成分の含有量は、0.05〜50重量%であることが好ましい。飲食品に含まれる親水性成分の含有量が0.05重量%未満では前記効果を発揮することが困難になり、逆に50重量%を超える場合には不経済である。この飲食品は、1日数回に分けて経口摂取することが好ましい。飲食品において、親水性成分の摂取量は、年齢、体重などによって異なるが、成人1日当たり0.5〜2000gであることが好ましい。飲食品の1日当たりの摂取量が0.5g未満では前記効果を発揮することが困難になり、逆に2000gを超える場合には不経済である。また、小人の場合には、前記成人の場合の半量が目安となる。
前記実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
・ 本実施形態の抗肥満剤は、柑橘類の果実由来の親水性成分を有効成分として含有している。前記親水性成分には、高い抗肥満効果を発揮するポリフェノールが高含有されているため、抗肥満剤は、該抗肥満剤が投与された個体に対して、体重の増加抑制作用や体脂肪率の増加抑制作用などを介して高い抗肥満効果を発揮することができる。
・ 本実施形態の抗肥満剤は、投与された個体に対して、脂肪酸合成系及びコレステロール合成系の脂質代謝酵素遺伝子の発現を低下させる作用を介して脂肪酸及びコレステロールの生合成を抑制することができる。さらに、この抗肥満剤は、投与された個体に対して、脂肪酸燃焼系の脂質代謝酵素遺伝子の発現を増加させる作用を介して脂肪酸の分解を亢進させることができる。従って、この抗肥満剤は、このような遺伝子レベルでの発現制御を介して、結果的に個体レベルでの高い抗肥満効果を発揮することができる。
・ 本実施形態の抗肥満剤は、該抗肥満剤が投与された個体に対して血中TG濃度の低下や血中コレステロール濃度の低下を引き起こすため、高脂血症、動脈硬化症、心疾患などの予防や治療にも有用である。加えて、この抗肥満剤は、血中HDLコレステロール濃度の上昇をもたらしつつ、血中LDLコレステロール濃度の大幅な低下をもたらすことにより、血中の総コレステロール量の低減をもたらすことから、健康増進のために極めて有用である。
・ 本実施形態の抗肥満剤は、親水性成分を高含有する極性溶媒抽出物を有効成分として含有することにより、極めて容易かつ安価に提供され得る。即ち、極性溶媒抽出物は、柑橘類の果実又はその構成成分を極性溶媒で抽出するという極めて簡単な方法により製造することができる。
<柑橘類の果実からの親水性成分の抽出及び精製>
レモン果実の搾汁残渣から極性溶媒抽出物を抽出した後、精製工程を行うことにより親水性成分を得た。まず、レモン果実をFMC搾汁機にて搾汁し、搾汁残渣を回収した後、該搾汁残渣を細かく粉砕した。得られた搾汁残渣の粉砕物20kgに極性溶媒としての水を加え、常温(25℃)で攪拌しながら30分間水抽出した。30分間攪拌後の抽出物を濾過して濾液を回収した後、その濾液を9000rpmで20分間遠心分離することにより、上澄み液(極性溶媒抽出物)を得た。
続いて、吸着樹脂(ローム アンド ハース社製のアンバーライトXAD−16)2Lを充填したカラムに前記上澄み液をアプライし、該上澄み液中の親水性成分を吸着樹脂に吸着させた。次に、18℃の水10Lをカラムに流して吸着樹脂を洗浄した後、30体積%エタノール水溶液10Lをカラムに流し、該エタノール水溶液で溶出される溶出液を得た。最後に、得られた溶出液を濃縮及び乾燥することにより、粉末状の親水性成分を得た。この親水性成分(レモンポリフェノール)に含まれる主な物質と、その含有量とを下記表1に示す。
Figure 2006321772
<肥満マウスを用いた抗肥満作用に関する試験>
8週齢の肥満マウス(雌、日本SLC社製のC57BL6/J)を3群用意した。各群は、6匹のマウスからなり、試験開始時の各群の体重の平均値が群同士で同じになるように分けられた。各群のマウスを温度23±3℃、湿度55±10%、12時間のライトサイクル(8:00〜20:00点灯)の飼育条件で、5日間通常食(日本クレア社製のCE−2)及び脱イオン水を与えて予備飼育した。次に、前記飼育条件を継続しつつ、第1対照群には下記表2に示す高炭水化物食を与え、第2対照群には表2の高脂肪食を与え、試験群(実施例2)には表2の高脂肪食+親水性成分を与えて飼育を開始した。なお、試験群に与えた親水性成分は、上記実施例1で得られたものである。
Figure 2006321772
飼育開始から1週間毎に各群のマウスの体重を測定した。また、飼育開始から14週後のマウスの体脂肪率をDEXA法により測定した。また、飼育開始から14週後のマウスを12時間絶食させた後、エーテル麻酔下で腹部大動脈から血液を採取した。得られた各血液を3500rpmで20分間遠心分離することにより血清画分を得た。各血清画分について、血中TG濃度、血中総コレステロール濃度及び血中HDLコレステロール濃度をそれぞれ測定した。なお、血中TG濃度、血中総コレステロール濃度及び血中HDLコレステロール濃度は、それぞれトリグリセライドG−テスト、コレステロールCII−テスト、HDLコレステロール−テスト(いずれも和光純薬工業社製)を用いて測定した。
結果を図1、図2及び図3(a)〜(c)に示す。なお、図1の*印は第2対照群に対して5%未満の危険率、**印は1%未満の危険率、***印は0.1%未満の危険率で統計学的な有意差を有することを示す。図2の***印は第2対照群に対して0.1%未満の危険率で統計学的な有意差を有することを示す。図3(a)〜(c)の*印は比較される群同士で5%未満の危険率、**印は1%未満の危険率、***印は0.1%未満の危険率で統計学的な有意差を有することを示す。
図1に示すように、高脂肪食を与えた第2対照群のマウスでは、高炭水化物食を与えた第1対照群と比べて体重が有意に増加した。これに対し、高脂肪食+親水性成分を与えた試験群のマウスでは、第2対照群のマウスと比べて体重の増加が有意に抑えられた。
図2に示すように、高脂肪食を与えた第2対照群のマウスでは、高炭水化物食を与えた第1対照群と比べて体脂肪率が有意に増加した。これに対し、高脂肪食+親水性成分を与えた試験群のマウスでは、第2対照群のマウスと比べて体脂肪率の増加が有意に抑えられた。
図3(a)に示すように、第2対照群のマウスでは、第1対照群と比べてTG濃度が有意に上昇した。これに対し、試験群のマウスでは、第2対照群と比べてTG濃度の上昇が有意に抑えられるとともに、第1対照群よりも低い濃度となった。
図3(b)に示すように、第2対照群のマウスでは、第1対照群と比べて総コレステロール濃度が有意に上昇した。これに対し、試験群のマウスでは、第1対照群と比べて総コレステロール濃度が有意に上昇せず、且つ、第2対照群よりも低く抑えられていた。
図3(c)に示すように、第2対照群のマウスでは、第1対照群と比べてHDLコレステロール濃度が有意に上昇した。これに対し、試験群のマウスでは、第1対照群と比べてHDLコレステロール濃度が有意に上昇し、且つ、第2対照群よりも高い値になっていた。ちなみに、HDLコレステロールは、善玉コレステロールとも呼ばれ、余分なコレステロールを全身の組織から肝臓へ回収する働きがあることから、動脈硬化症などの予防に有用である。
図3(b)、(c)の結果をまとめると、試験群のマウスでは、第2対照群と比べて、総コレステロール濃度が低下し、且つ、HDLコレステロール濃度が増加している。つまり、試験群のマウスでは、HDLコレステロールの選択的な上昇が見られた。従って、柑橘類由来の親水性成分は、体重抑制効果を有するとともに、血中TG濃度を抑え、且つ、血中HDLコレステロール濃度を上昇させる効果を有している。
<脂質代謝酵素遺伝子発現に与える影響試験>
8週齢の肥満マウス(日本SLC社製のC57BL6/J)を3群用意した。実施例2と同様の方法により、高炭水化物食を与えた第1対照群、高脂肪食を与えた第2対照群、及び高脂肪食+親水性成分を与えた試験群の3群のマウスに対して飼育を開始した。飼育開始から10週間後のマウスを12時間絶食させた後、肝臓及びふくらはぎの筋肉組織を外科手術により摘出した。摘出した肝臓及び筋肉組織からそれぞれmRNAを抽出し、各mRNAよりcDNAを作製し、これらのcDNAを用いてDNAマイクロアレイ(Affymetrix社製)による遺伝子発現解析を実施した。
解析した遺伝子は、肝臓に関しては、ATPクエン酸リアーゼ(ATP citrate lyase)遺伝子、アセチルCoAカルボキシラーゼ(Acetyl CoA carboxylase)遺伝子、脂肪酸合成酵素(Fatty acid synthase)遺伝子及びHMG−CoAレダクターゼ(Hydroxymethylglutaryl-CoA reductase)遺伝子である。筋肉組織に関しては、脂肪酸CoAリガーゼ(Fatty acid CoA ligase, long chain 2)遺伝子及びアシルCoAオキシダーゼ(Acyl CoA oxidase;ACO)遺伝子である。第2対照群における各脂質代謝酵素遺伝子の発現量に対する、試験群における同遺伝子の発現量の倍率を求めた結果を表3に示す。
Figure 2006321772
その結果、高脂肪食+親水性成分を与えた試験群では、肝臓において、脂肪酸合成系及びコレステロール合成系の遺伝子の発現がそれぞれ低下し、筋肉組織においては、脂肪酸燃焼系の遺伝子の発現が高まった。このことから、レモン由来の親水性成分は、遺伝子の発現レベルでも、脂肪酸及びコレステロールの合成を低下させるとともに、筋肉組織においては、脂肪酸のβ酸化を高める効果を有していることが確認された。
なお、本実施形態は、以下の技術に応用することも可能である。
本実施形態の有効成分は、抗肥満作用以外にも、血中TG濃度の低減作用、血中総コレステロール濃度の低減作用、血中LDLコレステロール濃度の低減作用、及び血中HDLコレステロール濃度の増加作用を有している。従って、本実施形態の有効成分を含有する血中TG低減剤、血中コレステロール低減剤、血中LDLコレステロール低減剤、及び血中HDLコレステロール増加剤を提供することができる。
さらに、前記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
・ 血中中性脂肪濃度を低下させる作用を有することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の抗肥満剤。血中低密度リポタンパク質コレステロール濃度を低下させる作用を有することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の抗肥満剤。血中高密度リポタンパク質濃度を増加させる作用を有することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の抗肥満剤。
・ 柑橘類の果実由来の親水性成分を有効成分とする血中低密度リポタンパク質コレステロール低減剤であって、前記有効成分はポリフェノールを含むことを特徴とする血中低密度リポタンパク質コレステロール低減剤。この場合、血中低密度リポタンパク質コレステロール濃度を低減させることができる。
・ 柑橘類の果実由来の親水性成分を有効成分とする血中高密度リポタンパク質コレステロール増加剤であって、前記有効成分はポリフェノールを含むことを特徴とする血中高密度リポタンパク質コレステロール増加剤。この場合、血中高密度リポタンパク質コレステロール濃度を増加させることができる。
実施例2のマウスの体重の測定結果を示すグラフ。 実施例2のマウスの体脂肪率の測定結果を示すグラフ。 (a)〜(c)はそれぞれ、実施例2のマウスの血中中性脂肪濃度、血中総コレステロール濃度及び血中高密度リポタンパク質コレステロール濃度の測定結果を示すグラフ。

Claims (6)

  1. 柑橘類の果実由来の親水性成分を有効成分とする抗肥満剤であって、
    前記有効成分はポリフェノールを含むことを特徴とする抗肥満剤。
  2. 前記柑橘類の果実又はその構成成分の極性溶媒抽出物を含有することを特徴とする請求項1に記載の抗肥満剤。
  3. 前記極性溶媒抽出物は、前記柑橘類の果実又はその構成成分を、水、低級アルコール、グリセリン及び氷酢酸から選ばれる少なくとも1種の極性溶媒で抽出した抽出物からなることを特徴とする請求項2に記載の抗肥満剤。
  4. 体重の増加抑制作用を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の抗肥満剤。
  5. 体脂肪率の増加抑制作用を有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の抗肥満剤。
  6. 脂肪酸合成系及びコレステロール合成系の脂質代謝酵素遺伝子の発現を低下させるとともに、脂肪酸燃焼系の脂質代謝酵素遺伝子の発現を増加させる作用を有することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の抗肥満剤。
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